JP5709588B2 - 蒸着装置 - Google Patents
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Description
真空蒸着方法では、蒸発源で蒸着物質の加熱を行うことにより、離れた位置に保持された基板上に蒸発した蒸着物質を蒸着させる。ここで、大面積の基板あるいは多数の基板に同時に蒸着する場合、基板の場所によって蒸発源から基板までの距離が異なると、基板の場所によって蒸着量が異なる。そこで、蒸着物質を均一の厚みで基板に蒸着させるために、蒸発源と基板との間に補正板を設けて、基板に到達する蒸着量の調整を行なっている。(例えば、特許文献1および2参照)。
一方、特許文献2では、補正板を加熱するための加熱手段を備え、補正板への蒸着物質の付着を少なくしているが、蒸着物質の収率は十分とは言えない。また、補正板を加熱するための手段を別途設ける必要があり、装置が複雑化するという問題があった。
この発明によれば、補正板が複数の板状体からなるので、板状体同士の相対位置を変えることで、蒸着源を覆う面積や位置を調整することができる。すなわち、蒸着物質の蒸着量をこれらの板状体の相対位置により調整し、所望の量とすることができる。
この発明によれば、複数の板状体が互いに近接離間可能かつ回動可能に設けられているので、板状体同士の相対位置を容易に変え、蒸着源を覆う面積や位置を調整することができる。したがって、蒸着条件の変化によってプラスチックレンズの保持された位置で到達する蒸着物質量の変化が生じても、板状体を容易に最適な位置に配置し、蒸着物質の蒸着量を調整することができる。これにより、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
この発明によれば、複数の板状体が同一平面上に設けられているので、板状体間に高さ方向の空間や隙間が生じることがない。したがって、高さ方向の空間から蒸着物質が漏れることがなく、板状体の相対位置を同一平面上で調整するだけで、確実に蒸着物質の蒸着量を調整することができる。
この発明によれば、簡単な構成で、板状体を互いに近接離間可能かつ回動可能に取り付けることができ、かつ板状体の位置を簡単に変えることができる。したがって、蒸着物質の蒸着量を簡単に調整することができる。
この発明によれば、補正板の熱容量が蒸着源の熱容量よりも小さいので、補正板の温度を蒸着源の温度よりも高い温度に保つことができる。すなわち、補正板の温度を蒸着物質の蒸着温度よりも高い温度に保つことができるので、補正板に付着する蒸着物質の量が減少し、蒸着物質の収率が向上する。
図1には、支持装置20に保持されたプラスチックレンズ10への蒸着等の表面処理を行なう真空蒸着装置100の概略図が示されている。図1において、本発明の蒸着装置は、蒸着装置90として示されている。
図1において、プラスチックレンズ10は、支持装置20に複数保持されている。支持装置20は、ドーム状の断面形状を有している。そして、プラスチックレンズ10が同心円状に4段にわたって保持できるようになっている。
また、支持装置20は、真空蒸着装置100の内部を工程ごとに移動して、プラスチックレンズ10への表面処理が行なわれる。また、支持装置20は、各プラスチックレンズ10への処理が均一になるように、図示しない回転機構によって回転させられている。
屈折率の異なる蒸着物質の例として、低屈折率物質として酸化ケイ素が、高屈折率物質としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウムが挙げられる。
プラズマ処理に使用されるガスである酸素74とアルゴン75は、オートプレシャーコントローラ77で所定の圧力になるように、マスフローコントローラ78で流量が制御されて導入される。
イオンガン80に使用する酸素74とアルゴン75は、マスフローコントローラ83で流量が制御されて導入される。
チャンバ50は、有機化合物である蒸着物質を蒸着することにより有機化合物層を形成するチャンバである。チャンバ50内部には、有機化合物を含む蒸着装置90がドーム状の支持装置20の下に位置するよう設置されている。そして、図1に示すように、チャンバ50は、ロータリーポンプ52、ルーツポンプ53およびターボ分子ポンプ54を備えた真空生成装置51により適当な圧力に保持されている。
図3には、蒸着装置90の上面図が示されている。また図4には蒸着装置90の断面図が示されている。
蒸着装置90は、上面に開口した凹部912を備える筐体91と、凹部912に設けられた蒸着源92と、蒸着源92を覆い、筐体91の上面911Aに接触し、かつ上面911A上をスライド可能に取り付けられた補正板93とを備えている。
筐体91は、その耐熱温度が700℃以上で、熱伝導性が良好なものが好ましい。筐体91の材料としては、各種ステンレス、アルミニウム、銅、チタン等の金属が使用できる。筐体91は、ハロゲンランプ94からの赤外光を集光して加熱される。
蒸着源92は、上面が開口した銅製の容器であり、凹部912に設けられ、ハロゲンランプ94によって筐体91とともに加熱される。なお、蒸着源92としてはその他にも、多孔質セラミックペレットを使用しても良い。
例えば、支持装置20は、蒸着が行なわれている間回転しているが、中心部と外周部では、蒸着装置90に対する移動速度が異なる。中心部は移動速度が遅く、外周部は早い。したがって、中心部ほど蒸着物質が多く蒸着される。このような場合には、2枚の補正板93の間を、中心部に向かっては狭く、外周部に向かって広く開口するようにハの字型に配置、固定する。
例えば、蒸着源92の直径を20mmとし、補正板93を30mmの半円と25mm×30mmの長方形を組み合わせた形状(A)または、20mmの半円と30mm×20mmの長方形を組み合わせた形状(B)とする。そして、この蒸着源92を4.5gの銅製の容器と0.8gのスチールウールからなる、蒸着物質を含浸させる構造として、熱容量をシミュレートする。銅の比熱を0.384J/g・K、スチールウールの比熱を0.625J/g・Kとして、熱容量=質量×比熱を求めると、蒸着源およびペレットの合計熱容量は、2.2J/Kとなる。
これに対し、補正板93を例えばステンレスの中でも最も比熱の大きいSUS304(比熱 0.59J/g・K)、または銅で構成する場合、補正板93の比熱と形状は表1に示す関係となる。なお、下記表1で補正板93の重量は2枚分の重量である。
まず、プラスチックレンズ10に、ハードコート層を形成する(工程A)。ハードコート層は、無機微粒子を有するゾルゲルを硬化する方法等によって得ることができる。この方法によれば、無機微粒子をプラスチックレンズ10の屈折率に合わせて選択することが可能で、プラスチックレンズ10とハードコート層との界面の反射が抑えられる。ハードコート層は、必要に応じて、片面および両面に形成される。プラスチックレンズ10の場合は、両面に形成する。
チャンバ40に酸素74またはアルゴン75が導入され、オートプレシャーコントローラ77とマスフローコントローラ78によって、チャンバ40内は一定圧力に制御される。高周波プラズマはおよそ10−3から103Paで発生可能であるが、1×10−2Pa〜1×10−1Paが好適である。高周波周波数は、13.56MHzとした。処理時間は、0.5〜3分で、この工程で二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
イオンガン80に、酸素74またはアルゴン75がマスフローコントローラ83で一定流量に制御されて導入される。導入されたガスは、イオンガン80内部でプラズマ化される。プラズマは高周波プラズマであり、RF電源81の周波数は通常13.56MHZである。生成した正イオンは、DC電源82で電圧印加された加速電極によって引き出され、二酸化ケイ素の表面に照射される。なお、プラスチックレンズ10上で絶縁破壊が起き、異常放電が発生するのを防止するため、内蔵されたニュートライザーから電子を供給し中和している。処理時間は、0.5〜3分間で、この工程で、二酸化ケイ素の表面にシラノール基が生成される。
蒸着源92を覆う補正板93がハロゲンランプ94により、蒸着源92とともに筐体91を介して加熱されるので、蒸着源92で加熱され気化した蒸着物質が補正板93に付着することが少なく、プラスチックレンズ10に到達し、蒸着物質の収率が向上する。
また、補正板93は筐体91の上面911Aおよび913A上に接触し、上面911Aおよび913A上をスライド可能に取り付けられているので、筐体91から離れることがなく、筐体91を介して常に加熱されるので、補正板93の温度が下がって、蒸着物質が補正板93に付着することを防ぐことができる。
さらに、蒸着源92と補正板93の加熱を同一の加熱手段であるハロゲンランプ94により同時に行うので、少ないエネルギーの使用で蒸着物質の収率を向上させることができる。また、補正板93用の加熱手段を別途設ける必要がなく、真空蒸着装置100の構造を簡単なものにできる。
また、補正板93は、ブラケット913に取り付けられている。ブラケット913は、筐体91の側面911Bに設けられ、その上面913Aが、筐体本体911の上面911Aと連続した高さに設けられ、同一平面を形成している。したがって、補正板93は、筐体本体911だけでなく、ブラケット913からも熱を受け加熱されるので、蒸着物質が補正板93に付着することを防ぐことができる。
プラスチックレンズ10として、眼鏡用プラスチックレンズ(セイコーエプソン株式会社製:セイコースーパーソブリン)を用い、ハードコート層11が形成されたプラスチックレンズ10を支持装置20に複数配置した。
支持装置20は、図2および図3に示すように、同心円状に4段でプラスチックレンズ10を保持できるようになっている。ここで、プラスチックレンズ10の保持位置を支持装置20の中心から外周にかけて、1段目、2段目、3段目、4段目と呼ぶ。プラスチックレンズ10は、1段目から4段目にかけて各1枚ずつ保持した。
蒸着中は、ハロゲンランプ94を使用し、蒸着源92内でペレットを600℃に加熱して、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着させた。このとき、補正板93の最大温度は、605℃であった。加熱は、200℃/分の上昇速度で行い、加熱時間は5分間であった。有機化合物層14を形成後、支持装置20およびプラスチックレンズ10をチャンバ50から取り出した。
実施例1〜3において、蒸着装置90を従来の蒸着装置変更し、蒸着物質のペレットへの含浸量を表2に示す量とした以外は同様にして、プラスチックレンズ10への蒸着を行った。
なお、従来の蒸着装置は、補正板93が筐体91の上面911Aから高さ120mm離れ、かつ筐体91がブラケット913を備えていない点で蒸着装置90と異なる。すなわち、補正板は筐体91から直接熱を受けるものではない。
試験1:拭き耐久性試験
木綿布を用い、基材の表面を200gの荷重をかけながら、5000回往復させた。拭き耐久性試験前後の防汚性能について、接触角と油性インク拭き取り性によって評価した。
試験2:耐アルカリ性試験
0.05Nに調整した水酸化ナトリウム水溶液中に、基材の一部を切り取った試験片を3時間浸漬し、浸漬後の試験片を水でよく洗った。その試験片のアルカリ浸漬前後の防汚性能について、接触角と油性インク拭き取り性によって評価した。
(評価1:接触角)
接触角の測定には、接触角計(DM−700 協和界面科学株式会社製)を使用し、液滴法による純水の接触角を測定した。
撥水膜として許容できる純水接触角は91°以上であり、91°未満は蒸着量下限以下とみなす。
(評価2:インク拭き取り性)
基材の表面に、黒色油性マーカー(「ハイマッキーケア」ゼブラ株式会社製)により約4cmの直線を描いた後5分間放置した。放置後、該マーク部をワイプ紙(「ケイドライ」株式会社クレシア製)によって拭き取りを行い、その拭き取り易さを下記の基準にて判定した。
(基準)
○;10回以下の拭き取りで完全に除去
△;11回から20回までの拭き取りで完全に除去
×;20回の拭き取り後も除去されない部分が残る
これらの評価結果を表2〜3に示す。
一方、比較例3では、すべてのプラスチックレンズ10で接触角およびインク拭き取り性の良好な結果が得られているが、含浸量を20mgに増量しており、実施例1〜3と比較して収率がよいとは言えない。
Claims (8)
- プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する蒸着装置であって、
上面に開口した凹部を備える筐体と、
前記凹部に設けられた蒸着源と、
前記筐体の上面に接触するとともに、スライド可能に取り付けられ、かつ前記蒸着源を覆う補正板とを、備え、
前記筐体は、前記蒸着源とともに前記補正板を加熱する加熱手段を内部に設けられており、
前記加熱手段は、ハロゲンランプである
ことを特徴とする蒸着装置。 - プラスチックレンズ上に蒸着物質を蒸着する蒸着装置であって、
上面に開口した凹部を備える筐体と、
前記凹部に設けられた蒸着源と、
前記筐体の上面に接触するとともに、スライド可能に取り付けられ、かつ前記蒸着源を覆う補正板とを、備え、
前記筐体は、前記蒸着源とともに前記補正板を加熱する加熱手段を内部に設けられており、
前記補正板は、前記加熱手段により加熱された筐体から前記上面を介して熱を受け取り加熱される
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項1または2に記載の蒸着装置において、
前記補正板は、複数の板状体からなる
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項3に記載の蒸着装置において、
前記複数の板状体は、互いに近接離間可能かつ回動可能に設けられた
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項3または請求項4に記載の蒸着装置において、
前記複数の板状体は、同一平面上に設けられた
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記筐体は、前記蒸着源が設けられた筐体本体と、
この筐体本体の平面と同一となる平面を有するとともに、前記補正板を支持するブラケットを備え、
前記複数の板状体は、その幅方向の中心に溝孔を備えるコ字型に形成され、前記溝孔において、前記ブラケットに取付部材により取り付けられた
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記補正板の熱容量が前記蒸着源の熱容量よりも小さい
ことを特徴とする蒸着装置。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記蒸着源は、有機ケイ素化合物である
ことを特徴とする蒸着装置。
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