JP5497810B2 - 撥水膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜に係り、特に、蒸着法を用いた撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜に関する。
インクジェット記録装置で用いられるインクジェットヘッドでは、ノズルプレートの表面にインクが付着していると、ノズルから吐出されるインク液滴が影響を受けて、インク液滴の吐出方向にばらつきが生じることがある。インクが付着すると、記録媒体上の所定位置にインクを着弾させることが困難になり、画像品質が劣化する原因となる。
そこで、ノズルプレート表面にインクが付着することを防止し吐出性能を向上させるため、ノズルプレート表面に撥水膜を形成することが提案されている。
高密着の撥水材料として、シランカップリング剤の撥水コートが知られている。シランカップリング剤の撥水膜の形成方法は、従来は、シランカップリング材料を、フッ素溶媒に溶解して0.1wt%程度の濃度に調整し、当該溶液に基板を浸漬して引き上げ、乾燥させるディップ法が一般的であった。
しかしながら、近年、撥水膜を成膜するにあたり、撥水膜の成膜を行いたい基板に耐溶剤性がないために、溶液に浸漬することができない場合が多くある。このような場合は、シランカップリング材料を気相法(蒸着法)により成膜することが一般的である。
例えば、下記の特許文献1〜4には、フッ素系撥水材料を気相成膜によって成膜する方法が開示されている。
また、インクジェットヘッドのノズル面は、吐出安定性を維持するため、ワイピングを行なう必要があるが、ワイピングなどでノズル面を擦ると余剰に撥水材料が付与されていると容易に撥水材料が取れてしまうため、ノズルを詰まらせるという問題があった。そのため、下記の特許文献4においては、ノズル面に凹部を設け、余分な撥水材料が凹部に溜まるような構成とし、ノズル内部が詰まることを防止していた。また、特許文献5では、結合の弱い撥水材料を予め粘着テープによって除去することが開示されている。
特開2006−291266号公報 特表2007−533448号公報 特開2000−328230号公報 特開2009−220396号公報 特開2005−262471号公報
しかしながら、特許文献1および2に記載されている成膜方法の成膜温度は100℃程度である。特許文献1および2で用いられているパーフルオロポリエーテルを有するフッ素化合物のような分子量の大きい撥水材料は、TG−DTA測定により、300〜600℃でゆっくりと揮発することが知られている。したがって、100℃程度では、温度が低いため撥水材料の蒸気圧が非常に低く、成膜時間が長くなり、特許文献1においては、成膜に2時間かかっていた。
また、特許文献3は、加熱原の出力を調整して成膜(蒸着)しており、水晶振動子によって膜厚を制御しているが、単分子膜は10〜80Å程度であり、制御が極めて困難であった。さらに、撥水材料が突沸したとの記載もあり、このような高温の成膜では、成膜の制御が困難であった。特許文献4は、撥水材料であるオプツールDSXを400℃程度で成膜することが記載されているが、常温〜200℃で成膜することが可能であることも記載されており、撥水材料の適切な揮発温度は明確にされていなかった。
また、特許文献4においては、余分な撥水材料が溜まるように凹部を設けているが、凹部を形成するには、コストアップにつながり、また、凹部で防ぎきれなかった余分な撥水材料はノズルを詰まらせヘッドの寿命を短くさせるという問題があった。特許文献5においては、粘着テープにより結合の弱い撥水材料の除去を行なっているが、この方法では、本来結合している撥水膜まで剥がれてしまう可能性があり、また、粘着テープの粘着剤が撥水膜上に残り撥水性が低下する、条件によっては十分に撥水材料が取れないという問題があった。
さらに、特許文献3は、水晶振動子に付着した膜材料の重量を測定して膜厚の制御を行なっている。また、膜厚の測定としては、XRR(X線反射率)により測定することができる。しかしながら、撥水膜は、単分子構造の膜を基本としており、例えば、XRRにより測定した場合、余分な撥水材料が付着した膜、付着していない膜においても、同じ膜厚の膜として検出される。これは、余分に撥水材料が付着した膜は、XRR測定により検出される単分子膜と、X線の回折が得られない分子の向きが乱れた余分な撥水材料の付着という構造になっているからであると考えられる。特許文献3に記載されている方法で膜厚の制御を行なっても、単分子膜の形成、または、余剰の撥水材料の付着のいずれが生じているかわからず、余剰の撥水材料は、容易に剥がれ、ノズル詰まりの原因になると考えられる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薬液耐性・ワイプ耐性に優れた撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜を提供することを目的とする。
本発明は前記目的を達成するために、基板上に、シランカップリング剤により有機膜を蒸着法により被覆する有機膜被覆工程と、有機膜被覆工程における成膜条件を、前記基板と同じ材料を用いて、予め決定する成膜条件決定工程と、を有し、成膜条件決定工程は、シランカップリング剤が、蒸発する温度以上突沸が起こらない温度以下に決定する温度決定工程と、温度決定工程で決定した温度において、有機膜を被覆し、光学顕微鏡観察により玉状の余剰撥水材料が形成される時間を測定し、前記時間より短い時間を成膜時間と決定する成膜時間決定工程と、からなる撥水膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、有機膜被覆工程における蒸着法の成膜条件を、同様の材料を用いて別途成膜を行い、最適な成膜温度、成膜時間を決定した後、有機膜の被覆を行っているので、ワイプ耐性、インク浸漬耐性に優れた密度の高い単分子膜を形成することができる。また、余分な撥水材料を蒸着させることがないので、高価な撥水材料の使用を低減することができ、また、単分子膜表面に余剰の撥水材料が形成されることがなく、余剰の撥水材料は剥離しやすいため、ノズル詰まりの原因を防止することができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、温度決定工程により決定される温度は、10℃/minの速度で昇温して得られたTG−DTA測定で、重量減少が10%以上90%以下であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、TG−DTAで測定したデータの重量減少が10%以上90%以下の温度とすることで、シランカップリング剤の揮発する温度で成膜を行なうことができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、成膜時間決定工程は、成膜物の静的接触角を測定し、静的接触角が110°以上になる時間以上に決定することが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、成膜時間決定工程により、静的接触角が110°以上になる時間まで成膜を行なっているので、十分な撥水性を付与することができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、成膜時間決定工程は、玉状の余剰撥水材料が形成される時間の直前を成膜時間と決定することが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、余剰撥水材料が形成される直前の時間を成膜時間としているので、余剰撥水材料が形成されることがなく、また、余剰撥水材料が形成される直前まで成膜をすることで、単分子膜を高い密度で成膜することができるので、ワイプ耐性、インク浸漬耐性を向上させることができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、温度決定工程により決定される温度は、TG−DTA測定による重量減少が20%以上80%以下であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、温度決定工程により決定する温度を、TG−DTA測定による重量減少が20%以上80%以下の温度としているので、シランカップリング剤が揮発しやすく、そして、基板に蒸着しやすい条件とすることができるので、形成される撥水膜の制御を行いやすくすることができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、有機膜を成膜した後、使用前に所定の時間、保管する保管工程と、を有することが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、有機膜を成膜した後、所定の時間保管を行なう保管工程を有することで、基板と有機膜の密着性を向上させることができる。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法は、保管工程は、温度および湿度を制御して行なうことが好ましい。
本発明の他の態様に係る撥水膜の製造方法によれば、基板に形成された有機膜を保管する際に温度および湿度を制御しているので、有機膜と基板の密着性を向上させることができる。
本発明の撥水膜の製造方法によれば、撥水膜を適切な温度条件、適切な時間により蒸着を行なうことで、撥水膜を高密度に形成することができ、かつ、余分な撥水膜の形成を防止することができる。該製造方法により製造された撥水膜は、撥水膜が隙間なく結合しているので、薬液耐性、ワイプ耐性を向上させることができる。また、余分な撥水膜が形成されていないので、動的撥水性(液滴の滑落性)を向上させることができ、かつ、ワイピングによるノズル詰まりを防止することができる。
撥水膜の形成方法を説明する図である。 インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。 インクジェットヘッドの構造例を示す平面透視図である。 図3中IV−IV線に沿う断面図である。 撥水材料のTGのデータを示す図である。 成膜時間に対する撥水膜の状態を説明する図である。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本実施形態に係る撥水膜の製造方法は、基板上に、シランカップリング剤により撥水膜を、蒸着法で被覆する有機膜被覆工程と、有機膜形成工程の成膜条件を決定する成膜条件決定工程と、を有する。成膜条件決定工程により、成膜条件を事前に決定することで、良好な膜を成膜することができる。
[有機膜被覆工程]
有機膜被覆工程は、基板10上にシランカップリング剤を蒸着させ、有機膜を被膜する工程である。図1(a)は、シランカップリング剤31と基板10の結合前、図1(b)は結合後の化学構造の概略図である。
シリカ膜を形成する基板10の材質は、シリコン、ガラス、金属、セラミック、高分子フィルムの何れかであることが好ましい。本発明では、シリコン、ガラス、金属、セラミック、高分子フィルムの何れであっても、強固な撥水膜を形成することができる。
また、基板10としてはOH基を多く有する基板を使用することが好ましい。シランカップリング剤では、基板表面のOH基と、シランカップリング剤のOH基が脱水縮合して、化学的に結合するため、基板表面にOH基を多く有することで、シランカップリング剤31を基板10上に密に成膜することができる。
例えば、Gelest社カタログ(Gelest Silane Coupling Agent)には、シランカップリング剤に効果がある好ましい基板が記載されており、SiOを含有する物質(Silica、Quartz、Glass)などがSiOHを多く含有することが知られている。また、SiやCuなど、表面に自然酸化膜が生成しやすい膜についても自然酸化膜がOH基を含有しやすいため、本実施形態で好ましく使用することができる。
また、基材表面を紫外線・電子線・酸素プラズマなどのエネルギーを照射することで、密着性を向上させることができる。例えばSiOの場合、表面の有機コンタミ(コンタミネーション)などを除去すると同時に、≡Si−O−Si≡ +HO → ≡Si−OH + OH−Si≡ により表面が活性化し、基板表面のOH基が増えるからであると考えられる。
シランカップリング剤31としては、塩素型、メトキシ型、エトキシ型、イソシアナト型などを用いることが好ましい。
撥水膜30の製造方法としては、蒸着法などの物理的気相成長法で成膜することができる。蒸着法は、成膜基板を真空チャンバ内にセットし、真空チャンバ内で成膜したい材料を気化する条件(すなわち蒸気圧が十分となる条件)で気化し、成膜する方法である。シランカップリング剤の場合は、シランカップリング剤を加熱して気化する事により成膜する方法が一般的である。
本実施形態においては、有機膜被覆工程の前に、有機膜被覆工程の成膜条件を決定する成膜条件決定工程を有する。成膜条件決定工程は、温度決定工程と、成膜時間決定工程と、からなる。
[成膜条件決定工程]
(温度決定工程)
温度決定工程による温度条件は、シランカップリング剤を昇温し、重量減少が開始する温度以上の温度であり、上限はシランカップリング剤の突沸が起こらない温度である。温度条件は、例えば、TG−DTA測定により決定することができる。室温にてシランカップリング撥水材料の希釈溶媒を揮発させ、重量減少が収まり、シランカップリング撥水材料のみになった状態において、10℃/minで昇温した際に、重量減少が10%以上90%未満となる温度とすることが好ましく、より好ましくは、20%以上80%未満である。
TG−DTA測定により重量減少が少ない温度では、シランカップリング剤の蒸発量が少ないため、成膜に時間がかかり好ましくない。また、重量減少が大きい温度では、蒸発量が多くなるため、成膜のコントロールが難しくなるため好ましくない。温度が高い状態で、成膜を行なうと、単分子膜による密度が小さい(被覆率が小さい)状態で、単分子膜表面に玉状の余剰撥水材料(シランカップリング剤)が形成される。この玉状の余剰撥水材料は、容易に剥離し易いため、ワイピングにより剥離し、ノズル詰まりの原因となる。
(成膜時間決定工程)
成膜時間については、撥水膜の静的接触角を測定し、静的接触角が110°以上となる時間を予め定めておき、その時間になるまで、少なくとも成膜を行なう。また、成膜された撥水膜を光学顕微鏡で観察し、玉状の余剰撥水材料(島)が形成される直前の時間を予め同一条件で見積もっておき(予測しておき)その時間より短い時間を成膜時間と決定する。また、その時間の直前を成膜時間と決定することが好ましい。上記の成膜時間とすることにより、接触角が110°以上の撥水性を有する撥水膜であり、余剰の撥水材料が無いため、ワイピングにより余剰の撥水材料が剥離し、ノズル詰まりを引き起こすことを防止することができる。また、余剰撥水材料が形成されない状態で成膜時間を長くすることにより、撥水膜の被覆率を高くすることができるので、成膜時間は、余剰撥水材料が形成される直前まで行うことが好ましい。
また、余剰の撥水材料をなくすことで、動的撥水性(液滴の滑落性)を向上させることができる。余剰の撥水材料を有することにより、この余剰の撥水材料が凹凸の効果を有し、摩擦力が向上する、あるいは、親水性の基が外に出ているため、トラップポイントになっていると考えられるため、余剰の撥水材料を無くすことにより、動的撥水性(液滴の滑落性)を向上させることができる。
成膜時間については、シランカップリング剤の量、成膜する基板の大きさにより異なるため、同様の製法で製造したSi−OH結合を有する基板を用い、時間以外の成膜条件を同じ条件とし、静的接触角、および、光学顕微鏡による表面観察により時間を決定しておく。決定した時間で成膜を行なうことにより、後処理を行なうことなく、余剰撥水材料が形成されず、耐薬品性、耐ワイプ性の良好な撥水膜を形成することができる。
次に、本実施形態において使用できるシランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤は、YSiX4−n(n=1、2、3)で表されるケイ素化合物である。Yはアルキル基などの比較的不活性な基、または、ビニル基、アミノ基、あるいはエポキシ基などの反応性基を含むものである。Xは、ハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセトキシ基などの基質表面の水酸基あるいは吸着水との縮合により結合可能な基からなる。シランカップリング剤は、ガラス繊維強化プラスチックなどの有機質と無機質からなる複合材料を製造する際に、これらの結合を仲介するものとして幅広く用いられており、Yがアルキル基などの不活性な基の場合は、改質表面上に、付着や摩擦の防止、つや保持、撥水、潤滑などの性質を付与する。また、反応性基を含む場合は、主として接着性の向上に用いられる。
さらに、Yに直鎖状のフッ化炭素鎖を導入したフッ素系シランカップリング剤を用いて改質した表面は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)表面のように低表面自由エネルギーを持ち、撥水、潤滑、離型などの性質が向上し、さらに撥油性も発現する。
直鎖状のフルオロアルキルシランとして、例えば、Y=CFCHCH,CF(CFCHCH,CF(CFCHCHなどを挙げることができる。
また、Yの部分は、パーフルオロエーテル(PFPE)基(−CF−O−CF−)を有する材料を用いることができる。
また、シランカップリング剤としては、片側のみでなく、両側にシランカップリング基が結合した材料XSiYSiXを用いることもできる。
また、ダイキン工業(株)製オプツール、(株)ハーベス製デュラサーフ、住友3M(株)製ノベックEGC1720、ソルベイソレクシス(株)製フルオロリンクS−10、(株)ティーアンドケイ製ナノス、信越化学工業(株)製サイフェルKY−100・AGC製サイトップMタイプなど、市販のシランカップリング撥水材料を用いることもできる。
なお、図1(a)は、シランカップリング剤31が加水分解により、XがOH基に置換されている状態を示す。その後、基板10上のOH基、または、隣り合うシランカップリング剤31同士で脱水縮合が起こり、図1(b)に示すような構造の膜を形成することができる。
<保管工程>
撥水膜を成膜した後、撥水膜の使用前に、所定の時間空気中で保管することが好ましい。空気中で保管することにより、基材と撥水膜の密着をより強固にすることができる。保管時間は1週間以上、好ましくは2週間以上保管することが好ましい。また、撥水膜の保管は、温度と湿度を制御した状態で行なうことが好ましい。温度および湿度を上記範囲とし保管することで、基材と撥水膜の密着性をより高めることができる。
<インクジェット記録装置の全体構成>
次に本発明の撥水膜の形成方法により形成された撥水膜を適用した例として、ノズルプレート、ノズルプレートを備えるインクジェットヘッド、および、インクジェット記録装置について説明する。本発明の撥水膜の形成方法は、ノズルプレートの製造方法、インクジェットヘッドの製造方法、インクジェット記録装置の製造方法に対して好ましく用いることができる。
図2は、インクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排出部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
図2に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(第2の搬送体)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが好ましい。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図2に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内の熱可塑性樹脂微粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度を50℃以上に設定することで、定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
また、インク中にUV硬化性モノマーを含有させた場合は、乾燥部で水分を充分に揮発させた後に、UV照射ランプを備えた定着部で、画像にUVを照射することで、UV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
(排出部)
図2に示すように、定着部120に続いて排出部122が設けられている。排出部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
なお、図2においてはドラム搬送方式のインクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、ベルト搬送方式のインクジェット記録装置などにおいても用いることができる。
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造について説明する。なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図3(a)は、インクジェットヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)は、インクジェットヘッド250の他の構造例を示す平面透視図である。図4は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a)中、IV−IV線に沿う断面図)である。
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッド250におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクジェットヘッド250は、図3(a)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252などからなる複数のインク室ユニット253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙搬送方向と略直交する方向に記録媒体124の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(b)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
図4に示すように、各ノズル251は、インクジェットヘッド250のインク吐出面250aを構成するノズルプレート260に形成されている。ノズルプレート260は、例えば、Si、SiO2、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料、ポリイミドのような樹脂系材料で構成されている。
ノズルプレート260の表面(インク吐出側の面)には、インクに対して撥液性を有する撥水膜262が形成されており、インクの付着防止が図られている。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル251と供給口254が設けられている。各圧力室252は供給口254を介して共通流路255と連通されている。共通流路255はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に分配供給される。
圧力室252の天面を構成し共通電極と兼用される振動板256には個別電極257を備えた圧電素子258が接合されており、個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電素子258が変形してノズル251からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に供給される。
なお、ノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、ライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、用紙の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを用紙の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると用紙を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の用紙の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して用紙の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
<成膜温度の決定>
ダイキン製オプツールDSX(20wt%)をTG−DTAの測定部に滴下し、室温下で重量減少が止まるまで待機した。80wt%を占めるパーフルオロヘキサンが揮発し、撥水材料のみがTG−DTAの測定部に残った後、10℃/分の速度で測定部を加熱し、TGデータを得た。TGのデータを図5に示す。図5に示すように、重量減少が10%の温度は300℃、重量減少が90%の温度は470℃であった。
(比較例1)
SAMCO社製プラズマCVD装置を用いて、6インチシリコン基板にTEOS(テトラエトキシシラン)を熱気化により供給し、シリコン基板表面にSiO膜を200nm成膜した。その後、セン特殊光源製低圧水銀灯を用い、大気下で30分間照射し表面を清浄化した。
その後、上記で形成したSi/SiO基板を蒸着装置の基板フォルダにセットした。また、オプツールDSX(20wt%)をエッペンドルフ社のピペッタにて50μlを計量し、蒸着加熱部に滴下した。加熱部を250℃に加熱したところ、2時間以上経過しても撥水膜は十分に成膜されていなかった。また、玉状の余分な撥水材料も形成されていなかった。温度が低い条件では、多くの時間を要しても撥水膜は十分に成膜されないことが確認できた。なお、玉状の余分な撥水材料は、光学顕微鏡により確認した。
(比較例2、3)
Si/SiO基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着源の温度は600℃とした。撥水材料は、比較例1と同等量としたが、突沸を防止するためにアルミナ沸騰石を蒸着加熱部に置き、アルミナ沸騰石を濡らすようにして撥水材料を滴下した。なお、沸騰石を使用しない場合は、突沸が生じ加熱部が汚染された。成膜時間を2分間(600℃に至るまでの時間を含む。以後同様。)(比較例2)としたところ、成膜後の静的接触角は105°であり、撥水膜は十分に被覆されていなかった。成膜時間が3分間(比較例3)では、静的接触角は113°となったが、玉状の余剰の撥水材料が生成された。
また、参考例として比較例2と比較例3の成膜時間の中間の2分30秒の成膜時間で、撥水膜の成膜を5回行なった。しかしながら、静的接触角が110°未満の被覆不十分な状態か、玉状の余剰撥水材料が生成するか、いずれかの状態で成膜は安定していなかった。
比較例2、3において、インク浸漬試験、ワイプ試験、ノズル詰まり試験を行った。
[インク浸漬試験]
アルカリ性のインク中に、60℃の温度で、所定時間、浸漬を行なった。その後の水の静的接触角を測定した。なお、静的接触角が70°未満になるまでの時間が400時間以上かかる撥水膜を実際の使用に耐えられるレベルとし合格とした。
[ワイプ試験]
東レ製トレシーを治具にセットし、一定圧力となるようにシリコン基板に当接させ、擦り試験を行い、擦り回数1000回おきに水で静的接触角を測定した。水の接触角が70°となる前後で直線を引き、70°となる回数をワイプ寿命とした(例えば、2000回ワイプで80°、3000回ワイプで60°の場合、2500回ワイプを寿命とした)。なお、ワイプ寿命が2000回以上の撥水膜を実際の使用に耐えられるレベルとし合格とした。
結果を表1に示す。
Figure 0005497810
インク浸漬試験において、比較例2は、24時間で70°まで静的接触角が低下したが、比較例3においては、1000時間浸漬しても静的接触各の低下は見られなかった。また、ワイプ試験においても、比較例3は5200回と良好な結果を得ることができた。
[ノズル詰まり試験]
次に玉状余剰撥水材料のある膜、ない膜において、ノズル詰まり試験を行った。ノズル詰まり試験は、10回程度ノズル面のワイプを行ない、吐出試験により確認した。玉状余剰撥水材料のない膜は、正常に吐出を行なうことができたが、玉状余剰撥水材料のある膜は、不吐出となり、光学顕微鏡で異物の詰まりが確認された。比較例3においては、インク浸漬試験、ワイプ試験においては良好な結果を得ることができたが、玉状余剰撥水材料が形成されているため、ノズル詰まり試験によりノズル詰まりが発生していた。
また、成膜時間を2分半としたサンプルから、蒸着温度600℃では、同じ成膜時間で成膜を行なっても同一の撥水膜を成膜することができなかった。これは、高温の蒸着温度で成膜すると、単分子膜の形成と、単分子膜上の玉状の余剰撥水材料の形成が同時に進行するからであると考えられる。
このように、蒸着温度600℃においては、インク浸漬試験およびワイプ試験に耐えられ、かつ、玉状の余剰撥水材料の存在しない撥水膜を成膜することはできなかった。
(比較例4)
Si/SiO基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は500℃とし、突沸は見られなかったため、加熱部の汚染はなく、沸騰石は用いずに成膜した。
しかしながら、比較例2、3と同様に、成膜時間3分では110°以上の静的接触角を得ることができず、成膜時間4分では玉状の余剰撥水材料が生成していた。また、成膜時間を3分30秒とした場合も、毎回同じ膜を形成することができなかった。
(実施例1、比較例5、6)
Si/SiO基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は450℃とし、成膜時間を3分(比較例6)、4分(実施例1)、5分(比較例7)とし、成膜を行なった。結果を表2に示す。
Figure 0005497810
成膜時間の短い比較例5においては、静的接触角が105°であり、十分な撥水性を有する膜を成膜することができなかった。また、成膜時間の長い比較例6においては、玉状余剰撥水材料が付着しており、ノズル詰まりが発生すると考えられる。成膜時間を4分とすることで、玉状余剰撥水材料が見られず、また、静的接触角が110°以上となる良質な膜を安定して得ることができた。
(実施例2〜4、比較例7、8)
Si/SiO基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は400℃とし、成膜時間を5分(比較例7)、10分(実施例2)、20分(実施例3)、30分(実施例4)、40分(比較例8)とし、成膜を行なった。結果を表3に示す。
Figure 0005497810
蒸着温度を400℃とした場合、成膜時間を10分〜30分とした実施例2〜4においては、玉状余剰撥水材料がなく、また、静的接触角が110°以上の良質な膜が得られた。
特に、実施例4においては、インク浸漬試験にもワイプ試験にも優れた膜を得ることができた。インク浸漬試験、ワイプ試験については、比較例3において良好な結果が得られているが、玉状余剰撥水材料があるため、ノズル詰まりが発生することが考えられる。実施例4においては、インク浸漬試験、ワイプ試験に関して同様の結果が得られており、玉状余剰物質がなく、かつ、単分子膜が密に成膜された撥水膜が形成されている。逆に、比較例6においては、玉状余剰撥水材料が存在しても、インク浸漬耐性、ワイプ耐性も良好ではなく、単分子膜で完全に被覆されないうちから、玉状の余剰撥水材料が付着しているといえる。
以上より、成膜温度が低い場合は、十分な撥水性を有する撥水膜が形成されず、成膜温度が高い場合は、十分な撥水性を有する撥水膜が形成されるが、玉状余剰撥水材料が形成されやすいため、ノズル詰まりが発生しやすいことが確認できる。したがって、撥水膜の蒸着温度を所定の範囲内で行なうことで、良好な撥水膜を形成することができる。
また、成膜時間が短い場合は、十分な撥水性を有する撥水膜が形成されず、成膜時間が長い場合は、形成された撥水膜の上に、玉状余剰撥水材料が形成され、ノズル詰まりの原因となるため、玉状余剰撥水材料が形成される前に撥水膜の成膜を止めることが好ましい。また、その成膜時間の中で、長い時間行なうことで、より密度の高い単分子膜を成膜することができる。
[滑落性試験]
滴サイズ10μlの純水を撥水膜上に滴下し、ステージを傾けて滑落を開始する角度を測定した。実施例、比較例の温度条件で複数の膜を作製し、玉状余剰撥水材料の有無で比較を行った。
静的接触角が110°未満の撥水膜では、ステージを80°まで傾けても水滴は滑落しなかった。撥水膜の被覆が不十分で、基板の親水基に水がトラップされるからであると推定される。
玉状余剰撥水材料がある膜は、いずれも30°以上の滑落角となり、特に、比較例3の膜では、水滴は80°まで傾けても滑落しなかった。
玉状余剰撥水材料が形成されない条件で撥水膜を成膜することにより、液滴の滑落性(動的撥水性)に対しても効果を有することが確認された。
図6に、高温、中温、低温での成膜温度に対して、横軸に成膜時間をとった場合の生成される膜の状態を示す。なお、図6は、各温度における成膜時間に対する膜の状態を示す概略図であり、成膜時間は、温度により異なっている。
図6に示すように、温度が高温(600℃、500℃)の場合は、単分子膜が密に形成されず、ワイプ耐性が十分に得られない状態で、玉状余剰撥水材料が形成される。さらに、成膜を行うことで、ワイプ耐性は高いが、玉状余剰撥水材料が形成された膜が形成される。したがって、温度が高温である場合は、玉状余剰撥水材料が形成されず単分子膜が密に形成された膜を成膜することはできない。
温度が中温(450℃)の場合については、成膜時間が短い場合は、撥水膜の密度の低い膜が生成し、成膜時間を長くすることで、玉状の余剰撥水材料が形成されず、ワイプ耐久性の良好な膜を成膜することができる。しかし、そのまま成膜を続けると撥水膜が完全に被覆する前に玉状の余剰撥水材料が形成される。
温度を低温(400℃)とした場合は、時間により単分子膜を密に成膜することができ、玉状余剰撥水材料が形成される前に撥水膜で完全に被覆することができる。しかしながら、そのまま成膜を続けることで、玉状の余剰撥水材料が形成されるため、所定の時間で成膜を止めることで、ワイプ耐久性、耐薬品性が高く、玉状の撥水材料の形成されていない撥水膜を製造することができる。
以上のように、成膜温度を突沸の生じない温度未満、好ましくは、10℃/分の速度で昇温した場合の重量減少が10%以上90%以内の温度を成膜温度とすることで、撥水性、耐薬品性、耐ワイプ性の良好な撥水膜を成膜することができる。ただし、成膜時間が長くなると撥水膜表面に玉状の余剰撥水材料が形成され、この余剰撥水材料がワイプにより剥離し、ノズル詰まりの原因となるため、余剰撥水材料が形成される前に成膜を停めることにより、良好な物性で、ノズル詰まりは発生しにくい成膜条件を決定することができる。
このようにして形成された撥水膜は、例えば、実施例2、3のような比較的インク浸漬耐性の低い撥水膜、ワイプ耐性の低い撥水膜については、成膜時間を短くすることができるので、生産効率が高く、使い捨ての材料として使用することができる。また、実施例4のようなインク浸漬耐性、ワイプ耐性の高い撥水膜については、耐久性のある材料として使用することができる。
10…基板、30…撥水膜、31…シランカップリング剤、100…インクジェット記録装置、112…給紙部、114…処理液付与部、116…描画部、118…乾燥部、120…定着部、122…排出部、124…記録媒体、154…処理液ドラム、156…処理液塗布装置、170…描画ドラム、172M、172K、172C、172Y…インクジェットヘッド、176…乾燥ドラム、180…温風噴出しノズル、182…IRヒータ、184…定着ドラム、186…ハロゲンヒータ、188…定着ローラ、192…排出トレイ、196…搬送ベルト

Claims (7)

  1. 基板上に、シランカップリング剤により有機膜を蒸着法により被覆する有機膜被覆工程と、
    前記有機膜被覆工程における成膜条件を、前記基板と同じ材料を用いて、予め決定する成膜条件決定工程と、を有し、
    前記成膜条件決定工程は、前記シランカップリング剤が、蒸発する温度以上突沸が起こらない温度以下に決定する温度決定工程と、前記温度決定工程で決定した温度において、有機膜を被覆し、光学顕微鏡観察により玉状の余剰撥水材料が形成される時間を測定し、前記時間より短い時間を成膜時間と決定する成膜時間決定工程と、からなる撥水膜の製造方法。
  2. 前記温度決定工程により決定される温度は、10℃/minの速度で昇温して得られたTG−DTA測定で、重量減少が10%以上90%以下である請求項1に記載の撥水膜の製造方法。
  3. 前記成膜時間決定工程は、成膜物の静的接触角を測定し、前記静的接触角が110°以上になる時間以上に決定する請求項1または2に記載の撥水膜の製造方法。
  4. 前記成膜時間決定工程は、前記玉状の余剰撥水材料が形成される時間の直前を成膜時間と決定する請求項1から3のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
  5. 前記温度決定工程により決定される温度は、TG−DTA測定による重量減少が20%以上80%以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
  6. 前記有機膜を成膜した後、使用前に所定の時間、保管する保管工程と、を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
  7. 前記保管工程は、温度および湿度を制御して行なう請求項6に記載の撥水膜の製造方法。
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