JP2013080828A - 固体電解コンデンサ用セパレーター - Google Patents

固体電解コンデンサ用セパレーター Download PDF

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Abstract

【課題】安定して生産でき、且つ高性能の固体電解コンデンサ及び固体電解コンデンサ用セパレーターを提供する。
【解決手段】固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含む、固体電解コンデンサ用セパレーターであって、該不織布が、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される不織布層(I層)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを含み、かつ該不織布層(II層)が2層の該不織布層(I層)の間に存在するセパレーターを提供する。本発明はまた該セパレーターを含む固体電解コンデンサを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、セパレーターを構成する不織布が積層不織布である固体電解コンデンサに関する。
電子機器の信頼性向上及び高性能化に伴って、従来よりも高寿命で、かつ電気特性の高い電解コンデンサが求められている。その一つとして、電子機器の高周波領域でのインピーダンス特性に優れたコンデンサが求められている。この目的で、電気伝導性の高い、固体電解質又はテトラシアノキノジメタン錯塩等を用い、高周波領域でインピーダンスが低い固体電解コンデンサが実用化されている。また、固体電解コンデンサは、電解液を用いないため、高寿命でかつ信頼性が高い電気部品である。よって、固体電解コンデンサは、電気製品の安全性をより高めることができることによってその使用が拡大している。一方、固体電解コンデンサとしては、その高容量化の要求に対応するために巻回型とよばれるコンデンサが用いられている。この巻回型コンデンサは典型的には次のような方法で形成する。即ち、陰極の電極箔と陽極の電極箔との間にセパレ−ターが介在するように、陰極、陽極及びセパレーターを巻回する。その後、この巻回物に、単量体(電気伝導性の高いモノマー、テトラシアノキノジメタン錯塩等)、導電性高分子の微粒子が分散している導電性高分子分散水溶液、又は導電性高分子溶液等、の液体を導電性高分子の材料として含浸する。その後、この導電性高分子の材料の重合又は結合によって、電極間に固体電解質層を形成する。このようにして形成した固体電解コンデンサは、電子伝導性を利用したコンデンサ素子として使用できる。従来、固体電解コンデンサにおいて用いられてきたセパレーターは、電解液型のコンデンサと同じく、パルプ又はマニラ麻等のセルロース成分を主体としたセパレーターであった。
しかしながら、従来のセパレーターは、不具合及び改良すべき課題を抱えていた。即ち、面実装化に供されている電子部品の内部に、水分等の揮発性物質が多く含まれると、リフローはんだ等の実装工程において、内部の揮発性物質が熱により一気に揮発し、部品を壊し、不良率を高くしていた。セパレーターを構成するパルプ又はマニラ麻等の主成分であるセルロースは、普通の状態でも水分を多く含み、かつ、コンデンサを製造する工程で、さらに水分等を多く吸収していた。即ち、セルロースを主成分とするセパレーターから持ち込まれる水分が、不良率を高くする原因になっていた。この為、このデメリットを解決するために、従来のパルプ又はマニラ麻等を主体とするセパレーターでは、コンデンサを製造する工程で、パルプ等におけるセルロースに含まれる水分等を揮発させる目的で乾燥工程を過大にする方法、又はセルロース成分を炭化する方法によって、コンデンサ素子における水分の含有率が少なくなるようにコンデンサ部品を仕上げていた。これらの方法は、設備を大掛かりにし、工程に過大なエネルギーを要求するため、結果的に固体電解コンデンサのコストアップにも繋がっていた。
さらには、上記の問題はコンデンサ素子自体の性能劣化にも繋がっていた。固体電解コンデンサの性能を大きく左右する要因の一つは、弁作用のあるアルミニウム等の金属箔の表面全体に、陽極となる誘電体酸化皮膜層(例えば固体アルミ電解コンデンサでは、酸化アルミ層)を、連続層でかつ均一の厚みとなるように形成させる必要があることに関する。従来のセパレーターでは、水分等を揮発させる加熱工程、又はセルロース等の炭化工程で、この酸化皮膜層に損傷(熱による劣化、又はセルロースから出るガス成分による酸化皮膜層の汚染、による損傷)が起こり、結果として、コンデンサの性能を悪くしていた。例えば、コンデンサ素子において、帯電圧を高くできなかったり、リプル電流特性が悪かったりした。即ち、高性能であることが要求される固体電解コンデンサにおいては、このセパレーターへの加熱工程を入れざるを得ないがために、コンデンサの性能を高くできず、耐電圧が低く抑えられていた。固体電解コンデンサは、電解液を使用しないことから電解質の気散及び漏れが少ないため、電解液がもれることによる寿命低下の心配がある電解液コンデンサに比べて寿命が長いというメリットを持っていた。それにもかかわらず、電解液コンデンサと同様の高耐電圧が達成されないこと等により、固体電解コンデンサの使用範囲は狭い。加えて、固体電解コンデンサは、電解液コンデンサと同じような問題、即ち、コンデンサの高容量化が達成されない問題及び部品を小型化できない問題をなお有している。
これらの問題を解決するために、種々の方法が考案されている(特許文献1〜6参照)。例えば、特許文献1〜4では、セパレーターにPET又はPET系の不織布を用いることによって水分を抑えたセパレーターが記載されている。
また、特許文献5及び6では、上記と同じような目的で、ビニロン繊維及び/又はビニロン繊維と合成繊維との混抄の不織布を用いて均一な固体電解質層を形成する試みがなされている。また、ビニロン繊維等を用いた混抄不織布では、不織布を形成する際にバインダーが用いられる。バインダーは、セパレーターを細くスリットした場合に、巻回工程で繊維同士がばらけたり、不織布が伸びてしまったりして、安定な巻回物ができないことを防止するために使用している。
他の方法として、ガラス繊維を用いた織物又は不織布をセパレーターとして使用する試みがなされている。
また、他の方法として、特許文献8では、液晶性ポリマーで構成された不織布(典型的にはメルトブロウン法による)をセパレーターに用いる試みがなされている。
更に、特許文献9では、極細繊維で構成される不織布層(I層)と熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを含むセパレーターを含む固体電解コンデンサが提案されている。
特許第4013460号公報 特許第3606137号公報 特開2001−60535号公報 特許第3965871号公報 特許第3319501号公報 特許第3399515号公報 国際公開第2004/094136号パンフレット 特開2006−41223号公報 国際公開第2011/021668号パンフレット
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載されているスパンボンド法又は湿式法による不織布では、不織布を構成する繊維の繊維径が大きい。よって、水分が除去されているセパレーターを用いているにも関わらず、本来の高性能のコンデンサ素子を得られておらず、実用化されなかった。
特許文献1〜4に記載されるような上記のPET及びPET系の不織布が実用化されなかった理由は、スパンボンド法、湿式法及び乾式法による不織布では、これらを構成する繊維の繊維径が、一般的には十数ミクロンであることである。よって不織布自体が粗く、繊維間距離が大きく、かつ目付けもかなりばらついている(巻回型では、セパレーターのスリット幅は、通常数ミリ〜10mmである)。即ち、固体電解質層を形成する際に、繊維同士の間隙に、固体電解質を形成するためのモノマー等の、導電性高分子の材料となる液体が入りづらい。よって、モノマー等の表面張力及び素材間の界面張力によって、固体電解質層を形成するためのモノマー等の分布が不均一になり、緻密で均一な固体電解質層を形成することができなかった。陽極となる誘電体酸化皮膜層と、固体電解質層とは、少なくとも所望の部分で均一に接触すべきである。しかし、不均一な固体電解質層によって、これらの層の接触面積が減り、コンデンサの容量が低下していた。また、巻回型コンデンサのセパレーター幅に鑑みると、従来の熱可塑性樹脂を用いた不織布では、目付け及び厚みのばらつきが大き過ぎて、固体電解質層もその厚み及び均一性においてかなりばらついていた。即ち、固体電解コンデンサの性能をつかさどる最も重要な要件の一つは、実質的な陰極となる固体電解質層が、より均一に作られることである。しかし、従来は、セパレーターを構成する不織布の繊維間距離が大きいために、均一な固体電解質層が達成されていなかった。
また、上記特許文献5及び6の方法では、バインダーを除去する工程が必要であり、せっかく合成繊維を使用したにもかかわらず、わざわざ、工程を増やすことになっていた。また、バインダーの除去のために水分等を用い且つこの水分等を除去する必要が生じていた。これらはコンデンサ素子の性能を劣化させていた。またバインダーは、良好な金属酸化層の形成に悪影響を与えるために耐電圧等が上がらない原因となること、及び固体電解質層の形成に悪影響を与えること、によって、容量及び内部抵抗等のコンデンサ性能に悪影響を与えていた。
また、特許文献5及び6に記載されるようなビニロン繊維及び/又はビニロン繊維と合成繊維との混抄の不織布においても、繊維径は実質的に大きい。この為、電解質が均一に且つ緻密に、繊維の間隙に入り込むことができず、良好な固体電解質層を形成することはできなかった。
更に、ガラス繊維の布帛を用いる技術においても、繊維間距離の考慮に至ったものはない。また、ガラス繊維を用いる技術においては、ガラス繊維が脆性材料であるために、加工の際の折り曲げ又は捻れによって折れてしまい、不良率の増加をもたらすという問題があった。よって、実質的にこれを用いた製品は実現されていない。
一方、特許文献8に記載される不織布においては、繊維径が小さいために(数μm程度)、繊維間距離もより小さく、開孔径もより小さい。しかしながら、メルトブロウン不織布は、不織布の破断強力が弱く、少しの力で伸びるようなものであった。その原因は、繊維を形成する樹脂の結晶化度が低いか、繊維が十分延伸されていないことである。よって、特許文献8に記載されるような技術によっても、コンデンサを形成する際の巻回工程での不良率が高く、実際の使用はできなかった。また、特許文献8に記載される不織布においては、樹脂の結晶化度が低いため、当該不織布は、その表面が、摩擦・磨耗に弱く、工程上で表面に毛羽、毛玉等の異物が発生しやすかった一方、摩擦・磨耗に耐える為に圧着条件を強くすると繊維間隙が緻密になりすぎ、モノマー等の、導電性高分子の材料となる液体がセパレーター内部にまで十分浸透していない部分が生じ、均一な固体電解質層を形成ことができなかった。特許文献8のようなメルトブロウン法による不織布は、上記の理由により、固体電解コンデンサにおいて固体電解質及び誘電体酸化層を緻密に且つ均一に形成するという目的を達成することができなかった。一方特許文献7においては、固体コンデンサ用セパレーターの開示はされていない。
最後に特許文献9に記載される固体電解コンデンサについては、積層構造の不織布において陽極表面に配置された層の繊維径が太い場合、金属箔表面で固体電解質及び誘電体酸化層を均一に形成することが難しく、また不織布内部の導電性高分子の緻密なネットワークを構成することが難しく、コンデンサ内部の電気抵抗が大きくなるという問題があった。すなわち上記不織布の特性は固体電解コンデンサ用セパレーターに用いるのに十分ではなかった。
上述の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、安定して生産でき、高性能の固体電解コンデンサ、及びそのような固体電解コンデンサに使用できる固体電解コンデンサ用セパレーターを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の繊維径を有する異なる2層以上を有する積層不織布をセパレーターとして用いることにより、より高性能(具体的には、高耐電圧、高容量、及び低ESR(Equivalent Series Resistance))の固体電解コンデンサを得られることを見いだし、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含む、固体電解コンデンサ用セパレーターであって、
該不織布が、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される不織布層(I層)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを含む積層不織布であり、
該積層不織布の両側表面が該不織布層(I層)によって形成されており、かつ該不織布層(I層)の間に該不織布層(II層)を含む中間層が存在している、セパレーター。
[2]該不織布層(II層)における該熱可塑性樹脂繊維が、熱可塑性合成長繊維である、上記[1]に記載のセパレーター。
[3]該積層不織布が、熱的結合による一体化によって形成されている、上記[1]又は[2]に記載のセパレーター。
[4]該不織布層(II層)における該熱可塑性樹脂繊維が、融点180℃以上を有する結晶性樹脂の繊維である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のセパレーター。
[5]該積層不織布が、厚み10〜80μm、及び目付け7〜50g/m2を有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のセパレーター。
[6]該不織布層(I層)が、メルトブロウン法で形成されている、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のセパレーター。
[7]該積層不織布における該不織布層(I層)の目付け(i)と該不織布層(II層)の目付け(ii)との比(i)/(ii)が、1/10〜10/1である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のセパレーター。
[8]該積層不織布がカレンダー加工されている、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の固体セパレーター。
[9]該積層不織布が親水化加工されている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のセパレーター。
[10]陽極箔及び陰極箔、並びに該陽極箔と該陰極箔との間に配置された上記[1]〜[9]のいずれかに記載のセパレーターを含む固体電解コンデンサであって、
該陽極箔と該陰極箔との間に該セパレーターが介在するように該陽極箔、該陰極箔及び該セパレーターが巻回されており、かつ該陽極箔が、誘電体酸化皮膜層を有する、固体電解コンデンサ。
本発明の固体電解コンデンサ用セパレーターにおいては、特定構成の積層不織布が用いられている。よって本発明の固体電解コンデンサは、安定した生産工程で、且つ歩留りが良いために低コストで生産できるとともに、耐電圧が高く、高容量で、且つ低ESRであるため、高性能である。
図1は、本発明の固体電解コンデンサの模式図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
<固体電解コンデンサ>
本発明の一態様は、固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含む、固体電解コンデンサ用セパレーターであって、該不織布が、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される不織布層(I層)(以下、「極細繊維不織布層(I層)」又は単に「不織布層(I層)」若しくは「I層」ということもある)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)(以下、単に「不織布層(II層)」若しくは「II層」ということもある)とを含む積層不織布であり、該積層不織布の両側表面が該不織布層(I層)によって形成されており、かつ該不織布層(I層)の間に該不織布層(II層)を含む中間層が存在している、セパレーターを提供する。
本発明の別の態様は、陽極箔及び陰極箔、並びに該陽極箔と該陰極箔との間に配置された上述のセパレーターを含む固体電解コンデンサであって、該陽極箔と該陰極箔との間に該セパレーターが介在するように該陽極箔、該陰極箔及び該セパレーターが巻回されており、該陽極箔及び該陰極箔が、誘電体酸化皮膜層を有する、固体電解コンデンサを提供する。
図1は、本発明の固体電解コンデンサの模式図である。本発明の固体電解コンデンサとしてのコンデンサ素子10は、陽極箔2と、陰極箔3と、積層不織布に固体電解質が保持されている本発明のセパレーター1とを巻回することによって形成されている。本発明の典型的な態様においては、例えば図1に示すように、セパレーター1、陽極箔2、セパレーター1、陰極箔3の順に重ねた4層を巻回する。本発明においては、例えば上記のようにして、陽極箔2と陰極箔3との間にセパレーター1が介在するように、すなわち陽極箔と陰極箔とがセパレーターを挟み込むように、コンデンサ素子を構成する。
陽極箔2及び陰極箔3には、それぞれの電極を外側に接続するためのリード線4,5が接続されている。接続は、ステッチ、超音波溶接、かしめ等の公知の手法で実現される。このリード線4,5は、陽極箔2及び陰極箔3との接続部、及び外部との電気的な接続を担う外部接続部、からなる導電性金属端子である。このような端子を介して、巻回したコンデンサ素子10から電気エネルギーが最終的に外部に導出される。リード線は、例えば、アルミニウム等からなる。リード線には、導電性を良くするためにメッキ等の加工がされていることも好ましい。
本発明に係る固体電解コンデンサを製造する方法は、特に問わず、公知の方法を使用できる。例えば図1に示す構造のコンデンサ素子は、以下の方法で製造できる。まず、化成処理等によって誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔を準備し、該陽極箔、セパレーター、陰極箔、セパレーターの順に重ね、これらを巻回する。次いで、巻回物のセパレーターに、固体電解質の材料となる液体を含浸することによって、固体電解質層を電極間に形成する。この工程では、固体電解質の材料となる液体(各種の電解質モノマーと開始剤、重合剤等との組合せ、又は錯体等の導電性物質等)を含浸し、その後、重合(モノマーの場合)、錯体形成(錯体の場合)等の、固体電解質の材料に応じた処理を行い、固体電解質層を形成する。後述のポリマーとドーパント等とが結合した重合体の微粒子が分散している導電性高分子分散水溶液、又は導電性高分子溶液等を含浸し、固体電解質層を形成してもよい。なお、上記の固体電解質層の形成前に、後述する再化成工程を行って、陽極及び陰極の電極箔の端部を誘導体化してもよい。
固体電解質層が電極間に形成された後、巻回物を外装ケース(一般的には有底筒状の金属ケース)に入れ、その後、開口部を樹脂等で封止し、コンデンサ素子とする。
従来、セパレーターとして一般的に用いられてきた、マニラ麻若しくはパルプ系の紙素材が主体とされたセパレーター、又はその他のバインダーを多く用いたセパレーターを用いた固体電解コンデンサの製造において、再化成を行う場合、この工程の前に、バインダーを水、アルコール等の揮発性溶液で(具体的にはバインダーのみを溶解する溶液で)除去するバインダー除去工程が行われていた。また、従来のセパレーターでは、マニラ麻又はパルプ系の素材が、コンデンサ素子内で水分を含まないようにするため、乾燥工程を入れたり、またパルプ等を炭化させ、水分をほとんど含まない状態にしたりしていた。また、高周波領域での低インピーダンスは、水分等が存在すると達成することが難しく、セルロース素材のままでは、その素材が持つ誘電率の高さから、より低インピーダンスの素子を形成することができなかった。また、これらの炭化工程又は乾燥工程を行う際に、実質的に陽極となる誘電体層(即ち陽極箔に形成されている酸化皮膜層、例えば酸化アルミ層)に損傷が起こっていた。このため、従来の工程では、炭化工程又は乾燥工程の後に、再化成工程が過剰に行われてきた。この再化成工程においては、実質的な陽極となる誘電体酸化皮膜層を、より均一に形成(即ち、ピンホール又は厚み分布がなく、より均一な厚みで)する必要がある。均一な誘電体酸化皮膜層によって、コンデンサ素子の耐電圧が上がり、もれ電流を低く抑えることができ、ひいては高容量のコンデンサ素子を製造できる。従って、バインダー除去工程が不要で、炭化工程及び乾燥工程による熱をより低減することができ、誘電体酸化皮膜層を均一化できれば、より高性能のコンデンサ素子を得ることができる。また、これらの工程でかかる熱で、リード線のメッキもまた酸化を受けるため、従来、耐酸化性の大きい銀等のリード線を使う場合があった。本発明の一つの大きな目的は、このような従来の工程を簡略化すること、及び誘電体酸化皮膜層の均一化にある。
[セパレーター]
本発明の一態様に係るセパレーターは、固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含み、該不織布は、不織布層(I層)と不織布層(II)層とを少なくとも有する積層不織布である。また、積層不織布の両側表面が不織布層(I層)によって形成されており、かつ不織布層(I層)の間に不織布層(II層)を含む中間層が存在している。これにより、固体電解コンデンサの製造において、不織布の表面及び内部に固体電解質及び誘電体酸化皮膜層を、安定した生産工程で歩留り良く緻密且つ均一に形成できる。そして、このようなセパレーターを用いることにより、耐電圧が高く、高容量で、且つ低ESRな固体電解コンデンサの製造が可能になる。
(積層不織布)
積層不織布は、不織布層(I層)及び不織布層(II層)を含む。具体的には、積層不織布は、2層の不織布層(I層)と、これらの不織布層(I層)の間に挟まれた中間層とを有する。中間層は不織布層(II層)を含む。中間層として存在する不織布層(II層)は1層でも2層以上でもよい。また、中間層として、不織布層(I層)及び/又は他の層が更に存在してもよい。好ましい例は、I層/II層/I層の3層構成の積層不織布である。不織布層(I層)は、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される層であり、不織布層(II層)は、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される層である。このような積層不織布を含むセパレーターにより、固体電解コンデンサの製造において、固体電解質及び誘電体酸化皮膜層を緻密且つ均一に形成することができる。
不織布層(I層)は、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される。なお本明細書において、用語「極細繊維」とは、上記の0.1〜4μmの範囲の繊維径を有する繊維を意図している。I層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記極細繊維以外の繊維を含有してもよいが、典型的には上記極細繊維のみからなる。繊維径が4μm以下であれば、不織布層の繊維間隙が大きくなり過ぎないため、固体電解質の材料としての液体(モノマー等)が繊維間隙に入りやすく、結果として緻密で均一な固体電解質層を形成できる。またこの場合、繊維径が小さいので極細繊維不織布層(I層)の重量あたりの表面積、すなわち比表面積を大きくすることが出来る。これにより、薄く均一で、不織布層(I層)との接点が多く、且つ面積の広い固体電解質層を、極細繊維表面上に形成出来る。よって、固体電解質の量が少なくても、不織布層を通る電気抵抗を低くすることが出来る。また、誘電体酸化皮膜層を形成するために用いる化成液(以下、単に「化成液」ということもある)が、セパレーターとなる不織布の細部まで染み込みやすく、陽極箔及び陰極箔の表面に誘電体酸化皮膜層(例えばアルミニウム電解コンデンサであれば酸化アルミ層)を均一の厚みで形成できる。一方、繊維径が0.1μm以上であると、極細繊維を容易に形成でき、且つ形成された極細繊維が、表面摩擦等で毛羽立ったり、糸くずを作ったりすることがない。これによりコンデンサを製造する工程が良好となる。加えて、誘電体酸化皮膜層及び固体電解質層を均一な構造で形成できる。この意味で、不織布層(I層)の繊維径は、好ましくは0.3〜4μm、より好ましくは0.3〜3.5μm、更に好ましくは0.5〜3μmである。なお本明細書で記載する繊維径は、マイクロスコープによる繊維直径の測定によって評価できる。
不織布層(II層)は、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される。繊維径が30μm以下であれば、繊維の径が太過ぎず、均一な繊維間距離を得ることができるため、緻密で均一な固体電解質層を形成できる。不織布層(II層)は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維径6〜30μmの熱可塑性樹脂繊維以外の繊維を含有してもよいが、典型的には繊維径6〜30μmの熱可塑性樹脂繊維のみからなる。上記I層における繊維径が重要であるのと同様、II層における繊維径も重要である。II層を構成する繊維の繊維径が30μm以下であれば、I層とII層とを互いに接するように積層した場合に、I層を構成する極細繊維が、II層を構成する繊維の間により均一に配置される。これにより、積層不織布において、より均一に極細繊維が分布する。この結果、より均一に分布された極細繊維の層を介して、緻密で均一な固体電解質層を形成できる。一方、II層を構成する繊維の繊維径が6μm以上であれば、積層不織布が十分な強度を有し、巻回工程が安定する。また、その後のコンデンサ素子を形成する工程でも、セパレーターとなる積層不織布が型崩れしないため、安定してコンデンサを形成できる。これらの結果として性能の良い素子が形成される。この意味で、II層を構成する繊維の繊維径は、好ましくは8〜25μm、より好ましくは9〜20μmである。
本発明においては、セパレーターを構成する積層不織布の両側表面、及び任意に内部(すなわち中間層の一部として)に、極細繊維不織布層(I層)を設ける。I層においては、繊維径が小さいため、繊維間隙が小さく、繊維が均一に分布しており、さらに比表面積が大きい。このI層の繊維表面上に固体電解質を設けることによって、セパレーターの面方向に連続してI層が存在し、且つ固体電解質が連続したネットワークを均一に形成することができる。本発明においては、極細繊維不織布層(I層)を補強する支持層として、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)を設けることができる。セパレーター及びコンデンサの各生産工程において、不織布層(II層)が、変形及び損傷から極細繊維不織布層(I層)を守るため、不良率を低くしてコンデンサを安定して生産できる。
本発明において、セパレーターは、上記で規定した繊維径である不織布層(I層)と不織布層(II層)とを有する積層不織布である。セパレーターをこのような積層不織布とすることにより、例えばI層及びII層をそれぞれ単独で使用する場合と比べて、より緻密な不織布構造を形成でき、結果として、より緻密な固体電解質層が得られると考えられる。特に、I層とII層とが互いに接するように積層される場合、II層を構成する繊維の間隙に、I層を構成する極細繊維が配置されることにより、不織布を構成する繊維がより均一に配置されることができる。結果として、固体電解質を形成するための材料を含む液体(例えば、導電性高分子を与える重合性化合物であるモノマー並びに該モノマーを重合させるための開始剤及び補助剤、又は、導電性高分子の微粒子を分散させた導電性高分子分散水溶液若しくは導電性高分子溶液等)の液体が、より均一に不織布層に行き渡る。上記液体(例えばモノマー等)は、不織布層の繊維間隙の中に含浸され、その後、例えば開始剤等による順次の重合等により、結果として均一な固体電解質を形成する。その過程で、該液体の粘度も変化してより粘調な物質が形成され、最終的には緻密な固体電解質層が形成される。この過程で、順次繊維と導電性物質との界面張力が変化し、導電性物質がより粘調となることから、繊維同士が離れすぎていると、不均一構造が生じやすくなり、結果として、緻密で均一な固体電解質層を形成しづらくなる。
積層不織布において、I層は、緻密構造を形成するために必須であり、II層は、積層不織布をより安定させ(即ち、不織布の引張強度、曲げ強度及び表面磨耗性を良好にし)、かつ、I層を各工程で安定的に保持するために必須である。このような理由で、上記のI層とII層とを有する積層不織布は、良好な性能を有する固体電解コンデンサを製造するために有利である。
本発明において、積層不織布の両表面は極細繊維で構成されているI層である。セパレーターにおいて積層不織布の両表面が極細繊維層で構成されているため、従来の積層不織布(例えば不織布層内部や片側だけに極細繊維層を持つ不織布)と比較して、固体電解コンデンサとしてより良好な性能を発現できる。まず第一に、陽極箔及び陰極箔の表面により均一な誘電体酸化皮膜層(たとえばアルミニウム電解コンデンサであれば酸化アルミ層)の構築が可能となる。これは、セパレーターと箔表面との接触点が極細繊維層(すなわちI層)のため多くなり、誘電体酸化皮膜を形成するために用いる化成液(以下、単に「化成液」ということもある)が、セパレーターを介して箔表面に浸透しやすくなるためである。固体電解質を形成するための材料を含む液体についても同様の理由により箔表面に浸透しやすくなり、導電性高分子が箔表面に均一に構築される。また第二に、金属箔表面と接触点が極めて多いことから箔表面と不織布の密着性が良好であり、また不織布内の両表面付近に固体電解質の緻密なネットワークを形成し実質的な陰極層を一体化でき、エネルギー損失を軽減することが出来る。さらに第三の利点として、固体電解質を形成するための材料を含む液体の浸透速度が速く、また保持量も大きくなる。結果として、よりセパレーターの広い範囲に緻密で均一な固体電解質層を形成することが出来る。上記理由により従来の積層不織布と比較して良好な性能を有する固体コンデンサを製造することが可能となった。
本発明で、セパレーターにおいて用いる積層不織布の厚みは、10〜80μmであることが好ましい。積層不織布の厚みが10μm以上であれば、スリットされた積層不織布の強度が高く、巻回工程で良好に巻くことができ、加工工程の不良率が少ない。コンデンサ素子において、セパレーターの幅は、通常数mmである。この幅が細くなるほど、セパレーターの強度が小さくなり、切れやすくなる。また厚みが10μm以上であれば、コンデンサ素子を製造する工程で、電極間の間隔を十分保持することができ、コンデンサ素子において絶縁不良が起こることがない。一方、積層不織布の厚みが80μm以下であれば、陰極箔と陽極箔とセパレーターとを巻回した時の厚みが大きくなり過ぎず、電子部品として小型の製品を得ることができる。また、大きさが規定されたコンデンサ部品であるならば、より多くの面積を巻くことができ、単位体積当たりでより高容量となる。また厚みが80μm以下であれば、セパレーターである積層不織布からコンデンサに持ち込まれる水分がより少なくなり、より高性能のコンデンサ素子が得られる。この意味で、積層不織布の厚みはより好ましくは、15μm〜50μmである。なお本明細書で記載する厚みは、JIS L−1906に準拠して測定できる。
本発明で、セパレーターにおいて用いる積層不織布の目付けは、7〜50g/m2であることが好ましい。積層不織布の目付けが7g/m2以上であれば、スリットされた積層不織布の強度が高く、巻回工程で良好に巻くことができ、加工工程の不良率が少ない。また、化成液、及び固体電解質の材料となる液体(高分子電解質を形成するためのモノマー等)が、セパレーターとなる積層不織布に浸み込みやすいため、耐電圧が高く、高容量のコンデンサ素子を形成できる。また、積層不織布の目付けが7g/m2以上であれば、積層不織布自体の形成も容易であり、斑(即ち表面の不均一な形状)のない積層不織布が得られ、結果としてコンデンサ素子の不良率を低減できる。一方、積層不織布の目付けが50g/m2以下であれば、積層不織布からコンデンサ素子への持ち込み水分量を低減できるため、前述の理由で良好なコンデンサ素子性能が得られる。また該目付けが50g/m2以下であれば、セパレーターに対して一定厚みが要求される場合に、積層不織布の目付けが大き過ぎず固体電解質層を形成するための繊維空隙が適度であることにより、コンデンサ素子の電気伝導率を高くでき、低ESRの素子を形成できる。これらの意味で、積層不織布の目付けはより好ましくは、15〜40g/m2である。
特に好ましい態様において、積層不織布は、厚み10〜80μm及び目付け7〜50g/m2を有する。
上記の厚みと目付けとから計算される、積層不織布の見掛け密度としては、0.2〜0.8g/cm3が好ましい。
本発明でセパレーターにおいて用いる積層不織布において、不織布層(I層)及び不織布層(II層)の各々の目付け、並びに、不織布層(I層)と不織布層(II層)との比率は、以下に述べる範囲であることが好ましい。
即ち、本発明で、不織布層(I層)の目付けは、0.5〜25g/m2であることが好ましく、1.5〜10g/m2であることがより好ましい。I層の目付けが0.5g/m2以上であれば、繊維間距離が大きくなり過ぎず、固体電解質層を形成するための導電性のモノマー等が繊維間隙に入り込みやすく、より均一で緻密な固体電解質層を形成できる。また、化成液が、セパレーターとなる不織布の細部まで染み込みやすく、誘電体酸化皮膜層(例えばアルミニウム電解コンデンサであれば酸化アルミ層)を、より均一な厚みで形成できる。I層の目付けが25g/m2以下であれば、積層不織布全体の厚みを好ましい範囲に設定しやすく、また不織布層内に形成される固体電解質層を必要以上に多く消費することなくコストを抑えることが出来る。
本発明で、不織布層(II層)の目付けは、5〜35g/m2であることが好ましく、10〜30g/m2であることがより好ましい。II層の目付けが5g/m2以上であれば、積層不織布において、極細繊維層であるI層が十分に均一な繊維間距離を得ることができるため、より緻密で均一な固体電解質層を形成できる。即ち、繊維径の規定でも述べたとおりに、I層を構成する極細繊維を、II層を構成する繊維の間により均一に配置することが可能であり、結果として、積層不織布においてより均一に極細繊維を分布させることができる。この結果、より均一に分布する極細繊維層を介して、より緻密で均一な固体電解質層を形成できる。また、II層の目付けが5g/m2以上であれば、積層不織布が良好な強度を有し、巻回工程が安定し、その後のコンデンサ素子を製造する工程でも、セパレ−ターにおける積層不織布が型崩れしない。これらにより、安定してコンデンサを製造でき、結果として性能の良い素子が得られる。一方、II層の目付けが35g/m2以下であれば、積層不織布全体の厚みを好ましい範囲に設定しやすい。
積層不織布における、不織布層(I層)の目付け(i)と不織布層(II層)の目付け(ii)との比は、以下に限定するものではないが、積層不織布に良好な強度を与え、かつ、繊維間隙が小さい緻密構造を形成するために、I層とII層との目付け(2層以上のI層及び2層以上のII層については、I層全体及びII層全体での平均)の比(i)/(ii)が、1/10〜10/1であることが好ましい。上記比は、さらに好ましくは1/8〜5/1である。(i)/(ii)で1/10よりもI層の目付けが大きいと、I層を不織布の面方向に斑なく形成しやすい。(i)/(ii)で10/1よりもII層の目付けが大きいと、積層不織布全体が、スリット時、巻回時、及び熱処理工程で変形しない良好な強度を得やすい。積層不織布及びこれを構成する各不織布層の厚み及び目付けは、セパレーターとして必要な厚み及び目付けを確保できる範囲で適宜選ばれるべきである。
本発明で、不織布層(II層)における熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性合成長繊維であることが好ましい。熱可塑性合成長繊維で構成される不織布は、マイクロスリット品でも、十分な強度を有することができる。また熱可塑性合成長繊維で構成される不織布は、スリット時、及び外部からの摩擦等を受けた際に、より糸くずがでにくく、磨耗性にも強い。この結果、固体電解コンデンサ素子の製造工程がより安定し、高性能のコンデンサ素子が得られる。熱可塑性合成長繊維の例としては、例えば後述で列挙する結晶性樹脂で構成される長繊維が挙げられる。一方、熱可塑性樹脂繊維として短繊維を用いる場合、例えば、上記結晶性樹脂と、上記結晶性樹脂の融点より低い融点の熱可塑性樹脂とを混合して用いることが出来る。混合は単一の樹脂から構成される繊維を混ぜても良いし、1本の繊維中に2種以上の融点の異なる樹脂が含まれていても良い。例えば芯と鞘とから成り、鞘の熱可塑性樹脂の融点が芯の熱可塑性樹脂の融点より低い鞘芯糸を用いることが出来る。例えば芯がPET、鞘が共重合PETの鞘芯糸が使用できる。
本発明において、不織布層(II層)における熱可塑性樹脂としては、融点180℃以上の結晶性樹脂が好ましい。融点が180℃以上であれば、コンデンサを製造する工程での各熱履歴(乾燥、炭化、熱歪を除く工程等の、コンデンサ素子製造における熱がかかる処理)を経ても、安定したセパレーター構造を形成できる。また融点が180℃以上であれば、本発明の固体電解コンデンサを、コンデンサ部品として回路基板上に実装する場合に、一般のはんだづけ又はリフローはんだで掛かる熱に対してコンデンサ素子構造が安定に保たれ、コンデンサの性能劣化が防止され、不良率が低減される。これらの工程安定性は、固体電解コンデンサ素子を製造する工程、及び部品を実装する条件に応じて、当該関係者が適宜設計する。上記の意味で、上記の結晶性樹脂である熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは220℃以上、より好ましくは240℃以上であり、また好ましくは350℃以下である。
なお、本明細書で記載する「結晶性樹脂」とは、不織布の状態で示差走査熱量計(DSC)にて測定された結晶化度が10%以上である樹脂を意味する。DSCによる結晶化度の測定は、サンプル重量5mg、昇温速度10℃/min、走査温度50〜300℃の測定条件として、融解熱(ΔH)を算出し結晶化度(Xc)を求める。Xcは次式より求める。
Xc=(ΔHTm−ΔHTcc)/(ΔH0)*100 (1)
ここで、Xc:結晶化度(%)、ΔHTm:融点での融解熱(J/g)、ΔHTcc:結晶化熱量(J/g)、ΔH0:樹脂の結晶化度100%時の融解熱の文献値(J/g)である。
本発明で、融点180℃以上の結晶性樹脂の具体的な例としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PET、PBT、PTT等)及びその誘導体;N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体;ポリオキシメチレンエーテル系樹脂(POM等)、PEN、PPS、PPO、ポリケトン樹脂、PEEK等のポリケトン系樹脂;TPI等の熱可塑性ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体又は混合物も好ましい。実用強度に影響の無い範囲においては、少量のポリオレフィン等低融点成分を加えて改質を行っても構わない。なお、上記の具体例のうち、N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体は、合成樹脂としては、吸水率が大きいため、吸水性の観点では、ポリアミド系樹脂及びその誘導体よりも、他の樹脂の方が有利である。また、繊維及び不織布を製造する際の容易性、汎用性及びコストの観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、及びPEEK系樹脂がより好ましい。また、誘電率及びtanδ等の電気特性の観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、PPO系樹脂、及びPEEK系樹脂が好ましい。コンデンサ素子である部品中に残ることを考慮すると、より低ESRを実現するためには電気特性が良好な樹脂を選定することが好ましい。不織布層(II層)を形成するために用いる熱可塑性樹脂は、本発明の固体電解コンデンサの使用目的に合わせて適宜選択する。
本発明において、不織布層(I層)の構成素材は、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維であれば制限はなく、熱可塑性樹脂であっても良いし、例えばセルロースフィブリル等熱可塑性の無い素材であっても良い。好適には前述の不織布層(II層)と同様に熱可塑性樹脂である。具体的には、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PET、PBT、PTT等)及びその誘導体;N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体;ポリオキシメチレンエーテル系樹脂(POM等)、PEN、PPS、PPO、ポリケトン樹脂、PEEK等のポリケトン系樹脂;TPI等の熱可塑性ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体又は混合物も好ましい。より好適には前述の不織布層(II層)と同様に吸水率の低い熱可塑性樹脂である。また、繊維及び不織布を製造する際の容易性、汎用性及びコストの観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、及びPEEK系樹脂がより好ましい。また、誘電率及びtanδ等の電気特性の観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、PPO系樹脂、及びPEEK系樹脂が好ましい。コンデンサ素子である部品中に残ることを考慮すると、より低ESRを実現するためには電気特性が良好な樹脂を選定することが好ましい。不織布層(I層)を形成するために用いる熱可塑性樹脂は、本発明の固体電解コンデンサの使用目的に合わせて適宜選択する。
積層不織布を構成する不織布層(I層)及び不織布層(II層)を形成する樹脂は、同じ物質でも、異なる物質でも良いが、積層不織布をより均一に形成する目的のためには、同じ物質であることが好ましい。I層及びII層を同じ物質の樹脂で形成する場合、より均一な繊維の間隙を持つ不織布を形成しやすいため、このような不織布をセパレーターとして使用した場合、均一で緻密な固体電解質層を形成しやすい。
不織布は、繊維と、繊維の間隙である空隙とから構成されるが、空隙の形状は一般にランダムである。例えば一般のスパンボンド不織布(繊維径が、15μm〜40μm)において、平均的な孔径分布は30μmを超え、また、最大孔径は50μmを超える。即ち、不織布内には概略直径が50μm以上の空隙が含まれることになる。特に、目付けが小さく、厚みが小さい不織布の場合は、最大数mm以上の孔径を持つ部分もある。孔径サイズが大きすぎると、その孔の部分に、固体電解質の材料となる液体(導電性高分子を形成するための電解質モノマー等)が入り込んで液膜を形成出来ず、固体電解質層を形成するときに、その孔の部分は、電解質層が存在しない部分となる。このため、このような大きい孔径サイズは、コンデンサ素子の性能劣化(内部抵抗の増加、及び容量不足)に繋がる。特に、巻回型のセパレーターの幅は、細い場合は、数ミリメートルとなり、孔径が大きいセパレーターは、性能が上がらないばかりか、不良率の増加に繋がっていた。
また不織布は、化成液、及び固体電解質の材料となる液体(導電性高分子を形成するためのモノマー等)をセパレーター内部に浸透させ保持する役割を有する。そのため不織布の各溶液に対する浸透性及び親液性を良くすることで、良好なコンデンサ性能を発現できる。この意味で、本発明においてセパレーターの吸い上げ高さの好ましい範囲は、20mm以上80mm以下である。また、セパレーターの接触角の範囲は、10度以上40度以下であることが望ましい。さらに、セパレーターの浸透度の範囲は、20mm以上60mm以下であることが望ましい。上記の吸い上げ高さは、JIS L−1907 繊維製品の吸水性試験方法に記載のバイレック法に準拠し、基準液(濡れ指数標準液 50mN/m)を用い、10分後の吸い上げ高さとして測定される値である。上記の接触角は、上記の基準液を滴下溶液として用い、接触角測定器を用いて測定される値である。上記の浸透度は、上記の基準液を滴下溶液として使用し、10mmの高さから不織布に滴下溶液0.04mLを滴下し、10秒後の溶液の濡れ広がり幅を測定することにより得られる値である。
この意味で、本発明において用いる積層不織布は、極細繊維で構成される不織布層(I層)を有することで、繊維同士の距離が小さくなり、即ち、孔径が小さくなり、均一な固体電解質を形成しやすい。この意味で、本発明における積層不織布の平均孔径は、0.3μm以上20μm以下であることが好ましい。該平均孔径は、より好ましくは1μm〜15μmである。平均孔径が0.3μm以上であれば、化成液、及び固体電解質の材料となる液体(導電性高分子を形成するためのモノマー等)が、孔内に入りやすく、高性能の耐電圧、高容量、及び低内部抵抗を実現できる。また20μm以下であれば、繊維間距離が適度で、固体電解質を形成するためのモノマー等の液膜が張りやすく、結果的に良好な固体電解質層を形成できるため、ショートが少なく、高性能の高容量及び低内部抵抗のコンデンサ素子を実現できる。なお、平均孔径が0.3μm以上であれば、化成液、及び固体電解質の材料となる液体(導電性高分子を形成するためのモノマー等)が浸透する時間が長くなりすぎず、コンデンサの生産時間を効率よく設計することが出来る。
本発明において用いる各不織布層の製造方法は限定されない。しかし、不織布層(II層)の製法は、好ましくはスパンボンド法、乾式法、湿式法等であることができる。また、極細繊維不織布層(I層)の製法は、好ましくは極細繊維を用いた乾式法、湿式法等の製法、又はエレクトロスピニング、メルトブロウン法等であることができる。極細繊維不織布層を容易かつ緻密に形成できるという観点から、不織布層(I層)は、特に好ましくはメルトブロウン法で形成される。また繊維は、叩解、部分溶解等により割繊又はフィブリル化を実現した上で不織布の製造のために用いてもよい。
極細繊維で構成される不織布層(I層)と熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを有する複数層を積層して積層不織布を形成する方法としては、例えば、熱的結合による一体化による方法、高速水流を噴射して三次元交絡させる方法、粒子状又は繊維状の接着剤により一体化させる方法等が挙げられる。中でも、本発明において用いる積層不織布は、熱的結合による一体化で形成されていることが好ましい。熱的結合による一体化の方法としては、熱エンボスによる一体化(熱エンボスロール方式)、及び高温の熱風による一体化(エアースルー方式)が挙げられる。熱的結合による一体化は、不織布の引張強度と曲げ柔軟性とを維持し、耐熱安定性を維持することが出来るという観点から好ましい。
熱的結合による一体化は、バインダーを用いることなく、複数の不織布層を有する積層不織布を形成できる点でも好ましい。繊維同士を一体化して積層不織布を形成する場合に、バインダーを用いると、そのバインダーがコンデンサ素子に残る。バインダーがコンデンサ素子性能を劣化させないものであれば、特に問題はないが、バインダーによってコンデンサ性能の劣化が促進する場合には、バインダーを除去する工程が新たに必要となる。また、バインダーを除去する工程が必要な場合は、水、アルコール等の揮発性溶剤を通常使用するため、この溶剤が素子中に残る懸念が発生する。またバインダーは、良好な金属酸化皮膜層の形成及び固体電解質層の形成に悪影響を与えていた。即ち、バインダーが残ると金属箔の表面にバインダーが吸着することによって、酸化皮膜層にピンホールができたり、酸化皮膜層の厚みが不均一になったりする傾向があった。これらは、耐電圧の低下又はショートにつながっていた。また、バインダーの混入により、固体電解質層の形成が阻害されると、容量の低下が内部抵抗の増加につながっていた。以上の理由で、熱のみにより一体化された、バインダーを用いない積層不織布が好ましい。
さらに、積層不織布を形成する工程の合理性の観点からも、熱のみによる一体化は、よりコストを低減することができるため、好ましい。
熱的結合による一体化は、積層不織布を構成する2層以上の不織布層を熱接着することにより実現できる。熱接着工程は、例えば、熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点よりも50〜120℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmで、フラットロールを用いての接合により行うことができる。熱接着工程における線圧が100N/cm未満であると、十分な接着を得て十分な強度を発現することが難しい場合がある。また、また1000N/cmを越えると、繊維の変形が大きくなり、見掛け密度が高くなって、本発明による効果が得られにくくなる場合がある。
最も好ましいのは、メルトブロウン不織布層と、メルトブロウン不織布層及び/又はスパンボンド不織布層とを順次製造し、これらを積層して、エンボスロール又は熱プレスロールで圧着する方法である。この方法は、同一素材で積層不織布を形成できること、及び連続一体化した生産ラインで生産できることから、低目付けで均一な不織布を得ることを目的とした場合好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)を用いてメルトブロウン法で、繊維径0.1〜4μmの極細繊維不織布層を1層以上のコンベア上に紡糸し、その上に熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)を用いてスパンボンド不織布層を1層以上積層させる。その後、さらに熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)繊維で構成される極細繊維不織布を積層させ、次いで、エンボスロール又はフラットロールを用いてこれらの層を圧着する方法が好ましい。
上記の製造方法を用いると、エンボスロール又はフラットロールにより適切な温度、圧力をかけることで各不織布層の一体化が可能となる。更にはメルトブロウン法による極細繊維を、熱可塑性樹脂繊維で構成される層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内に侵入させることが出来る。このようにして、メルトブロウン法による極細繊維が熱可塑性樹脂繊維で構成される層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内に侵入して固定されることにより、積層不織布の構造自体の強度が向上するだけでなく、極細繊維不織布層の外力による移動が生じにくくなるので、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内の空隙を極細繊維層により均一化することが出来る。これにより、上記で述べた適度な繊維間距離の確保及び適度な孔径分布を有する積層不織布の形成が容易になる。即ち、上記の方法によれば、積層不織布において、I層の一部がII層にもぐり込みながら、かつ連続したI層を維持できるため、不織布の面内での、固体電解質の材料となる液体(導電性高分子を形成するためのモノマー等)の拡散が均一となる。
メルトブロウン法で形成される繊維(即ちメルトブロウン繊維)の結晶化度は、一般的なメルトブロウン紡糸条件で、5〜40%の範囲に調整することが可能である。なお結晶化度は、例えば上述のDSCを用いた方法で評価できる。具体的には、積層不織布を形成するポリマーは、o−クロロフェノール(OCP)を溶媒として用いたときに、濃度0.01g/mL、温度35℃の恒温水槽中の粘度管を用いて測定した溶液粘度(ηsp/c)が好ましくは0.2〜0.8、さらに好ましくは0.2〜0.6となるような樹脂を用いることにより、上記結晶化度を実現できる。本発明において用いる不織布においては、湿潤時の寸法安定性が高いことが好ましいという観点から、PET樹脂及びPPS樹脂から選択される樹脂を用いてメルトブロウン繊維を構成し、かつ該樹脂の上記溶液粘度(ηsp/c)が0.2〜0.8であることが好ましい。メルトブロウン繊維の結晶化度は10〜40%とすることがより好ましい。
本発明においては、積層不織布がカレンダー加工されていることが好ましい。この場合、積層不織布に、より均一な構造を与えることができる。具体的には、前述の熱接着工程を用いて繊維を接合した後、カレンダー加工処理として、前記の熱接着温度より10℃以上高く且つ熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点よりも10〜100℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでカレンダー処理する。上記のようなカレンダー加工により、積層不織布は良好な強度が得られ、見掛け密度を特に好ましい範囲(例えば本明細書の実施例の記載の範囲内)とすることができる。
カレンダー加工処理温度が、熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点より低く且つその差が10℃未満である場合は、見掛け密度が高くなり過ぎる傾向があり、また、熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点より低く且つその差が100℃を越える場合は、十分な強度が得られにくい上に、表面に毛羽立ちが生じて、表面平滑性が損なわれ、コンデンサ素子として均一な構造になりにくい傾向がある。
カレンダー加工処理における線圧が100N/cm未満であると、十分な接着が得られにくく、十分な強度が発現されにくい傾向がある。また、1000N/cmを超えると、繊維の変形が大きくなり、見掛け密度が高くなって、本発明による効果が得られにくくなる場合がある。
本発明で、積層不織布が親水化加工されることもより好ましい態様である。積層不織布が親水化加工されると、化成液、及び固体電解質を形成するためのモノマー等を不織布により含浸させやすくなるため、より高性能のコンデンサ素子を製造できる。親水化加工としては、物理的な加工方法:即ち、コロナ処理又はプラズマ処理による親水化の他、化学的な加工方法:即ち、表面官能基の導入(酸化処理等で、スルホン酸基、カルボン酸基等を導入する)、水溶性高分子(PVA、ポリスチレンスルホン酸、及びポリグルタミン酸)並びに界面活性剤(ノニオン性、陰イオン性、陽イオン性、及び両イオン性の界面活性剤)等の処理剤による加工、等が採用される。処理剤の使用量、官能基導入量等は、固体電解質を形成するためのモノマー等との親和性で選ぶことができる。但し、親水化加工された積層不織布が将来的に水分を含みやすくなる可能性があるため、加工量(即ち、積層不織布の質量に対する、上記の処理剤及び導入される官能基の質量)は、3質量%以下であることが好ましい。
[固体電解質]
本発明において、固体電解質は、典型的には固体電解質層として不織布によって保持されている。固体電解質を形成するために用いる導電性物質は特に限定されない。典型的には、導電性高分子を与える重合性化合物であるモノマー(即ち電解質モノマー)、又は、導電性高分子の微粒子を分散させた導電性高分子分散水溶液若しくは導電性高分子溶液等の、液体を使用できる。電解質モノマーとしては、例えば、エチレンジオキシチオフェン(例えば3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ピロール、チアゾール、アセチレン、フェニレンビニレン(例えばパラフェニレンビニレン)、アニリン、フェニレン、チオフェン、イミダゾール、フラン等、及びこれらの置換誘導体、等の重合性化合物であるモノマーが挙げられる。また、導電性高分子としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリチアゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン(例えばポリ−p−フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリビニレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリイミダゾール、ポリフラン等、及びこれらの誘導体、等の電子共役系高分子が挙げられる。また、これらの電子共役系高分子にドーパントを付与する物質を含んでいる導電性高分子が好ましい。さらに、その他の導電性物質として、テトラシアノキノジメタン錯体(TCNQ錯体)及びその誘導体等も使用できる。また、それぞれの導電性物質に応じて、それを固体化するための酸化剤、重合剤、又は錯体形成剤を適宜選択して使用でき、均一な固体電解質を形成する目的でそれぞれ使用される。また、より好ましい態様においては、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸又はポリビニルスルホン酸と、上記の導電性高分子との重合体を形成し、これを不織布に含浸して、固体電解質層を形成する。例えば、好ましい態様においては、3,4−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸又はポリビニルスルホン酸との重合体を不織布に含浸し、固体電解質層を形成することにより、セパレーターに均一に固体電解質層が形成され、より導電性を向上させることができる。本発明では、固体電解質を形成するための材料は、限定されず、より均一で高導電性の固体電解質が形成されるように当業者が選定する。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンを固体電解質とするコンデンサ素子を製造するためには、3,4−エチレンジオキシチオフェンと、エチレングリコールに溶解したp−トルエンスルホン酸第三鉄を用いた酸化剤とを混合して得た混合溶液を、コンデンサ素子(即ち、陽極箔と陰極箔とをセパレーターを介して巻回したコンデンサ素子)に含浸させ、25℃〜100℃で15時間〜2時間、好適には50℃で4時間、放置する工程を所定回数繰り返す方法を採用できる。この方法の詳細は、特開平9−293639号公報に記載されている。
しかしながら、固体電解質を形成するための材料(モノマー等)は、不織布に含浸される際の当初の状態では、粘度の低い状態であり、且つ該材料(モノマー等)は通常、該材料を展開させる溶剤と共に含浸される。この材料(モノマー等)は、重合等が進んで固体状態に移る際に、まず、より高粘度の液体状態になり、そして最終的に固体状態となる。よってこの際、低粘度状態でもより均一に不織布が該材料(モノマー等)を含浸し、且つ、粘度が高くなるにつれて電解質の凝集力が増して電解質層となった状態でも不織布がより均一に電解質層を保持することが必要である。本発明においては、所望のより均一なセパレーター材料としての不織布を用いるため、不織布の繊維間距離が適度に保たれる。よって高性能の固体電解コンデンサを製造するための1つの重要な要因である、均一な固体電解質の形成を実現できる。
[陽極箔及び陰極箔]
本発明において用いる陽極箔及び陰極箔は、通常金属箔素材である。コンデンサとしての性能を良好に発揮する目的で、弁作用を有する金属を用いることが好ましい。弁作用を有する金属としては、通常用いられるものを使用できる。特にアルミニウム箔及びタンタル箔が好ましい。
陽極及び陰極に使用される金属箔は、良好なコンデンサ性能を得るという観点から、電極の面積を大きくするためにエッチングされていることがより好ましい。
特に、陽極箔としては、誘電体酸化皮膜層が形成された箔を用いる。これにより良好なコンデンサ性能が得られる。
即ち、本発明において用いる電極箔としては、コンデンサ性能を向上させる目的のために、より良い箔を選定すればよい。
陽極箔及び陰極箔の寸法は、製造する固体電解コンデンサの仕様に応じて任意である。セパレーターの寸法も任意であるが、両極の電極箔の寸法に応じて、陽極箔及び陰極箔の寸法よりやや大きい幅寸法の物を用いることが好ましい。これにより陽極箔と陰極箔とが直接接することなくセパレーターに阻まれるので、ショートする恐れが少なくなる。巻回工程では、セパレーターとなる素材には、引張り張力がかかる。この際、セパレ−ターの幅方向の寸法安定性が劣っていると、この引張り張力は性能劣化及び不良率増加に繋がる。
陽極箔は、表面に誘電体酸化皮膜層を有する。誘電体酸化皮膜層は、通常、陽極箔の化成処理による表面の誘電体化によって形成されている。化成処理は、通常用いられる化成液、例えばホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して、誘電体となる酸化皮膜層を金属箔表面に生成することによって実現できる。なお本発明においては、陽極箔と陰極箔とセパレーターとを巻回した後、電極箔の端部を誘電体化(酸化処理)するために、及びより均一な酸化皮膜層を形成するために、再化成を行ってもよい。再化成は、通常用いられる化成液、例えばホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して、誘電体となる酸化皮膜層を金属箔表面に生成することによって実現できる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、測定方法及び評価方法は次の通りである。特記がない限り、不織布において、長さ方向とはMD方向(マシン方向)であり、幅方向とは該長さ方向と垂直の方向である。
(1)目付け(g/m2
JIS L−1906に規定の方法に従い、縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅方向1m当たり3箇所、長さ方向1m当たり3箇所の、計1m×1m当たり9箇所採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
(2)厚み(mm)
JIS L−1906に規定の方法に従い、幅1m当たり10箇所の厚みを測定し、その平均値を求めた。荷重は9.8kPaで行った。
(3)見掛け密度(g/cm3
上記(1)にて測定した目付け(g/m2)、上記(2)にて測定した厚み(μm)を用い、以下の式により算出した。
見掛け密度=(目付け)/(厚み)
(4)繊維径(μm)
試料(不織布)の各端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片について、マイクロスコープで繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料を構成する繊維の繊維径とした。
(5)開孔径分布(平均流量孔径及び最大孔径)
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用いた。測定には浸液にPMI社製のシルウィックを用い、試料を浸液に浸して充分に脱気した後、測定した。
本測定装置は、フィルターを試料として、あらかじめ表面張力が既知の液体にフィルターを浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態からフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力とから計算された細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式を用いる。
d=C・r/P
(式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径、r(単位:N/m)は液体の表面張力、P(単位:Pa)はその孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数である。)
上記の数式より、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(濡れ流量)を測定する。初期の圧力では、最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加する。最も小さな細孔の液膜が破壊されたときの圧力における流量が、乾いた状態の流量(乾き流量)と一致する。
本測定装置による測定方法では、ある圧力における濡れ流量を、同圧力での乾き流量で除した値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。この平均流量孔径を、本発明の積層不織布の平均孔径とした。
本発明の積層不織布の最大孔径は、不織布を上記フィルター試料として測定し、累積フィルター流量が50%の−2σの範囲、すなわち、累積フィルター流量が2.3%となる圧力で破壊される液膜の孔径とした。上記測定方法にて、各サンプルについて3点測定を行い、その平均値として平均流量孔径と最大孔径とを計算した。
(6)引張強力(kg/1.5cm)
試料(不織布)の各端部10cmを除き、幅1.5cm×長さ20cmの試験片を、1m幅につき5箇所切り取った。試験片が破断するまで荷重を加え、MD方向の試験片の最大荷重時の強さの平均値を求めた。
(7)融点(℃)
下記の測定器にて測定を行い、融解ピークの導入部分における変曲点の漸近線とTgより高い温度領域でのベースラインが交わる温度を融点とした。
示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製のDSC210)を使用し、下記の条件で測定した。
測定雰囲気:窒素ガス50ml/分、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:25〜300℃。
(8)表面磨耗性
試料(不織布)の幅方向に長い試験片(幅約30cm×長さ3cm)を、1m幅につき5点採取し、JIS L−0849 摩擦に対する染色堅ろう度試験方法 に記載の摩擦試験機II形(学振形)を用いて測定を行った。試験台上と摩擦子との双方に測定面が接触する様に試験片を取り付け、30回往復摩擦し、摩擦後の不織布の外観検査を以下の基準で実施した。なお表4〜6中、「表」とは表1〜3で各実施例及び比較例における層構成の最左に示している層を意味し、「裏」とは表1〜3で各実施例及び比較例における層構成の最右に示している層を意味する。
5級:不織布の表面には、変化がない。4級:不織布の表面に、ピリングはないが、表面に、1本ずつの糸がたち、表面がわずかに荒れている。3級:長さ0.5cm未満のピリンングがある。又は、全体に毛羽が浮いている。2級:長さ1cm以上のピリングがある。又は、摩擦面に綿状物が浮いていたり、若しくは摩擦面が磨耗され磨り減っている。1級:不織布の一部が破れている。
(9)吸い上げ高さ測定
試料(不織布)の幅方向に長い試験片(幅約2.5cm×長さ20cm)を、1m幅につき3点採取し、JIS L−1907 繊維製品の吸水性試験方法に記載のバイレック法に準じて測定を行った。吸い上げ溶液には、基準液(濡れ指数標準液 50mN/mを使用。以下、単に基準液ということもある)を使用し、10分後の吸い上げ高さを測定し、その平均値として吸い上げ高さ求めた。
(10)接触角測定
試料(不織布)を1m幅につき3点採取し、接触角測定器を用いて測定を行った。滴下溶液には基準液を使用し、100msの溶液と不織布との接触角を測定し、その平均値として接触角を求めた。
(11)浸透度
試料(不織布)を1m幅につき3点採取し、浸透度を測定した。滴下溶液には基準液を使用し、10mmの高さから0.04mLの基準液を滴下し、10秒後の溶液の濡れ広がり幅を測定し、その平均値として浸透度を求めた。
<コンデンサの初期特性の測定方法>
(12)巻回性
コンデンサの巻回装置を用いて陽極箔、セパレーター、陰極箔、セパレーターの4枚を重ねて巻回し、正常に巻回出来るかを、A〜Dで判定した。 A:全く問題なし B:巻回装置の条件を調整すれば問題なし C:巻回装置の条件を調整しても巻回工程で不良品が発生する D:不良品が多く発生する
(13)静電容量
測定周波数120HzでLCRメータを用いて測定した。
(14)容量出現率
誘電体酸化皮膜層形成後の素子について30質量%の硫酸水溶液中にて測定した静電容量に対する、作製された固体電解コンデンサの実際の静電容量を、百分率(%)で示した。
(15)tanδ
測定周波数120HzでLCRメータを用いて測定した。
(16)もれ電流
コンデンサと直列に1000Ωの保護抵抗器を接続し、定格電圧を印加し、5分後に測定した。
(17)ESR
測定周波数100kHzでLCRメータを用いて測定した。
(18)ショート率(%)
定格電圧を1時間連続的に印加(雰囲気温度105℃)することによりエージングを行った後の、ショートしたコンデンサの比率を百分率(%)で示した。
(19)最大印加電圧(V)
JIS C−5101−1 4−6耐電圧の測定方法に従い、直流電流1.0Aにて最大印加電圧を測定した。
(20)はんだ耐熱性
温度条件:余熱温度150℃120秒、ピーク温度240℃後のサンプルについて(10)〜(14)の測定、並びに外形の寸法変化及び変形を観察し、A〜Dで判定した。 A:全く問題なし B:一部測定値が変化するが定格内 C:一部不良品が発生する D:不良品が多く発生する
〔実施例1〜12〕
以下の方法により、実施例1〜12の積層不織布を作製し、性能評価を実施した。
極細繊維不織布層(I層)として、PET(熱可塑性樹脂として)の溶液(OCPを溶媒として用い、温度35℃で測定した溶液粘度:ηsp/c=0.50を有するもの)を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下で、移動する捕集ネットに向けて押し出し、メルトブロウン法により紡糸して極細繊維ウェブを得た。この際、メルトブロウンノズルから極細繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径及び結晶化度の調整は、加熱空気量を調整することにより行った。
次に、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)として、汎用的なPET(熱可塑性樹脂として)の溶液(OCPを溶媒として用い、温度35℃で測定した溶液粘度:ηsp/c=0.67を有する)(溶液粘度は温度35℃の恒温水槽中の粘度管で測定した。以下同じ。)を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、紡糸速度4500m/分で紡糸し、極細繊維ウェブ上に吹き付けた。次いで、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を十分に開繊させ、極細繊維で構成される不織布層(I層)/熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)からなる積層ウェブを得た。繊維径の調整は、牽引条件を変えることにより行った。
更に、上記で得た積層ウェブ上に、上記の不織布層(I層)としての極細繊維ウェブの形成と同様の方法で、不織布層(I層)として、極細繊維を所定の繊維径及び目付けになるように積層した。これにより、極細繊維で構成される不織布層(I層)/熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)/極細繊維で構成される不織布層(I層)、からなる積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、表1〜2に示す条件でフラットロールにて熱接着した後、コロナ放電加工(親水化加工として)を実施し、カレンダーロールにて、所望の厚みとなるように厚みを調整するとともに見掛け密度を調整し、積層不織布を得た。上記の基本条件の下、加工条件を変え、各種不織布を得た。(実施例1〜12)。得られた積層不織布の構成を表1に、そして積層不織布の性能結果を表3に示す。
コンデンサ素子及び部品の製法は以下の通りである。上記の各積層不織布を6mmにマイクロスリットし、これを、化成処理が施された陽極箔(アルミ箔)と、陰極箔となるアルミ箔との間に介在させて、これらを巻回し、コンデンサ素子を作製した。このコンデンサ素子を、アジピン酸アンモニウム水溶液で再化成した。次いで、このコンデンサ素子を、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン(1質量部)と、酸化剤となるp−トルエンスルホン酸第二鉄(2質量部)と、溶剤となるノルマルブタノール(4質量部)とを含む溶液に浸漬して引き上げた後、100℃で放置することによって重合を進め、ポリエチレンジオキシチオフェンの導電性高分子(固体電解質として)を電極箔間に形成した。このようにして得られた素子を、その外周に外装樹脂を被覆し、加硫ブチルゴムの封口部材とともに、アルミニウム合金製の外装ケースに封入した後、封口し、固体電解コンデンサを作製した。得られたコンデンサのサイズは、直径φ8mm、縦寸法10mmであり、2種類の製品を作製した(定格電圧;2.5V、定格静電容量;820μF)。最後に定格電圧を1時間連続的に印加(雰囲気温度105℃)することによりエージングを行った。
これらの手順で得られた固体電解コンデンサの初期特性を測定した。その結果を表5に示す。なお、表5に示した実施例及び比較例の試験は、コンデンサ個数20個の平均とした。
〔実施例13〕
熱可塑性樹脂としてPPS(ポリプラスチック社製フォートロン)を用いた。不織布を形成する条件は、以下の通りである。
II層:樹脂の溶融粘度:70g/10分(キャピラリーレオメーターを用いて測定、測定条件:荷重5kg、温度315.6℃)、紡糸温度:320℃、紡糸速度:8000m/分。
I層:樹脂の溶融粘度:670g/10分(上記と同様の方法で測定、測定条件:荷重5kg、温度315.6℃)、紡糸温度:340℃、加熱空気温度:390℃、加熱空気量:1000Nm3/hr/m。
また、フラットロールによる熱接着条件は、線圧:260N/cm、ロール温度:上/下=150℃/150℃とし、カレンダー条件は、線圧:350N/cm、ロール温度:上/下=70℃/70℃とした。積層不織布を形成する条件及びその性能は、それぞれ表1及び3に示す。その他の条件は、実施例1と同様にした。また、コンデンサ性能は、表5に示す。
〔実施例14〕
熱可塑性樹脂としてPP(日本ポリプロ社製)を用いた。不織布を形成する条件は、以下の通りである。
II層:樹脂の溶融粘度:43g/10分(上記と同様に測定、測定条件:荷重2.1kg、温度230℃)、紡糸温度:230℃、紡糸速度:3300m/分。
I層:樹脂の溶融粘度:1500g/10分(上記と同様の方法で測定、測定条件:荷重2.1kg、温度230℃)、紡糸温度:295℃、加熱空気温度:320℃、加熱空気量:1050Nm3/hr/m。
また、フラットロールによる熱接着条件は、線圧:260N/cm、ロール温度:上/下=90℃/90℃、カレンダー条件は、線圧:350N/cm、ロール温度:上/下=40℃/40℃とした。積層不織布を形成する条件及びその性能は、それぞれ表1及び表3に示す。また、コンデンサ性能は、表5に示す。
〔実施例15〕
不織布層(I層)として、実施例1と同様に、不織布層(I)層となるメルトブロウン繊維ウェブを作製し、不織布層(II層)として、繊維径18μm、繊維長5mmのco−PET/PET鞘芯構造の短繊維を抄造法にてネット上に30g/m2となるように捕集し、脱水乾燥後、エアースルー方式(180℃、5m/分)で繊維同士を融着させ、不織布層(I層)/短繊維ウェブを得た。さらに上記で得たウェブ上に、実施例1と同様に作製した不織布層(I層)を積層させ、3層からなる積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、フラットロール及びカレンダーロールにて熱接着し、積層不織布を得た。積層不織布を形成する条件及びその性能は、それぞれ表1及び表3に示す。また、コンデンサ性能は、表5に示す。なお表1中、鞘芯構造の短繊維の融点は、鞘/芯の順で記載している(以下同様である)。
〔比較例1及び2〕
実施例1のII層と同様のPETを用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメントの長繊維群を、移動する捕集ネット上に向けて押し出し、紡糸速度4500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分に開繊をさせ、熱可塑性樹脂長繊維ウェブを捕集ネット上に形成した。繊維径の調整は、牽引条件を変えることにより行った。次いで、極細繊維不織布層(I層)として、PETの溶液(OCPを溶媒として用い、温度35℃で測定した溶液粘度:ηsp/c=0.50を有するもの)を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下で、メルトブロウン法により紡糸して、上記の熱可塑性樹脂長繊維ウェブ上に吹きつけた。この際、メルトブロウンノズルから熱可塑性樹脂長繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径及び結晶化度の調整は、加熱空気量を調整することにより行い、熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)/極細繊維で構成される不織布層(I層)からなる積層ウェブを得た。更に、上記で得た積層ウェブ上に直接、上記の不織布層(II層)としての熱可塑性樹脂長繊維ウェブの形成と同様の方法で、不織布層(II層)として、熱可塑性樹脂長繊維を所定の繊維径及び目付けになるように積層した。これにより、熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)/極細繊維で構成される不織布層(I層)/熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)、からなる積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、表1〜2に示す条件でフラットロールにて熱接着した後、コロナ放電加工(親水化加工として)を実施し、カレンダーロールにて、所望の厚みとなるように厚みを調整するとともに見掛け密度を調整し、積層不織布を得た。上記の基本条件の下、加工条件を変え、各種不織布を得た。得られた不織布の構成を表2に、及び不織布の性能結果を表4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
〔比較例3〕
比較例1及び2とは異なり、2層構造(II層及びI層)の積層不織布とし、その他は、比較例1及び2と同様の条件を用いた。積層不織布を形成する条件及びその性能は、それぞれ表2及び表4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
〔比較例4〕
不織布として、旭化成せんい製のスパンボンド不織布(E05025、繊維径16μm、目付け25g/m2)を用い、不織布層(II層)のみからなる不織布の例とした。不織布の構成を表3に、その性能結果を表6に示す。また、コンデンサ性能は、表9に示す。
〔比較例5〕
極細繊維不織布層を、実施例1のI層と同様の樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下で、メルトブロウン法により紡糸して、ネット上に吹きつけることによって形成した。この際、メルトブロウンノズルからウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/秒に設定した。繊維径及び結晶化度の調整は、吐出量を変えることにより行い、極細繊維不織布層(I層)のみからなる不織布を得た。不織布の構成を表2に、その性能結果を表4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
〔比較例6〕
繊維径16μm、繊維長5mmのPET短繊維を、抄造法にて、25g/m2となるようにネット上に捕集してウェブを得た。なおこの際、繊維同士がばらけないように、また不織布強度を保つために、バインダーとしてポリビニルアルコール(溶解温度70℃)を用い、全体の目付け量を33g/m2とした。このウェブを脱水乾燥後、カレンダーロールにて熱圧着して、不織布層(II層)のみからなる不織布を得た。得られた不織布及びその評価結果を表2及び4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
〔比較例7〕
繊維径10μm、繊維長5mmのPET短繊維を、抄造法にて、25g/m2となるようにネット上に捕集してウェブを得た。なおこの際、繊維同士がばらけないように、また不織布強度を保つために、バインダーとしてポリビニルアルコール(溶解温度70℃)を用い、全体の目付け量を33g/m2とした。このウェブを脱水乾燥後、カレンダーロールにて熱圧着して、不織布層(II層)のみからなる不織布を得た。不織布の構成を表2に、その性能結果を表4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
〔比較例8〕
不織布として、日本高度紙製のレーヨン繊維からなる湿式不織布(RCE3040、繊維径8μm、目付け40g/m2)を用いた。不織布の構成を表2に、その性能結果を表4に示す。また、コンデンサ性能は、表6に示す。
以上の結果を表1〜6に示す。
Figure 2013080828
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なお、表1〜6において、PETはポリエチレンテレフタレート、MBはメルトブロウンウェブ、SBはスパンボンドウェブ、SLはスパンレースウェブを表す。
表5〜6から明らかなように、本発明の実施例に係る固体電解コンデンサは、比較例のものに比べてコンデンサ性能の少なくともいずれかの項目において優れた性能を示している。
本発明の固体電解コンデンサ用セパレーター及びこれを含む固体電解コンデンサは、各種電子機器の分野において好適に利用される。
1 セパレーター
2 陽極箔
3 陰極箔
4 リード線
5 リード線
10 コンデンサ素子

Claims (10)

  1. 固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含む、固体電解コンデンサ用セパレーターであって、
    該不織布が、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される不織布層(I層)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを含む積層不織布であり、
    該積層不織布の両側表面が該不織布層(I層)によって形成されており、かつ該不織布層(I層)の間に該不織布層(II層)を含む中間層が存在している、セパレーター。
  2. 前記不織布層(II層)における前記熱可塑性樹脂繊維が、熱可塑性合成長繊維である、請求項1に記載のセパレーター。
  3. 前記積層不織布が、熱的結合による一体化によって形成されている、請求項1又は2に記載のセパレーター。
  4. 前記不織布層(II層)における前記熱可塑性樹脂繊維が、融点180℃以上を有する結晶性樹脂の繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセパレーター。
  5. 前記積層不織布が、厚み10〜80μm、及び目付け7〜50g/m2を有する、請求項1〜4のいずれかに1項に記載のセパレーター。
  6. 前記不織布層(I層)が、メルトブロウン法で形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセパレーター。
  7. 前記積層不織布における前記不織布層(I層)の目付け(i)と前記不織布層(II層)の目付け(ii)との比(i)/(ii)が、1/10〜10/1である、請求項1〜6のいずれかに1項に記載のセパレーター。
  8. 前記積層不織布がカレンダー加工されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体セパレーター。
  9. 前記積層不織布が親水化加工されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセパレーター。
  10. 陽極箔及び陰極箔、並びに該陽極箔と該陰極箔との間に配置された請求項1〜9のいずれか1項に記載のセパレーターを含む固体電解コンデンサであって、
    該陽極箔と該陰極箔との間に該セパレーターが介在するように該陽極箔、該陰極箔及び該セパレーターが巻回されており、かつ該陽極箔が、誘電体酸化皮膜層を有する、固体電解コンデンサ。
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