従来、電子写真方式や静電記録方式の画像形成装置において、感光体、誘電体などの被帯電体としての像担持体の表面を帯電させる方法としては、非接触帯電方式であるコロナ帯電が一般的であった。コロナ帯電では、細いコロナ放電ワイヤに高圧を印加して発生するコロナを像担持体の表面に作用させて帯電を行なう。
近年は、低電圧プロセス、低オゾン発生量、低コストなどの点から、ローラ型、ブレード型などの帯電部材を像担持体の表面に接触させ、この帯電部材に電圧を印加することにより像担持体の表面を帯電させる接触帯電方式が主流となりつつある。特に、ローラ型の帯電部材は、長期にわたって安定した帯電を行なうことが可能である。
帯電部材に印加する電圧は直流電圧のみでも良いが、振動電圧を印加し、プラス側、マイナス側への放電を交互に起こすことで、帯電を均一に行なわせることができる。
例えば、直流電圧を印加したときの被帯電体の放電開始閾値電圧(放電開始電圧,帯電開始電圧)の2倍以上のピーク間電圧を有する交流電圧と、直流電圧(直流オフセットバイアス)とを重畳した振動電圧を印加する。これにより、被帯電体の帯電を均して均一な帯電を行なうことができる。
この振動電圧の波形は、正弦波に限らず、矩形波、三角波、パルス波でも良い。又、この振動電圧には、直流電圧を周期的にオン/オフすることによって形成された矩形波の電圧や、直流電圧の値を周期的に変化させて交流電圧と直流電圧との重畳電圧と同じ出力としたものも含まれる。
帯電部材に振動電圧を印加して帯電する接触帯電方式を「AC帯電方式」という。又、直流電圧のみを印加して帯電する接触帯電方式を「DC帯電方式」という。
AC帯電方式においては、DC帯電方式と比べて像担持体への放電量が増えるため、像担持体の削れなどの像担持体の劣化が促進されると共に、放電生成物による高温高湿環境での画像流れなどの異常画像が発生する場合がある。
この問題に対しては、帯電部材に必要最小限の電圧を印加することにより、プラス側、マイナス側で交互に発生する放電を最小限にすることが望まれる。
しかし、実際には、帯電部材に印加する電圧と放電量との関係は常に一定であるわけではなく、像担持体の感光体層や誘電体層の膜厚、帯電部材や空気の環境変動などにより変化する。低温低湿(L/L)環境では材料が乾燥して電気抵抗値が上昇し、放電し難くなる。そのため、L/L環境において均一な帯電を得るためには、一定値以上のピーク間電圧が必要となる。一方、このL/L環境において帯電均一性が得られる最低の電圧値を帯電部材に印加した場合でも、高温高湿環境(H/H)では逆に材料が吸湿し電気抵抗値が低下するため、帯電部材は必要以上の放電を起こすことになる。その結果、放電量が増加して、画像流れやボケの発生、トナー融着の発生、像担持体の表面の劣化による像担持体の削れや短命化などの問題が起こることがある。
この環境変動による放電の増減を抑制するために、常に一定の交流電圧を印加する「AC定電圧制御方式」の他に、帯電部材に交流電圧を印加することで流れる交流電流値を制御する「AC定電流制御方式」がある。このAC定電流制御方式によれば、材料の電気抵抗が上昇するL/L環境では交流電圧のピーク間電圧値を上げ、逆に材料の電気抵抗が下降するH/H環境ではピーク間電圧値を下げることができる。そのため、AC定電圧制御方式に比べて放電の増減を抑制することが可能である。
ここで、帯電部材は、像担持体の表面に必ずしも接触している必要はない。帯電部材と像担持体との間に、ギャップ間電圧と補正パッシェンカーブで決まる放電可能領域さえ確実に保証されれば、例えば数10μmの空隙(間隙)を有して非接触に近接配置されていてもよい(近接帯電方式)。本発明は近接帯電方式の画像形成装置にも適用できるものであるが、以下、接触帯電方式を例として説明する。
更なる像担持体の長寿命化を目指したとき、AC定電流制御方式においても、帯電部材の製造ばらつきや汚れによる電気抵抗値変動、耐久による像担持体の静電容量変動、装置本体の高圧装置のばらつきなどによる放電量の増減を抑制するには完全ではない。この放電量の増減を抑えるためには、帯電部材の製造ばらつきや環境変動を抑えること、或いは高圧装置のふれを無くすことが望まれるが、それによってコストアップを招くおそれがある。
この問題に対して、特許文献1に記載されるような、「放電電流制御方式」が提案されている。即ち、帯電部材に直流電圧を印加した時の像担持体への放電開始電圧をVthとしたときに、Vthの2倍以上の領域(放電領域)と、Vthの2倍未満の領域(未放電領域)とで、交流電圧と交流電流との関係を求める。そして、それによって求まる関数の差により放電電流量を求め、その量を一定にするように制御する。放電電流制御方式によれば、環境や製造のばらつきによる帯電部材の電気抵抗値のばらつきなどに拘わらず、過剰放電を起こさせず、常に一定量の放電を生じさせることができる。従って、像担持体の劣化、トナー融着、画像流れなどの問題がなく、均一な帯電を行なえるようになる。
ところで、近年、プリンタなどの画像形成装置では、使用者のプリントニーズの多様化に伴い、厚紙、OHPなどの多種のメディアにプリントすることが望まれている。又、高解像度(画素密度)への対応が求められている。そのため、1つの機器で複数のプロセススピード(プリントスピード)を持つことでこれに対応することが行われている。
しかし、振動電圧を印加する接触帯電方式を使用した画像形成装置において、複数のプロセススピードに対応する場合、以下のような問題がある。
A)第1の問題点は、帯電部材に印加される振動電圧の周波数(帯電周波数)と、露光手段(静電潜像形成手段)のライン走査のラインピッチの空間周波数とが重なった場合に発生する「モアレ像」と呼ばれる干渉縞である。
この現象に対しては、例えば空間周波数fsに対して帯電周波数fpを十分に大きくするという対策が考えられるが、帯電周波数が大きくなるのに従って大きくなる帯電音の弊害などがある。
B)第2の問題点は、帯電部材に印加される振動電圧の周波数(帯電周波数)が、現像手段の現像スリーブに印加される振動電圧の周波数の整数倍又は整数分の1の関係に近い場合に発生する周期的な「現像ムラ」である。
この現像ムラは、帯電周波数が現像スリーブに印加される振動電圧の周波数の整数倍又は整数分の1の周波数の前後である場合に発生する。又、基本的には像担持体の表面電位ムラであるため、解像度が高い画像をプリントする場合の方が、ムラの識別が容易となるため、ムラが発生する帯電周波数の範囲が広くなる傾向がある。
又、特に帯電手段と現像手段とを一体化して、画像形成装置の装置本体から着脱可能なプロセスカートリッジとした場合、上述の画像ムラと同様の異常画像が発生する場合があった。これは、装置本体との接点の構造上、帯電電圧を帯電部材に供給する導電路の近傍に現像電圧を現像スリーブに供給する導電路が配置される場合があり、両者が浮遊容量を介して相互に干渉しあって各々の電圧にうなり成分が発生するためと考えられる。
C)第3の問題点は、プロセススピードが変更されたにも拘わらず帯電周波数を変更しないことによる、次のような現象である。即ち、プロセススピードが遅くなっている時には、像担持体が単位面積当たりに受ける放電回数が増えることで、高湿環境下での画像の流れやボケ、像担持体の劣化や削れが促進される。逆に、プロセススピードが早くなっている時には、放電の回数が減ることで、充分な帯電が行なわれず帯電ムラや帯電不良などが発生する。
この問題に対しては、プロセススピードの変化の割合と同じ割合で帯電周波数を変更することが考えられる。
以上の第1、第2、第3の問題点に対しては、プロセススピードを変更する場合に、帯電周波数を変更することが望まれる。
従って、プロセススピードが可変である画像形成装置において、高品質の画像を提供するには、帯電周波数の変更と、前述の放電電流制御方式とを組み合わせることが有効であると考えられる。
しかしながら、同じ振動電圧のピーク間電圧であっても、周波数を下げた時にはAC電流値は少なくなり、逆に周波数を高くした時には多くのAC電流が流れることとなる。それため、プロセススピードに応じて帯電周波数を変更する画像形成装置において、放電電流制御を行おうとすれば、測定するAC電流値の範囲は広くなる。そして、広範囲で精度よく測定を行なうには、使用する電子部品などによるコストアップを招くことになる。又、安価にこのAC電流値を測定しようとすると、測定精度の低下に繋がる。
又、各プロセススピードにおいて、それぞれ放電電流制御を行なうと、画像形成動作以外の作動時間が長くなり、ユーザビリティの低下を招くおそれがある。
ここで、特許文献2は、次のような方法を提案している。即ち、放電電流制御方式を用いる場合に、複数のプロセススピードのうち1つにおいて帯電部材に印加する交流電圧(帯電交流電圧)のピーク間電圧を決定した結果から、その他すべてのプロセススピードに対する帯電交流電圧のピーク間電圧を算出する方法である。
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体構成
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、転写方式電子写真プロセスを利用し、又、接触帯電方式、反転現像方式を採用した、最大通紙サイズがA3サイズのレーザビームプリンタである。
画像形成装置100は、第1の像担持体としての回転可能なドラム型の感光体(電子写真感光体)、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図示矢印R1方向(反時計方向)に回転駆動される。感光ドラム1の回転方向に沿って、その周囲には、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段である接触帯電部材としての帯電ローラ(ローラ帯電器)2である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、転写手段である接触転写部材としての転写ローラ5である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置7である。又、帯電ローラ2と現像装置4との間の図中上方には、露光手段(静電潜像形成手段)としての露光装置3が設置されている。又、感光ドラム1と転写ローラ5との間に形成される転写部dよりも、転写材Pの搬送方向下流側には、定着手段としての定着装置6が設置されている。
感光ドラム1は、本実施例では、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。感光ドラム1は、駆動手段としてのモータなどの駆動装置によって駆動されて、300mm/secのプロセススピード(本実施例では感光ドラム1の周速度に対応)で図示矢印R1方向(反時計方向)に回転駆動される。感光ドラム1は、図2に示すように、アルミニウム製シリンダ(導電性ドラム基体)1aの表面に、光の干渉を抑え上層の接着性を向上させる下引き層1bと、光電荷発生層1cと、電荷輸送層1dとの3層を下から順に塗布して構成されている。
帯電ローラ2は、芯金2aの両端部をそれぞれ軸受け部材により回転自在に保持されると共に、付勢手段としての押圧ばね2eによって感光ドラム1の中心方向に付勢されて、感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力をもって圧接されている。そして、帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転駆動に従動して図示矢印R2方向(時計方向)に回転する。感光ドラム1と帯電ローラ2との圧接部が帯電部(帯電ニップ部)aである。
帯電ローラ2の芯金2aには、帯電電圧印加手段(バイアス印加手段)としての帯電電源S1より所定の条件の帯電電圧(帯電バイアス)が印加されることにより、感光ドラム1の周面が所定の極性・電位に接触帯電処理される。本実施例では、帯電ローラ2に対して印加する帯電電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。より具体的には、本実施例では、帯電電圧は、−500Vの直流電圧と、周波数2kHzの交流電圧とを重畳した振動電圧であり、感光ドラム1の周面は−500V(暗電位Vd)に一様に接触帯電処理される。
露光装置3は、本実施例では、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナである。露光装置3は、画像読み取り装置(図示せず)などのホスト処理から入力される画像信号に対応して変調されたレーザ光を出力して、感光ドラム1の一様帯電処理面を、露光位置bにおいて走査露光(イメージ露光)Lする。この走査露光Lにより感光ドラム1の表面のレーザ光で照射された部分の電位が低下することで、感光ドラム1の表面には、走査露光した画像情報に対応した静電潜像(静電像)が順次に形成される。
現像装置4は、本実施例では、2成分磁気ブラシ現像方式の反転現像装置であり、感光ドラム1の表面の露光部分(明部)にトナーを付着させて、感光ドラム1の表面上の静電潜像を反転現像する。即ち、感光ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分に、感光ドラム1と同極性に帯電したトナーを付着させて現像を行う。この現像装置4は、現像容器4aの開口部に、現像剤担持体として、固定マグネットローラ4cを内包した回転自在な非磁性の現像スリーブ4bが設けられている。現像容器4a内に収容された現像剤4eが、規制ブレード4dで薄層状に現像スリーブ4b上にコーティングされる。そして、現像スリーブ4bは、そのコーティングされた現像剤4eを、感光ドラム1と対向する現像部cへ搬送する。現像容器4a内の現像剤4eは、非磁性トナーと磁性キャリアとの混合物であり、2つの現像剤攪拌部材4fの回転によって、均一に攪拌されながら現像スリーブ4b側に搬送される。
本実施例では、磁性キャリアは、その電気抵抗値は約1013Ωcm、粒径は40μmである。又、本実施例では、トナーは磁性キャリアとの摺擦により負極性に摩擦帯電される。又、現像容器4a内のトナー濃度は、濃度センサ(図示せず)によって検知される。そして、その検知情報に基づいてトナーホッパー4gから適正量のトナーが現像容器4aに補給されて、トナー濃度が一定に調整される。
現像スリーブ4bは、現像部cにおいて、感光ドラム1との最近接距離を300μmに保持して感光ドラム1に近接対向配設されている。又、現像スリーブ4bは、その表面が現像部cにおいて感光ドラム1の表面の移動方向とは逆方向に移動するように回転駆動(図示矢印R4方向)される。
現像スリーブ4bには、現像電圧印加手段としての現像電源S2から所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像時に現像スリーブ4bへ印加する現像電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。より具体的には、本実施例では、−350Vの直流電圧と、ピーク間電圧8kVの交流電圧とを重畳した振動電圧である。
転写ローラ5は、感光ドラム1に所定の押圧力をもって当接して転写部dを形成している。転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源S3から転写電圧(転写バイアス)が印加される。より具体的には、転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の転写電圧(本実施例では+500V)の転写電圧が印加される。これによって、この転写部dにて、第2の像担持体(被転写体)としての用紙などの転写材Pに、感光ドラム1の表面のトナー像が転写される。転写ローラ5は、図示矢印R5方向に回転する。
定着装置6は、回転自在な定着ローラ6aと加圧ローラ6bとを有しており、定着ローラ6aと加圧ローラ6bとの間の定着ニップ部にて転写材Pを挟持搬送しながら、転写材Pの表面に転写されたトナー像を加熱加圧して熱定着する。
クリーニング装置7は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード7aを有する。転写材Pに対するトナー像転写後の感光ドラム1の表面は、クリーニングブレード7aにより摺擦されて、その上に付着した転写残トナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返して画像形成に供される。図中eは、クリーニングブレード7aの感光ドラム1の表面に対する当接部である。
又、本実施例では、画像形成装置100は、感光ドラム1の回転方向(表面移動方向)においてクリーニング装置7より下流、且つ、帯電ローラ2よりも上流において、感光ドラム1の表面に光を照射する前露光手段としての前露光装置8を有する。前露光装置8は、転写工程後に感光ドラム1の表面に残っている残留電荷を光照射によって除電処理し、帯電工程前の感光ドラム1の表面電位をゼロ近傍に一定とする。
本実施例では、露光装置3と現像装置4とで、帯電ローラ2にて帯電された感光ドラム1にトナー像を形成するトナー像形成手段が構成される。
2.プロセススピード変更
本実施例の画像形成装置100はメディアフレキシブルであり、厚紙、OHPなどの多種のメディア(記録媒体)に対応している。
しかし、厚紙、OHPなどでは、熱容量が大きく、トナー像の定着がし難いため、普通紙に対する通常のプロセススピードで定着すると、未定着画像やOHPの透過性が悪いなどの問題が発生することがある。
そこで、本実施例では、転写材Pが通過する際の定着装置6の搬送速度を遅くすることで、充分な加圧・加熱時間をかけてトナー像を定着させる方法を採用している。ただし、定着装置6においてのみ搬送速度を低速度にすることは、コストアップや装置構成の点で難しく、装置全体のプロセススピードを低速にする方法を用いている。
より具体的には、本実施例の画像形成装置100においては、普通紙に対する通常モード(等速モード)の他に、厚紙やOHPなど(特殊紙)に対応した1/2速モード、1/4速モードがある。1/2速モード、1/4速モードでは、通常モードのプロセススピード300mm/secから、それぞれ150mm/sec、75mm/secにプロセススピードを変更している。
これに対し、帯電ローラ2に印加する交流電圧の周波数も、通常モード、1/2速モード、1/4速モードに対して、それぞれ2kHz、1kHz、500Hzと変更している。
3.装置全体シーケンス
図3は、画像形成装置100の動作シーケンス図である。
a.初期回転動作(前多回転工程)
画像形成装置100の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。電源スイッチのオンにより、感光ドラム1を回転駆動させ、又定着装置6の所定温度への立ち上げなどの所定のプロセス機器の準備動作を実行させる。
b.印字準備回転動作(前回転工程)
プリント信号のオンから実際に画像形成(印字)工程動作がなされるまでの間の画像形成前の準備回転動作期間であり、初期回転動作中にプリント信号が入力したときには初期回転動作に引き続いて実行される。プリント信号の入力がないときには初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置100はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。プリント信号が入力すると印字準備回転動作が実行される。
本実施例においては、この印字準備回転動作期間において、印字工程の帯電工程における印加交流電圧の適切なピーク間電圧値(又は交流電流値)の演算・決定プログラムが実行される。これについては後述する。
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)
所定の印字準備回転動作が終了すると、引き続いて回転感光ドラム1に対する作像プロセスが実行され、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像の転写材Pへの転写、定着装置6によるトナー像の定着処理がなされて、画像形成物が装置外に出力される。
連続印字(連続プリント)モードの場合は上記の印字工程が所定の設定プリント枚数n分繰り返して実行される。
d.紙間工程
連続印字モードにおいて、一の転写材Pの後端部が転写位置dを通過した後、次の転写材Pの先端部が転写位置dに到達するまでの間の、転写位置dにおける転写材Pの非通過状態期間である。
e.後回転動作
最後の転写材Pの印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動を継続させて感光ドラム1を回転駆動させ、所定の後動作を実行させる期間である。
f.スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、画像形成装置100は次のプリントスタート信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。
1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、画像形成装置100は後回転動作を経てスタンバイ状態になる。
スタンバイ状態において、プリントスタート信号が入力すると、画像形成装置100は前回転工程に移行する。
上記cの印字工程時が画像形成時であり、上記aの初期回転動作、上記bの前回転動作、上記dの紙間工程及び上記eの後回転動作が非画像形成時である。
4.帯電ローラ
本実施例では、帯電ローラ2の長手方向長さは320mmであり、図2に示すように、芯金(支持部材)2aの外回りに、下層2bと、中間層2cと、表層2dとを下から順次に積層した3層構成である。下層2bは帯電音を低減するための発泡スポンジ層であり、表層2dは、感光ドラム1上にピンホールなどの欠陥があってもリークが発生するのを防止するために設けている保護層である。より具体的には、本実施例における帯電ローラ2の仕様は下記の通りである。
芯金2a:直径6mmのステンレス丸棒
下層2b:カーボン分散の発泡EPDM、比重0.5g/cm3、体積抵抗値102〜109Ωcm、層厚3.0mm
中間層2c:カーボン分散のNBR系ゴム、体積抵抗値102〜105Ωcm、層厚700μm
表層2d:フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散、体積抵抗値107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm、層厚10μm
5.ブロック図
図4は、帯電ローラ2に対する帯電電圧印加系のブロック回路図である。
帯電電源S1から直流電圧に所定の周波数の交流電圧を重畳した所定の振動電圧(Vdc+Vac)が芯金2aを介して帯電ローラ2に印加されることで、回転する感光ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。
帯電ローラ2に対する電圧印加手段である帯電電源S1は、直流(DC)電源11と交流(AC)電源12とを有している。
制御回路13は、帯電電源S1のDC電源11とAC電源12とをオン・オフ制御して、帯電ローラ2に直流電圧と交流電圧のどちらか、若しくはその両方の重畳電圧を印加するように制御する機能を有する。又、制御回路13は、DC電源11から帯電ローラ2に印加する直流電圧値と、AC電源12から帯電ローラ2に印加する交流電圧のピーク間電圧値若しくは交流電流値とを制御する機能を有する。
制御回路13には、感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる交流電流値を測定する第1の検出手段としての交流電流値(又はピーク間電圧値)測定回路14から、測定された交流電流値(又はピーク間電圧値)の情報が入力される。
又、制御回路13には、感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる直流電流値を測定する第2の検出手段としての直流電流値測定回路15から、測定された直流電流値の情報が入力される。
又、制御回路13には、画像形成装置100が設置されている環境を検知する環境検知手段としての環境センサ(温度計と湿度計)16から、検知された環境情報が入力される。
又、制御回路13には、使用量検知手段として、画像出力枚数を計数する枚数カウンタ17から、検知された枚数情報が入力される。
そして、制御回路13は、次のような情報から、印字工程の帯電工程における帯電ローラ2に対する印加交流電圧の適切なピーク間電圧値の演算・決定プログラムを実行する機能を有する。即ち、交流電流値(又はピーク間電圧値)測定回路(以下、単に「交流電流値測定回路」という。)14から入力された交流電流値情報(又はピーク間電圧値情報)、直流電流測定回路15から入力された直流電流値情報である。更には、環境センサ16から入力された環境情報、及び/又は、枚数カウンタから入力される枚数情報である。
6.バイアス制御
次に、印字時に帯電ローラ2に印加する交流電圧のピーク間電圧の制御方法について説明する。
本発明者らは、種々の検討により、以下の定義により数値化した放電電流量が、実際のAC放電の量を代用的に示し、感光ドラム1の削れ、画像流れ、帯電均一性と強い相関関係があることを見出した。
図5に示すように、帯電交流電圧のピーク間電圧Vppに対して、交流電流Iacは、放電開始電圧Vth×2(V)未満(未放電領域)で線形の関係にある。そして、Vth×2(V)以上から放電領域に入るにつれて徐々に電流の増加方向にずれる。放電の発生しない真空中での同様の実験においては直線が保たれたため、これが放電に関与している電流の増分ΔIacであると考える。
Vth×2(V)未満のピーク間電圧Vppに対して電流Iacの比をαとしたとき、放電による電流以外の、帯電部材と被帯電部材との接触部へ流れる電流(以下、「ニップ電流」という。)などの交流電流は、α・Vppとなる。従って、下記式1により算出される、Vth×2(V)以上の電圧印加時に測定されるIacと上記α・Vppとの差分ΔIacを、放電量を代用的に示す放電電流量と定義する。
ΔIac=Iac−α・Vpp ・・・(1)
この放電電流量は、一定電圧又は一定電流での制御下で帯電を行った場合、環境によって、又装置の使用量の増加によって変化する。これは、ピーク間電圧と放電電流量との関係、交流電流値と放電電流量との関係が変動しているからである。
ここで、AC定電流制御方式では、帯電部材から被帯電体に流れる総電流で制御している。この総電流量は、上記のように、ニップ電流α・Vppと非接触部で放電することで流れる放電電流量ΔIacとの和になっている。そして、定電流制御では、実際に被帯電体を帯電させるのに必要な電流である放電電流だけでなく、ニップ電流も含めた形で制御されている。そのため、実際には、放電電流量は制御できていない。定電流制御において同じ電流値で制御していても、帯電部材の材質の環境変動によって、ニップ電流が多くなれば当然放電電流量は減り、ニップ電流が減れば放電電流量は増える。従って、AC定電流制御方式でも、完全に放電電流量の増減を抑制することは困難であり、長寿命を目指したとき、感光ドラム1の削れと帯電均一性との両立を実現することは困難である。
そこで、本実施例では、常に所望の放電電流量を得るため、以下の要領で制御を行った。
所望の放電電流量をDとしたときに、この放電電流量Dとなるピーク間電圧を決定する方法を説明する。
本実施例では、印字準備回転動作時に、制御回路13で、印字工程時の帯電工程における帯電ローラ2に対する印加交流電圧の適切なピーク間電圧値の演算・決定プログラムを実行する。
図6は、本実施例における制御を説明するための帯電交流電圧のピーク間電圧Vppと交流電流Iacとの関係(Vpp−Iacグラフ)を示し、図7は、同制御の制御フローを示す。
制御回路13は、AC電源12を制御して、放電領域にある3点のピーク間電圧(Vpp)の交流電圧、未放電領域にある3点のピーク間電圧の交流電圧を、帯電ローラ2に順次に印加させる。そして、その時に感光ドラム1を介して帯電ローラ2に流れる交流電流値が、交流電流値測定回路14で測定されて、制御回路13に入力される。
次に、制御回路13は、上述のようにして測定された放電領域、未放電領域の各3点の電流値から、最小二乗法を用いて、放電領域、未放電領域のそれぞれにおけるピーク間電圧と交流電流との関係を直線近似し、下記式2、3を算出する。
放電領域の近似直線:Yα=αX+A ・・・(2)
未放電領域の近似直線:Yβ=βX+B ・・・(3)
その後、上記式2の放電領域の近似直線と、式3の未放電領域の近似直線との差分が、放電電流量Dとなるピーク間電圧Vppを、下記式4によって決定する。
Vpp=(D−A+B)/(α−β) ・・・(4)
そして、帯電ローラ2に印加する交流電圧のピーク間電圧を、上記式4で求めたVppに切り替え、定電圧制御し、印字工程へと移行する。
このように、毎回、印字準備回転時において、印字時に所定の放電電流量を得るために必要な帯電交流電圧のピーク間電圧(制御電圧値)を算出し、印字中には求めたピーク間電圧の交流電圧を定電圧制御で帯電ローラ2に印加する。これにより、帯電ローラ2の製造ばらつきや材質の環境変動に起因する電気抵抗値のふれや、装置本体の高圧装置のばらつきを吸収し、確実に所望の放電電流量を得ることが可能となった。このような制御を、ここでは、放電電流制御という。
7.プロセススピードと放電電流制御
前述のように、複数のプロセススピードを有する画像形成装置において、各プロセススピードでそれぞれ放電電流制御を行なうと、画像形成動作以外の作動時間が長くなるという問題がある。これに対して、特許文献2では、複数のプロセススピードのうち1つにおいて帯電部材に印加する交流電圧(帯電交流電圧)のピーク間電圧を決定した結果から、その他すべてのプロセススピードに対する帯電交流電圧のピーク間電圧を算出する方法を提案する。これは、放電電流ΔIacとピーク間電圧Vppとの関係が、同じ帯電周波数であれば一定であるということを前提としている。
しかしながら、画像形成装置に実装される高圧電源では、静電容量の変動による波形の相似性を得ることが、コストなどの点で難しく、異なる周波数において、放電電流量と帯電交流電圧のピーク間電圧との関係(Vpp−ΔIac特性)が異なってくることがある。
その結果、想定した放電電流ΔIacからのズレが生じ、感光ドラム1の短寿命化や帯電不良画像が発生することがある。
本実施例の目的の1つは、異なるプロセススピードに対応した異なる帯電周波数を用いる画像形成装置において、画像の生産性の低下を抑えつつ、適切な帯電電圧を設定することが可能な画像形成装置を提供することである。又、本実施例の目的の1つは、放電電流制御を行う、複数のプロセススピードを有する画像形成装置において、各プロセススピードで放電電流制御を実施することなく、適切な放電電流を与えることである。
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、一のプロセススピードで周波数を切り替えて複数回放電電流制御を実施する通常放電電流制御と、一のプロセススピードで一の周波数にて放電電流制御を実施する簡易放電電流制御と、を有する。そして、通常放電電流制御時に周波数間の適正電圧の比を補正値として求め、簡易放電電流制御による制御結果に当該比を掛け合わせることで、他の周波数における制御電圧値を決定する。以下、更に詳しく説明する。
放電電流制御は、所定のプロセススピードと、そのプロセススピードに対応する帯電交流電圧の周波数を用いて実施される。この時、制御によるダウンタイム(画像出力が行えない時間)を短縮するためにも、最も早いプロセススピードで制御を実施することが望ましい。そこで、本実施例では、画像形成装置100に設定されている複数のプロセススピードのうちで最も速い通常モードのプロセススピードである300mm/secにより、放電電流制御を実施する。通常モードよりも低速のプロセススピードにおいて同様の制御を実施すると、例えば、1/2速では制御時間が2倍、1/4速では4倍になる。
又、前述のように、通常モードのプロセススピードである300mm/secにおける制御結果を、そのまま1/2速モード、1/4速モードに適用することも難しい。
更に説明すると、画像形成装置100に搭載される高圧出力部は、想定される静電容量、電気抵抗といった負荷に対して、必要な波形を出力可能となっているが、その負荷が大きく変動した場合は、波形の相似性を維持するとこが難しい。波形を維持するためには回路の複雑化、コストの増加を招いてしまうことがある。
帯電周波数を変化させると放電部での静電容量が変化するため、高圧の出力波形が変化する。本実施例で用いた高圧電源の出力波形は、図8のように変化することが分かった。このため周波数を1/2にしたときに、同じ交流電圧を帯電ローラ2に印加しても同じ放電電流を得ることができない。従って、通常モードのプロセススピードである300mm/secで実施した放電電流制御の結果を、1/2速モード、1/4速モードで適用すると、放電電流の誤差が大きくなる。
そこで、本実施例では、以下に説明する制御を実施する。
ここでは、1/2速モードに適応する場合を説明する。
本実施例では、放電電流制御として、通常放電電流制御と、簡易放電電流制御との2種類を設定する。
図9は、通常放電電流制御の制御フローを示す。制御回路13は、所定のタイミングで通常放電電流制御を起動すると(S10)、プロセススピードを300mm/secに設定し且つ帯電周波数を第1の周波数である2kHzに設定して(S11)、放電電流制御を実施する(S12)。その後、制御回路13は、同じプロセススピード300mm/secのままで帯電周波数の設定を第2の周波数である1kHzに切り替えた後(S13)、放電電流制御を実施する(S14)。制御回路13は、この2つの帯電周波数による結果から、同じ放電電流が得られる交流電圧値(制御電圧値)をそれぞれ求め、その2つの交流電圧値の比を補正値として算出する(S15)。この算出された補正値は、記憶手段として、制御回路13に内蔵されるか又は制御回路13に接続されたメモリ18に記憶される。メモリ18としては、ROMを用いることができる。
本実施例では、一度の放電電流制御ではVth×2(V)未満のピーク間電圧で3点、Vth×2(V)以上のピーク間電圧で3点、合計6点のピーク間電圧でサンプリングを行った。そのため、通常放電電流制御の場合、2つの異なる帯電周波数についてそれぞれ6点のピーク間電圧でサンプリングを行うので、6点×2回で計12点のサンプリングを行う。
本実施例では、6点のサンプリング点におけるピーク間電圧はV1=500Vpp、V2=700Vpp、V3=900Vpp、V4=1500Vpp、V5=1700Vpp、V6=1900Vppとした。
又、本実施例では、放電電流量の目標値は50μAとした。
又、本実施例では、通常放電電流動作は、図3に示されるメイン電源ONの直後の初期回転動作中に毎回行う。
図10は、簡易放電電流制御の制御フローを示す。制御回路13は、所定のタイミングで簡易放電電流制御を起動すると(S20)、プロセススピードを300mm/secに設定し且つ帯電周波数を第1の周波数である2kHzに設定して(S21)、放電電流制御を実施する(S22)。その後、通常放電電流制御で求められた補正値をメモリ18から読み出し、簡易放電電流制御において求められた交流電圧値とその補正値との積を算出し、第2の周波数における制御電圧値とする(S23)。
本実施例では、帯電周波数が2kHzの画像形成動作時の帯電交流電圧のピーク間電圧(制御電圧値)としては、通常放電電流制御又は簡易放電電流制御のどちらか最新の放電電流制御の結果を用いる。一方、帯電周波数が1kHzの画像形成動作時の帯電交流電圧のピーク間電圧(制御電圧値)は、次のようにする。即ち、通常放電電流制御の直後は、通常放電電流制御において帯電周波数を1kHzに設定して得られた制御電圧値を用いる。そして、簡易放電電流制御が実施された後は、最新の簡易放電電流制御により演算で求められた制御電圧値を用いる。
本実施例では、簡易放電電流制御は、枚数カウンタ17(図4)によるカウント数が100枚を超え、且つ、後回転工程(図3)に移行した場合に実施される。又、本実施例では、後回転工程に移行せずに枚数カウンタ17によるカウント数が500枚を超過した場合には、紙間工程(図3)で割り込み制御として簡易放電電流制御が実施される。
一例として、プロセススピード300mm/secでの画像形成動作を連続100枚行い、その後プロセススピード150mm/sec(1/2速動作)での画像形成動作を実行する場合を説明する。
メイン電源ONにより初期回転動作が実施され、ここで通常放電電流制御が実施される。帯電周波数2kHz(第1の周波数)での結果(制御電圧値V1)は1480Vppであり、帯電周波数1kHz(第2の周波数)での結果(制御電圧値V2)は1450Vppであるものとする。この場合、各帯電周波数で得られた制御電圧値の比である補正値は、次のように求められる。
V2/V1=1450/1480=0.98
この補正値0.98は、メモリ18に格納される。
最初の画像形成動作が100枚で終了し、後回転工程に移行する。ここで、枚数カウンタ17によりカウント数が100枚であることを示す枚数情報が制御回路13に入力されると、制御回路13により簡易放電電流制御が起動される。簡易放電電流制御は、プロセススピード300mm/sec、帯電周波数2kHzで実行される。簡易放電電流制御の結果が1470Vppであったものとする。この場合、先に求めた補正比0.98から、帯電周波数を1kHzとする画像形成動作においてで用いる帯電交流電圧値は、次のように求められる。
1470×0.98=1440Vpp
こうして求められた帯電周波数1kHzでの画像形成動作における帯電交流電圧の制御電圧値は、メモリ18に記録される。
そして、続く1/2速動作においては、上述のようにして求められた帯電周波数1kHzでの画像形成動作における帯電交流電圧の制御電圧値1440Vppにて、作像動作が行われる。
ここで、仮に簡易放電電流制御が行われない場合は、先に通常放電電流制御において求められた制御電圧1450Vppで作像動作が行われるため、10Vpp分の余分な放電電流が流れることになる。そのため、感光ドラム1の寿命低下や画像流れを誘発する場合がある。これに対して、本実施例の制御により、より適切な放電電流を与える帯電交流電圧を印加することができるようになる。
通常放電電流制御は制御時間が長くなるが、各プロセススピードに対応する帯電周波数で放電電流制御を行うため、各プロセススピードでの動作における放電電流をより正確に求めることができる。そこで、制御回路13は、通常放電電流制御を、使用者からの制御指示が入力された場合や、画像形成装置100の使用量が所定量を超えた旨の情報が使用量検知手段から入力された場合に実施することができる。例えば、通常放電電流制御は、枚数カウンタ17によって積算された画像形成枚数が10000枚を超えた後の作像終了後などに実施することができる。使用者による指示は、画像形成装置100に設けられた操作部、画像形成装置100に接続された機器に設けられた操作部などの入力手段によって行うことができる。
簡易放電電流制御は、本実施例では、一般的な1つの帯電周波数により行う放電電流制御と同じ制御時間で済むため、通常放電電流制御よりも頻繁に、例えば、100枚作像毎の後回転や、電源投入時の前回転時に実施するのが良い。
このように、通常放電電流制御よりも簡易放電電流制御を実行する頻度の方が多い構成とすることが好ましい。
これにより、異なるプロセススピードに対応した異なる帯電周波数を用いた画像形成装置においても、生産性の低下を抑え、且つ、最適な帯電交流電圧を設定することが可能となる。
尚、本実施例では2つの周波数で動作する場合の例を示したが、2つ以上の帯電周波数で動作する画像形成装置では、通常放電電流制御内での帯電周波数ごとに行う放電電流制御の回数が増えるだけで適応できる。その場合でも、簡易放電電流制御では1つの帯電周波数で放電電流制御を実施すればよい。例えば、3つの異なるプロセススピードに対応して3つの帯電周波数で動作する画像形成装置では、通常放電電流制御において、その3つの帯電周波数のそれぞれについて放電電流制御を行う。そして、簡易放電電流制御で用いる帯電周波数を基準帯電周波数として、その基準帯電周波数で得られた制御電圧値と、他の帯電周波数で得られた制御電圧値との比を補正値として求めておく。そして、簡易放電電流制御では基準帯電周波数で放電電流制御を行い、他の帯電周波数に対する制御電圧値は、その基準帯電周波数で得られた結果と先に求められた補正値との積から求めることができる。
又、放電電流制御におけるサンプリング点や放電電流目標値は、感光ドラム1の膜厚や材質、帯電ローラ2の材質や電気抵抗値、或いは、使用環境などによって変化するものである。従って、例えば、環境センサ16で検知された環境条件によって放電電流制御におけるサンプリング点や放電電流目標値を変化させてもよい。
このように、本実施例の画像形成装置100は、帯電部材2にバイアスが印加されるときに帯電部材2から感光体1に流れる電流を検出する検出手段14と、検出手段14の出力に応じて画像形成時に印加すべき帯電バイアスを調整する調整手段を有する。本実施例では、制御回路13が上記調整手段の機能を有する。又、画像形成装置100は、画像形成モードとして、感光体1が第1の速度で回転し第1の周波数の帯電バイアスが帯電部材2に印加される第1の画像形成モードを有する。又、画像形成装置100は、画像形成モードとして、感光体1が第1の速度よりも遅い第2の速度で回転し第1の周波数とは異なる第2の周波数の帯電バイアスが帯電部材2に印加される第2の画像形成モードを有する。又、本実施例の画像形成装置100は、画像形成時に印加すべき帯電バイアスを調整するためのテストモードとして、次の第1のテストモードと、第2のテストモードと、を有する。第1のテストモード(通常放電電流制御)では、感光体1が第1の速度で回転し第1の周波数のテストバイアスが帯電部材2に印加される第1の動作及び感光体1が第1の速度で回転し第2の周波数のテストバイアスが帯電部材2に印加される第2の動作を行う。第2のテストモード(簡易放電電流制御)では、上記第1及び第2の動作のうち第1の動作のみを行う。そして、上記調整手段13は、第1のテストモードにおける第1、第2の動作時の検出手段14の出力に応じて第1、第2の画像形成モード時の帯電バイアスをそれぞれ調整可能である。それと共に、上記調整手段13は、第2のテストモードにおける第1の動作時の検出手段14の出力に応じて第1の画像形成モード時の帯電バイアスを調整可能である。更に、上記調整手段13は、第2のテストモードにおける第1の動作時の検出手段の出力と、第1のテストモードにおける第1、第2の動作時の検出手段13の出力間の関係を示す情報と、に応じて第2の画像形成モード時の帯電バイアスを調整可能である。
以上、本実施例によれば、異なるプロセススピードに対応した異なる帯電周波数を用いる画像形成装置において、画像の生産性の低下を抑えつつ、適切な帯電電圧を設定することが可能である。又、本実施例では、放電電流制御を行う、複数のプロセススピードを有する画像形成装置において、各プロセススピードで放電電流制御を実施することなく、適切な放電電流を与えることができる。
実施例2
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置において、先の実施例の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符合を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、実施例1にて説明した放電電流制御を実施し決定した交流電圧値を印加した際に流れる交流電流値を用いて、帯電電圧の定電流制御を実施する。
画像形成装置の高速化が進み、大量に出力動作を行うような場合において、短時間に帯電ローラの電気抵抗値が変動する場合がある。そのような場合に定電圧制御を行うと、放電電流が必要以上に増大する場合があることが分かった。これに対し、定電流制御を行うと、帯電ローラの電気抵抗変動が生じても比較的放電電流のズレが小さいため、上述のような場合には好適である。
そこで、本実施例では、放電電流制御の実施後、算出されたVppを出力した場合の交流電流値(制御電流値)を求める。そして、この交流電流値により画像形成時の帯電電圧を定電流制御する。
ここで、本実施例では、実施例1とは異なる帯電ローラ2を用いた。本実施例で用いた帯電ローラ2は、実施例1の帯電ローラ2に比して構成が単純であり、製造コストの低減が見込める。
図11に示すように、本実施例の帯電ローラ2は、芯金(支持部材)20aの外回りに、下層20bと、表層20cを下から順次に積層した2層構成である。下層20bはゴム層である。表層20cは、電気抵抗調整と汚れ付着を防止する保護層である。
より具体的には、本実施例における帯電ローラ2の仕様は、下記の通りである。
芯金20a:直径6mmのステンレス丸棒
下層20b:エピクロルヒドリンゴム
表層20c:フッ素コート、体積抵抗値107〜1010Ωcm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRz)5μm、層厚10μm
帯電電圧を定電流制御する場合、電流値と放電電流との関係は帯電周波数によって大きく異なる。例えば、図12に示すように、目標となる放電電流値70μAに対し、プロセススピードが300mm/secの場合の帯電周波数である2kHzでは、交流電流値は3200μAとなる。これに対し、プロセススピードが150mm/secの場合の帯電周波数である1kHzでは、同じ目標放電電流値が得られる交流電流値は1800μAとなる。このように、プロセススピード及び帯電周波数が1/2になっても、同じ放電電流値を得ることができる交流電流値は1/2とはならない。
図12に示す2kHz*1/2の曲線のように、もし帯電周波数が1/2の時に交流電流を1/2として同じ放電電流を得ようとすると、実際の1kHzの特性から放電電流は約40μAとなり、放電電流量不足により帯電不良画像が発生することとなる。
そこで、本実施例では、以下に説明する制御を実施する。
図13は、本実施例における放電電流制御の制御フローを示す。制御回路13は、所定のタイミングで通常放電電流制御を起動すると(S30)、プロセススピードを300mm/secに設定し、且つ、通常放電電流制御により所望の放電電流値を得るために必要な第1の周波数である2kHzに設定する(S31)。そして、放電電流制御を実施し、交流電流値を求める(S32)。続いて、制御回路13は、同じプロセススピード300mm/secのままで帯電周波数の設定を第2の周波数である1kHzに切り替える(S33)。そして、放電電流制御を実施し、交流電流値(制御電流値)を求める(S34)。より具体的には、次のようにして、放電電流制御によって求められた帯電交流電圧のピーク間電圧値を出力した場合の交流電流値を求める。即ち、上述した図7に示すフローにより印加Vpp(制御電圧値(ピーク間電圧値))を求める。このVppが、例えば、図6に示すVoutの場合、上記式2に基づき制御電流値を求めることができる。制御回路13は、この2つの帯電周波数による結果から、同一放電電流値が得られるそれぞれの帯電周波数における交流電流値の比を補正値として求める(S35)。この算出された補正値は、メモリ18に記憶される。
実施例1と同様に、他のタイミングで簡易放電電流制御を実施し、この場合、プロセススピードを300mm/secに設定し、第1の周波数である2kHzで放電電流制御を実施し、交流電流値(制御電流値)を求める。求められた帯電周波数2kHzの場合の交流電流値と、上述の通常放電電流制御で求められた比(補正値)との積を算出することで、1/2速動作時の交流電流値を求めることができる。
本実施例では、画像形成時には、実施例1において帯電交流電圧のピーク間電圧が制御電圧値になるように定電圧制御したのに替えて、帯電交流電圧の交流電流値を求めた制御電流値で一定となるように定電流制御する。実施例1と同様に、本実施例では、帯電周波数が2kHzの画像形成動作時の制御電流値としては、通常放電電流制御又は簡易放電電流制御のどちらか最新の制御結果を用いる。一方、帯電周波数が1kHzの画像形成動作時の制御電流値は、次のようにする。即ち、通常放電電流制御の直後は、通常放電電流制御において帯電周波数を1kHzに設定して得られた制御電流値を用いる。そして、簡易放電電流制御が実施された後は、最新の簡易放電電流制御により演算で求められた制御電流値を用いる。
これにより、帯電ローラ2の電気抵抗変動が生じ、定電圧制御では放電電流が変化しやすい場合においても、生産性の低下を招くことなく、適切な放電電流で画像形成動作を行うことが可能となる。
実施例3
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置において、先の実施例の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符合を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、実施例1、2で説明した通常放電電流制御の時間を短縮するための方法を説明する。
実施例1では、通常放電電流制御において、先ず、プロセススピード300mm/sec、帯電周波数2kHzの設定において、Vth×2(V)未満で3点、Vth×2(V)以上で3点のサンプリングを行った。又、これに加えて、プロセススピード300mm/sec、帯電周波数1kHzの設定において、Vth×2(V)未満で3点、Vth×2(V)以上で3点のサンプリングを行った。
これに対して、図14、図15に示すように、本実施例では、通常放電電流制御において、先ず、プロセススピード300mm/sec、帯電周波数2kHzの設定において、Vth×2(V)未満で3点、Vth×2(V)以上で3点のサンプリングを行う。そして、本実施例では、これに加えて、プロセススピード300mm/sec、帯電周波数1kHzの設定において、Vth×2(V)以上で1点のサンプリングを追加する(S40〜S44)。このとき追加する1点の交流電圧値は、帯電周波数2kHzでのサンプリング時に用いたいずれかの交流電圧値と同じ値を用いる。本実施例では、図14中のV5(Vpp)を用いた。
放電開始電圧Vth×2(V)は帯電周波数には依存しないため、第1の周波数で放電電流制御を実行した際に求めた値と同じ値を用いることができる。
又、図14中のV1、V2、V3で表されるVth×2(V)未満の特性は、ほぼ周波数に比例するため、第1の周波数で実行した放電電流制御の結果求められた近似直線の傾きβと、第2の周波数で求めたい近似直線の傾きβ2とは、周波数比として近似できる。
又、Iac軸の切片となるB2は、3点を用いた最小二乗法の近似誤差の要因と、高圧測定回路のゼロ点の誤差の要因とから生じる値であり、同じ画像形成装置で同時期に測定した場合はほぼ同じ値が再現される。そのため、第1の周波数で実施した放電電流制御で求めた切片Bと、第2の周波数で得られる切片B2を同じ値として近似できる。
以上より、下記式5にて示される、第2の周波数におけるVth×2(V)未満の直線式が求められる(S45)。
Yβ2=(β2)Xβ2+B2 ・・・(5)
更に、直線式(5)の放電開始点Vth×2(V)における交流電流値と、第2の周波数で交流電圧V5(Vpp)として測定したときの交流電流値とから、下記式6にて示される、Vth×2(V)以上の直線式が求められる(S45)。
Yα2=(α2)Xα2+A2
このようにして求められた2つの帯電周波数のそれぞれにおける帯電交流電圧のピーク間電圧と放電電流との関係式から、実施例1と同様にして、両周波数における同じ放電電流が得られる交流電圧値(制御電圧値)を求めることができる。従って、実施例1と同様にして、この2つの帯電周波数による結果から、制御電圧値の比を補正値として算出し、メモリ18に記憶させることができる(S46)。
尚、実施例2にて説明したように制御電流値を求めて帯電電圧を定電流制御する場合にも、通常放電電流制御において本実施例と同様にして帯電電流制御を行うことができ、得られた交流電圧値から制御電流値を求めるようにしてもよい。
このように、本実施例では、通常放電電流制御における交流電流値測定回路14の出力のサンプリング数は、第1の周波数で行うときよりも、第2の周波数で行うときの方が少ない。
これにより、複数のプロセススピードで動作し、各速度に対応した帯電周波数を有する画像形成装置においても、生産性の低下を抑えつつ、各速度に対し適切な帯電バイアス制御を行うことが可能となる。
その他
以上、本発明を具体的名実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、放電電流制御において典型的には6点の交流電圧値で交流電流値のサンプリングする例を挙げたが、サンプリング点は6点に限定されるものではない。又、近似方法として最小二乗法を用いたが、近似方法はこの方法に限定されるものではない。
又、上記実施例においては、画像形成装置の非画像形成時である印字準備回転動作期間において、印字工程の帯電工程における印加交流電圧の適切なピーク間電圧値又は交流電流値の演算・決定プログラムを実行した。しかし、このプログラムは、印字準備回転動作期間に実行することに限られるものではなく、他の非画像形成時、即ち、初期回転動作時、紙間工程時、後回転工程時に実行することもできるし、複数の非画像形成時に実行することもできる。
又、上記実施例では、クリーナ部材を用いた画像形成装置を例としたが、クリーナ部材がなく、現像装置において現像同時クリーニングを行う、所謂、クリーナレス方式の画像形成装置における帯電制御手段にも同様の効果を発揮することができる。
又、感光体は、その表面の電気抵抗が109〜1014Ω・cmの電荷注入層を設けた直接注入帯電性のものであってもよい。電荷注入層を用いていない場合でも、例えば電荷輸送層が上記の電気抵抗範囲にある場合も同等の効果が得られる。更に、感光体として、表層の体積抵抗が約1013Ω・cmであるアモルファスシリコン感光体を用いてもよい。
又、上記実施例では、可撓性の接触帯電部材として帯電ローラを用いたが、これ以外にも、例えばファーブラシ、フェルト、布などの形状・材質のものも使用可能である。更に、各種材質のものを組み合わせることによって、より適切な弾性、導電性、表面性、耐久性のものを得ることができる。
又、上記実施例の帯電ローラや現像スリーブに印加する振動電界の交番電圧成分(AC成分、周期的に電圧値が変化する電圧)の波形としては、正弦波、矩形波、三角波などを適宜使用可能である。更に、直流電源を周期的にオン/オフすることによって形成された矩形波であってもよい。