JP2004181762A - インクジェットプリント、インクジェット記録媒体、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の第1の目的は、搬送性の良好な画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
第2の目的は、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【解決手段】インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントであって、該プリントの直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェットプリント。
【選択図】 なし
第2の目的は、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【解決手段】インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントであって、該プリントの直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェットプリント。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリント、インクジェット記録媒体、及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンタ技術、インク技術、専用記録媒体技術の向上と相まって写真画質と呼ばれる様になっている。画質の向上に伴い、インクジェット画像の保存性が従来の銀塩写真と比較されるようになり、多くの染料インクにおいて、インクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や耐酸化性ガス性への弱さといった色剤特有の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
一方、染料インク画像の保存性を改良するため、顔料インクを用いることが多く提案されている。しかし、顔料インクの場合、銀塩写真のような光沢感が得られなかったり、ブロンジングと呼ばれる金属光沢が見られる場合があり好ましくない。また、単に顔料インクを用いるだけでは十分な画像保存性が得られないのが現状である。
【0004】
インクジェット記録画像の画像保存性向上を目的に現在まで多くの提案がなされている。インクジェット記録媒体としては、記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後、熱可塑性有機高分子粒子を溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの記録媒体はインク吸収速度が不十分であり、高速印字適性が不足している。
【0006】
更に、熱可塑性樹脂含有層に無機顔料を一定量添加し、インク吸収性を改善した技術が開示されている(例えば、特許文献6、7参照)。また、高堅牢性の顔料インクを用いて、印字後加熱定着処理により上記顔料インクの課題を改善する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記公報記載には、本発明の目的であるプリンタ搬送性と画像の折り割れ故障低減のために、最終画像の直交する2方向に対する剛度を特定の範囲に調整することについてなんら記載はない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−222381号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平4−21446号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−315448号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平11−5362号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平11−192775号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2002−234246号公報
【0014】
【特許文献7】
特開2002−234248号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、搬送性の良好な画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【0016】
第2の目的は、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0018】
1.インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントであって、該プリントの直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェットプリント。
【0019】
2.前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする前記1項に記載のインクジェットプリント。
【0020】
3.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記1項に記載のインクジェットプリント。
【0021】
4.インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録媒体であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0022】
5.前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする前記4項に記載のインクジェット記録媒体。
【0023】
6.前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含有することを特徴とする前記4項に記載のインクジェット記録媒体。
【0024】
7.前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする前記4〜6項の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0025】
8.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記4〜6項の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0026】
9.インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録方法であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0027】
10.前記後処理工程が、加熱工程を含むことを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録方法。
【0028】
11.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録方法。
【0029】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、インクジェット記録媒体(以下、単に記録媒体ともいう)の諸特性の調整、或いは印字後の後処理工程の条件を制御することにより、上記課題を解決するに至ったものである。
【0030】
記録媒体のプリンタ内での搬送性を円滑に行うためには、画像は適度に柔軟である必要がある。特に画像保存性向上や、光沢発現等の目的に後処理をする場合は、余計にプリンタ内の搬送が複雑であり、そのため、より画像の柔軟性が求められる。
【0031】
一方、最終画像は、強度を保つためある程度の硬さが必要であり、とりわけ大サイズの画像では、端部を持つとプリント自重がかかり折り割れ故障を発生しやすい。
【0032】
通常、プリントの剛度は原紙(基材)の剛度によるところが多く、紙を用いた基材、特に基材両面をポリオレフィン等で被覆したRC紙などは、その製造時の製造方向とそれに直交する方向で剛度が大きく異なる。
【0033】
直交する2方向の剛度の弱い方(Yとする)をより硬くするために原紙の厚さを厚くすることもできるが、同時にX方向の剛度も上昇し、搬送性と剛度を両立することが困難である。
【0034】
本発明者らは特定の記録媒体を特定の後処理し、その処理方法を調整することで、主にY方向の剛度を上げることができ、原紙膜厚を上げることなくY方向の剛度を十分な値に調整することが可能となり、剛度が特定の範囲のX、Y値になる時に、搬送性と画像の強度を両立することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0035】
まず、本発明の特定の剛度及びその測定方法に関して説明する。
インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントの直交する2方向(X、Y)に対する剛度は、X>Yであって、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことが好ましく、XについてはX<2.2mN・mが更に好ましく、X<2.1mN・mが最も好ましい。Yについては、Y>1.4mN・mが更に好ましく、Y>1.6mN・mが最も好ましい。X、Yとしては、X<2.2mN・m、且つY>1.4mN・mが更に好ましく、X<2.1mN・m、且つY>1.6mN・mが最も好ましい。
【0036】
また、剛度の関係としては、X、Yはなるべく近い方が好ましく(搬送と折り割れを両立し易い)、X−Y<0.5mN・mが好ましく、X/Yは1.3以下が好ましい。
【0037】
剛度の測定方法については、測定対象を幅38.1mm、長さ69.2mmの大きさで、直交する2方向に各々長方形に切り抜き、テーバー社製テーバー剛性度試験機MODEL150−Dで、JIS−P−8125またはISO2493に規定されている方法で、測定対象に15度曲げ力を加えることにより測定する。この場合、数字が大きいほど剛度が高いことを表す。
【0038】
本発明のインクジェットプリントの上記剛度を好ましい範囲内に調整する手段としては、記録媒体及び特定の後処理を施す方法等により達成される。
【0039】
まず、本発明の後処理について説明する。
最終画像には、プリントに樹脂層を形成する後処理工程が好ましい。
【0040】
樹脂層は、記録媒体のどの部分に形成してもよいが、表層に形成するのが好ましい。樹脂層は、必ずしも完全に製膜した層でなくてもよい。例えば、層中に無機微粒子が混在してもよい。
【0041】
このような樹脂層を形成する後処理工程としては、例えば、下記1)、2)が挙げられる。
【0042】
1)あらかじめ記録媒体に樹脂含有層があり、これを後処理工程で溶融もしくは軟化、もしくは製膜する方法があり、具合的には、加熱工程や、樹脂を溶解もしくは軟化させる溶媒を供給する方法がある。作業環境上は加熱工程が好ましい。これらの工程の効果を上げるために加圧工程を併用することが好ましい。
【0043】
2)後処理工程で画像に樹脂を供給し、その後樹脂を溶融もしくは軟化する方法がある。例えば、画像の全面もしくは部分に樹脂を液状もしくは粉状で供給したり、或いは、箔として供給する方法が挙げられる。この後、前述の樹脂を溶融、或いは軟化、或いは製膜する工程を行うものである。
【0044】
この場合、好ましいのは、2−1)画像全面もしくは部分に水系樹脂分散物を例えば、専用ノズルから供給し、更に上記1)の工程で処理する方法が挙げられる。また、2−2)画像に支持体上に樹脂層を形成した保護シートを別に用意し、画像と重ねて、保護シートの支持体を剥離、除去する方法も好ましい形態である。この場合、保護シートを除去せずに最終画像とする方法でもよい。特に好ましくは、上記の加熱工程を含む後処理である。
【0045】
加熱処理方法としては、特に制限はないが、加熱ローラ或いは加熱ベルトを用いることが好ましい。
【0046】
本発明で用いることのできる加熱処理方法には、本発明の効果が十分発揮されるだけのエネルギーを画像に与えればよいが、必要以上に高いエネルギーを与えると支持体の変型などが発生し、むしろ光沢感が悪化するため好ましくない。加熱する温度は、画像を平滑化しうる温度であればよく、60〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜160℃の範囲である。
【0047】
加熱は、プリンタ内蔵の加熱器で行っても、別に設けた加熱器で行ってもよい。加熱手段としては、加熱ローラを用いることが、ムラの発生をなくし、小スペースで、連続処理をするのに適しているため好ましい。また、これらの装置は、電子写真の加熱定着器を転用することができ、コスト的にも有利である。
【0048】
例えば、前述の加圧ローラの金属製の芯金内部に発熱体を内蔵した加熱ローラと圧着ローラとの間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、2つの加熱ローラで記録媒体を挟んで加熱してもよい。加熱ローラは、中空状のローラからなり、駆動手段により回転する。ローラ内には熱源として、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等からなる発熱体が内蔵されている。ローラは、熱伝導性の高い材料が好ましく、特には金属ローラが好ましい。ローラ表面は、汚染を防ぐためにフッ素樹脂コートされてることが好ましい。その他、耐熱シリコンを被覆したシリコンゴムローラを用いることができる。
【0049】
加熱ローラを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、1〜15mm/秒の範囲が好ましい。これは、高速処理性の観点以外に、画質の観点からも好ましい。
【0050】
より高い質感、光沢を得るために、加熱と同時、或いはその直後に前述の加圧処理を施すことが好ましい。
【0051】
また、本発明のインクジェット画像形成方法においては、インクジェットにより印字した後、加熱と共に加圧することが好ましいが、加圧工程における加圧条件が、0.5〜10MPaであることが、種々の記録媒体に対し高い光沢及び本発明の効果を発現する上で好ましい。圧力が0.5MPa未満では、本発明で所望する表層を形成することができない。また、圧力が10MPaを超えると、加圧の不均一性を引き起こし、特定部分での光沢の低下を引き起こすおそれがある。また、加圧する環境条件によっては、定着部材をインク成分或いは記録媒体表層のはがれ片等により汚染することもあり、また、定着器に与える負荷も大きくなり、長期にわたり安定した特性を維持することが困難となり好ましくない。
【0052】
また、本発明のインクジェット画像形成方法においては、加圧工程で用いる加圧部材の印字面に接する部材の表面粗さ(中心線平均粗さRa)が、200nm以下であることが好ましく、より好ましくはRaが、1〜200nmであり、特に好ましくは10〜200nmである。
【0053】
本発明においては、後処理での加圧を含む処理工程により、熱可塑性樹脂含有層を一定範囲で圧縮することができる。これにより良好な表層(保護層)が形成されるだけでなく、従来にない高い光沢の発現が可能となった。この時、重要なのは、後処理工程で加圧する際に、記録媒体印字面と接する定着部材表面の平滑性であり、Raとして200nm以下であれば高光沢感を損なうことがないことが分かった。Raが200nmを超えた部材を用いると、高い光沢が得られないばかりでなく、耐傷性、湿潤耐傷性や長期保存時、特に高温、高湿環境下での保存において、画像割れの発生を引き起こすおそれもあり、好ましくない。
【0054】
本発明でいう中心線平均粗さ(Ra)とは、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。すなわち、中心線平均粗さ(Ra)とは、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さL(本発明では2.5mm)の部分を抜き取り、カットオフ値0.8mmとして、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をY=f(X)で表した時、下式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0055】
【数1】
【0056】
中心線平均粗さ(Ra)の測定方法としては、25℃、65%RH環境下で加圧部材を24時間調湿したのち、該環境下で測定する。用いることのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0057】
図1に、本発明で用いることのできる加熱処理と加圧処理とを同時に行う加熱加圧ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す。また、図2には、本発明で用いることのできる加熱処理と加圧処理とを同時に行う加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の他の一例を示す。
【0058】
次いで、本発明に係るインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
本発明の記録媒体としては、空隙型、膨潤型、コート紙タイプを用いることができるが、本発明に係るインクジェット記録媒体では、熱可塑性樹脂を含有する表層を少なくとも有することが好ましいが、より具体的には、非透水性支持体上に、少なくともインク溶媒成分を主に吸収するインク吸収層と該表層を設けた構成であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る表層で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられ、中でもスチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。熱可塑性樹脂或いは微粒子は、モノマー組成及び、粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いてもよい。
【0060】
熱可塑性樹脂を選択するに際し、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0061】
インク受容性については、熱可塑性微粒子の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また10μmを越えると、支持体上に塗設する際にインク受容層に隣接する溶媒吸収層との接着性や、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の被膜強度の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹微粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。更に好ましくは、0.1〜1μmである。
【0062】
また、熱可塑性樹脂の選択の基準としてはガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。
【0063】
また、Tgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後溶融成膜するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。熱可塑性微粒子の好ましいTgは50〜150℃である。また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。
【0064】
熱可塑性微粒子は、環境適性の観点から、水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは好ましく用いることができる形態である。
【0065】
また、用いる熱可塑性微粒子は臭気及び安全性の観点から残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分質量に対して3%以下が好ましく、更に1%以下が好ましく、特には0.1%以下が好ましい。
【0066】
本発明に係る表層には、水溶性バインダーを含有することができる。
水溶性バインダーとしては、熱可塑性微粒子の1〜10%の範囲で用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は2種以上併用することも可能である。
【0067】
本発明で好ましく用いられる水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールである。本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0068】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0069】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0070】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0071】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0072】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報、同63−307979号公報に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0073】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0074】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0075】
本発明に係る表層においては、上記熱可塑性樹脂と共にフィラー(無機顔料)を用いることが好ましい。
【0076】
本発明で用いることのできるフィラー、すなわち無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0077】
無機顔料の平均粒径は、粒子そのもの或いは表層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0078】
無機顔料としては、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0079】
シリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられ、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカであり、中でも気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られる。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0080】
無機顔料は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機顔料の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0081】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーなどにより吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0082】
本発明においては、表層に熱可塑性樹脂と無機顔料とを含む構成が、インクジェット記録媒体の形態として最も好ましい。特に、好ましい理由として以下の点を挙げることができる。
【0083】
1)インク吸収速度が大きく、ビーディング、カラーブリード等の画質劣化が起こりにくく、高速印字適性を有している
2)画像表面強度が強い
3)画像保存時の重ねでの融着が起こりにくい
4)表層の塗布生産性に優れている
5)筆記性を有している
この場合、表層の熱可塑性微粒子と無機顔料の固形分質量比としては、熱可塑性微粒子及び無機顔料及び他の添加剤などにより個々に決めるのが好ましいが、本発明においては、熱可塑性樹脂(B)とフィラー(F)との比率(B/F)が、2/8〜8/2であることが好ましく、より好ましくは3/7〜7/3であり、更に好ましくは4/6〜6/4である。
【0084】
本発明に係る表層には、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0085】
本発明に係る表層の膜厚としては、3〜15μmであることが好ましい。
表層の膜厚の測定方法としては、表層を設けた記録媒体断面を正確に垂直方向に切断した後、光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡を用いて観察する方法を挙げることができる。
【0086】
本発明のインクジェット記録媒体においては、支持体と上記表層との間に、インク溶媒を吸収するインク吸収層を設けることが好ましい。
【0087】
記録媒体のインク吸収層としては、大きく別けて、膨潤型と空隙型とがある。膨潤型としては、親水性バインダーとして、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布しこれをインク吸収層としたものを用いることができる。
【0088】
空隙型としては、微粒子及び親水性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に、粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0089】
連続、或いは高速プリントに適性を持たせるには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0090】
以下、空隙型インク吸収層(空隙層ともいう)について更に詳細に説明する。空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、2種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を作製する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが特に好ましい。
【0091】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、前述の表層で用いられる無機顔料と同様に微粒子を用いることができる。
【0092】
また、親水性バインダーとしては、前述の表層で記載した水溶性バインダーと同様の化合物を挙げることができる。
【0093】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常、5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0094】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0095】
インク吸収層は、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0096】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当たり20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0097】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク溶媒吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョンと水溶性エポキシ化合物またはアセトアセチル化ポリビニルアルコールとを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク溶媒吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物またはアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0098】
上記ポリウレタン樹脂を用いたインク溶媒吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0099】
本発明においては、インクジェット記録媒体のインク吸収層全体の平均空隙率が40〜70%であること、或いは前述の表層の空隙率が30〜70%であることが好ましい。
【0100】
インク吸収能を有するインク吸収層全体、或いは表層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率といい、一つの方法としては、以下の式に従って求めることができる。
【0101】
空隙率=100×〔(全乾燥膜厚−塗布固形分膜厚)/(全乾燥膜厚)〕
また、下記の方法によっても、インク吸収層全体、或いは表層の空隙率を測定することができる。例えば、100μmポリエチレンテレフタレート上に、全インク吸収層或いは表層のみを塗布し、ブリストー測定による飽和転移量、或いは吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0102】
本発明に係る支持体について説明する。
本発明に係る支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙などの紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを張り合わせた複合支持体を用いることができる。
【0103】
上記支持体と空隙層の接着強度を大きくする等の目的で、空隙層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。
【0104】
更に、本発明のインクジェット画像記録媒体は必ずしも無色である必要はなく、着色されていてもよい。
【0105】
本発明のインクジェット画像記録媒体では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0106】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10〜70質量%以下が好ましい。
【0107】
上記パルプには不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0108】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0109】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0110】
原紙の坪量は、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0111】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0112】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0113】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0114】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0115】
特に、空隙層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0116】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0117】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は空隙層やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常空隙層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0118】
更に上記ポリエチレンで被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい
2.引き裂き強度はJIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であってもよい
5.表面粗さ:JIS−B−0601に規定された表面粗さが、基準長さ2.5mm当たり最大高さは10μm以下であることが好ましい
6.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%が好ましい
7.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*がL*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
8.表面光沢度:JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が10〜95%であることが好ましい
9.クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
10.中紙の含水率:中紙に対して通常2〜100質量%、好ましくは2〜6質量%である。
【0119】
原紙膜厚は、210〜240μmのものが好ましく用いられる。特に210〜225μmのものは特に好ましい
(その他の構成要素)
本発明のインクジェット画像形成方法においては、インクとして、染料インク、顔料インク、分散インク等、公知の各種インクを用いることができるが、特に、顔料インクを用いることが好ましい。
【0120】
画像形成に用いるインクとしては、水系インク組成物、油系インク組成物、固体(相変化)インク組成物等を用いることができるが、水系インク組成物(例えば、インク総質量あたり10質量%以上の水を含有する水系インクジェット記録液等)を特に好ましく用いることができる。
【0121】
着色剤としては、本発明においては、画像保存性の観点から顔料用いることが特徴である。顔料インク中の顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0122】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0123】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0124】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0125】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0126】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、或いはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩を挙げることができる。
【0127】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0128】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0129】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かではないが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を十分に皮膜中に分散しなければならない。この時顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0130】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0131】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0132】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。更に、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0133】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用してもよい。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0134】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0135】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0136】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0137】
特に、熱可塑性微粒子を添加することは、本発明の効果を得る上で好ましい。熱可塑性微粒子については、上記の記録媒体表層に添加することのできる熱可塑性樹脂或いは微粒子の説明で記載した種類を利用できる。特に、インクに添加しても増粘、沈澱等の起こらないものを適用するのが好ましい。熱可塑性微粒子の平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは、インク中の顔料の平均粒径の0.2倍〜2倍の範囲で選択すると安定性の観点で好ましい。添加する熱可塑性微粒子は、50℃〜200℃の範囲で溶融、軟化するものが好ましい。
【0138】
インク組成物は、その飛翔時の粘度として40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。
【0139】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0140】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0141】
本発明のインクジェット画像を形成するには、市販されているプリンタのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、及び加熱部、必要に応じて加圧部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンタセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0142】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式の何れでもよいが、顔料インクでの安定性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0143】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
《記録媒体の作製》
(シリカ分散液の調製)
一次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpHを2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げた。
【0145】
次に、カチオンポリマーP−1を1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)18Lに、上記シリカ分散液の69.4Lを撹拌しながら添加し、次いで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を、三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液を調製した。
【0146】
【化1】
【0147】
(下層用塗布液1の調製)
上記シリカ分散液600mlを40℃で撹拌しながら、以下の各添加剤を順次混合して下層用塗布液1を調製した。
【0148】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の
10%水溶液 6ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の
7%水溶液 185ml
サポニン(50%水溶液) 適量
純水 全量を1000mlに仕上げた
(表層用塗布液1の調製)
下層用塗布液1を調製後、43℃で30分撹拌しながら、そこへ熱可塑性微粒子(アクリル系ラテックス、Tg82℃、個数平均粒子径160nm、固形分40%)を、熱可塑性微粒子/フィラー(シリカ)固形分比が55/45になるように15分かけて添加した。
【0149】
上記混合した後、40℃で粘度が45mPa・sとなるように適宜純水を加えて、表層用塗布液1を調製した。
【0150】
(記録媒体1の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが194μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタン含有)に、支持体側から第1層とし上記下層塗布液1をスライドホッパーで塗布した後、その上に第2層目として上記表層用塗布液1を、10μmフィルターにて濾過後、43℃にて、10時間停滞した後、スライドホッパーにて塗布、乾燥して記録媒体1を作製した。その際、シリカ付き量(固形分/m2)は下層のシリカ付き量(固形分/m2)が18g、表層のシリカ付き量(固形分/m2)が3gになるように塗布量を調整した。尚、塗布液は40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿して試料を巻き取った。尚、下層の乾燥膜厚は30μm、表層の乾燥膜厚は10μmとなるように塗布量を制御した。この記録媒体1をロール幅210mm、長さ80mのロール状に加工した。
【0151】
(記録媒体3、5、7、8の作製)
記録媒体1の作製において、紙支持体の厚みを、各々213μm、221μm、231μm、242μmに替えた以外は同様にして、下層用塗布液1及び表層用塗布液1を塗布、乾燥して、記録媒体3、5、7、8を作製した。
【0152】
(記録媒体2の作製)
表層用塗布液1の熱可塑性微粒子/フィラー(シリカ)固形分比を65/35にし、且つ、表層のシリカ付き量(固形分/m2)が2.5gになるように塗布量を調整し、下層用塗布液1と共に記録媒体1で用いた紙支持体上に同様に塗布、乾燥し、記録媒体2を作製した。
【0153】
(記録媒体4、6の作製)
記録媒体2の作製において、紙支持体の厚みを、各々213μm、221μmに替えた以外は同様にして、塗布、乾燥し、記録媒体4、6を作製した。
【0154】
(比較用記録媒体9の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体の厚みが213μmである支持体上に、下記成分の水溶液を塗布後、約5℃で20秒間冷却セットし、50℃の温風で乾燥した。
【0155】
(比較用記録媒体10、11の作製)
記録媒体9の作製において、紙支持体の厚みを、各々221μm、256μmに替えた以外は同様にして、塗布、乾燥して、記録媒体10、11を作製した。
【0156】
《インクの調製》
〔顔料インクセットの調製〕
(顔料分散液の調製)
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0157】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0158】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0159】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0160】
(顔料インクセットの調製)
〈イエロー濃インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0161】
〈イエロー淡インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0162】
〈マゼンタ濃インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0163】
〈マゼンタ淡インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0164】
〈シアン濃インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるシアン濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0165】
〈シアン淡インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.2質量%
イオン交換水 62.8質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるシアン淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γは33mN/mであった。
【0166】
〈ブラック濃インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるブラック濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0167】
〈ブラック淡インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 62.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるブラック淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0168】
《インクジェット画像形成》
図1に記載の加圧処理と加熱処理とを同時に行う加熱加圧ローラ対を有するインクジェットプリンタに、前記顔料インクセットをセットし、前記作製した各記録媒体(記録媒体1〜8)をシート供給し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのベタ画像、縦及び横に1cm幅でY、M、C、B、G、R、Bkの帯を各々描いた格子状テストチャートを出力した。その後、装置内の加熱加圧定着器(加熱加圧ローラ対)にて、定着器の表面温度を110℃にて加熱加圧処理を行った。
【0169】
この際、出力条件(出力速度)としては、下記条件で行った。
出力条件1:1.5m2/時間出力
尚、加熱加圧ローラ対のうち、記録媒体の表層に接す面側に配置した加熱加圧ローラは、表面粗さが100nmのハロゲンヒーターを内蔵し、被覆層を有する金属ローラを用いた。
【0170】
尚、記録媒体9〜11については、加熱、加圧の定着処理は行わなかった。
以上より得られた画像(画像No.1〜11)を用いて以下の評価を行った。
【0171】
《剛度測定》
剛度の測定方法については、測定対象を幅38.1mm、長さ69.2mmの大きさでプリントの直交する2方向に各々長方形に切り抜き、テーバー社製テーバー剛性度試験機MODEL150−Dで、JIS−P−8125に規定されている測定方法に則り、15度曲げ力を加えた時の値を測定した。
【0172】
《画像折り割れ》
得られた画像を210mm四方のプリントに加工し、画像を条件A(15℃、20%の環境に12時間放置)、B(23℃、20%の環境に12時間放置)、C(23℃、50%の環境に12時間放置)の3種類の環境に放置した後、記録媒体搬送方向と、それと直交する方向の両方について各々端部(両端)を持ち画像を自重で曲げた。
【0173】
この時、持った端部周辺の折り割れ故障を観察した。
5 A,B,Cとも故障なし
4 Aでのみ折り割れ故障が両端計で〜5本発生
3 A,Bで折り割れ故障が両端計で〜5本発生
2 A,B,Cで折り割れ故障が両端計で〜5本発生
1 A,B,Cで折り割れ故障が両端計で6〜10本発生
《搬送性》
図1に記載のインクジェットプリンタにて、前記記録媒体を連続プリントし、その搬送性をみた。
【0174】
5 搬送不良が発生しない
4 搬送不良によりプリント0.2%程度にわずかな傷が発生
3 搬送不良によりプリント0.5%程度にわずかな傷が発生
2 搬送不良により、プリントがプリンタ内に滞留してしまい、放置するとプリンタが止まる。
【0175】
1 搬送不良(ジャム)が発生しプリンタが止まる。
以上の評価結果を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
表1より、本発明の試料は、扱い時における画像折り割れ、搬送性が比較例に対して優れていることが明らかである。特に、紙支持体の厚みが特に好ましい範囲である、記録媒体5、6は画像折り割れと搬送性が高度に両立していることが分かる。
【0178】
【発明の効果】
本発明により、搬送性の良好な画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体、並びに、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明で用いられるインクジェット記録装置の他の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
1、1a 記録媒体
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラ対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 圧着ローラ
43 発熱体
44 加熱ベルト
45 下部圧着ベルト
46 従動ローラ
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラ対
72 第2のローラ対
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリント、インクジェット記録媒体、及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンタ技術、インク技術、専用記録媒体技術の向上と相まって写真画質と呼ばれる様になっている。画質の向上に伴い、インクジェット画像の保存性が従来の銀塩写真と比較されるようになり、多くの染料インクにおいて、インクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や耐酸化性ガス性への弱さといった色剤特有の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
一方、染料インク画像の保存性を改良するため、顔料インクを用いることが多く提案されている。しかし、顔料インクの場合、銀塩写真のような光沢感が得られなかったり、ブロンジングと呼ばれる金属光沢が見られる場合があり好ましくない。また、単に顔料インクを用いるだけでは十分な画像保存性が得られないのが現状である。
【0004】
インクジェット記録画像の画像保存性向上を目的に現在まで多くの提案がなされている。インクジェット記録媒体としては、記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後、熱可塑性有機高分子粒子を溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの記録媒体はインク吸収速度が不十分であり、高速印字適性が不足している。
【0006】
更に、熱可塑性樹脂含有層に無機顔料を一定量添加し、インク吸収性を改善した技術が開示されている(例えば、特許文献6、7参照)。また、高堅牢性の顔料インクを用いて、印字後加熱定着処理により上記顔料インクの課題を改善する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記公報記載には、本発明の目的であるプリンタ搬送性と画像の折り割れ故障低減のために、最終画像の直交する2方向に対する剛度を特定の範囲に調整することについてなんら記載はない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−222381号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平4−21446号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−315448号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平11−5362号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平11−192775号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2002−234246号公報
【0014】
【特許文献7】
特開2002−234248号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、搬送性の良好な画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【0016】
第2の目的は、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0018】
1.インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントであって、該プリントの直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェットプリント。
【0019】
2.前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする前記1項に記載のインクジェットプリント。
【0020】
3.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記1項に記載のインクジェットプリント。
【0021】
4.インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録媒体であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0022】
5.前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする前記4項に記載のインクジェット記録媒体。
【0023】
6.前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含有することを特徴とする前記4項に記載のインクジェット記録媒体。
【0024】
7.前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする前記4〜6項の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0025】
8.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記4〜6項の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0026】
9.インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録方法であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0027】
10.前記後処理工程が、加熱工程を含むことを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録方法。
【0028】
11.前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする前記9項に記載のインクジェット記録方法。
【0029】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、インクジェット記録媒体(以下、単に記録媒体ともいう)の諸特性の調整、或いは印字後の後処理工程の条件を制御することにより、上記課題を解決するに至ったものである。
【0030】
記録媒体のプリンタ内での搬送性を円滑に行うためには、画像は適度に柔軟である必要がある。特に画像保存性向上や、光沢発現等の目的に後処理をする場合は、余計にプリンタ内の搬送が複雑であり、そのため、より画像の柔軟性が求められる。
【0031】
一方、最終画像は、強度を保つためある程度の硬さが必要であり、とりわけ大サイズの画像では、端部を持つとプリント自重がかかり折り割れ故障を発生しやすい。
【0032】
通常、プリントの剛度は原紙(基材)の剛度によるところが多く、紙を用いた基材、特に基材両面をポリオレフィン等で被覆したRC紙などは、その製造時の製造方向とそれに直交する方向で剛度が大きく異なる。
【0033】
直交する2方向の剛度の弱い方(Yとする)をより硬くするために原紙の厚さを厚くすることもできるが、同時にX方向の剛度も上昇し、搬送性と剛度を両立することが困難である。
【0034】
本発明者らは特定の記録媒体を特定の後処理し、その処理方法を調整することで、主にY方向の剛度を上げることができ、原紙膜厚を上げることなくY方向の剛度を十分な値に調整することが可能となり、剛度が特定の範囲のX、Y値になる時に、搬送性と画像の強度を両立することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0035】
まず、本発明の特定の剛度及びその測定方法に関して説明する。
インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントの直交する2方向(X、Y)に対する剛度は、X>Yであって、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことが好ましく、XについてはX<2.2mN・mが更に好ましく、X<2.1mN・mが最も好ましい。Yについては、Y>1.4mN・mが更に好ましく、Y>1.6mN・mが最も好ましい。X、Yとしては、X<2.2mN・m、且つY>1.4mN・mが更に好ましく、X<2.1mN・m、且つY>1.6mN・mが最も好ましい。
【0036】
また、剛度の関係としては、X、Yはなるべく近い方が好ましく(搬送と折り割れを両立し易い)、X−Y<0.5mN・mが好ましく、X/Yは1.3以下が好ましい。
【0037】
剛度の測定方法については、測定対象を幅38.1mm、長さ69.2mmの大きさで、直交する2方向に各々長方形に切り抜き、テーバー社製テーバー剛性度試験機MODEL150−Dで、JIS−P−8125またはISO2493に規定されている方法で、測定対象に15度曲げ力を加えることにより測定する。この場合、数字が大きいほど剛度が高いことを表す。
【0038】
本発明のインクジェットプリントの上記剛度を好ましい範囲内に調整する手段としては、記録媒体及び特定の後処理を施す方法等により達成される。
【0039】
まず、本発明の後処理について説明する。
最終画像には、プリントに樹脂層を形成する後処理工程が好ましい。
【0040】
樹脂層は、記録媒体のどの部分に形成してもよいが、表層に形成するのが好ましい。樹脂層は、必ずしも完全に製膜した層でなくてもよい。例えば、層中に無機微粒子が混在してもよい。
【0041】
このような樹脂層を形成する後処理工程としては、例えば、下記1)、2)が挙げられる。
【0042】
1)あらかじめ記録媒体に樹脂含有層があり、これを後処理工程で溶融もしくは軟化、もしくは製膜する方法があり、具合的には、加熱工程や、樹脂を溶解もしくは軟化させる溶媒を供給する方法がある。作業環境上は加熱工程が好ましい。これらの工程の効果を上げるために加圧工程を併用することが好ましい。
【0043】
2)後処理工程で画像に樹脂を供給し、その後樹脂を溶融もしくは軟化する方法がある。例えば、画像の全面もしくは部分に樹脂を液状もしくは粉状で供給したり、或いは、箔として供給する方法が挙げられる。この後、前述の樹脂を溶融、或いは軟化、或いは製膜する工程を行うものである。
【0044】
この場合、好ましいのは、2−1)画像全面もしくは部分に水系樹脂分散物を例えば、専用ノズルから供給し、更に上記1)の工程で処理する方法が挙げられる。また、2−2)画像に支持体上に樹脂層を形成した保護シートを別に用意し、画像と重ねて、保護シートの支持体を剥離、除去する方法も好ましい形態である。この場合、保護シートを除去せずに最終画像とする方法でもよい。特に好ましくは、上記の加熱工程を含む後処理である。
【0045】
加熱処理方法としては、特に制限はないが、加熱ローラ或いは加熱ベルトを用いることが好ましい。
【0046】
本発明で用いることのできる加熱処理方法には、本発明の効果が十分発揮されるだけのエネルギーを画像に与えればよいが、必要以上に高いエネルギーを与えると支持体の変型などが発生し、むしろ光沢感が悪化するため好ましくない。加熱する温度は、画像を平滑化しうる温度であればよく、60〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜160℃の範囲である。
【0047】
加熱は、プリンタ内蔵の加熱器で行っても、別に設けた加熱器で行ってもよい。加熱手段としては、加熱ローラを用いることが、ムラの発生をなくし、小スペースで、連続処理をするのに適しているため好ましい。また、これらの装置は、電子写真の加熱定着器を転用することができ、コスト的にも有利である。
【0048】
例えば、前述の加圧ローラの金属製の芯金内部に発熱体を内蔵した加熱ローラと圧着ローラとの間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、2つの加熱ローラで記録媒体を挟んで加熱してもよい。加熱ローラは、中空状のローラからなり、駆動手段により回転する。ローラ内には熱源として、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等からなる発熱体が内蔵されている。ローラは、熱伝導性の高い材料が好ましく、特には金属ローラが好ましい。ローラ表面は、汚染を防ぐためにフッ素樹脂コートされてることが好ましい。その他、耐熱シリコンを被覆したシリコンゴムローラを用いることができる。
【0049】
加熱ローラを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、1〜15mm/秒の範囲が好ましい。これは、高速処理性の観点以外に、画質の観点からも好ましい。
【0050】
より高い質感、光沢を得るために、加熱と同時、或いはその直後に前述の加圧処理を施すことが好ましい。
【0051】
また、本発明のインクジェット画像形成方法においては、インクジェットにより印字した後、加熱と共に加圧することが好ましいが、加圧工程における加圧条件が、0.5〜10MPaであることが、種々の記録媒体に対し高い光沢及び本発明の効果を発現する上で好ましい。圧力が0.5MPa未満では、本発明で所望する表層を形成することができない。また、圧力が10MPaを超えると、加圧の不均一性を引き起こし、特定部分での光沢の低下を引き起こすおそれがある。また、加圧する環境条件によっては、定着部材をインク成分或いは記録媒体表層のはがれ片等により汚染することもあり、また、定着器に与える負荷も大きくなり、長期にわたり安定した特性を維持することが困難となり好ましくない。
【0052】
また、本発明のインクジェット画像形成方法においては、加圧工程で用いる加圧部材の印字面に接する部材の表面粗さ(中心線平均粗さRa)が、200nm以下であることが好ましく、より好ましくはRaが、1〜200nmであり、特に好ましくは10〜200nmである。
【0053】
本発明においては、後処理での加圧を含む処理工程により、熱可塑性樹脂含有層を一定範囲で圧縮することができる。これにより良好な表層(保護層)が形成されるだけでなく、従来にない高い光沢の発現が可能となった。この時、重要なのは、後処理工程で加圧する際に、記録媒体印字面と接する定着部材表面の平滑性であり、Raとして200nm以下であれば高光沢感を損なうことがないことが分かった。Raが200nmを超えた部材を用いると、高い光沢が得られないばかりでなく、耐傷性、湿潤耐傷性や長期保存時、特に高温、高湿環境下での保存において、画像割れの発生を引き起こすおそれもあり、好ましくない。
【0054】
本発明でいう中心線平均粗さ(Ra)とは、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。すなわち、中心線平均粗さ(Ra)とは、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さL(本発明では2.5mm)の部分を抜き取り、カットオフ値0.8mmとして、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をY=f(X)で表した時、下式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0055】
【数1】
【0056】
中心線平均粗さ(Ra)の測定方法としては、25℃、65%RH環境下で加圧部材を24時間調湿したのち、該環境下で測定する。用いることのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0057】
図1に、本発明で用いることのできる加熱処理と加圧処理とを同時に行う加熱加圧ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す。また、図2には、本発明で用いることのできる加熱処理と加圧処理とを同時に行う加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の他の一例を示す。
【0058】
次いで、本発明に係るインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
本発明の記録媒体としては、空隙型、膨潤型、コート紙タイプを用いることができるが、本発明に係るインクジェット記録媒体では、熱可塑性樹脂を含有する表層を少なくとも有することが好ましいが、より具体的には、非透水性支持体上に、少なくともインク溶媒成分を主に吸収するインク吸収層と該表層を設けた構成であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る表層で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられ、中でもスチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。熱可塑性樹脂或いは微粒子は、モノマー組成及び、粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いてもよい。
【0060】
熱可塑性樹脂を選択するに際し、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0061】
インク受容性については、熱可塑性微粒子の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また10μmを越えると、支持体上に塗設する際にインク受容層に隣接する溶媒吸収層との接着性や、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の被膜強度の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹微粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。更に好ましくは、0.1〜1μmである。
【0062】
また、熱可塑性樹脂の選択の基準としてはガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。
【0063】
また、Tgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後溶融成膜するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。熱可塑性微粒子の好ましいTgは50〜150℃である。また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。
【0064】
熱可塑性微粒子は、環境適性の観点から、水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは好ましく用いることができる形態である。
【0065】
また、用いる熱可塑性微粒子は臭気及び安全性の観点から残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分質量に対して3%以下が好ましく、更に1%以下が好ましく、特には0.1%以下が好ましい。
【0066】
本発明に係る表層には、水溶性バインダーを含有することができる。
水溶性バインダーとしては、熱可塑性微粒子の1〜10%の範囲で用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は2種以上併用することも可能である。
【0067】
本発明で好ましく用いられる水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールである。本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0068】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0069】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0070】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0071】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0072】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報、同63−307979号公報に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0073】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0074】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0075】
本発明に係る表層においては、上記熱可塑性樹脂と共にフィラー(無機顔料)を用いることが好ましい。
【0076】
本発明で用いることのできるフィラー、すなわち無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0077】
無機顔料の平均粒径は、粒子そのもの或いは表層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0078】
無機顔料としては、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0079】
シリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられ、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカであり、中でも気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られる。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0080】
無機顔料は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機顔料の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0081】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーなどにより吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0082】
本発明においては、表層に熱可塑性樹脂と無機顔料とを含む構成が、インクジェット記録媒体の形態として最も好ましい。特に、好ましい理由として以下の点を挙げることができる。
【0083】
1)インク吸収速度が大きく、ビーディング、カラーブリード等の画質劣化が起こりにくく、高速印字適性を有している
2)画像表面強度が強い
3)画像保存時の重ねでの融着が起こりにくい
4)表層の塗布生産性に優れている
5)筆記性を有している
この場合、表層の熱可塑性微粒子と無機顔料の固形分質量比としては、熱可塑性微粒子及び無機顔料及び他の添加剤などにより個々に決めるのが好ましいが、本発明においては、熱可塑性樹脂(B)とフィラー(F)との比率(B/F)が、2/8〜8/2であることが好ましく、より好ましくは3/7〜7/3であり、更に好ましくは4/6〜6/4である。
【0084】
本発明に係る表層には、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0085】
本発明に係る表層の膜厚としては、3〜15μmであることが好ましい。
表層の膜厚の測定方法としては、表層を設けた記録媒体断面を正確に垂直方向に切断した後、光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡を用いて観察する方法を挙げることができる。
【0086】
本発明のインクジェット記録媒体においては、支持体と上記表層との間に、インク溶媒を吸収するインク吸収層を設けることが好ましい。
【0087】
記録媒体のインク吸収層としては、大きく別けて、膨潤型と空隙型とがある。膨潤型としては、親水性バインダーとして、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布しこれをインク吸収層としたものを用いることができる。
【0088】
空隙型としては、微粒子及び親水性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に、粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0089】
連続、或いは高速プリントに適性を持たせるには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0090】
以下、空隙型インク吸収層(空隙層ともいう)について更に詳細に説明する。空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、2種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を作製する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが特に好ましい。
【0091】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、前述の表層で用いられる無機顔料と同様に微粒子を用いることができる。
【0092】
また、親水性バインダーとしては、前述の表層で記載した水溶性バインダーと同様の化合物を挙げることができる。
【0093】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常、5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0094】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0095】
インク吸収層は、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0096】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当たり20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0097】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク溶媒吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョンと水溶性エポキシ化合物またはアセトアセチル化ポリビニルアルコールとを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク溶媒吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物またはアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0098】
上記ポリウレタン樹脂を用いたインク溶媒吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0099】
本発明においては、インクジェット記録媒体のインク吸収層全体の平均空隙率が40〜70%であること、或いは前述の表層の空隙率が30〜70%であることが好ましい。
【0100】
インク吸収能を有するインク吸収層全体、或いは表層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率といい、一つの方法としては、以下の式に従って求めることができる。
【0101】
空隙率=100×〔(全乾燥膜厚−塗布固形分膜厚)/(全乾燥膜厚)〕
また、下記の方法によっても、インク吸収層全体、或いは表層の空隙率を測定することができる。例えば、100μmポリエチレンテレフタレート上に、全インク吸収層或いは表層のみを塗布し、ブリストー測定による飽和転移量、或いは吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0102】
本発明に係る支持体について説明する。
本発明に係る支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙などの紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを張り合わせた複合支持体を用いることができる。
【0103】
上記支持体と空隙層の接着強度を大きくする等の目的で、空隙層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。
【0104】
更に、本発明のインクジェット画像記録媒体は必ずしも無色である必要はなく、着色されていてもよい。
【0105】
本発明のインクジェット画像記録媒体では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0106】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10〜70質量%以下が好ましい。
【0107】
上記パルプには不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0108】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0109】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0110】
原紙の坪量は、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0111】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0112】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0113】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0114】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0115】
特に、空隙層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0116】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0117】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は空隙層やバック層を設けた後で低湿及び高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常空隙層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0118】
更に上記ポリエチレンで被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい
2.引き裂き強度はJIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であってもよい
5.表面粗さ:JIS−B−0601に規定された表面粗さが、基準長さ2.5mm当たり最大高さは10μm以下であることが好ましい
6.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%が好ましい
7.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*がL*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
8.表面光沢度:JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が10〜95%であることが好ましい
9.クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
10.中紙の含水率:中紙に対して通常2〜100質量%、好ましくは2〜6質量%である。
【0119】
原紙膜厚は、210〜240μmのものが好ましく用いられる。特に210〜225μmのものは特に好ましい
(その他の構成要素)
本発明のインクジェット画像形成方法においては、インクとして、染料インク、顔料インク、分散インク等、公知の各種インクを用いることができるが、特に、顔料インクを用いることが好ましい。
【0120】
画像形成に用いるインクとしては、水系インク組成物、油系インク組成物、固体(相変化)インク組成物等を用いることができるが、水系インク組成物(例えば、インク総質量あたり10質量%以上の水を含有する水系インクジェット記録液等)を特に好ましく用いることができる。
【0121】
着色剤としては、本発明においては、画像保存性の観点から顔料用いることが特徴である。顔料インク中の顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0122】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0123】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0124】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0125】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0126】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、或いはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩を挙げることができる。
【0127】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0128】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0129】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かではないが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を十分に皮膜中に分散しなければならない。この時顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0130】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0131】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0132】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。更に、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0133】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用してもよい。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0134】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0135】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0136】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0137】
特に、熱可塑性微粒子を添加することは、本発明の効果を得る上で好ましい。熱可塑性微粒子については、上記の記録媒体表層に添加することのできる熱可塑性樹脂或いは微粒子の説明で記載した種類を利用できる。特に、インクに添加しても増粘、沈澱等の起こらないものを適用するのが好ましい。熱可塑性微粒子の平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは、インク中の顔料の平均粒径の0.2倍〜2倍の範囲で選択すると安定性の観点で好ましい。添加する熱可塑性微粒子は、50℃〜200℃の範囲で溶融、軟化するものが好ましい。
【0138】
インク組成物は、その飛翔時の粘度として40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。
【0139】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0140】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0141】
本発明のインクジェット画像を形成するには、市販されているプリンタのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、及び加熱部、必要に応じて加圧部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンタセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0142】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式の何れでもよいが、顔料インクでの安定性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0143】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
《記録媒体の作製》
(シリカ分散液の調製)
一次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpHを2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げた。
【0145】
次に、カチオンポリマーP−1を1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)18Lに、上記シリカ分散液の69.4Lを撹拌しながら添加し、次いで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を、三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液を調製した。
【0146】
【化1】
【0147】
(下層用塗布液1の調製)
上記シリカ分散液600mlを40℃で撹拌しながら、以下の各添加剤を順次混合して下層用塗布液1を調製した。
【0148】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の
10%水溶液 6ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の
7%水溶液 185ml
サポニン(50%水溶液) 適量
純水 全量を1000mlに仕上げた
(表層用塗布液1の調製)
下層用塗布液1を調製後、43℃で30分撹拌しながら、そこへ熱可塑性微粒子(アクリル系ラテックス、Tg82℃、個数平均粒子径160nm、固形分40%)を、熱可塑性微粒子/フィラー(シリカ)固形分比が55/45になるように15分かけて添加した。
【0149】
上記混合した後、40℃で粘度が45mPa・sとなるように適宜純水を加えて、表層用塗布液1を調製した。
【0150】
(記録媒体1の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが194μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタン含有)に、支持体側から第1層とし上記下層塗布液1をスライドホッパーで塗布した後、その上に第2層目として上記表層用塗布液1を、10μmフィルターにて濾過後、43℃にて、10時間停滞した後、スライドホッパーにて塗布、乾燥して記録媒体1を作製した。その際、シリカ付き量(固形分/m2)は下層のシリカ付き量(固形分/m2)が18g、表層のシリカ付き量(固形分/m2)が3gになるように塗布量を調整した。尚、塗布液は40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿して試料を巻き取った。尚、下層の乾燥膜厚は30μm、表層の乾燥膜厚は10μmとなるように塗布量を制御した。この記録媒体1をロール幅210mm、長さ80mのロール状に加工した。
【0151】
(記録媒体3、5、7、8の作製)
記録媒体1の作製において、紙支持体の厚みを、各々213μm、221μm、231μm、242μmに替えた以外は同様にして、下層用塗布液1及び表層用塗布液1を塗布、乾燥して、記録媒体3、5、7、8を作製した。
【0152】
(記録媒体2の作製)
表層用塗布液1の熱可塑性微粒子/フィラー(シリカ)固形分比を65/35にし、且つ、表層のシリカ付き量(固形分/m2)が2.5gになるように塗布量を調整し、下層用塗布液1と共に記録媒体1で用いた紙支持体上に同様に塗布、乾燥し、記録媒体2を作製した。
【0153】
(記録媒体4、6の作製)
記録媒体2の作製において、紙支持体の厚みを、各々213μm、221μmに替えた以外は同様にして、塗布、乾燥し、記録媒体4、6を作製した。
【0154】
(比較用記録媒体9の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体の厚みが213μmである支持体上に、下記成分の水溶液を塗布後、約5℃で20秒間冷却セットし、50℃の温風で乾燥した。
【0155】
(比較用記録媒体10、11の作製)
記録媒体9の作製において、紙支持体の厚みを、各々221μm、256μmに替えた以外は同様にして、塗布、乾燥して、記録媒体10、11を作製した。
【0156】
《インクの調製》
〔顔料インクセットの調製〕
(顔料分散液の調製)
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0157】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0158】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0159】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0160】
(顔料インクセットの調製)
〈イエロー濃インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0161】
〈イエロー淡インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0162】
〈マゼンタ濃インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0163】
〈マゼンタ淡インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0164】
〈シアン濃インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるシアン濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0165】
〈シアン淡インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.2質量%
イオン交換水 62.8質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるシアン淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γは33mN/mであった。
【0166】
〈ブラック濃インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるブラック濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0167】
〈ブラック淡インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 62.9質量%
以上の各組成物を混合、撹拌し、1μmフィルターで濾過し、本発明の水性顔料インクであるブラック淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0168】
《インクジェット画像形成》
図1に記載の加圧処理と加熱処理とを同時に行う加熱加圧ローラ対を有するインクジェットプリンタに、前記顔料インクセットをセットし、前記作製した各記録媒体(記録媒体1〜8)をシート供給し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのベタ画像、縦及び横に1cm幅でY、M、C、B、G、R、Bkの帯を各々描いた格子状テストチャートを出力した。その後、装置内の加熱加圧定着器(加熱加圧ローラ対)にて、定着器の表面温度を110℃にて加熱加圧処理を行った。
【0169】
この際、出力条件(出力速度)としては、下記条件で行った。
出力条件1:1.5m2/時間出力
尚、加熱加圧ローラ対のうち、記録媒体の表層に接す面側に配置した加熱加圧ローラは、表面粗さが100nmのハロゲンヒーターを内蔵し、被覆層を有する金属ローラを用いた。
【0170】
尚、記録媒体9〜11については、加熱、加圧の定着処理は行わなかった。
以上より得られた画像(画像No.1〜11)を用いて以下の評価を行った。
【0171】
《剛度測定》
剛度の測定方法については、測定対象を幅38.1mm、長さ69.2mmの大きさでプリントの直交する2方向に各々長方形に切り抜き、テーバー社製テーバー剛性度試験機MODEL150−Dで、JIS−P−8125に規定されている測定方法に則り、15度曲げ力を加えた時の値を測定した。
【0172】
《画像折り割れ》
得られた画像を210mm四方のプリントに加工し、画像を条件A(15℃、20%の環境に12時間放置)、B(23℃、20%の環境に12時間放置)、C(23℃、50%の環境に12時間放置)の3種類の環境に放置した後、記録媒体搬送方向と、それと直交する方向の両方について各々端部(両端)を持ち画像を自重で曲げた。
【0173】
この時、持った端部周辺の折り割れ故障を観察した。
5 A,B,Cとも故障なし
4 Aでのみ折り割れ故障が両端計で〜5本発生
3 A,Bで折り割れ故障が両端計で〜5本発生
2 A,B,Cで折り割れ故障が両端計で〜5本発生
1 A,B,Cで折り割れ故障が両端計で6〜10本発生
《搬送性》
図1に記載のインクジェットプリンタにて、前記記録媒体を連続プリントし、その搬送性をみた。
【0174】
5 搬送不良が発生しない
4 搬送不良によりプリント0.2%程度にわずかな傷が発生
3 搬送不良によりプリント0.5%程度にわずかな傷が発生
2 搬送不良により、プリントがプリンタ内に滞留してしまい、放置するとプリンタが止まる。
【0175】
1 搬送不良(ジャム)が発生しプリンタが止まる。
以上の評価結果を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
表1より、本発明の試料は、扱い時における画像折り割れ、搬送性が比較例に対して優れていることが明らかである。特に、紙支持体の厚みが特に好ましい範囲である、記録媒体5、6は画像折り割れと搬送性が高度に両立していることが分かる。
【0178】
【発明の効果】
本発明により、搬送性の良好な画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体、並びに、画像の折り割れ故障の発生しにくい画像及び、この画像を作成する方法、及びそれに用いることのできる記録媒体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明で用いられるインクジェット記録装置の他の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
1、1a 記録媒体
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラ対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 圧着ローラ
43 発熱体
44 加熱ベルト
45 下部圧着ベルト
46 従動ローラ
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラ対
72 第2のローラ対
Claims (11)
- インクジェット記録後、後処理工程を行ったインクジェットプリントであって、該プリントの直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェットプリント。
- 前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリント。
- 前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリント。
- インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録媒体であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
- 前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録媒体。
- 前記インクジェット記録媒体の支持体から最も離れた層に少なくとも熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録媒体。
- 前記後処理工程が加熱工程を含むことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
- 前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
- インクジェット記録後、後処理工程を行うインクジェット記録方法であって、最終画像の直交する2方向に対する剛度、X>YであるX、Yについて、X<2.5mN・m、且つY>1.2mN・mである関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記後処理工程が、加熱工程を含むことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクジェット記録が、顔料インクを用いて記録することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
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