JP2013155408A - 撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板上に、シランカップリング剤により有機膜を蒸着法により被覆する有機膜被覆工程と、有機膜被覆工程における成膜条件を決定する成膜条件決定工程と、を有し、成膜条件決定工程は、温度決定工程と、温度決定工程で決定した温度において、玉状の余剰撥水材料が形成される時間を測定し、この時間より短い時間を成膜時間と決定する成膜時間決定工程と、からなる撥水膜の製造方法および該製造方法により製造された撥水膜である。
【選択図】図6
Description
有機膜被覆工程は、基板10上にシランカップリング剤を蒸着させ、有機膜を被膜する工程である。図1(a)は、シランカップリング剤31と基板10の結合前、図1(b)は結合後の化学構造の概略図である。
(温度決定工程)
温度決定工程による温度条件は、シランカップリング剤を昇温し、重量減少が開始する温度以上の温度であり、上限はシランカップリング剤の突沸が起こらない温度である。温度条件は、例えば、TG−DTA測定により決定することができる。室温にてシランカップリング撥水材料の希釈溶媒を揮発させ、重量減少が収まり、シランカップリング撥水材料のみになった状態において、10℃/minで昇温した際に、重量減少が10%以上90%未満となる温度とすることが好ましく、より好ましくは、20%以上80%未満である。
成膜時間については、撥水膜の静的接触角を測定し、静的接触角が110°以上となる時間を予め定めておき、その時間になるまで、少なくとも成膜を行なう。また、成膜された撥水膜を光学顕微鏡で観察し、玉状の余剰撥水材料(島)が形成される直前の時間を予め同一条件で見積もっておき(予測しておき)その時間より短い時間を成膜時間と決定する。また、その時間の直前を成膜時間と決定することが好ましい。上記の成膜時間とすることにより、接触角が110°以上の撥水性を有する撥水膜であり、余剰の撥水材料が無いため、ワイピングにより余剰の撥水材料が剥離し、ノズル詰まりを引き起こすことを防止することができる。また、余剰撥水材料が形成されない状態で成膜時間を長くすることにより、撥水膜の被覆率を高くすることができるので、成膜時間は、余剰撥水材料が形成される直前まで行うことが好ましい。
撥水膜を成膜した後、撥水膜の使用前に、所定の時間空気中で保管することが好ましい。空気中で保管することにより、基材と撥水膜の密着をより強固にすることができる。保管時間は1週間以上、好ましくは2週間以上保管することが好ましい。また、撥水膜の保管は、温度と湿度を制御した状態で行なうことが好ましい。温度および湿度を上記範囲とし保管することで、基材と撥水膜の密着性をより高めることができる。
次に本発明の撥水膜の形成方法により形成された撥水膜を適用した例として、ノズルプレート、ノズルプレートを備えるインクジェットヘッド、および、インクジェット記録装置について説明する。本発明の撥水膜の形成方法は、ノズルプレートの製造方法、インクジェットヘッドの製造方法、インクジェット記録装置の製造方法に対して好ましく用いることができる。
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
描画部116は、描画ドラム(第2の搬送体)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図2に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
図2に示すように、定着部120に続いて排出部122が設けられている。排出部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
次に、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造について説明する。なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
ダイキン製オプツールDSX(20wt%)をTG−DTAの測定部に滴下し、室温下で重量減少が止まるまで待機した。80wt%を占めるパーフルオロヘキサンが揮発し、撥水材料のみがTG−DTAの測定部に残った後、10℃/分の速度で測定部を加熱し、TGデータを得た。TGのデータを図5に示す。図5に示すように、重量減少が10%の温度は300℃、重量減少が90%の温度は470℃であった。
SAMCO社製プラズマCVD装置を用いて、6インチシリコン基板にTEOS(テトラエトキシシラン)を熱気化により供給し、シリコン基板表面にSiO2膜を200nm成膜した。その後、セン特殊光源製低圧水銀灯を用い、大気下で30分間照射し表面を清浄化した。
Si/SiO2基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着源の温度は600℃とした。撥水材料は、比較例1と同等量としたが、突沸を防止するためにアルミナ沸騰石を蒸着加熱部に置き、アルミナ沸騰石を濡らすようにして撥水材料を滴下した。なお、沸騰石を使用しない場合は、突沸が生じ加熱部が汚染された。成膜時間を2分間(600℃に至るまでの時間を含む。以後同様。)(比較例2)としたところ、成膜後の静的接触角は105°であり、撥水膜は十分に被覆されていなかった。成膜時間が3分間(比較例3)では、静的接触角は113°となったが、玉状の余剰の撥水材料が生成された。
アルカリ性のインク中に、60℃の温度で、所定時間、浸漬を行なった。その後の水の静的接触角を測定した。なお、静的接触角が70°未満になるまでの時間が400時間以上かかる撥水膜を実際の使用に耐えられるレベルとし合格とした。
東レ製トレシーを治具にセットし、一定圧力となるようにシリコン基板に当接させ、擦り試験を行い、擦り回数1000回おきに水で静的接触角を測定した。水の接触角が70°となる前後で直線を引き、70°となる回数をワイプ寿命とした(例えば、2000回ワイプで80°、3000回ワイプで60°の場合、2500回ワイプを寿命とした)。なお、ワイプ寿命が2000回以上の撥水膜を実際の使用に耐えられるレベルとし合格とした。
次に玉状余剰撥水材料のある膜、ない膜において、ノズル詰まり試験を行った。ノズル詰まり試験は、10回程度ノズル面のワイプを行ない、吐出試験により確認した。玉状余剰撥水材料のない膜は、正常に吐出を行なうことができたが、玉状余剰撥水材料のある膜は、不吐出となり、光学顕微鏡で異物の詰まりが確認された。比較例3においては、インク浸漬試験、ワイプ試験においては良好な結果を得ることができたが、玉状余剰撥水材料が形成されているため、ノズル詰まり試験によりノズル詰まりが発生していた。
Si/SiO2基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は500℃とし、突沸は見られなかったため、加熱部の汚染はなく、沸騰石は用いずに成膜した。
Si/SiO2基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は450℃とし、成膜時間を3分(比較例6)、4分(実施例1)、5分(比較例7)とし、成膜を行なった。結果を表2に示す。
Si/SiO2基板を比較例1と同様の方法で形成し、蒸着装置にセットした。蒸着温度は400℃とし、成膜時間を5分(比較例7)、10分(実施例2)、20分(実施例3)、30分(実施例4)、40分(比較例8)とし、成膜を行なった。結果を表3に示す。
滴サイズ10μlの純水を撥水膜上に滴下し、ステージを傾けて滑落を開始する角度を測定した。実施例、比較例の温度条件で複数の膜を作製し、玉状余剰撥水材料の有無で比較を行った。
Claims (8)
- 基板上に、シランカップリング剤により有機膜を蒸着法により被覆する有機膜被覆工程と、
前記有機膜被覆工程における成膜条件を、前記基板と同じ材料を用いて、予め決定する成膜条件決定工程と、を有し、
前記成膜条件決定工程は、前記シランカップリング剤が、蒸発する温度以上突沸が起こらない温度以下に決定する温度決定工程と、前記温度決定工程で決定した温度において、有機膜を被覆し、光学顕微鏡観察により玉状の余剰撥水材料が形成される時間を測定し、前記時間より短い時間を成膜時間と決定する成膜時間決定工程と、からなる撥水膜の製造方法。 - 前記温度決定工程により決定される温度は、10℃/minの速度で昇温して得られたTG−DTA測定で、重量減少が10%以上90%以下である請求項1に記載の撥水膜の製造方法。
- 前記成膜時間決定工程は、成膜物の静的接触角を測定し、前記静的接触角が110°以上になる時間以上に決定する請求項1または2に記載の撥水膜の製造方法。
- 前記成膜時間決定工程は、前記玉状の余剰撥水材料が形成される時間の直前を成膜時間と決定する請求項1から3のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
- 前記温度決定工程により決定される温度は、TG−DTA測定による重量減少が20%以上80%以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
- 前記有機膜を成膜した後、使用前に所定の時間、保管する保管工程と、を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法。
- 前記保管工程は、温度および湿度を制御して行なう請求項6に記載の撥水膜の製造方法。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の撥水膜の製造方法により製造された撥水膜。
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