JP4279074B2 - 光学部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた撥水性薄膜を有する光学部材及び光学部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の光学部材上に施された反射防止膜は、一般にZrO2,SiO2などの無機酸化物により形成されている。そのため、汗、指紋などによる汚れが付着しやすく、かつ、これらの汚れを除去することが困難であった。こうした問題を解決するために、反射防止膜上に撥水膜を施すことはよく知られている。
かかる撥水膜において、近年、撥水性が時間とともに、できるだけ低下しない性能が求められている。その性能を得る方法として、例えば特許文献1には、真空下、有機ケイ素化合物を加熱蒸着させて反射防止膜上に撥水膜を形成する方法が開示されている。
ところで、撥水膜を反射防止膜上に施した光学部材が汚れた場合、布等で撥水膜上の汚れを取り去る。布等で汚れを取り去るとき、撥水膜上の摩擦係数の関係で、布が引っかかるように感じる場合があった。そのため、強く拭きすぎてレンズに傷が生じる可能性があった。
【特許文献1】
特開平5-215905号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、布等で撥水膜上の汚れを取り去るとき、スム−ズに撥水膜上を拭くことができる光学部材を提供することにある。また本発明の目的はこれらの要求される有利な効果を示す光学部材を製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述した課題は、以下の手段により解決された。その手段は、光学基板と、該光学基板上に施された多層反射防止膜と、該多層反射防止膜の最外層に施された撥水層とを有する光学部材であって、前記多層反射防止膜の最外層が二酸化ケイ素を主成分とする層であり、前記撥水層は、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料より構成される第1層と、該第1層上に接して施され、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする原料より構成される第2層からなる光学部材である。
また光学基板上に施された多層反射防止膜の二酸化ケイ素を主成分とする最外層にフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物とケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料より構成される第1層を設ける工程と、該第1層の表面にケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする原料より構成される第2層を設ける工程を有する光学部材の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の構成上の特徴は、特定組成からなる2層構造の撥水膜を反射防止膜の最外層に施したことにある。第1層は、反射防止膜の最外層上に、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料より構成される層である。第2層は第1層上に接して施されるケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする層である。ここで主成分とは各層における各化合物の含有量が50質量%以上であることを意味し、特に好ましい含有量は70質量%以上である。
【0006】
従来、一般的に反射防止膜の最外層は、二酸化ケイ素からなる層が用いられる。これに対し、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を原料とする層は、反射防止膜の最外層で一般的に用いられる二酸化ケイ素からなる層と良好な密着性を有し、良好な撥水性及び耐擦傷性を有する。またケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする層は、撥水効果及び布で擦った場合における滑り性は極めて良好であるが、反射防止膜の最外層で一般的に用いられる二酸化ケイ素層及びフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物からなる層との密着性が不十分であり、布で拭くとケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする層が容易に剥離する可能性がある。
【0007】
本発明者らは、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする層の利点である表面の摩擦を低減させる特性、即ち、滑り性を向上させて、撥水性を維持しつつ、さらに、反射防止膜との密着性及び耐擦傷性を向上させることを目的として鋭意検討を行った。
その結果、撥水膜を2層構造とし、反射防止膜の最外層に接する第1層を、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料より構成される層として、撥水性及び反射防止膜との密着性を良好にする。そして、前記第1層で含有されているケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルと、第2層で構成されるケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとにより撥水膜の第1層と第2層との密着性を良好にすることができることを見出した。
【0008】
上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物としては、特に限定されず、その例として以下の一般式(I)で表せる化合物を挙げることができる。
【化2】
・・・(I)
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、R1は加水分解可能な基、mは1〜50の整数、nは0〜2の整数、pは1〜10の整数)
上記R1で示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、特にアルキル部が炭素数1〜2であるアルコキシ基、塩素原子等が挙げられる。
【0009】
また前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の例として、下記単位式(II):
CqF2q+1CH2CH2Si2(NH)3 ・・・(II)
(ただし、qは1以上の整数である)で表される化合物を挙げることができる。具体的には、n−CF3CH2CH2Si(NH2)3;n−トリフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)プロピルシラザン、n−C3F7CH2CH2Si(NH2)3;n−ヘプタフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペンチルシラザン、n−C4F9CH2CH2Si(NH2)3;n−ノナフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ヘキシルシラザン、n−C6F13CH2CH2Si(NH2)3;n−トリデオフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)オクチルシラザン、n−C8F17CH2CH2Si(NH2)3;n−ヘプタデカフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)デシルシラザン等を例示することができる。
【0010】
さらに、特開昭58-167448号公報、特開昭60-221470号公報、特開昭61-10043号公報に開示されているフッ素含有有機ケイ素は、本願のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物に該当する。
尚、市販されている前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物としては、KP-801(商品名、信越化学工業(株)製)、オプツ−ルDSX(ダイキン工業(株)製)、フッ素系コ−ティング剤X-71-130(商品名、信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0011】
ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルは、ケイ素を含有しない以下の構造式(III)
−(RO)− ・・・(III)
(式中、Rは炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である)
で表される単位からなるものが好ましく用いられ、平均分子量が1000〜10000、特に2000〜10000のものが好ましい。Rは炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基であり、具体的にはCF2,CF2−CF2,CF2CF2CF2,CF(CF3)CF2等の基が挙げられる。これらのパ−フルオロポリエ−テル(以下「PFPE」ということがある)は常温で液状であり、いわゆるフッ素オイルと称されるものである。
本発明に使用可能なPFPEとしては、たとえばダイキン工業(株)製の商品名デムナムシリーズ、NOKクリューバー社製の商品名バリエルタシリーズ、旭硝子(株)製の商品名フォンブリンシリーズ、デュポン社製の商品名KRYTOXシリーズ、ダウコ−ニング社の商品名モリコ−トHF−30オイルなどが挙げられる。
【0012】
本発明では上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物とケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を混合し、これを主成分とする原料を用いて撥水層の第1層を設けることを特徴とするが、その混合割合は重量換算にして、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物1に対して、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが0.01〜100の範囲内であることが好ましい。
なお、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの混合物としては、前述したダイキン工業(株)製の商品名オプツ−ルDSXが市販されている。
【0013】
前記フッ素を含有した撥水層を形成する薄膜の膜厚は、基本的にフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テル量に依存して変化する。従って、例えば、該薄膜をオングストロ−ムオ−ダ−で制御する際には、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを、溶媒で希釈した溶液を用いることが好ましい。かかる溶媒としては、m−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘキサン、ハイドロフロロエーテルなどのフッ素系溶媒が挙げられる。
また、溶液中のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の濃度は、所望の目的を果たせれば特に制限はなく、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の種類及び所望する薄膜の膜厚などを考慮して適宜決めることができる。撥水膜の第1層の形成方法は特に限定されず、例えば、蒸着加熱、漬浸塗布法により撥水層が形成される。
【0014】
以下、蒸着加熱法で第1層を形成する場合について説明する。
上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テル溶液はそのまま容器に入れて加熱しても良いが、均一な蒸着膜を多く得られるとの観点から、多孔性材料に含浸させることがより好ましく、多孔性材料としては、銅やステンレスなどの熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルターを用いることが好ましい。
又、多孔性材料は、適度な蒸着速度を得るという観点からそのメッシュを40〜200ミクロン、好ましくは、80〜120ミクロンとすることが適当である。
【0015】
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルは、加熱蒸着によって基材上に蒸着される場合には、減圧下、加熱して蒸着することが好ましい。その場合の真空蒸着装置内の真空度としては、特に限定はないが、均質な撥水膜を得るとの観点から、好ましくは、8.0×10-1Pa〜1.0×10-6Pa、特に好ましくは、5.0×10-1Pa〜6.0×10-4Paである。
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及びケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを加熱する際の具体的温度は、有機ケイ素化合物の種類、蒸着する真空条件により異なるが、所望の真空度における該有機ケイ素化合物の蒸着開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度を超えない範囲で行うことが好ましい。
【0016】
蒸着速度は、上記温度範囲に保つことを条件に、前記有機ケイ素化合物の加熱開始から蒸着を完結させるまでの時間を90秒以内とすることが好ましく、さらには50秒以内、40秒以内、30秒以内、20秒以内、10秒以内と短くするほど好ましく、特に、5秒以内とすることが好ましい。上記加熱温度範囲で、且つ短時間で蒸着を完結させること、即ち、前記有機ケイ素化合物に短時間で高エネルギ−を与えることにより、耐久性に優れた撥水膜を有する光学部材を提供することができる。
また、本発明における撥水膜の第1層のように、蒸着開始温度が多少異なる2成分の撥水剤を用いても、短時間で、撥水剤の分解温度を超えない高エネルギ−を与えて蒸着させることにより、ほぼ同時に蒸着でき、均一な膜を得ることができる。
【0017】
前記蒸着速度を達成する方法としては、前記有機ケイ素化合物に電子ビ−ムを照射する方法が好ましく挙げられる。電子ビ−ムを発生する方法は、従来、蒸着装置で用いられている電子銃を用いることができる。電子銃を用いれば、前記有機ケイ素化合物全体に、均一のエネルギ−を照射することができ均一な撥水膜を施しやすくなる。
電子銃のパワーについては、使用物質、蒸着装置、真空度、照射面積によって異なるが、好ましい条件は、加速電圧が6kV前後で、印加電流5〜80mA程度である。
かかる方法で光学部材を製造すると、耐久性に優れた撥水層を得ることができる。
【0018】
次に、本発明では前記第1層上に接して、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする原料より構成される第2層を有することを特徴とする。第2層の形成に使用されるPFPEとしては、第1層に使用されるものと同様のものを使用することができ、第1層と第2層で使用されるPFPEはそれぞれ同一でも異なってもよい。但し、第1層と第2層の接着性及び製造の簡便さを考慮すると、第1層に使用するPFPEと第2層に使用するPFPEとが同一の化合物であることがより好ましい。
第2層の形成方法は、特に限定されず、前記第1層と同様な方法で行うことができる。またPFPEを室温にてそのまま塗布することも可能である。このように、PFPEを室温にてそのまま塗布して第2層を形成しても、第1層に含まれているケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの関係で密着性が良好となり、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルからなる層の特性である滑り性が良くなるため、耐久性のある撥水性能を得ることができる。
【0019】
本発明に用いる光学基板としては、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製光学基板、あるいは無機ガラス製光学基板などが挙げられる。尚、上記基板は基板上にハードコート層を有するものであってもよい。ハードコート層としては、有機ケイ素化合物、アクリル化合物等を含んだ硬化膜を例示できる。
【0020】
また、反射防止膜(蒸着膜)とは、例えばレンズ等の光学基板表面の反射を減少させるために設けられた ZrO2、SiO2、TiO2、Ta2O5 、Y2O3、MgF2、Al2O3などから形成される単層または多層膜(但し、最外層にSiO2膜を有する)、またCrO2などの着色膜(但し、最外層にSiO2膜を有する)をいう。本発明においては、反射防止膜の最外層に二酸化ケイ素を主成分とする層が用いられることを必須とする。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.反射防止膜付プラスチックレンズの作成
光学基板として、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト重合体系レンズ(HOYA(株)製Hi−Lux(商品名)、屈折率1.499、度数0.00)を用い、かかるプラスチックレンズ基材上に、特開昭63-10640号公報に開示されている硬化膜を施した。具体的には、SiO2濃度40%のコロイダルシリカ(日産化学(株)製スノーテックス−40(商品名)、水分散シリカ)240質量部に、0.5N塩酸2.0質量部、酢酸20質量部を加えた溶液を、35℃にて攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3官能有機ケイ素化合物)95質量部を滴下し、室温にて8時間攪拌し、室温にて16時間放置した。この加水分解溶液に、メチルセロソルブ80質量部、イソプロピルアルコール120質量部、ブチルアルコール40質量部、アルミニウムアセチルアセトン16質量部、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカ(株)製NUC SILWET Y−7006(商品名))0.2質量部、紫外線吸収剤(チバガイギー製Tinuvin P(商品名))0.1質量部を加えて、8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコーティング組成物を得た。該組成物を、引き上げ速度15cm/minで浸漬法により塗布、室温にて15分放置後、120℃で2時間加熱硬化することによって硬化膜を施した。
次に、前記硬化膜上に真空蒸着法(真空度2.67×10-3Pa(2×10-5Torr) )により、二酸化ケイ素からなる下地層〔屈折率1.46、光学膜厚0.5λ(λに関する設計波長を550nmとした。)〕を形成し、該下地層の上に、酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法によって二酸化チタンからなる層を(光学膜厚0.06λ)、次いで真空蒸着法により二酸化ケイ素からなる層を(光学膜厚0.12λ)、さらにイオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる層(光学膜厚0.06λ)を施し、3層等価膜である第1層〔屈折率1.70、光学膜厚0.24λ〕を形成した。この第1層の上に、イオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる第2層(屈折率2.40、光学膜厚0.5λ)を形成し、該第2層の上に、真空蒸着法(真空度2.67×10-3Pa(2×10-5 Torr))により二酸化ケイ素からなる第3層〔屈折率1.46、光学膜厚0.25λ〕を形成して、反射防止膜付きプラスチックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
【0022】
2.使用撥水剤
(1)第1層で用いる撥水処理剤1
オプツ−ルDSX(製品名、ダイキン工業(株)、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとを主成分とする混合物)を用いた。
(2)第2層で用いる撥水処理剤2
デムナムシリ−ズ4種(S-20,S-65,S-100,S-200)(製品名、ダイキン工業(株)、ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テル)を用いた。
【0023】
3.物性評価
本実施例で得られたプラスチックレンズは以下に示す評価方法により諸物性を評価した。
(1)外観
目視にて干渉色の色ムラ及び干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価した。
(2)耐久性
セーム皮を25℃の水に5分間浸漬し、その後空気中に取出した。このセーム皮を空気中(25℃、湿度50〜60%)で1分間放置した後、500gの荷重をかけて撥水膜を有するプラスチックレンズ表面を5000回及び10000回擦り(空気中、25℃、湿度50〜60%)、その後以下に示す水に対する静止接触角を測定した。5000回擦るのに65分、10000回擦るのに130分を要した。なお、セ−ム皮は、米国連邦規格(Federal Specifications and Standards)KK-C-300Cのグレ−ドBを用いた。またセーム皮は久保田鹿皮(株)製のものを用い、耐久性試験は図1に示す装置を用いて行った。
水に対する静止接触角;接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使用し、25℃で直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは液滴の底の部分の半径r(すなわち液滴がレンズ表面と接触する部分の半径)と液滴の高さhから次の式で計算される。
θ=2×tan-1(h/r)
尚、測定は水の蒸発による誤差を最小限にするため、液滴をレンズ上に作ったのち10秒以内に行った。
(3)視感反射率(片面)
日立製作所製U−3410型自記分光高度型を用い、撥水膜形成前後の視感反射率を測定した。
(4)滑り性
新東科学(株)製の連続加重式表面性測定機TYPE:22Hを使用して開始前及び終了後における摩擦係数、摩擦力(gf)を測定した。測定は、前記(2)に記載した耐久性テストを行う前、耐久性テストを5000回行った後、耐久性テストを10000回行った後にそれぞれ測定した。
【0024】
実施例1
撥水処理剤1(オプツ−ルDSX:商品名(ダイキン工業(株)製))を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルタ−(メッシュ80〜100ミクロン、18φ×3mm)を真空蒸着装置内にセットし、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルタ−全体を加熱して、上記レンズ枠形状に切削された反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜の第1層を形成した。
▲1▼真空度:3.1×10-4〜8×10-4Pa(2.3×10-6 〜 6.0×10-6 Torr)
▲2▼電子銃の条件:加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm平方、蒸着時間:10秒
なお、蒸着時間は、加熱開始時間から蒸着完了時間を意味する。
その後、紙に適量しみ込ませたケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとして「デムナムS-20」(ダイキン工業(株)製)を、前記撥水膜の第1層上に塗布した。評価結果を第1表に示す。滑り性、及び耐久性が良好で、さらに撥水性も良好なものであった。
【0025】
実施例2〜4
実施例1で使用した撥水剤に代えて第1表に示す撥水剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして撥水膜を形成した。評価結果を第1表に示す。実施例1同様、撥水性、滑り性及び耐久性が良好なものであった。
【0026】
参考例
撥水膜の第2層を施さなかった以外は、すべて実施例1と同様に行った。その結果を第1表に示す。実施例1〜4に比べ、滑り性が劣るものであった。
【0027】
【表1】
【0028】
注)A;オプツールDSX(商品名(ダイキン工業(株)製))
a;デムナムS−20(ダイキン工業(株)製)(平均分子量2700)
b;デムナムS−65(ダイキン工業(株)製)(平均分子量4500)
c;デムナムS−100(ダイキン工業(株)製)(平均分子量5600)
d;デムナムS−200(ダイキン工業(株)製)(平均分子量8400)
【0029】
【発明の効果】
本発明によって、滑り性、撥水性が良好で、布等で撥水膜上の汚れを取り去るとき、スム−ズに撥水膜上を拭くことができる光学部材を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における耐久性試験を行う装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1:レンズ
2:セーム皮
3:六面体板
Claims (3)
- 光学基板と、該光学基板上に施された多層反射防止膜と、該多層反射防止膜の最外層に施された撥水層とを有する光学部材であって、前記多層反射防止膜の最外層が二酸化ケイ素を主成分とする層であり、前記撥水層は、単位式(II)
C q F 2q+1 CH 2 CH 2 Si(NH 2 ) 3 ・・・(II)
(ただし、qは1以上の整数である)
で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、一般式(III)
−(RO)− ・・・(III)
(式中、Rは炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である)
で示される単位からなるケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料(但し、混合割合は重量換算で、前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物1に対して、前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが0.01〜100である)より構成される第1層と、該第1層上に接して施され、第1層と同一の前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする原料より構成される第2層からなり、該第1層は、溶媒で希釈した前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物及び前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを減圧下、以下の条件で基材上に蒸着させてなる光学部材。
条件1:前記有機ケイ素化合物の加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸着開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの範囲であること。
条件2:前記有機ケイ素化合物の加熱開始から加熱蒸発の完結までの時間が90秒以内であること。 - 前記ケイ素非含有のパーフルオロポリエーテルの平均分子量が1000〜10000である請求項1記載の光学部材。
- 光学基板上に施された多層反射防止膜の二酸化ケイ素を主成分とする最外層に単位式(II)
C q F 2q+1 CH 2 CH 2 Si(NH 2 ) 3 ・・・(II)
(ただし、qは1以上の整数である)
で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物と、一般式(III)
−(RO)− ・・・(III)
(式中、Rは炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である)
で示される単位からなるケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルとの2成分を主成分とする原料(但し、混合割合は重量換算で、前記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物1に対して、前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルが0.01〜100である)より構成される第1層を設ける工程と、該第1層の表面に第1層と同一の前記ケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを主成分とする原料より構成される第2層を設ける工程を有する請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
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