JP2003014904A - 撥水性薄膜を有する光学部材の製造方法 - Google Patents
撥水性薄膜を有する光学部材の製造方法Info
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Abstract
素含有有機ケイ素化合物を用い真空蒸着法により撥水膜
を形成する方法を提供すること。 【解決手段】プラスチック製光学部材上に反射防止膜を
蒸着し、次いで反射防止膜上に撥水性薄膜を蒸着により
形成する撥水性薄膜を有する光学部材の製造方法。撥水
性薄膜の蒸着は、フッ素含有有機ケイ素化合物を、プラ
スチック製光学部材の温度が前記反射防止膜蒸着の際の
プラスチック製光学部材の最大温度を超えない条件下で
加熱して蒸発させ、蒸発したフッ素含有有機ケイ素化合
物を前記反射防止膜を有するプラスチック光学部材上に
付着させることにより行われる。加熱は、常温から前記
フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発開始温度より低い所
定の温度(1)まで上昇させる第一の昇温段階と、所定の
温度(1)から蒸発開始温度以上の所定の温度(2)まで上昇
させる第二の昇温段階を含む。第一の昇温段階の昇温速
度は第二の昇温段階の昇温速度より大きい。
Description
水性薄膜を有するプラスチック製光学部材の製造方法に
関する。
は、一般に、無機酸化物を多層蒸着させた反射防止膜が
設けられている。この多層蒸着膜は、一般に、例えばZr
O2やTiO2などの高屈折率層と、SiO2やAlO2などの低屈折
率層とからなり、最外層は低屈折率層であることが一般
的である。そのため、汗、指紋などによる汚れが付着し
やすく、且つこれらの汚れはなかなかを除去しにくいも
のであった。このような問題を解決する方法として、例
えば、特開昭60−221470号公報、特開昭62−
148902号公報には、パーフルオロアルキル基置換
アンモニウムシランの希釈溶液に樹脂(光学基板)を浸
漬硬化又は塗布硬化させて反射防止膜上に撥水膜を形成
する方法が開示されている。また、特開平5−2159
05号公報にはm−キシレンヘキサクロライド希釈溶液
から真空蒸着法にて反射防止膜上に薄膜を形成する方法
が開示されている。
−215905号公報において、多孔性材料で、銅など
の熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルター
に、フッ素含有のシラザン系有機ケイ素化合物をキシリ
レンヘキサフロライド、トリクロロモノフルオロメタン
などのフッ素系溶媒で希釈して得た撥水処理液を含浸さ
せ、真空蒸着下で加熱して光学部材上に成膜する方法が
提案されている。
62−148902号公報に開示されている方法により
形成した薄膜の撥水性能は耐久性に乏しく、使用ととも
に撥水性能が大きく低下するという欠点を有していた。
これに対し、特開平05−215905号公報(以下、
公報1という)に開示されている方法は、有機ケイ素化
合物を真空蒸着させることで、耐久性、経時変化特性等
を従来より改善することができた。
に開示されているフッ素含有有機ケイ素化合物は、分子
量が大きく沸点が高い。従って、真空蒸着する場合、高
温に加熱する必要があることから、加熱条件によって
は、この熱の影響で光学部材の表面温度が上がり、反射
防止膜に熱クラック等の劣化が生じる可能性がある。特
に、真空度が低い場合には、沸点はさらに高くなるた
め、熱の影響は大きくなる。また、これ以外のフッ素含
有有機ケイ素化合物からなる撥水剤としては、特開平9
−157582号公報、特開平9−202648号公
報、特開平9−263728号公報(以下、それぞれ公
報2、3及び4という)に開示されているような化合物
が挙げられる。
素含有率が高いことから、撥水性、耐久性等の向上が期
待できる。しかし、分子量がさらに大きいことから、沸
点がさらに高く、公報1に記載の化合物の場合よりもさ
らに熱の影響は大きくなる。しかも、これら化合物の場
合は反射防止膜との結合反応も公報1に記載の化合物に
比べ時間がかかることから、蒸着条件の設定が難しかっ
た。熱の影響を少なくするには、短時間で温度を上昇さ
せると良いが、蒸着条件によっては蒸発時間が短いため
に形成される撥水膜にムラが生じる場合があった。
への反射防止膜の形成は、反射防止膜が無機酸化物から
なる多層蒸着膜である場合、蒸着装置を用いて行われ
る。従って、このような蒸着装置を用いて形成された反
射防止膜の上に撥水膜を蒸着法を用いて形成する場合、
反射防止膜及び撥水膜の形成を連続して行うことが望ま
しい。しかし、反射防止膜を設けた光学部材は、前述し
たように、撥水膜の形成時の温度条件等により熱クラッ
ク等の障害が生じる場合があるが、上記のような比較的
高分子量であるため沸点の高いフッ素含有有機ケイ素化
合物からの撥水膜の蒸着による形成を反射防止膜の形成
と連続して行う場合、蒸着温度が高くなることから特に
問題が生じやすい。
蒸着室を使って蒸着を行うと、蒸着室内壁に付いた撥水
膜の上に反射防止膜が付いたとき、反射防止膜が撥水膜
に付きにくいことから、撥水膜上に付いた反射防止膜が
剥離しやすくなり、それが成膜中にレンズに付着すると
成膜に不良を生じる場合がある。そのため、反射防止膜
を蒸着するための蒸着室(以下、第一蒸着室)と撥水膜
を蒸着するための蒸着室(以下、第二蒸着室)とに分
け、連続的に処理する装置を用いることを考えた。
蒸着室に被蒸着物を取り出すための開閉機構や被蒸着物
質を搬送するための機構が設けられている場合が有り、
蒸着物質と被蒸着物質との間に距離を十分に取れなかっ
たり、これら機構が障害物となるなどが原因して、短時
間に蒸着物質を飛ばすと撥水膜にムラが生じる場合があ
った。また、被蒸着物を取り出すたびに開閉すること
や、取り出す前の冷却のために真空度を低くして放熱効
率を上げる必要があることなどの理由から、第二蒸着室
は真空度が低い場合が有り、この場合、蒸着開始温度が
高くなり、前述したような問題が生じやすくなる可能性
がある。
撥水性能、耐久性、耐磨耗性等に優れた撥水性薄膜を持
ったプラスチック製光学部材を製造する方法であって、
反射防止膜の形成と連続して、前記のような比較的高分
子量であるため沸点の高いフッ素含有有機ケイ素化合物
を用い真空蒸着法により撥水膜を形成することができる
製造方法を提供することにある。
達成するために鋭意検討した結果、前記撥水性薄膜の蒸
着条件及びフッ素化合物の蒸発温度域の温度条件を特定
の範囲にすることで、反射防止膜の熱クラック等の障害
を生じることなく、かつムラなく、しかも短時間で蒸着
できることを見出し、本発明を完成した。
蒸着し、次いで該反射防止膜上に撥水性薄膜を蒸着によ
り形成する撥水性薄膜を有する光学部材の製造方法であ
って、前記撥水性薄膜の蒸着は、フッ素含有有機ケイ素
化合物を、前記プラスチック製光学部材の温度が前記反
射防止膜蒸着の際のプラスチック製光学部材の最大温度
を超えない条件下で加熱して蒸発させ、蒸発したフッ素
含有有機ケイ素化合物を前記反射防止膜を有するプラス
チック光学部材上に付着させることにより行われ、前記
加熱は、常温から前記フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸
発開始温度より低い所定の温度(1)まで上昇させる第一
の昇温段階と、前記所定の温度(1)から前記蒸発開始温
度以上の所定の温度(2)まで上昇させる第二の昇温段階
を含むようにおこなわれ、かつ第一の昇温段階の昇温速
度は第二の昇温段階の昇温速度より大きいことを特徴と
する光学部材の製造方法。 [請求項2]前記フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発
は、前記フッ素含有有機ケイ素化合物を含浸させた多孔
性材料を加熱手段により加熱することで行う請求項1記
載の製造方法。 [請求項3]前記反射防止膜の蒸着と前記撥水性薄膜の蒸
着とは、複数のプラスチック製光学部材を保持した保持
具を、反射防止膜用の蒸着室及び前記撥水性薄膜用の蒸
着室を順次移動することで行われる請求項1または2に
記載の製造方法。 [請求項4]前記フッ素含有有機ケイ素化合物は、下記一
般式(I):
ルキル基、Xは水素または低級アルキル基、R1は加水
分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整
数、pは1〜10の整数)で表される、分子量3500〜65
00のフッ素化合物を含む請求項1から3のいずれか1項
記載の製造方法。 [請求項5]前記第二の昇温段階は450℃〜660℃の
範囲内の温度で行われる請求項4記載の製造方法。 [請求項6]前記第二の昇温段階の昇温速度を0.4℃/秒〜
1.7℃/秒の範囲とする請求項4または5記載の製造方
法。 [請求項7]前記フッ素化合物は、下記一般式(II): CpF2p+1CH2CH2Si(NH)1.5 (ただし、pは1以上の整数である)で表される、分子
量300〜700のフッ素化合物を含む請求項1から3
のいずれか1項記載の製造方法。 [請求項8]前記第二の昇温段階は400℃〜610℃の
範囲内の温度で行われる請求項7記載の製造方法。 [請求項9] 前記第二の昇温段階の昇温速度を、0.4℃/
秒〜1.7℃/秒の範囲とする請求項7または8記載の製造
方法。
する。本発明の光学部材の製造方法は、プラスチック製
光学部材上に反射防止膜を蒸着し、次いで該反射防止膜
上に撥水性薄膜を蒸着により形成する方法であり、特に
低い真空度で撥水性薄膜を蒸着する場合に適する。蒸着
処理方法には、一般に、バッチ式の真空蒸着装置で行う
方法と、連続式の真空蒸着装置で行う方法とあるが、本
発明は連続式の真空蒸着装置で行う方法に特に適する。
本発明で使用する連続式の真空蒸着装置は、好ましく
は、反射防止膜用の真空蒸着室と撥水性薄膜用の真空蒸
着室を連続して有するものである。このように、反射防
止膜処理室及び撥水膜処理室を順次設けることで、処理
の効率化とサイクル時間短縮を図ることが可能である。
水性薄膜の蒸着を、反射防止膜の蒸着の際の真空度より
低い真空度で行うことから、撥水膜処理室を連続式真空
蒸着装置の真空破壊室として利用することができる。こ
のように反射防止膜及び撥水性薄膜の蒸着を連続して行
うことで、真空室内の蒸着物質による汚れかすのレンズ
面への付着を低下し、より安定した撥水処理膜を得るこ
とができ、歩留まりを向上させる効果もある。
てさらに説明する。図1は、連続型真空蒸着装置におけ
る蒸着処理の流れを示す概略図である。図中、10は予
熱室(CH1)、20は第一蒸着室(CH2)、30は
第二蒸着室(CH3)であり、11及び31はレンズ支
持具1を支持するためのレンズ支持具載置台である。ま
ず、レンズ支持具1のレンズ取付開口部2にレンズを保
持させ、この状態のレンズ支持具1を予熱室開閉台に設
置されたレンズ支持具載置台11に乗せられ、予熱室開
閉台12が閉じると共に予熱室(CH1)10に移送さ
れる。予熱室(CH1)10内の真空度を上げた後、蒸
着に適した温度にまで加熱し、レンズ支持具1は第一蒸
着室(CH2)20に移送される。第一蒸着室(CH
2)20内では、反射防止膜用の蒸着物質A25が、加
熱源23により加熱され、反射防止膜の蒸着が行われ
る。蒸着の際は、レンズ支持具1を回転し、複数のレン
ズが均一に蒸着されるようにする。反射防止膜の蒸着が
完了した後、レンズ支持具1は、第二蒸着室(CH3)
30に移送される。第二蒸着室(CH3)30内では、
レンズ支持具1は、第二蒸着室開閉台32上のレンズ支
持具載置台31に乗せられる。第二蒸着室(CH3)3
0には、撥水性薄膜用の蒸着物質B35が加熱装置33
により加熱され、撥水性薄膜の蒸着が行われる。この蒸
着の際もレンズ支持具を回転し、複数のレンズが均一に
蒸着されるようにする。撥水性薄膜の蒸着完了後、所定
時間放置して温度を下げた後、第二蒸着室開閉台32が
降下してレンズ支持具1から反射防止膜及び撥水性薄膜
を形成したレンズが取り出される。
水性薄膜の蒸着は、フッ素含有有機ケイ素化合物を、前
記プラスチック製光学部材の温度が前記反射防止膜蒸着
の際のプラスチック製光学部材の最大温度を超えない条
件下で加熱して蒸発させ、蒸発したフッ素含有有機ケイ
素化合物を前記反射防止膜を有するプラスチック光学部
材上に付着させることにより行われる。
ック製光学部材の表面温度が、反射防止膜蒸着の際のプ
ラスチック製光学部材の最大温度を超えない条件とす
る。これにより反射防止膜の熱クラックが防止できると
いう利点がある。反射防止膜蒸着の際のプラスチック製
光学部材の最大温度(光学部材表面)は、通常85〜110
℃の範囲であり、撥水性薄膜の蒸着の際の光学部材表面
の温度は、15〜25℃低い温度であることが好ましい。
尚、撥水性薄膜の蒸着の際の真空度は、例えば、10-2
〜10-4 Torrの比較的低い真空度であることができ
る。
温からフッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発開始温度より
低い所定の温度(1)まで上昇させる第一の昇温段階と、
所定の温度(1)から前記蒸発開始温度以上の所定の温度
(2)まで上昇させる第二の昇温段階を含むようにおこな
われ、さらに第一の昇温段階の昇温速度は第二の昇温段
階の昇温速度より大きくする。フッ素含有有機ケイ素化
合物の蒸発開始温度は、フッ素含有有機ケイ素化合物の
種類(分子量や組成)や真空度により決まるものである
が、後述する一般式(I)で示されるフッ素含有有機ケイ
素化合物の場合、真空度10-2〜10-4 Torrにおいて
蒸発開始温度は、約470〜620℃の範囲である。一般式(I
I)で示されるフッ素含有有機ケイ素化合物の場合、真空
度10-2〜10-4 Torrにおいて蒸発開始温度は、約420
〜570℃の範囲である。また、フッ素含有有機ケイ素化
合物の蒸発開始温度より低い所定の温度(1)は、例え
ば、フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発開始温度より10
〜20℃低い温度であることが、複数の光学部材に均一に
成膜するために蒸発速度を制御するという観点から好ま
しい。また、蒸発開始温度以上の所定の温度(2)も、複
数の光学部材に均一に成膜するために蒸発速度を制御す
るという観点から、所定温度(1)より40〜60℃高い温度
であることが好ましい。
階の昇温速度より大きくする。本発明の製造方法で使用
するフッ素含有有機ケイ素化合物は、分子量が比較的大
きいことから蒸発温度が高い。そのため、急激に温度を
上昇させるとフッ素化合物が短時間に大量に蒸発し、得
られる撥水性薄膜がムラになる可能性がある。しかし、
最初からゆっくりとした加熱速度で加熱すると蒸着に時
間がかかり生産性が落ちるうえ、長時間加熱されること
により、蒸着室に配置されている基板にも熱が伝播し、
基板や基板上に設けられた反射防止膜に熱の影響(例え
ば、反射防止膜のヒートクラックなど)を与えてしま
う。そこで、蒸着組成物の加熱時間を短縮し、かつ、ム
ラなく成膜するため、蒸発温度域の前である第一の昇温
段階は急勾配で温度を上昇させ、蒸発温度域を含む第二
の昇温段階では緩勾配で温度を上昇させる。第二の昇温
段階の昇温速度は、0.4℃/秒〜1.7℃/秒の範囲であるこ
とが、複数の光学部材に均一に成膜するという観点から
好ましい。
器に入れ、加熱蒸発させる。フッ素含有有機ケイ素化合
物の蒸発は、フッ素含有有機ケイ素化合物を含浸させた
多孔性材料を加熱手段により加熱することで行うことが
好ましい。フッ素含有有機ケイ素化合物は適当なフッ素
系溶媒に溶解し、得られた溶液を多孔性材料に含浸さ
せ、必要により溶媒を除去した後、加熱蒸着に供する。
多孔性材料を用いることで適度な蒸着速度を得ることが
可能になる。
媒にはm−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘ
キサン、ハイドロフロロエーテルなどがあり、その濃度
は1〜10%の範囲にすると良い。このフッ素化合物溶
液はそのまま容器に入れて加熱しても良いが、多孔性材
料に含浸させた方がより好ましい。理由は、熱が均一に
伝わり、適当な蒸発速度が得られ、ムラや個々のバラツ
キのない成膜が可能となるためである。
(II)を真空下、加熱蒸発させて光学基板上に薄膜を
形成する。この薄膜の膜厚は、基本的にはフッ素化合物
(I)又は(II)の蒸発量に依存して変化する。ま
た、本発明では、薄膜の膜厚をオングストロームオーダ
ーで制御することにより、反射防止膜の特性を損なうこ
となく、良好な撥水性を有する薄膜を得ることができる
から、フッ素化合物(I)又は(II)の蒸発量をより
正確に調節することが好ましい。そこで、この化合物を
より正確に分取する目的で、フッ化化合物(I)又は
(II)を、例えばパーフルオロヘキサン、ハイドロフ
ロロエーテル等のフッ素系溶媒に溶解して使用すること
ができる。フッ素化合物(I)又は(II)を希釈する
ことで、多孔性材料に含浸させ易くなる。溶液中のフッ
素化合物(I)又は(II)の濃度は、フッ素化合物
(I)又は(II)の種類等により適宜決めることがで
きる。好ましくは、1〜10%程度の希釈がよい。
レスなどの熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィ
ルターであることができる。又、多孔性材料は、適度な
蒸着速度を得るという観点からそのメッシュを40〜2
00ミクロン、好ましくは、80〜120ミクロンとす
ることが適当である。尚、蒸着速度は1×10-3 mg/c
m2秒〜1×10-5 mg/cm2秒の範囲に調節することが均
一な薄膜を得る上で好ましく、上記諸条件を調整するこ
とで、この範囲の蒸着速度を得ることができる。
法は、抵抗加熱源であるボート上に乗せた試料を加熱す
る方法や、弱い電子ビームを直接照射して加熱する方法
を用いても良いが、他に銅製やモリブデン製等の加熱ス
テージをハロゲンヒーター等の赤外線照射源にて加熱
し、間接的に加熱する方法があり、目的温度付近で急激
な温度変化のない安定した蒸着速度・蒸着分布を得られ
るという観点からより好ましい。また、装置の小型化、
メンテナンス面の効率化により安定した生産を実施でき
る。
ば、下記一般式(I):
ルキル基、Xは水素または低級アルキル基、R1は加水
分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整
数、pは1〜10の整数)で表される、分子量3500〜65
00のフッ素化合物を含むものであることが好ましい。こ
のフッ素含有有機ケイ素化合物は市販品を入手できる。
が多く、撥水性能、耐久性、滑り性に優れているが、分
子量が大きいことから従来よりも蒸発温度が高い。その
ため、反射防止膜に熱の影響を与えてしまう可能性があ
るが、それを防ぐために、急激に温度を上昇させるとフ
ッ素化合物が短時間に大量に蒸発するためムラになる可
能性がある。そこで本発明の製造方法では、上述のよう
に、フッ素化合物の蒸発温度域(第二の昇温段階)におい
て緩やかな勾配で温度上昇させて蒸発させる。フッ素化
合物(I)の場合、第二の昇温段階は450℃〜660
℃の範囲内の温度で行われる。
6500であることが好ましい。分子量が3500未満では撥水
性、耐久性、滑り性に劣り、6500より大きい場合は成膜
性が悪くなり、また反射防止膜の反射防止効果も損な
う。
フッ素化合物(I)を用いる場合、前記第一の昇温段階
を3分以内に行い、かつ、第二の昇温段階を30秒以上
2分以内に行うことが、反射防止膜にダメージ(熱クラ
ック)を与えることなく、複数の光学部材を均一に成膜
できるという観点から好ましい。
一般式(II): CpF2p+1CH2CH2Si(NH)1.5 (ただし、pは1以上の整数である)で表される、分子
量300〜700のフッ素化合物を含むものであることも好ま
しい。このフッ素化合物(II)は、特許第256139
5号公報に記載されているものであり、より具体的に
は、以下の化合物を挙げることができ、いずれも市販品
を入手できる。
ピルシラザン n−C3F7CH2CH2Si(NH2)3 n−ヘプタフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペ
ンチルシラザン n−C4F9CH2CH2Si(NH2)3 n−ノナフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ヘキ
シルシラザン n−C6F13CH2CH2Si(NH2)3 n−トリデオフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)
オクチルシラザン n−C8F17CH2CH2Si(NH2)3 n−ヘプタデカフロロ(1,1,2,2−テトラヒド
ロ)デシルシラザン
温段階は400℃〜610℃の範囲内の温度で行われ
る。さらに、フッ素含有有機ケイ素化合物として、上記
フッ素化合物(II)を用いる場合、前記第一の昇温段階
を3分以内に行い、かつ、第二の昇温段階を30秒以上
2分以内に行うことが反射防止膜にダメージ(熱クラッ
ク)を与えることなく、複数の光学部材を均一に成膜で
きるという観点から好ましい。
成膜するため、薄膜の屈折率及び膜厚を自由に制御する
ことができる。即ち、薄膜の屈折率を制御することで撥
水性の強弱をコントロールできる。又、膜厚を制御する
ことで撥水性の強弱と反射防止特性の低下を防止(干渉
色の変化防止)することができる。
のみならず、カメラレンズ、ディスプレー等に付設する
光学フィルター、自動車の窓ガラス等に用いられる広義
の光学部材を意味する。
メタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1
種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合
体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独
重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート
と1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重
合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポ
リカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽
和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウ
レタンなどのプラスチック製光学基板、あるいは無機ガ
ラス製光学基板などが挙げられる。尚、上記基板は基板
上にハードコード層を有するものであってもよい。ハー
ドコード層としては、有機ケイ素化合物、アクリル化合
物等を含んだ硬化膜を例示できる。
レンズ等の光学基板表面を反射を減少させるために設け
られた ZrO2、SiO2、TiO2、Ta2O5 、Y2O3、MgF2、Al2O3
などから形成される単層または多層膜(但し、最外層に
SiO2膜を有する)またCrO2などの着色膜(但し、最外層
にSiO2膜を有する)のことを言う。
る。なお、本実施例及び比較例で得られたプラスチック
レンズは以下に示す評価方法により諸物性を評価した。 (1)水に対する静止接触角 接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使
用し、室温下で直径1.5mmの水滴を針先に作り、これを
レンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。こ
の時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とし
た。 (2)外観 目視にて干渉色の色ムラ及び干渉色変化があるかどうか
を肉眼で調べた。(眼鏡レンズとして使用できる外観か
どうかを調べた) (3)耐久性 セーム皮を25℃の水に5分間浸漬し、その後空気中に
取出した。このセーム皮で500gの荷重をかけて撥水
膜を有するプラスチックレンズ表面を500回擦り、そ
の後(1) で記述した同じ方法で水に対する静止接触角を
測定した。 (4)滑り性 耐摩耗試験の条件で滑りがなくなるまでの往復をし抵抗
を感じるまでの往復数を数えた。
処理剤は次のようにして調製した。 (1)撥水処理剤1 単位式C3F7-(OCF2CF2CF2)24-O(CF2)2-[CH2CH(Si-(OCH3)
3)]1-10で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物(平均
分子量約5000)をパーフルオロヘキサンで3重量%に希
釈した溶液を撥水処理剤とした。(フッ素化合物(I)) (2)撥水処理剤2 単位式C8F17CH2CH2Si(NH2)3で表されるフ
ッ素含有有機ケイ素化合物(平均分子量約500)をn−
キシレンヘキサクロライドで3重量%に希釈した溶液を
撥水処理剤とした。(フッ素化合物(II))
(HOYA(株)製Hi−Lux、屈折率1.60、度
数0.00)を用いた。真空蒸着装置は、図1に示す予
熱室と第一蒸着室と第二蒸着室を独立して備えた連続型
真空蒸着装置を使用した。前記プラスチックレンズをレ
ンズ支持具に装着し予熱室(CH1)に投入し真空雰囲
気で所定時間加熱した後、内部に設けられた搬送装置に
より外気に触れることなく既に真空状態になっている第
一蒸着室(CH2)に搬送し、この第一蒸着室内で以下
のようにして反射防止膜を成膜した。
プラスチックレンズ上に真空蒸着法(真空度2×10-5
Torr )により、二酸化ケイ素からなる下地層〔屈折率
1.46、膜厚0.5λ(λは550nmである)〕を形成し
た。次にこの下地層の上に、プラスチックレンズに酸素
イオンビームを照射するイオンビームアシスト法にて二
酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)、真空蒸着法に
て二酸化ケイ素からなる層(膜厚0.12λ)、さらにイ
オンビームアシスト法にて二酸化チタンからなる層(膜
厚0.06λ)よりなる3層等価膜である第1層〔屈折率
1.70、膜厚0.24λ〕を形成した。次にこの第1層の
上に、プラスチックレンズに酸素イオンビームを照射す
るイオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる
第2層(屈折率2.40、膜厚0.5λ)を形成した。次に
この第2層の上に、真空蒸着法(真空度2×10-5 Tor
r)により二酸化ケイ素からなる第3層〔屈折率1.4
6、膜厚0.25λ〕を形成して、反射防止膜付きプラス
チックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%
であった。この蒸着の工程においてプラスチックレンズ
の表面温度は最高で約95℃まで上がった。
ンズは、内部に設けられた搬送装置により外気に触れる
ことなく既に真空雰囲気になっている第二蒸着室(CH
3)に搬送した。この第二蒸着室内で以下のようにして
撥水膜を成膜した。前記撥水処理剤1を0.75mlしみ
込ませたステンレス製焼結フィルター(メッシュ80〜
120μm、18φ×3mm)を真空蒸着装置内にセット
し、ハロゲンランプを内蔵したヒータで加熱した。加熱
温度は、550℃まで3分間で上昇させ(ヒータ出力3.
5A)、550℃から600℃までは2分間(ヒータ出
力2.5A)で上昇させた。装置の真空度は10-3Torr と
した。レンズ支持具の回転数は1000〜1300rpmで行っ
た。撥水処理剤は約570℃で蒸発を開始した。蒸着後は
第二蒸着室内で所定の時間放置し冷却した後取り出し
た。このようにして作成した撥水膜付レンズの物性を表
1に示す。静止接触角は109.8°であった。干渉色
の色ムラや干渉色変化は見られず、耐久性も良好であっ
た。滑り性も従来品を大きく上まわった。
このプログラムコントローラの設定値を図3に示す。プ
ログラムコントローラはこの設定値とおりになるように
ヒータの出力を調整するものであり、実際の温度の上昇
はこの設定値とほぼ同様の変化をしていた。それ以外は
実施例1と同様にして行った。このようにして作成した
撥水膜付レンズの物性を表1に示す。得られたレンズの
評価結果は、実施例1とほぼ同等の結果であった。
75℃までを3分間(ヒータ出力3.2A)、475℃か
ら525℃までを2分間(ヒータ出力2.2A)で加熱し
た。それ以外は実施例1と同様にして行った。このよう
にして作成した撥水膜付レンズの物性を表1に示す。そ
の結果、静止接触角は110.0°、耐久性は97.0
度だった。
このプログラムコントローラの設定値を図5に示す。そ
れ以外は実施例3と同様にして行った。このようにして
作成した撥水膜付レンズの物性を表1に示す。得られた
レンズの評価結果は実施例3とほぼ同等の結果であっ
た。
された113枚のレンズについて静止接触角や干渉色に
バラツキがないか確認した。静止接触角のばらつきの程
度は標準偏差で求めた。結果を表1に示す。
0秒間で直線的に昇温させた(昇温速度 約2.63℃
/秒)。このように作成したレンズについて実施例5と
同様に静止接触角と干渉色のバラツキを確認した。撥水
膜付レンズの物性を表1に示す。この結果ばらつきが大
きいことが分かった。このことから蒸発時間が短いため
に蒸着膜の着き方にムラが生じていると考えられる。
間かけて直線的に昇温させた(昇温速度 約0.83℃
/秒)。これ以外は実施例3と同じに行った。実施例5
と同様に静止接触角と干渉色のバラツキを確認した。結
果を表1に示す。静止接触角は実施例3とほぼ同様の値
を示し、ばらつきも少なかったが、反射防止膜にクラッ
クが生じた。長時間加熱したため、レンズ表面の温度が
上昇したためと考えられる。
置(一つの蒸着室からなる)内に設置し蒸着を行った。
反射防止膜を蒸着するまでは実施例1と同じ。蒸着処理
剤2を電極がついた金属製の容器の中に入れ、温度235
℃まで45秒間で上昇させた。真空度は10-5で行った。こ
の場合は、真空度が高いので蒸発開始温度も低く短時間
で温度を上昇できた。また、このタイプの蒸着装置は、
蒸着源と被蒸着物の距離を充分にとることができ、しか
も障害物が少ないので昇温速度が速くてもムラになるこ
とは無かった。得られた撥水膜付レンズの物性を表1に
示す。
ックレンズに撥水膜を設けていないものを作成した。得
られた反射防止膜付レンズの物性を表1に示す。静止接
触角について測定した結果は7°であった。以上の各実
施例及び比較例の評価結果を下表にまとめる。
ッ素含有有機ケイ素化合物を比較的低い真空度で蒸着す
る場合においても、撥水膜の特性を損なうことなく、ム
ラなく、熱による反射防止膜の劣化を抑えて撥水膜を成
膜でき、製造時間の短縮も図ることができる、撥水性薄
膜を有する光学部材の製造方法を提供することができ
る。
示す概略図である。
装置の出力値を示すグラフである。
ローラーの設定温度を示すグラフである。
装置の出力値を示すグラフである。
ローラーの設定温度を示すグラフである。
Claims (9)
- 【請求項1】プラスチック製光学部材上に反射防止膜を
蒸着し、次いで該反射防止膜上に撥水性薄膜を蒸着によ
り形成する撥水性薄膜を有する光学部材の製造方法であ
って、前記撥水性薄膜の蒸着は、フッ素含有有機ケイ素
化合物を、前記プラスチック製光学部材の温度が前記反
射防止膜蒸着の際のプラスチック製光学部材の最大温度
を超えない条件下で加熱して蒸発させ、蒸発したフッ素
含有有機ケイ素化合物を前記反射防止膜を有するプラス
チック光学部材上に付着させることにより行われ、前記
加熱は、常温から前記フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸
発開始温度より低い所定の温度(1)まで上昇させる第一
の昇温段階と、前記所定の温度(1)から前記蒸発開始温
度以上の所定の温度(2)まで上昇させる第二の昇温段階
を含むようにおこなわれ、かつ第一の昇温段階の昇温速
度は第二の昇温段階の昇温速度より大きいことを特徴と
する光学部材の製造方法。 - 【請求項2】前記フッ素含有有機ケイ素化合物の蒸発
は、前記フッ素含有有機ケイ素化合物を含浸させた多孔
性材料を加熱手段により加熱することで行う請求項1記
載の製造方法。 - 【請求項3】前記反射防止膜の蒸着と前記撥水性薄膜の
蒸着とは、複数のプラスチック製光学部材を保持した保
持具を、反射防止膜用の蒸着室及び前記撥水性薄膜用の
蒸着室を順次移動することで行われる請求項1または2
に記載の製造方法。 - 【請求項4】前記フッ素含有有機ケイ素化合物は、下記
一般式(I): 【化1】 (式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロア
ルキル基、Xは水素または低級アルキル基、R1は加水
分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整
数、pは1〜10の整数)で表される、分子量3500〜65
00のフッ素化合物を含む請求項1から3のいずれか1項
記載の製造方法。 - 【請求項5】前記第二の昇温段階は450℃〜660℃
の範囲内の温度で行われる請求項4記載の製造方法。 - 【請求項6】前記第二の昇温段階の昇温速度を0.4℃/秒
〜1.7℃/秒の範囲とする請求項4または5記載の製造方
法。 - 【請求項7】前記フッ素化合物は、下記一般式(II): CpF2p+1CH2CH2Si(NH)1.5 (ただし、pは1以上の整数である)で表される、分子
量300〜700のフッ素化合物を含む請求項1から3
のいずれか1項記載の製造方法。 - 【請求項8】前記第二の昇温段階は400℃〜610℃
の範囲内の温度で行われる請求項7記載の製造方法。 - 【請求項9】前記第二の昇温段階の昇温速度を、0.4℃/
秒〜1.7℃/秒の範囲とする請求項7または8記載の製造
方法。
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