JP2011199086A - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性高分子の分散溶液を用いてコンデンサ素子中に導電性高分子層を形成した固体電解コンデンサにおいて、高耐圧でありかつ低ESRの固体電解コンデンサを提供することにある。
【解決手段】
陽極箔と陰極箔との間に合成繊維の不織布を含むセパレータが配置されたコンデンサ素子に、pH3未満の導電性高分子の分散溶液を含浸して導電性高分子層を形成したことを特徴としている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固体電解コンデンサにかかり、特に導電性高分子の分散溶液より導電性高分子層を形成した固体電解コンデンサに関する。
アルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極電極としての弁作用金属をエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化に欠かせないものとなっている。
固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、電導度が高く、陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れた導電性高分子が固体電解質として用いられている。この導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンやこれらの誘導体等が知られている。
例えば、特許文献1では、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にEDOT及び酸化剤溶液を含浸し、加熱して、両電極間にPEDOTポリマー層を形成し、固体電解コンデンサを形成することが開示されている。
この特許文献1の固体電解コンデンサでは、酸化剤溶液がかなりの酸性を示すため、酸化皮膜である誘電体層を腐食させ、等価直列抵抗の増加が生じ、またセルロース繊維を原料とするセパレータでは、セルロース繊維が化学酸化重合を阻害する問題があるため、該誘電体の腐食やセルロース繊維による化学酸化重合の阻害を防止すべく、陽極箔の表面に、酸性度を弱めた、もしくはアルカリ処理した導電性高分子の分散溶液を塗布し、乾燥することで、固体電解質を形成した固体電解コンデンサが特許文献2に開示されている。
特開平09−293639号公報 特開2006−287182号公報
ところで、このような固体電解コンデンサは、車載用途、インバータ用途に用いられるが、使用電圧は20WVから35WVへと上昇し、固体電解コンデンサの高耐圧化が求められている。
しかしながら、上記特許文献2の固体電解コンデンサであっても、高耐電圧のものができておらず、またESR特性としても満足できるものが未だできていない。
そこで、本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、導電性高分子の分散溶液にて導電性高分子層を形成した固体電解コンデンサにおいて、高耐圧でありかつ低ESRの固体電解コンデンサを提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、pHを特定した導電性高分子の分散溶液を用い、セパレータとして合成繊維の不織布を含むセパレータを用いて固体電解コンデンサを作製したところ、固体電解コンデンサの高耐圧化及び低ESR化が成しえることが判明した。そこで、この導電性高分子の分散溶液のpHとセパレータ材料との関連性をさらに検討したところ、導電性高分子の分散溶液には、ドーパントとして、ポリスチレンスルホン酸等が含まれており、通常この酸が多いと分散溶液のpHが低くなるため、コンデンサ素子に含浸された際にセパレータや陽極箔の酸化皮膜への悪影響等を引き起こし、固体電解コンデンサとしては、ESR特性が悪化すると考えられる。そこでセルロース繊維のセパレータにて検証したところ、セルロース繊維が前記酸と反応しESR特性の悪化が顕著であった。しかしながら、さらにこの導電性高分子の分散溶液を検討したところpHが低くなるほどポリスチレンスルホン酸等のドーパントの量が増えるため、形成される導電性高分子層自体の伝導度が高まることが分かった。そこで、このpHの低い導電性高分子の分散溶液を用いて、セパレータとして合成繊維の不織布を含むセパレータを用いると、合成繊維自体の耐酸性が高いため、導電性高分子の分散溶液との反応は抑制され、ESR特性が改善されることが分かった。さらには、このpHの低い導電性高分子の分散溶液を用いると、酸成分と陽極箔の酸化皮膜との反応により酸化皮膜が劣化して固体電解コンデンサの耐電圧特性が低下すると予想されたが、実際には、合成繊維の不織布を含むセパレータを用いると、耐電圧特性が向上するという逆の結果が得られた。
そこで、本発明の固体電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔との間に合成繊維の不織布を含むセパレータが配置されたコンデンサ素子に、pH3未満の導電性高分子の分散溶液を含浸して導電性高分子層を形成したことを特徴としている。
また、前記セパレータが、フィブリル状耐熱性合成繊維を含むこと特徴としている。
また、前記コンデンサ素子には、ポリビニルアルコールが含有され、その含有量はコンデンサ素子体積あたり、11.0mg/cm以下の範囲であることを特徴としている。
また、前記コンデンサ素子に含まれる水分が0.1mg以下であることを特徴としている。
また、前記陰極箔は、表面にエッチング層と該エッチング層上に10V以下の酸化皮膜が形成されていることを特徴としている。
また、前記コンデンサ素子に搭載された導電性高分子の搭載量は、コンデンサ素子体積あたり、20mg/cm〜40mg/cmの範囲であることを特徴としている。
本発明によれば、合成繊維の不織布を含むセパレータを用い、pHの低い導電性高分子の分散溶液を用いることで、セパレータと分散溶液との反応が低減され、低ESRでかつ高耐圧の固体電解コンデンサを実現することができる。
以下、本発明の固体電解コンデンサの最良の実施形態を説明する。本発明の固体電解コンデンサは、アルミニウム等の弁作用金属からなり、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と、陰極箔とを、合成繊維の不織布を含有するセパレータを介して巻回又は積層してコンデンサ素子を形成する。そして、このコンデンサ素子にリン酸を含有する水溶液中に浸漬し電圧印加する修復化成や上記合成繊維のバインダーを溶解させる温水浸漬処理等が施された後、コンデンサ素子に導電性高分子の分散溶液を含浸し、乾燥させて導電性高分子を陽極箔と陰極箔の間に形成する。このコンデンサ素子に乾燥工程を施した後、金属ケース等の外装ケースに収納するとともに該外装ケースの開口部を封口ゴムにて封止して固体電解コンデンサが製造される。
(陽極箔)
陽極箔は、アルミニウム等の弁作用金属箔からなり、その表面を、塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して多数のエッチングピットが形成され、更にこの陽極箔の表面には、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層が形成されている。
(陰極箔)
陰極箔は、陽極箔と同様にアルミニウム等の弁作用金属箔からなり、(1)表面にエッチング処理を施したもの、(2)エッチング処理を施さないプレーン箔を用いたもの、(3)前記(1)又は(2)の表面に酸化皮膜を形成したもの、(4)前記(1)、(2)又は(3)の表面にチタンやニッケル等の金属やその炭化物、窒化物、炭窒化物又はこれらの混合物からなる金属薄膜層や、その他カーボン薄膜を形成したものがあげられる。
陰極箔としては、上記したものがあげられるが、中でもエッチング処理を施し、さらに10V以下の酸化皮膜を形成した金属箔を用いると、固体電解コンデンサのESR特性が良好となり好ましい。また表面に前記金属薄膜層やカーボン薄膜層等の導電材料を形成した金属箔においては、静電容量が向上し、さらには該金属薄膜層やカーボン層が金属箔の表面全面を覆って形成されると、ESR特性も良好となる。
(リード線)
陽極箔及び陰極箔にはそれぞれの電極を外部に接続するためのリード線が、ステッチ、超音波溶接等の公知の手段により接続されている。このリード線は、アルミニウム等からなり、陽極箔、陰極箔との接続部と外部との電気的な接続を担う外部接続部からなり、巻回又は積層したコンデンサ素子の端面から導出される。
(セパレータ)
セパレータは、合成繊維の不織布を含むものであり、合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系繊維、ビニロン系繊維、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、トリメチルペンテン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アクリル繊維等があげられ、これらの繊維を単独で又は複数の繊維を配合して用いられる。中でも、耐熱性を有し、その分解温度が300℃であるアクリル繊維や、その他、ポリエチレンテレフタレート、アラミド繊維、ポリアミド系繊維が好適である。ここで、半芳香族ポリアミドとは、主鎖の一部に例えば、脂肪鎖などを有するものを指すが、これに限定されるものではない。
(フィブリル状耐熱性合成繊維)
また、セパレータは、前記合成繊維に、フィブリル状耐熱性合成繊維を配合することもできる。フィブリル状耐熱性合成繊維とは、融点を持たないか、融点が250℃以上の有機繊維である耐熱性合成繊維をフィブリル状にした繊維をいう。フィブリル状とは、繊維の中のフィブリル(小繊維)が摩擦によって表面にあらわれて毛羽立ち、ささくれる現象をいい、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状であり、少なくともその一部が繊維径1μm以下となっている。前記耐熱性繊維としては、例えばパラ型全芳香族ポリアミド、メタ型全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリテトラフルオロエチレン、アクリルなどの樹脂からなる単繊維や複合繊維が挙げられる。これらの中でも均一性の高いフィブリル状耐熱性合成繊維が得られやすいパラ型全芳香族ポリアミド繊維や、融点を持たず耐熱性が高くかつ剛性を有するアクリル繊維が好ましい。
フィブリル状耐熱性合成繊維を、セパレータに30重量%以上配合することで、セパレータの剛性を高めることができるが、セパレータとして、他の合成繊維を含まずフィブリル状耐熱性合成繊維を単独で用いることもできる。
このフィブリル状耐熱合成繊維を用いることで、セパレータを緻密化して密度を高めることができる。またこのフィブリル状耐熱繊維のフィブリル部(繊維径1μm以下のささくれ部分)によりセパレータが緻密化され、このフィブリル部によって後述する導電性高分子の微粒子が付着して担持されやすく、コンデンサ素子内の導電性高分子の搭載量を高めることができ、固体電解コンデンサの静電容量とESR特性を向上させることができる。
なお、セパレータには、ポリビニルアルコール、ポリエステル又はポリエチレングリコール等のバインダーを含有させることもできる。バインダーを含有させることで、セパレータの強度を高めることが可能となる。またセパレータとして前記合成繊維にマニラ紙やクラフト紙等のセルロース系繊維を混抄してもよい。ただしセルロース性繊維は後述する導電性高分子の分散溶液への耐性が低いため、セパレータは、合成繊維の不職布を主体とし、これにセルロース繊維を40重量%以下の範囲で配合することが好ましい。
(ポリビニルアルコール)
また、コンデンサ素子中には、ポリビニルアルコールが含有されている。このポリビニルアルコールは、主に、導電性高分子の分散溶液による導電性高分子層の形成前にコンデンサ素子中に含有されていることが好ましい。さらには、ポリビニルアルコールは、コンデンサ素子を構成する陽極箔又は陰極箔の表面に付着していることが好ましい。このポリビニルアルコールが陽極箔又は陰極箔の表面に付着することで、固体電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。これは後述する導電性高分子の分散溶液を用いて形成された導電性高分子層を改質し、導電性高分子層自体の耐電圧が高まると考えられる。
さらにこのポリビニルアルコールについて検討すると、コンデンサ素子中での含有量によって固体電解コンデンサの特性が変わることが分かった。つまり、コンデンサ素子中へのポリビニルアルコールの含有量が多すぎては低周波でのESR特性の上昇や静電容量の減少が生じてしまうことが分かった。これは、ポリビニルアルコール自体は絶縁体であり、陽極箔又は陰極箔の表面に付着すると付着部分は容量形成部として機能しないため、固体電解コンデンサとして静電容量が減少してしまうことと考えられる。特に導電性高分子の分散溶液に含まれる導電性高分子の微粒子は、その粒径が極めて小さく(概して粒径は、100nm以下)また、導電性高分子の分散溶液に含まれる導電性高分子の微粒子の量も少ないため(概して分散溶液中の導電性高分子の微粒子の濃度は、1〜5%の範囲)、陽極箔又は陰極箔の表面に形成される導電性高分子層は薄く、また粗な状態であり、このような導電性高分子の微粒子の粒径が小さく、形成される導電性高分子層も薄く粗な状態では、陽極箔又は陰極箔の表面におけるポリビニルアルコールの占有率が導電性高分子に対して大きく、容量形成部の減少や、さらには形成された導電性高分子層に取り込まれたポリビニルアルコールの影響等により、固体電解コンデンサのESRの上昇や静電容量の減少が生じてしまうと考えられる。
したがって、陽極箔又は陰極箔へのポリビニルアルコールの付着やコンデンサ素子中でのポリビニルアルコールの含有を制限することが必要であり、鋭意検討したところ、コンデンサ素子中へのポリビニルアルコールの含有量は、コンデンサ素子体積あたり、11.0mg/cm以下の範囲が好適であることが分かった。さらに、鋭意検討したところ、このポリビニルアルコールが少なすぎると逆に耐電圧特性が向上しにくいことがわかり、コンデンサ素子体積あたり、0.5mg/cm以上含有させると好適である。
(導電性高分子の分散溶液)
コンデンサ素子に含浸する導電性高分子の分散溶液は、溶媒に導電性高分子の微粒子を分散させた溶液である。この導電性高分子の微粒子は、概してその粒径は、100nm以下と極めて小さいものである。導電性高分子としては、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。中でも重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。ポリチオフェン類の中では、ポリエチレンジオキシチオフェンが酸化形態で非常に高い導電性を有するので好ましい。導電性高分子の分散溶液の溶媒としては、水及び/又は有機溶剤が挙げられる。この分散溶液には、ポリスチレンスルホン酸等のスルホン酸系のドーパントを含有させることが好ましく、その他、界面活性剤や有機バインダー等を含有させてもよい。この導電性高分子の分散溶液は、pH調整剤等を利用してそのpHを3未満としている。したがって、分散溶液の酸性度は高いものとなっている。また導電性高分子の分散溶液中の導電性高分子の微粒子の濃度は該して1〜5wt%の範囲が好ましい。
(含浸−乾燥工程)
コンデンサ素子に導電性高分子の分散溶液を含浸した後、100〜200℃の温度範囲にて乾燥して、導電性高分子の分散溶液から溶媒等を除去して、コンデンサ素子の陽極箔と陰極箔間に導電性高分子層を形成する。ここでいう含浸とは、コンデンサ素子中に分散溶液を含ませる処理をいい、例えば前記コンデンサ素子を分散溶液に浸漬することでコンデンサ素子中に分散溶液を含ませることもできる。なお導電性高分子の分散溶液の導電性高分子の微粒子の濃度は低いため、コンデンサ素子中への導電性高分子の搭載量を確保するにも、上記含浸−乾燥工程は複数回行うことが好ましい。この含浸工程は、常圧化で行うこともできるが、減圧下又は加圧下で行うことで、陽極箔及び陰極箔のエッチングピットの深部にまで、導電性高分子層を形成することができる。
(導電性高分子の搭載量)
ここでコンデンサ素子中への導電性高分子の搭載量について詳述すると、前述のとおり、導電性高分子の分散溶液の導電性高分子の微粒子の濃度は低いため、コンデンサ素子への導電性高分子の分散溶液の含浸−乾燥工程を複数回行うことで、コンデンサ素子中の導電性高分子の搭載量を増やすことができる。導電性高分子の搭載量を増やすことで、各電極箔間や、陽極箔及び陰極箔の表面に形成される導電性高分子層が密になるため、固体電解コンデンサとしての静電容量やtanδ特性、さらにはLC特性やESR特性も改善されることになる。しかしながら、この導電性高分子のコンデンサ素子への搭載量が多すぎると、耐電圧特性が劣化することが分かった。これはコンデンサ素子中への導電性高分子の搭載量が増えると陽極箔の表面に形成される導電性高分子層の厚みが増えることとなる。ここで陽極箔の表面には酸化皮膜層が形成されているが、この酸化皮膜に亀裂等が生じると該亀裂部分に電流が集中して発熱等が生じる。この発熱によって前記亀裂部分の周辺の導電性高分子層が絶縁化され、固体電解コンデンサの耐電圧特性は維持できるが、この際に陽極箔の表面に形成された導電性高分子層が厚いと絶縁化しにくくなり、その絶縁化範囲も狭くなり、前記亀裂部分の周辺を含めて導電性高分子層が絶縁化されないため、固体電解コンデンサの耐電圧特性が劣化してしまうと考えられる。
そこで、鋭意検討したところ、コンデンサ素子に搭載された導電性高分子の搭載量は、コンデンサ素子体積あたり、20mg/cm〜40mg/cmの範囲が好適であることが分かった。
(水分量)
このように導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子は、次工程として、乾燥処理が施される。コンデンサ素子中に水分が付着されていると、後工程のエージング時に、陽極箔の酸化皮膜の修復が効率よく行われることになる。しかしながら、この水分の付着量が多いと、コンデンサ素子中に形成された導電性高分子層が水分と反応して劣化し、また固体電解コンデンサの実装時のはんだリフローの熱によって水分が気化して、ケース内の内圧が上昇し、ケースが膨らんでしまう。そこで、コンデンサ素子を乾燥して、コンデンサ素子中の水分量を制御すると好ましい。具体的には、コンデンサ素子中の水分量は、0.1mg以下とすることが好適である。
コンデンサ素子は、その後、金属ケース等の外装ケースに収納され、該外装ケースの開口部を封口ゴムにて封止するとともに、所定温度にて定格電圧を印加するエージング処理が施される。
続いて、以下のようにして製造した実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)表面にエッチング層を形成し、このエッチング層の上に酸化皮膜層を形成したアルミニウムからなる陽極箔と、表面にエッチング層を形成し、このエッチング層の上に5Vの酸化皮膜を形成したアルミニウムからなる陰極箔とを、
合成繊維として、半芳香族ポリアミド繊維の不職布を主体として、フィブリル状耐熱性合成繊維を配合し、ポリビニルアルコールをバインダーとして用いたセパレータを介して巻回し、素子形状が5.8φ、高さ3.2Lコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子をリン酸を含有する水溶液中で修復化成し、その後温水にコンデンサ素子を浸漬し、セパレータ中に含まれるポリビニルアルコールを溶解させて陽極箔及び陰極箔の表面に付着させた。このコンデンサ素子を、ポリチオフェン系の微粒子とポリスチレンスルホン酸を水溶液に分散した導電性高分子の分散溶液に浸漬し、コンデンサ素子を引き上げて約150℃で乾燥する。さらにこのコンデンサ素子の導電性高分子の分散溶液への浸漬−乾燥を複数回繰り返して、コンデンサ素子に導電性高分子層を形成した。このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴム封口してからエージングを行い、固体電解コンデンサを作製した。なお、導電性高分子の分散溶液のpHは2.3とした。
(実施例2)導電性高分子の分散溶液のpHを2.9とし、その他は実施例1と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例3)フィブリル状耐熱性合成繊維を配合させず、半芳香族ポリアミド繊維の不職布を主体としたセパレータとし、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(比較例1)導電性高分子の分散溶液のpHを4.0とし、その他は実施例1と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(比較例2)導電性高分子の分散溶液のpHを6.0とし、その他は実施例1と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(参考例1)セパレータをクラフト紙とし、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
以上の実施例1ないし実施例3と比較例1及び比較例2のそれぞれの特性を測定した。その結果を表1に示す。120Hzでの静電容量及び100kHzでのESRの初期特性、リフロー後のV−I試験でのショート電圧を測定した。
表1より明らかなように、実施例1及び実施例2の固体電解コンデンサでは、比較例1及び比較例2の固体電解コンデンサに比べて、静電容量は減少するものの、ESR特性やショート電圧が大幅に改善されていることがわかる。またセルロース繊維を用いた参考例1に比べてもESR特性やショート電圧は改善されていることが分かる。なお、セルロース繊維を用いた参考例1については、リフロー後に外装ケース膨れが生じていたため、V−I試験でのショート電圧は測定不能だった。
さらに、実施例3の固体電解コンデンサでは、セパレータにフィブリル化耐熱性合成繊維が配合していないが、比較例1及び比較例2の固体電解コンデンサに比べて、実施例1と同様に、静電容量が減少するものの、ESR特性やショート電圧が大幅に改善されていることがわかる。また実施例2及び実施例3を検討すると、セパレータとして、フィブリル化耐熱性合成繊維を配合することによって、静電容量及びESR特性が改善されることが分かる。
次にコンデンサ素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量について、検証する。
(実施例2)実施例2で作成したコンデンサ素子を分解すると、陽極箔の表面にポリビニルアルコールが付着していることが分かった。さらにコンデンサ素子体積あたりのポリビニルアルコールを測定したところ、5.0mg/cmであった。
(実施例4)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、0.3mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例5)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、0.5mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例6)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、0.8mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例7)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、1.6mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例8)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、2.3mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例9)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、11.0mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(参考例2)セパレータのバインダーとしてポリビニルアルコールを用いず、またコンデンサ素子にポリビニルアルコールを含有させず、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(参考例3)コンデンサ素子の素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量を、16.7mg/cmに調整し、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
以上の実施例2、実施例4ないし実施例9と参考例2及び参考例3のそれぞれの特性を測定した。その結果を表2に示す。120Hzでの静電容量及び120HzでのESRの初期特性、リフロー後のV−I試験でのショート電圧を測定した。
表2より明らかなように、実施例2、実施例4ないし実施例9の固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子にポリビニルアルコールが付着していない参考例2に比べて、静電容量は同等もしくはやや減少するものの、ESR特性やリフロー後のショート電圧は大幅に改善されていることが分かる。また実施例2、実施例4ないし実施例9の固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量が多い参考例4に比べて、リフロー後のショート電圧は減少するものの、ESR特性や静電容量は大幅に改善されていることが分かる。なお、コンデンサ素子体積あたりのポリビニルアルコールの含有量が少ない実施例4に比べ他の実施例では、リフロー後のショート電圧が向上していることが分かる。
次にコンデンサ素子体積あたりの導電性高分子の搭載量について、検証する。
(実施例2)実施例2で作成したコンデンサ素子中に含まれる導電性高分子の搭載量を測定したところ、コンデンサ素子体積あたり33.4mg/cmであった。
(実施例10)コンデンサ素子に、コンデンサ素子体積あたり、20.0mg/cmの導電性高分子を搭載させ、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(実施例11)コンデンサ素子に、コンデンサ素子体積あたり、40.0mg/cmの導電性高分子を搭載させ、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
た。
(参考例4)コンデンサ素子に、コンデンサ素子体積あたり、7.4mg/cmの導電性高分子を搭載させ、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
(参考例5)コンデンサ素子に、コンデンサ素子体積あたり、44.1mg/cmの導電性高分子を搭載させ、その他は実施例2と同様の固体電解コンデンサを作成した。
以上の実施例2、実施例10及び実施例11と参考例4及び参考例5のそれぞれの特性を測定した。その結果を表3に示す。120Hzでの静電容量及びTanδの初期特性、リフロー後のV−I試験でのショート電圧を測定した。
表3より明らかなように、実施例2、実施例10及び実施例11の固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子体積あたりの導電性高分子の搭載量が少ない参考例4に比べて、リフロー後のショート電圧はやや減少するものの、静電容量およびTanδ特性は大幅に改善されていることが分かる。また実施例2、実施例10及び実施例11の固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子体積あたりの導電性高分子の搭載量が多い参考例5に比べて、静電容量及びTanδは同等もしくはやや減少するものの、リフロー後のショート電圧が改善されていることが分かる。

Claims (6)

  1. 陽極箔と陰極箔との間に合成繊維の不織布を含むセパレータが配置されたコンデンサ素子に、pH3未満の導電性高分子の分散溶液を含浸して導電性高分子層を形成した固体電解コンデンサ。
  2. 前記セパレータが、フィブリル状耐熱性合成繊維を含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記コンデンサ素子には、ポリビニルアルコールが含有され、その含有量はコンデンサ素子体積あたり、11.0mg/cm以下の範囲である請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記コンデンサ素子に含まれる水分が0.1mg以下である請求項1ないし3いずれかに記載の固体電解コンデンサ。
  5. 前記陰極箔は、表面にエッチング層と該エッチング層上に10V以下の酸化皮膜が形成されている請求項1ないし4いずれかに記載の固体電解コンデンサ。
  6. 前記コンデンサ素子に搭載された導電性高分子の搭載量は、コンデンサ素子体積あたり、20mg/cm〜40mg/cmの範囲である請求項1ないし5いずれかに記載の固体電解コンデンサ。
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