JP2014072361A - 電解コンデンサ用セパレータ - Google Patents

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Rumina Koo
留美名 小尾
Mikiko Ariga
三起子 有賀
Shinichi Okajima
真一 岡嶋
Junichi Kusakabe
純一 日下部
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Abstract

【課題】安定して生産でき、且つ高性能の電解コンデンサ用セパレータの提供。
【解決手段】不織布と導電性高分子で構成されたコンデンサ用セパレータであって、該不織布は、が繊維径が0.1〜4μmの極細繊維不織布層(I層)と、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる不織布層(II層)の少なくとも2層を含む積層不織布であり、該I層及び/又はII層の繊維表面の一部又は全部が導電性高分子で被覆されている前記コンデンサ用セパレータ。
【選択図】なし

Description

本発明は、セパレータを構成する不織布が積層不織布である固体電解コンデンサ用セパレータに関する。
電子機器の信頼性向上及び高性能化に伴って、従来よりも高寿命で、かつ電気特性の高い電解コンデンサが求められている。その一つとして、電子機器の高周波領域でのインピーダンス特性に優れたコンデンサとして、固体電解コンデンサが実用化されている。
セパレータとしては、パルプ又はマニラ麻等のセルロース成分を主体とするセパレータの問題(水分、熱分解ガス等)を解決するために、合成繊維を用いたセパレータが種々考案されている。
本発明者らは、先に固体電解質、及び該固体電解質を保持する不織布を含み、該セパレータを構成する該不織布が、少なくとも2層の不織布層を有する積層不織布であり、該積層不織布が、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される不織布層(I層)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを含む特定の繊維径を有する異なる2層以上を有する積層不織布をセパレータとして用いることにより、より高性能(具体的には、高耐電圧、高容量、及び低ESR(Equivalent Series Resistance))の固体電解コンデンサを得られることを見いだした(以下、特許文献1参照)。
固体電解質としては、導電性高分子が知られており、導電性高分子は巻回素子にモノマーと酸化剤を含浸させ、素子内部で重合する方法が知られている一方、先に重合した導電性高分子を分散液にして巻回素子に含浸させ、分散溶媒を乾燥させる方法も知られている。分散液としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルフォネートの導電性高分子分散液が知られている。導電性高分子分散液は、素子内での化学重合では酸化剤溶液が酸性の為、酸化皮膜である誘電体層を腐食させ、等価直列抵抗の増加が生じ耐圧低くなる課題を解決でき、また処理工程が化学重合に比べて簡単である事がメリットと言われている。
導電性高分子分散液タイプのコンデンサに用いられるセパレータとしては、例えば、少なくとも繊維径の差を5μm以上異なる2種類の非フィブリル化繊維を主体としたセパレータが知られている(以下、特許文献2参照)。
また、セパレータに特徴を持たせた例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリイミド、ナイロン、変性PP、変性PE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)から選択された少なくとも1種の樹脂を有機溶媒または水に溶解し、この溶液を噴射するノズルに直流電圧を印加して繊維径が1μm以下の長繊維の非フィブリル化繊維を堆積させた繊維径1μm以下の繊維からなり、前記セパレータの繊維及びその繊維間にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルフォネートのフィルム状の導電性高分子が形成されたセパレータを用いたコンデンサが知られている(以下、特許文献3参照)。フィルム状の導電性高分子は、セパレータを陽極箔と陰極箔との間に介在させて巻回したコンデンサ素子に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルフォネートの導電性高分子分散液を浸漬して乾燥することで得られる。
国際出願公開番号 WO 2011/021668号公報 特開2012−104737号公報 特開2010−245150号公報
しかしながら、特許文献2に記載された繊維においては、繊維径の異なる繊維を配合する目的は、平滑度を制御することにあり、平滑度すなわち通気性が制御されることで、該セパレータについて分散液の含浸性や電解質の保持性を改善することを目的としている。しかしながら、分散液と各種構成繊維の役割分担は明確ではない。
また、特許文献3に記載された繊維径が1μm以下の長繊維の非フィブリル化繊維を堆積させたセパレータでは、繊維径が小さいために(数μm程度)、繊維間距離もより小さく、開孔径もより小さい為、不織布の破断強力が弱く、少しの力で伸びるようなものであった。その原因は、繊維を形成する樹脂の結晶化度が低いか、繊維が十分延伸されていないことにあった。したがって、特許文献2に記載される技術によっても、コンデンサを形成する際の巻回工程での不良率は高く、実際には使用できなかった。また、特許文献3に記載された不織布においては、樹脂の結晶化度が低いため、当該不織布は、その表面が、摩擦・磨耗に弱く、工程上で表面に毛羽、毛玉等の異物が発生しやすかった一方、摩擦・磨耗に耐える為に圧着条件を強くすると繊維間隙が緻密になりすぎ、導電性高分子分散液がセパレータ内部にまで十分浸透していない部分が生じ、均一な固体電解質層を形成ことができなかった。特許文献3に記載された繊維径が1μm以下の長繊維の非フィブリル化繊維を堆積させたセパレータでは、上記の理由により、固体電解コンデンサにおいて固体電解質及び誘電体酸化層を緻密に且つ均一に形成するという目的を達成することができなかった。また、巻回できた物も導電性高分子分散液をフィルム状となるまで含浸させる為には、導電性高分子分散液を何回も繰り返し含浸しなければならず、コストが高くなり、実際の使用はできなかった。
さらに、特許文献1に記載された不織布は効果があるものの、導電性高分子分散液を含浸させたセパレータとしては最適状態を引き出すには至っていない。
これらの問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、安定して生産でき、高性能の固体電解コンデンサを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し実験を重ねた結果、セパレータを不織布と導電性高分子で構成し、不織布を構成する繊維の平均繊維径を0.1μmより大きく20μmより小さくしてセパレータ中に繊維径の異なる繊維を存在させ、該不織布を、繊維径が0.1〜4μmの極細繊維不織布層(I層)と、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる不織布層(II層)の少なくとも2層を含む積層不織布とし、該繊維表面に導電性高分子が被覆された部分を有するセパレータとすることにより、より高性能(具体的には、高耐電圧、高容量、及び低ESR(Equivalent Series Resistance))の導電性高分子を含有した電解コンデンサを得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]不織布と導電性高分子で構成されたコンデンサ用セパレータであって、該不織布は、繊維径が0.1〜4μmの極細繊維不織布層(I層)と、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる不織布層(II層)の少なくとも2層を含む積層不織布であり、該I層及び/又はII層の繊維表面の一部又は全部が導電性高分子で被覆されている前記セパレータ。
[2]前記積層不織布のタテ方向強度が10N/15mm巾以上である、前記[1]に記載のコンデンサ用セパレータ。
[3]前記導電性高分子が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びそれらの誘導体から成る群から選ばれる、前記[1]又は[2]に記載のコンデンサ用セパレータ。
[4]前記積層不織布において、前記II層が表と裏の両表面層であり、前記I層が中間に存在する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[5]前記II層が連続長繊維不織布である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[6]前記I層がメルトブロウン不織布である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[7]前記I層の目付けの比率が、前記積層不織布全体の目付けに対して9〜67%である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[8]前記積層不織布を構成する繊維同士が熱的結合で一体化された部分を含む、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[9]前記II層が融点180℃以上である結晶性樹脂からなる、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[10]前記積層不織布の厚みが10〜80μmであり、かつ、目付けが7〜70g/mである、前記[1]〜[9]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータ。
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載のコンデンサ用セパレータを含むコンデンサ。
本発明のコンデンサ用セパレータにおいては、特定の不織布と導電性高分子で構成されており、繊維表面に導電性高分子が被覆された部分を有する。これにより、本発明のセパレータを用いたコンデンサは、安定した生産工程で、且つ歩留りが良いために低コストで生産できる。また、本発明のセパレータを用いたコンデンサは、耐電圧が高く、高容量で、且つ低ESRであるため、高性能である。
本発明のセパレータを含むコンデンサの模式図である。 本発明のセパレータを含む素子を解体したセパレータ表面の写真である。 図2と同視野においてS元素の分布を白色で示した図である。 本発明のセパレータを含むコンデンサ素子の断面写真である。 図4と同じコンデンサ素子の別の位置の断面写真である。 化学重合からなる導電性高分子を含むコンデンサ素子断面写真である。 図6と同じコンデンサ素子の別の位置の断面写真である。 シミュレーションによる厚み方向の電気抵抗の分布である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(コンデンサ)
本発明のセパレータを含むコンデンサは、陽極箔及び陰極箔、並びに該陽極箔と該陰極箔との間に配置された該セパレータを含むコンデンサであって、該陽極箔と該陰極箔との間に該セパレータが介在するように該陽極箔、該陰極箔及び該セパレータが巻回されており、該陽極箔が誘電体酸化皮膜層を有するものであることができる。
図1は、本発明のセパレータが用いられるコンデンサの模式図である。本発明のセパレータが用いられるコンデンサ素子10は、陽極箔2と、陰極箔3と、本発明のセパレータ1とを巻回された形態である。本発明の典型的な態様においては、例えば、図1に示すように、セパレータ1、陽極箔2、セパレータ1、陰極箔3の順に重ねた4層が巻回されている。本発明においては、例えば、上記のようにして、陽極箔2と陰極箔3との間にセパレータ1が介在するように、すなわち陽極箔と陰極箔とがセパレータを挟み込むように、コンデンサ素子を構成する。
陽極箔2及び陰極箔3には、それぞれの電極を外側に接続するためのリード線4,5が接続されている。接続は、ステッチ、超音波溶接、かしめ等の公知の手法で実現される。このリード線4,5は、陽極箔2及び陰極箔3との接続部、及び外部との電気的な接続を担う外部接続部、からなる導電性金属端子である。このような端子を介して、巻回したコンデンサ素子10から電気エネルギーが最終的に外部に導出される。リード線は、例えば、アルミニウム等からなる。リード線には、導電性を良くするためにメッキ等の加工がされていることも好ましい。
本発明に係るコンデンサを製造する方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、図1に示す構造のコンデンサ素子は、以下の方法で製造できる。まず、化成処理等によって誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔を準備し、該箔、セパレータ、陰極箔、セパレータの順に重ね、これらを巻回する。この後、再化成工程を行って、陽極及び陰極の電極箔の端部を誘導体化してもよい。次いで、巻回物のセパレータに、導電性高分子の材料となる液体を含浸することによって、該セパレータを構成する不織布の繊維表面に導電性高分子が被覆された部分を形成する。繊維表面を被覆する導電性高分子の材料となる液体としては、各種の電解質モノマーと開始剤、重合剤等との組合せ含浸し、その後、重合する方法もあるが、被覆する導電性高分子の質を高めるには導電性高分子とドーパント等とが結合した重合体の微粒子が分散している導電性高分子分散水溶液、又は導電性高分子溶液等を用いることがよい。
「繊維表面の一部又は全部が導電性高分子で被覆されている」とは、不織布繊維間の空隙を全て導電性高分子固体で充填した状態ではなく、繊維表面上に導電性高分子が存在する層があるが、繊維−繊維間で繊維表面から離れた部分では空間を保った部分を有していてもよい。なお、巻回素子全体としては、セパレータの繊維−繊維間に空間を保った部分があれば、繊維−繊維間の間隙を導電性高分子ですべて充填した部分が存在してもよい。一般に、巻回素子全体としては円筒状の素子の両端面付近と、巻芯(巻始め)、巻外(巻終わり)は充填率が高くなりやすい。本発明は、上記の両端面付近と巻芯、巻外付近以外での充填率が低くても、高いコンデンサ性能を示すことが特徴である。
導電性高分子が形成された後、巻回物を外装ケース(一般的には有底筒状の金属ケース)に入れ、その後、開口部を樹脂等で封止し、コンデンサ素子とする。
(セパレータ)
セパレータは、導電性高分子及び不織布を含み、該不織布は、不織布を構成する繊維の平均繊維径を0.1μmより大きく20μmより小さくしてセパレータ中に繊維径の異なる繊維を存在させた不織布であり、繊維表面に導電性高分子が被覆された部分を有する。不織布の平均繊維径は、0.1μm以上20μm以下である必要がある。平均繊維径を0.1μm以上とすることで、不織布を構成する繊維の強力を維持できる。また、平均繊維径を20μmより小さくする事で、不織布自体の粗さ、すなわち繊維間距離を制限し、セパレータ上の導電性高分子の斑を少なくできる。
不織布は、繊維径0.1〜4μmの極細繊維と、繊維径6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる繊維の少なくとも2種類の繊維を含む必要がある。極細繊維を含むことにより不織布層内で繊維間が緻密な部分を作り、繊維径6〜30μmの繊維で不織布の強力を維持するというように、明確に役割を分担させることができる。極細繊維により繊維間が緻密な部分は導電性高分子が比較的多く充填し、導電経路のネットワークを緻密に作る一方、繊維径6〜30μmの繊維−繊維間は繊維表面に導電性高分子が被覆された部分を有するが、繊維でも導電性高分子でもない空隙を有する部分も存在する。
さらに、本発明の不織布は、繊維径が0.1〜4μmの極細繊維と、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる繊維が、それぞれ不織布層を構成した、少なくとも2層を含む積層不織布である必要がある。以下、積層不織布の繊維径が0.1〜4μmの極細繊維不織布層をI層、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる不織布層をII層という。
(積層不織布)
積層不織布は、極細繊維不織布層(I層)及び不織布層(II層)を含む。具体的には、積層不織布は、少なくとも2層を有する積層不織布であって、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される極細繊維不織布層(I層)と、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを有する。該積層不織布の繊維表面に導電性高分子が被覆されているので、本発明のセパレータは、導電性高分子を緻密且つ均一に形成することができる上、化成により誘電体酸化被膜層も均一にすることができる。
極細繊維不織布層(I層)は、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維で構成される。なお、本明細書において、用語「極細繊維」とは、上記の0.1〜4μmの範囲の繊維径を有する繊維を意図している。I層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記極細繊維以外の繊維を含有してもよいが、典型的には上記極細繊維のみからなる。繊維径が4μm以下であれば、不織布層の繊維間隙が大きくなり過ぎないため、導電性高分子の材料となる液が繊維間隙に入りやすく、結果として緻密で均一な導電性高分子層を形成できる。また、この場合、繊維径が小さいので極細繊維不織布層(I層)の重量あたりの表面積、すなわち比表面積を大きくすることができる。これにより、薄く均一で、極細繊維不織布層(I層)との接点が多く、且つ面積の広い導電性高分子層を、極細繊維表面上に形成することができる。従って、導電性高分子の量が少なくても、不織布層を通る電気抵抗を低くすることができる。
また、同素材からなる不織布で、空隙率と厚みが同一の場合でも、極細繊維不織布層があると孔径の均一性が上がり、体積抵抗が上がるので、耐電圧の高いコンデンサに用いることができる。特に、極細繊維不織布層(I層)中の開孔径を小さくし、積層される不織布層(II層)中の開孔をI層より相対的に大きくすることで、不織布全体として空隙量を保ちながら体積抵抗を上げて耐電圧の高いコンデンサに適したセパレータとすることができる。
また、誘電体酸化皮膜層を形成するために用いる化成液(以下、単に「化成液」ともいう。)が、セパレータとなる不織布の細部まで染み込みやすく、陽極箔及び陰極箔の表面に誘電体酸化皮膜層(例えば、アルミニウム電解コンデンサであれば酸化アルミ層)を均一の厚みで形成できる。一方、繊維径が0.1μm以上であると、極細繊維を容易に形成でき、且つ形成された極細繊維が、表面摩擦等で毛羽立ったり、糸くずを作ったりすることがない。また、極細繊維同士が適度に隙間を持たせ、化成液や導電性高分子の材料となる液の浸透しやすい状態に保ち易い。これによりコンデンサを製造する工程が良好となる。加えて、誘電体酸化皮膜層及び導電性高分子層を均一な構造で形成できる。この意味で、不織布層(I層)の繊維径は、好ましくは0.3〜4μm、より好ましくは0.3〜3.5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。なお、本明細書で記載する繊維径は、マイクロスコープによる繊維直径の測定によって評価できる。
開孔径は、不織布中の厚み方向の中で最も狭い孔径を示すので、積層不織布においては、実質的に極細繊維不織布層(I層)の孔径を示すと考えてよい。従って、極細繊維層の状態の指標として、平均開孔径の値は、0.5μm〜20μmが好ましい。平均開孔径が0.5μmより大きいと、導電性高分子の材料となる液体が含浸拡散して極細繊維不織布層(I層)内を均一に行き渡ることができる。平均開孔径が20μmより小さいと、導電性高分子の材料となる液体から分散媒又は溶媒が蒸発して導電性高分子固体が形成される際、極細繊維不織布層(I層)中の繊維表面と交絡点に均一に形成し、不織布層内に導電性高分子の緻密なネットワークを有効に作ることができる。
不織布層(II層)は、繊維径6〜30μmを有する熱可塑性樹脂繊維で構成される。繊維径が30μm以下であれば、繊維の径が太過ぎず、均一な繊維間距離を得ることができるため、緻密で均一な固体電解質層を形成できる。不織布層(II層)は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維径6〜30μmの熱可塑性樹脂繊維以外の繊維を含有してもよいが、典型的には繊維径6〜30μmの熱可塑性樹脂繊維のみからなる。上記I層における繊維径が重要であるのと同様、II層における繊維径も重要である。II層を構成する繊維の繊維径が30μm以下であれば、I層とII層とを互いに接するように積層した場合に、I層を構成する極細繊維が、II層を構成する繊維の間により均一に配置される。これにより、積層不織布内において、より均一に極細繊維が分布する。この結果、より均一に分布された極細繊維の層を介して、緻密で均一な導電性高分子層を形成できる。一方、II層を構成する繊維の繊維径が6μm以上であれば、積層不織布が十分な強度を有し、巻回工程が安定する。また、その後のコンデンサ素子を形成する工程でも、セパレータとなる積層不織布が型崩れしないため、安定してコンデンサを形成できる。これらの結果として性能の良い素子が形成される。この意味で、II層を構成する繊維の繊維径は、好ましくは8〜25μm、より好ましくは9〜20μmである。
不織布層(II層)は適度に繊維間に空隙を持った繊維間距離であることが好ましい。適度な繊維間距離とは、積層されている極細繊維層(I層)の繊維間距離と比較して大きな繊維間距離をいう。不織布層(II層)の繊維間に極細繊維層(I層)より大きな繊維間の空隙を持つことで、導電性高分子の材料となる液体が凝集し、固体化する際に、不織布層(II層)内の空隙を全て埋める必要がなく、緻密な極細繊維層に重点的に配分される為、導電性高分子の総量が少なくても導電性を維持することができる。不織布層(II層)の繊維間距離としては、不織布層(II層)中全体の平均が重要なのではなく、極細繊維層(I層)より大きな空隙を保っている場所があることが重要である。その為、実際の不織布表面の観察から求めるII層の繊維間距離を指標に用いることができる。極細繊維層(I層)の繊維間距離は、開孔径を指標とすることができるので、II層繊維間距離>平均開孔径であることが好ましい。
本発明のセパレータにおいては、セパレータとして構成されている不織布の内部又は表面に、極細繊維不織布層(I層)を設けることができる。I層においては、繊維径が小さいため、繊維間隙が小さく、繊維が均一に分布しており、さらに比表面積が大きい。このI層の繊維表面上に導電性高分子を設けることによって、セパレータの面方向に連続してI層が存在し、且つ導電性高分子が連続したネットワークを均一に形成することができる。
本発明においては、極細繊維不織布層(I層)を補強する支持層として、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)を設けることができる。セパレータ及びコンデンサの各生産工程において、不織布層(II層)が、変形及び損傷から極細繊維不織布層(I層)を守るため、不良率を低くしてコンデンサを安定して生産できる。
本発明において、セパレータは、上記で規定した繊維径である不織布層(I層)と不織布層(II層)とを有する積層不織布である。セパレータをこのような積層不織布とすることにより、例えば、I層及びII層をそれぞれ単独で使用する場合と比べて、同空隙率でも、セパレータ層内の部分的により緻密な不織布構造を形成でき、結果として、より緻密な固体電解質層が得られると考えられる。特に、I層とII層とが互いに接するように積層される場合、II層を構成する繊維の間隙に、I層を構成する極細繊維が配置されることにより、不織布を構成する繊維がより均一に配置されることができる。結果として、導電性高分子の材料となる液体が、より均一に不織布層に行き渡る。上記液体は、不織布層の繊維間隙の中に含浸され、その後、例えば分散媒または溶媒の揮発と成膜化等により、結果として均一な導電性高分子を形成する。特に、導電性高分子の材料となる液体が導電性高分子分散液である場合、分散液中の溶媒が揮発していくと、分散液の体積が減る割合が大きい。
一般に、素子内部でモノマー溶液と酸化剤溶液で化学重合させる場合は、純分濃度が20〜60%と高く、溶媒が揮発した後に残る導電性高分子(反応残渣を含む)の体積が大きく、陽極−陰極間の、セパレータ繊維を除く空間には導電性高分子が多く充填される。一方、導電性高分子分散液は一般に純分濃度が10%より低く、溶媒が揮発した後は陽極−陰極間のセパレータ繊維を除く空間中に充填される導電性高分子は少なく、空間が多く残される。この為、少ない量の導電性高分子で如何に効率よく導電性高分子ネットワークを作るかが、コンデンサの性能を上げる為に重要である。
本件のセパレータは、純分濃度が低い分散液を素子に含浸した場合でも、溶媒揮発後の導電性高分子は極細繊維同士が連続して近接した空間、すなわち極細繊維不織布層(I層)により多く凝集し、極細繊維層間にシート内で連続した導電性高分子のネットワークを作ることができる。他方、熱可塑性樹脂からなる不織布層(II層)の繊維−繊維間の距離が長く、体積あたりの繊維表面積が少ない所には液だまりができ難く、繊維表面上に付着する導電性高分子量も少なく、溶媒乾燥後は空間が多く存在する層となる。すなわち導電性高分子を、セパレータ内でも極細繊維層中に緻密に存在させることで、導電性高分子の総量が少なくても、効率よくコンデンサの性能を出すことができる。導電性高分子分散液は、溶媒が乾燥する過程で該液体の粘度も変化してより粘調な物質が形成され、最終的にはI層状に緻密な導電性高分子が繊維上に形成される。この過程で、順次繊維と導電性物質との界面張力が変化し、導電性物質がより粘調となることから、繊維同士が適度に近い層構造中で、均一な構造が生じ、結果として、緻密で均一な導電性高分子層を形成し易くなる。
図2と図3は、導電性高分子の存在量がI層に多い様子を示した例である。図2は、本特許に示すII層/I層/II層からなる3層のPET不織布をセパレータとして巻回素子を作製し、導電性高分子としてPEDOT/PSSの分散液を含浸し、乾燥させた後で解体したセパレータ表面である。図2は、通常の状態での観察写真、図3は、図2と同視野をS元素の分布を白色で示した図である。図2では、表面にII層、その下に極細繊維層(I層)が観察できる。図3を見ると、導電性高分子に含まれるS原子は、II層繊維表面には分布が少なく、II層繊維の間隙から見えるI層繊維表面に多く観察できる。すなわち、導電性高分子が不織布中のI層に多く形成され、II層の繊維表面とII層の繊維間には少ない様子が観察される。この様に不織布層内の各層に均一ではなく、I層内に導電性高分子が偏在することで、限られた導電性高分子量で、効率よく不織布層内でネットワークを作ることができる。なお、写真右下には不織布の表面上に形成された導電性高分子膜が観察され、S元素も多く観察される。
本発明のセパレータは、陽極箔と陰極箔間で、セパレータを構成する繊維−繊維の間に導電性高分子が被覆、すなわち導電性高分子が薄く少量に繊維上を覆っている部分が存在することが特徴である。なお、コンデンサ素子全体としては、上記の部分が存在すれば、一部に陽極箔−陰極箔間を充填する様に導電性高分子が沢山ついている所があってもよい。
コンデンサ素子断面において、陽極箔と陰極箔の間で不織布の繊維上に導電性高分子が付着した状態の例を、図4と図5に示す。
図4では、不織布の中央部に極細繊維層(I層)が観察され、特にI層の繊維上に導電性高分子が付着した様子が観察される。この図4と同様の部分を、解体してセパレータ表面から観察した様子が、先に説明した図2に相当する。
図5は、図4と同じコンデンサ素子断面の別の位置を撮影した図であり、不織布内部のみでなく、箔表面とセパレータ表面の間に導電性高分子が形成された部分も観察される。コンデンサ素子全体としては図5の様に、セパレータを構成する不織布内部のみでなく、セパレータと箔との間に導電性高分子が存在する所があってもよい。
図4、図5に示すように、セパレータを構成する繊維表面を導電性高分子が被覆した状態を形成する導電性高分子としては、導電性高分子分散液が好適に用いられる。導電性高分子分散液は、素子中でモノマーと酸化剤から形成される化学重合と比べて、純分は少ないので形成される量は少ないが、形成される導電性高分子の導電率は高く、形状も緻密で均一でセパレータの繊維上に薄く少量に被覆するのに適している。
比較として、素子中でモノマーと酸化剤から形成される化学重合からなる導電性高分子の形態を、図6と図7に示す。図6と図7では、同一の素子中から、比較的充填量が少ない部分(図6)と、多い部分(図7)を示した。図4と図5と比較して、導電性高分子が繊維表面に被覆した状態ではなく、繊維との境界面が明確に分かる、繊維間を充填した様子が観察できる。
また、シミュレーションの結果からも、上記の様に導電性高分子の導電率が高ければ、充填する場合と比較して少量で繊維表面を被覆する場合でも充分な導電性を示すことを検証することができた。具体的なシミュレーションの設定は、下記のとおりである。
まず、データ取り込み用の不織布を準備した。
熱可塑性不織布層(II層)/極細繊維不織布層(I)/熱可塑性不織布層(II層)の3層構造とし、II層は各々繊維径11μmの8.3g/m、I層は繊維径1.6μmの3.5g/m、全体の目付けを20g/m、厚みを40μm、嵩密度を0.5g/cmとし、実施例1と同様な方法で作製した。
次に、上記不織布をX線CTにより3次元形状にデータ化した。
次に、セパレータを構成する不織布繊維上に導電性高分子が付着したモデルとして、モデルAを定めた。すなわち、データを取り込んだ不織布の繊維表面を1μmの厚さで導電性高分子が被覆する様に太らせ、元の繊維分を除いた差分を導電性高分子とした。
また、比較として素子内での化学重合のモデルとして、モデルBを定めた。すなわち、不織布繊維間の空隙の60%を導電性高分子とした(充填率60%)。モデルBの充填率60%は、一般的に用いられるコンデンサ素子内での化学重合のモノマーと酸化剤が、溶媒で希釈されていることに基づき、仮定した。
セパレータ全体の電気抵抗の計算は、モデルA,Bとも、導電性高分子の電気抵抗と、セパレータ内に存在する導電性高分子を厚み方向に積み重ねることで求めた。すなわち、セパレータの厚み方向に各1ピクセルの厚みにスライスし、各スライス層の抵抗を求め、各スライス間を直列に接続したと仮定し、セパレータ全体の抵抗として計算した。
X番目のピクセルの抵抗Rxは、下記式:
=L/(Ax・σ)
{式中、L=1ピクセルの長さ、A=スライス面を横切る導電性高分子の面積、σ=導電性高分子の導電率[S/cm]}で、そしてセパレータ全体の抵抗Rtotalは、下記式:
total=R+R+・・・R
で求めた。
一般的に導電性高分子分散液から形成される導電性高分子の導電率は、素子内で化学重合させて得られる導電性高分子より高いので、モデルAの導電性高分子の導電率をσAを100S/cm、モデルBの導電性高分子の導電率を10S/cmで計算した。導電率σAは、一般の導電性高分子分散液で充分達成可能な導電率である。また、導電率σBは、経験的に予測できる導電率である。
図8は、上記シミュレーションによる厚み方向の電気抵抗の分布である。
図7より、本シミュレーションで用いた中央部に緻密な極細繊維層のある不織布は、モデルAでは中央部に緻密なネットワークを作る為、電気抵抗が低く、充填率60%のモデルBと比べて導電性高分子量が小さくても、充分セパレータとしての抵抗を小さくできるシミュレーション結果となった。さらに、本シミュレーションは不織布と導電性高分子のみで構成されているので、モデルAは不織布両表面の電気抵抗が高い結果となっているが、実際の素子ではセパレータの両表面には陽極と陰極のアルミ箔が存在し、図5の様にセパレータと箔との間に導電性高分子が存在する所もあるので、さらに導電性は良い方向にシフトすると考えられる。
シミュレーション結果から、不織布層間の空隙を充填する程には導電性高分子が無くても、緻密層と空隙のある層を含む不織布繊維表面を被覆する、充填型より導電率が10倍程度高い導電性高分子があれば、セパレータ全体の導電性を低く保つことが計算上可能ということが分かる。
実際に、導電性高分子が不織布繊維表円を被覆した本発明のセパレータを含む素子が、導電性高分子量が少ないにもかかわらず、化学重合でセパレータ内部に導電性高分子を充填した素子と比べて遜色無いESRを示すので、シミュレーションの仮定は実際を反映したものと判断できる。
積層不織布において、I層は、緻密構造を形成するために有効である。また、高耐圧のコンデンサを作る為には、高電圧に適したセパレータを設計する必要がある。高耐圧に適したセパレータとしては、所望する電圧においてセパレータの耐電圧が高いことが求められる。セパレータを構成する不織布の構造としては、部分的に大きな穴が含まれず、孔径の均一性が高いこと、すなわち平均孔径が小さく孔径分布が狭い事が重要となる。特に最大孔径が大きな物を含まないことが重要である。この為、I層内で繊維間距離が小さく平均孔径を小さく、孔径分布を小さくする事で、高耐圧のコンデンサに適したセパレータとすることができる。
一方、II層は、積層不織布をより安定させ(即ち、不織布の引張強度、曲げ強度及び表面磨耗性を良好にし)、かつ、I層を各工程で安定的に保持するために有効である。さらに、セパレータ内に繊維径の太いII層を含むことで、II層中の繊維間距離を広く保つ事ができ、また、I層で孔径を小さくしながらセパレータ全体中の表面積を必要以上に多くせずに済み、繊維表面上に構成させる導電性高分子の総量を少なくして、低コストでコンデンサを構成することができる。特に、導電性高分子の材料となる液体が導電性高分子分散液の場合、巻回素子に含浸した後、溶媒が揮発するにつれて溶液が少なくなると箔表面と繊維間距離の小さいI層表面により大量に凝集していき、II層中では繊維の極表面のみに留まり、導電性高分子膜のネットワークはI層中に緻密にでき上がるので、II層中の導電性高分子の充填率が小さくても効率的にネットワークを形成することができる。また、全空隙を導電高分子で充填する必要がないので、コストが安くすむ。
さらに、繊維密度が高く空隙が少ない不織布は、導電性高分子の材料となる液体を含浸させた時、均一に含浸拡散する為に時間を要するが、本セパレータは緻密なI層を持ちながら空隙の多いII層が積層されているので、液体がセパレータ内のII層またはII層とI層の境界面を早く拡散し、次いでI層内に浸透する為、均一に含浸拡散する時間を短縮できる。
また、不織布層内の空隙量は、I層中が少なくてもII層中に多く持つ事ができるので、初期の保液を高くすることができ、箔表面にも液を充分に供給することができ、コンデンサの容量や電気抵抗を良好にすることができる。導電性高分子の材料となる液体が導電性高分子分散液の場合、セパレータを挟む陽極、陰極箔表面も導電性高分子分散液で濡れる必要があるが、先にセパレータ内のII層またはセパレータと箔表面の境界層を濡らしてから、溶媒が揮発する際はI層に多く分布することが出来る。
このような理由で、上記のI層とII層とを有する積層不織布は、良好な性能を有するコンデンサを製造するために有利である。
本発明において、より安定に固体電解コンデンサを製造するためには、3層からなる積層不織布がより好ましい。より具体的には、積層不織布が、2層の不織布層(II層)と、該不織布層(II層)の間に中間層として存在する該不織布層(I層)とからなることが好ましい。この場合、不織布層(II層)が積層不織布の両表面を構成し、I層が該II層に挟まれた中間層として存在することになる。積層不織布の両表面がII層であれば、摩擦等の外力が加わった時に、表面が磨耗されることなく、毛羽及び糸くずができず、結果として、コンデンサ素子の性能がより良好で、かつ不良率がより小さくなる。特に、巻回工程に含まれる種々の工程においては、セパレータに摩擦が加わるため、上記3層構造により表面構造の劣化を抑制することが好ましい。
特に好ましい態様においては、積層不織布が、2層の該不織布層(II層)と、該不織布層(II層)の間に中間層として存在する該不織布層(I層)とからなり、不織布層(I層)における極細繊維の繊維径が0.1〜4μmであり、不織布層(II層)における熱可塑性樹脂繊維の繊維径が6〜30μmである。
本発明で、セパレータとして用いる積層不織布の厚みは、10〜80μmであることが好ましい。積層不織布の厚みが10μm以上であれば、スリットされた積層不織布の強度が高く、巻回工程で良好に巻くことができ、加工工程の不良率が少ない。コンデンサ素子において、セパレータの幅は、通常数mmである。この幅が細くなるほど、セパレータの強度が小さくなり、切れやすくなる。また厚みが10μm以上であれば、コンデンサ素子を製造する工程で、電極間の間隔を十分保持することができ、コンデンサ素子において絶縁不良が起こることがない。一方、積層不織布の厚みが80μm以下であれば、陰極箔と陽極箔とセパレータとを巻回した時の厚みが大きくなり過ぎず、電子部品として小型の製品を得ることができる。また、大きさが規定されたコンデンサ部品であるならば、より多くの面積を巻くことができ、単位体積当たりでより高容量となる。また厚みが80μm以下であれば、セパレータ中に吸液される導電性高分子の材料となる液体の必要量が少なくて済み、経済的にあコンデンサ素子が得られる。この意味で、積層不織布の厚みはより好ましくは、15μm〜50μmである。なお本明細書で記載する厚みは、JIS L−1906に準拠して測定できる。
本発明で、セパレータとして用いる積層不織布の目付けは、7〜70g/m2であることが好ましい。積層不織布の目付けが7g/m2以上であれば、スリットされた積層不織布の強度が高く、巻回工程で良好に巻くことができ、加工工程の不良率が少ない。また、化成液、及び導電性高分子の材料となる液体が、セパレータとなる積層不織布に浸み込みやすいため、耐電圧が高く、高容量のコンデンサ素子を形成できる。また、積層不織布の目付けが7g/m2以上であれば、積層不織布自体の形成も容易であり、斑(即ち表面の不均一な形状)のない積層不織布が得られ、結果としてコンデンサ素子の不良率を低減できる。一方、積層不織布の目付けが70g/m2以下であれば、、セパレータ中に吸液される導電性高分子の材料となる液体の必要量が少なくて済み、前述の理由で良好なコンデンサ素子性能が得られる。また該目付けが70g/m2以下であれば、セパレータに対して一定厚みが要求される場合に、積層不織布の目付けが大き過ぎず固体電解質層を形成するための繊維空隙が適度であることにより、コンデンサ素子の電気伝導率を高くでき、低ESRの素子を形成できる。これらの意味で、積層不織布の目付けはより好ましくは、10〜50g/m2である。
特に好ましい態様において、積層不織布は、厚み10〜80μm及び目付け7〜70g/m2を有する。
上記の厚みと目付けとから計算される、積層不織布の見掛け密度としては、0.2〜0.8g/cm3が好ましい。
本発明でセパレータとして用いる積層不織布において、不織布層(I層)及び不織布層(II層)の各々の目付け、並びに、不織布層(I層)と不織布層(II層)との比率は、以下に述べる範囲であることが好ましい。
即ち、本発明で、不織布層(I層)の目付けは、0.5〜45g/m2であることが好ましく、1.0〜25g/m2であることがより好ましく、1.5〜15g/m2であることがさらに好ましい。I層の目付けが0.5g/m2以上であれば、繊維間距離が大きくなり過ぎず、固体電解質層を形成するための導電性のモノマー等が繊維間隙に入り込みやすく、より均一で緻密な固体電解質層を形成できる。また、化成液が、セパレータとなる不織布の細部まで染み込みやすく、誘電体酸化皮膜層(例えばアルミニウム電解コンデンサであれば酸化アルミ層)を、より均一な厚みで形成できる。I層の目付けが45g/m2以下であれば、積層不織布全体の厚みを好ましい範囲に設定しやすく、また不織布層内に形成される固体電解質層を必要以上に多く消費することなくコストを抑えることができる。
本発明で、不織布層(II層)の目付けは、5〜65g/m2であることが好ましく、10〜50g/m2であることがより好ましい。II層の目付けが5g/m2以上であれば、積層不織布において、極細繊維層であるI層が十分に均一な繊維間距離を得ることができるため、より緻密で均一な固体電解質層を形成できる。即ち、繊維径の規定でも述べたとおりに、I層を構成する極細繊維を、II層を構成する繊維の間により均一に配置することが可能であり、結果として、積層不織布においてより均一に極細繊維を分布させることができる。この結果、より均一に分布する極細繊維層を介して、より緻密で均一な固体電解質層を形成できる。また、II層の目付けが5g/m2以上であれば、積層不織布が良好な強度を有し、巻回工程が安定し、その後のコンデンサ素子を製造する工程でも、セパレ−タとなる積層不織布が型崩れしない。これらにより、安定してコンデンサを製造でき、結果として性能の良い素子が得られる。一方、II層の目付けが65g/m2以下であれば、積層不織布全体の厚みを好ましい範囲に設定しやすい。
積層不織布における、不織布層(I層)の目付け(i)と不織布層(II層)の目付け(ii)との比は、以下に限定するものではないが、積層不織布に良好な強度を与え、かつ、繊維間隙が小さい緻密構造を形成するために、I層の目付けの比率が、不織布全体の目付けに対して9〜67%であることが好ましい。上記比は、さらに好ましくは11〜50%である。I層の目付けが9%以上だと、I層を不織布の面方向に斑なく形成しやすい。I層の目付けの比率が67%よりi)/(ii)で2/1よりもII層の目付けが大きいと、積層不織布全体が、スリット時、巻回時、及び熱処理工程で変形しない良好な強度を得やすい。積層不織布及びこれを構成する各不織布層の厚み及び目付けは、セパレータとして必要な厚み及び目付けを確保できる範囲で適宜選ばれるべきである。
本発明で、不織布層(II層)における熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性合成長繊維であることが好ましい。熱可塑性合成長繊維で構成される不織布は、マイクロスリット品でも、十分な強度を有することができる。また熱可塑性合成長繊維で構成される不織布は、スリット時、及び外部からの摩擦等を受けた際に、より糸くずが出難く、磨耗性にも強い。この結果、固体電解コンデンサ素子の製造工程がより安定し、高性能のコンデンサ素子が得られる。熱可塑性合成長繊維の例としては、例えば後述で列挙する結晶性樹脂で構成される長繊維が挙げられる。一方、熱可塑性樹脂繊維として短繊維を用いる場合、例えば、上記結晶性樹脂と、上記結晶性樹脂の融点より低い融点の熱可塑性樹脂とを混合して用いることができる。混合は単一の樹脂から構成される繊維を混ぜても良いし、1本の繊維中に2種以上の融点の異なる樹脂が含まれていても良い。例えば芯と鞘とから成り、鞘の熱可塑性樹脂の融点が芯の熱可塑性樹脂の融点より低い鞘芯糸を用いることができる。例えば、芯がPET、鞘が共重合PETの鞘芯糸が使用できる。
本発明において、不織布層(II層)における熱可塑性樹脂としては、融点180℃以上の結晶性樹脂が好ましい。融点が180℃以上であれば、コンデンサを製造する工程での各熱履歴(乾燥、炭化、熱歪を除く工程等の、コンデンサ素子製造における熱がかかる処理)を経ても、安定したセパレータ構造を形成できる。また、融点が180℃以上であれば、本発明の固体電解コンデンサを、コンデンサ部品として回路基板上に実装する場合に、一般のはんだづけ又はリフローはんだで掛かる熱に対してコンデンサ素子構造が安定に保たれ、コンデンサの性能劣化が防止され、不良率が低減される。これらの工程安定性は、固体電解コンデンサ素子を製造する工程、及び部品を実装する条件に応じて、当該関係者が適宜設計する。上記の意味で、上記の結晶性樹脂である熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは220℃以上、より好ましくは240℃以上であり、また好ましくは350℃以下である。特に、融点180℃以上の結晶性樹脂である場合、上記に挙げるような効果が良好に発揮される。
なお、本明細書で記載する「結晶性樹脂」とは、不織布の状態で示差走査熱量計(DSC)にて測定された結晶化度が10%以上である樹脂を意味する。DSCによる結晶化度の測定は、サンプル重量5mg、昇温速度10℃/min、走査温度50〜300℃の測定条件として、融解熱(ΔH)を算出し結晶化度(Xc)を求める。Xcは次式より求める。
Xc=(ΔHTm−ΔHTcc)/(ΔH0)*100 (1)
ここで、Xc:結晶化度(%)、ΔHTm:融点での融解熱(J/g)、ΔHTcc:結晶化熱量(J/g)、ΔH0:樹脂の結晶化度100%時の融解熱の文献値(J/g)である。
本発明で、融点180℃以上の結晶性樹脂の具体的な例としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PET、PBT、PTT等)及びその誘導体;N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体;ポリオキシメチレンエーテル系樹脂(POM等)、PEN、PPS、PPO、ポリケトン樹脂、PEEK等のポリケトン系樹脂;TPI等の熱可塑性ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体又は混合物も好ましい。実用強度に影響の無い範囲においては、少量のポリオレフィン等低融点成分を加えて改質を行っても構わない。なお、上記の具体例のうち、N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体は、合成樹脂としては、吸水率が大きいため、吸水性の観点では、ポリアミド系樹脂及びその誘導体よりも、他の樹脂の方が有利である。また、繊維及び不織布を製造する際の容易性、汎用性及びコストの観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、及びPEEK系樹脂がより好ましい。また、誘電率及びtanδ等の電気特性の観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、PPO系樹脂、及びPEEK系樹脂が好ましい。コンデンサ素子である部品中に残ることを考慮すると、より低ESRを実現するためには電気特性が良好な樹脂を選定することが好ましい。不織布層(II層)を形成するために用いる熱可塑性樹脂は、本発明の固体電解コンデンサの使用目的に合わせて適宜選択する。
本発明において、不織布層(I層)の構成素材は、繊維径0.1〜4μmを有する極細繊維であれば制限はなく、熱可塑性樹脂であってもよいし、例えば、セルロースフィブリル等熱可塑性の無い素材であってもよい。好適には前述の不織布層(II層)と同様に熱可塑性樹脂である。具体的には、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PET、PBT、PTT等)及びその誘導体;N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体;ポリオキシメチレンエーテル系樹脂(POM等)、PEN、PPS、PPO、ポリケトン樹脂、PEEK等のポリケトン系樹脂;TPI等の熱可塑性ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体又は混合物も好ましい。より好適には前述の不織布層(II層)と同様に吸水率の低い熱可塑性樹脂である。また、繊維及び不織布を製造する際の容易性、汎用性及びコストの観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、及びPEEK系樹脂がより好ましい。また、誘電率及びtanδ等の電気特性の観点では、PET系樹脂、PPS系樹脂、PPO系樹脂、及びPEEK系樹脂が好ましい。コンデンサ素子である部品中に残ることを考慮すると、より低ESRを実現するためには導電性高分子と密着性の高い樹脂を選定することが好ましい。不織布層(I層)を形成するために用いる熱可塑性樹脂は、本発明の固体電解コンデンサの使用目的に合わせて適宜選択する。
積層不織布を構成する不織布層(I層)及び不織布層(II層)を形成する樹脂は、同じ物質でも、異なる物質でもよいが、積層不織布をより均一に形成する目的のためには、同じ物質であることが好ましい。I層及びII層を同じ物質の樹脂で形成する場合、より均一な繊維の間隙を持つ不織布を形成しやすいため、このような不織布をセパレータとして使用した場合、均一で緻密な固体電解質層を形成しやすい。
不織布は、繊維と、繊維の間隙である空隙とから構成されるが、空隙の形状は一般にランダムである。例えば、一般のスパンボンド不織布(繊維径が、15μm〜40μm)において、平均的な孔径分布は30μmを超え、また、最大孔径は50μmを超える。即ち、不織布内には概略直径が50μm以上の空隙が含まれることになる。特に、目付けが小さく、厚みが小さい不織布の場合は、最大数mm以上の孔径を持つ部分もある。孔径サイズが大きすぎると、その孔の部分に、導電性高分子の材料となる液体が入り込んでも液膜を形成することができず、固体電解質層を形成するときに、その孔の部分は、電解質層が存在しない部分となる。このため、このような大きい孔径サイズは、コンデンサ素子の性能劣化(内部抵抗の増加、及び容量不足)に繋がる。特に、巻回型のセパレータの幅は、細い場合は、数ミリメートルとなり、孔径が大きいセパレータは、性能が上がらないばかりか、不良率の増加に繋がっていた。
この意味で、本発明において用いる積層不織布は、極細繊維で構成される不織布層(I層)を有することで、繊維同士の距離が小さくなり、即ち、孔径が小さくなり、均一な固体電解質を形成しやすい。この意味で、本発明における積層不織布の平均孔径は、0.3μm以上20μm以下であることが好ましい。該平均孔径は、より好ましくは1μm〜15μmである。平均孔径が0.3μm以上であれば、化成液、及び固体電解質の材料となる液体(導電性高分子分散液等)が、孔内に入りやすく、高性能の耐電圧、高容量、及び低内部抵抗を実現できる。また20μm以下であれば、繊維間距離が適度で、導電性高分子となる液膜が張りやすく、結果的に繊維上に良好な導電性高分子層を形成できるため、ショートが少なく、高性能の高容量及び低内部抵抗のコンデンサ素子を実現できる。なお、平均孔径が0.3μm以上であれば、化成液、及び導電性高分子の材料となる液体(が浸透する時間が長くなりすぎず、コンデンサの生産時間を効率よく設計することができる。
本発明において用いる各不織布層の製造方法は限定されない。しかし、不織布層(II層)の製法は、好ましくはスパンボンド法、乾式法、湿式法等であることができる。また、極細繊維不織布層(I層)の製法は、好ましくは極細繊維を用いた乾式法、湿式法等の製法、又はエレクトロスピニング、メルトブロウン法等であることができる。極細繊維不織布層を容易かつ緻密に形成できるという観点から、不織布層(I層)は、特に好ましくはメルトブロウン法で形成される。また繊維は、叩解、部分溶解等により割繊又はフィブリル化を実現した上で不織布の製造のために用いてもよい。
極細繊維で構成される不織布層(I層)と熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)とを有する複数層を積層して積層不織布を形成する方法としては、例えば、熱的結合による一体化による方法、高速水流を噴射して三次元交絡させる方法、粒子状又は繊維状の接着剤により一体化させる方法等が挙げられる。中でも、熱的結合による一体化で積層不織布を形成することが好ましい。熱的結合による一体化の方法としては、熱エンボスによる一体化(熱エンボスロール方式)、及び高温の熱風による一体化(エアースルー方式)が挙げられる。熱的結合による一体化は、不織布の引張強度と曲げ柔軟性とを維持し、耐熱安定性を維持することが出来るという観点から好ましい。
熱的結合による一体化は、バインダーを用いることなく、複数の不織布層を有する積層不織布を形成できる点でも好ましい。繊維同士を一体化して積層不織布を形成する場合に、バインダーを用いると、そのバインダーがコンデンサ素子に残る。バインダーがコンデンサ素子性能を劣化させないものであれば、特に問題はないが、バインダーによってコンデンサ性能の劣化が促進する場合には、バインダーを除去する工程が新たに必要となる。また、バインダーを除去する工程が必要な場合は、水、アルコール等の揮発性溶剤を通常使用するため、この溶剤が素子中に残る懸念が発生する。またバインダーは、良好な金属酸化皮膜層の形成及び固体電解質層の形成に悪影響を与えていた。即ち、バインダーが残ると金属箔の表面にバインダーが吸着することによって、酸化皮膜層にピンホールができたり、酸化皮膜層の厚みが不均一になったりする傾向があった。これらは、耐電圧の低下又はショートにつながっていた。また、バインダーの混入により、固体電解質層の形成が阻害されると、容量の低下が内部抵抗の増加につながっていた。以上の理由で、熱のみにより一体化された、バインダーを用いない積層不織布が好ましい。
さらに、積層不織布を形成する工程の合理性の観点からも、熱のみによる一体化は、よりコストを低減することができるため、好ましい。
熱的結合による一体化は、積層不織布を構成する2層以上の不織布層を熱接着することにより実現できる。熱接着工程は、例えば、熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点よりも50〜120℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmで、フラットロールを用いての接合により行うことができる。熱接着工程における線圧が100N/cm未満であると、十分な接着を得て十分な強度を発現することが難しい場合がある。また、また1000N/cmを越えると、繊維の変形が大きくなり、見掛け密度が高くなって、本発明による効果が得られにくくなる場合がある。
最も好ましいのは、スパンボンド不織布層と、メルトブロウン不織布層及び/又はスパンボンド不織布層とを順次製造し、これらを積層して、エンボスロール又は熱プレスロールで圧着する方法である。この方法は、同一素材で積層不織布を形成できること、及び連続一体化した生産ラインで生産できることから、低目付けで均一な不織布を得ることを目的とした場合好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)を用いて1層以上のスパンボンド不織布層をコンベア上に紡糸し、その上に熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)を用いてメルトブロウン法で、繊維径0.1〜4μmの極細繊維不織布層を1層以上吹き付け、その後、熱可塑性樹脂(好ましくは熱可塑性合成樹脂)を用いた、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布)を1層以上積層し、次いで、エンボスロール又はフラットロールを用いてこれらの層を圧着することにより一体化する方法が好ましい。
上記の製造方法を用いると、熱可塑性樹脂繊維で構成される層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)の上に、メルトブロウン法による極細繊維不織布層が直接吹き付けられるので、メルトブロウン法による極細繊維を、熱可塑性樹脂繊維で構成される層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内に侵入させることができる。このようにして、メルトブロウン法による極細繊維が熱可塑性樹脂繊維で構成される層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内に侵入して固定されることにより、積層不織布の構造自体の強度が向上するだけでなく、極細繊維不織布層の外力による移動が生じ難くなるので、熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(好ましくは熱可塑性合成長繊維不織布層)内の空隙を極細繊維層により均一化することができる。これにより、上記で述べた適度な繊維間距離の確保及び適度な孔径分布を有する積層不織布の形成が容易になる。即ち、上記の方法によれば、積層不織布において、I層の一部がII層にもぐり込みながら、かつ連続したI層を維持できるため、不織布の面内での、導電性高分子の材料となる液体の拡散が均一となる。
メルトブロウン法で形成される繊維(即ちメルトブロウン繊維)の結晶化度は、一般的なメルトブロウン紡糸条件で、5〜40%の範囲に調整することが可能である。なお、結晶化度は、例えば上述のDSCを用いた方法で評価できる。具体的には、積層不織布を形成するポリマーは、o−クロロフェノール(OCP)を溶媒として用いたときに、濃度0.01g/mL、温度35℃の恒温水槽中の粘度管を用いて測定した溶液粘度(ηsp/c)が好ましくは0.2〜0.8、さらに好ましくは0.2〜0.6となるような樹脂を用いることにより、上記結晶化度を実現できる。本発明において用いる不織布においては、湿潤時の寸法安定性が高いことが好ましいという観点から、PET樹脂及びPPS樹脂から選択される樹脂を用いてメルトブロウン繊維を構成し、かつ該樹脂の上記溶液粘度(ηsp/c)が0.2〜0.8であることが好ましい。メルトブロウン繊維の結晶化度は10〜40%とすることがより好ましい。
本発明においては、積層不織布がカレンダー加工されていることが好ましい。この場合、積層不織布に、より均一な構造を与えることができる。具体的には、前述の熱接着工程を用いて繊維を接合した後、カレンダー加工処理として、前記の熱接着温度より10℃以上高く且つ熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点よりも10〜100℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでカレンダー処理する。上記のようなカレンダー加工により、積層不織布は良好な強度が得られ、見掛け密度を特に好ましい範囲(例えば本明細書の実施例の記載の範囲内)とすることができる。
カレンダー加工処理温度が、熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点より低く且つその差が10℃未満である場合は、見掛け密度が高くなり過ぎる傾向があり、また、熱可塑性樹脂繊維(好ましくは熱可塑性樹脂長繊維)の融点より低く且つその差が100℃を越える場合は、十分な強度が得られにくい上に、表面に毛羽立ちが生じて、表面平滑性が損なわれ、コンデンサ素子として均一な構造になりにくい傾向がある。
カレンダー加工処理における線圧が100N/cm未満であると、十分な接着が得られにくく、十分な強度が発現されにくい傾向がある。また、1000N/cmを超えると、繊維の変形が大きくなり、見掛け密度が高くなって、本発明による効果が得られ難くなる場合がある。
本発明で、積層不織布が親水化加工されることもより好ましい態様である。積層不織布が親水化加工されると、化成液、及び固体電解質を形成するためのモノマー等を不織布により含浸させやすくなるため、より高性能のコンデンサ素子を製造できる。親水化加工としては、物理的な加工方法:即ち、コロナ処理又はプラズマ処理による親水化の他、化学的な加工方法:即ち、表面官能基の導入(酸化処理等で、スルホン酸基、カルボン酸基等を導入する)、水溶性高分子(PVA、ポリスチレンスルホン酸、及びポリグルタミン酸)並びに界面活性剤(ノニオン性、陰イオン性、陽イオン性、及び両イオン性の界面活性剤)等の処理剤による加工、等が採用される。処理剤の使用量、官能基導入量等は、固体電解質を形成するためのモノマー等との親和性で選ぶことができる。但し、親水化加工された積層不織布が将来的に水分を含みやすくなる可能性があるため、加工量(即ち、積層不織布の質量に対する、上記の処理剤及び導入される官能基の質量)は、3質量%以下であることが好ましい。
(導電性高分子)
本発明において、セパレータを構成する導電性高分子は、不織布の繊維表面に被覆された状態で存在することが好ましい。典型的には、導電性高分子を与える重合性化合物であるモノマー(即ち電解質モノマー)、又は、導電性高分子の微粒子を分散させた導電性高分子分散水溶液若しくは導電性高分子溶液等の液体を使用できるが、繊維表面に導電性高分子が被覆された状態を形成する為には、導電性高分子分散液または導電性高分子溶液の状態でコンデンサ素子に含浸させる方法がより好ましい。
電解質モノマーとしては、例えば、エチレンジオキシチオフェン(例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ピロール、チアゾール、アセチレン、フェニレンビニレン(例えばパラフェニレンビニレン)、アニリン、フェニレン、チオフェン、イミダゾール、フラン等、及びこれらの置換誘導体、等の重合性化合物であるモノマーが挙げられる。また、導電性高分子としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリチアゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン(例えば、ポリ−p−フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリビニレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリイミダゾール、ポリフラン等、及びこれらの誘導体、等の電子共役系高分子が挙げられる。また、これらの電子共役系高分子にドーパントを付与する物質を含んでいる導電性高分子が好ましい。また、それぞれの導電性物質に応じて、それを固体化するための酸化剤、重合剤、又は錯体形成剤を適宜選択して使用でき、均一な固体電解質を形成する目的でそれぞれ使用される。また、より好ましい態様においては、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸又はポリビニルスルホン酸と、上記の導電性高分子との重合体を形成し、液中に分散させ、これを不織布に含浸して、導電性高分子層を形成する。例えば、好ましい態様においては、3,4−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸又はポリビニルスルホン酸との重合体の分散液を不織布に含浸し、セパレータ繊維上に均一に導電性高分子層が形成され、より導電性を向上させることができる。本発明では、導電性高分子を形成するための材料は、限定されず、より均一で高導電性の導電性高分子が形成されるように当業者が選定する。
例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸(分子量;約150,000)からなる導電性高分子分散液をコンデンサ素子に含浸し、分散液から引き上げた後に120℃で乾燥する方法が特開平2010−245150に記載されている。
[陽極箔及び陰極箔]
本発明において用いる陽極箔及び陰極箔は、通常金属箔素材である。コンデンサとしての性能を良好に発揮する目的で、弁作用を有する金属を用いることが好ましい。弁作用を有する金属としては、通常用いられるものを使用できる。特にアルミニウム箔及びタンタル箔が好ましい。
陽極及び陰極に使用される金属箔は、良好なコンデンサ性能を得るという観点から、電極の面積を大きくするためにエッチングされていることがより好ましい。
特に、陽極箔としては、誘電体酸化皮膜層が形成された箔を用いる。これにより良好なコンデンサ性能が得られる。
即ち、本発明において用いる電極箔としては、コンデンサ性能を向上させる目的のために、より良い箔を選定すればよい。
陽極箔及び陰極箔の寸法は、製造する固体電解コンデンサの仕様に応じて任意である。セパレータの寸法も任意であるが、両極の電極箔の寸法に応じて、陽極箔及び陰極箔の寸法よりやや大きい幅寸法の物を用いることが好ましい。これにより陽極箔と陰極箔とが直接接することなくセパレータに阻まれるので、ショートする恐れが少なくなる。巻回工程では、セパレータとなる素材には、引張り張力がかかる。この工程でかかる張力下での、セパレ−タの幅方向の寸法安定性が劣っていると、すなわち張力がかかることにより幅方向の寸法が短くなる部分があると、性能劣化及び不良率増加に繋がる。
陽極箔は、表面に誘電体酸化皮膜層を有する。誘電体酸化皮膜層は、通常、陽極箔の化成処理による表面の誘電体化によって形成されている。化成処理は、通常用いられる化成液、例えばホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して、誘電体となる酸化皮膜層を金属箔表面に生成することによって実現できる。なお、本発明においては、陽極箔と陰極箔とセパレータとを巻回した後、電極箔の端部を誘電体化(酸化処理)するために、及びより均一な酸化皮膜層を形成するために、再化成を行ってもよい。再化成は、通常用いられる化成液、例えば、ホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して、誘電体となる酸化皮膜層を金属箔表面に生成することによって実現できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、測定方法及び評価方法は次の通りである。特記がない限り、不織布において、長さ方向とはMD方向(マシン方向)であり、幅方向とは該長さ方向と垂直の方向である。
(1)目付け(g/m2
JIS L−1906に規定の方法に従い、縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅方向1m当たり3箇所、長さ方向1m当たり3箇所の、計1m×1m当たり9箇所採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
(2)厚み(mm)
JIS L−1913に規定の厚み計を用い、10枚重ねで流れ方向に2個所、幅1m当たり5箇所の厚みを測定し、その平均値を求めた。荷重は9.8kPaで行った。
(3)見掛け密度(g/cm3
上記(1)にて測定した目付け(g/m2)、上記(2)にて測定した厚み(μm)を用い、以下の式により算出した。
見掛け密度=(目付け)/(厚み)
(4)繊維径(μm)
試料(不織布)の各端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片について、マイクロスコープで繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料を構成する繊維の繊維径とした。
(5)平均繊維径(μm)
試料(不織布)中の各繊維種(1、2・・・n)にて構成する材料の密度ρ、ρ・・・ρ(g/cm)、目付けm、m・・・m(g/m2)、繊維径d、d・・・d(μm)より、繊維長L、L・・・L(m)を求め、不織布を構成する全ての繊維長の合計である総繊維長Lall(m)を求め、下記の式に従い、平均繊維長Lavgを計算した。
=4m/(ρ×π×d )×10 (x=1、2・・・n)
all=L+L+・・・+L
avg=(d×L+d×L+・・・d×L)/Lall
(6)引張強力(N/1.5cm)
試料(不織布)の各端部10cmを除き、幅1.5cm×長さ20cmの試験片を、1m幅につき5箇所切り取った。試験片が破断するまで荷重を加え、MD方向の試験片の最大荷重時の強さの平均値を求めた。
(7)開孔径分布(平均流量孔径及び最大孔径)
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用いた。測定には浸液にPMI社製のシルウィックを用い、試料を浸液に浸して充分に脱気した後、測定した。
本測定装置は、フィルターを試料として、あらかじめ表面張力が既知の液体にフィルターを浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態からフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力とから計算された細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式を用いる。
d=C・r/P
{式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径、r(単位:N/m)は液体の表面張力、P(単位:Pa)はその孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数である。}。
上記式より、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(濡れ流量)を測定する。初期の圧力では、最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加する。最も小さな細孔の液膜が破壊されたときの圧力における流量が、乾いた状態の流量(乾き流量)と一致する。
本測定装置による測定方法では、ある圧力における濡れ流量を、同圧力での乾き流量で除した値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。この平均流量孔径を、本発明の積層不織布の平均孔径とした。
本発明の積層不織布の最大孔径は、不織布を上記フィルター試料として測定し、累積フィルター流量が50%の−2σの範囲、すなわち、累積フィルター流量が2.3%となる圧力で破壊される液膜の孔径とした。上記測定方法にて、各サンプルについて3点測定を行い、その平均値として平均流量孔径と最大孔径とを計算した。
(8)II層の繊維間距離(μm)
試料(不織布)の各端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片表面をSEMで撮影し、1mm角の視野の中で、II層の繊維で囲まれた、下層にI層が観察できる多角形を指定した。多角形の面積順に最大から10点を選出し、各多角形の面積S1.S2・・・S10を求め、下記式より繊維間距離R1、R2・・・R30を求め、10点の長さを平均してII層の繊維間距離とした。なお、不織布の両面に各々I層がある場合は、各面の繊維間距離を測定した。
=(4S/π)0.5 (x=1,2、・・・10)
(9)体積抵抗
測定器として日置電気株式会社製 ディジタル超絶縁/微小電流計DSM−8104を用い、100V60秒 n=3にて測定を行い、不織布試料の体積抵抗(Ωcm)とした。
(10)表面磨耗性
試料(不織布)の幅方向に長い試験片(幅約30cm×長さ3cm)を、1m幅につき5点採取し、JIS L−0849「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」に記載の摩擦試験機II形(学振形)を用いて測定を行った。試験台上と摩擦子との双方に測定面が接触する様に試験片を取り付け、30回往復摩擦し、摩擦後の不織布の外観検査を以下の基準で実施した。なお、表2中、「表」とは表1中の各実施例及び比較例における層構成の最左に示している層を意味し、「裏」とは表1で各実施例及び比較例における層構成の最右に示している層を意味する。
5級:不織布の表面には、変化がない。
4級:不織布の表面に、ピリングはないが、表面に、1本ずつの糸がたち、表面がわずかに荒れている。
3級:長さ0.5cm未満のピリンングがある。又は、全体に毛羽が浮いている。
2級:長さ1cm以上のピリングがある。又は、摩擦面に綿状物が浮いていたり、若しくは摩擦面が磨耗され磨り減っている。
1級:不織布の一部が破れている。
(11)融点(℃)
下記の測定器にて測定を行い、融解ピークの導入部分における変曲点の漸近線とTgより高い温度領域でのベースラインが交わる温度を融点とした。
示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製のDSC210)を使用し、下記の条件で測定した。
測定雰囲気:窒素ガス50ml/分、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:25〜300℃。
<コンデンサの初期特性の測定方法>
(12)巻回性
コンデンサの巻回装置を用いて陽極箔、セパレータ、陰極箔、セパレータの4枚を重ねて巻回し、正常に巻回出来るかを、A〜Dで判定した。
A:全く問題なし
B:巻回装置の条件を調整すれば問題なし
C:巻回装置の条件を調整しても巻回工程で不良品が発生する
D:不良品が多く発生する
(13)静電容量
測定周波数120HzでLCRメータを用いて測定した。
(14)容量出現率
誘電体酸化皮膜層形成後の素子について30質量%の硫酸水溶液中にて測定した静電容量に対する、作製された固体電解コンデンサの実際の静電容量を、百分率(%)で示した。
(15)tanδ
測定周波数120HzでLCRメータを用いて測定した。
(16)もれ電流
コンデンサと直列に1000Ωの保護抵抗器を接続し、定格電圧を印加し、5分後に測定した。
(17)ESR
測定周波数100kHzでLCRメータを用いて測定した。
(18)ショート率(%)
定格電圧を1時間連続的に印加(雰囲気温度105℃)することによりエージングを行った後の、ショートしたコンデンサの比率を百分率(%)で示した。
(19)はんだ耐熱性
温度条件:余熱温度150℃120秒、ピーク温度240℃後のサンプルについて(12)〜(17)の測定、並びに外形の寸法変化及び変形を観察し、A〜Dで判定した。
A:全く問題なし
B:一部測定値が変化するが定格内
C:一部不良品が発生する
D:不良品が多く発生する
〔実施例1〜13〕
以下の方法により、実施例1〜13の積層不織布を作製し、性能評価を実施した。
熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布層(II層)を形成した。具体的には、汎用的なPET(熱可塑性樹脂として)の溶液(OCPを溶媒として用い、温度35℃で測定した溶液粘度:ηsp/c=0.67を有する)(溶液粘度は温度35℃の恒温水槽中の粘度管で測定した。以下同じ。)を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、移動する捕集ネット面に向けて押し出し、紡糸速度4500m/分で紡糸した。次いで、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を十分に開繊させ、熱可塑性樹脂長繊維ウェブを捕集ネット上に形成した。繊維径の調整は、牽引条件を変えることにより行った。
次いで、極細繊維不織布層(I層)として、PETの溶液(OCPを溶媒として用い、温度35℃で測定した溶液粘度:ηsp/c=0.50を有するもの)を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下で、メルトブロウン法により紡糸して、上記の熱可塑性樹脂長繊維ウェブ上に吹きつけた。この際、メルトブロウンノズルから熱可塑性樹脂長繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径及び結晶化度の調整は、加熱空気量を調整することにより行い、熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)/極細繊維で構成される不織布層(I層)からなる積層ウェブを得た。
更に、上記で得た積層ウェブ上に直接、上記の不織布層(II層)としての熱可塑性樹脂長繊維ウェブの形成と同様の方法で、不織布層(II層)として、熱可塑性樹脂長繊維を所定の繊維径及び目付けになるように積層した。これにより、熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)/極細繊維で構成される不織布層(I層)/熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層(II層)、からなる積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、表1に示す条件でフラットロールにて熱接着した後、コロナ放電加工(親水化加工として)を実施し、カレンダーロールにて、所望の厚みとなるように厚みを調整するとともに見掛け密度を調整し、積層不織布を得た。上記の基本条件の下、加工条件を変え、各種不織布を得た。(実施例1〜13)。得られた積層不織布の構成を表1に、そして積層不織布の性能結果を表2に示す。
コンデンサ素子及び部品の製法は以下の通りである。上記の各積層不織布を6mmにマイクロスリットし、これを、化成処理が施された陽極箔(アルミ箔)と、陰極箔となるアルミ箔との間に介在させて、これらを巻回し、コンデンサ素子を作製した。このコンデンサ素子を、アジピン酸アンモニウム水溶液で再化成した。
次いで、このコンデンサ素子を、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸(分子量;約150,000)からなる導電性高分子分散液をコンデンサ素子に含浸し、分散液から引き上げた後に120℃で乾燥して、ポリエチレンジオキシチオフェンの導電性高分子をセパレータ繊維上と電極箔間に形成した。このようにして得られた素子を、その外周に外装樹脂を被覆し、加硫ブチルゴムの封口部材とともに、アルミニウム合金製の外装ケースに封入した後、封口し、固体電解コンデンサを作製した。得られたコンデンサのサイズは、直径φ8mm、縦寸法10mmとなる製品を作製した(定格電圧;35V、)。最後に定格電圧を1時間連続的に印加(雰囲気温度105℃)することによりエージングを行った。
これらの手順で得られた固体電解コンデンサの初期特性を測定した。その結果を表3に示す。なお、表3に示した実施例及び比較例の試験は、コンデンサ個数20個の平均とした。
〔実施例14、15〕
実施例1〜13とは異なり、2層構造(II層及びI層)の積層不織布とし、その他は、実施例1〜13と同様の条件を用いた。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表1、表2に示す。また、コンデンサ性能を、表3に示す。
〔実施例16〕
熱可塑性樹脂としてPPS(ポリプラスチック社製フォートロン)を用いた。不織布を形成する条件は、以下の通りである。
II層:樹脂の溶融粘度:70g/10分(キャピラリーレオメーターを用いて測定、測定条件:荷重5kg、温度315.6℃)、紡糸温度:320℃、紡糸速度:8000m/分。
I層:樹脂の溶融粘度:670g/10分(上記と同様の方法で測定、測定条件:荷重5kg、温度315.6℃)、紡糸温度:340℃、加熱空気温度:390℃、加熱空気量:1000Nm3/hr/m。
また、フラットロールによる熱接着条件は、線圧:260N/cm、ロール温度:上/下=170℃/170℃とし、カレンダー条件は、線圧:350N/cm、ロール温度:上/下=235℃/235℃とした。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表1、表2に示す。その他の条件は、実施例1と同様にした。また、コンデンサ性能を、表3に示す。
〔実施例17〕
不織布層(II層)として、繊維径16μm、繊維長5mmのco−PET/PET鞘芯構造の短繊維を抄造法にてネット上に11g/m2となるように捕集し、脱水乾燥後、エアースルー方式(180℃、5m/分)で繊維同士を融着させ、短繊維ウェブを得た。次いで、その上に中間層として、実施例1と同様に、不織布層(I層)となるメルトブロウン繊維を吹きつけて形成し、さらに、その上に不織布層(II層)として、上記の不織布層(II層)と同じ構成の不織布を重ねた。以上により、3層からなる積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、フラットロール及びカレンダーロールにて熱接着し、積層不織布を得た。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表1、表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。なお表1中、鞘芯構造の短繊維の融点は、鞘/芯の順で記載している(以下同様である)。
〔実施例18〕
不織布層(II層)として、繊維径10μm、繊維長5mmのPET短繊維を抄造法にてネット上に11g/m2となるように捕集し、脱水乾燥後、繊維が散逸しない程度に、フラットロールにて圧着して短繊維ウェブを得た。次いで、その上に中間層として、実施例1と同様に、不織布層(I層)となるメルトブロウン繊維を吹きつけて形成し、さらに、その上に不織布層(II層)として、実施例1と同じ構成の熱可塑性樹脂長繊維ウェブを積層した。得られた積層ウェブを、フラットロール及びカレンダーロールにて熱接着し、積層不織布を得た。積層不織布を形成する条件及びその性能は、それぞれ、表1、表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔実施例19〕
不織布層(II層)として、繊維径10μm、繊維長5mmのPET短繊維を抄造法にてネット上に11g/m2となるように捕集し、脱水乾燥後、繊維が散逸しない程度に、フラットロールにて圧着して短繊維ウェブを得た。次いで、その上に中間層として、実施例1と同様に、不織布層(I層)となるメルトブロウン繊維を吹きつけて形成し、さらに、その上に不織布層(II層)として、実施例17と同じ構成の短繊維ウェブを積層した。得られた積層ウェブを、フラットロール及びカレンダーロールにて熱接着し、積層不織布を得た。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表1、表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔実施例20〕
熱可塑性樹脂としてPP(日本ポリプロ社製)を用いた。不織布を形成する条件は、以下の通りである。
II層:樹脂の溶融粘度:43g/10分(上記と同様に測定、測定条件:荷重2.1kg、温度230℃)、紡糸温度:230℃、紡糸速度:3300m/分。
I層:樹脂の溶融粘度:1500g/10分(上記と同様の方法で測定、測定条件:荷重2.1kg、温度230℃)、紡糸温度:295℃、加熱空気温度:320℃、加熱空気量:1050Nm3/hr/m。
また、フラットロールによる熱接着条件は、線圧:260N/cm、ロール温度:上/下=90℃/90℃、カレンダー条件は、線圧:350N/cm、ロール温度:上/下=120℃/120℃とした。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表1、表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
[実施例21]
まず、実施例1と同様の方法で極細繊維不織布層(I層)を作製し、次にI層上に実施例1と同様の方法で熱可塑性樹脂長繊維不織布層(II層)を積層した。さらにその上に実施例1と同様の方法で極細繊維不織布層(I層)を積層した。これにより、極細繊維不織布層(I層)/熱可塑性樹脂長繊維不織布層(II層)/極細繊維不織布層(I層)からなる3層の積層ウェブを得た。得られた積層ウェブを、表4に示す条件でフラットロールにて熱接着した後、コロナ放電加工(親水化加工として)を実施し、カレンダーロールにて、所望の厚みとなるように厚みを調整するとともに見掛け密度を調整し、積層不織布を得た。その他の条件は、実施例1と同様にした。積層不織布を形成する条件及びその性能を、それぞれ、表2、表4に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例1、2〕
実施例1のII層と同様のPETを用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメントの長繊維群を、移動する捕集ネット上に向けて押し出し、紡糸速度4500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分に開繊をさせ、熱可塑性樹脂長繊維ウェブを捕集ネット上に形成した。繊維径の調整は、吐出量を変えることにより行った。その後、得られたウェブを、表3に示す条件でフラットロールにて熱接着した後、コロナ放電加工を実施し、カレンダーロールにて、所望の厚みとなるように厚みを調整するとともに見掛け密度を調整し、不織布層(II層)のみからなる不織布を得た。得られた不織布の構成を表1に、及び不織布の性能結果を表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例3〕
不織布として、旭化成せんい製のスパンボンド不織布(E05025、繊維径16μm、目付け25g/m2)を用い、不織布層(II層)のみからなる不織布の例とした。不織布の構成を表1に、その性能結果を表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例4〕
極細繊維不織布層を、実施例1のI層と同様の樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下で、メルトブロウン法により紡糸して、ネット上に吹きつけることによって形成した。この際、メルトブロウンノズルからウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/秒に設定した。繊維径及び結晶化度の調整は、吐出量を変えることにより行い、極細繊維不織布層(I層)のみからなる不織布を得た。不織布の構成を表1に、その性能結果を表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例5〕
極細繊維不織布層として、比較例4と同様の方法で、得られる平均繊維径が0.7μmの、極細繊維不織布層(I層)のみからなる不織布を得た。不織布の構成を表1に、その性能結果を表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例6〕
繊維径16μm、繊維長5mmのPET短繊維を、抄造法にて、25g/m2となるようにネット上に捕集してウェブを得た。なお、この際、繊維同士がばらけないように、また不織布強度を保つために、バインダーとしてポリビニルアルコール(溶解温度70℃)を用い、全体の目付け量を33g/m2とした。このウェブを脱水乾燥後、カレンダーロールにて熱圧着して、不織布層(II層)のみからなる不織布を得た。得られた不織布及びその評価結果を表1、2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例7〕
繊維径10μm、繊維長5mmのPET短繊維を、抄造法にて、25g/m2となるようにネット上に捕集してウェブを得た。なおこの際、繊維同士がばらけないように、また不織布強度を保つために、バインダーとしてポリビニルアルコール(溶解温度70℃)を用い、全体の目付け量を33g/m2とした。このウェブを脱水乾燥後、カレンダーロールにて熱圧着して、不織布層(II層)のみからなる不織布を得た。得られた不織布及びその評価結果を表1、2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例8〕
比較例6と同様の不織布を用い、コンデンサを形成する工程で、バインダーを除去する工程を強化し(90℃の温水浴に10分浸漬し、その後100℃で5分乾燥する、という工程を3回繰り返した)、その他は比較例6と同様の工程で、コンデンサを得た。コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例9〕
比較例7と同様の不織布を用い、コンデンサを形成する工程で、バインダーを除去する工程を強化し(90℃の温水浴に10分浸漬し、その後100℃で5分乾燥する、という工程を3回繰り返した)、その他は比較例7と同様の工程で、コンデンサを得た。コンデンサ性能を表3に示す。
〔比較例10〕
不織布として、日本高度紙製のレーヨン繊維からなる湿式不織布(RCE3040、繊維径8μm、目付け40g/m2)を用いた。不織布の構成を表2に、その性能結果を表2に示す。また、コンデンサ性能を表3に示す。
[比較例11]
実施例1と同様の素子を用いて再化成まで行い、エチレンジオキシチオフェンモノマー25%、エタノール75%の液に含浸し、50℃でエタノールを揮発させ、次いでパラトルエンスルフォン酸第二鉄55%、ブタノール45%の液に含浸し、30℃から180℃まで段階的に昇温してコンデンサ素子を得た。このようにして得られた素子を、その外周に外装樹脂を被覆し、加硫ブチルゴムの封口部材とともに、アルミニウム合金製の外装ケースに封入した後、封口し、固体電解コンデンサを作製した。得られたコンデンサのサイズは、直径φ8mm、縦寸法10mmとなる製品を作製した(定格電圧;35V、定格静電容量;30μF)。最後に定格電圧を1時間連続的に印加(雰囲気温度105℃)することによりエージングを行った。コンデンサの性能を表3に示す。
以上の結果を以下の表1〜4に示す。
なお、表1と表4において、PETはポリエチレンテレフタレート、MBはメルトブロウンウェブ、SBはスパンボンドウェブ、SLはスパンレースウェブを表す。
表3から明らかなように、本発明の実施例に係る固体電解コンデンサは、比較例のものに比べてコンデンサ性能の少なくともいずれかの項目において優れた性能を示している。
本発明のコンデンサ用セパレータ、及びこれを用いた固体電解コンデンサは、各種電子機器の分野において好適に利用される。
1 セパレータ
2 陽極箔
3 陰極箔
4 リード線
5 リード線
10 コンデンサ素子

Claims (11)

  1. 不織布と導電性高分子から構成されたコンデンサ用セパレータであって、該不織布は、繊維径が0.1〜4μmの極細繊維不織布層(I層)と、繊維径が6〜30μmである熱可塑性樹脂からなる不織布層(II層)の少なくとも2層を含む積層不織布であり、該I層及び/又はII層の繊維表面の一部又は全部が導電性高分子で被覆されている前記セパレータ。
  2. 前記積層不織布のタテ方向強度が10N/15mm巾以上である、請求項1に記載のコンデンサ用セパレータ。
  3. 前記導電性高分子が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びそれらの誘導体から成る群から選ばれる、請求項1又は2に記載のコンデンサ用セパレータ。
  4. 前記積層不織布において、前記II層が表と裏の両表面層であり、前記I層が中間に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  5. 前記II層が連続長繊維不織布である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  6. 前記I層がメルトブロウン不織布である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  7. 前記I層の目付けの比率が、前記積層不織布全体の目付けに対して9〜67%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  8. 前記積層不織布を構成する繊維同士が熱的結合で一体化された部分を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  9. 前記II層が融点180℃以上である結晶性樹脂からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  10. 前記積層不織布の厚みが10〜80μmであり、かつ、目付けが7〜70g/mである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のコンデンサ用セパレータを含むコンデンサ。
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