以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の全体的な構成を示す。本実施例では、画像形成装置100は、電子写真方式を用いたタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成する、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdを有する。これらの4つの画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、詳しくは後述する被転写部材としての中間転写体の画像担持面の移動方向に沿って、一定の間隔をおいて一列に配置されている。本実施例では、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電部材に電圧を印加する電源を共通にした。
本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの構成及び動作は、使用する現像剤を除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部に属する要素であることを表す符号の添え字a、b、c、dは省略して、当該要素について総括的に説明する。
画像形成部Sは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、次の各手段が設けられている。先ず、接触型の帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザスキャナ)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6である。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接触して回転する。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが収納されている。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのクリーニングブレードを有し、クリーニングブレードが感光ドラム1に接触することで、回転する感光ドラム1の表面からトナーを掻き取る。
又、各画像形成部Sの感光ドラム1と対向するように、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数のローラに所定の張力をもって掛け回されている。上記一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の内周面側において、各画像形成部Sの感光ドラム1と対向するように配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介してして感光ドラム1に押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト7の外周面側には、中間転写ベルト7を張架するローラのうち1つに対向する位置に、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ8が配置されている。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して上記1つのローラに押圧されており、二次転写ローラ8と中間転写ベルト7とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。
記録材Pにフルカラー画像を形成する場合を例として、画像形成動作について説明する。先ず、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1が帯電ローラ2によって一様に帯電させられる。帯電電圧印加手段については後述する。帯電した感光ドラム1の表面は、露光装置3によって画像情報に応じて走査露光される。これにより、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によって現像剤のトナーで現像される。これにより、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、イメージ露光と反転現像により、トナー像を形成する。即ち、一様に帯電させられた後に露光装置3により露光されて電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の画像部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極生)と同極性に帯電したトナーを付着させる。
各画像形成部Sの感光ドラム1上に形成された各色のトナー像は、各一次転写部N1において、各一次転写ローラ5の作用により中間転写ベルト7上に順次重ね合わせて転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ5には、一次転写電圧印加手段としての一次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。中間転写ベルト上に転写されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ8の作用により記録材P上に転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ8には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。記録材Pは、記録材収容カセット(図示せず)などから供給ローラ11などによって二次転写部N2へと搬送されてくる。トナー像が転写された記録材Pは中間転写ベルト7から分離されて、定着手段としての定着装置9へと搬送される。そして、記録材Pは、定着装置9の定着ローラ9aと加圧ローラ9bとの間のニップ部(定着ニップ)を通過する際に加熱及び加圧され、その上のトナー像が定着される。その後、記録材Pは画像形成装置100の外部に排出される。
尚、一次転写工程後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、ドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置10によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。
2.帯電電源回路等
各画像形成部Sの帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源回路20から帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。これによって感光ドラム1の表面は所定の電位に均一に帯電させられる。
帯電電源回路20は、交流電源部21と、直流電源部22と、直流増幅部23とを有する。これによって、帯電電源回路20は、各帯電ローラ2に印加する帯電電圧として、直流電圧(帯電直流電圧)と交流電圧(帯電交流電圧)とが重畳された振動電圧を発生する。本実施例では、帯電電源回路20は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc(以下「カラー画像形成部」ともいう。)と、第4の画像形成部Sd(以下「ブラック画像形成部」ともいう。)とに分けて、別個の電源回路要素が設けられている。これは、一般にカラー画像形成部Sa、Sb、Scとブラック画像形成部Sdとでは使用頻度が異なることから、感光ドラム1などの部材の劣化の速度が異なり、詳しくは後述する必要な放電電流量が異なることが多いからである。以下説明するように、本実施例では、カラー画像形成部Sa、Sb、Scについては、直流電圧、交流電圧のいずれについても、共通の1つの電源とされている。そして、ブラック画像形成部Sdについては、直流電圧、交流電圧のいずれについても、カラー画像形成部Sa、Sb、Sc用のものとは別の電源が設けられている。
カラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cには、直流電圧は、直流電源部22内の第1の直流電源(直流電圧発生回路)26aから印加される。その直流電圧値の大きさは、直流増幅部23内の第1の直流増幅回路27aにより調整される。又、カラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cには、交流電圧は、交流電源部21内の第1の交流電源(交流電圧発生回路)24aから印加される。その交流電圧値の大きさは、交流電源部21内の第1の交流増幅回路25aにより調整される。
一方、ブラック画像形成部Sdの帯電ローラ2dには、直流電圧は、直流電源部22内の第2の直流電源(直流電圧発生回路)26dから印加される。その直流電圧値の大きさは、直流増幅部23内の第2の直流増幅回路27dにより調整される。又、ブラック画像形成部Sdの帯電ローラ2dには、交流電圧は、交流電源部21内の第2の交流電源(交流電圧発生回路)24dから印加される。その交流電圧値の大きさは、交流電源部21内の第2の交流増幅回路25dにより調整される。
帯電交流電圧の印加により各帯電ローラ2a、2b、2c、2dに流れる交流電流の値である帯電交流電流値は、それぞれ交流電流測定手段としての交流電流測定装置30a、30b、30c、30dにより測定されるようになっている。例えば後述するように第1、第2の交流増幅回路25a、25bにより帯電交流電圧値を上下させることにより得られた、印加された帯電交流電圧値Vppと測定された帯電交流電流値Iacとの関係は、制御回路34により計算される。そして、この関係は、必要な放電電流量を得るための帯電交流電圧値を求めるために用いられる。
又、本実施例では、交流電源部21の出力の周波数は1.5kHzとした。又、本実施例では、帯電直流電圧は、約−500Vである。本実施例では、感光ドラム1の帯電電位は、ほぼ帯電直流電圧値に均一に収束する。
又、本実施例の画像形成装置100は、交流電源部21から第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cへの電流の分岐点Bと帯電ローラ2a、2b、2cとの間に、可変抵抗40a、40b、40cを有する。制御回路34により可変抵抗40a、40b、40cの電気抵抗値を制御できる。本実施例では0Ω、1.0×105Ω、5.0×105Ω、1.0×106Ω、5.0×106Ωの5段階で電気抵抗値を選択できる可変抵抗を採用した。
3.帯電ローラ周りの詳細な構成
本実施例では、感光ドラム1は、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。感光ドラム1は、駆動装置(図示せず)によって通常210mm/sのプロセススピード(周速度)図1中ので矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。感光ドラム1は、図2に示すように、アルミニウム製シリンダ(導電性ドラム基体)1pの表面に、光の干渉を抑え上層の接着性を向上させる下引き層1qと、光電荷発生層1rと、電荷輸送層1sの3層と、を下から順に塗布して構成されている。本実施例では、電荷輸送層の厚さは28μmであり、これが13μmまで磨耗すると、帯電不良などの問題が発生する。
又、本実施例では、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)の長さは320mmである。帯電ローラ2は、図2に示すように、芯金(支持部材)2pの外回りに、下層2qと、中間層2rと、表層2sと、を下から順次に積層した3層構成とされている。下層2qは帯電音を低減するための発泡スポンジ層であり、表層2sは、感光ドラム1上にピンホールなどの欠陥があってもリークが発生するのを防止するために設けている保護層である。
より具体的には、本実施例における帯電ローラ2の仕様は次の通りである。
芯金2p;直径6mmのステンレス丸棒
下層2q;カーボン分散の発泡EPDM、比重0.5g/cm3、体積抵抗値102〜109Ωcm、層厚3.0mm
中間層2r;カーボン分散のNBR系ゴム、体積抵抗値102〜105Ωcm、層厚700μm
表層2s;フッ素化合物の樹脂に酸化錫とカーボンを分散、体積抵抗値107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μm
帯電ローラ2は、付勢手段としての押圧ばね2tによって感光ドラム1の中心方向に付勢されて、感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力をもって圧接されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転駆動に従動して回転する。感光ドラム1と帯電ローラ2との圧接部が帯電ニップ部である。本実施例では、帯電ローラ2の全体の体積抵抗値は1.0×105Ωcmである。
ここで、接触型の帯電装置において、帯電部材は感光体の表面に必ずしも接触している必要はない。帯電部材と感光体との間に、ギャップ間電圧と補正パッシェンカーブで決まる放電可能領域さえ確実に保証されれば、例えば数10μmの空隙(間隔)を有して非接触に近接配置されていてもよく、本発明ではこの近接帯電の場合も接触帯電の範疇とする。
4.画像形成装置の動作シーケンス
図3は、本実施例における画像形成装置100の動作シーケンスを示す。
a.初期回転動作(前多回転工程)
初期回転動作は、画像形成装置100の起動時の始動動作の期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。初期回転動作では、画像形成装置100の電源スイッチがオンとされることにより、感光ドラム1が回転駆動され、定着装置9の所定温度への立ち上げなどの所定のプロセス機器の準備動作が実行される。
b.印字準備回転動作(前回転工程)
印字準備回転動作は、プリント信号(画像形成開始信号)が入力されてから、実際に印字工程(画像形成工程)が実行されるまでの間の、画像形成前の準備回転動作の期間である。印字準備回転動作は、初期回転動作中にプリント信号が入力されたときには、初期回転動作に引き続いて実行される。プリント信号が入力されないときには、初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて、感光ドラム1の回転駆動が停止され、プリント信号が入力されるまで画像形成装置100はスタンバイ(待機)状態に保たれる。そして、プリント信号が入力されると、印字準備回転動作が実行される。
本実施例では、この印字準備回転動作期間において、印字工程の帯電工程における適切な帯電交流電圧値の演算・決定プログラムが実行される。これについては後述して詳しく説明する。
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)
所定の印字準備回転動作が終了すると、引き続いて回転する感光ドラム1に対する作像プロセスが実行されると共に、回転する感光ドラム面に形成されたトナー像の記録材Pへの転写、定着装置9によるトナー像の定着処理がなされる。そして、画像形成物が画像形成装置100の外部に排出(プリントアウト)される。
連続印字(連続プリント)の場合は、上記印字工程が設定された画像形成枚数分繰り返して実行される。
d.紙間工程
紙間工程は、連続印字時に、一の記録材Pの後端部が転写位置(二次転写部N2)を通過した後、次の記録材Pの先端部が転写位置に到達するまでの間の、転写位置に記録材Pが存在しない状態の期間である。
e.後回転動作
後回転動作は、単一の記録材Pへの印字工程が終了した後又は連続印字時の最後の記録材Pへの印字工程が終了した後も、しばらくの間メインモータの駆動が継続されて感光ドラム1が回転駆動され、所定の整理動作(準備動作)が実行される期間である。
f.スタンバイ(待機)
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置100は次のプリント信号が入力されるまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、画像形成装置100は後回転動作を経て、スタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリント信号が入力されると、画像形成装置100は前回転工程に移行する。
cの印字工程時が画像形成時であり、aの初期回転動作、bの前回転動作、dの紙間工程、eの後回転動作が非画像形成時である。
5.制御態様
本実施例の画像形成装置100の動作は、画像形成装置100に設けられた制御回路34によって統括的に制御される。図1に示すように、制御回路34は、情報を記憶する記憶手段としてのメモリ60と、画像形成装置100に各種動作を指示する制御手段としてのCPU70とを有する。
又、本実施例では、画像形成装置100は、各画像形成部の感光ドラム1の使用状況情報を検知する使用状況検知手段としてのカウンタ50を有する。カウンタ50により検知された使用状況情報は制御回路34に伝達される。本実施例では、使用状況情報として、感光ドラム1の使用量と相関する、画像形成枚数を検知した。本実施例では、カウンタ50は、画像形成枚数を所定の向きに搬送するA4サイズの記録材Pの枚数に換算して積算し、記憶する。
制御回路34には、カウン50から使用状況情報が伝達されたり、電流測定装置30から感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる交流電流値の情報が伝達されたりする。これらの情報は、必要に応じてメモリ60に記憶される。そして、CPU70が、メモリ60に記憶された情報に応じて、画像形成装置100の各種動作を制御することができる。
6.放電電流量
次に、印字工程時に帯電ローラ2に印加する帯電交流電圧を制御する方法について説明する。
図4に示すように、帯電交流電圧のピーク間電圧の値である帯電交流電圧値Vppに対して、帯電交流電圧の印加により流れる交流電流の値である帯電交流電流値Iacは、次のような関係にある。即ち、放電開始電圧Vthの2倍(Vth×2:放電開始点)未満の未放電領域で線形の関係にある。ここで、放電開始電圧Vthは、帯電部材に直流電圧を印加した時の感光体への放電開始電圧である。そして、Vth×2以上の放電領域では帯電交流電圧値Vppが増加するにつれて徐々に帯電交流電流値Iacが増加する方向にずれる。放電の発生しない真空中での同様の実験においては直線が保たれたため、これが放電に関与している電流の増分△Iacであると考えられる。
前述のように、AC帯電方式においては、必要な最低限の帯電交流電圧値(Vmin)が存在する。そして、この最低限の帯電交流電圧値は、放電開始電圧Vthの略2倍であることが知られている。この最低限の帯電交流電圧値以下では、感光ドラム1の帯電が不均一になり、かぶり、砂地などの画像不良が発生する。この最低限の帯電交流電圧値は、例えば帯電部材の電気抵抗の環境変動や経時変化などによって変化する。従って、公知のAC帯電方式では、通常、この最低限の帯電交流電圧値以上の帯電交流電圧を印加する。又は、同様の理由から、この最低限の帯電交流電圧値としたときに流れる帯電交流電流値以上の帯電交流電流が流れるような帯電交流電圧を印加する。
ここで、Vth×2未満の未放電領域における帯電交流電圧値Vppに対する帯電交流電流値Iacの比をαとする。このとき、Vth×2以上の放電領域における、放電による電流以外の、感光体と帯電部材との接触部へ流れる電流(以下「ニップ電流」ともいう。)などの交流電流は、α・Vppとなる。従って、Vth×2以上の放電領域において測定される帯電交流電圧値Iacと、上記α・Vppとの差分である、下記式1から算出されるΔIacを、帯電交流電圧の印加による放電の量を代用的に示す放電電流量と定義する。
△Iac=Iac−α・Vpp ・・・式1
この放電電流量△Iacが大きくなると、感光体の摩耗(削れ)、画像流れが促進される。尚、画像流れは、オゾンやNOxなどの放電生成物が感光体の表面に付着し、高湿環境下においてこの付着物が吸湿し、感光体の表面の電荷保持能力が低下して、画像が乱れる現象である。又、放電電流量ΔIacが小さくなると、かぶり、砂地などの画像不良が発生する。従って、AC帯電方式においては、均一に感光体を帯電させることのできる最低限の放電電流量になるように設定し制御する。これにより、良好な画像を形成することができると共に、感光体の削れなども最小限にして画像形成装置の長寿命化を図ることができる。
7.カラー画像形成部における帯電交流電圧の制御
次に、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧の制御について説明する。
図5(a)、(b)、(c)は、感光ドラム1が新品である場合の第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれについての帯電交流電圧Vppと帯電交流電流値Iacとの関係(以下、単に「Vpp−Iac」ともいう。)の一例を示す。感光ドラム1が新品の場合、Vpp−Iacのグラフの傾きはほぼ同じであり、必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値Vppもほぼ同じ値になる。本実施例では、感光ドラム1の帯電均一性が確保でき、且つ、感光ドラム1の磨耗も抑制できる最適な放電電流量(必要な最低限の帯電交流電圧値(Vmin))は100±20μAである。そして、感光ドラム1が新品の場合、放電電流量が100μAの時の帯電交流電圧は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのいずれにおいても2150Vppであった。即ち、感光ドラム1が新品の状態では、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの間で感光ドラム1の膜厚の差がほとんど無い。従って、この状態では、1つの電源から並列に同じ値の帯電交流電圧を第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2に帯電交流電圧を印加しても、各画像形成部において放電電流量は100μAになる。
しかし、使用量の増加に伴って感光ドラム1が磨耗すると、感光ドラム1の容量が大きくなり、感光ドラム1と帯電ローラ2との間の空間での電界が大きくなり、放電が起こりやすくなる。
図6(a)、(b)、(c)は、第2の画像形成部Sbを例として、感光ドラム1が磨耗していく過程におけるVpp−Iacの変化を示す。同図は、温度23℃、湿度5%の環境で測定した結果を示す。図6(a)は、図5(b)に相当する。
感光ドラム1が新品の場合は、放電電流量を100μAに制御するためには、2150Vppの帯電交流電圧を印加すればよい(図6(a))。しかし、感光ドラム1の使用量(本実施例ではA4サイズ換算の画像形成枚数)が30K枚(30000枚)の場合は、感光ドラム1の電荷輸送層は、新品時に比べて、磨耗して厚さが減少している。そのため、感光ドラム1の容量が大きくなり、感光ドラム1と帯電ローラ2との間で放電が起こりやすくなる。従って、前述の必要な最低限の帯電交流電圧値(Vmin)(放電開始電圧Vthの略2倍)の値は小さくなり、Vpp−Iacのグラフの傾きは大きくなる(図6(b))。画像形成枚数が60K枚(60000枚)の場合は、感光ドラム1の磨耗量が更に増えて、必要な最低限度の帯電交流電圧値(Vmin)の値が更に小さくなり、Vpp−Iacの傾きが更に大きくなる(図6(c))。
このVpp−Iacの変化に対して、帯電交流電圧値が感光ドラム1が新品の場合と同じ2150Vppに設定されたままであると、放電電流量は、画像形成枚数が30K枚のときには200μAとなり、60K枚のときには250μAとなり、過放電気味になる。
従って、感光ドラム1の磨耗量が更に増大したり、感光ドラム1の表面にトナーや外添剤などの付着物がつくフィルミングなどの弊害が発生したりすることがある。
そこで、画像形成枚数が増加するにつれて帯電交流電圧値を小さくしていく制御を行うことが望まれる。本実施例では、放電電流量を100μAにするために、図6に示すように、例えば画像形成枚数が30K枚のときには1980Vpp、60K枚のときには1900Vppに帯電交流電圧値を小さくする。これにより、上記のような過放電による弊害を抑制することができる。
表1は、本実施例における、放電電流量を100μAにするための、画像形成枚数と最適な帯電交流電圧値との関係を示す。画像形成枚数15K枚毎に、最適な帯電交流電圧値が変化する。従って、本実施例では、表1に従って、画像形成枚数の増加に伴って、帯電交流電圧値を下げていくのが望ましい。
しかし、本実施例のように、1つの交流電源から複数の画像形成部の帯電ローラ2に帯電交流電圧を印加する場合、次のような問題がある。
即ち、例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cの画像形成枚数が同じであれば、表1に従って各画像形成部において同時に帯電交流電圧を変化させていけば、過放電の問題は生じない。又、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cが同時に交換されるのであれば、同様に、過放電の問題は生じない。
しかしながら、実際、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの使用状況は、画像形成部ごとに異なる。例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれか1つの画像形成部のみを用いて画像を形成する場合など、画像形成枚数が第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で異なる場合がある。又、常に第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1を同時に交換することは、例えば、1つの画像形成部において不具合が生じた場合に、全ての画像形成部において交換しなくてはならないことを意味する。従って、低ランニングコストの観点などから、近年の画像形成装置では、画像形成部ごとに感光ドラム1を交換する構成が主に採用されている。
本実施例の画像形成装置100も、画像形成部ごとに、画像形成枚数が60K枚になった場合に、画像形成装置100の操作部(図示せず)において、感光ドラム1の交換を促すメッセージを表示する構成とした。
そのため、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1が同時に交換されなかった場合、或いは第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれかの感光ドラム1の画像形成枚数が大きい場合に、次のようになる。即ち、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、画像形成部間で放電電流量の差が大きくなることがある。
図7(a)、(b)、(c)は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で放電電流量の差が大きくなった場合のVpp−Iacの一例を示す。図7(a)は第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが交換したばかりの新品の場合、図7(b)は第2の画像形成部Sbの画像形成枚数が寿命末期の60K枚の場合のVpp−Iacのグラフを示す。
図7に示す例において、第1の画像形成部Saで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第1の画像形成部Saには2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第2の画像形成部Sbにも同じ2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第2の画像形成部Sbでは放電電流量は250μAとなり、過放電気味になる。
一方、第2の画像形成部Sbで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第2の画像形成部Sbには1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第1の画像形成部Saにも同じ1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第1の画像形成部Saでは放電電流量は40μAとなり、放電電流量が不足して、砂地、かぶりなどの感光ドラム1の帯電不良による画像不良が生じる。
図8は、放電電流量が100μA(本実施例では適正な放電電流量)の場合と、放電電流量が250μAの場合の、画像形成枚数と感光ドラム1の削れ量との相関を示すグラフである。
感光ドラム1の削れ量は、感光ドラム1の電荷輸送層の削れ量を測定した。本実施例では、前述のように、感光ドラム1の削れ量が15μm以上になると、帯電性が悪化し、帯電不良となる。
図8に示す例では、放電電流量が100μA(本実施例では適正な放電電流量)の場合、感光ドラム1の削れ量が15μmになるのは画像形成枚数が75000枚になったときである。そのため、本実施例では、画像形成枚数が75000枚になったときに、感光ドラム1が寿命となったものとして、交換されるように設計されている。しかし、放電電流量が250μAになると、画像形成枚数が30000枚のときに感光ドラム1の削れ量が15μmになり、感光ドラム1の寿命が短くなる。
以上のように、1つの交流電源で複数の画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を並列に印加する構成では、同じ帯電交流電圧値ではいずれかの画像形成部において過放電になったり、帯電不良になったりすることがある。
そこで、本実施例では、可変抵抗40a、40b、40cを、感光ドラム1の使用状況、特に、感光ドラム1の使用量と相関する画像形成枚数に応じて調整する。
ここで、本実施例では、可変抵抗40a、40b、40cの電気抵抗値を調整するために、ギアを組み合わせて回転可能なポテンショメータを用いた。即ち、制御回路34のCPU70の入力に従い、上記ギアを回転させることで、可変抵抗40a、40b、40cを所定の電気抵抗値に設定した。
図7の例に即して更に説明する。図7(a)に示すように第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが新品である場合は、可変抵抗40aを0Ωにした。図7(b)に示すように第2の画像形成部Sbの画像形成枚数が60K枚の場合は、感光ドラム1bの容量が大きくなり、感光ドラム1bと帯電ローラ2bとの間で放電が起こりやすい状態にある。従って、この場合は、可変抵抗40bを5.0×106Ωとした。そして、帯電交流電圧値は、第1の画像形成部Saの新品の感光ドラム1aに合わせて、2150Vppとした。この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacを図7(c)に示す。図7(c)から、この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacのグラフの傾きは、感光ドラム1が新品である第1の画像形成部SaにおけるVpp−Iacのグラフ(図7(a))の傾きとほぼ同様になる。そして、2150Vppの帯電交流電圧を印加した時の放電電流量は110μAとなり、本実施例における最適な放電電流量の範囲となった。
本実施例では、可変抵抗40の電気抵抗値は、次のようにした。即ち、画像形成枚数が新品(0枚)〜5K枚の場合は0Ω、5〜15K枚の場合は1.0×105Ω、15〜30K枚の場合は5.0×105Ω、30〜45K枚の場合は1.0×106Ω、45〜60K枚の場合は5.0×106Ωとした。これにより、帯電交流電圧値を新品の感光ドラム1の場合に必要な2150Vppとすることによって、第1〜第3の画像形成部Sa〜Scの全てにおいて、感光ドラム1の使用状況に拘わらず、放電電流量を100μA±20μAの範囲に制御することができる。
図9は、本実施例における、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧を調整する制御の手順を示す。
CPU70は、帯電バイアス制御のタイミング(本実施例では印字準備回転動作時)で、以下の処理を開始する(S101)。先ず、カウンタ50において第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cの画像形成枚数を検知する(S102)。感光ドラム1a、1b、1cの画像形成枚数の情報は、メモリ60に伝達される(S103)。そして、CPU70は、メモリ60に記憶された感光ドラム1a、1b、1cのそれぞれの使用量の情報に応じて、前述のとおりに可変抵抗40a、40b、40cをそれぞれ調整する(S104)。CPU70は、可変抵抗40a、40b、40cの調整を終了した後、印字工程時の帯電交流電圧値を、新品の感光ドラム1(画像形成枚数=0枚)に対して必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値に決定する(S105)。本実施例では、放電電流量100μAに対する2150Vppに決定した。そして、この決定した帯電交流電圧値で帯電電圧の帯電交流電圧値を定電圧制御して、画像形成を行う(S106)。
又、S101において、帯電バイアス制御のタイミングではないと判断した場合は、S102〜S105の処理は行わずに、前回決定された帯電交流電圧値の設定で、画像形成動作に移行する(S106)。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、複数の帯電部材のうち少なくとも2つに共通して印加する交流電圧を出力する交流電源21を有する。又、画像形成装置100は、交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加する交流電圧を制御する制御手段を有する。又、画像形成装置100は、上記少なくとも2つ帯電部材のそれぞれと交流電源21との間に接続された複数の可変抵抗40を有する。又、画像形成装置100は、複数の感光体のそれぞれの使用状況を検知する使用状況検知手段(カウンタ)50を有する。又、画像形成装置100は、複数の可変抵抗40のそれぞれの電気抵抗値を調整する調整手段を有する。本実施例では、CPU70が、上記制御手段と調整手段の機能を有する。そして、本実施例では、制御手段は、画像形成時に、感光体が特定の使用状況の場合に所定の放電電流量が得られるように設定された交流電圧を交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加させる。又、調整手段は、画像形成時に、次のようにして、上記少なくとも2つの帯電部材のそれぞれに接続された可変抵抗40の電気抵抗値を調整する。即ち、上記少なくとも2つの帯電部材と該帯電部材がそれぞれ帯電させる感光体との間で所定範囲内の放電電流量が得られるように、使用状況検知手段50による上記少なくとも2つの帯電部材が帯電させる感光体のそれぞれの使用状況の検知結果に応じて調整する。特に、本実施例では、上記特定の使用状況は、感光体の新品状態である。又、特に、本実施例では、感光体の使用状況は、感光体を使用して行った画像形成数で判断し、画像形成装置100は、使用状況検知手段として画像形成枚数を計数する手段(カウンタ)を有する。
尚、本実施例では、本実施例の制御の検討にあたり交流電流測定装置30を画像形成装置100に設けたが、本実施例による帯電交流電圧の制御の実施に関して言えば、当該交流電流測定装置30は省略することができる。
以上、本実施例によれば、1つの交流電源から複数の画像形成部に帯電交流電圧を出力することで、安価で小型の構成とすることができる。そして、斯かる構成において、各画像形成部の画像形成枚数に応じて、各画像形成部の帯電ローラ2と交流電源との間に配置された可変抵抗40を調整する。これにより、各画像形成部間で感光ドラム1の磨耗量に差があっても、同じ帯電交流電圧値で、最適な範囲の放電電流量に制御することができる。従って、装置の低コスト化、小型化を図ると共に、長期にわたり高画質、高品質の画像を安定して形成することができる。即ち、本実施例によれば、帯電部材に交流電圧を印加する電源を複数の画像形成部に対して共通としても、各画像形成部において適正な放電電流量を得ることができる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1では、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1の使用状況として、感光ドラム1の使用量と相関する画像形成枚数に応じて可変抵抗40の電気抵抗値を調整した。しかし、図3に示す画像形成装置100の動作シーケンスのように、記録材Pに対して画像を形成する際には、前多回転、紙間、後回転工程が含まれる。そのため、例えば連続で100枚の画像形成を行う場合と、1枚ずつ単独の画像形成を100回行う場合とでは、感光ドラム1の削れ量に差が生じる場合がある。
そこで、本実施例では、使用状況検知手段としてのカウンタ50は、感光ドラム1の使用状況情報として、感光ドラム1の使用量と相関する、感光ドラム1の回転数を検知する。尚、本実施例では、カウンタ50は、各画像形成部の感光ドラム1の回転数を、その駆動モータの駆動時間により計測する。即ち、カウンタ50は、駆動時間と感光ドラム1の回転速度とから感光ドラム1の回転数を求めて、それを積算し、記憶する。
表2は、本実施例における、放電電流量を100μAにするための、感光ドラムの回転数と最適な帯電交流電圧値との関係を示す。感光ドラム1の回転数4万回毎に、最適な帯電交流電圧値が変化する。従って、本実施例では、表2に従って、感光ドラム1の回転数の増加に伴って、帯電交流電圧値を下げていくのが望ましい。
しかし、本実施例のように、1つの交流電源から複数の画像形成部の帯電ローラ2に帯電交流電圧を印加する場合、次のような問題がある。
即ち、例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cの回転数が同じであれば、表2に従って各画像形成部において同時に帯電交流電圧を変化させていけば、過放電の問題は生じない。又、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cが同時に交換されるのであれば、同様に、過放電の問題は生じない。
しかしながら、実際、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの使用状況は、画像形成部ごとに異なる。例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれか1つの画像形成部のみを用いて画像を形成する場合など、感光ドラム1の回転数が第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で異なる場合がある。又、常に第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1を同時に交換することは、例えば、1つの画像形成部において不具合が生じた場合に、全ての画像形成部において交換しなくてはならないことを意味する。従って、低ランニングコストの観点などから、近年の画像形成装置では、画像形成部ごとに感光ドラム1を交換する構成が主に採用されている。
本実施例の画像形成装置100も、画像形成部ごとに、感光ドラム1の回転数が16万回転になった場合に、画像形成装置100の操作部(図示せず)において、感光ドラム1の交換を促すメッセージを表示する構成とした。
そのため、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1が同時に交換されなかった場合、或いは第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれかの感光ドラム1の回転数が大きい場合に、次のようになる。即ち、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、画像形成部間で放電電流量の差が大きくなることがある。
図10(a)、(b)、(c)は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で放電電流量の差が大きくなった場合のVpp−Iacの一例を示す。図10(a)は第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが交換したばかりの新品の場合、図10(b)は第2の画像形成部Sbの感光ドラム1bの回転数が寿命末期の16万回転の場合のVpp−Iacのグラフを示す。
図10において、第1の画像形成部Saで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第1の画像形成部Saには2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第2の画像形成部Sbにも同じ2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第2の画像形成部Sbでは放電電流量は250μAとなり、過放電気味になる。
一方、第2の画像形成部Sbで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第2の画像形成部Sbには1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第1の画像形成部Saにも同じ1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第1の画像形成部Saでは放電電流量は40μAとなり、放電電流量が不足して、砂地、かぶりなどの感光ドラム1の帯電不良による画像不良が生じる。
以上のように、1つの交流電源で複数の画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を並列に印加する構成では、同じ帯電交流電圧値ではいずれかの画像形成部において過放電になったり、帯電不良になったりする。
そこで、本実施例では、可変抵抗40a、40b、40cを、感光ドラム1の使用状況、特に、感光ドラム1の使用量と相関する感光ドラム1の回転数に応じて調整する。
図10の例に即して更に説明する。図10(a)に示すように第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが新品である場合は、可変抵抗40aを0Ωにした。図10(b)に示すように第2の画像形成部Sbの感光ドラム1bの回転数が16万回転の場合は、感光ドラム1bの容量が大きくなり、感光ドラム1bと帯電ローラ2bとの間で放電が起こりやすい状態にある。従って、この場合は、可変抵抗40bを5.0×106Ωとした。そして、帯電交流電圧値は、第1の画像形成部Saの新品の感光ドラム1aに合わせて、2150Vppとした。この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacを図10(c)に示す。図10(c)から、この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacのグラフの傾きは、感光ドラム1が新品である第1の画像形成部SaにおけるVpp−Iacのグラフ(図10(a))の傾きとほぼ同様になる。そして、2150Vppの帯電交流電圧を印加した時の放電電流量は110μAとなり、本実施例における最適な放電電流量の範囲となった。
本実施例では、可変抵抗40の電気抵抗値は、次のようにした。即ち、感光ドラム1の回転数が新品(0回転)〜1万回転の場合は0Ω、1万〜4万回転の場合は1.0×105Ω、4万〜8万回転の場合は5.0×105Ω、8万〜12万回転の場合は1.0×106Ω、12〜16万回転の場合は5.0×106Ωとした。これにより、帯電交流電圧値を新品の感光ドラム1の場合に必要な2150Vppとすることによって、第1〜第3の画像形成部Sa〜Scの全てにおいて、感光ドラム1の使用状況に拘わらず、放電電流量を100μA±20μAの範囲に制御することができる。
図11は、本実施例における、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧を調整する制御の手順を示す。
CPU70は、帯電バイアス制御のタイミング(本実施例では印字準備回転動作時)で、以下の処理を開始する(S201)。先ず、カウンタ50において第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cの回転数を検知する(S202)。感光ドラム1a、1b、1cの回転数の情報は、メモリ60に伝達される(S203)。そして、CPU70は、メモリ60に記憶された感光ドラム1a、1b、1cのそれぞれの回転数の情報に応じて、前述のとおりに可変抵抗40a、40b、40cをそれぞれ調整する(S204)。CPU70は、可変抵抗40a、40b、40cの調整を終了した後、印字工程時の帯電交流電圧値を、新品の感光ドラム1(感光ドラム回転数=0回)に対して必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値に決定する(S205)。本実施例では、放電電流量100μAに対する2150Vppに決定した。そして、この決定した帯電交流電圧値で帯電電圧の帯電交流電圧値を定電圧制御して、画像形成を行う(S206)。
又、S201において、帯電バイアス制御のタイミングではないと判断した場合は、S202〜S205の処理は行わずに、前回決定された帯電交流電圧値の設定で、画像形成動作に移行する(S206)。
このように、本実施例では、感光体の使用状況は、感光体の回転数で判断し、画像形成装置100は、使用状況検知手段として感光体の回転数を計数する手段(カウンタ)を有する。
以上、本実施例によれば、1つの交流電源から複数の画像形成部に帯電交流電圧を出力することで、安価で小型の構成とすることができる。そして、斯かる構成において、各画像形成部の感光ドラム1の回転数に応じて、各画像形成部の帯電ローラ2と交流電源との間に配置された可変抵抗40を調整する。これにより、各画像形成部間で感光ドラム1の磨耗量に差があっても、同じ帯電交流電圧値で、最適な範囲の放電電流量に制御することができる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1では、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1の使用状況として、感光ドラム1の使用量と相関する画像形成枚数に応じて可変抵抗40の電気抵抗値を調整した。しかし、実施例2について上述のように、図3に示す画像形成装置100の動作シーケンスのように、記録材Pに対して画像を形成する際には、前多回転、紙間、後回転工程が含まれる。そのため、例えば連続で100枚の画像形成を行う場合と、1枚ずつ単独の画像形成を100回行う場合とでは、感光ドラム1の削れ量に差が生じる場合がある。
そこで、本実施例では、使用状況検知手段としてのカウンタ50は、感光ドラム1の使用状況情報として、各画像形成部の帯電ローラ2に対する帯電交流電圧印加時間を検知する。尚、本実施例では、カウンタ50は、帯電電源部21からの帯電交流電圧の出力時間を積算し、記憶する。
表3は、本実施例における、放電電流量を100μAにするための、帯電交流電圧印加時間と最適な帯電交流電圧値との関係を示す。帯電交流電圧印加時間5h(時間)毎に、最適な帯電交流電圧値の値が変化する。従って、本実施例では、表3に従って、帯電交流電圧印加時間の増加に伴って、帯電交流電圧値を下げていくのが望ましい。
しかし、本実施例のように、1つの交流電源から複数の画像形成部の帯電ローラ2に帯電交流電圧を印加する場合、次のような問題がある。
即ち、例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電交流電圧印加時間が同じであれば、表3に従って各画像形成部において同時に帯電交流電圧を変化させていけば、過放電の問題は生じない。又、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1a、1b、1cが同時に交換されるのであれば、同様に、過放電の問題は生じない。
しかしながら、実際、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの使用状況は、画像形成部ごとに異なる。例えば、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれか1つの画像形成部を用いて画像を形成する場合など、帯電交流電圧印加時間が第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で異なる場合がある。又、常に第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1を同時に交換することは、例えば、1つの画像形成部において不具合が生じた場合に、全ての画像形成部において交換しなくてはならないことを意味する。従って、低ランニングコストの観点などから、近年の画像形成装置では、画像形成部ごとに感光ドラム1を交換する構成が主に採用されている。
本実施例の画像形成装置100も、画像形成部ごとに、帯電交流電圧印加時間が20hになった場合に、画像形成装置100の操作部(図示せず)において、感光ドラム1の交換を促すメッセージを表示する構成とした。
そのため、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1が同時に交換されなかった場合や、或いは第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのうちいずれかの帯電交流電圧印加時間が大きい場合に、次のようになる。即ち、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、画像形成部間で放電電流量の差が大きくなることがある。
図12(a)、(b)、(c)は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Sc間で放電電流量の差が大きくなった場合のVpp−Iacの一例を示す。図12(a)は第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが交換したばかりの新品の場合、図12(b)は第2の画像形成部Sbの帯電交流電圧印加時間が寿命末期の20hの場合のVpp−Iacのグラフを示す。
図12において、第1の画像形成部Saで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第1の画像形成部Saには2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第2の画像形成部Sbにも同じ2150Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第2の画像形成部Sbでは放電電流量は250μAとなり、過放電気味になる。
一方、第2の画像形成部Sbで放電電流量が100μAになるように帯電交流電圧を制御すると、第2の画像形成部Sbには1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。そして、1つの交流電源で並列に帯電交流電圧を印加する構成では、第1の画像形成部Saにも同じ1900Vppの帯電交流電圧が印加されることになる。この場合、第1の画像形成部Saでは放電電流量は40μAとなり、放電電流量が不足して、砂地、かぶりなどの感光ドラム1の帯電不良による画像不良が生じる。
以上のように、1つの交流電源で複数の画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を並列に印加する構成では、同じ帯電交流電圧値ではいずれかの画像形成部において過放電になったり、帯電不良になったりする。
そこで、本実施例では、可変抵抗40a、40b、40cを、感光ドラム1の使用状況、特に、帯電交流電圧印加時間に応じて調整する。
図12の例に即して更に説明する。図12(a)に示すように第1の画像形成部Saの感光ドラム1aが新品である場合は、可変抵抗40aを0Ωにした。図12(b)に示すように第2の画像形成部Sbの帯電交流電圧印加時間が20hの場合は、感光ドラム1bの容量が大きくなり、感光ドラム1bと帯電ローラ2bとの間で放電が起こりやすい状態にある。従って、この場合は、可変抵抗40bを5.0×106Ωとした。そして、帯電交流電圧値は、第1の画像形成部Saの新品の感光ドラム1aに合わせて、2150Vppとした。この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacを図12(c)に示す。
図12(c)から、この時の第2の画像形成部SbにおけるVpp−Iacのグラフの傾きは、感光ドラム1が新品である第1の画像形成部SbにおけるVpp−Iacのグラフ(図12(a))の傾きとほぼ同様になる。そして、2150Vppの帯電交流電圧を印加した時の放電電流量は110μAとなり、本実施例における最適な放電電流量の範囲となった。
本実施例では、可変抵抗40の電気抵抗値は、帯電交流電圧印加時間が0〜2hの場合は0Ω、2〜5hの場合は1.0×105Ω、5〜10hの場合は5.0×105Ω、10〜15hの場合は1.0×106Ω、15〜20hの場合は5.0×106Ωとした。これにより、帯電交流電圧値を新品の感光ドラム1の場合に必要な2150Vppとすることによって、第1〜第3の画像形成部Sa〜Scの全てにおいて、感光ドラム1の使用状況に拘わらず、放電電流量を100μA±20μAの範囲に制御することができる。
図13は、本実施例における、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧を調整する制御の手順を示す。
CPU70は、帯電バイアス制御のタイミング(本実施例では印字準備回転動作時)で、以下の処理を開始する(S301)。先ず、カウンタ50において第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電交流電圧印加時間を検知する(S302)。帯電交流電圧印加時間の情報は、メモリ60に伝達される(S303)。そして、CPU70は、メモリ60に記憶された第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれの帯電交流電圧印加時間に応じて、前述のとおりに可変抵抗40a、40b、40cをそれぞれ調整する(S304)。CPU70は、可変抵抗40a、40b、40cの調整を終了した後、印字工程時の帯電交流電圧値を、新品の感光ドラム1(帯電交流電圧印加時間=0h)に対して必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値に決定する(S305)。本実施例では、放電電流量100μAに対する2150Vppに決定した。そして、この決定した帯電交流電圧値で帯電電圧の帯電交流電圧値を定電圧制御して、画像形成を行う(S306)。
又、S301において、帯電バイアス制御のタイミングではないと判断した場合は、S302〜S305の処理は行わずに、前回決定された帯電交流電圧値の設定で、画像形成動作に移行する(S306)。
このように、本実施例では、感光体の使用状況は、帯電部材による感光体の帯電時間で判断し、画像形成装置100は、使用状況検知手段として帯電時間を計数する手段(カウンタ)を有する。
以上、本実施例によれば、1つの交流電源から複数の画像形成部に帯電交流電圧を出力することで、安価で小型の構成とすることができる。そして、斯かる構成において、各画像形成部の帯電交流電圧印加時間に応じて、各画像形成部の帯電ローラ2と交流電源との間に配置された可変抵抗40を調整する。これにより、各画像形成部間で感光ドラム1の磨耗量に差があっても、同じ帯電交流電圧値で、最適な範囲の放電電流量に制御することができる。
実施例4
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。
図14は、本実施例の画像形成装置100の全体敵な構成を示す模式図である。図14に示す本実施例の画像形成装置100は、図1に示す画像形成装置にける交流電流測定装置30a、30b、30c、30dが、直流電流測定装置80a、80b、80c、80dに置き換えられている。本実施例では、直流電流測定装置80の測定した直流電流値の情報が、制御回路34に入力される。
本実施例の画像形成装置100において、帯電交流電圧印加時間(h)と、感光ドラム1の電荷輸送層の磨耗量、つまり感光ドラム1の削れ量(μm)との関係を調べた結果を図15に示す。又、帯電交流電圧印加時間(h)と、直流電流測定装置80a、80b、80c、80dにおいて測定された直流電流値(−μA)との関係も図15に示す。
ここで、上記直流電流値の測定条件は、次のとおりである。即ち、感光ドラム1の帯電電位を−500V、一次転写ローラ5に印加する一次転写バイアスを+500Vとして、温度23℃、湿度5%の環境で測定した。
図15より、帯電交流電圧印加時間に応じて、感光ドラム1の削れ量は一様に増大することがわかる。又、図15より、感光ドラム1が削れることで、感光ドラム1の容量が増大し、直流電流値も同様に一様に増大することがわかる。
実施例3のように、帯電交流電圧印加時間から、感光ドラム1の削れ量を予測して、可変抵抗40a、40b、40cの調整値にフィードフォワードする制御も有効である。一方、上述のように直流電流値を測定することで、精度良く感光ドラム1の削れ量を予測でき、可変抵抗40a、40b、40cの調整値にフィードバックできる。
本実施例では、可変抵抗40の電気抵抗値は、次のようにした。即ち、測定された直流電流値が12〜14(−μA)の場合は0Ω、14〜17(−μA)の場合は1.0×105Ωとした。又、測定された直流電流値が17〜22(−μA)の場合は5.0×105Ω、22〜27(−μA)の場合は1.0×106Ω、27〜32(−μA)の場合は5.0×106Ωとした。これにより、帯電交流電圧値を新品の感光ドラム1の場合に必要な2150Vppとすることによって、第1〜第3の画像形成部Sa〜Scの全てにおいて、感光ドラム1の使用状況に拘わらず、放電電流量を100μA±20μAの範囲に制御することができる。
図16は、本実施例における、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧を調整する制御の手順を示す。
CPU70は、帯電バイアス制御のタイミング(本実施例では印字準備回転動作時)で、以下の処理を開始する(S401)。先ず、CPU70は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電電位を−500Vにするために、帯電直流電圧値を−500V、帯電交流電圧値を2150Vppとした帯電バイアスを印加させ、又+500Vの一次転写バイスを印加させる(S402)。次に、直流電流測定装置80a、80b、80cにおいて、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの感光ドラム1と帯電ローラ2との間に流れる直流電流を測定する(S403)。測定された直流電流値は、メモリ60に伝達される(S405)。そして、CPU70は、メモリ60に記憶された第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれの直流電流値に応じて、前述のとおりに可変抵抗40a、40b、40cをそれぞれ調整する(S405)。CPU70は、可変抵抗40a、40b、40cの調整を終了した後、印字工程時に交流電源部21が出力する帯電交流電圧値を、新品の感光ドラム1(直流電流値=−12μA)に対して必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値に決定する(S406)。本実施例では放電電流量100μAに対する2150Vppに決定した。そして、この決定した帯電交流電圧値で帯電電圧の帯電交流電圧値を定電圧制御して、画像形成行う(S407)。
又、S401において、帯電バイアス制御のタイミングではないと判断した場合は、S402〜S406の処理は行わずに、前回決定された帯電交流電圧値の設定で、画像形成動作に移行する(S407)。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、複数の帯電部材のうち少なくとも2つに共通して印加する交流電圧を出力する交流電源21を有する。又、画像形成装置100は、交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加する交流電圧を制御する制御手段を有する。又、画像形成装置100は、上記少なくとも2つ帯電部材のそれぞれと交流電源21との間に接続された複数の可変抵抗40を有する。又、画像形成装置100は、感光体を帯電させる際に上記少なくとも2つの帯電部材に流れる直流電流値をそれぞれ測定する直流電流測定装置80を有する。又、画像形成装置100は、複数の可変抵抗40のそれぞれの電気抵抗値を調整する調整手段を有する。本実施例では、CPU70が、上記制御手段と調整手段の機能を有する。そして、本実施例では、制御手段は、画像形成時に、感光体が直流電流測定装置80によって特定の直流電流値が測定される状態の場合に所定の放電電流量が得られるように設定された交流電圧を交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加させる。又、調整手段は、画像形成時に、次のようにして、上記少なくとも2つの帯電部材のそれぞれに接続された可変抵抗40の電気抵抗値を調整する。即ち、上記少なくとも2つの帯電部材と該帯電部材がそれぞれ帯電させる感光体との間で所定範囲内の放電電流量が得られるように、非画像形成時に直流電流測定装置80によって上記少なくとも2つの帯電部材について測定した直流電流値に応じて調整する。
以上、本実施例によれば、1つの交流電源から複数の画像形成部に帯電交流電圧を出力することで、安価で小型の構成とすることができる。そして、斯かる構成において、各画像形成部の感光ドラム1の削れ量を帯電直流電流値を測定することで検知した結果に応じて、各画像形成部の帯電ローラ2と交流電源との間に配置された可変抵抗40を調整する。これにより、各画像形成部間で感光ドラム1の磨耗量に差があっても、同じ帯電交流電圧値で、最適な範囲の放電電流量に制御することができる。
実施例5
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1〜4では、目標の放電電流量になるように、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、ScのVpp−Iacを、可変抵抗40a、40b、40cを調整することで合わせた。
しかし、上記放電電流量は、環境、感光ドラム1の使用量などによって変化する。これは、Vpp−Iacの特性が少しずつ変動するために、完全に放電電流量が一定にはなっていないからである。従って、実施例1〜4の方法では、必要な放電電流量100μAに対して、±20μAの誤差を設けていた。
これに対して、本実施例では、より正確に必要な放電電流量が得られるように、以下の要領で制御を行う。先ず、1つの画像形成部(即ち、1つの帯電ローラ)に注目して、本実施例における放電電流量制御について説明する。複数の画像形成部で交流電源を共通とした場合の帯電交流電圧の決定方法については後述して詳しく説明する。
ここでは、必要な放電電流量をDとしたときに、この放電電流量Dとなる帯電交流電圧値Vppを決定するものとする。
先ず、図17に示すように、制御回路34は、交流電圧回路21を制御して、帯電交流電圧値を放電領域の3点、未放電領域の3点に順次に変化させて、帯電ローラ2に印加する。そして、各値の帯電交流電圧の印加時に感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる交流電流値Iacが、対応する交流電流測定装置30で測定されて、制御回路34に入力される。
次に、制御回路34は、図18に示すように、測定された放電域、未放電領域のそれぞれについて各3点の電流値から、最小二乗法を用いて、帯電交流電圧値と帯電交流電流値との関係を直線近似して、下記式2、式3をそれぞれ算出する。
放電領域の近似直線:Yα=αXα+A ・・・式2
未放電領域の近似直線:Yβ=βXβ+B ・・・式3
その後、制御回路34は、上記式2の放電領域の近似直線Yαと上記式3の未放電領域の近似直線Yβとの差分が放電電流量Dとなる帯電交流電圧値Vppを、下記式4によって決定する。
Vpp=(D−A+B)/(α−β) ・・・式4
ここで、上記式4は、次のように誘導される。上記式2の放電領域の近似直線と上記式3の未放電領域の近似直線との差分が放電電流量Dであるので、
Yα−Yβ=(αXα+A)−(βXβ+B)=D
となる。
今、DとなるXの値を探しており、その点をVppとすると、
(αVpp+A)−(βVpp+B)=D
よって、
Vpp=(D−A+B)/(α−β)
となる。
そして、印字工程では、帯電ローラ2に印加する帯電交流電圧値を上記式4で求めた値に切り替えて、定電圧制御する。
このように、本実施例では、毎回、印字準備回転動作時に、印字工程時に必要な放電電流量を得るのに必要な帯電交流電圧値を算出する。そして、印字工程中には、その求めた帯電交流電圧値における定電圧制御で帯電電圧を印加する。これにより、帯電ローラ2、感光ドラム1の製造ばらつきや材質の環境変動又は経時変化に起因する電気抵抗値の振れ、或いは画像形成装置100の電源回路の特性のばらつきを吸収し、より正確に必要な放電電流量を得ることが可能となる。
次に、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧の制御について説明する。尚、ブラック画像形成部Sdの帯電ローラ2dに印加する帯電交流電圧は、上述の方法により直接求めることができる。
図19(a)、(b)、(c)は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれについて求めた、帯電交流電圧値Vppと帯電交流電流値Iacとの関係(Vpp−Iac)の一例を示す。
図19に示すように、使用頻度、感光ドラム1の交換時期、帯電ローラ2の電気抵抗の振れなどによって、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、ScのそれぞれについてのVpp−Iacのグラフはずれる。その結果、図19の例では、例えば必要な放電電流量が100μAの場合に、前述の本実施例の方法で必要な帯電交流電圧値を計算すると、次のようになる。即ち、第1の画像形成部Saでは1920Vpp、第2の画像形成部Sbでは1800Vpp、第3の画像形成部Scでは2120Vppとなる。
ここで、各画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を印加する電源を個別に設ける場合には、画像形成部毎に必要な帯電交流電圧値を求め、各画像形成部の帯電部材にそれぞれの値の帯電交流電圧を印加すれば、適正な放電電流量が得られる。しかし、本実施例のように、複数の画像形成部で帯電部材に帯電交流電圧を印加する電源を共通とする場合には、それらの画像形成部については、画像形成部毎に異なる値の帯電交流電圧を印加することはできない。
図20は、本実施例における、交流電源を共通にしたカラー画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに印加する帯電交流電圧を制御する手順を示す。
CPU70は、帯電バイアス制御のタイミング(本実施例では印字準備回転動作時)で、以下の処理を開始する(S501)。先ず、第1の交流増幅回路25aによって、帯電交流電圧値を放電領域の3点、未放電領域の3点に順次に変更して、帯電ローラ2a、2b、2cに印加する(S502)。又、上記帯電交流電圧の出力時に、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれについて交流電流測定装置30a、30b、30cで測定された帯電交流電圧値が、メモリ60に記憶される(S503)。
次に、CPU70は、メモリ60に記憶された第1〜第3の画像形成部Sa〜Scのそれぞれについての、印加した帯電交流電圧値に対する測定された帯電交流電流値の情報から、図17、図18で説明した計算方法によって近似直線を2つ算出する(S504)。上記情報は、放電領域の(Vα1、Iα1)、(Vα2、Iα2)、(Vα3、Iα3)の3点の情報、未放電領域の(Vβ1、Iβ1)、(Vβ2、Iβ2)、(Vβ3、Iβ3)の3点の情報である。
次に、CPU70は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scのそれぞれについて、必要な放電電流量に対する必要な帯電交流電圧値を、上述の式4によって計算する(S505)。本実施例では、必要な放電電流量は100μAである。この必要な放電電流量100μAに対して、必要な帯電交流電圧値は、例えば図19に示すように、第1の画像形成部Saでは1920Vpp、第2の画像形成部Sbでは1800Vpp、第3の画像形成部Scでは2120Vppと計算される。この場合、本実施例では、CPU70は、最大の帯電交流電圧値である、第3の画像形成部Scの2120Vppを印字工程時にカラー画像形成部Sa、Sb、Scに印加する帯電交流電圧値に決定する(S506)。
次に、CPU70は、上記帯電交流電圧値が最大値となる画像形成部以外の第1の画像形成部Sa、第2の画像形成部Sbの放電電流量が、必要な放電電流量Dに対して誤差10%以内であるか否か、つまり、
0.9D≦D≦1.1D
の範囲に入っているか否かを判断する(S507)。CPU70は、第1、第2の画像形成部Sa、Sbについてそれぞれ算出した2つの近似直線から、第1、第2の画像形成部Sa、Sbにおける放電電流量をそれぞれ求めることができる。本実施例では、必要な放電電流量Dは100μAであるので、90〜110μAの範囲に入っているか否かを判断する。
図19に示す例では、第3の画像形成部Scに合わせて2120Vppの帯電交流電圧を出力すると、第1の画像形成部Saでは放電電流量が200μA、第2の画像形成部Sbでは放電電流量が300μAとなり、誤差10%以内にはならない。
そこで、CPU70は、S507において、誤差10%以内ではない画像形成部がある場合には、上記帯電交流電圧値が最大値となる画像形成部以外の画像形成部に対して設けられた可変抵抗40を調整する(S509)。このとき、CPU70は、Vpp−Iacを上記帯電交流電圧値が最大値となる画像形成部のものに近づけるように、それ以外の画像形成部に対して設けられた可変抵抗40を調整する。このとき、可変抵抗を1度にどの程度変更するかは、制御の精度、制御の複雑さなどに鑑みて適宜決定することができるが、例えば前述の各実施例と同様に、可変抵抗を5段階で変更するように構成することができる。
図19に示す例では、第3の画像形成部Sbでは可変抵抗40cは0Ω、第1の画像形成部Saでは可変抵抗40aは1.0×106Ω、第2の画像形成部Sbでは可変抵抗40bは5.0×106Ωに調整する。これにより、第1、第2の画像形成部Sa、SbのVpp−Iacは第3の画像形成部ScのVpp−Iacとほぼ同等になる。
そして、可変抵抗40の調整後に、再び、Vpp−Iacの計算を実行する(S502)。S507において誤差が10%以内になれば、画像形成動作に移行する(S508)。このとき、S506で決定した帯電交流電圧値で帯電電圧の帯電交流電圧値を定電圧制御して、画像形成動作を行う。
又、S501において、帯電バイアス調整のタイミングではないと判断した場合は、S502〜S507の処理は行わずに、前回決定された帯電交流電圧値、可変抵抗40の設定で、画像形成動作に移行する(S508)。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、複数の帯電部材のうち少なくとも2つに共通して印加する交流電圧を出力する交流電源21を有する。又、画像形成装置100は、交流電源21から交流電圧が印加されることで上記少なくとも2つの帯電部材に流れる交流電流をそれぞれ測定する交流電流測定装置30を有する。又、画像形成装置100は、交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加する交流電圧のピーク間電圧値を制御する制御手段を有する。又、画像形成装置100は、上記少なくとも2つ帯電部材のそれぞれと交流電源21との間に接続された複数の可変抵抗40を有する。又、画像形成装置100は、複数の可変抵抗のそれぞれの電気抵抗値を調整する調整手段を有する。本実施例では、CPU70が、上記制御手段と調整手段の機能を有する。そして、本実施例では、制御手段は、次のような制御を行う。即ち、交流電源から上記少なくとも2つの帯電部材に交流電圧を印加してそれぞれに流れる交流電流値を交流電流測定装置で測定した結果から、所定の放電電流量を得るために交流電源から印加することが必要な交流電圧のピーク間電圧値をそれぞれ算出する。そして、算出された必要な交流電圧のピーク間電圧値のうち最大値を、画像形成時に交流電源21から上記少なくとも2つの帯電部材に印加する交流電圧を定電圧制御する目標値に決定する。又、調整手段は、画像形成時に、次のようにして、上記少なくとも2つの帯電部材のうち上記最大値が算出された帯電部材以外の帯電部材のそれぞれに接続された可変抵抗40の電気抵抗値を調整する。即ち、上記目標値により上記少なくとも2つの帯電部材に印加する交流電圧を制御した際に、上記少なくとも2つの帯電部材と該帯電部材がそれぞれ帯電させる感光体との間で所定範囲内の放電電流量が得られるように調整する。
即ち、本実施例では、交流電源を共通にした複数の画像形成部の中で、必要な放電電流量に対して計算された帯電交流電圧値が最大値である画像形成部の帯電交流電圧値に合わせる。これによって、交流電源を共通にした複数の画像形成部の中の他の画像形成部では、砂地やかぶりなどの感光ドラム1の帯電不良による画像不良は発生しない。次に、その他の画像形成部に対して設けられた可変抵抗40の電気抵抗値を大きい方へ調整する。これによって、その他の画像形成部のVpp−Iacは、上記帯電交流電圧値が最大値である画像形成部のVpp−Iacに近づく。そのため、共通の交流電源から同じ値の帯電交流電圧を印加した場合でも、各画像形成部の放電電流量を、例えば誤差10%以内などの所定の誤差範囲内に調整することができる。本実施例では、所定の放電電流量100μAに対して、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの放電電流量は100±10μAの範囲に調整することができた。
尚、本実施例では、放電領域、未放電領域において、それぞれ3点の帯電交流電圧値と帯電交流電流値とのデータから、近似直線を求めた。但し、当業者には明らかなように、放電領域では、少なくとも2点のデータから近似直線を求めることができる。又、未放電領域では、ゼロ点と少なくとも1点のデータから近似直線を求めることができる(この場合Yβ=βXβ)。
以上、本実施例によれば、放電電流制御を行うと共に、可変抵抗を調整する。これにより、1つの交流電源で複数の画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を印加する安価で小型の構成において、砂地などの帯電不良がなく、又過放電ならずに、必要な放電電流量に対し、適正な帯電交流電圧値を出力することができる。
(その他)
本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、イエロー、マゼンタ、シアンの各色用の画像形成部の帯電部材に帯電交流電圧を印加する交流電源を共通にした。しかし、1つの交流電源から複数の画像形成部の帯電部材に交流電圧を印加する構成であれば、本発明を適用して上述と同様の効果を得ることができる。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用の画像形成部の全ての帯電部材に交流電圧を印加する交流電源を共通にすることもできる。
又、上述の実施例では、可変抵抗は電気抵抗値を5段階に調整できるものとした。しかし、可変抵抗の電気抵抗の調整段階数を更に増加することで、より必要の放電電流量に対して誤差の少ない調整を行うことができる。又、可変抵抗の調整範囲を更に大きくすることで、感光ドラムが更に磨耗した場合においても、必要な放電電流量となるように調整することができる。
又、上述の実施例では、各画像形成部の感光ドラムの使用状況として、画像形成枚数、感光ドラムの回転数、又は感光ドラムの帯電時間を検知する場合について説明した。しかし、斯かる態様に限定されるものではなく、これらの複数を組み合わせることも可能である。これにより、感光ドラムの使用状況の検知精度を向上することができる。
又、上述の実施例では、非画像形成時である印字準備回転動作期間に、印字工程の帯電工程における帯電交流電圧のピーク間電圧値又は交流電流値の演算・決定プログラムを実行した。しかし、当該プログラムは、他の非画像形成時、即ち、初期回転動作時、紙間工程時又は後回転工程時で実行してもよいし、複数の非画像形成時に実行してもよい。
又、上述の実施例では、ドラムクリーニング装置を用いた画像形成装置を例とした。しかし、ドラムクリーニング装置がなく、現像装置において現像同時クリーニングを行う、所謂、クリーナレスの画像形成装置においても、本発明を適用して上述と同様の効果を得ることができる。
又、感光ドラムは、その表面抵抗が109〜1014Ω・cmの電荷注入層を設けた直接注入帯電性のものであってもよい。電荷注入層を用いていない場合でも、例えば電荷輸送層が上記の抵抗範囲にある場合も同等の効果がえられる。更に、感光ドラムとして、表層の体積抵抗が約1013Ωであるアモルファスシリコン感光体を用いてもよい。
又、上述の実施例では、帯電部材として可撓性のローラ型の接触帯電部材である帯電ローラを用いた。しかし、これ以外にも、例えばファーブラシ、フェルト、布などの形状・材質のものも使用可能である。更に、各種材質のものを組み合わせることによって、より適切な弾性、導電性、表面性、耐久性のものを得ることができる。
又、帯電部材に印加する振動電界の交番電圧成分(AC成分、周期的に電圧値が変化する電圧)の波形としては、正弦波、矩形波、三角波などを適宜使用可能である。更に、直流電源を周期的にオン/オフすることによって形成された矩形波であってもよい。
又、上述の実施例では、画像形成装置は中間転写方式のものであるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。タンデム型の画像形成装置として、上述の実施例の画像形成装置における中間転写体の代わりに記録材担持体を有し、この記録材担持体に担持された記録材に感光体から直接トナー像を転写する直接転写方式のものがある。記録材担持体としては、無端ベルト状の記録材担持ベルトなどが用いられる。例えばフルカラーの画像形成持には、記録材担持体上に担持された記録材上に複数色のトナー像が順次重ね合わせるようにして転写される。その後、この記録材上のトナー像が記録材に定着されることでカラー画像が得られる。本発明は斯かる直接転写方式の画像形成装置にも適用することができ、上述と同様の効果を得ることができる。