JP2006291266A - フッ素化合物の気相表面処理法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い撥水撥油性を有する均一な膜を形成するための表面処理方法を提供する。
【解決手段】 炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有するフッ素化合物を含んでなる表面処理剤を気相中で基板表面に堆積することを特徴とする、表面処理された撥水撥油性基板の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有するフッ素化合物を含んでなる表面処理剤を気相中で基板表面に堆積することを特徴とする、表面処理された撥水撥油性基板の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、短鎖フルオロアルキル基、または、低分子量パーフルオロポリエーテル基を有するフッ素化合物、好ましくは、フッ素系のシラン化合物、チオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、リン酸化合物を気相中で基板に表面処理することにより、化学的、形態学的に均一な非常に高い撥水撥油性を有する基板を作製する技術を提供する。この基板は電子、光学、医療、化学分析用デバイスなどの基板に適用できる。
以下の構造を有するフルオロアルキルトリクロロシラン:
CnF2n+1CH2CH2SiCl3 (n=3-10)
の希薄溶液中に基板を浸漬することにより、フルオロアルキルトリクロロシラン分子が自発的に基板上で単分子膜を形成する技術が知られており、この溶液処理方法で形成される単分子膜は、n=8,10の長鎖フルオロアルキル基(以下、フルオロアルキル基を「Rf基」と省略する)のタイプが極めて高い撥水撥油性を発現する[Langmuir, 8, 1195(1992)]。また、同様のフッ素系クロロシラン化合物を非水溶媒中に溶解させた溶液と親水化した基板表面を接触させることにより、基板を撥水撥油処理する方法も開示されている(特許1810942, 特許3389754)。
CnF2n+1CH2CH2SiCl3 (n=3-10)
の希薄溶液中に基板を浸漬することにより、フルオロアルキルトリクロロシラン分子が自発的に基板上で単分子膜を形成する技術が知られており、この溶液処理方法で形成される単分子膜は、n=8,10の長鎖フルオロアルキル基(以下、フルオロアルキル基を「Rf基」と省略する)のタイプが極めて高い撥水撥油性を発現する[Langmuir, 8, 1195(1992)]。また、同様のフッ素系クロロシラン化合物を非水溶媒中に溶解させた溶液と親水化した基板表面を接触させることにより、基板を撥水撥油処理する方法も開示されている(特許1810942, 特許3389754)。
しかし、従来、基材に高い撥水撥油性を付与するために表面処理剤として汎用されてきた炭素数6〜12の長鎖Rf基を有するRf基含有化合物は、最近になって環境、生体への蓄積性の問題が指摘されている。最近の研究結果[EPAレポート"Draft Risk Assessment of the Potential Human Health Effects Associated With Exposure to Perfluorooctanoic Acid and Its Salts (PFOA)" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoarisk.pdf)]などから、長鎖Rf基含有化合物の一種であるPFOA(perfluorooctanoic acid)に対する人体への蓄積性の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日にEPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。
一方、Federal Register(FR Vol.68, No.73/April 16, 2003[FRL-2303-8], http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)やEPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003 EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf)やEPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、テロマーが分解または代謝によりPFOAを生成する可能性があると公表している(テロマーとは長鎖Rf基のことを意味する)。また、テロマーが、撥水撥油性、防汚性を付与された泡消火剤、ケア製品、洗浄製品、カーペット、テキスタイル、紙、皮革などの多くの製品に使用されていることをも公表している。
このような環境問題のために、長鎖Rf基含有化合物の代替物質として、炭素数1〜5の短鎖Rf基を有するRf基含有化合物や分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基(以下、パーフルオロポリエーテル基を「PFPE基」と省略する)を有するPFPE基含有化合物を撥水撥油剤として利用する必要性が生じてきた。しかし、前述の溶液処理法では、炭素数1〜5のRf基、または、分子量3000以下のPFPE基を有するシラン化合物を用いたときに、十分な撥水撥油性を基板に付与することができなかった。具体的には、n-ヘキサデカンの前進接触角は長鎖Rf基含有シランのそれに近い70°程度の値を示すが、後退接触角が40°以下と低く、転落角が40°以上の高い値を示すという問題があった。ここで、前進/後退接触角はそれぞれ接触線が前進または後退する際に測定される接触角であり、転落角は基板傾斜時に液体が転落し始める傾斜角度である。後退接触角の値には、基板の欠陥が敏感に反映されるので[Adamson, A.W. and A.P. Gast, Physical Chemistry of Surfaces 6th ed. The Solid-Liquid Interface Contact Angle. 1997, New York: Wiley.]、溶液処理法で基板上に形成された短鎖Rf基含有シランの膜は多数の欠陥が存在するものと考えられる。n-ヘキサデカンに対する前進接触角が70°程度の値を示す場合でも、後退接触角が40°以下であれば、表面の撥油膜の均一性は良好ではない。また、転落角は前進接触角と後退接触角の差(ヒステリシス)の値が大きいほど高くなる[Langmuir, 16, 7777(2000)]。後退接触角と転落角は基板上での液体の動きやすさの指標となり、実用的に極めて重要である。
本発明の課題は、炭素数1〜5の短鎖Rf基、または、分子量3000以下のPFPE基を有するフッ素化合物を表面処理剤として用いて、高い撥水撥油性を有する均一な膜を形成するための表面処理方法を提供することである。
本発明は、炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有するフッ素化合物を含んでなる表面処理剤を気相中で基板表面に堆積することを特徴とする、表面処理された撥水撥油性基板の製造方法を提供する。
本発明により膜が形成された基板は、十分に高い後退接触角と低い転落角を発現する。
本発明によれば、化学的、形態学的に均一な非常に高い撥水撥油性を有する基板を作製することができる。この基板は電子、光学、医療、化学分析デバイスなどの基板に適用できる。
本発明によれば、化学的、形態学的に均一な非常に高い撥水撥油性を有する基板を作製することができる。この基板は電子、光学、医療、化学分析デバイスなどの基板に適用できる。
本発明において、Rf基の炭素数は、1〜5、特に1〜4であり、直鎖でも分岐構造でも良い。Rf基としては、具体的には以下のものが例示される。
(直鎖構造) CF3CF2CF2CF2-, CF3CF2CF2-, CF3CF2-, CF3-,
(分岐構造) (CF3)2CF-, (CF3)3C-, (CF3)2CFCF2CF2-
(直鎖構造) CF3CF2CF2CF2-, CF3CF2CF2-, CF3CF2-, CF3-,
(分岐構造) (CF3)2CF-, (CF3)3C-, (CF3)2CFCF2CF2-
PFPE基は、 パーフルオロポリエーテル基は、少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物である。パーフルオロポリエーテル基の炭素数は、5以上、例えば8以上であってよい。パーフルオロポリエーテル基の分子量の下限は、約100、例えば約200であってよい。
CaF2a+1O(CF2CF2CF2O)m(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF(CF3)O)m(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF2CF2O)m(CF2O)n(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF(CF3)O)m(CF2O)n(CF2)l-
[mおよびnは1〜20、好ましくは1〜3を表わし、aは1〜20を表わし、lは1または2を表わす。]
PFPE基の分子量は3000以下、好ましくは2000以下である。
CaF2a+1O(CF2CF2CF2O)m(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF(CF3)O)m(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF2CF2O)m(CF2O)n(CF2)l-
CaF2a+1O(CF2CF(CF3)O)m(CF2O)n(CF2)l-
[mおよびnは1〜20、好ましくは1〜3を表わし、aは1〜20を表わし、lは1または2を表わす。]
PFPE基の分子量は3000以下、好ましくは2000以下である。
フッ素化合物は、基材と反応する基を有することが好ましい。反応性基は、加水分解可能な基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基またはリン酸基であることが好ましい。
加水分解可能な基が、Si、Al、B、Pb、Sn、Ti、Zr、VおよびZnからなる群から選択された少なくとも1つの元素を有する基であることが好ましい。
加水分解可能な基が、Si、Al、B、Pb、Sn、Ti、Zr、VおよびZnからなる群から選択された少なくとも1つの元素を有する基であることが好ましい。
フッ素化合物は、式:
(Rf'-A)pB (1)
[式中、Rf'は、炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有する含フッ素基(特に、炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基)、
Aは、2価、3価または4価の基、
Bは、基材と反応する基,
pは1〜3である。]
で示される化合物であることが好ましい。
(Rf'-A)pB (1)
[式中、Rf'は、炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有する含フッ素基(特に、炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基)、
Aは、2価、3価または4価の基、
Bは、基材と反応する基,
pは1〜3である。]
で示される化合物であることが好ましい。
A基は、Rf'基と基板に対する反応性基とを連結する基である。A基は、2価、3価または4価の基であってよい。A基が酸素原子を含む場合、Rf'基が光分解した後に水酸基、カルボキシル基などの親水性残基を形成し、照射領域の接触角を効果的に低下することが可能である。
A基は、構造の一部に酸素を含む官能基を有する基であるか、あるいは炭素数1〜4のアルキレン基である。そのような官能基としては、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基[-SO2N(R21)R22-(ただし、R21は炭素数1〜4のアルキル基、R22は炭素数1〜4のアルキレン基)]、水酸基、ウレタン基、エステル基などが挙げられる。酸素原子を含むA基の具体例は、次のとおりである。
A基は、構造の一部に酸素を含む官能基を有する基であるか、あるいは炭素数1〜4のアルキレン基である。そのような官能基としては、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基[-SO2N(R21)R22-(ただし、R21は炭素数1〜4のアルキル基、R22は炭素数1〜4のアルキレン基)]、水酸基、ウレタン基、エステル基などが挙げられる。酸素原子を含むA基の具体例は、次のとおりである。
-O-CH2CH2CH2-
-SO-CH2CH2CH2-
-SO2-CH2CH2CH2-
-SO2N(C2H5)CH2CH2-
-CH2CH(OH)CH2-
-CH2CH2-OCONH-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-NHCOO-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-OCO-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-COO-CH2CH2CH2-
-SO-CH2CH2CH2-
-SO2-CH2CH2CH2-
-SO2N(C2H5)CH2CH2-
-CH2CH(OH)CH2-
-CH2CH2-OCONH-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-NHCOO-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-OCO-CH2CH2CH2-
-CH2CH2-COO-CH2CH2CH2-
B基は、基板に結合する性質を有する反応性基である。B基は、1価、2価(例えば、-S-、-S-S-、(-O)2P(=O)OH)、3価[例えば、(-O)3P(=O)]または4価の基であってよい。B基としては、加水分解可能な基、チオール基(-SH)、スルフィド基(-S-)、ジスルフィド基(-S-S-)、リン酸基[P(=O)(OH) l (O-) 3-l (l=1〜3)]のいずれかを含む基が挙げられる。
加水分解可能な基としては、式:-MXnYa-n
[式中、Mは、Si、Al、B(ホウ素)、Pb、Sn、Ti、Zr、VまたはZn、
Xは水素、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基、
Yは炭素数1〜4のアルキル基、
aは((M原子の原子価数)−1)(1〜4、例えば1〜3)、
nは1〜4、例えば1〜3である。]
で示される基が挙げられる。
加水分解可能な基としては、シラン基[−SiXnY3-n(X:水素、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基、Y:炭素数1〜4のアルキル基、n=1〜3)]が好ましい。
加水分解可能な基としては、式:-MXnYa-n
[式中、Mは、Si、Al、B(ホウ素)、Pb、Sn、Ti、Zr、VまたはZn、
Xは水素、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基、
Yは炭素数1〜4のアルキル基、
aは((M原子の原子価数)−1)(1〜4、例えば1〜3)、
nは1〜4、例えば1〜3である。]
で示される基が挙げられる。
加水分解可能な基としては、シラン基[−SiXnY3-n(X:水素、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基、Y:炭素数1〜4のアルキル基、n=1〜3)]が好ましい。
B基の具体例は次のとおりである。
-Si(OCH3)3
-Si(OC2H5)3
-SiCl3
-SH
-S-、
-S-S-
-OP(=O)(OH)2
(-O)2P(=O)OH
(-O)3P(=O)
-Si(OCH3)3
-Si(OC2H5)3
-SiCl3
-SH
-S-、
-S-S-
-OP(=O)(OH)2
(-O)2P(=O)OH
(-O)3P(=O)
本発明のフッ素化合物は、
(i)シラン化合物
(ii)チオール化合物
(iii)スルフィド化合物
(iv)ジスルフィド化合物
(v)リン酸化合物
から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
(i)シラン化合物
(ii)チオール化合物
(iii)スルフィド化合物
(iv)ジスルフィド化合物
(v)リン酸化合物
から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
フッ素化合物の具体例は次のものである。
Rf-CH2CH2-SiCl3
Rf-OCH2CH2CH2-SiCl3
Rf-CH2CH2-Si(OCH3)3
Rf-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)3
Rf-CH2CH2-Si(OC2H5)3
Rf-CH2CH2-SH
Rf-CH2CH2-S-CH2CH2-Rf
Rf-CH2CH2-S-S-[-CH2CH2-Rf]
[Rf-CH2CH2-O]2P(=O)OH
[Rf-CH2CH2-O]3P(=O)
H[Rf-CH2CH2-OCOCH2CH2]n-SCH2CH2CH2OCONH(CH2)3-Si(OC2H5)3
H[Rf-CH2CH2-OCOCH2C(Cl)H]n-SCH2CH2CH2OCONH(CH2)3-Si(OCH3)3
(上記式中、Rfは炭素数1〜5のフルオロアルキル基、nは2-100、特に2-10である。)
PFPE -CH2CH2CH2-Si(OCH3)3
PFPE -SO2N(C2H5)CH2CH2- Si(OCH3)3
PFPE -CH2CH2CH2- SH
[PFPE -CH2CH2CH2- O]2P(=O)OH
[PFPE -CH2CH2CH2- O]3P(=O)
(上記式中、PFPEは分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基である。)
などが例示される。
Rf-CH2CH2-SiCl3
Rf-OCH2CH2CH2-SiCl3
Rf-CH2CH2-Si(OCH3)3
Rf-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)3
Rf-CH2CH2-Si(OC2H5)3
Rf-CH2CH2-SH
Rf-CH2CH2-S-CH2CH2-Rf
Rf-CH2CH2-S-S-[-CH2CH2-Rf]
[Rf-CH2CH2-O]2P(=O)OH
[Rf-CH2CH2-O]3P(=O)
H[Rf-CH2CH2-OCOCH2CH2]n-SCH2CH2CH2OCONH(CH2)3-Si(OC2H5)3
H[Rf-CH2CH2-OCOCH2C(Cl)H]n-SCH2CH2CH2OCONH(CH2)3-Si(OCH3)3
(上記式中、Rfは炭素数1〜5のフルオロアルキル基、nは2-100、特に2-10である。)
PFPE -CH2CH2CH2-Si(OCH3)3
PFPE -SO2N(C2H5)CH2CH2- Si(OCH3)3
PFPE -CH2CH2CH2- SH
[PFPE -CH2CH2CH2- O]2P(=O)OH
[PFPE -CH2CH2CH2- O]3P(=O)
(上記式中、PFPEは分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基である。)
などが例示される。
本発明の基板に用いる基材は、シリコン、合成樹脂、ガラス、金属、セラミックスなどである。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン-プレピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルベンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体(AS 樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。合成樹脂製の基板を用いれば、軽量、透明、安価、曲げられるなどの特徴を基板に付与できる。
ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、白金等が挙げられる。
セラミックとしては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられ、これらの混合物を使用して良い。
金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、白金等が挙げられる。
セラミックとしては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられ、これらの混合物を使用して良い。
いずれの基板を用いる場合でも、プラズマ処理、UV処理、オゾン処理を行っても良い。基板にこれらの処理を施すことにより、基板表面の有機汚染物が除去され、さらに官能基(例えば、OH基)を導入できるので、フッ素化合物の基板への反応性が向上する。
本発明は気相中で上記のフッ素化合物で基板を表面処理することにより、化学的、形態学的に均一な撥液膜が形成され、非常に高い撥水撥油性を有する基板を作製できることを特徴とする。以下に、気相中で基板を表面処理する方法を例示するが、気化したフッ素化合物を基板に接触させる原理であれば、どのような方法でも良い。
1.大気中、あるいは、窒素、アルゴンのような不活性気体の雰囲気中でフッ素化合物と基板を密閉容器中に封入して室温以上で加熱気化する方法。
2.真空蒸着装置内にフッ素化合物と基板を封入して減圧下でフッ素化合物を加熱気化する方法。
3.イオンプレーティング法
4.スパッタリング法
2.真空蒸着装置内にフッ素化合物と基板を封入して減圧下でフッ素化合物を加熱気化する方法。
3.イオンプレーティング法
4.スパッタリング法
これら方法において、温度は10〜200℃、圧力は10-5〜107Paであってよい。処理時間は、例えば、10秒〜5時間であってよい。
真空蒸着法において、一般に、気相は、フッ素化合物のみである。イオンプレーティング法およびスパッタリング法において、一般に、気相は、フッ素化合物に加えて、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)をも含有する。
真空蒸着法において、一般に、気相は、フッ素化合物のみである。イオンプレーティング法およびスパッタリング法において、一般に、気相は、フッ素化合物に加えて、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)をも含有する。
フッ素化合物は上記の方法によりそのままで基板に反応させても良いし、有機溶剤に溶解したものを基板に反応させても良い。すなわち、表面処理剤は、フッ素化合物単独、あるいはフッ素化合物と有機溶剤との混合物であってよい。有機溶剤の例は、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、炭化水素(例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素)等が挙げられ、有機溶剤はフッ素化されていてもされていなくてもどちらでも良い。有機溶剤の具体例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、パーフルオロデカリン、ハイドロフルオロエーテル、HCFC225、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、ヘキサン、イソペンタン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
この簡便なプロセスで基材の表面に、フッ素化合物の膜が形成される。フッ素化合物の膜の厚さは、一般に0.5〜1000nmであって良い。フッ素化合物の膜は、単分子膜であることが好ましい。こうして、n-ヘキサデカンに対する後退接触角が40°以上、転落角40°以下の均一な撥油性表面が得られる。後退接触角は転落法、拡張伸縮法、Wilhelmy法などの方法により測定され、これらの方法に本質的な違いはない。
本発明の基板は、電子、光学、医療、化学分析などの幅広い用途のデバイスに用いることが可能である。例えば、電子デバイスとしては、トランジスタ、メモリ、発光ダイオード(EL)、レーザー、太陽電池などに利用できる。これらのデバイスからフレキシブルディスプレイ、無線タグ、ウエアラブルなコンピュータなどが製造される。また、光学デバイスとしては、光メモリ、画像メモリ、光変調素子、光シャッター、第二次高調波(SHG)素子、偏光素子、フォトニッククリスタル、レンズアレイなどに、医療デバイスとしては、バイオチップ、DNAアレイなどに利用できる。化学分析デバイスとしては、微小化学プラント、微小化学分析システムなどに利用できる。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
接触角と転落角は次の方法で測定した。
動的接触角と転落角の測定
水平に置いた基板にマイクロシリンジからn-ヘキサデカンを5μL滴下し、基板を2°/minの速度で傾斜させ、n-ヘキサデカンの液滴が転落し始めるまでを、ビデオマイクロスコープで動画として記録した。その動画を再生し、液滴が転落し始める角度を転落角とした。さらに転落直後の液滴が移動しているときの前進側の接触角を前進接触角、後退側の接触線を後退接触角とした。
接触角と転落角は次の方法で測定した。
動的接触角と転落角の測定
水平に置いた基板にマイクロシリンジからn-ヘキサデカンを5μL滴下し、基板を2°/minの速度で傾斜させ、n-ヘキサデカンの液滴が転落し始めるまでを、ビデオマイクロスコープで動画として記録した。その動画を再生し、液滴が転落し始める角度を転落角とした。さらに転落直後の液滴が移動しているときの前進側の接触角を前進接触角、後退側の接触線を後退接触角とした。
実施例1
シリコンウエハをアセトンで洗浄した後、オゾン洗浄することにより、表面に水酸基を形成させた。このシリコンウエハ(表面積10cm2)と表面処理剤CF3(CF2)3-CH2CH2-SiCl3 0.1mlを窒素雰囲気下で耐圧密閉容器(圧力1気圧)に封入し、100℃で2時間加熱することにより、このフッ素化合物を気化して基板に化学吸着させた。反応後、基板をメタノール中で5分間超音波洗浄し、減圧乾燥した。表面全体に均一な撥水撥油性の膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
シリコンウエハをアセトンで洗浄した後、オゾン洗浄することにより、表面に水酸基を形成させた。このシリコンウエハ(表面積10cm2)と表面処理剤CF3(CF2)3-CH2CH2-SiCl3 0.1mlを窒素雰囲気下で耐圧密閉容器(圧力1気圧)に封入し、100℃で2時間加熱することにより、このフッ素化合物を気化して基板に化学吸着させた。反応後、基板をメタノール中で5分間超音波洗浄し、減圧乾燥した。表面全体に均一な撥水撥油性の膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
実施例2および3
表面処理剤を、それぞれ、(CF3)2CF(CF2)2-CH2CH2-Si(OCH3)3(実施例2)およびF(CF2CF2CF2O)11CF2CF2CH2O-CH2CH2CH2-Si(OCH3)3(実施例3)に置き換える以外は実施例1と同様の手順を繰り返した。表面処理剤の単分子膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
表面処理剤を、それぞれ、(CF3)2CF(CF2)2-CH2CH2-Si(OCH3)3(実施例2)およびF(CF2CF2CF2O)11CF2CF2CH2O-CH2CH2CH2-Si(OCH3)3(実施例3)に置き換える以外は実施例1と同様の手順を繰り返した。表面処理剤の単分子膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
実施例4
基板であるシリコンウエハをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに置き換え、反応温度を100℃から50℃に変更する以外は実施例1と同様の手順を繰り返した。表面処理剤の単分子膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
基板であるシリコンウエハをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに置き換え、反応温度を100℃から50℃に変更する以外は実施例1と同様の手順を繰り返した。表面処理剤の単分子膜が形成していた。n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。結果を表1に示す。
比較例1および2
表面処理剤を、次の方法により液相中でシリコンウエハに表面処理する以外は実施例1と同様の手順を繰り返した(比較例1)。表面処理剤を、次の方法により液相中でシリコンウエハに表面処理する以外は実施例3と同様の手順を繰り返した(比較例2)。
表面処理剤を0.1mass%溶液となるように酢酸エチルで希釈した溶液に、Siウエハを25℃で12時間浸漬した。基板を引き上げた後、基板を酢酸エチル中で5分間超音波洗浄し、減圧乾燥した後に、n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。
表面処理剤を、次の方法により液相中でシリコンウエハに表面処理する以外は実施例1と同様の手順を繰り返した(比較例1)。表面処理剤を、次の方法により液相中でシリコンウエハに表面処理する以外は実施例3と同様の手順を繰り返した(比較例2)。
表面処理剤を0.1mass%溶液となるように酢酸エチルで希釈した溶液に、Siウエハを25℃で12時間浸漬した。基板を引き上げた後、基板を酢酸エチル中で5分間超音波洗浄し、減圧乾燥した後に、n-ヘキサデカンに対する動的接触角と転落角を測定した。
Claims (10)
- 炭素数1〜5のフルオロアルキル基または分子量3000以下のパーフルオロポリエーテル基を有するフッ素化合物を含んでなる表面処理剤を気相中で基板表面に堆積することを特徴とする、表面処理された撥水撥油性基板の製造方法。
- フッ素化合物が、基板に反応する反応性基を有する化合物である請求項1に記載の方法。
- 反応性基が、加水分解可能な基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基またはリン酸基である請求項2に記載の方法。
- 加水分解可能な基が、Si、Al、B、Pb、Sn、Ti、Zr、VおよびZnからなる群から選択された少なくとも1つの元素を有する基である請求項3に記載の方法。
- 加水分解可能な基が、シラン基である請求項4に記載の方法。
- フッ素化合物が以下の少なくとも1種である請求項1記載の表面処理法。
(i)シラン化合物
(ii)チオール化合物
(iii)スルフィド化合物
(iv)ジスルフィド化合物
(v)リン酸化合物。 - 請求項1に記載の方法で製造された撥水撥油性基板。
- n-ヘキサデカンに対する後退接触角が40°以上、転落角が40°以下である請求項7に記載の基板。
- 合成樹脂製である請求項7に記載の基板。
- 電子、光学、医療、化学分析用途のいずれかのデバイスで用いられる請求項7に記載の基板。
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