JP2006348376A - 真空蒸着方法および真空蒸着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸着物質の収率を向上できる真空蒸着方法および真空蒸着装置を提供することにある。
【解決手段】真空蒸着装置100は、補正板92を加熱する加熱手段91を備えているので、補正板92を加熱でき、蒸着物質は加熱された補正板92に付着することが少なくプラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率を向上させることができる。
また、蒸着物質が蒸発温度の低い有機化合物なので、補正板92の加熱を容易にでき、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】真空蒸着装置100は、補正板92を加熱する加熱手段91を備えているので、補正板92を加熱でき、蒸着物質は加熱された補正板92に付着することが少なくプラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率を向上させることができる。
また、蒸着物質が蒸発温度の低い有機化合物なので、補正板92の加熱を容易にでき、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、プラスチックレンズへの真空蒸着方法および真空蒸着装置に関する。
プラスチックレンズには、種々の機能が付与される。例えば、表面での光の反射を抑えるための反射防止膜が形成され、その反射防止膜の表面には、撥水処理、防曇処理等の表面処理が施される。そして、これらの反射防止膜の形成および表面処理には、真空蒸着方法が使用される。
真空蒸着方法では、蒸発源で蒸着物質の加熱を行うことにより、離れた位置に保持された基板上に蒸発した蒸着物質を蒸着させる。ここで、大面積の基板あるいは多数の基板に同時に蒸着する場合、基板の場所によって蒸発源から基板までの距離が異なると、基板の場所によって蒸着量が異なる。そこで、蒸着物質を均一の厚みで基板に蒸着させるために、蒸発源と基板との間に補正板を設けて、基板に到達する蒸着量の調整を行なっている。(例えば、特許文献1参照)。
真空蒸着方法では、蒸発源で蒸着物質の加熱を行うことにより、離れた位置に保持された基板上に蒸発した蒸着物質を蒸着させる。ここで、大面積の基板あるいは多数の基板に同時に蒸着する場合、基板の場所によって蒸発源から基板までの距離が異なると、基板の場所によって蒸着量が異なる。そこで、蒸着物質を均一の厚みで基板に蒸着させるために、蒸発源と基板との間に補正板を設けて、基板に到達する蒸着量の調整を行なっている。(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1では、蒸発した蒸着物質は、補正板の温度の低い表面に凝縮して付着する。すなわち、補正板の表面温度が気化した蒸発物質の蒸発温度未満である場合には、蒸着物質の付着が起こる。また、補正板を蒸発源の直上付近に設ける配置では、蒸着物質がより多く補正板に付着する。このため、蒸着物質の収率が低下するという問題がある。ここで収率とは、(基板に到達した蒸着物質の総量/蒸着物質の総量)×100で表される。
本発明の目的は、蒸着物質の収率を向上できる真空蒸着方法および真空蒸着装置を提供することにある。
本発明の真空蒸着方法は、プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する真空蒸着方法であって、前記プラスチックレンズと前記蒸着物質を加熱する蒸発源との間に補正板を設け、前記蒸着物質を前記プラスチックレンズ表面へ蒸着するに際して、前記補正板の温度を前記蒸着物質の蒸発温度以上にすることを特徴とする。
この発明によれば、補正板の温度が蒸着物質の蒸発温度以上になっているので、蒸着物質は補正板に付着することが少なくプラスチックレンズに到達し、蒸着物質の収率が向上する。
本発明では、前記蒸着物質として、有機化合物を用いるのが好ましい。
この発明では、蒸着物質が蒸発温度の低い有機化合物なので、補正板の温度を上げるための加熱が容易で、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
この発明では、蒸着物質が蒸発温度の低い有機化合物なので、補正板の温度を上げるための加熱が容易で、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
本発明の真空蒸着装置は、プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する真空蒸着装置であって、前記プラスチックレンズと前記蒸着物質を加熱する蒸着源との間に設けられた補正板を有し、前記補正板を加熱する加熱手段を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、真空蒸着装置は、補正板を加熱する加熱手段を備えているので、補正板が加熱され、蒸着物質は加熱された補正板に付着することが少なくプラスチックレンズに到達し、蒸着物質の収率が向上する。
本発明では、前記加熱手段は、ヒータ本体と補正板支持部材とを備え、前記ヒータ本体と前記補正板支持部材、および前記補正板支持部材と前記補正板とは、熱伝達可能に固定されている構成が好ましい。
この発明では、ヒータ本体で発生した熱は、補正板支持部材を介して補正板に伝達されるので、補正板にヒータを設ける必要がなく、補正板の構造が簡単になる。したがって、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
この発明では、ヒータ本体で発生した熱は、補正板支持部材を介して補正板に伝達されるので、補正板にヒータを設ける必要がなく、補正板の構造が簡単になる。したがって、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
本発明では、前記ヒータ本体には、前記蒸発源が設けられている構成が好ましい。
この発明では、蒸発源の加熱と補正板の加熱が同じヒータ本体で行なえるので、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
この発明では、蒸発源の加熱と補正板の加熱が同じヒータ本体で行なえるので、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
本発明では、前記ヒータ本体は、光源であるハロゲンランプと、前記ハロゲンランプを内部へ収納し、かつ前記ハロゲンランプからの赤外光を集光し熱へ変換する熱伝導材料からなる筐体とを備え、前記筐体が、前記蒸発源および前記補正板支持部材へ熱伝達可能に固定されている構成が好ましい。
この発明では、ハロゲンランプによって加熱を行なう。ハロゲンランプから放射される赤外光は筐体へ集光し熱へ変換される。ヒータ本体の筐体および筐体へ固定されている蒸発源および補正板支持部材は、この筐体を介して熱が伝導されるため、効率よく加熱される。したがって、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
この発明では、ハロゲンランプによって加熱を行なう。ハロゲンランプから放射される赤外光は筐体へ集光し熱へ変換される。ヒータ本体の筐体および筐体へ固定されている蒸発源および補正板支持部材は、この筐体を介して熱が伝導されるため、効率よく加熱される。したがって、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率が向上する。
本発明では、前記補正板は複数設けられ、これらの相対位置が変更可能に前記補正板支持部材に取り付けられている構成が好ましい。
この発明では、複数の補正板の相対位置が変更可能なので、蒸着条件の変化によってプラスチックレンズの保持された位置で到達する蒸着物質量の変化が生じても、補正板は最適な位置に配置される。したがって、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
この発明では、複数の補正板の相対位置が変更可能なので、蒸着条件の変化によってプラスチックレンズの保持された位置で到達する蒸着物質量の変化が生じても、補正板は最適な位置に配置される。したがって、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、支持装置20に保持されたプラスチックレンズ10への蒸着等の表面処理を行なう真空蒸着装置100の概略図が示されている。
図5には、プラスチックレンズ10への表面処理工程が示されている。
図1には、支持装置20に保持されたプラスチックレンズ10への蒸着等の表面処理を行なう真空蒸着装置100の概略図が示されている。
図5には、プラスチックレンズ10への表面処理工程が示されている。
図5の(C)には、本実施形態における表面処理後のプラスチックレンズ10の断面図が示されている。
プラスチックレンズ10の両面には、耐擦傷性を高めるためのハードコート層11が設けられている。片側のハードコート層11上には、反射防止膜12が設けられ、その表面には有機化合物層14が設けられている。実際には、両面に反射防止膜12および有機化合物層14が設けられる。
プラスチックレンズ10の両面には、耐擦傷性を高めるためのハードコート層11が設けられている。片側のハードコート層11上には、反射防止膜12が設けられ、その表面には有機化合物層14が設けられている。実際には、両面に反射防止膜12および有機化合物層14が設けられる。
以下に、真空蒸着装置100を図面に基づいて説明し、続いてプラスチックレンズ10への表面処理工程を説明する。
図1において、プラスチックレンズ10は、支持装置20に複数保持されている。支持装置20は、真空蒸着装置100の内部を工程ごとに移動して、プラスチックレンズ10への表面処理が行なわれる。また、支持装置20は、各プラスチックレンズ10への処理が均一になるように、図示しない回転機構によって回転させられている。
図1において、プラスチックレンズ10は、支持装置20に複数保持されている。支持装置20は、真空蒸着装置100の内部を工程ごとに移動して、プラスチックレンズ10への表面処理が行なわれる。また、支持装置20は、各プラスチックレンズ10への処理が均一になるように、図示しない回転機構によって回転させられている。
真空蒸着装置100は、支持装置20が内部を通過可能な三つのチャンバ30,40および50を備えている。これらのチャンバ30,40,50は互いに連結され、かつ、その内部を支持装置20がプラスチックレンズ10を保持した状態で通過可能となっている。また、各チャンバは、各チャンバ間の図示しないシャッタによって相互に密封できるようになっており、各チャンバの内圧は真空生成装置31、41および51によりそれぞれ制御されている。
チャンバ30は、エントランスまたはゲートチャンバである。支持装置20は、外部からチャンバ30の内部に導入され、一定時間、一定の圧力下で加熱される。このとき、プラスチックレンズ10および支持装置20に吸着したガスの脱ガスが行なわれる。チャンバ30の真空生成装置31は、ロータリーポンプ32、ルーツポンプ33およびクライオポンプ34を備えている。
チャンバ40は、真空蒸着による薄膜の形成やプラズマ等による表面処理を行なうチャンバである。チャンバ40の真空生成装置41もチャンバ30の真空生成装置31と同様に、ロータリーポンプ42、ルーツポンプ43およびクライオポンプ44を備えている。
チャンバ40の内部には、屈折率の異なる蒸着物質を組み合わせて反射防止膜12を効率よく形成するために、蒸発源61および蒸発源62が一対設けられている。そして、これら一対の蒸発源61,62に配置された蒸着物質63,64を蒸発させる電子銃65,66および蒸着量を調整する開閉可能なシャッタ67,68が一対設けられている。
屈折率の異なる蒸着物質の例として、低屈折率物質として酸化ケイ素が、高屈折率物質としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウムが挙げられる。
屈折率の異なる蒸着物質の例として、低屈折率物質として酸化ケイ素が、高屈折率物質としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウムが挙げられる。
また、チャンバ40には、プラズマ処理を行なうために、高周波プラズマ発生装置70が設置されている。高周波プラズマ発生装置70は、チャンバ内に設置されたRFコイル71と、チャンバ外でこれに接続されているマッチングボックス72と高周波発信器73とから構成されている。
プラズマ処理に使用されるガスである酸素74とアルゴン75は、オートプレシャーコントローラ77で所定の圧力になるように、マスフローコントローラ78で流量が制御されて導入される。
プラズマ処理に使用されるガスである酸素74とアルゴン75は、オートプレシャーコントローラ77で所定の圧力になるように、マスフローコントローラ78で流量が制御されて導入される。
さらに、チャンバ40には、イオンアシスト蒸着および表面処理を行なうためのイオンガン80が設置されている。イオンガン80には、導入ガスをプラズマ化し、正イオンを発生するためのRF電源81と正イオンを加速するためのDC電源82とが接続されている。
イオンガン80に使用する酸素74とアルゴン75は、マスフローコントローラ83で流量が制御されて導入される。
イオンガン80に使用する酸素74とアルゴン75は、マスフローコントローラ83で流量が制御されて導入される。
チャンバ50は、有機化合物である蒸着物質を蒸着することにより有機化合物層14を形成するチャンバである。チャンバ50内部には、有機化合物を含む蒸発源90と、加熱手段91と、補正板92とが設置されている。補正板92は、補正板支持部材93によって加熱手段91と熱伝達可能に固定されている。補正板92の開度を調整する事により、支持装置20の異なる場所に保持されたプラスチックレンズ10に対する蒸着量を調整できるようになっている。チャンバ50は、ロータリーポンプ52、ルーツポンプ53およびターボ分子ポンプ54を備えた真空生成装置51により適当な圧力に保持されている。
以下に、補正板92の配置および加熱手段91等について詳しく説明する。
図2には、支持装置20と蒸発源90の概略構成の断面図が示されている。また、図3には、支持装置20と加熱手段91の上面図が示されている。
図2において、支持装置20は、ドーム状の断面形状を有している。そして、プラスチックレンズ10が同心円状に4段にわたって保持できるようになっている。ここで、蒸発源90から各段までの距離は、図2中の矢印で示したように蒸発源90と支持装置20との相対位置によって異なる。
そこで、蒸発源90と支持装置20との間には補正板92が設けられ、各段までの蒸発量を調整できるようになっている。
図2には、支持装置20と蒸発源90の概略構成の断面図が示されている。また、図3には、支持装置20と加熱手段91の上面図が示されている。
図2において、支持装置20は、ドーム状の断面形状を有している。そして、プラスチックレンズ10が同心円状に4段にわたって保持できるようになっている。ここで、蒸発源90から各段までの距離は、図2中の矢印で示したように蒸発源90と支持装置20との相対位置によって異なる。
そこで、蒸発源90と支持装置20との間には補正板92が設けられ、各段までの蒸発量を調整できるようになっている。
図3において、加熱手段91と補正板92とは、ドーム状の支持装置20の中心から外周の間に配置されている。図3では、中心から二段目付近に配置されている。また、二つの補正板92は、蒸発源90を挟むように蒸発源90と支持装置20の間に配置されている。
ここで、支持装置20は、蒸着が行なわれている間回転しているが、中心部と外周部では、蒸発源90に対する移動速度が異なる。中心部は移動速度が遅く、外周部は早い。したがって、中心部ほど蒸着物質が多く蒸着される。
そこで、二つの補正板92の間は、中心部に向かっては狭く、外周部に向かって広く開口するようにハの字型に配置、固定されている。
ここで、支持装置20は、蒸着が行なわれている間回転しているが、中心部と外周部では、蒸発源90に対する移動速度が異なる。中心部は移動速度が遅く、外周部は早い。したがって、中心部ほど蒸着物質が多く蒸着される。
そこで、二つの補正板92の間は、中心部に向かっては狭く、外周部に向かって広く開口するようにハの字型に配置、固定されている。
図4には、蒸発源90、加熱手段91および補正板92の斜視図が示されている。
加熱手段91は、補正板支持部材93とヒータ本体94とを備えている。
ヒータ本体94の構造は、直方体の筐体95と、その内部に配置された光源であるハロゲンランプ96とを備えた構造となっている。
筐体95は、その耐熱温度が700℃以上で、熱伝導性が良好なものが好ましい。筐体95の材料としては、各種ステンレス、アルミニウム、銅、チタン等の金属が使用できる。筐体95は、ハロゲンランプ96からの赤外光を集光して加熱される。
ここで、筐体95の上面には、蒸発源90が設けられ、ハロゲンランプ96によって筐体95とともに加熱される。筐体95には、L字型の棒状の補正板支持部材93の片端が、筐体95の対向する側面のほぼ中心に熱伝導可能に二箇所取り付けられている。補正板支持部材93の他方の片端は、蒸発源90の設けられた面の方向に向けられている。
加熱手段91は、補正板支持部材93とヒータ本体94とを備えている。
ヒータ本体94の構造は、直方体の筐体95と、その内部に配置された光源であるハロゲンランプ96とを備えた構造となっている。
筐体95は、その耐熱温度が700℃以上で、熱伝導性が良好なものが好ましい。筐体95の材料としては、各種ステンレス、アルミニウム、銅、チタン等の金属が使用できる。筐体95は、ハロゲンランプ96からの赤外光を集光して加熱される。
ここで、筐体95の上面には、蒸発源90が設けられ、ハロゲンランプ96によって筐体95とともに加熱される。筐体95には、L字型の棒状の補正板支持部材93の片端が、筐体95の対向する側面のほぼ中心に熱伝導可能に二箇所取り付けられている。補正板支持部材93の他方の片端は、蒸発源90の設けられた面の方向に向けられている。
補正板92は、補正板支持部材93の筐体95に取り付けられていない片端を、補正板92に空けられた溝穴98を通して、蝶ネジ97で締めることによって固定されている。補正板92は、蝶ネジ97を緩めて、溝穴98の溝方向にも移動でき、角度だけでなく、その位置も変更できるようになっている。
これらの部材は真空中で使用するので、放熱も少なく効率よく加熱が行なえる。
これらの部材は真空中で使用するので、放熱も少なく効率よく加熱が行なえる。
補正板92の取り付け位置(蒸発源からの距離、角度)と形状は、蒸着条件によって最適なものに設定する。すなわち、チャンバ容積、蒸着時の圧力、蒸着物質の分子量、基板の三次元形状、支持装置20へのプラスチックレンズ10の保持位置などを考慮する。
補正板92の形状は、様々な形の板状のものに加え、パンチングメタル、網、ハニカム等を適宜使い分ける。また、補正板92の材質は、一般にSUSやアルミなどであるが、加熱温度に耐えられ、ガス放出の少ないものであれば使用可能である。
図5には、本実施形態に係るプラスチックレンズ10への表面処理工程が示されている。
工程(A)は、プラスチックレンズ10に、ハードコート層11を形成する工程である。ハードコート層11は、無機微粒子を有するゾルゲルを硬化する方法等によって得ることができる。この方法によれば、無機微粒子をプラスチックレンズ10の屈折率に合わせて選択することが可能で、プラスチックレンズ10とハードコート層11との界面の反射が抑えられる。ハードコート層11は、必要に応じて、片面および両面に形成される。プラスチックレンズ10の場合は、両面に形成する。
工程(A)は、プラスチックレンズ10に、ハードコート層11を形成する工程である。ハードコート層11は、無機微粒子を有するゾルゲルを硬化する方法等によって得ることができる。この方法によれば、無機微粒子をプラスチックレンズ10の屈折率に合わせて選択することが可能で、プラスチックレンズ10とハードコート層11との界面の反射が抑えられる。ハードコート層11は、必要に応じて、片面および両面に形成される。プラスチックレンズ10の場合は、両面に形成する。
工程(B)は、反射防止膜12を形成する工程である。支持装置20に保持されたプラスチックレンズ10は、チャンバ30に導入され脱ガスされる。次に支持装置20は、チャンバ40に導かれ、ハードコート層11の表面に反射防止膜12が成膜される。この工程では、高屈折率と低屈折率の複数の薄膜が交互に積層され、反射防止膜12の最上層には、二酸化ケイ素を主成分とする薄膜が形成される。
次に、反射防止膜12の最上層である二酸化ケイ素を含む薄膜と有機化合物との反応性を高めるため、表面にシラノール基を生成するための処理を行なう。
チャンバ40に酸素74またはアルゴン75が導入され、オートプレシャーコントローラ77とマスフローコントローラ78によって、チャンバ40内は一定圧力に制御される。高周波プラズマはおよそ10−3から103Paで発生可能であるが、1×10−2Pa〜1×10−1Paが好適である。高周波周波数は、13.56MHzとした。処理時間は、0.5〜3分で、この工程で二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
チャンバ40に酸素74またはアルゴン75が導入され、オートプレシャーコントローラ77とマスフローコントローラ78によって、チャンバ40内は一定圧力に制御される。高周波プラズマはおよそ10−3から103Paで発生可能であるが、1×10−2Pa〜1×10−1Paが好適である。高周波周波数は、13.56MHzとした。処理時間は、0.5〜3分で、この工程で二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
その他、シラノール基を生成するための処理として、イオンガン80を使用することもできる。
イオンガン80に、酸素74またはアルゴン75がマスフローコントローラ83で一定流量に制御されて導入される。導入されたガスは、イオンガン80内部でプラズマ化される。プラズマは高周波プラズマであり、RF電源81の周波数は通常13.56MHZである。生成した正イオンは、DC電源82で電圧印加された加速電極によって引き出され、二酸化ケイ素の表面に照射される。なお、プラスチックレンズ10上で絶縁破壊が起き、異常放電が発生するのを防止するため、内蔵されたニュートライザーから電子を供給し中和している。処理時間は、0.5〜3分間で、この工程で、二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
イオンガン80に、酸素74またはアルゴン75がマスフローコントローラ83で一定流量に制御されて導入される。導入されたガスは、イオンガン80内部でプラズマ化される。プラズマは高周波プラズマであり、RF電源81の周波数は通常13.56MHZである。生成した正イオンは、DC電源82で電圧印加された加速電極によって引き出され、二酸化ケイ素の表面に照射される。なお、プラスチックレンズ10上で絶縁破壊が起き、異常放電が発生するのを防止するため、内蔵されたニュートライザーから電子を供給し中和している。処理時間は、0.5〜3分間で、この工程で、二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
工程(C)は、反射防止膜12に蒸着による表面処理を行い、有機化合物層14を形成する工程である。有機化合物層14としては、撥水層または防曇層を形成することができる。撥水層はフッ素を含有する有機化合物を、防曇層は親水性基を有する有機化合物を蒸発源90に用いることで得られる。有機化合物層14が形成された後、チャンバ50は徐々に大気圧に戻され、プラスチックレンズ10が支持装置20ごと取り出される。
その後、プラスチックレンズ10は、表裏反転して再度支持装置20にセットされ、工程(B)〜工程(C)と同様な処理を行なう。これによって、プラスチックレンズ10の両面に有機化合物層14が形成される。
プラスチックレンズ10は、チャンバ50から取り出された後、図示しない恒温恒湿槽に投入され、適当な湿度と温度の雰囲気でアニールされる。または、室内に所定時間放置してエージングが行なわれる。その後、有機化合物層14の厚みを調整する必要があれば、過剰分を拭き取るなどの除去作業が行なわれる。
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)補正板92が蒸着物質の蒸発温度以上に加熱されているので、蒸着物質は補正板92に付着することが少なくプラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率を向上させることができる。
(1)補正板92が蒸着物質の蒸発温度以上に加熱されているので、蒸着物質は補正板92に付着することが少なくプラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率を向上させることができる。
(2)蒸着物質が蒸発温度の低い有機化合物なので、補正板92の加熱を容易にでき、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。
(3)真空蒸着装置100は、補正板92を加熱する加熱手段91を備えているので、補正板92を加熱でき、蒸着物質は加熱された補正板92に付着することが少なくプラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率を向上させることができる。
(4)ヒータ本体94で発生した熱は、補正板支持部材93を介して補正板92に伝達されるので、補正板92にヒータを設ける必要がなく、補正板92の構造を簡単にできる。したがって、補正板92に付着する蒸着物質の量を減少でき、蒸着物質の収率を向上させることができる。
(5)蒸発源90の加熱と補正板92の加熱が同じヒータ本体94で行なえるので、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。
(6)ハロゲンランプ96によって加熱を行なうので、ヒータ本体94の筐体95および蒸発源90は、ハロゲンランプ96から放射される赤外光によって効率よく加熱できる。したがって、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。
(7)複数の補正板92の相対位置が変更可能なので、蒸着条件の変化によってプラスチックレンズ10の保持された位置で到達する蒸着物質のばらつきが生じても、補正板92を最適な位置に配置できる。したがって、補正板92に付着する蒸着物質の量を減少でき、蒸着物質の収率を向上させることができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
プラスチックレンズ10として、眼鏡用プラスチックレンズ(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン)を用い、ハードコート層11が形成されたプラスチックレンズ10を支持装置20に複数配置した。
支持装置20は、図2および図3に示すように、同心円状に4段でプラスチックレンズ10を保持できるようになっている。ここで、プラスチックレンズ10の保持位置を支持装置20の中心から外周にかけて、1段、2段、3段、4段と呼ぶ。プラスチックレンズ10は、1段から4段にかけて各1枚ずつ保持した。
プラスチックレンズ10として、眼鏡用プラスチックレンズ(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン)を用い、ハードコート層11が形成されたプラスチックレンズ10を支持装置20に複数配置した。
支持装置20は、図2および図3に示すように、同心円状に4段でプラスチックレンズ10を保持できるようになっている。ここで、プラスチックレンズ10の保持位置を支持装置20の中心から外周にかけて、1段、2段、3段、4段と呼ぶ。プラスチックレンズ10は、1段から4段にかけて各1枚ずつ保持した。
プラスチックレンズ10と支持装置20とをチャンバ30で脱ガスした後、チャンバ40において、二酸化ケイ素と二酸化ジルコニウムの層を交互に蒸着し、これらの層からなる反射防止膜12を形成した。この反射防止膜12の最上層は、二酸化ケイ素である。
引き続き、チャンバ40内に酸素74を導入し、圧力を4.0×10−2Paに制御しつつ、高周波プラズマ発生装置60でプラズマを発生させた。プラズマ発生条件は、13.56MHz、400Wで1分間処理を行なった。
その後、チャンバ50に支持装置20を移動し、有機化合物層14を形成した。蒸着物質として、ダイキン工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(オプツールDSX)を用いた。これは、下記の一般式(1)で表される組成物を含有しており、分子量はおよそ4000〜5000である。常圧での蒸発温度は、およそ350℃〜500℃である。
式中、Rf1は、パーフルオロアルキル基、X1は水素、臭素、またはヨウ素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基、R1は水酸基または加水分解可能な基、R2は水素または一価の炭化水素基を表す。a、b、c、d、eは0または1以上の整数で、a+b+c+d+eは少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1または2を表す。gは1、2または3を表す。hは1以上の整数を表す。
このオプツールDSXを、フッ素系溶剤(ダイキン工業株式会社製:デムナムソルベント)に希釈して固形分濃度3%を調整し、これを多孔質セラミックス製のペレットに含浸させ乾燥したものを蒸発源90として使用した。ここで、ペレットへの含浸量は、固形分重量で15mgから30mgまで5mgずつ変化させたものを用いた。
このオプツールDSXを、フッ素系溶剤(ダイキン工業株式会社製:デムナムソルベント)に希釈して固形分濃度3%を調整し、これを多孔質セラミックス製のペレットに含浸させ乾燥したものを蒸発源90として使用した。ここで、ペレットへの含浸量は、固形分重量で15mgから30mgまで5mgずつ変化させたものを用いた。
補正板92は、図4に示したように筐体95に補正板支持部材93を介して熱伝導可能に配置した。また、補正板92は、板状のSUS製であり、その形状と取り付け位置は、事前に蒸着量分布を調べて最適なものとした。なお、事前に真空中で加熱テストも行い、補正板92が蒸着物質の蒸着温度以上に加熱されることを確認している。
チャンバ50は、ターボ分子ポンプ54を用いて、圧力が(2.0〜3.0)×10−2Paの範囲を維持するようにして蒸着した。
蒸着中は、ハロゲンランプ96を加熱ヒータとして使用し、蒸発源90でペレットを600℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着させた。このとき、補正板92の最大温度は、500℃であった。加熱は、200℃/分の上昇速度で行い、加熱時間は5分間であった。有機化合物層14を形成後、支持装置20およびプラスチックレンズ10をチャンバ50から取り出した。
蒸着中は、ハロゲンランプ96を加熱ヒータとして使用し、蒸発源90でペレットを600℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着させた。このとき、補正板92の最大温度は、500℃であった。加熱は、200℃/分の上昇速度で行い、加熱時間は5分間であった。有機化合物層14を形成後、支持装置20およびプラスチックレンズ10をチャンバ50から取り出した。
[実施例2]
実施例2においては、蒸着物質として、蒸着物質として信越化学工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130、3%溶液、)を用いた。これは、下記の一般式(2)で表される組成物を含有しており、分子量はおよそ2000〜3000である。また、常圧での蒸発温度は300℃〜500℃である。補正板92は、SUS製の板状のものを用い、その形状と取り付け位置は、蒸着物質の変更に合わせて、最適なものに調整した。
一般式(2)において、式中Rf2は、式−(CkF2k)O−(前式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を表す。R3は炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、X2は加水分解性基またはハロゲン原子を表す。pは0,1または2を表す。nは1〜5の整数を表す。mおよびrは、2または3を表す。
このKY−130の固形分濃度3%溶液を、多孔質セラミック製のペレットに含浸させ乾燥させたものを蒸発源90とした。これ以外は、実施例1と同様に行なった。
実施例2においては、蒸着物質として、蒸着物質として信越化学工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130、3%溶液、)を用いた。これは、下記の一般式(2)で表される組成物を含有しており、分子量はおよそ2000〜3000である。また、常圧での蒸発温度は300℃〜500℃である。補正板92は、SUS製の板状のものを用い、その形状と取り付け位置は、蒸着物質の変更に合わせて、最適なものに調整した。
このKY−130の固形分濃度3%溶液を、多孔質セラミック製のペレットに含浸させ乾燥させたものを蒸発源90とした。これ以外は、実施例1と同様に行なった。
[実施例3]
実施例3においては、蒸発物質として信越化学工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KP−801M)を用いた。これは、下記の一般式(3)で表される組成物を含有しており、分子量は約500である。常圧での蒸発温度はおよそ380℃〜500℃である。補正板は、SUS製の板状のものを用い、その形状と取り付け位置は、蒸着物質の変更に合わせて、最適なものに調整した。
チャンバ50は、ターボ分子ポンプ54を用い、圧力が9.0×10−1〜1.0×100Paの範囲を維持するようにして蒸着した。これ以外は、実施例1と同様に行なった。
実施例3においては、蒸発物質として信越化学工業株式会社製のフッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KP−801M)を用いた。これは、下記の一般式(3)で表される組成物を含有しており、分子量は約500である。常圧での蒸発温度はおよそ380℃〜500℃である。補正板は、SUS製の板状のものを用い、その形状と取り付け位置は、蒸着物質の変更に合わせて、最適なものに調整した。
[実施例4]
実施例4において、補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ50底部に独立して取り付け、補正板92には伝熱ヒータを設置し、加熱台の加熱速度と同期させて500℃まで加熱した。その他は、実施例1と同様の条件で処理を行なった。
実施例4において、補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ50底部に独立して取り付け、補正板92には伝熱ヒータを設置し、加熱台の加熱速度と同期させて500℃まで加熱した。その他は、実施例1と同様の条件で処理を行なった。
[比較例1]
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例1と同様の条件で処理を行なった。
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例1と同様の条件で処理を行なった。
[比較例2]
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例2と同様の条件で処理を行なった。
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例2と同様の条件で処理を行なった。
[比較例3]
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例3と同様の条件で処理を行なった。
補正板92の補正板支持部材93を筐体95に取り付けず、チャンバ底部に独立して取り付け、加熱を行なわなかった以外は、実施例3と同様の条件で処理を行なった。
[比較例4]
実施例4の条件で、補正板92の温度を蒸発温度以下の200℃に設定した。その他は、実施例4と同様の条件で処理を行なった。
実施例4の条件で、補正板92の温度を蒸発温度以下の200℃に設定した。その他は、実施例4と同様の条件で処理を行なった。
各実施例および比較例の評価は以下のように行った。
取り出したプラスチックレンズ10の中心部の表面接触角の測定とレンズペーパ拭き跡の目視観察とを行なうことで、各段で蒸着が適正量なされているか調べた。すなわち、蒸着量が下限未満であれば、接触角の低下として検出でき、蒸着量が上限を超えればレンズペーパで拭いた際に拭き跡として残るため検出することができる。
取り出したプラスチックレンズ10の中心部の表面接触角の測定とレンズペーパ拭き跡の目視観察とを行なうことで、各段で蒸着が適正量なされているか調べた。すなわち、蒸着量が下限未満であれば、接触角の低下として検出でき、蒸着量が上限を超えればレンズペーパで拭いた際に拭き跡として残るため検出することができる。
以下に詳しく評価方法を説明する。
1.蒸着量の評価
下限として接触角が正常値であれば○、正常値から低下していれば×。
上限としてレンズペーパで拭いて拭き跡が付かなければ○、拭き跡が付けば×。
上限と下限の評価の組み合わせで蒸着量を適正、不足、超過の三段階で評価した。
下限○、上限○であれば適正
下限×、上限○であれば不足
下限○、上限×であれば超過
2.接触角測定
接触角の測定には、接触角計(「CA−D型」協和科学株式会社製)を使用し、液滴法による純水の接触角を測定した。また、各実施例および各比較例に使用したフッ素含有有機ケイ素化合物によって撥水性が異なるので、接触角の評価は以下の通りとした。
オプツールDSX:通常の接触角ばらつき範囲は、111〜113°であり、105°未満は蒸着量下限以下とみなした。
KY−130:通常の接触角ばらつき範囲は、107〜109°であり、100°未満は蒸着量下限以下とみなした。
KP−801M:通常の接触角ばらつき範囲は、109〜111°であり、105°未満は蒸着量下限以下とみなした。
1.蒸着量の評価
下限として接触角が正常値であれば○、正常値から低下していれば×。
上限としてレンズペーパで拭いて拭き跡が付かなければ○、拭き跡が付けば×。
上限と下限の評価の組み合わせで蒸着量を適正、不足、超過の三段階で評価した。
下限○、上限○であれば適正
下限×、上限○であれば不足
下限○、上限×であれば超過
2.接触角測定
接触角の測定には、接触角計(「CA−D型」協和科学株式会社製)を使用し、液滴法による純水の接触角を測定した。また、各実施例および各比較例に使用したフッ素含有有機ケイ素化合物によって撥水性が異なるので、接触角の評価は以下の通りとした。
オプツールDSX:通常の接触角ばらつき範囲は、111〜113°であり、105°未満は蒸着量下限以下とみなした。
KY−130:通常の接触角ばらつき範囲は、107〜109°であり、100°未満は蒸着量下限以下とみなした。
KP−801M:通常の接触角ばらつき範囲は、109〜111°であり、105°未満は蒸着量下限以下とみなした。
実施例1,2で蒸着量が適正と判断されたのは、蒸着量15mgと20mgである。一方、補正板92の加熱を行なわない比較例1,2で同様な評価が得られたのは、蒸着量25mgと30mgである。したがって、収率の向上幅は、((25−20)/25)×100〜((30−15)/30)×100、すなわち収率は20〜50%向上することが確認できた。
同様に実施例3では、収率が25〜40%向上することが確認できた。
実施例4では、補正板92にヒータを取り付け、独立に加熱を行なった。その結果、実施例1と同じ収率であった。
比較例4では、補正板92を加熱したものの、フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発温度以下であるため、効果は認められず、加熱を行なわなかった比較例1と同様な結果であった。
同様に実施例3では、収率が25〜40%向上することが確認できた。
実施例4では、補正板92にヒータを取り付け、独立に加熱を行なった。その結果、実施例1と同じ収率であった。
比較例4では、補正板92を加熱したものの、フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発温度以下であるため、効果は認められず、加熱を行なわなかった比較例1と同様な結果であった。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、補正板支持部材93の形状は、L字型の棒状であったが、板状であってもよい。また、補正板92と補正板支持部材93は蝶ネジ97で固定されていたが、その他の固定方法でもよい。
また、蒸発源90、加熱手段91、補正板92および補正板支持部材93は、チャンバ40に配置されていてもよい。この場合、チャンバ40で反射防止膜12を形成した後、あるいはシラノール基を生成するための処理を行った後に有機化合物層14の形成を行うことができる。
例えば、前記実施形態では、補正板支持部材93の形状は、L字型の棒状であったが、板状であってもよい。また、補正板92と補正板支持部材93は蝶ネジ97で固定されていたが、その他の固定方法でもよい。
また、蒸発源90、加熱手段91、補正板92および補正板支持部材93は、チャンバ40に配置されていてもよい。この場合、チャンバ40で反射防止膜12を形成した後、あるいはシラノール基を生成するための処理を行った後に有機化合物層14の形成を行うことができる。
また、本発明を実施するための最良の方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態および実施例に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態および実施例に対し、使用する材料、処理時間、濃度、その他の詳細な事項において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材料、処理時間、濃度などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材料、処理時間、濃度などの限定の一部もしくは全部の限定を外した記載は、本発明に含まれるものである。
したがって、上記に開示した材料、処理時間、濃度などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材料、処理時間、濃度などの限定の一部もしくは全部の限定を外した記載は、本発明に含まれるものである。
本発明は、プラスチックレンズに利用できる他、プラスチック製の液晶表示パネル、カメラレンズ等にも利用することができる。
10…プラスチックレンズ、90…蒸発源、91…加熱手段、92…補正板、93…補正板支持部材、94…ヒータ本体、95…筐体、96…ハロゲンランプ、100…真空蒸着装置。
Claims (7)
- プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する真空蒸着方法であって、
前記プラスチックレンズと前記蒸着物質を加熱する蒸発源との間に補正板を設け、
前記蒸着物質を前記プラスチックレンズ表面へ蒸着するに際して、前記補正板の温度を前記蒸着物質の蒸発温度以上にする
ことを特徴とする真空蒸着方法。 - 請求項1に記載の真空蒸着方法において、
前記蒸着物質として、有機化合物を用いる
ことを特徴とする真空蒸着方法。 - プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する真空蒸着装置であって、
前記プラスチックレンズと前記蒸着物質を加熱する蒸発源との間に設けられた補正板を有し、
前記補正板を加熱する加熱手段を備えている
ことを特徴とする真空蒸着装置。 - 請求項3に記載の真空蒸着装置において、
前記加熱手段は、ヒータ本体と補正板支持部材とを備え、
前記ヒータ本体と前記補正板支持部材、および前記補正板支持部材と前記補正板とは、熱伝達可能に固定されている
ことを特徴とする真空蒸着装置。 - 請求項4に記載の真空蒸着装置において、
前記ヒータ本体には、前記蒸発源が設けられている
ことを特徴とする真空蒸着装置。 - 請求項5に記載の真空蒸着装置において、
前記ヒータ本体は、光源であるハロゲンランプと、
前記ハロゲンランプを内部に収納し、かつ前記ハロゲンランプからの赤外光を集光し熱へ変換する熱伝導性材料からなる筐体とを備え、
前記筐体が、前記蒸発源および前記補正板支持部材へ熱伝達可能に固定されている
ことを特徴とする真空蒸着装置。 - 請求項4〜請求項6のいずれかに記載の真空蒸着装置において、
前記補正板は複数設けられ、
これらの相対位置が変更可能に前記補正板支持部材に取り付けられている
ことを特徴とする真空蒸着装置。
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---|---|---|---|
JP2005179642A JP2006348376A (ja) | 2005-06-20 | 2005-06-20 | 真空蒸着方法および真空蒸着装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010106344A (ja) * | 2008-10-31 | 2010-05-13 | Ulvac Japan Ltd | 透明基材への防護層の蒸着方法及び成膜装置 |
JPWO2010016242A1 (ja) * | 2008-08-04 | 2012-01-19 | 株式会社ニコン・エシロール | 光学部品及び光学部品の製造方法 |
JP2012184453A (ja) * | 2011-03-03 | 2012-09-27 | Seiko Epson Corp | 蒸着装置 |
JP2013155408A (ja) * | 2012-01-30 | 2013-08-15 | Fujifilm Corp | 撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜 |
-
2005
- 2005-06-20 JP JP2005179642A patent/JP2006348376A/ja not_active Withdrawn
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US9012670B2 (en) | 2012-01-30 | 2015-04-21 | Fujifilm Corporation | Method of manufacturing water repellent film and thereby manufactured water repellent film |
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