JP4387692B2 - 電気化学素子用セパレーター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リフロー耐熱性に優れ、内部抵抗が低く、自己放電特性、特性保持力に優れる電気化学素子用セパレーターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電池、電気二重層キャパシタ、電解コンデンサなどの電気化学素子は、低抵抗化、大容量化が主流であるが、鉛フリー半田の使用により高耐熱性も要求されるようになっている。従来、これら電気化学素子用セパレーターとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主体成分とする多孔質膜(例えば、特許文献1参照)、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙(例えば、特許文献2参照)などが使用されている。最近では、フィブリルを有する繊維と、繊度が0.45dtex以下のポリエステル繊維とを含む繊維シートからなるセパレーターが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンやポリプロピレンを主体成分とする多孔質膜は、融点が130℃〜165℃程度と低く、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙は、200℃以上の高温では炭化や分解してしまい、耐熱性に問題がある。低抵抗を実現するには、電気化学素子用セパレーターを薄膜化する方法、孔径を大きくする方法が有効であるが、これらの方法をとるとピンホールができやすく、内部ショートや自己放電しやすくなり、かといって孔径を小さくするとフィルム状になりすぎてイオン透過性が悪化し、抵抗が高くなるという具合に、抵抗と自己放電特性のバランスをとることが難しい問題がある。フィブリルを有する繊維は、ピンホール抑制効果が大きいが、イオン透過性を低下させる因子でもあるため、該繊維が、電気化学素子用セパレーター全体に均等に多く存在するとイオン透過性が悪化して抵抗が高くなる問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−325747号公報
【特許文献2】
特開2000−3834号公報
【特許文献3】
特開2001−244150号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に見られる上記問題点を解決するものである。即ち、本発明の目的は、リフロー耐熱性に優れ、内部抵抗が低く、自己放電特性、特性保持力に優れる電気化学素子用セパレーターを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、耐熱性フィブリル化繊維を偏在させることによって、リフロー耐熱性に優れ、内部抵抗が低く、自己放電特性、特性保持力に優れる電気化学素子用セパレーターを実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
本発明の第1の電気化学素子用セパレーターは、片表面に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、片表面>反対側表面であり、反対側表面に向かって傾斜分布し、反対側表面には存在しないことを特徴とする電気化学素子用セパレーターである
【0008】
本発明の第1の電気化学素子用セパレーターは、片表面の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の第2は、耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、内部>表面であることを特徴とする電気化学素子用セパレーターである。
【0011】
本発明の第2の電気化学素子用セパレーターは、内部の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上で、表面の該繊維含有量が20wt%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の電気化学素子用セパレーターは、内部に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、外側に向かって傾斜分布し、表面には存在しないことが好ましい。
【0013】
本発明においては、耐熱性フィブリル化繊維が、全芳香族ポリアミドであることが好ましい。
【0014】
本発明においては、耐熱性フィブリル化繊維が、全芳香族ポリエステルであることが好ましい。
【0015】
本発明の電気化学素子は、電気二重層キャパシタであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気化学素子用セパレーターについて詳細に説明する。
【0017】
本発明における電気化学素子とは、マンガン乾電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、リチウム電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、各種のゲル電解質電池、亜鉛−空気蓄電池、鉄−空気蓄電池、アルミニウム−空気蓄電池、燃料電池、太陽電池、ナトリウム硫黄電池、ポリアセン電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサともいう)などを指す。電解コンデンサまたは電気二重層キャパシタとは、対向する2つの電極間に誘電体または電気二重層を挟んだ形で構成されてなる蓄電機能を有するものである。前者はアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが挙げられ、後者は電気二重層キャパシタが挙げられる。電気二重層キャパシタの電極としては、一対の分極性電極、片方が分極性電極でもう片方が非分極性電極の組み合わせの何れでも良い。
【0018】
電気化学素子の電解液は、水溶液系、有機溶媒系、導電性高分子の何れでも良い。有機溶媒系電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホラン、スルホラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブなどの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0019】
本発明における耐熱性フィブリル化繊維とは、耐熱性繊維をフィブリル化したものを指す。ここで、耐熱性繊維とは、融点または熱分解温度が250℃以上の繊維を指す。そのような材料としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられ、これら単独でも良いし、2種類以上の組み合わせでも良い。PBZTはトランス型、シス型の何れでも良い。また、全芳香族ではない芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルの中にもモノマーの種類と組成比によっては、融点または熱分解温度が250℃以上のものがあり、これらを用いることができる。ここで、芳香族とは、主鎖の一部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。これらの中でも、液晶性のため均一にフィブリル化されやすい全芳香族ポリアミド、特にパラ系全芳香族ポリアミドと全芳香族ポリエステルが好ましい。全芳香族ポリエステルは、吸湿率が著しく低いため、非水電解液や非水電解質を用いる電気化学素子には特に好ましい。
【0020】
パラ系全芳香族ポリアミドは、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−アミドヒドラジド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3,4−ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
全芳香族ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを組み合わせて、組成比を変えて合成される。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明におけるフィブリル化繊維とは、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている繊維を指し、米国特許第5833807号明細書や米国特許第5026456号明細書に明記されているようなフィブリッドとは異なる。本発明におけるフィブリルは、長さと巾のアスペクト比が20:1〜100000:1の範囲に分布し、カナダ標準形濾水度が0ml〜500mlの範囲にある。さらに、重量平均繊維長が0.2mm〜2mmの範囲にあるものが好ましい。
【0023】
フィブリル化繊維は、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩粉装置などを用いて製造される。
【0024】
本発明における耐熱性フィブリル化繊維以外の繊維としては、非フィブリル化繊維(チョップドファイバーなど)、必要に応じて耐熱性繊維でないフィブリル化繊維などが用いられる。非フィブリル化繊維としては、天然繊維、溶剤紡糸セルロース、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維が挙げられる。これらの非フィブリル化繊維は、明確な繊度または繊維径を持つ。
【0025】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、繊度0.15dtex以下、繊維長1mm以上10mm以下の繊維を含有することが好ましい。このような繊維を含有することにより、電気化学素子用セパレーターの地合が均一になりやすく、孔径も小さくなりやすい。該繊維の繊維長が1mmより短いと、脱落しやすく、10mmより長くなると繊維同士がよれて電気化学素子用セパレーターの厚みむらが生じやすい。
【0026】
耐熱性繊維でないフィブリル化繊維としては、例えば、リンターをはじめとする各種パルプ、リント、溶剤紡糸セルロース、融点または熱分解温度が250℃未満の合成繊維をフィブリル化したものやバクテリアセルロースが挙げられる。
【0027】
本発明におけるバクテリアセルロースとは、微生物が産生するバクテリアセルロースのことを指す。このバクテリアセルロースは、セルロースおよびセルロースを主鎖とするヘテロ多糖を含むものおよびβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖および有機酸等である。これらの多糖は単一物質で構成される場合もあるが、2種以上の多糖が水素結合などで結合して構成されている場合もあり、何れも利用できる。
【0028】
本発明の第1の電気化学素子用セパレーター、すなわち片表面に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、片表面>反対側表面であり、反対側表面に向かって傾斜分布し、反対側表面には存在しない電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維含有量が異なるスラリー同士または耐熱性フィブリル化繊維含有スラリーと該繊維を含有しないスラリーを抄合わせる方法、予め製造されたシートに耐熱性フィブリル化繊維含有スラリーを1本または複数のノズルから吹き付ける方法、カーテン状に流し込む(または塗布)方法などによって製造される。吹き付ける際のノズルは揺動させても良いし、固定しても良い。吹き付けは、予め作製されたシートを抄紙網上に搬送しながら行っても良く、例えばカーテンコーターなど一般に用いられるコーターマシンを用いて行っても良い。流し込み(または塗布)は、湿紙または予め作製されたシートを抄紙網上に搬送しながら行っても良く、例えばカーテンコーターなど一般に用いられるコーターマシンを用いて行っても良い。何れにしても抄紙網上で行えば、水分を吸引除去してウェブ形成が速く均一にできるため好ましい。片表面側を形成するスラリーに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は60wt%以上、100wt%以下でできるだけ多い方が好ましい。一方、反対側表面を形成するスラリーに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は0wt%である。予め製造されたシートは湿式不織布、乾式不織布、織布の何れでも良く、該シートに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は0wt%である。吹き付けや流し込み(または塗布)に用いるスラリー中の耐熱性フィブリル化繊維量は60wt%以上、100wt%以下でできるだけ多い方が好ましい。
【0029】
本発明の第2の電気化学素子用セパレーター、すなわち耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、内部>表面である電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維含有量の多いスラリーが内部に、耐熱性フィブリル化繊維含有量が少ないか、0wt%のスラリーを外側になるように抄合わせる方法、耐熱性フィブリル化繊維含有量の多いスラリーを内部に、予め製造されたシートを外側になるように抄合わせる方法、これらの方法と上記した第1の電気化学素子用セパレーターの製造方法とを組み合わせた方法などによって製造される。電気化学素子用セパレーターの内部を形成するスラリーに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は60wt%以上、100wt%以下でできるだけ多い方が好ましい。一方、表面を形成するスラリーに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は20wt%以下であることが好ましく、0wt%であることがより好ましい。予め製造されたシートは、湿式不織布、乾式不織布、織布の何れでも良く、該シートに含まれる耐熱性フィブリル化繊維量は20wt%以下が好ましく、0wt%がより好ましい。
【0030】
抄合わせは、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種あるいは異種の抄紙機を2つ以上組み合わせたコンビネーションマシンなどを用いて湿式抄紙する。このようにして製造することにより、耐熱性フィブリル化繊維を偏在させることができる。該繊維は、少なくとも一部が繊維径1μm以下で、それ以下の細い部分も多いため、ウェブ形成時、プレスパートなどで該繊維が第1の電気化学素子用セパレーターでは片表面から反対側表面に、第2の電気化学素子用セパレーターでは内部から表面に向かってそれぞれ侵入し、他の繊維と絡むため、それぞれの方向に向かって傾斜分布する。そのため、本発明の電気化学素子用セパレーターは、層間剥離しにくい特徴を有する。
【0031】
一方、予め作製された2つのシート、すなわち耐熱性フィブリル化繊維を含有するシート同士または該繊維を含有するシートと含有しないシートとを熱接着させた場合には、耐熱性フィブリル化繊維が相手シート内に入り込むこんで他の繊維と絡むことはなく、傾斜分布することはない。そのため、容易に層間剥離してしまう。層間剥離しにくくなるように熱接着条件を強めると繊維の熱融着が過度に進行して孔を塞ぎ、イオン透過性に悪影響を及ぼし、本発明の電気化学素子用セパレーターと同等の性能は得られない。
【0032】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、片面と反対側表面、または内部と表面の該繊維含有量が異なるため、該繊維が電気化学素子用セパレーター全体にわたって均等かほぼ均等に存在する場合に比べてイオン透過性に優れ、内部抵抗が低くなる。そのため、第1の電気化学素子用セパレーターでは、片表面の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上であることが好ましく、反対側表面に該繊維は存在しない。同様に第2の電気化学素子用セパレーターでは、内部の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上で、表面の該繊維含有量が20wt%以下であることが好ましく、表面に該繊維が存在しないことがより好ましい。
【0033】
本発明の電気化学素子用セパレーターにおいて、耐熱性フィブリル化繊維が偏在する様子は、該セパレーターの断面を電子顕微鏡やレーザー光学顕微鏡などを用いて観察することにより確認することができる。同時に耐熱性フィブリル化繊維が傾斜分布する様子も確認することができる。
【0034】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維が偏在するため、リフロー耐熱性に優れる。耐熱性フィブリル化繊維以外の繊維を高融点の繊維や耐熱性繊維にすると、リフロー耐熱性をより向上させることができる。
【0035】
本発明においては、抄紙機の抄紙網には100メッシュ以上の目の細かい網を用いることが好ましく、120メッシュ以上がより好ましい。湿式抄紙の際に用いる水はイオン交換水が好ましく、分散助剤や増粘剤、その他添加薬品、剥離剤などは、非イオン性のものが好ましいが、電気化学素子の特性に影響を及ぼさない程度であれば、イオン性のものを適量用いても良い。
【0036】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、それ1枚だけで使用しても良いが、2枚以上積層して用いても良い。
【0037】
耐熱性フィブリル化繊維の中には、例えば全芳香族ポリアミドのように正極酸化されやすいものがある。このような繊維が電気化学素子用セパレーターの片表面に偏在し、反対側表面に向かって傾斜分布し、反対側表面には存在しない場合には、該繊維の偏在面を負極側へ配置するか、偏在面を内側にして2枚積層するか、内部に該繊維が偏在し、外側に向かって傾斜分布し、表面には存在しない電気化学素子用セパレーターを用いることにより、該繊維の酸化劣化を防止でき、電気化学素子の特性劣化を抑制することができる。
【0038】
本発明の電気化学素子用セパレーターの厚みは、9μm〜300μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましい。厚みが9μmより薄いと、電気化学素子用セパレーターの引張強度や突刺強度が不十分になりやすく、300μmより厚いと、電気化学素子の容量が不十分になりやすい。
【0039】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、厚み調整、強度向上、不純物除去、耐熱寸法安定性付与などの目的に応じて、カレンダー処理、熱処理、熱圧処理などが施される。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。
【0041】
<耐熱性フィブリル化繊維1の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.7dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で30回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.42mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミド繊維を作製した。以下、これを耐熱性フィブリル化繊維1またはFB1と表記する。
【0042】
<耐熱性フィブリル化繊維2の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.7dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら30回繰り返し叩解処理し、重量平均繊維長1.1mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミド繊維を作製した。以下、これを耐熱性フィブリル化繊維2またはFB2と表記する。
【0043】
<耐熱性フィブリル化繊維3の作製>
全芳香族ポリエステル(繊度1.7dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水中に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いてクリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で20回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.35mmのフィブリル化全芳香族ポリエステル繊維を作製した。以下、これを耐熱性フィブリル化繊維3またはFB3と表記する。
【0044】
<フィブリル化セルロース1の作製>
リンターを5wt%濃度になるようにイオン交換水中に分散させ、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の圧力で20回繰り返し処理して、重量平均繊維長0.33mmのフィブリル化セルロース1を作製した。以下、これをフィブリル化セルロース1またはFBC1と表記する。
【0045】
<スラリーの調製>
表1に示した原料と配合量に従って、パルパーを用いてイオン交換水中に分散させたスラリーを調製した。必要に応じて、非イオン性の分散助剤を用いた。表1中の「BC」は、バクテリアセルロースを意味する。「PA1」は、繊度0.08dtex、繊維長3mmの芳香族ポリアミド繊維(融点265℃)を意味する。「PA2」は、繊度0.7dtex、繊維長6mmの芳香族ポリアミド繊維(融点265℃)を意味する。「PA3」は、繊度2.7dtex、繊維長5mmのパラ系全芳香族ポリアミド繊維を意味する。「PET1」は、繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維を意味する。「PET2」は、繊度0.3dtex、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維を意味する。「PET3」は、繊度0.5dtex、繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維を意味する。「PET4」は、繊度1.7dtex、繊維長5mmの芯鞘複合繊維(芯部:融点255℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体、融点110℃)を意味する。「分割型1」は、ナイロン66とポリエチレンテレフタレートが板状に交互に配列した6分割型複合繊維(分割前繊度3.3dtex、繊維長3mm)を意味する。
【0046】
<シートの作製>
表1に示した原料と製法に従ってシートAとシートBを作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
<電気化学素子用セパレーターの作製>
【0049】
参考例1
スラリー1から長網抄紙機で坪量5g/m2に、スラリー7から円網抄紙機で坪量15g/m2に抄合わせた後、215℃の熱ロール(直径1.2m)で熱処理(無加圧、20m/min)し、厚み65μmの電気化学素子用セパレーター1とした。長網は150メッシュを使用した。
【0050】
実施例1
スラリー1から円網抄紙機で坪量5g/m2に、スラリー8から傾斜型抄紙機で坪量15g/m2に抄合わせし、厚み60μmの電気化学素子用セパレーター2とした。円網は150メッシュを使用した。
【0051】
実施例2
3連式円網抄紙機を用い、スラリー7、2、7の順に10g/m2、5g/m2、10g/m2に抄合わせた後、実施例1と同様にして熱処理し、厚み90μmの電気化学素子用セパレーター3とした。スラリー2は、150メッシュの円網で抄紙した。
【0052】
実施例3
3連式円網抄紙機を用い、スラリー8、2、8の順に10g/m2、5g/m2、10g/m2に抄合わせし、厚み85μmの電気化学素子用セパレーター4とした。スラリー2は、150メッシュの円網で抄紙した。
【0053】
実施例4
スラリー3から傾斜型抄紙機で坪量7g/m2に、スラリー8から円網抄紙機で坪量13g/m2に抄合わせし、厚み60μmの電気化学素子用セパレーター5とした。傾斜型は120メッシュを使用した。
【0054】
実施例5
スラリー3から短網抄紙機で坪量7g/m2に、スラリー9から円網抄紙機で坪量13g/m2に抄合わせした後、実施例1と同様にして熱処理し、厚み65μmの電気化学素子用セパレーター6とした。短網は120メッシュを使用した。
【0055】
実施例6
スラリー2から円網抄紙機で坪量3g/m2に、スラリー10から円網抄紙機で12g/m2に抄合わせた後、スーパーカレンダー処理して厚み35μmの電気化学素子用セパレーター7とした。スラリー2は、150メッシュの円網で抄紙した。
【0056】
参考例2
スラリー4から円網抄紙機で坪量5g/m2に、スラリー7から傾斜型抄紙機で坪量16g/m2に抄合わせした後、実施例1と同様にして熱処理し、厚み70μmの電気化学素子用セパレーター8とした。円網は150メッシュを使用した。
【0057】
実施例7
スラリー4から長網抄紙機で坪量5g/m2に、スラリー11から円網抄紙機で13g/m2に抄合わせた後、スーパーカレンダー処理して厚み40μmの電気化学素子用セパレーター9とした。長網は150メッシュを使用した。
【0058】
実施例8
スラリー5から円網抄紙機で坪量3g/m2に、スラリー8から短網抄紙機で12g/m2に抄合わせた後、スーパーカレンダー処理して厚み25μmの電気化学素子用セパレーター10とした。円網は150メッシュを使用した。
【0059】
実施例9
3連式円網抄紙機を用い、スラリー9、4、9の順に12g/m2、6g/m2、12g/m2に抄合わせた後、実施例1と同様にして熱処理し、厚み95μmの電気化学素子用セパレーター11とした。スラリー4は、150メッシュの円網で抄紙した。
【0060】
実施例10
スラリー6から円網抄紙機で坪量7g/m2に、スラリー9から円網抄紙機で13g/m2に抄合わせた後、実施例1と同様にして熱処理し、さらにスーパーカレンダー処理して厚み35μmの電気化学素子用セパレーター12とした。
【0061】
実施例11
シートAにスラリー2を複数のノズルから噴霧して6g/m2のせ、厚み65μmの電気化学素子用セパレーター13とした。
【0062】
実施例12
シートAにスラリー2をカーテン状に塗布して6g/m2のせ、厚み65μmの電気化学素子用セパレーター14とした。
【0063】
実施例13
シートBにスラリー2をカーテン状に塗布して3g/m2のせ、厚み70μmの電気化学素子用セパレーター15とした。
【0064】
比較例1
スラリー12から1台の円網抄紙機を用いて坪量20g/m2に湿式抄紙した後、実施例1と同様にして熱処理し、厚み70μmの電気化学素子用セパレーター16とした。
【0065】
比較例2
スラリー13から傾斜型抄紙機で坪量10g/m2に、スラリー14から円網抄紙機で坪量10g/m2に抄合わせた後、220℃の一対の熱ロールで、500N/cmの線圧力で熱カレンダー処理し、厚み25μmの電気化学素子用セパレーター17とした。
【0066】
<電気二重層キャパシタの作製>
電極活物質として平均粒径6μmの活性炭85%、導電材としてカーボンブラック7%、結着材としてポリテトラフルオロエチレン8%を混練して厚み0.2mmのシート状電極を作製した。これを厚み50μmのアルミニウム箔の両面に導電性接着剤を用いて接着させ、圧延して電極を作製した。この電極を正極および負極として用いた。電気化学素子用セパレータを負極と正極の間に介して積層し、巻回機を用いて渦巻き型に巻回して渦巻き型素子を作製した。このとき、電気化学素子用セパレーター2、5〜7、12〜15は、耐熱性フィブリル化繊維が偏在する面を負極に接するように配置した。正極側および負極側の最外層には何れも電気化学素子用セパレーターを配した。この渦巻き型素子をアルミニウム製ケースに収納した。ケースに取り付けられた正極端子および負極端子に正極リードおよび負極リードを溶接した後、電解液注液口を残してケースを封口した。この素子を収納したケースごと200℃に10時間加熱し乾燥処理した。これを室温まで放冷した後、ケース内に電解液を注入し、注液口を密栓して電気二重層キャパシタを作製した。さらに電気二重層キャパシタを240℃で10秒間リフロー処理した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C2H5)3(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0067】
電気化学素子用セパレーター1〜17および電気二重層キャパシタ1〜17について、下記の試験方法により測定し、その結果を下記表2に示した。
【0068】
<内部抵抗>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電した後、30Aで定電流放電したときの放電開始直後の電圧低下より算出した。
【0069】
<漏れ電流>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電し、24時間保持したときに計測される電流値を漏れ電流(mA)とした。漏れ電流が小さい程好ましい。
【0070】
<電圧維持率>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電した後、端子を解放し、72時間放置後の電圧を測定し、2.7Vに対する割合を電圧維持率(%)とした。電圧維持率が高い程好ましい。
【0071】
<特性保持率>
電気二重層キャパシタを50℃で、2000時間2.7V印加し続けた後の静電容量を測定し、初期の静電容量に対する割合(%)、すなわち静電容量保持率を求め、これを特性保持率とした。この値が大きい程好ましい。
【0072】
【表2】
【0073】
評価:
表2の結果から明らかなように、参考例1〜2、実施例1、4〜8、10〜13で作製した電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、片表面>反対側表面であるため、実施例2、3、9で作製した電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、内部>表面であるため、何れもリフロー耐熱性に優れ、内部抵抗が低く、自己放電特性、特性保持力に優れていた。特に実施例1、4〜6、7、8、10〜13で作製した電気化学素子用セパレーターは、片表面に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、反対側表面方向に傾斜分布し、反対側表面に存在しないため、また実施例3及び9で作製した電気化学素子用セパレーターは、内部に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、外側に向かって傾斜分布し、表面には存在しないため、特に内部抵抗が低く優れていた。
【0074】
実施例1、4〜6、10〜13で作製した電気化学素子用セパレーターは、酸化劣化しやすい耐熱性フィブリル化繊維の偏在面が正極側に配置されなかったため、特性保持力に優れていた。
【0075】
一方、比較例1及び2で作製した電気化学素子用セパレーターは、耐熱性フィブリル化繊維が全範囲にわたって均等に多く分布してなるため、イオン透過性が悪く、内部抵抗が高めであった。また、酸化劣化しやすい耐熱性フィブリル化繊維が表裏面に多く存在するため、特性保持力が劣っていた。
【0076】
【発明の効果】
以上、説明した如く、本発明によれば、リフロー耐熱性に優れ、内部抵抗が低く、自己放電特性、特性保持力に優れ、特に電気二重層キャパシタに好適なる電気化学素子用セパレーターが得られる。
Claims (8)
- 片表面に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、片表面>反対側表面であり、反対側表面に向かって傾斜分布し、反対側表面には存在しないことを特徴とする電気化学素子用セパレーター。
- 片表面の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上であることを特徴とする請求項1記載の電気化学素子用セパレーター。
- 耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、該繊維の含有量が、内部>表面であることを特徴とする電気化学素子用セパレーター。
- 内部の耐熱性フィブリル化繊維含有量が60wt%以上で、表面の該繊維含有量が20wt%以下であることを特徴とする請求項3記載の電気化学素子用セパレーター。
- 内部に耐熱性フィブリル化繊維が偏在し、外側に向かって傾斜分布し、表面には存在しないことを特徴とする請求項3記載の電気化学素子用セパレーター。
- 耐熱性フィブリル化繊維が、全芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電気化学素子用セパレーター。
- 耐熱性フィブリル化繊維が、全芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電気化学素子用セパレーター。
- 電気化学素子が、電気二重層キャパシタであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電気化学素子用セパレーター。
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