JP2013188874A - 液滴吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】下地膜を使用する箇所に適した機能に制御することができる液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】ノズル孔12を有するノズル形成基板10およびノズル孔内部に下地膜14を形成する下地膜形成工程と、ノズル形成基板10表面の下地膜14に高エネルギー線を照射する照射工程と、ノズル形成基板10表面に撥水膜18を形成する表面撥水膜形成工程と、を有し、高エネルギー線がコヒーレントな光である液滴吐出ヘッドの製造方法である。
【選択図】図5

Description

本発明は液滴吐出ヘッドの製造方法に係り、特に、液滴吐出ヘッドのノズルプレート表面に撥水膜を有する液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。
液滴吐出装置、例えば、インクジェット記録装置で用いられる液滴吐出ヘッドでは、ノズルプレート表面にインクが付着していると、ノズルから吐出されるインク液滴が影響を受けて、インク液滴の吐出方向にばらつきが生じることがある。インクが付着すると、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることが困難となり、画像品質が劣化する原因となる。
そこで、ノズルプレート表面にインクが付着することを防止し吐出性能を向上させるため、ノズルプレート表面には撥水膜が形成されている。ノズルプレート表面に撥水膜を形成することにより、ノズル部でメニスカスを形成し、ノズルから吐出させるための液体がノズルからあふれ出ることを防止することができる。ノズルプレート表面に撥水膜がないと、吐出液体が表面にあふれ出し、正確な吐出体積や吐出方向を制御することができない。また、ノズルプレート表面に紙粉などの屑や異物、液体の乾燥物などが付着固化しにくくすることができる。
液滴吐出ヘッドの吐出性能の信頼性を実現する上で、ノズルプレートに形成された撥水膜の耐久性は寿命を支配する重要なパラメータとなる。撥水膜の寿命は、(1)機械的こすりなどのメカニカルな耐擦性と(2)インクなどの化学耐久性の2つに分けることができる。これらの耐久性を向上させるために、下地膜と撥水膜の結合基密度を増加させることが行なわれている。
例えば、下記の特許文献1には、ノズルプレート表面に撥水材料と光触媒性材料を混合配置し、UV光をノズルプレート表面の任意の部分に照射することで、親水化することが記載されている。また、下記の特許文献2、3には、プラズマ重合膜(撥水膜の下地膜)にUV照射して撥水膜の密着性を向上させることが記載されている。
特開2010−36580号公報 特開2008−94010号公報 特開2008−105231号公報
上記特許文献1から3は、ノズルプレート表面の撥水材料との密着性を向上させることを目的としている。一方で、ノズル内部は、インクが通過する流路であるため、化学耐久性を有する内部保護膜を有することが望まれている。
一般的なUV照射やプラズマ照射などで表面処理を行った場合、ノズル表面の下地機能膜の表面活性化と同時に内部保護膜の表面活性化も進めてしまう。これにより、内部保護膜の表面活性が高い状態となるため、インク成分と反応しやすくなり、結果的に化学耐性が大幅に劣化する。化学耐性が劣化することによって、例えば、インクが内部に付着しやすくなり、ノズル詰まりや吐出方向不良を発生しやすくなる。あるいは、インク成分によっては内部保護膜との反応活性が高くなることで、内部保護膜が溶けだしてエッチングされてしまうことが生じる。内部保護膜がエッチング消失してしまうと基材がむき出しとなり、インクに対しての溶解速度が大きくなることでノズル内部形状が変化し、結果的に吐出インク速度、方向が変動してしまうという不具合が生じていた。
撥水膜の下地機能膜とノズル内部の内部保護膜とは、プロセス簡略上の観点から同一材料で形成されていることが望ましい。しかしながら、上述したように、それぞれに求められる機能が異なるのでUV照射の有無でその機能を制御することができる。
しかしながら、従来の紫外線照射処理では、ノズル内部へも紫外線が照射されてしまうため、ノズル内部の内部保護膜機能の下地膜の表面活性化を発現してしまうことが問題であった。ノズル内部が表面活性化すると、上述したような内部保護膜の化学耐性が劣化するという問題があった。
また、ノズルプレートに高密度にノズルを形成する場合には、ノズル孔を先に開口した後に撥水膜を形成する、いわゆる先孔プロセスが重要となってくる。先に撥水膜を形成した後に、ノズルを開口する後孔プロセスでは、機械加工やレーザー加工などによるノズル加工を適用することになり、高い加工精度を確保することが困難である。先孔プロセスとすることで、例えば、シリコン基板を用いたリソグラフィ、エッチングプロセスを適用することが可能となり、高いノズル加工精度を実現することが可能となる。
しかしながら、先孔プロセスでノズルプレートの形成を行った場合、ノズル孔の内部に撥水膜が回り込み、ノズル孔内に撥水膜が形成される。このノズル孔内に形成された撥水膜を除去するために、ノズルと逆面側の流路からプラズマフローする手段がとられている。したがって、ノズル内部に回り込んだ撥水膜をプラズマ処理で除去するかが重要となってくる。このプラズマによりノズル内部の撥水膜を除去する場合、ノズル面に保護フィルムを貼り付け、ノズル内からプラズマがノズル面側に拡散することで、ノズル面撥水膜にダメージを与えないようにしている。しかしながら、ノズル内部の撥水膜の密着性が強固であると、撥水膜を除去するために、プラズマの照射強度、時間を大きくする必要がある。照射強度、時間を大きくすると、ノズルプレートの保護フィルムの貼り付けの不完全な部分からプラズマが漏れ出して、ノズルプレートの撥水膜にダメージを与え、そのノズルが不吐出になるという問題があった。
したがって、ノズルプレート表面においては、撥水膜の下地密着層として強固な密着性を確保する一方で、ノズル内部、特に、ノズル近傍内面の内部保護膜においては、表面活性化による密着性を抑制する必要があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、下地膜を使用する箇所に適した機能に制御することができる液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
本発明は前記目的を達成するために、ノズル孔を有するノズル形成基板およびノズル孔内部に下地膜を形成する下地膜形成工程と、ノズル形成基板表面の下地膜に高エネルギー線を照射する照射工程と、ノズル形成基板表面に撥水膜を形成する表面撥水膜形成工程と、を有し、高エネルギー線がコヒーレントな光である液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
本発明によれば、下地膜を形成後、コヒーレント光である高エネルギー線をノズル形成基板表面から照射しているので、ノズル形成基板表面にのみ高エネルギー線を照射することができる。したがって、下地膜のノズルプレート表面のみを活性化させることができ、撥水膜との密着性を向上させることができる。
また、ノズル孔内部には、高エネルギー線が照射されないので、ノズル孔内部の下地膜は内部保護膜として高い化学耐性を持たせることができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、下地膜がSiO系、または、SiOC系の膜であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、下地膜がSiO系、または、SiOC系の膜としているため、基材との密着性、撥水膜との密着性を向上させることができる。また、材料としても扱いやすく低コストで製造することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、高エネルギー線のビーム径が、ノズル孔の開口サイズよりも小さいことが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、高エネルギー線のビーム径をノズル孔の開口サイズよりも小さくすることにより、コヒーレント光である高エネルギー線がノズルのエッジに当たり少しでも拡散することを防止することができる。したがって、散乱することなく直進性のよい高エネルギー線を照射することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、高エネルギー線が紫外線であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、高エネルギー線を紫外線とすることにより、効果的に下地膜の表面活性を向上させることができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、ノズル孔の形状が逆テーパー形状であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズル孔の形状を逆テーパー形状とすることで、インク吐出時のノズル内メニスカス位置を安定化させることができるので、インクの吐出を安定して行うことができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、ノズル形成基板表面とノズル孔の壁面とのなす角度であるテーパー角が60°以下であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、テーパー角を60°以下とすることにより、高エネルギー線の照射によりノズル孔壁面に高エネルギー線が照射されるのを防止することができるので、ノズル孔内部の高エネルギー線の照射回避効果をより高めることができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、表面撥水膜形成工程は、下地膜の表面に撥水膜を形成する第1の撥水膜形成工程と、ノズル形成基板表面の撥水膜表面に保護フィルムを貼りつける保護フィルム貼付工程と、ノズル孔内部の撥水膜をプラズマ処理により除去するプラズマ照射工程と、保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、を有することが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズルプレート表面の下地膜は高エネルギー線照射により撥水膜との密着性が向上しているが、ノズル孔内部は、高エネルギー線が照射されていないため、表面活性は向上していない。したがって、その後のプラズマ照射工程により、ノズル孔内部の撥水膜の除去を容易に行なうことができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、下地膜形成工程の前に、ノズル形成基板に、吐出される液体が流れる流路および圧力室が形成された流路形成基板が接着され、流路形成基板に駆動用の圧電素子、配線が形成されていることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、下地膜形成工程の前に、ノズル形成基板に流路形成基板が接着され、駆動用の圧電素子、配線が形成された状態で撥水膜の形成を行っている。撥水膜の形成は、撥液吐出ヘッドの最終段階で行なうことが好ましい。最初にノズル形成基板に撥水膜を形成すると、その後の工程において異物が撥水膜に付着する、形成時に熱を付与することで、撥水膜が劣化するなどの問題があるため、最終段階で行なうことによりこれらの問題を解消することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、ノズル形成基板がシリコンで形成されていることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズル形成基板がシリコンで形成されていた場合においても、下地膜が内部保護膜として機能させることができるので、ノズル形成基板がエッチングにより劣化することを防止することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、撥水膜はフッ素系シランカップリング材により形成されていることが好ましい。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、撥水膜がフッ素系シランカプリング材で形成されているので、撥水膜の撥水性を向上させるとともに、撥水膜からの保護フィルムの剥製性を維持することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、UV照射の条件を制御することにより、ノズル表面では、表面活性による撥水膜との高密着結合が実現され、耐擦性かつ化学耐性の高い撥水膜が実現できる。また、その一方で、ノズル内での回折光、拡散光を少なくすることで、ノズル内面保護膜の表面活性化を抑えることができるので、化学耐性の高いノズル内部保護膜を実現することができる。
また、UV照射にコヒーレント光を使用することで、コヒーレント光は走査により面照射を行なうため、マスクなどを使用せず、照射領域を任意に制御することができる。また、ノズル内部に付着した撥水膜は後工程でプラズマ等により除去する工程を経ているが、ノズル内部の下地膜へUV照射を抑制することにより、ノズル内部の下地膜を非活性の状態としておくことができるので、プラズマ処理により内部の撥水膜を除去しやすくすることができる。
インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。 インクジェットヘッドの構造例を示す平面透視図である。 インク室ユニットの立体構成を示す断面図である。 撥水膜の形成方法を説明する工程図である。 照射工程を説明する図である。 従来の照射工程を説明する図である。 撥水膜の形成方法を説明する工程図である。 プラズマ処理の方法を説明する図である。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
<インクジェット記録装置の全体構成>
最初に本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造される液滴吐出ヘッドが適用される液滴吐出装置として、インクジェット記録装置について説明する。
図1は、インクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排出部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
図1に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(第2の搬送体)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが好ましい。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内の熱可塑性樹脂微粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度を50℃以上に設定することで、定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
また、インク中にUV硬化性モノマーを含有させた場合は、乾燥部で水分を充分に揮発させた後に、UV照射ランプを備えた定着部で、画像にUVを照射することで、UV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
(排出部)
図1に示すように、定着部120に続いて排出部122が設けられている。排出部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
なお、図1においてはドラム搬送方式のインクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、ベルト搬送方式のインクジェット記録装置などにおいても用いることができる。
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造について説明する。なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図2(a)は、インクジェットヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、インクジェットヘッド250の他の構造例を示す平面透視図である。図3は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図である。
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッド250におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクジェットヘッド250は、図2(a)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252などからなる複数のインク室ユニット253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙搬送方向と略直交する方向に記録媒体124の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(b)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
図3に示すように、各ノズル251は、インクジェットヘッド250のインク吐出面250aを構成するノズルプレート260に形成されている。ノズルプレート260は、例えば、Si、SiO2、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料、ポリイミドのような樹脂系材料で構成されている。
ノズルプレート260の表面(インク吐出側の面)には、インクに対して撥水性を有する撥水膜262が形成されており、インクの付着防止が図られている。
ノズルプレート260は、流路形成基板264に接合されており、流路形成基板264には、各ノズル251に対応して圧力室252が設けられている。圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル251と供給口254が設けられている。各圧力室252は供給口254を介して共通流路255と連通されている。共通流路255はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)とインク供給口259を介して連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に分配供給される。なお、共通流路255は、図2(a)に示す副走査方向のインク室ユニット253に共通して設けられているため、共通流路255にインクを供給するインク供給口259は、共通流路255に1ヶ所設けられていればよい。
圧力室252の天面を構成し共通電極と兼用される振動板256には個別電極257を備えた圧電素子258が接合されており、個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電素子258が変形してノズル251からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に供給される。
なお、ノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、ライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、用紙の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを用紙の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると用紙を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の用紙の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して用紙の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
<撥水膜の形成方法>
次に液滴吐出ヘッドに設けられる撥水膜の形成方法について説明する。
図4は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの撥水膜の形成方法を説明するための工程図である。撥水膜の形成は、(1)ノズルプレート表面およびノズル内部に下地膜を形成する下地膜形成工程と、(2)ノズルプレート表面の下地膜に高エネルギー線を照射する照射工程と、(3)ノズルプレート表面に撥水膜形成する表面撥水膜形成工程と、で構成される。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)下地膜形成工程
図4(a)、(b)に示すように、ノズル12を有するノズル形成基板(ノズルプレート)10に下地膜14を形成する。下地膜14は、撥水膜の下地膜およびノズル内部、流路などの内部保護膜となる。ノズル形成基板10には、圧力室、振動板、駆動用の圧電素子、フレキシブルケーブルなどの配線などがすでに形成された状態のものを使用することが好ましい。すなわち、撥水膜の形成は、液滴吐出ヘッドの製造の最終段階で行うことが好ましい。ノズルプレート表面の撥水膜を形成した後に、液滴吐出ヘッドの加工を行なうと、撥水膜に加工時の異物が撥水膜上に付着する、あるいは、形成時に熱を加えることにより、撥水膜の性能に変化を及ぼす可能性があるので、最終段階で行なうことが好ましい。
ノズルはエッチング加工により形成することができる。また、ノズルのサイズは直径10〜30μmとすることができる。ノズルの形状は図4(a)に示すように逆テーパー形状とすることが好ましい。逆テーパー形状とすることで、液滴吐出時のノズル内メニスカス位置を安定させることができる。逆テーパー形状の加工は、シリコン(Si)基板の面方位による異方性エッチングを利用して、Si基板とKrFエッチング溶液との組み合わせで形状制御することができる。また、ノズル12のテーパー角度αは、60度以下とすることが好ましい。テーパー角度αを60度以下とすることにより、次工程の照射工程において、高エネルギー線がノズル壁面に照射されることを防止することができる。
下地膜14としては、SiO膜またはSiOC膜などのシリカ膜とすることが好ましい。これらのシリカ膜を用いることにより、ノズル形成基板10の材料にシリカを用いた場合、ノズル形成基板10と下地膜14の密着性を高めることができる。また、撥水膜とシランカップリング結合するためのシラノール基を多く発現しやすいため、撥水膜との密着性を高めることもできる。さらに。シリカ膜は、安価で扱いやすい材料である。
下地膜14の形成は、MVD(分子気相成膜)装置またはCVD(化学蒸着)装置にて形成することができる。上述したように、下地膜14は、ノズルプレート表面の撥水膜の下地膜としてだけでなく、ノズル内部、流路内部の内部保護膜となるため、ノズル内部、流路内部での被覆性が重要となる。したがって、成膜方法としては、反応ガスを流した後に弱いプラズマで成膜を推進するMVD成膜法で行なうことがより好ましい。また、流路内部をMVD法でSiOの下地膜14を形成した後、CVD法でノズル内部付近およびノズルプレート表面にSiOCの下地膜14を形成することも可能である。
MVD法、および、CVD法の成膜条件としては、例えば、以下の成膜条件を挙げることができる。
(i)MVD法 SiO膜の成膜条件
原料ガス:SiCl 圧力0.1−10Torr
O(水蒸気) 圧力0.05−5Torr
成膜温度:室温
膜厚:50nm
(ii)CVD法 SiOC膜の成膜条件
原料ガス:モノメチルシラン(CHSiH) 圧力1−10Torr
成膜温度:150℃
膜厚:100nm
(2)照射工程
次に図4(c)に示すように高エネルギー線の照射を行なう。また、図5は、照射工程のノズル近傍の照射状態を説明する図である。図5(a)はコヒーレント光源(UVレーザー光源)30を使用した場合の図であり。図5(b)はレンズ34で矯正されたUV平行光32を使用した図である。また、図6は、従来のUV拡散光36を使用した場合のノズル近傍の照射状態を説明する図である。
図6に示すように、UV拡散光36を使用した場合は、ノズル内部に照射されたUV拡散光36により、ノズル内部の下地膜14まで、紫外線が照射される。そのため、ノズル内部の内部保護膜として使用する下地膜14についても化学耐性の劣化、および、撥水膜の密着性が向上することが懸念される。そのため、その後の撥水膜の除去において、除去性が悪化するという問題があった。
本実施形態によれば、図5(a)、(b)に示すように、レーザー光30、あるいは、レンズ34により平行な光である平行光32を使用することにより、ノズル12通過後の光を直進光とすることができる。したがって、ノズル内部に紫外線が照射されることを防止することができ、ノズル内部の下地膜14を内部保護膜として用いることができる。
さらに、図5(a)に示すようなレーザー光を使用する場合は、ノズル開口部(ノズル面の開口サイズ)よりも小さなレーザービーム径とすることが好ましい。小さいレーザービーム径とすることにより、その直進性を最大限活かして、ノズル内部への照射作用を抑制することができ、散乱することなく、直進性のよいUV光を得ることができる。また、ノズルの形状を逆テーパー形状とし、テーパー角度αを60度以下とすることにより、高エネルギー線がノズルの壁面に照射されることの回避効果を高めることができる。
UV照射工程の条件としては、例えば、以下の条件により行なうことができる。
(i)UV光源条件
使用レーザー:KrFエキシマレーザー(λ=248nm)(リソグラフィ用光源を転用)
平均パワー:2W
繰り返し周波数:2kHz
パルスエネルギー:10mJ
レーザーは、ノズル面全面に照射するため、レーザー光を2次元的に走査した。走査速度は、XY方向ともに、10sec/mmとした。なお、UV照射時には、オゾンが発生するため、排気吸引環境において照射を行い、オゾンが被照射体に酸化作用を生じさせないようオゾン滞留防止の策をとった。
なお、上記では、図5(a)、(b)を用いて、レーザー光、平行光を使用した例について説明したが、他の方法として、方向性を有する高エネルギー線でもよく、例えば、直進性イオンビームなどを使用することができる。
図4(d)は紫外線照射工程後のノズルプレートの断面を示す概略図である。図4(d)に示すように、照射工程後の下地膜14は、紫外線を照射したノズルプレート表面の表面活性を高い状態とすることができ、高活性層16を形成することができる。特に、下地膜14がSiO系、またはSiOC系のシリカ膜をベースとして形成されることにより、照射工程により高エネルギー線を照射することで、シラノール基を多く発現させた高活性層16とすることができ、撥水膜と高密度に接着させることができる。
また、ノズル孔内部には、高エネルギー線が当たらないので、下地膜14が活性化されない。そのため、撥水膜が形成されたとしても、プラズマにより除去することが容易であり、また、撥水膜除去後の下地膜14においても、表面活性が低く抑えられているため、インク成分との反応が抑制され、内部保護膜として機能させることができる。
(3)表面撥水膜形成工程
次にノズルプレート表面に撥水膜の形成を行う。表面撥水膜形成工程は、(3−1)ノズルプレート表面およびノズル内部に撥水膜を形成する全面撥水膜形成工程と、(3−2)ノズルプレート表面の撥水膜表面に保護フィルムを貼り付ける保護フィルム貼付工程と、(3−3)プラズマ処理によりノズル内部の撥水膜を除去するプラズマ照射工程と、(3−4)保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、で構成される。
撥水膜形成工程は、下地膜14への照射工程後、約1時間以内に開始することが好ましい。高エネルギー線照射により活性化し高活性層16に吸着水や大気中のコンタミが付着することで、活性度が低下してしまうからである。
(3−1)撥水膜形成工程
図7(e)に示すように、撥水膜18の形成を行う。撥水膜18の形成方法としては、孔加工されたノズルプレートのノズル面側にフッ素系シランカップリング剤を用いて、撥水膜の形成を行う。
撥水膜18として、例えば、蒸着法などの物理的気相成長法で成膜することができる。蒸着法とは、成膜基板を真空チャンバ内にセットし、真空チャンバ内で成膜したい材料を、気化する条件(すなわち蒸気圧が十分となる条件)で気化し、成膜する方法である。シランカップリング剤の場合は、シランカップリング剤を加熱して気化する事により成膜する方法が一般的である。また、浸漬処理やスピンコート法による液相法においても形成することができる。
フッ素系シランカップリング剤としては、塩素型、メトキシ型、エトキシ型、イソシアナト型などを用いることが好ましい。シランカップリング剤は、YSiX4−n(n=1、2、3)で表されるケイ素化合物である。Yはアルキル基などの比較的不活性な基、または、ビニル基、アミノ基、あるいはエポキシ基などの反応性基を含むものである。Xは、ハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセトキシ基などの基質表面の水酸基あるいは吸着水との縮合により結合可能な基からなる。シランカップリング剤は、ガラス繊維強化プラスチックなどの有機質と無機質からなる複合材料を製造する際に、これらの結合を仲介するものとして幅広く用いられており、Yがアルキル基などの不活性な基の場合は、改質表面上に、付着や摩擦の防止、つや保持、撥水、潤滑などの性質を付与する。また、反応性基を含む場合は、主として接着性の向上に用いられる。
さらに、Yに直鎖状のフッ化炭素鎖を導入したフッ素系シランカップリング剤を用いて改質した表面は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)表面のように低表面自由エネルギーを持ち、撥水、潤滑、離型などの性質が向上し、さらに撥油性も発現する。
直鎖状のフルオロアルキルシランとして、例えば、Y=CFCHCH,CF(CFCHCH,CF(CFCHCHなどを挙げることができる。
また、Yの部分は、パーフルオロエーテル(PFPE)基(−CF−O−CF−)を有する材料を用いることができる。
また、シランカップリング剤としては、片側のみでなく、両側にシランカップリング基が結合した材料XSiYSiXを用いることもできる。
また、ダイキン工業(株)製オプツール、(株)ハーベス製デュラサーフ、住友3M(株)製ノベックEGC1720、ソルベイソレクシス(株)製フルオロリンクS−10、(株)ティーアンドケイ製ナノス、信越化学工業(株)製サイフェルKY−100・AGC製サイトップMタイプなど、市販のシランカップリング撥水材料を用いることもできる。
しかし、ノズル内部にもSi、もしくは、自然酸化膜SiOが露出しているため、撥水膜はノズル内部においてもシランカップリング結合し、撥水膜18が形成される。そのため、ノズルプレート表面の撥水膜のみ残して、ノズル内部の撥水膜を除去する必要がある。
なお、下地膜にSiO膜またはSiOC膜を使用した場合、シランカップリング材を用いて撥水膜を成膜するため、同じチャンバを用いて下地膜の形成と撥水膜の形成を行うことができる。
(3−2)保護フィルム貼付工程
次に、図7(f)に示すように、撥水膜18を残したい箇所に保護フィルム20を貼り付ける。保護フィルム20としては、例えば、厚み80μmのポリエステルフィルムを基材ベースとし、粘着材にオレフィン系エラストマーを用いた弱粘着性フィルムを用いることができる。
保護フィルム20には、ポリシロキサン、例えば、官能基(CHSiOを有するポリジメチルシロキサン(PDMS、通称:シリコーン)を含まないことが好ましい。
PDMSは、離型材として広く使用されており、保護フィルムにおいては、再剥離性を向上させるために使用されている。しかしながら、保護フィルムにPDMSを含有していると、次工程のプラズマ照射工程で、保護フィルム20にプラズマが照射され、PDMSが飛散し、ノズルプレート表面にPDMSが付着することが懸念される。PDMSが付着すると、PDMSとインクの顔料成分が付着し、その部分で固化するため、インクの吐出不良が発生しやすくなる。本実施形態においては、保護フィルム20にPDMSを含有していないので、ノズルプレート表面にPDMSが付着することを防止することができるので、上記のような問題が発生することを防止することができる。PDMSを使用しない場合、離型性を向上させるために、例えば、可塑剤としてフタル酸を含有させることができる。
また、ノズル形成基板10に保護フィルム20を貼付する際、ノズル孔近傍の保護フィルム20が浮くことを防止するため、エア抜け性が良いことが好ましく、ノズル形成基板の硬さ(柔らかさ)を最適化することが好ましい。仮にノズル近傍で保護フィルムが浮いてしまうと、その部分のノズルプレート表面の撥水膜18が、後のプラズマ工程で除去されるため、そのノズルにおいては、メニスカス溢れによる吐出不良や、ノズル近傍での異物付着によるノズル詰まりにつながりやすい。
保護フィルム20の浮きを防止するため、ノズル内部を減圧して保護フィルム20を貼付することも可能である。これにより、さらに安定してノズル近傍のエッジ部の保護フィルム20の浮きを防止することができる。さらに、フィルム貼り付け時に温度を上げてフィルムを柔らかくすることで、保護フィルム20の浮きを防止することができる。貼り付け時の雰囲気温度は、液滴吐出ヘッドの圧電素子、接着剤の樹脂に影響がない温度であれば、特に限定されないが、30℃以上100℃以下であることが好ましい。
保護フィルム20としては、上述した基材ベースにポリエステルフィルムを用い、粘着材にオレフィン系エラストマーを用いたフィルムに限定されず、他の材料を使用することもできる。例えば、基材ベースとして、ポリイミド、ポリプロピレンの材料を使用することができ、粘着材として、アクリル系の材料を使用することができる。
(3−3)プラズマ照射工程
次に、図7(g)に示すように、ノズル12内部をプラズマ処理することにより、プラズマ暴露し、ノズル12内部の撥水膜18の除去を行なう。
プラズマ処理の方法としては、例えば、真空チャンバ中にノズル形成基板10を配置した後、真空引き後、酸素置換を行い、酸素プラズマを発生させる。酸素プラズマの発生条件としては、例えば、出力30W、流量30sccmとし、15分間プラズマを発生させることで行うことができる。プラズマ照射は、図8に示すように、液体流路の導入側であるインク供給口259と排出側(図示せず)を通って、圧力室を経由してノズル内部に到達することで、撥水膜の除去をすることができる。
なお、圧電素子258に直接プラズマを暴露することは、圧電素子258の劣化を引き起こすため、圧電素子258上にシリコンプレートで蓋をして圧電素子258に直接プラズマが暴露されないようにする。
また、プラズマ処理工程は、上記のような真空減圧プラズマに限定されず、ガスフローによる大気圧プラズマを用いることもできる。この場合、ガスフローに乾燥空気または窒素(N)を用い、プラズマの発生条件として、電圧15kV、周波数100Hz、出力150Wとして、ガス流量は20〜40L/minとすることで、製造された液滴吐出ヘッドが、真空減圧プラズマにより形成した液滴吐出ヘッドと同様の吐出特性を得ることができており、ノズル内部の撥水膜が除去されていることが確認できる。
(3−4)保護フィルム剥離工程
最後に図7(h)に示すように、保護フィルム20をノズルプレート表面から剥離し、取り去ることで、液滴吐出ヘッドを製造する。
上記の方法により製造した液滴吐出ヘッドを、初期特性評価(初期の吐出方向安定性)、耐久性評価(耐擦性評価、インク耐久評価)により評価を行った。なお、ノズルのテーパー角度は、45度とした。
各液滴吐出ヘッドは、紫外線照射工程で照射する紫外線の種類を変更して液滴吐出ヘッドの製造を行った。
実施例1・・・レーザー光のビーム径:100μm
実施例2・・・レーザー光のビーム径:10μm(ノズル径20μm)
比較例1・・・低圧水銀灯(拡散光源)、波長:254nm、出力:100mW、照射時間:10−100min
比較例2・・・照射工程なし
<初期特性評価>
液滴吐出ヘッドの吐出評価により初期の吐出方向安定性を評価した。液体は水性顔料インクを使用した。吐出ノズル数1000ノズルの平均化した吐出方向ずれ量を測定した。
実施例1:平均ずれ量5.5μm
実施例2:平均ずれ量3.0μm
比較例1:平均ずれ量12.0μm
低圧水銀灯を用いた比較例1は、拡散光のため、ノズル内部の表面活性化も進んでおり、ノズル内部に回りこんだ撥水膜が強固に密着し、ノズル内部の撥水膜の除去が不完全であった。したがって、インクメニスカス位置が不安定になり、吐出方向性も不安定であった。レーザービーム径がノズル開口サイズより大きい実施例1は、ノズル部でのレーザー光拡散がわずかに生じている影響で、内部撥水膜が除去しきれず、平均ずれ量が実施例2と比較すれば大きかったが、問題ないレベルである。実施例2は、レーザービーム径がノズル開口より小さいため、良好な吐出安定性が確認され、ノズル内部の撥水膜が安定して除去されていることが確認できる。
<耐久性評価>
評価には、水性顔料インクを用いた。インクのpHは8−9程度でアルカリ性のものを使用した。
[耐擦性評価]
ノズルプレート表面の撥水膜の密着性を調べるため、それぞれの液滴吐出ヘッドの耐擦性の評価を行った。ノズルからインクを噴出してノズル面をインクのミストで汚した後に、布で2回ワイプすることを1シーケンスとして連続的にワイプによるこすり評価を行った。インクの吐出は、200ワイプ(100シーケンス)ごとに行い吐出方向ずれ量を測定した。吐出ノズル数1000ノズルの平均化した吐出方向ずれ量を測定し、吐出方向ずれの平均値が15μmを越えた時点を耐擦寿命と規定した。
実施例1:3200ワイプ
実施例2:3200ワイプ
比較例1:3200ワイプ
比較例2:400ワイプ
UVレーザー光を用いた場合、拡散光源UV光を用いた場合ともにUV照射をしない場合に対し8倍の耐擦性が確認された。一方で、UVレーザー光と拡散光源UV光とで差異は確認されなかった。ノズル面のUV照射による表面活性化処理は、レーザー光および拡散光のいずれにおいても撥水膜の密着性向上がなされていることが確認できた。
[インク耐久性評価]
液滴吐出ヘッド内に50℃に加温したインクを循環放置し、インクを吐出することで内部保護膜のインク耐性評価を行った。インクの吐出は基本的におよそ24時間おきに行なった。吐出ノズル数1000ノズルの平均化した吐出方向ずれ量を測定し、吐出方向ずれの平均値が15μmを越えた時点をインク耐性寿命と規定した。
実施例1:160h
実施例2:200h以上
比較例1:50h
比較例2:200h以上
UVレーザー光を使用した場合は、UV照射をしない場合と同様に50℃のインク循環試験において200hでも吐出方向異常は生じなかった。一方で拡散光源UV光を用いた比較例1においては、50hにて吐出方向異常が発生していた。内部を分解観察したところ内部保護膜が消失していることが確認された。内部保護膜にUV光が拡散照射されることで、インク耐性が低下し、インクにより内部保護膜がエッチングされることで、流路体積が変動、吐出インク速度の低下に伴う吐出不安定化が発現したと考えられる。
10…ノズル形成基板、12…ノズル、14…下地膜、16…高活性層、18…撥水膜、20…保護フィルム、100…インクジェット記録装置、112…給紙部、114…処理液付与部、116…描画部、118…乾燥部、120…定着部、122…排出部、124…記録媒体、154…処理液ドラム、156…処理液塗布装置、170…描画ドラム、172M、172K、172C、172Y…インクジェットヘッド、176…乾燥ドラム、180…温風噴出しノズル、182…IRヒータ、184…定着ドラム、186…ハロゲンヒータ、188…定着ローラ、192…排出トレイ、196…搬送ベルト

Claims (10)

  1. ノズル孔を有するノズル形成基板および前記ノズル孔内部に下地膜を形成する下地膜形成工程と、
    前記ノズル形成基板表面の前記下地膜に高エネルギー線を照射する照射工程と、
    前記ノズル形成基板表面に撥水膜を形成する表面撥水膜形成工程と、を有し、
    前記高エネルギー線がコヒーレントな光である液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記下地膜がSiO系、または、SiOC系の膜である請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記高エネルギー線のビーム径が、前記ノズル孔の開口サイズよりも小さい請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記高エネルギー線が紫外線である請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記ノズル孔の形状が逆テーパー形状である請求項1から4のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記ノズル形成基板表面と前記ノズル孔の壁面とのなす角度であるテーパー角が60°以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記表面撥水膜形成工程は、前記下地膜の表面に前記撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、
    前記ノズル形成基板表面の前記撥水膜表面に保護フィルムを貼りつける保護フィルム貼付工程と、
    前記ノズル孔内部の前記撥水膜をプラズマ処理により除去するプラズマ照射工程と、
    前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記下地膜形成工程の前に、前記ノズル形成基板に、吐出される液体が流れる流路および圧力室が形成された流路形成基板が接着され、前記流路形成基板に駆動用の圧電素子、配線が形成されている請求項1から7のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記ノズル形成基板がシリコンで形成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記撥水膜はフッ素系シランカップリング材により形成されている請求項1から9のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
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