JP2007332433A - 真空蒸着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】互いに種類の異なる複数の蒸着源の相互間での汚染の発生を防止した、有機化合物の薄膜を形成するための真空蒸着装置を提供する。
【解決手段】真空蒸着装置100は、真空チャンバ110の底面壁上に、ルツボ121内に有機蒸着材料124が充填された第1の蒸着源120、およびルツボ131内に有機蒸着材料134が充填された第2の蒸着源130を収容した各防着容器140,150が配設され、モータ162が回転することで、一つのシャッタ160が、2個の第1の蒸着源120と第2の蒸着源130の内の一個の蒸着源を順次、開放し、基板ホルダ170に載置された多数の基板10の表面に、有機蒸着材料124および有機蒸着材料134からなる有機薄膜を成膜する。
【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着により有機化合物の薄膜を基板上に形成するための真空蒸着装置に関する。
従来、真空雰囲気中で、蒸着源より蒸着材料を蒸発させ、その蒸気を蒸着対象物の表面に付着させて薄膜を形成(成膜)する真空蒸着装置が知られている。例えば光学物品を製造する分野などでは、この真空蒸着装置により、例えばガラス基板などに反射防止膜、防汚性能を付与する防汚膜、あるいは光学フィルタ膜などが成膜される。
近年、蒸着源に用いられる蒸着材料の物質種が増加し、しかも物質種毎に最適な成膜条件が異なる。こうした成膜に対応するために、同一蒸着装置内に複数の蒸着源(通常2種)が配設され、使用物質に応じて蒸着源を切り換えて薄膜形成が行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、一般的に浸漬法などの湿式法を用いて成膜されていた撥水性、撥油性などを付与する機能性有機被膜を、作業性の向上を目的に、湿式法に代えて真空蒸着法を用いて成膜する表面処理方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平11−124667号公報 特開平5−239243号公報
特許文献1に示されるような蒸着装置を用いて、2つの物質種(蒸着材料)の蒸着源を切り換えて薄膜を形成する場合には、蒸着源毎に設けられたシャッタを操作し、一方の物質種が蒸着されている間に、その蒸気が他方の加熱手段を含む蒸着源周辺の表面に付着する。そして、他方の蒸発物質に切り換えた際に、その加熱手段を含む蒸着源周辺に付着した別物質も蒸着されることになり、成膜される膜物質の純度が劣ることになる。特に、特許文献2に示されるような有機物質を蒸着する場合は、無機物質に比べて比較的低真空条件で蒸着することが多く、有機物質の蒸気が周辺へ拡散し易く、2つの蒸着源間に遮蔽板などを配置しても、加熱手段を含む蒸着源の汚染を防ぐことが難しかった。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、互いに種類の異なる複数の蒸着源の相互間での汚染の発生を防止した、有機化合物の薄膜を形成するための真空蒸着装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の真空蒸着装置は、蒸着により複数種の有機化合物からなる薄膜を基板上に形成するための真空蒸着装置であって、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に、加熱手段を有し且つ互いに種類の異なる前記有機化合物を保持する複数の蒸着源と、前記複数の蒸着源と前記基板との間に前記蒸着源に保持された有機化合物の蒸気を開放および遮蔽するための一つのシャッタを備え、前記シャッタは、前記複数の蒸着源の内の一つを順次、開放することを特徴とする。
この構成によれば、真空蒸着装置は、真空チャンバと、真空チャンバ内に加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源と、複数の蒸着源と基板との間に蒸着源から放出される蒸気を開放および遮蔽するための一つのシャッタを備え、そのシャッタが、基板に対して加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源の内の一つを順次、開放することで、基板上に複数の有機化合物の薄膜を多層に形成する。これにより、シャッタが、加熱されて蒸気化した複数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放し、残りの他の蒸着源を遮蔽することにより、開放された蒸着源から放出され、周辺へ拡散し易い有機化合物の蒸気が、他の蒸着源に付着して汚染されるのを防ぐと共に、遮蔽された他の蒸着源の蒸気が、複数の蒸着源の相互間で汚染されるのを防ぐことができる。また、互いに種類の異なる複数の蒸着源を予め真空チャンバ内にセットし、その複数の蒸着源の内の一つを、順次、選択的に開放して蒸着することで、真空チャンバ内の真空状態を維持したまま、連続的に蒸着することが可能となり、蒸着工程の作業効率を向上することができる。
また、本発明の真空蒸着装置は、前記シャッタは、複数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有すること特徴とする。
この構成によれば、一つのシャッタが、基板に対して加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有することで、一つの蒸着源を開放し、残りの他の蒸着源を遮蔽することにより、開放された蒸着源から放出され、周辺へ拡散し易い有機化合物の蒸気が、他の蒸着源に付着する汚染を防ぐと共に、遮蔽された他の蒸着源の蒸気が、複数の蒸着源の相互間で付着して汚染されるのを防ぐことができる。また、互いに種類の異なる複数の蒸着源に対して、一つのシャッタが蒸着源の蒸気を開放および遮蔽するため、真空蒸着装置(真空チャンバ)を小型化することができる。
また、本発明の真空蒸着装置は、前記真空チャンバ内に、前記複数の蒸着源を蒸着源毎に収容する複数の防着容器をさらに備え、前記防着容器は、前記基板に対向する側に開口部を有し、前記シャッタが前記複数の防着容器の前記開口部を開放および遮蔽することを特徴とする。
この構成によれば、加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源を、おのおの、基板に対向する側に開口部を有する防着容器に収容し、その防着容器の開口部をシャッタが開放および遮蔽する。これにより、加熱手段を有する複数の蒸着源の加熱手段を含み、各蒸着源の有機化合物の蒸気が、相互間で付着して汚染されるのを防ぐことができる。
また、本発明の真空蒸着装置は、前記シャッタは、前記防着容器の前記開口部を遮蔽する遮蔽部及び前記開口部の全周側面に沿って前記防着容器底面方向へ延伸する縁部を有する蓋部材を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、複数の防着容器の開口部を開放および遮蔽するシャッタが、防着容器の開口部を遮蔽する遮蔽部及び開口部の全周側面に沿って延伸する縁部を有する蓋部材を備える。これにより、シャッタの蓋部材が、防着容器の開口部を上部および側面から覆う(遮蔽する)ことで、各防着容器内に収容され加熱された複数の蒸着源の蒸気は、防着容器内に留まって真空チャンバ内に放出されることはなく、各蒸着源の蒸気が相互間で付着して汚染されるのを防ぐことができる。また、防着容器の開口部が開放され、基板を蒸着する蒸着源から真空チャンバ内に放出された有機化合物の蒸気が、シャッタの蓋部材により遮蔽された他の蒸着源に付着して汚染されるのを防ぐことができる。
また、本発明の真空蒸着装置は、前記シャッタは回動手段により回転し、前記複数の蒸着源が、前記シャッタの回転中心に対して略等角度の位置に配設されたことを特徴とする。
この構成によれば、加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源、あるいは加熱手段を有する互いに種類の異なる複数の蒸着源を収容する各防着容器が、回動手段により回転するシャッタの回転中心に対して略等角度の位置に配設されることにより、真空チャンバ内に複数(多数)の蒸着源を配設し、しかも複数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有する一つのシャッタにより、互いに種類の異なる複数の有機化合物の薄膜を基板上に形成することができる。
以下、本発明の真空蒸着装置に係わる実施形態を図面に従って説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明を適用した真空蒸着装置の概略を示す断面側面図であり、図2は、図1における真空蒸着装置のA−A線に沿った断面の矢視図である。
図1および図2において、真空蒸着装置100は、真空チャンバ110内に、加熱装置を含む第1の蒸着源120および第2の蒸着源130、防着容器140,150、シャッタ160、蒸着される多数の基板10を保持する基板ホルダ170を備えている。
第1の蒸着源120および第2の蒸着源130は、真空チャンバ110内の底面側に設けられ、基板ホルダ170は天井側に設けられている。また、シャッタ160は、第1の蒸着源120および第2の蒸着源130と基板ホルダ170との間に配設されている。
真空チャンバ110は、側壁に排気口111が形成されている。排気口111には、図示しないドライポンプとターボ分子ポンプを組み合わせた真空ポンプが連結している。この真空ポンプを作動して真空チャンバ110内の排気が行われることで所定の真空状態が確保される。なお、真空ポンプは図示しない制御部に接続し、この制御部により制御される。
第1の蒸着源120および第2の蒸着源130は、共に同一構造を有し、それぞれ、有機化合物としての有機蒸着材料が充填されたルツボ121,131、ヒータ122,132、ルツボ121,131を保持する保持容器123,133を備えている。
ルツボ121,131は、アルミナ(Al23)あるいはベリリア(BeO)などの高融点酸化物からなり、内部に第1の有機蒸着材料124、および第2の有機蒸着材料134が充填されている。また、それぞれのルツボ121,131の外周部には、ヒータ122,132が巻き回されて、ルツボ121,131とヒータ122,132は、共に保持容器123,133内に収容、保持されている。
なお、本実施形態において、ヒータ122と保持容器123、およびヒータ132と保持容器133とで加熱手段を構成している。
ヒータ122,132は、図示しない制御部を介して電源に接続し、制御部の制御により通電して、ルツボ121,131を加熱し、ルツボ121,131内に充填された第1の有機蒸着材料124、あるいは第2の有機蒸着材料134を加熱する。
このように構成された第1の蒸着源120および第2の蒸着源130は、それぞれ、防着容器140,150内に収容されている。
防着容器140,150は、共に同一構造の容器であり、真空チャンバ110の天井に向かって開口する開口部141,151を有し、例えばステンレス鋼から形成されている。この防着容器140,150は、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130のルツボ121,131内に充填された各有機蒸着材料124,134の蒸気を基板10に蒸着する際に、2個の蒸着源120,130の内の一方の蒸着源から放出される有機蒸発物質が、他方の蒸着源に付着して汚染されるのを相互間で防止する機能を有する。
また、第1の蒸着源120および第2の蒸着源130が収納された防着容器140,150は、真空チャンバ110の底面上に、後述するシャッタ160の回転軸161に対して互いに対向する位置に配設されている(図2参照)。
図1および図2において、シャッタ160は、回転軸161に固着され、真空チャンバ110の底面の中央部に、回転可能に支持されている。
回転軸161は、真空チャンバ110の底面壁を貫通して外部に延出し、端部には回転軸161を回転駆動する、すなわちシャッタ160を回転するためのモータ162が接続されている。
シャッタ160は、少なくとも、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130が収容された防着容器140,150の少なくとも開口部141,151の一方の開口部を被う大きさを有し、防着容器140,150の上部に近接して配置されている。この防着容器140,150の上部(各開口部141,151)とシャッタ160との間隔α(図1参照)は、小さい程好ましいが、シャッタ160の確実な作動を確保すると共に、蒸着源120または蒸着源130から放出される蒸気の回り込みを防ぐためには、1mm〜5mm程度の範囲が好ましい。
回転軸161を回転駆動するモータ162は、モータ162の回転位置(すなわち、回転軸161およびシャッタ160の位置)を検出するためのエンコーダ(図示せず)が取り付けられており、エンコーダの検出位置に基づいてモータ162が回転制御される。なお、モータ162およびエンコーダは図示しない制御部に接続し、制御部によって制御される。
このモータ162が回転駆動することで回転軸161が回転すると共に、回転軸161に固着されたシャッタ160が回転する。これにより、シャッタ160は、防着容器140の開口部141と防着容器150の開口部151のどちらか一方の開口部を開放状態にすると共に、他方の開口部を遮蔽状態にする。
図2に示すシャッタ160は、防着容器140の開口部141(第1の蒸着源120)が開放状態にあり、防着容器150の開口部151(第2の蒸着源130)が遮蔽状態の態様を示している。また、二点鎖線で示すシャッタ160Aは、回転軸161が防着容器150の開口部151の遮蔽状態から略180°回転して、シャッタ160Aが防着容器140の開口部141を遮蔽し、防着容器150の開口部151を開放した状態を示す。
基板ホルダ170はドーム状に形成された保持具であり、多数の開口が形成され、この多数の開口に各有機蒸着材料からなる薄膜が蒸着される基板10が保持されている。また、基板ホルダ170は、ドーム状の上面中央部が回転軸171に取り外し可能に構成され、真空チャンバ110の天井壁の中央部に回転可能に支持された回転軸171に保持固定されている。すなわち、基板ホルダ170は、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130に向けて配置されている。
基板ホルダ170が保持固定された回転軸171は、真空チャンバ110の天井壁を貫通して外部に延出し、端部には、基板ホルダ170の多数の開口に載置されて有機蒸着物質が蒸着される基板間での成膜厚さを平均化するために、回転軸171(すなわち、基板ホルダ170)を回転するモータ172が接続されている。
次に、このように構成された真空蒸着装置100を用いて、基板10の表面に有機化合物としての第1の有機蒸着材料124および第2の有機蒸着材料134の薄膜(有機系薄膜)を形成する真空蒸着方法を説明する。
有機系薄膜を形成する基板10としては、眼鏡レンズ、光学機器用のレンズおよびハイブリットレンズ、ミラーなどの光学物品、あるいは、腕時計のカバーガラス、携帯電話の表示板、各種ディスプレイのカバー、さらに、CD(Compact Disc)などの記録媒体、その他の光学素子、例えば、レンズアレイ、プリズムなどが挙げられる。また、基材の材質は、特に限定されず、ガラス、プラスチックの何れであっても良い。
本実施形態は、基板10としてプラスチックレンズを用い、そのプラスチックレンズ上に、撥水性有機薄膜と撥油性有機薄膜を形成する場合を例示する。以後、プラスチックレンズを、基板10に代えてプラスチックレンズ10と表す。
プラスチックレンズ10上に形成される撥水性有機薄膜および撥油性有機薄膜は、レンズを使用するに際し、レンズ面に手垢、汗、化粧料等による汚れが付着し難く、しかも汚れを拭き取りやすくするための防汚性能を付与する機能を有する。
撥水性有機薄膜を形成するのに用いる第1の有機蒸着材料124として、下記一般式(1)に表されるフッ素含有シラン化合物を準備した。この具体例としては、「KP−801M」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
Figure 2007332433
但し、式中、Rf1は、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。X1は、水素、臭素またはヨウ素を表す。R1は、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。R2は、水素または1価の炭化水素基を表す。hは、0、1または2の何れかを表す。mは1、2または3の何れかを表す。nは、1以上の整数を表す。
また、撥油性有機薄膜を形成するのに用いる第2の有機蒸着材料134として、下記一般式(2)に表されるフッ素含有シラン化合物(パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シラン)を準備した。この具体例としては、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
Figure 2007332433
但し、式中、Rf2は、式:「−(Ck2k)O−」(式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、X2は加水分解性基またはハロゲン原子を表す。sは0、1または2の何れかを表す。tは1〜5の整数を表す。hおよびiは2または3を表す。
上記一般式(1)あるいは一般式(2)に表されるフッ素含有シラン化合物を用いて形成される撥水性有機薄膜や撥油性有機薄膜は、高い防汚性能を有すると共に、耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性等の耐久品質が向上した防汚性能を得ることが可能であり、一般式(1)あるいは一般式(2)に表されるフッ素含有シラン化合物を防汚性有機化合物として好ましく用いることができる。なお、一般式(1)あるいは一般式(2)に表される有機化合物の薄膜を形成する基材の材質がプラスチックの場合には、形成する有機系薄膜の下層に無機物質層が形成されているのが好ましい。
プラスチックレンズ10への真空蒸着方法は、先ず、レンズ基材の表面に無機反射防止膜が成膜されたプラスチックレンズ10を準備した。そして、準備したプラスチックレンズ10を、予め真空蒸着装置100の回転軸171から取り外された基板ホルダ170の多数の開口に、おのおのプラスチックレンズ10を載置した。そして、プラスチックレンズ10が載置された基板ホルダ170を、真空チャンバ110内に投入し、回転軸171に取り付けた。
一方、第1の有機蒸着材料124として、撥水性有機薄膜を成膜するための、例えば、「KP−801M」(商品名、信越化学工業(株)製)を、防着容器140内に収納された第1の蒸着源120のルツボ121内に充填した。また、第2の有機蒸着材料134として撥油性有機薄膜を成膜するための、例えば、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)を、防着容器150内に収納された第2の蒸着源130のルツボ131内に充填した。
第1の有機蒸着材料124および第2の有機蒸着材料134が、各蒸着源のルツボ内に充填された後、シャッタ160を、第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151を遮蔽する位置に回転する。これにより、第1の蒸着源120が収容された防着容器140の開口部141は、開放状態にある。
そして、ドライポンプとターボ分子ポンプを組み合わせた真空ポンプを起動し、真空チャンバ110の側壁に形成された排気口111を通じて、真空チャンバ110内を8.0×10-3Pa程度の到達圧力まで排気する。
そして、モータ172を起動し、多数のプラスチックレンズ10が載置された基板ホルダ170を回転すると共に、第1の蒸着源120のヒータ122、および第2の蒸着源130のヒータ132に給電し、ルツボ121内に充填された第1の有機蒸着材料124、およびルツボ131内に充填された第2の有機蒸着材料134を、80℃〜90℃程度の温度まで加熱する。
これにより、ルツボ121内に充填された第1の有機蒸着材料124の蒸気が真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170の開口を通じて基板ホルダ170に載置された各プラスチックレンズ10の表面に付着し、第1の有機蒸着材料124のフッ素含有シラン化合物からなる撥水性有機薄膜が成膜される。
この第1の有機蒸着材料124の成膜の際に、第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151は、シャッタ160により遮蔽されているので、第2の有機蒸着材料134の蒸気は防着容器150に留まって、真空チャンバ110内に放出されることはなく、第1の蒸着源120が汚染されることを防ぐことができる。また、第1の蒸着源120から放出される第1の有機蒸着材料124の蒸気が、第2の蒸着源130を汚染することはない。
そして、第1の有機蒸着材料124の成膜が終了した後、真空ポンプを起動して真空チャンバ110内を1.0×10-1Pa程度の到達圧力まで排気する。
そして、モータ162に給電し、回転軸161を介してシャッタ160が、第1の蒸着源120の収容された防着容器140の開口部141を遮蔽する位置まで、略180°回転する。これにより第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151が開放状態となり、第2の蒸着源130のルツボ131内に充填された第2の有機蒸着材料134の蒸気が真空チャンバ110内に放出される。
第2の蒸着源130から放出された第2の有機蒸着材料134の蒸気は、真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170の開口を通じて、基板ホルダ170に載置され各プラスチックレンズ10の表面に形成された第1の有機蒸着材料124からなる撥水性有機薄膜上に付着し、第2の有機蒸着材料124のフッ素含有シラン化合物からなる撥油性有機薄膜が成膜される。
この第2の有機蒸着材料134の成膜の際に、第1の蒸着源120が収容された防着容器140の開口部141は、シャッタ160により遮蔽されているので、第1の有機蒸着材料124の蒸気は防着容器140内に留まって、真空チャンバ110内に放出されることはない。また、第2の蒸着源130から放出される第2の有機蒸着材料134の蒸気が、第1の蒸着源120を汚染することはない。
なお、成膜される撥水性有機薄膜および撥油性有機薄膜の膜厚は、シャッタ160の開放時間、すなわち蒸着時間を制御することにより、所望の膜厚が得られる。
そして、第2の有機蒸着材料134の蒸着が終了した後、第1の蒸着源120のヒータ122、および第2の蒸着源130のヒータ132の給電を停止すると共に、真空チャンバ110内を大気開放し、大気圧に戻す。
そして、プラスチックレンズ10が載置された基板ホルダ170が、真空チャンバ110内から取り出されて、一方のレンズ面に、撥水性有機薄膜および撥油性有機薄膜の薄膜が成膜されたプラスチックレンズ10が得られる。
なお、必要に応じて、前述に示したと同様の操作方法により、プラスチックレンズ10の他方のレンズ面に、撥水性有機薄膜および撥油性有機薄膜の薄膜を行うことができる。 また、薄膜の成膜後に、アニール処理を行うのが好ましい。アニール処理は、例えば、常温環境下に8時間以上放置することで行われる。より好ましくは、温度が40℃〜90℃、相対湿度が40%〜90%の範囲に設定された恒温恒湿槽内に、1時間〜2時間程度投入して行う。これにより撥水性能および撥油性能の耐久性を増加させることができる。
以上の実施形態1において、第1の蒸着源120および第2の蒸着源130を収納する防着容器140,150の開口部141,151の内のどちらか一方の開口部を開放および遮蔽するシャッタ160は、シャッタ160に代えて、以下のように構成することができる。
図3は、別のシャッタ構成および動作を示すシャッタ部の模式図であり、(a)は第1の蒸着源の蒸着状態を示す部分断面図であり、(b)はシャッタが上昇して第2の蒸着源の防着容器の開口部から離間した態様を示す部分断面図である。(c)はシャッタが第1の蒸着源の防着容器の開口部上に回転した態様を示す部分断面図であり、(d)は第2の蒸着源の蒸着状態を示す部分断面図である。
先ず、図3(a)を参照して、シャッタ164の構成を説明する。
シャッタ164は、シャッタ体165と、シャッタ体165に固着された蓋部材としての遮蔽蓋166を備え、シャッタ体165が回転軸161に固着され、真空チャンバ110の底面壁の中央部に、回転可能に支持されている。
回転軸161は、真空チャンバ110の底面壁を貫通して外部に延出し、端部には回転軸161を回転駆動する、すなわちシャッタ164を回転するためのモータ162が接続されている。また、モータ162は、蒸着されるプラスチックレンズ10が保持された基板ホルダ170の方向に昇降するリフト装置180に載置されている。
なお、モータ162、およびリフト装置180は、図示しない制御部に接続し、制御部によって制御される。
遮蔽蓋166は、第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151を遮蔽する遮蔽部と、遮蔽部端部から防着容器150の側壁に沿って容器底面方向に延伸する縁(ふち)部を有し、開口部151上部を覆う(遮蔽する)と共に、開口部151の周りを側壁外側からぐるりと囲んで覆う機能を有する。縁部の長さは、10mm程度以上が好ましい。また、遮蔽蓋166は、シャッタ体165に固着され、回転軸161の回転により、シャッタ体165と共に回転する。なお、遮蔽蓋166は、防着容器150と同様に、例えば、ステンレス鋼から形成されている。
こうした遮蔽蓋166は、防着容器150の開口部151上部に近接して配置され、防着容器150の開口部151との間隔α、および、防着容器151の側壁と縁部との間隔γは、1mm〜5mm程度の範囲に設定されている。
なお、シャッタ164が回転し、シャッタ164が第1の蒸着源120が収容された防着容器140の開口部141を覆う場合についても、防着容器150(第2の蒸着源130)の場合と同様である。
次に、このように構成されたシャッタ164の動作を説明する。
図3(a)は、第1の蒸着源120を蒸着(成膜)する態様を示し、シャッタ164が、第2の蒸着源130が収容された防着容器150上に位置し、遮蔽蓋166が第2の蒸着源130を収容する防着容器150の開口部151を遮蔽している。すなわち、第1の蒸着源120が収容された防着容器140の開口部141が開放され、第1の蒸着源120のルツボ121内に充填された第1の有機蒸着材料124の蒸気が真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170に載置されたプラスチックレンズ10(図1参照)の表面に、第1の有機蒸着材料124からなる撥水性有機薄膜が成膜される。
この第1の有機蒸着材料124の蒸着の際に、シャッタ164の遮蔽蓋166が、第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151上部および開口部151の周りを側壁外側からぐるりと囲んで覆われていることにより、第2の蒸着源130が加熱されて蒸気化した第2の有機蒸着材料134の蒸気を、防着容器150内に留めると共に、第1の蒸着源120から真空チャンバ110内に放出され、プラスチックレンズ10の表面に撥水性有機薄膜を成膜する第1の有機蒸着材料124の蒸気が第2の蒸着源130に付着する汚染を防ぐことができる。
そして、第1の有機蒸着材料124からなる撥水性有機薄膜の成膜が終了した後、図3(b)に示すように、リフト装置180が作動し、リフト装置180に載置されたモータ162、回転軸161およびシャッタ164が、プラスチックレンズ10が保持された基板ホルダ170の方向に上昇した後に停止する。シャッタ164の停止位置は、シャッタ164が回転可能であれば良く、例えば、遮蔽蓋166の縁部端面と防着容器150の側壁端部との間隔が、1mm程度以上離れた位置である。
そして、基板ホルダ170の方向に上昇し、停止したシャッタ164は、図3(c)に示すように、モータ162が作動し、回転軸161が略180°回転して、真空チャンバ110の底面上に回転軸161に対して互いに対向する位置に配設された、第1の蒸着源120を収容する防着容器140の開口部141上に停止する。
そして、図3(d)に示すように、リフト装置180が作動し、リフト装置180に載置されたモータ162、回転軸161およびシャッタ164が、真空チャンバ110の底面方向に下降した後に停止する。シャッタ164が停止する位置は、遮蔽蓋166と防着容器140の開口部141との間隔α(図3(a)参照)が、1mm〜5mm程度の位置である。
これにより、シャッタ164の遮蔽蓋166が第1の蒸着源120を収容する防着容器140の開口部141を遮蔽する。すなわち、第2の蒸着源130が収容された防着容器150の開口部151が開放され、第2の蒸着源130のルツボ131内に充填された第2の有機蒸着材料134の蒸気が真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170に載置され、撥水性有機薄膜が成膜されたプラスチックレンズ10の表面に、第2の有機蒸着材料134からなる撥油性有機薄膜が成膜される。
以上の実施形態において、蒸着源120,130を収容した各防着容器140,150は、真空チャンバ110の底面上に、回転軸161に対して互いに対向する(略180°離れた)位置に、しかも回転軸161から略等距離の位置に配設された場合で説明したが、有機蒸着材料を蒸着する際のシャッタ160の遮蔽領域は、2個の防着容器の開口部の内のどちらか一方の開口部を順次、遮蔽すれば良く、防着容器は、回転軸161の中心から略等距離にある必要はなく、異なる距離に配置された場合であっても良い。
また、シャッタ160は、少なくとも、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130が収容された防着容器140,150の少なくとも開口部141,151の内の一方の開口部を被う大きさを有し、防着容器140,150の上部に近接して配置された場合で説明したが、シャッタ160は、少なくとも、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130が収容された防着容器140,150の少なくとも開口部141,151の内の一方の開口部を開放する開口領域を有する場合であっても良い。
さらに、第1の蒸着源120あるいは第2の蒸着源130収容する各防着容器140,150を配設しない場合であっても良い。その場合には、シャッタ160が少なくとも第1の蒸着源120および第2の蒸着源130の有機蒸着材料が充填されたルツボ121,131の一方の開口部を被う大きさ、あるいはルツボ121,131の一方の開口部を開放する開口領域を有し、ルツボ121,131の開口部の上部に近接して配置される。
また、第1の蒸着源120および第2の蒸着源130の加熱装置として、各ルツボ121,131の外周側面をヒータで加熱する間接抵抗加熱方式を用いた場合で説明したが、どんな抵抗加熱方式であっても良いし、ハロゲンランプなどを用いたランプ加熱方式であっても良い。
また、真空チャンバ110内の第1の蒸着源120および第2の蒸着源130と、成膜されるプラスチックレンズ10が載置された基板ホルダ170との間に、基板ホルダ170と略平行に、蒸着膜厚の分布を補正するための補正板を配設しても良いし、成膜される有機薄膜の膜厚を検出する膜厚検出装置などを配設することができる。
以上の実施形態1によれば、真空蒸着装置100は、真空チャンバ110内に配設された互いに種類の異なる2個の蒸着源120,130を、2個の蒸着源120,130の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有する一つのシャッタ160が、順次、開放することで、開放された一方の蒸着源120から放出された第1の有機蒸着材料124の蒸気が、他方の蒸着源130に付着して汚染されるのを防ぐと共に、遮蔽された他方の蒸着源130の有機蒸着材料134の蒸気が、蒸着源120を汚染するのを防ぐことができる。また、シャッタ160が、2個の蒸着源120,130を順次、選択的に開放して蒸着することで、真空チャンバ110内の真空状態を維持したまま、連続的に基板10上に有機化合物の薄膜を形成することが可能となり、蒸着工程の作業効率を向上することができる。
また、加熱手段を有する互いに種類の異なる2個の蒸着源120,130が、基板10に対向する側に開口部141,151を有する各防着容器140,150内に収容され、その開口部141,151をシャッタ160が開放および遮蔽する。さらに2個の防着容器140,150の開口部141,151を開放および遮蔽するシャッタ(164)が、防着容器140,150の開口部141,151及び開口部141,151の全周側面に沿って延伸する縁部を有する遮蔽蓋166を備えることで、シャッタ160,164に遮蔽された他方の蒸着源130の有機化合物の蒸気が、防着容器150内に留まって、真空チャンバ110内に放出されることはなく、基板10を蒸着する一方の蒸着源120から放出された有機化合物の蒸気が、他方の蒸着源130に付着することもない。したがって、2個の蒸着源120,130の相互間の汚染を防ぐことができる。
(実施形態2)
実施形態1において、真空蒸着装置100は、真空チャンバ110内に、防着容器140に収容された加熱装置を含む第1の蒸着源120と、防着容器150に収容された加熱装置を含む第2の蒸着源130との2個の蒸着源を配置した構成であるが、本実施形態2の真空蒸着装置200は、真空チャンバ110内に、4個の加熱装置を含む蒸着源を配置した構成である。したがって、防着容器内に収容された4個の加熱装置を含む蒸着源と、それに対応するシャッタを配置したことを除いては実施形態1と同様の基本構成を有し、実施形態1と異なる構成要素以外の説明は省略する。また、各構成要素の動作についても同様であり、その詳細説明も省略する。
図4は、実施形態2に係わる真空蒸着装置のシャッタ部における部分平面図である。
図4において、真空蒸着装置200は、真空チャンバ110内に、4個の加熱装置を含む蒸着源210,220,230,240と、各蒸着源210,220,230,240を内部に収容する防着容器250,260,270,280と、一つのシャッタ290を備え、基板としてのプラスチックレンズ10の表面に4種類の互いに異なる有機蒸着材料の薄膜を成膜することできる。
4個の加熱装置を含む蒸着源210,220,230,240は、共に同一構造の容器であり、上記実施形態1と同様に、それぞれ、有機蒸着材料214,224,234,244が充填されたルツボ211,221,231,241と、加熱装置としてのヒータと、ルツボを保持する保持容器を備え、それぞれ、防着容器250,260,270,280内に収容されている。
これらの蒸着源210,220,230,240を収容した防着容器250,260,270,280は、真空チャンバ110の底面上に、回転軸161を中心とする略等距離の位置に、しかも回転中心に対して略等角度(回転軸161に対する中心角βが略同一、すなわちβ=90°)の位置に配設されている。
シャッタ290は、回転軸161に固着され、真空チャンバ110の底面壁の中央部に、回転可能に支持されている(図1参照)。
回転軸161は、真空チャンバ110の底面壁を貫通して外部に延出し、端部には回転軸161を回転駆動する、すなわちシャッタ290を回転するためのモータ162が接続されている。
また、シャッタ290は、少なくとも、加熱装置を含む蒸着源210,220,230,240が収容された防着容器250,260,270,280の内の3個の防着容器、例えば、防着容器260,270,280の少なくとも開口部261,271,281の領域を被う大きさを有している。すなわち、防着容器250,260,270,280の内の1個の防着容器の開口部、例えば開口部251を開放する開口領域を有し、防着容器260,270,280の上部に近接して配置されている。
図4において、蒸着源210が収容された防着容器250の開口部251が開放され、防着容器250以外の蒸着源210,220,230,240を収容した3個の防着容器260,270,280の開口部261,271,281は、遮蔽されている。
このように構成された真空蒸着装置200は、ドライポンプとターボ分子ポンプを組み合わせた真空ポンプを起動し、真空チャンバ110の側壁に形成された排気口111を通じて、先ずプラスチックレンズ10上に蒸着する有機蒸着材料214に対応した所定の到達圧力まで、真空チャンバ110内を排気する。
そして、モータ172を起動し、多数のプラスチックレンズ10が載置された基板ホルダ170を回転させると共に、防着容器250,260,270,280内に収容された蒸着源210,220,230,240の各ヒータに給電し、ルツボ211,221,231,241内に充填された有機蒸着材料214,224,234,244を、それぞれ所定温度まで加熱する。
これにより、ルツボ211に充填された有機蒸着材料214の蒸気が真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170の開口を通じて基板ホルダ170に載置された各プラスチックレンズ10の表面に付着し、有機蒸着材料214の有機薄膜が成膜される。
そして、プラスチックレンズ10上に有機蒸着材料214の薄膜が成膜された後、蒸着源210を加熱しているヒータの給電を停止すると共に、真空ポンプを起動して、次にプラスチックレンズ10上に成膜する、例えば、有機蒸着材料224に対応した所定の到達圧力まで、真空チャンバ110内を排気する。
そして、モータ162を作動し、回転軸161を介して、シャッタ290を真空チャンバ110の底面壁に向かって略90°左回転する。この回転により、今まで開放状態にあった蒸着源210が収容された防着容器250の開口部251が、シャッタ290で遮蔽されると共に、蒸着源220が収容された防着容器260の開口部261が開放される。したがって、防着容器270,280の開口部271,281は、引き続き遮蔽状態にある。
そして、防着容器250の開口部251が開放されたルツボ221に充填された有機蒸着材料224の蒸気が真空チャンバ110内を上昇し、基板ホルダ170の開口を通じて基板ホルダ170に載置された各プラスチックレンズ10の表面に付着し、有機蒸着材料214からなる有機薄膜上に、有機蒸着材料224の有機薄膜が成膜される。
以後、同様にシャッタ290(モータ162)、真空ポンプおよび蒸着源のヒータが作動して、プラスチックレンズ10上に、互いに異なる有機蒸着材料からなる4層の有機薄膜が成膜される。
なお、4個の加熱装置を含む蒸着源210,220,230,240の各ルツボ211,221,231,241に充填される4種類の互いに異なる有機蒸着材料としては、例えば、前記実施形態1の一般式(1)に表される撥水性有機物質、一般式(2)に表される撥油性有機物質、これらの撥水性有機物質と撥油性有機物質の混合化合物、防曇処理の前処理コーティング化合物などが挙げられる。
防曇処理の前処理コーティング化合物としては、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤を、単独またはこれらの内の2種以上を混合したものが例示される。
こうした真空蒸着装置200は、4種類の互いに異なる有機蒸着材料の蒸着源210,220,230,240が、それぞれ、防着容器250,260,270,280内に収容されている。そして、プラスチックレンズ10上に、4種類のうちの一つの有機蒸着材料からなる薄膜が成膜される際に、他の3種類の有機蒸着材料が収容された防着容器の開口部が、シャッタ160により遮蔽されているので、成膜している蒸着源の蒸気が、他の3個の蒸着源を汚染することはなく、他の3個の蒸着源が成膜している蒸着源を汚染することもない。すなわち、成膜する4個の互いに異なる蒸着源の相互間の汚染を防ぐことができる。
以上の実施形態2において、蒸着源210,220,230,240を収容した防着容器250,260,270,280は、真空チャンバ110の底面上に、回転軸161を中心とする略等距離の位置に、しかも等間隔に配設された場合で説明したが、有機蒸着材料を蒸着する際のシャッタ290の遮蔽領域は、防着容器250,260,270,280の開口部の内の3個の開口部を順次、遮蔽すれば良く、防着容器は、回転軸161の中心から略等距離にある必要はなく、異なる距離に配置された場合であっても良い。
また、真空チャンバ110内に4個の蒸着源210,220,230,240(防着容器250,260,270,280)を配設した場合で説明したが、真空チャンバ110の底面壁の面積が広い場合には、蒸着源を4個以上配置することができる。
また、有機蒸着材料を蒸着する際に、シャッタ290が真空チャンバ110の底面壁に向かって略90°左回転して、蒸着源210,220,230,240に充填された4種類の有機蒸着材料を順次蒸着する場合で説明したが、どんな蒸着順序であっても良い。その場合の蒸着順序は、図示しない制御部に設定されたモータ162(すなわち、回転軸161およびシャッタ160)の回転動作により制御される。
以上の実施形態2に係わる真空蒸着装置200は、実施形態1における効果の他に、以下の効果を得ることができる。
加熱手段を有する互いに種類の異なる4個の蒸着源210,220,230,240、あるいは蒸着源210,220,230,240を収容する各防着容器250,260,270,280が、モータ162により回転するシャッタ290の回転中心に対して、略等角度(回転軸161に対する中心角βが略同一、すなわちβ=90°)の位置に配設されていることにより、真空チャンバ110内に多数(4個)の蒸着源を配設し、しかも多数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有する一つのシャッタ290により、基板10上に、互いに種類の異なる複数の有機化合物の多層薄膜を形成することができる。また、4個の蒸着源210,220,230,240に対して、一つのシャッタ290で構成されることで、真空蒸着装置200(真空チャンバ110)を小型化することができる。なお、蒸着源、あるいは蒸着源を収容する防着容器は、真空チャンバ110に配設することが可能であれば4個以上の場合であっても良い。
本発明の実施形態1に係わる真空蒸着装置の概略を示す断面側面図。 図1における真空蒸着装置のA−A線に沿った断面の矢視図。 別のシャッタ構成および動作を示すシャッタ部の模式図であり、(a)は第1の蒸着源の蒸着状態を示す部分断面図。(b)はシャッタが上昇して第2の蒸着源の防着容器の開口部から離間した態様を示す部分断面図。(c)はシャッタが第1の蒸着源の防着容器の開口部上に回転した態様を示す部分断面図。(d)は第2の蒸着源の蒸着状態を示す部分断面図。 本発明の実施形態2に係わる真空蒸着装置のシャッタ部における部分平面図。
符号の説明
10…基板としてのプラスチックレンズ、100,200…真空蒸着装置、110…真空チャンバ、120,130,210,220,230,240…蒸着源、121,131,211,221,231,241…ルツボ、122,132…加熱手段としてのヒータ、123,133…保持容器、124,134,214,224,234,244…有機化合物としての有機蒸着材料、140,150,250,260,270,280…防着容器、141,151,251,261,271,281…開口部、160,160A,164,290…シャッタ、161…回転軸、162…回動手段としてのモータ、165…シャッタ体、166…蓋部材としての遮蔽蓋、170…基板ホルダ、180…リフト装置。

Claims (5)

  1. 蒸着により複数種の有機化合物からなる薄膜を基板上に形成するための真空蒸着装置であって、
    真空チャンバと、前記真空チャンバ内に、加熱手段を有し且つ互いに種類の異なる前記有機化合物を保持する複数の蒸着源と、前記複数の蒸着源と前記基板との間に前記蒸着源に保持された有機化合物の蒸気を開放および遮蔽するための一つのシャッタを備え、
    前記シャッタは、前記複数の蒸着源の内の一つを順次、開放することを特徴とする真空蒸着装置。
  2. 請求項1に記載の真空蒸着装置において、
    前記シャッタは、前記複数の蒸着源の内の一つの蒸着源を開放する開口領域を有すること特徴とする真空蒸着装置。
  3. 請求項1または2に記載の真空蒸着装置において、
    前記真空チャンバ内に、前記複数の蒸着源を蒸着源毎に収容する複数の防着容器をさらに備え、
    前記防着容器は、前記基板に対向する側に開口部を有し、
    前記シャッタが前記複数の防着容器の前記開口部を開放および遮蔽することを特徴とする真空蒸着装置。
  4. 請求項3に記載の真空蒸着装置において、
    前記シャッタは、
    前記防着容器の前記開口部を遮蔽する遮蔽部及び前記開口部の全周側面に沿って前記防着容器底面方向へ延伸する縁部を有する蓋部材を備えたことを特徴とする真空蒸着装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項に記載の真空蒸着装置において、
    前記シャッタは回動手段により回転し、
    前記複数の蒸着源が、前記シャッタの回転中心に対して略等角度の位置に配設されたことを特徴とする真空蒸着装置。
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