JP6575379B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、交流電圧のピーク間電圧を帯電開始電圧の2倍以上の値にすれば像担持体の帯電を均す効果があることを前提に、像担持体と帯電部材間で安定的な放電を行うために、ピーク間電圧の大きさを適正値に決める構成が開示されている。
帯電部材に流れる交流電流の各検出値に基づき、第1領域についてピーク間電圧に対する交流電流値の近似関数fI1(Vpp)と第2領域についてピーク間電圧に対する交流電流値の近似関数fI2(Vpp)とを求める。そして、近似関数fI1(Vpp)とfI2(Vpp)との差分〔=fI2(Vpp)−fI1(Vpp)〕が所定値Dとなるときのピーク間電圧値を適正値に決定する。
具体的には、像担持体の新品時に所定値Dにより求められたピーク間電圧値が適正値であったとしても、長期間に亘ってプリントが繰り返されることにより像担持体表面の減耗が進行すると、像担持体の電気抵抗値の低下などに起因して、同じ所定値Dにより求めたピーク間電圧値がその時点での本来の適正値よりも大きくなりすぎてしまい、像担持体に大きなダメージを与えることになった。この結果、像担持体の減耗がより促進されて、像担持体が早期に寿命に達することが生じた。
さらに、前記一つのピーク間電圧値は、前記第2放電領域内の前記各ピーク間電圧値のうち最大のピーク間電圧値であるとしても良い。
また、前記第3近似関数は、前記第2近似関数から前記第1近似関数を減算して得られたものであり、前記一つのピーク間電圧値は、前記第2放電領域内の前記各ピーク間電圧値のうち、前記差分値が0よりも大きくなるピーク間電圧値のいずれか一つであるとしても良い。
また、前記帯電部材は、前記像担持体に接触または近接配置されるローラー状、ブラシ状またはブレード状のものであるとしても良い。
そして、交流電流値の異なる範囲のそれぞれごとに一つの変化量の値が対応付けられるので、例えば当該一つの範囲ごとに一つの変化量を対応付けた情報を記憶しておく構成をとる場合、交流電流値の全範囲で一つの交流電流値ごとに一つの変化量の値を対応付けて記憶しておく構成よりも記憶部の容量を低減でき、安価な記憶部を用いることができる。
(1)プリンターの全体の構成
図1は、プリンター1の全体構成を示す概略図である。
同図に示すようにプリンター1は、電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50とを備え、ネットワーク(例えばLAN)を介して外部の端末装置(不図示)からのジョブの実行要求に基づき、カラーの画像形成(プリント)を実行する。
作像部10Kは、矢印Aで示す方向に回転する感光体ドラム11と、その周囲に配された帯電ローラー12、露光部13、現像部14、クリーナー15などを備えている。
帯電ローラー12は、感光体ドラム11の軸方向に沿って細長状であり、感光体ドラム11の周面に接触して矢印Bで示す方向に回転しながら感光体ドラム11を帯電させる。この帯電は、電源部60(図2)から帯電ローラー12に帯電電圧が供給されることにより行われる。
現像部14は、感光体ドラム11上の静電潜像をK色のトナーで現像する。これにより感光体ドラム11上にK色のトナー像が形成される。感光体ドラム11上に形成されたK色のトナー像は、中間転写部20の中間転写ベルト21上に一次転写される。
中間転写部20は、駆動ローラー22と従動ローラー23に張架されて矢印方向に循環走行される中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を挟んで各作像部10Y〜10Kの感光体ドラム11と対向配置される一次転写ローラー24と、中間転写ベルト21を介して駆動ローラー22と対向配置される二次転写ローラー25とを備える。
定着部40は、定着ローラー41とこれに圧接される加圧ローラー42を有する。
制御部50は、画像プロセス部10〜定着部40の動作を統括的に制御し、円滑なジョブを実行させる。
作像部10Y〜10Kのそれぞれごとに、露光部13から発せられた光ビームにより、帯電された感光体ドラム11上に静電潜像が作像され、その静電潜像がトナーにより現像されてトナー像が形成され、そのトナー像が一次転写ローラー24の静電作用により中間転写ベルト21上に一次転写される。
この作像タイミングに合わせて、給送部30からは、カセット31から用紙Sが二次転写ローラー25に向けて搬送されて来ており、二次転写ローラー25による中間転写ベルト21の表面への接触位置である二次転写位置251を用紙Sが通過する際に、中間転写ベルト21上に多重転写された各色のトナー像が二次転写ローラー25の静電作用により用紙Sに一括して二次転写される。
画像プロセス部10の直下には、温湿度検出手段としての温度検出センサー71と湿度検出センサー72が配置されている。温度検出センサー71は、プリンター1内の温度(機内温度)を検出し、湿度検出センサー72は、プリンター1内の相対湿度(機内湿度)を検出する。それぞれの検出結果は、制御部50に送られる。
図2は、制御部50の構成を示すブロック図であり、作像部10Kと、作像部10Kに対応して設けられた電源部60と電流検出部70も合わせて示されている。
電源部60は、作像部10Kの帯電ローラー12に帯電電圧(直流電圧に交流電圧が重畳された電圧)Vgを供給する。直流電圧は、ここでは感光体ドラム11の帯電極性と同じマイナス極性であるが、装置構成によってはプラス極性のものもあり得る。
CPU51は、ROM52から必要なプログラムを読み出し、画像プロセス部10、中間転写部20、給送部30、定着部40の動作をタイミングを取りながら統一的に制御して、ジョブのデータに基づくプリント動作を円滑に実行させる。また、CPU51は、電源部60に帯電電圧Vgの出力を指示する。この指示には、帯電電圧Vgに含まれる交流電圧のピークツーピーク電圧の大きさ(ピーク間電圧値)Vppの指示が含まれる。
記憶部54は、不揮発性のものであり、後述の環境ステップテーブル81と検出用電圧テーブル82と傾き決定テーブル83などが格納されている。
電源部60は、直流電源回路61および交流電源回路62の組みを含む。
直流電源回路61は、制御部50の制御下で、所定の直流電圧Vdcを出力する。なお、本実施形態では直流電圧Vdcを作像部ごとに変更する点は特に重要では無いので、以下の説明では、便宜上、直流電圧Vdcが各作像部で同じ値として説明する。
このような構成において、CPU51は、用紙Sへのプリント時(画像形成時)以外の非画像形成時に、以降のプリント時(画像形成時)における帯電電圧Vgの交流電圧のピーク間電圧値Vppの最適値を作像部10Y〜10Kのそれぞれごとに決定する帯電電圧決定処理を実行する。以下、プリント時の帯電電圧VgをVg1といい、帯電電圧決定処理の実行中に電源部60から出力される帯電電圧をVg2として区別する。
図3は、作像部10Kにおける帯電電圧決定処理の内容を示すフローチャートである。なお、他の作像部10Y〜10Cのそれぞれについても同じ処理が並行して実行される。
同図に示すように、現在の機内温度と機内湿度を取得する(ステップS1)。この取得は、温度検出センサー71と湿度検出センサー72による機内温度Stと機内湿度Shの検出結果を受信することにより行われる。
図4は、環境ステップテーブル81の構成例を示す図である。
同図に示すように環境ステップテーブル81は、機内温度および機内湿度の組み合わせごとに、絶対湿度の大きさを示す指標である環境ステップ1、2・・が書き込まれている。なお、環境ステップテーブル81の表記において、例えば機内温度「<15」とは、15℃未満の温度を示し、「<20」とは、15℃以上20℃未満の範囲内の温度を示している。他の温度範囲「<24」・・および機内湿度「<18」などについても同様である。この環境ステップテーブル81は、プリンター1の製造段階や開発段階に予め実験等で作成される。実験等により予め作成されることは、後述の他のテーブルでも同様である。
例えば、現在の機内温度Stが15〜19℃の間であり機内湿度Shが18〜31%の間であれば、環境ステップ「2」が取得される。
図5は、検出用電圧テーブル82の構成例を示す図である。
同図に示すように検出用電圧テーブル82は、環境ステップの範囲ごとに、異なる複数個(本実施形態では10個)の検出用ピーク間電圧値Vppからなる組A〜Dが書き込まれている。組A〜Dのそれぞれには、10個の検出用ピーク間電圧値Vppのうち、正放電領域(第1放電領域)および逆放電領域(第2放電領域)のそれぞれにつき、少なくとも2個の検出用ピーク間電圧値Vppが含まれる。
一方、逆放電領域とは、(Vth×2)以上の領域(図7)であって、感光体ドラム11および帯電ローラー12の間で双方向に電荷移動が起こる領域をいう。
図5において例えば、ステップS2で取得された環境ステップが1〜3の範囲に属する場合には、検出用ピーク間電圧値Vppの組Aが割り当てられ、環境ステップが4〜7,8〜12,13〜16の範囲に属する場合には、組B,C,Dが割り当てられる。
図3においてステップS5では、ステップS3で選択した組において現在のn番目の検出用ピーク間電圧値Vppを取得する。例えば、取得した組がBの場合は、現在のn番目、ここでは1番目の検出用ピーク間電圧値Vpp=1020V(図5)が取得される。
帯電電圧の出力が安定すると、具体的には安定に要する所定時間が経過すると(ステップS7で「Yes」)、第2カウンタ値mを1に初期化する(ステップS8)。
そして、第2カウンタ値mが所定値yに等しいか否かを判断する(ステップS10)。ここで所定値yは、感光体ドラム11の一回転あたりのサンプリング数であり、1以上の自然数である。mが所定値yに等しくなければ(ステップS10で「No」)、現在の第2カウンタ値mを1だけインクリメントして(ステップS11)、ステップS9に戻る。
ステップS5において、現在のnが例えば2であり、ステップS3で取得された組がBであれば、2番目の検出用ピーク間電圧値Vpp=1080V(図5)が取得される。
そして、第1カウンタ値nが10であるか否かを再度判断する(ステップS13)。nが10ではないことを判断すると(ステップS13で「No」)、現在の第1カウンタ値nを1だけインクリメントして(ステップS14)、ステップS5に戻り、ステップS5以降の処理を実行する。
このRAM53への交流電流値Iacの記憶は、n番目の検出用ピーク間電圧値Vppと、このピーク間電圧値Vppの供給時に検出された交流電流値Iacとが1対1で対応付けされるようにして行われる。以下では、RAM53に記憶された検出用ピーク間電圧値Vppと交流電流値Iacとの1対1の組み合わせを包括的に(Vpp,Iac)と表記する。
そして、第1カウンタ値nが10と判断されると(ステップS13で「Yes」)、ピーク間電圧値の最適値Vpp1を決定するピーク間電圧値の決定処理(ステップS15)を実行した後、当該帯電電圧決定処理を終了する。
図6は、ピーク間電圧値の決定処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。また、図7は、上記の帯電電圧決定処理のステップS1〜S14により求められたピーク間電圧値Vppに対する交流電流値Iacの関係を示す図である。図7において正放電領域内の点P1〜P4が上記n=1〜4の検出用ピーク間電圧値Vppに対する交流電流値Iacの点を示しており、逆放電領域内の点P7〜P10が上記n=7〜10の検出用ピーク間電圧値Vppに対する交流電流値Iacの点を示している。
同図に示すように寿命初期を示すグラフL3も寿命末期を示すグラフL4も逆放電領域ではピーク間電圧値Vppが増大するに連れて交流電流値Iacが指数関数的に大きくなっていることが判る。また、寿命初期を示すグラフL3に対して寿命末期を示すグラフL4が全体的に上、すなわち交流電流値Iacが大きくなっている。
このため寿命初期と寿命末期とで同じピーク間電圧値Vppを帯電ローラー12に印加しても、寿命末期の方が寿命初期よりも大きな交流電流が流れるようになるからである。
正放電領域と逆放電領域のそれぞれごとに、異なる2以上のピーク間電圧値Vppは、正放電領域と逆放電領域との境界を示す交流電圧値(=2×帯電開始電圧Vth)との差がある程度以上、例えば100V以上などの大きさを有する値が望ましい。その差の大きい方が正放電領域と逆放電領域のそれぞれのVpp−Iac特性のグラフが近似関数で表され易くなるからである。なお、図7では、上記番号n=5と6の検出用ピーク間電圧値Vppを示す点が除かれているが、場合によっては、いずれか一方または両方を第2近似関数の算出のための点として加えるようにすることもできる。
同図に示すように寿命初期を示すグラフL5よりも寿命末期を示すグラフL6の方が同じピーク間電圧値Vppに対して、放電電流量ΔIacが大きくなっており、放電電流量ΔIacの単位ピーク間電圧当たりの増加量も大きくなっている。
図10は、傾き決定テーブル83の構成例を示す図である。
例えば、図9に示す差分関数のグラフL5の例において、ステップS35で取得した値kがkaの場合、ΔIacの変化量(接線の傾き)が1/kaと一致する点Paの放電電流量ΔIacの値Idが求められる。また、例えば差分関数のグラフL6において、ステップS35で取得した値kがkbの場合、ΔIacの変化量が1/kbと一致する点Pbの放電電流量ΔIacの値Ieが求められる。なお、図9に示すように本実施形態では、差分関数において単位ピーク間電圧あたりのΔIacの変化量は増加量だけとなる。
例えば、図9に示すグラフL5では点Paのピーク間電圧値Vmaが最適値Vpp1に決定され、グラフL6では点Pbのピーク間電圧値Vmbが最適値Vpp1に決定される。ピーク間電圧値の決定処理で決定された最適なピーク間電圧値Vpp1は、記憶部54に記憶される。
1回の帯電電圧決定処理により記憶部54に記憶されたピーク間電圧値Vpp1は、次回の帯電電圧決定処理が実行されるまでの間、プリント時に出力すべき帯電電圧Vg1のピーク間電圧値Vppとして設定される。そして、次回の帯電電圧決定処理が実行されると、記憶部54に記憶されているピーク間電圧値Vpp1が、新たに決定されたピーク間電圧値Vpp1に更新される。上記のことは、作像部10K以外の作像部10Y〜10Cのそれぞれについて同様である。
上記の図8に示すように同じピーク間電圧値Vppを帯電ローラー12に印加した場合、感光体ドラム11の寿命初期よりも寿命末期の方が感光体ドラム11の感光層の膜厚の減耗による電気抵抗値の低下により交流電流値Iacが大きくなる。
また、感光体ドラム11の電気抵抗値の低下だけではなく、帯電ローラー12の電気抵抗値も関与する。具体的には、帯電ローラー12の抵抗値が低いと交流電流値Iacの値が大きくなり、帯電ローラー12の抵抗値が高いと交流電流値Iacの値が小さくなる。
従って、感光体ドラム11の寿命初期では最適値とほぼ同じであったピーク間電圧値Vppが寿命末期でも最適値とは限らなくなる。
このような実験結果が確認されたところ、上記特許文献1の方法、つまりΔIacが所定値Dとなるピーク間電圧値Vppを求める方法をとると、図9に示すように感光体ドラム11の寿命末期では、グラフL6においてΔIac=Id(上記所定値Dに相当)に対応する点Pcのピーク間電圧値Vmcが求められることになる。
これに対し、本実施の形態では、上記の差分関数と傾き決定テーブル83を用いてピーク間電圧値Vpp1を求める方法をとっている。これは、次の理由による。
すなわち、本願発明者らは、感光体ドラム11の新品時から寿命に達するまでの間の時点時点で差分関数を求めた。その結果、各差分関数で示される放電電流量ΔIacは、感光体ドラム11の寿命初期でも寿命末期でも、ピーク間電圧値Vppの増大と共に大きくなることが判った。また、単位ピーク間電圧当たりの放電電流量ΔIacの変化量(=dΔIac/dVpp)に関しては、寿命初期よりも寿命末期の方がより小さいピーク間電圧値Vppから増大し始める傾向があることも判った。
具体的には、グラフL5よりもグラフL6の方が、同じピーク間電圧値Vppにおける放電電流量ΔIacの変化量、つまり接線の傾きが大きくなっており、このことからグラフL5よりもグラフL6の方がより小さいピーク間電圧値Vppからその接線の傾きが大きくなり始めることが判る。
つまり、図9のグラフL5、L6のように差分関数のグラフの全体が感光体ドラム11の寿命初期から寿命末期に向かうに伴ってピーク電圧値Vppが小さくなる方向にずれて、かつ反時計方向への回転移動により起き上がったように遷移する。
具体的には、図9において感光体ドラム11の寿命初期のときの差分関数のグラフをL5として、寿命末期までの間の各時期を時間順にA、B、C・・とすると、時点Aの差分関数において寿命初期と同じ傾き(=1/ka)をもつ点のピーク間電圧値がVma1(<Vma)、時点Bの差分関数において寿命初期と同じ傾き(=1/ka)をもつ点のピーク間電圧値がVma2(<Vma1)、時点Cの差分関数において寿命初期と同じ傾き(=1/ka)をもつ点のピーク間電圧値がVma3(<Vma2)・・となる。
(a)感光体ドラム11の寿命初期に求めた差分関数において最適なピーク間電圧値Vppに対応する放電電流量ΔIacを示す点(図9の例ではグラフL5の点Pa)の、単位ピーク間電圧当たりの放電電流量ΔIacの変化量(接線の傾き)を1/kaとする。
これによれば、図9からも判るように感光体ドラムの寿命に達するまでの間、少なくとも上記の所定値D(=Id)を固定してピーク間電圧値Vppを求める方法よりも、各時点における本来の最適値により近いピーク間電圧値Vppを得られることになる。
実際、実験機を用いて感光体ドラムの寿命初期と寿命末期において、ΔIacを所定値D(=Id)に固定する方法と差分関数の傾き(=dΔIac/dVpp)を一定値にする方法とでピーク間電圧値を算出したところ、図11のような結果が得られた。
感光体ドラムへのダメージにまで至ることはないと想定されるピーク間電圧値の範囲を最適値に対して例えば最大5〜10%程度を許容範囲とすれば、差分ΔVdが260Vでは大きく許容範囲から外れていることになる。なお、許容範囲は、予め実験などにより決めることができ、上記の百分率に代えて電圧値、例えば50V以上、150V未満などの範囲とすることもできる。
このような感光体ドラム11の寿命とピーク間電圧値Vppとの関係を基に、本願発明者らはさらに、感光体ドラム11と帯電ローラー12との組を複数、例えば仕様公差内で一方が電気抵抗値の大きいものと他方が電気抵抗値の小さいものの組や両方とも電気抵抗値が公差の中心値に近いものの組みなどを設定し、それぞれの組を別々にプリンター1に搭載して耐久試験や環境試験などの種々の実験を行ったところ、次のことが判った。
一方で、感光体ドラムの寿命初期から寿命に達するまでの長期間のうち、ある短期間だけに着目すると、感光体ドラムも帯電ローラーも抵抗値などの変化が少なく、帯電特性の変化も大変小さい。この短期間内であれば傾きを同じ値にしても、上記の所定値Dを固定にする方法よりもピーク間電圧値Vppの最適値またはこれに近い値(上記適正な範囲内の値)を得られる。
そこで、本願発明者らは、あるピーク間電圧値Vpp、例えば2000Vに設定したときに検出された交流電流値Iacのとり得る全範囲のうち、差分関数において同じ(共通の)傾きを用いてピーク間電圧値Vppの最適値またはこれに近い値を得ることができる交流電流値の一定の範囲を実験から導き出した。
図12(a)は、感光体ドラム11の新品時から寿命に至るまでの間のうちある短期間内においてピーク間電圧値Vpp=2000Vの帯電電圧を帯電ローラー12に供給したときの交流電流値Iacの検出値が2400μA以下の範囲であった場合に、各時点で求めた差分関数のグラフL11,L12,L13,L14の例を示している。
差分関数のグラフL11〜L14のそれぞれにおいて、接線の傾き1/kが同じ値(k=3.6)をとる点P11、P12、P13、P14におけるピーク間電圧値Vm1、Vm2、Vm3、Vm4を各時点でピーク間電圧値Vpp1に設定してプリントを行ったところ、目視で良好な画質が得られ、感光体ドラム11へのダメージもほとんどないことが確認できた。
図12(a)と同様に、図12(b)に示すグラフL22〜L24のそれぞれもグラフL21を放電電流量ΔIacが増加する方向に平行移動したような形状になっている。
これにより交流電流値Iacのとり得る範囲が異なる複数の範囲のそれぞれに分けられ、それぞれの範囲ごとに1つの値kが環境ステップと対応付けられた情報が得られた。この得られた情報が上記の図10に示す傾き決定テーブル83になる。
傾き決定テーブル83を見ると、交流電流値Iacのとり得る範囲が8つの異なる範囲に分けられている。例えば、環境ステップ1のときの交流電流値Iacの範囲が2400μA以下の範囲では値kが3.6であり、2401μA以上かつ2460μA以下の範囲では値kが3.3になっており、交流電流値Iacが大きくなるに伴って値kが小さくなっていく傾向であることが判る。同じ環境ステップにおいて交流電流値Iacの異なる範囲に異なる値kを対応付けているのは、環境起因以外の例えば感光体ドラム11や帯電ローラー12の寿命による感光体ドラム11の膜厚や帯電ローラー12の電気抵抗値の状態の変化にも対応するためである。
傾き決定テーブル83に示すようにピーク間電圧値として同じ2000Vを印加したときに検出される交流電流値Iacに大きな差が出るのは、上記のように感光体ドラム11や帯電ローラー12の抵抗値変化や劣化などに起因する。
図13は、帯電電圧決定処理により値kを決定する構成(実施例)と、値kを一定値に固定する構成(比較例)のそれぞれにおいて実験からピーク間電圧値Vppを算出したときの結果を示す図である。
本実験は、プリンター1において、新品の感光体ドラム11と電気抵抗値が仕様公差内で上限値の帯電ローラー12とのセットを組み込んだ構成(新品)と、これとは別に、600krot(60万回回転)後の感光体ドラム11と電気抵抗値が仕様公差内で下限値の帯電ローラー12とのセットを組み込んだ構成(耐久品)のそれぞれを、上記の環境ステップ1に相当するLL(低温低湿)環境下に設置して行われた。
新品について、実施例では、2000Vのピーク間電圧値Vppが帯電ローラー12に供給されたときの交流電流値Iacの検出値=2370μAに対して、傾き決定テーブル83からk=3.6が求められ、ピーク間電圧値Vpp=2460Vが算出された。この算出値とVpptとの差分ΔVdをとると、差分ΔVd=60Vになった。比較例ではk(ここでは4)のときのピーク間電圧値Vpp=2414Vが算出された。この算出値とVpptとの差分ΔVdをとると、差分ΔVd=14Vになった。
図14は、実施例と比較例における新品と耐久品のそれぞれの差分ΔVdの大きさを比べて示す図である。
差分ΔVdがマイナス側に大きいということは、算出されたピーク間電圧値Vppが最適値Vpptよりも小さすぎることを示しており、プリントされた再現画像に点状のトナー像が散在するいわゆるかぶりが生じ易くなる。
一方、比較例では耐久品が上記の許容範囲から外れており、寿命に至るまでの間に亘ってピーク間電圧値Vppを適正範囲に設定できない場合があることが判った。
図15は、上記の耐久品をLL環境に代えて、環境ステップ15に相当するHH(高温高湿)環境下に設置し直して、実施例の方法によりピーク間電圧値Vppを求めたときの実験結果の例を示す図であり、LL環境下での実験結果も比較のために示されている。
一方、HH環境では、耐久品について良好な画質の再現画像が得られる最適なピーク間電圧値Vpptが実験などから1300Vが事前に得られ、交流電流値Iacの検出値が4246μAなので、傾き決定テーブル83からk=1.8が求められ、ピーク間電圧値Vpp=1386Vが算出された。差分ΔVdは86Vになった。これらの差分ΔVdの大きさは、上記の許容範囲内に入っている。
このようにHH環境下で、LL環境と同じ値kを適用すると、差分ΔVdがマイナスになる場合があり、この場合、最適値Vpptを下回り、再現画像にかぶりが生じるおそれがあるので、その環境に適した値kを適用することが望ましいことが判る。
また、傾き決定テーブル83は、交流電流値Iacの異なる範囲のそれぞれごとに1つの値kを対応付けた汎用性の高い構成であり、例えば交流電流値Iacがとり得る範囲内の1つの交流電流値Iacごとに1つの値kを対応付けるといった膨大な情報量になる構成よりも記憶領域を大幅に低減でき、低容量の安価な記憶部54を用いることができる。
本発明は、画像形成装置に限られず、帯電電圧の決定方法であるとしても良い。さらに、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしても良い。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を考えることができる。
(1)上記実施の形態では、傾き決定テーブル83を参照して、検出用ピーク間電圧値Vppが2000Vの帯電電圧が帯電ローラー12に供給されたときに検出された交流電流値Iacから値kを求めるとしたが、値kを求めるためのピーク間電圧値(以下、「Vppk」という。)は、2000Vに限られない。逆放電領域に属する異なる複数のピーク間電圧値Vppのうち、一つのピーク間電圧値Vpp、例えば最大値をVppkに設定する構成とすることができる。
また、最大値に代えて、逆放電領域に属する異なる検出用ピーク間電圧値Vppのうち、放電電流量ΔIac(交流電流値の差分値:図7)が0よりも大きくなるピーク間電圧値Vppのいずれか一つをVppkに選択する構成をとることもできる。
この構成では、帯電電圧決定処理が何時実行されるかによって、どの検出用ピーク間電圧値VppがΔIac>0の関係を満たすかが事前に判らない。従って、5〜10番目までの検出用ピーク間電圧値Vppのそれぞれごとに、その検出用ピーク間電圧値VppがVppkに選択された場合に用いられるべき傾き決定テーブル83が予め作成される。
この構成をとる場合、ピーク間電圧値Vppzに対する傾き決定テーブル831が予め求められる。そして、第1近似関数と第2近似関数を求める際には、上記同様に検出用電圧テーブル82に書き込まれているピーク間電圧値Vppが順番に帯電ローラー12に供給される。続いて、値kを求める際には、新たにピーク間電圧値Vppzが帯電ローラー12に供給され、そのときの交流電流値Iacが検出される。そして、傾き決定テーブル831に書き込まれている交流電流値Iacの異なる範囲のうち、検出された交流電流値Iacが属する範囲に対応する値kが傾き決定テーブル831から読み出される。
また、上記では帯電部材により帯電される像担持体を感光体ドラム11とする構成例を説明したが、ドラム状のものに限られず、例えばベルト状のものでも良い。
(5)上記実施の形態では、近似関数f2(Vpp)−f1(Vpp)を差分関数(第3近似関数)とする例を説明したが、これに限られない。例えば、f1(Vpp)−f2(Vpp)を差分関数とすることもできる。この場合、差分関数における電流変化量は減少量となる。
まず、第1近似関数を求める。そして、図7において4個の点P7〜P10のそれぞれごとに、求めた第1近似関数との差分ΔIacを算出する。
この方法では第2近似関数そのものを算出していないが、実質、上記の差分関数と同じものが得られる。装置構成によって用いる方法を予め決めることができる。
また、温湿度の変動がピーク間電圧値Vpp1の決定にほとんど影響を与えないような装置構成では、例えば環境ステップを考慮しない構成とすることも可能であろう。この構成では、検出用電圧テーブル82には異なる複数の検出用ピーク間電圧を示す情報だけが書き込まれ、傾き決定テーブル83には交流電流値Iacと値kが対応付けされた情報だけが書き込まれるようになる。
また、上記実施の形態及び各変形例は、可能な限り組み合わせて用いるとしても良い。
11 感光体ドラム
12 帯電ローラー
50 制御部
51 CPU
54 記憶部
60 電源部
61 直流電源回路
62 交流電源回路
70 電流検出部
71 温度検出センサー
72 湿度検出センサー
81 環境ステップテーブル
82 検出用電圧テーブル
83、831 傾き決定テーブル
Iac 交流電流値
Vac 交流電圧
Vdc 直流電圧
Vpp ピーク間電圧値
Vppk、Vppz 差分関数の傾きを求めるための検出用ピーク間電圧値
Vth 帯電開始電圧
ΔIac 放電電流量
Claims (7)
- 像担持体を帯電部材により帯電させる画像形成装置であって、
直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電電圧を前記帯電部材に供給する電源部と、
前記帯電部材に流れる交流電流値を検出する検出手段と、
前記交流電圧のピーク間電圧値を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記帯電部材から前記像担持体への電荷移動のみが起こる第1放電領域と、前記像担持体および前記帯電部材の間で双方向に電荷が移動する第2放電領域とのそれぞれにおいてピーク間電圧値を異ならせた複数の帯電電圧を非画像形成時に順番に前記電源部から前記帯電部材に供給させる第1処理と、
前記第1処理により帯電電圧が供給されたときの前記検出手段による交流電流値の検出結果から、前記第1放電領域におけるピーク間電圧値に対する交流電流値を示す第1近似関数と前記第2放電領域におけるピーク間電圧値に対する交流電流値を示す第2近似関数との差分値を示す第3近似関数を求める第2処理と、
前記第2放電領域内の一つのピーク間電圧値の帯電電圧が供給されたときの交流電流値の検出値が所定の異なる範囲のうちどの範囲に属するかを判断し、前記第3近似関数において単位ピーク間電圧当たりの前記差分値の変化量が前記判断した範囲に対応して予め決められた前記変化量の値と一致する点のピーク間電圧値を画像形成時のピーク間電圧値に決定する第3処理と、
を実行することを特徴とする画像形成装置。 - 前記一つのピーク間電圧値は、
前記第2放電領域内の前記各ピーク間電圧値のうちの一つであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記一つのピーク間電圧値は、
前記第2放電領域内の前記各ピーク間電圧値のうち最大のピーク間電圧値であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。 - 前記第3近似関数は、
前記第2近似関数から前記第1近似関数を減算して得られたものであり、
前記一つのピーク間電圧値は、
前記第2放電領域内の前記各ピーク間電圧値のうち、前記差分値が0よりも大きくなるピーク間電圧値のいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。 - 機内または機外の環境条件を検出する検出手段を備え、
前記所定の異なる範囲のそれぞれに、異なる環境条件に対して異なる前記変化量の値が予め対応付けされており、
前記第3処理では、
前記判断した範囲に予め対応付けられた、前記異なる環境条件のうち前記検出手段で検出された環境条件に対応する前記変化量の値を、前記予め決められた前記変化量の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記環境条件は、機内の温度と湿度の少なくとも一つであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
- 前記帯電部材は、
前記像担持体に接触または近接配置されるローラー状、ブラシ状またはブレード状のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
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