JP2013053271A - 金型腐食性に優れる超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

金型腐食性に優れる超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】金型腐食性に優れ、かつ機械的強度、流動性、離型性に優れる超臨界発泡成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)熱分解開始温度が280℃以上である離型剤(B成分)0.05〜2重量部を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、超臨界流体を用いた物理発泡による発泡樹脂組成物の成形加工において、特定の添加剤を特定割合で含有することにより金型腐食性に優れ、かつ従来樹脂が有する機械的強度、流動性、離型性にも優れる超臨界発泡成形用樹脂組成物に関するものである。
近年、レーザービームプリンター、複写機、およびプロジェクター装置など事務機、パーソナルコンピューター、情報通信機器およびカメラなど電気電子機器、自動車、鉄道車両など車両部品などに使用されるプラスチック材料に対しては、それぞれの用途に応じて、機械的強度、流動性、難燃性、寸法精度など様々な特性が要求される。近年では分野、用途に関わらず、使用樹脂量を減らすことによる石油資源の使用量を減らす、あるいは、車両部品用途では重量を軽くする事による燃費向上などに着目した環境配慮型の設計がなされ、その一環として、薄肉設計、中空成形、発泡成形などの使用樹脂量を減らし、軽量化する製造方法が採用されている。
しかしながら、従来一般的に用いられている射出成形などの加工方法では金型腐食問題が発生しない樹脂組成物においても、かかる製造方法、特に発泡成形、更に詳しくは、超臨界流体を溶融樹脂に添加し発泡させる物理発泡方式を用いた発泡成形方法を採用する事により、金型腐食の問題が生じている。
特許文献1にはABS中のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、塩素量を特定量以下とすることにより滞留時の熱安定性と金型腐食特性を有する樹脂組成物が開示されている。特許文献2には難燃剤として臭素系化合物を含むゴム強化スチレン樹脂において、金型キャビティーに大気圧以上の圧気体を掛けた状態で射出成形を行なう事で、腐食性ガス状物質を樹脂内に封じ込み金型腐食を防止する射出成形方法が開示されている。特許文献3には難燃剤の分子構造にハロゲン元素を含まず、樹脂組成物総量中の塩素分、臭素分およびフェノール類の含有量を特定量以下とすることで金属腐食性を低減した難燃性樹脂組成物が開示されている。特許文献4および5には臭素系難燃剤に起因する金型腐食の防止を目的に高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステルあるいはエポキシ化合物を特定量添加する難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2〜4においては、発泡成形に関する具体的な記述はなく、一般的な射出成形方法に関する金型腐食防止に関する記載に留まっており、さらに、特許文献1では射出成形の際に金型内部を加圧状態として腐食性ガスを溶融樹脂中に留めることによる金型腐食防止をする方法が記載はされているが、樹脂組成物に関しての検討結果等は示されていない。また、本願でいうところの発泡成形においては、特許文献2〜4に記載されるような金型腐食防止措置を講じない樹脂組成物においても通常では金型腐食問題が発生しない使用期間において、該樹脂組成物を発泡成形することで金型腐食が発生する問題が発生している。つまり、発泡成形における金型腐食防止に関して充分な検討はされておらず改善の余地がある。
特開平06−263962号公報 特公昭58−042823号公報 特開平10−045945号公報 特開平09−227787号公報 特開平09−272757号公報
本発明の目的は、金型腐食性に優れ、かつ機械的強度、流動性、離型性に優れる超臨界発泡成形用樹脂組成物を提供することである。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定の離型剤を特定割合で含有することで、上記の課題を解決できることを見出した。そして更に検討を進めることにより本発明を完成するに至った。
本発明によれば上記課題は、(1)(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)熱分解開始温度が280℃以上である離型剤(B成分)0.05〜2重量部を含有する超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物により達成される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)B成分がエステル系離型剤である上記構成(1)の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)B成分が、原料である多価アルコールの炭素数が2〜30、価数(水酸基数)が2〜12、カルボン酸の炭素数が15〜32であり、かつエステル化率が80%以上であるエステル化合物である上記構成(2)の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)A成分が、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A−1成分)、スチレン系樹脂(A−2成分)、およびポリフェニレンエーテル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である上記構成(1)〜(3)のいずれかの超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(5)A成分100重量部に対し、(C)難燃剤(C成分)2〜30重量部を含有する上記構成(1)〜(4)のいずれかの超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(6)A成分100重量部に対し、(D)フィブリル形成能を有する含フッ素滴下防止剤(D成分)0.05〜5重量部を含有する上記構成(1)〜(5)のいずれかの超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(7)超臨界流体が窒素である上記構成(1)〜(6)のいずれかの超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記構成(1)〜(7)のいずれかの超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物からなる発泡成形品である。
本発明の好適な態様の1つは、(9)軽量化率が3%以上である事務機、家庭用電化製品、電気電子機器、車両に用いられる部品である上記構成(8)の発泡成形品である。
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分について>
本発明で使用するA成分の熱可塑性樹脂は、基本的に限定されるものではなく、従来より事務機、家庭用電化製品、電気電子機器、車両部品に用いられる熱可塑性樹脂が好ましく使用される。かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、および環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン樹脂、PS樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MAS樹脂、水添ポリスチレン樹脂、およびSMA樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、PPE樹脂、PPS樹脂などのポリフェニレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PET樹脂、PBT樹脂および脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、並びにポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
本発明のより好適な熱可塑性樹脂は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A−1成分)、スチレン系樹脂(A−2成分)、およびポリフェニレンエーテル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である。その中でも、A−1成分およびA−2成分よりなり、A−1成分およびA−2成分の合計100重量部のうちA−1成分が50重量部以上である熱可塑性樹脂、あるいはA−2成分およびA−3成分よりなり、A−2成分およびA−3成分の合計100重量部の内A−3成分が30重量部以上である熱可塑性樹脂が好ましい。
[ポリカーボネート系樹脂]
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1.3×10〜4.0×10、より好ましくは1.5×10〜3.8×10である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。かかるポリカーボネート樹脂の詳細については、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
ポリカーボネート樹脂はバージン原料のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネートを利用することが可能である。その使用済みの製品としては、水ボトルに代表される容器、光学ディスクおよび自動車ヘッドランプなどが例示される。
[スチレン系樹脂]
本発明で使用されるスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンなどのスチレン誘導体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。更にポリブタジエンなどのジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、及びポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(以下IPN型ゴム)などに、スチレン及び/またはスチレン誘導体、またはスチレン及び/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものが挙げられる。かかるスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(水添SIS)、衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)及びスチレン・IPN型ゴム共重合体などの樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
尚、かかるスチレン系熱可塑性樹脂はその製造時にメタロセン触媒などの触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレンなどの高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合などの方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。またポリカーボネート樹脂との相溶性改良などを目的として、かかるスチレン系樹脂に無水マレイン酸やN置換マレイミドといった官能基を持つ化合物を共重合することも可能である。
これらの中でも、本発明で好適に使用される主な樹脂であるポリカーボネートと併用する場合においては、ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。また、スチレン系樹脂を2種以上混合して使用することも可能である。本発明で使用するAS樹脂とは、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。かかるシアン化ビニル化合物としては、前記記載のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また芳香族ビニル化合物としては、同様に前記記載のものが使用できるが、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。AS樹脂中における各成分の割合としては、全体を100重量%とした場合、シアン化ビニル化合物が好ましくは5〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が好ましくは95〜50重量%、より好ましくは85〜65重量%である。更にこれらのビニル化合物に、前記記載の共重合可能な他のビニル系化合物を混合使用することもでき、これらの含有割合は、AS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤などは必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。かかるAS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS樹脂の還元粘度としては、0.2〜1.0dl/gが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5dl/gである。還元粘度は、AS樹脂0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mlに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20〜100秒のものを用いる。還元粘度は溶媒の流下秒数(t)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求める。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t)−1}/0.5
還元粘度が0.2dl/gより小さいと衝撃が低下し、1.0dl/gを越えると流動性が悪くなる場合がある。
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体などのガラス転移温度が−30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、前記記載のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、同様に前記記載のものを使用できるが、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95〜20重量%が好ましく、特に好ましくは90〜50重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミドなどを混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の還元粘度は、先に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が0.2〜1.0dl/gが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7dl/gであるものである。
またグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はジエン系ゴム成分に対して、グラフト率(重量%)で表して20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜70%のものである。
かかるABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。塊状重合の場合には乳化剤などに由来するアルカリ金属塩などを実質的に含まないため、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性をより良好に保つことが可能となる。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
[ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)である。フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。また、ポリフェニレンエーテルの分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。また、本発明のポリフェニレンエーテル中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテルの主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
[ポリエステル系樹脂]
本発明で使用されるポリエステル系樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂および芳香族ポリエステル樹脂のいずれも含まれる。脂肪族ポリエステル樹脂としては、乳酸の如き脂肪族ヒドロキシカルボン酸やε−カプロラクトンから形成されるポリエステル重合体および共重合体が例示される。芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸とジオールから形成されるポリエステル重合体およびヒドロキシ芳香族カルボン酸から形成されるポリエステル重合体であり、ポリアルキレンテレフタレート(他の芳香族ジカルボン酸の共重合体を含む)、ポリアルキレンナフタレート(他の芳香族ジカルボン酸の共重合体を含む)、並びに二価フェノールと芳香族ジカルボン酸との重合体およびヒドロキシ芳香族カルボン酸の重合体などの全芳香族ポリエステル樹脂が例示され、いずれも利用できる。芳香族ポリエステル樹脂は、そのジカルボン酸成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸成分を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含有するポリエステル樹脂をいう。芳香族ポリエステル樹脂のジオール成分は、その100モル%中、脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールを好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含有してなるポリエステル樹脂である。ここで、ジカルボン酸成分とは、芳香族ポリエステル樹脂のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体に由来する構成単位を示し、またジオール成分とは、芳香族ポリエステル樹脂のジオールまたはそのエステル形成性誘導体に由来する構成単位を示す。
ポリカプロラクトンは、例えばカプロラクトンを酸、塩基、有機金属化合物等の触媒の存在下開環重合して製造することができる。また、ポリカプロラクトンの末端はエステル化やエーテル化等の末端処理を施してあってもよい。ポリカプロラクトンの分子量は特に制限する必要はないが、数平均分子量で表して300〜40,000が好ましく、400〜30,000がより好ましく、400〜15,000が更に好ましく、500〜12,000が特に好ましい。かかる好ましい分子量のポリカプロラクトンは、良好な熱安定性と流動改質効果とを併有する。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸から形成されるポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸および/または乳酸類とその他のヒドロキシカルボン酸との共重合体が好適である。ポリ乳酸は通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成され、その製造方法に関してはUSP1,995,970、USP2,362,511、USP2,683,136に開示されている。また乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸の共重合体は通常ラクタイドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から開環重合により合成され、その製造法に関してはUSP3,635,956、USP3,797,499に開示されている。開環重合によらず直接脱水重縮合により乳酸系樹脂を製造する場合には、乳酸類と必要に応じて他のヒドロキシカルボン酸を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度の乳酸系樹脂が得られる。原料の乳酸類としてはL−およびD−乳酸、またはその混合物、乳酸の二量体であるラクタイドのいずれも使用できる。また乳酸類と併用できる他のヒドロキシカルボン酸類としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などがあり、さらにヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の二量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを使用することもできる。
芳香族ポリエステル樹脂を構成する芳香族ジカルボン酸の例としては、以下のものが例示される。尚、以下ジカルボン酸成分やジオール成分の具体的例示においては、いずれも“成分”を略称する。即ち、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独で又は2種以上混合して使用することができる。中でもテレフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
その他共重合可能なジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸および共重合可能なジカルボン酸は単独でも、2種類以上混合しても用いることができる。
また芳香族ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびデカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、並びにp−キシレンジオールおよびビスフェノールAなどの二価フェノールが挙げられる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。これらジオール成分は単独でも、2種類以上を混合しても用いることができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。なお、二価フェノールを共重合成分として含む場合は、ジオール成分中の二価フェノールは30モル%以下であることが好ましい。
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、シクロヘキサンジメタノール共重合PET、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート/テレフタレート共重合体、およびポリブチレンナフタレート/テレフタレート共重合体などが例示され、その中でもポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく使用される。
PETは、ジオールとしてエチレングリコール、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸が一般的であるが、本発明におけるPETはテレフタル酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合成分として含むものでもよい。
かかる他のジカルボン酸成分の例として、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等に由来する構成単位があげられる。これらのジカルボン酸成分は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分は、ジカルボン酸成分の全量を100モル%としたとき、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
更に本発明のPETには、上記芳香族ジカルボン酸成分以外に、30モル%未満の脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することができる。該成分の具体例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等に由来する構成単位があげられる。
また本発明のPETはエチレングリコール成分以外のジオール成分を共重合成分として含むものでもよい。他のジオール成分としては例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−または−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)などに由来する構成単位を挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。
更にジオール成分としてわずかにポリエチレングリコール成分を共重合したポリエチレンテレフタレートも使用できる。ポリエチレングリコール成分の分子量としては150〜6,000の範囲が好ましい。
ポリエチレングリコール成分の組成割合としては、ジオール成分100重量%中、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下が更に好ましい。一方下限としては、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。
更にPET中には、通常重合時の副反応生成物としてジオール成分100モル%中、約0.5モル%以上のジエチレングリコール成分が含まれているが、かかるジエチレングリコール成分は6モル%以下が好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
本発明のPETにおいて、テレフタル酸成分の一部をイソフタル酸成分としたポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体(以下、TA/IA共重合体と略称することがある。)におけるテレフタル酸成分とイソフタル酸成分との割合は、全ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、テレフタル酸成分が好ましくは70〜99.9モル%、より好ましくは75〜99モル%、さらに好ましくは80〜99モル%である。また、イソフタル酸成分は好ましくは0.1〜30モル%、より好ましくは1〜25モル%、さらに好ましくは1〜20モル%である。
更にこのTA/IA共重合体には、テレフタル酸成分とイソフタル酸成分以外の、ナフタレンジカルボン酸等前記の芳香族ジカルボン酸成分を好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、またアジピン酸等の前記の脂肪族ジカルボン酸成分を好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下共重合することが可能であるが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分とイソフタル酸成分のみからなるものが最も好ましい。また、TA/IA共重合体におけるジオール成分としてエチレングリコール成分単独が最も好ましいが、エチレングリコール以外のジオール成分を共重合することも可能である。
本発明のPETにおいてエチレングリコール成分の一部をネオペンチルグリコール成分としたポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合体(以下、EG/NPG共重合体と略称することがある。)におけるエチレングリコール成分とネオペンチルグリコール成分との割合は、全ジオール成分100モル%とした時にエチレングリコール成分が好ましくは90〜99モル%、より好ましくは95〜99モル%、さらに好ましくは97〜99モル%である。また、ネオペンチルグリコール成分は好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜8モル%、さらに好ましくは1〜5モル%である。またエチレングリコールとネオペンチルグリコール以外のジオール成分を共重合することも可能である。
このEG/NPG共重合体には、テレフタル酸成分以外のイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等、前記の芳香族ジカルボン酸成分を好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、またアジピン酸等の前記の脂肪族ジカルボン酸成分を好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下共重合することが可能であるが、ジカルボン酸成分がテレフタル酸成分単独のものが最も好ましい。また脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することも可能である。
本発明に使用されるPETの製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分を誘導する化合物と前記ジオール成分を誘導する化合物とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。重縮合触媒としてはゲルマニウム系重合触媒が好ましく、その例としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示される。またその他、三酸化アンチモン等の非溶性触媒が例示される。特にゲルマニウム系重合触媒を用いたPETにより本発明の目的、特に耐薬品性、熱安定性に好適となる。
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。PETの製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
本発明に用いられるPETのIV値は好ましくは0.45〜0.57dl/g、より好ましくは0.47〜0.55dl/g、さらに好ましくは0.49〜0.52dl/gである。IV値が高い場合には流動性が低下するほかに、耐薬品性の向上効果が発現しにくいといった問題がある。他方IV値が低すぎる場合には、強度低下が大きいほか、PETの末端基量が多い影響により樹脂組成物の熱安定性が低下する。またIV値の低いPETの生産は、スレットが砕けてしまう為ペレタイズが困難といった問題もある。
PETのIV値は、特に指定しない限りo−クロロフェノール中25℃で測定された対数粘度値(IV値)である。即ち、PET1.2gをo−クロロフェノール15cm中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。また重縮合反応工程後に得られたPETの密度は、1.35〜1.41g/cmであることが好ましく、より好ましくは1.37〜1.39g/cmである。本発明において、PETの密度は、JISK7112のD法に準拠した硝酸カルシウム溶液を用いた密度勾配管法により、23℃の温度で測定される。
本発明に用いられるPETの末端カルボキシル基量は好ましくは20〜35eq/ton、より好ましくは22〜30eq/ton、さらに好ましくは23〜28eq/ton以下である。
本発明のより好ましいPETは、ジオキシエチレンテレフタレート単位の含有率が、1.0〜5.0モル%(好ましく1.0〜2.5モル%)の範囲にあることを満足する。このようにして、最終重縮合反応器から得られたPETは、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。このような粒状のPETは、通常2〜5mm(好ましくは2.2〜4mm)の平均粒径を有することが望ましい。本発明のPETは、このようにして液相重縮合工程を経た粒状のPETをそのまま利用することが好ましい。
PET樹脂はバージン原料のみならず、使用済みの製品から再生されたPETを利用することが可能である。殊に好適なPETは、大量に消費されその再生システムも確立されていることから、有効に利用することができる。その使用済みの製品としては、ペットボトルやブリスターに代表される容器、各種のフィルム、および繊維などが例示される。
本発明のPBTとは、テレフタル酸あるいはその誘導体と、1,4−ブタンジオールあるいはその誘導体とから重縮合反応により得られる樹脂であるが、他のジカルボン酸および/または1,4−ブタンジオール以外のアルキレングリコール成分を共重合したものを含む。1,4−ブタンジオール以外のアルキレングリコール成分はアルキレングリコール成分100モル%中20モル%以下であることが好ましい。
PBTの末端基構造は末端水酸基含有量(meq/kg)/末端カルボキシル基含有量(meq/kg)の比が1以上であり且つ末端水酸基含有量が10meq/kg以上が好ましい、より好ましいのは末端水酸基含有量(meq/kg)/末端カルボキシル基含有量(meq/kg)の比が1.2以上であり且つ末端水酸基含有量が15meq/kg以上であるもの、更に好ましくは末端水酸基含有量(meq/kg)/末端カルボキシル基含有量(meq/kg)の比が1.3以上であり且つ末端水酸基含有量が20meq/kg以上であるものである。
一方、末端水酸基含有量(meq/kg)/末端カルボキシル基含有量(meq/kg)の比の上限としては好ましくは300以下、より好ましくは100以下である。また末端水酸基含有量の上限としては150meq/kg以下が好ましく、より好ましくは100meq/kg以下である。
また製造方法についても各種方法を取り得るが好ましくは次のものである。製造方法としては、連続重合式のものがより好ましい。これはその品質安定性が高く、またコスト的にも有利なためである。更に重合触媒としては有機チタン化合物を用いることが好ましい。これはポリカーボネート樹脂と混合した際のエステル交換反応などへの影響が少ない傾向にあるからである。更に末端水酸基含有量(meq/kg)/末端カルボキシル基含有量(meq/kg)の比が1以上のPBTを製造するためには、溶液重合、固相重合などの方法を挙げることができるが、より好ましくは固相重合が有利である。
かかる有機チタン化合物としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子がポリブチレンテレフタレートを構成する酸成分に対し、3〜12mg原子%となる割合が好ましい。
[液晶ポリエステル系樹脂]
本発明で使用される液晶ポリエステル樹脂とは、サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂であり、溶融状態でポリマー分子鎖が一定方向に配列する性質を有している。かかる配列状態の形態はネマチック型、スメチック型、コレステリック型、およびディスコチック型のいずれの形態であってもよく、また2種以上の形態を呈するものであってもよい。更に液晶ポリエステル樹脂の構造としては主鎖型、側鎖型、および剛直主鎖屈曲側鎖型などのいずれの構造であってもよいが、好ましいのは主鎖型液晶ポリエステル樹脂である。
上記配列状態の形態、すなわち異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明のポリマーは直交偏光子の間で検査したときにたとえ溶融静止状態であっても偏光は透過し、光学的に異方性を示す。
また液晶ポリエステル樹脂の耐熱性はいかなる範囲であってもよいが、ポリカーボネート樹脂の加工温度に近い部分で溶融し液晶相を形成するものが適切である。この点で液晶ポリエステルの荷重たわみ温度が150〜280℃、好ましくは180〜250℃であるものがより好適である。かかる液晶ポリエステルはいわゆる耐熱性区分のII型に属するものである。かかる耐熱性を有する場合には耐熱性のより高いI型に比較して成形加工性に優れ、および耐熱性のより低いIII型に比較して良好な難燃性が達成される。
本発明で用いられる液晶ポリエステル樹脂は、ポリエステル単位およびポリエステルアミド単位を含むものであり、芳香族ポリエステル樹脂及び芳香族ポリエステルアミド樹脂が好ましく、芳香族ポリエステル単位及び芳香族ポリエステルアミド単位を同一分子鎖中に部分的に含む液晶ポリエステル樹脂も好ましい例である。
特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた1種または2種以上の化合物由来の単位構成成分として有する全芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリエステルアミド樹脂である。より具体的には、
1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上から合成される液晶ポリエステル樹脂、
2)主としてa)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、並びにc)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上から合成される液晶ポリエステル樹脂、
3)主としてa)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上、並びにc)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上から合成される液晶ポリエステルアミド樹脂、
4)主としてa)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上、c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、並びにd)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上から合成される液晶ポリエステルアミド樹脂
が挙げられるが、1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上から合成される液晶ポリエステル樹脂が好ましい。
更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用しても良い。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の合成に用いられる具体的化合物の好ましい例は、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフタレン化合物、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェニル化合物、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、ハイドロキノン、p−アミノフェノール及びp−フェニレンジアミン等のパラ位置換のベンゼン化合物及びそれらの核置換ベンゼン化合物(置換基は塩素、臭素、メチル、フェニル、1−フェニルエチルより選ばれる)、イソフタル酸、レゾルシン等のメタ位置換のベンゼン化合物、並びに下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物である。中でも、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が特に好ましく、両者を混合してなる液晶ポリエステル樹脂が好適である。両者の割合は前者が90〜50モル%の範囲が好ましく、80〜65モル%の範囲がより好ましく、後者が10〜50モル%の範囲が好ましく、20〜35モル%の範囲がより好ましい。
Figure 2013053271
Figure 2013053271
Figure 2013053271
(但し、Xは炭素数1〜4のアルキレン基およびアルキリデン基、−O−、−SO−、−SO−、−S−、並びに−CO−よりなる群より選ばれる基であり、Yは−(CH−(n=1〜4)、および−O(CHO−(n=1〜4)よりなる群より選ばれる基である。)
又、本発明に使用される液晶ポリエステル樹脂は、上述の構成成分の他に同一分子鎖中に部分的に異方性溶融相を示さないポリアルキレンテレフタレート由来単位が存在してもよい。この場合のアルキル基の炭素数は2〜4であることが好ましい。
本発明において使用する液晶ポリエステル樹脂の基本的な製造方法は、特に制限がなく、公知の液晶ポリエステル樹脂の重縮合法に準じて製造できる。上記の液晶ポリエステル樹脂はまた、60℃でペンタフルオロフェノールに0.1重量%濃度で溶解したときに、少なくとも約2.0dl/g、たとえば約2.0〜10.0dl/gの対数粘度(IV値)を一般に示す。
<B成分について>
本発明で使用するB成分の離型剤は、窒素雰囲気条件の熱天秤により測定した5%重量減少温度で表される熱分解開始温度が280℃以上である離型剤であれば基本的に限定されるものではなく、従来より事務機、家庭用電化製品、電気電子機器、車両部品に用いられる熱可塑性樹脂に好ましく使用される離型剤であり、かかる離型剤としては、例えば、エステル化合物、ポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、ポリオルガノシロキサン、金属石鹸、パラフィンワックス、蜜蝋などが挙げられる。熱分解開始温度が280℃以上であることが必要である理由としては以下の理由が挙げられる。すなわち、熱分解温度が280℃未満の離型剤を使用した場合、成形機加熱筒内で加熱溶融された樹脂中において離型剤成分が分解し、揮発性の分解物が発生し、一般的な射出成形では樹脂内に留められていた分解物が、超臨界ガスの成形品外への排出に伴い同伴され金型に付着し金型腐食につながると推定される。
本発明で好適に使用される離型剤は、上記金型腐食性以外に従来求められる、離型性、熱安定性、燃焼性などの観点から、エステル系離型剤であることが好ましい。ここで言うエステル系離型剤とは多価アルコールとカルボン酸の化合物であり、多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールの他、これらを脱水縮合したポリオールも使用可能であり、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。また、これらの多価アルコールと2価のカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられ、2価の芳香族カルボン酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などと縮合した化合物も使用可能であり、具体例としては、ペンタエリスリトールとアジピン酸よりなるアジピン酸ペンタエリスリトール縮合物、ジペンタエリスリトールとアジピン酸よりなるアジピン酸ジペンタエリスリトール縮合物などが挙げられる。上記の中でも、炭素数が2〜30、価数(水酸基数)が2〜12である多価アルコールがより好ましく、炭素数が2〜20、価数(水酸基数)が2〜10がさらに好ましく、炭素数が2〜12、価数(水酸基数)が2〜8が特に好ましい。なかでも脂肪族多価アルコールが好ましく、特に、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アジピン酸ペンタエリスリトールおよびその縮合物、アジピン酸ジペンタエリスリトールおよびその縮合物が好ましい。
カルボン酸の具体例としては、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、イコサン酸、ドコサン酸、オクタコサン酸(モンタン酸)およびメリシン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸、並びに安息香酸、イソプロピル安息香酸、トリメチル安息香酸などの芳香族モノカルボン酸を挙げることができる。上記の中でも、炭化水素鎖部分の炭素数が15〜32であるものがより好ましく、15〜26がさらに好ましく、15〜24が特に好ましい。なかでも飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。特にモンタン酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびベヘン酸或いはこれらの混合脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
ステアリン酸やパルミチン酸、ベヘン酸などの脂肪族モノカルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(菜種油、パーム油など)などの天然油脂類から製造される。従って、ここで言う脂肪族モノカルボン酸は天然物であるため、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物で工業的に供給される。本発明のエステル化合物の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなり、例えば、ステアリン酸の場合はパルミチン酸との混合物で供給される場合が多い。カルボン酸としてこれらの混合物を使用する場合、その炭素数は混合物のガスクロマトグラフによるアルキル分析により算出される。
該エステル化合物は、多価アルコールとカルボン酸を原料として製造されるが、多価アルコールの水酸基とカルボン酸化合物のカルボキシル基とのエステル化反応により合成され、工業的に生産するには多価アルコールの水酸基全てをエステル化することは困難である。また、本発明の目的を達成するには、必ずしも全ての多価アルコールの水酸基をエステル化する必要はなく、エステル化率を下記式(1)とした際に、本発明のエステル化合物のエステル化率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
Figure 2013053271
ここで水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK 0070に規定された方法により求めることができる。この水酸基価はエステル化合物の原料である多価アルコールがカルボン酸化合物とエステル化したときに、未反応で残った水酸基の数を示す指標である。けん化価は試料1gを完全に加水分解するために必要な水酸化カリウムのmg数であり、JISK 0070に規定された方法により求めることができる。このけん化価はエステル化合物中のエステル結合の数を示す指標である。
多価アルコールの炭素数が2未満の場合、離型剤としての作用が不十分なばかりでなく、耐熱性が不十分となり金属腐食の原因となる場合がある、一方、30を越える場合は、離型剤もしくは脂肪族多価アルコールを安価に工業的に生産することが不可能なばかりでなく、エステル化し離型剤としても樹脂との混和性に劣る場合があるため好ましくない。多価アルコールの価数(水酸基数)が2未満の場合、離型剤としての作用が不十分なばかりでなく、耐熱性が不十分となり、金属腐食の原因となる場合がある。一方、12を越える場合は、離型剤もしくは多価アルコールを安価に工業的に生産することが不可能な場合があるため好ましくない。カルボン酸の炭素数が15未満の場合、得られる離型剤の耐熱性が不十分となり金属腐食の原因となる場合がある、一方、32を越える場合は、そのカルボン酸を安価に工業的に得ることが不可能な場合があるため好ましくない。エステル化率が80%未満である場合は、耐熱性が不十分となり好ましくない。
B成分の含有量はA成分100重量部に対し0.05〜2重量部であり、0.1〜1.5重量部であることが好ましく、0.2〜1.0重量部であることがより好ましい。B成分が上記範囲よりも少なすぎる場合には充分な離型性を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合には、外観不良が発生する場合があるため工業的に有用でない。
<C成分について>
本発明の樹脂組成物は、C成分として難燃剤を含有することが好ましい。
かかる難燃剤としては、特に限定するものではなく、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、塩系難燃剤、シリコン系難燃剤などの樹脂用難燃剤が使用可能であるが、その中でも、環境性能と難燃性能のバランスに優れたリン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物が好ましい。
有機リン酸エステル化合物としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、およびホスファゼンオリゴマーなどが好適に例示される。更にリン酸エステルとしては、下記式(4)で示される化合物が好適である。
Figure 2013053271
[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0〜5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値である。R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれる化合物から誘導される一価の基であり、nが1〜3の整数である成分を主成分として含む化合物が挙げられる。
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、2〜30重量部が好ましく、より好ましくは3〜25重量部であり、4〜20重量部がさらに好ましい。難燃剤が上記範囲を超えて多すぎる場合には、組成物の耐熱性および物性低下を起こす場合がある。逆に、少なすぎる場合は、所望の難燃性を得られない場合がある。
<D成分について>
本発明の樹脂組成物は、D成分としてフィブリル形成能を有する含フッ素滴下防止剤を含有することが好ましい。この含フッ素滴下防止剤の含有により、成形品の物性を損なうことなく、良好な難燃性を達成することができる。
含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において好ましくは100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPAFA500およびF−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1およびD−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これら混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレンA3800」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。なお、上記D成分の割合は正味の含フッ素滴下防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.05〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。含フッ素滴下防止剤が上記範囲を超えて多すぎる場合にはPTFEが成形品表面に析出し外観不良となるばかりでなく、樹脂組成物のコストアップに繋がり好ましくなく、逆に少なすぎる場合には、滴下防止効果が充分に発揮されない場合がある。
<その他の成分について>
本発明の樹脂組成物には本発明の効果を発揮する範囲において、他に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料、難燃助剤等を配合することも出来る。
熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等のリン系の熱安定剤が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル化合物、更にその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等を挙げることができる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、A成分100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.3重量部が更に好ましい。
酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる酸化防止剤の配合量は、A成分100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.3重量部が更に好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。更にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、A成分100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.3重量部が更に好ましい。
帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。かかる帯電防止剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる帯電防止剤の配合量は、A成分100重量部に対して、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.3重量部が更に好ましい。
<樹脂組成物の製造>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜4mmである。
かくして得られた樹脂組成物は、スクリュー中間部にチェックリング(以下中間リングと記載する)、先端3点セットと中間リングの間に超臨界ガスの注入口、および外部機器として超臨界ガス発生および注入装置を設置した、射出成形機において、ホッパー口からペレットを投入し、成形機スクリューの搬送ゾーン、圧縮ゾーンで加熱溶融させた後、計量ゾーン部分の加熱筒に具備された専用のガス注入口より窒素または二酸化炭素の超臨界ガスを導入することにより、超臨界発泡成形を行う。かかる超臨界発泡成形においては、金型コントロール側において必要に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成型、コアバック成形を採用することで、前記超臨界ガスの注入量だけでなく、その発泡倍率を制御することが可能である。また金型のランナーはコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することが可能であるが、後者のホットランナー方式の方が発泡倍率を制御しやすい点では好ましい。更に、成形機のノズルは、オープンノズル、シャットオフバルブいずれも使用可能であるが、成形安定性を考慮すると後者のシャットオフバルブがより好ましい。
さらに本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
また、本発明の成形品の外観に意匠性を持たせるため、各種のインサート成形が可能であり、フィルムインサート成形、インモールド成形などが例示される。
本発明は、超臨界流体を用いた物理発泡による発泡成形物の成形加工において、金型腐食性に優れ、かつ従来樹脂が有する機械的強度、流動性、離型性にも優れる超臨界発泡成形用樹脂組成物を提供するものであり、特に該組成物は金型腐食性に優れることから生産におけるコストダウンに有効であり、その奏する工業的効果は格別なものである。
実施例において使用した、金型腐食評価用のU字型金型および腐食評価用入れ子の形状を示す正面図である。ダイレクトゲートから注入された樹脂が左右に分かれて流れ、最終充填位置で接合し、ガスベントからはガス成分のみが金型外に放出される。 実施例において使用した、金型腐食評価用金型の製品部最終充填位置に挿入する交換式の腐食評価用入れ子であり、U字成形品の流路厚みと一致する形状である。 実施例において使用した、金型腐食評価用金型のガスベント位置に挿入する交換式の腐食評価用入れ子であり、ガスベント深さと一致する形状である。 [4−A]は、実施例において使用した、離型力評価用のコップ状成形品の形状を示す正面図である。[4−B]は、実施例において使用した、離型力評価用のコップ状成形品の形状を示す側面図である。[4−C]は、実施例において使用した、離型力評価用のコップ状成形品の形状を示す背面図である。 [5−A]は、離型力評価において用いた金型構造の概略を示す。金型キャビティ内に樹脂が充填された状態を示す。[5−B]は、上記[5−A]の充填後、冷却されて型開きした状態を示す。この時点では、成形品は可動側金型に密着した状態にある。[5−C]は、上記[5−B]の型開き後、突き出しロッドの前進によって、突き出しピンを押し出し、成形品を離型させる。突き出し時の力を突き出しピンと接するロードセルによって検知する。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例をあげて更に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
(i)金型腐食性
昭和炭酸(株)製 超臨界ガス注入装置 SII−TRJ−10(使用ガス:窒素)を具備した日本製鋼所(株)製 射出成形機 J140AD−110H、および図1〜3に示した金型腐食評価用金型および腐食評価用入れ子を使用し、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度にて10,000ショット連続成形したあと、図1における符号2および5で示す腐食評価用入れ子を金型から抜き取り、該入れ子を設定温度50℃、湿度75%の恒温恒湿槽にて24時間の処理をした後の錆の発生状況を目視で判定した。なお、評価は以下のように行った。
◎ : 特に変化なし
○ : わずかに腐食あるいはヤニ状付着物が認められる。(入れ子表面積の10%未満)
△ : 腐食が認められる。(入れ子表面積の10%〜30%未満)
× : 腐食が顕著に認められる。(入れ子表面積の30%以上)
(判定が困難な場合は◎〜○のような判定を可能とした)
尚、発泡成形は上記超臨界ガス注入装置より、成形機シリンダーに設けられた注入口より超臨界状態の窒素を注入し、加熱溶融された樹脂組成物と均一に混合されたものをキャビティー内に射出注入する条件で、一般成形は同一装置を用いて、超臨界ガスの注入をしない条件で評価を実施した。
(ii)軽量化率
MIRAGE社製電子比重計 MD−200S(商品名)を用いて、上記腐食試験で成形した成形品および上記腐食試験において超臨界ガスを注入しない条件により成形した成形品の比重を測定し、下記式により算出した。
軽量化率(%)=100×{(一般成形品比重)−(発泡成形品比重)}/(一般成形品比重)
(iii)曲げ弾性率
ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmとした。尚、成形は一般成形とした。
(iv)衝撃強度
ISO79に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmとした。尚、成形は一般成形とした。
(v)離型性
図4に示すカップ状成形品をエジェクタピンにより突き出して離型させる際の離型荷重を測定した。かかる離型荷重の測定は、エジェクタプレートにロードセルを設置し、かかるロードセルの先端部がエジェクタピンの根元に接してエジェクタピンを押し出す構成とすることにより実施した。かかる構成により突き出し時のロードセルにかかる応力が測定され、その応力の最大値を離型荷重とした。なお、表には離型荷重として、かかるカップ状成形品を連続して40ショット成形し離型荷重を安定化させた後、連続20ショットの成形を行った際の各ショットにおいて測定された離型荷重の平均値を示した。カップ状成形品の成形条件は次のとおりである。すなわち、射出成形機:東芝機械製EC−160NII、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度、充填時間:4秒、保圧:50MPa、保圧時間:10秒、および冷却時間:40秒であった。かかる条件によって良好な成形品が得られた。
(vi)表面外観
前記、離型性評価において成形したカップ状成形品において、離型荷重測定対象の20ショットについて、シルバーストリークス(銀条)および剥離等の概観不良の発生状況を目視で判定した。なお、評価は以下のように行った。安定性の観点より○または△であることが必要である。
○ : 20ショット中の外観不良が2ショット以下
△ : 20ショット中の外観不良3〜5ショット
× : 20ショット中の外観不良6ショット以上
[実施例1〜24、比較例1〜12]
表1、表2および表3に記載成分のうち、独立供給可能あるいは独立供給することにより安定して押出し可能な成分(たとえば、ABS樹脂等のペレット形状の成分)を除いたA〜D成分、およびその他の成分をV型ブレンダーにて混合して混合物を作成した。スクリュー径30mmのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所TEX−30XSST]を用いて、V型ブレンダーにて混合した混合物、独立供給可能な成分あるいは独立供給することにより安定して押出し可能な成分およびその他の任意の成分を最後部の第1投入口より計量器を用いて所定の割合となるように供給し、真空ポンプを使用し3kPaの真空下において、シリンダー温度270℃で溶融押出ししてペレット化した。ただしC成分がC−1の場合は、80℃に加熱した状態で液注装置(富士テクノ工業(株)製HYM−JS−08)を用いてシリンダー途中(第1供給口と第2供給口との間)から所定の割合になるよう押出機に供給した。得られたペレットを熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、上記の評価方法で評価を行った。なお、試験片は、射出成形機(一般の射出成形機)[東芝機械工業(株)製EC160Nii]により作成した。結果を表1、表2および表3に示す。
なお、原料としては以下のものを用いた。
(A成分)
A−1:芳香族ポリカーボネート樹脂[帝人化成(株)製パンライトL−1225WP(商品名)、ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量22,500の芳香族ポリカーボネート樹脂粉末]
A−2−1:ABS樹脂[日本A&L(株)製 クララスチックSXH−330(商品名)、ブタジエンゴム成分約17.5重量%、平均ゴム粒子径400nm、ISO 1133に従い220℃、10kg荷重で測定されたMVRが53cm/10分]
A−2−2:MBS樹脂 [ローム&ハース社製パラロイドEXL2638(商品名)]
A−2−3:シリコンアクリル樹脂[三菱レイヨン(株)社製S2001(商品名)]
A−2−4:PS樹脂[PSジャパン(株)社製ハイインパクトポリスチレンH9152(商品名)]
A−3:PPE樹脂[GEM社製「PPE」]
(B成分)
B−1:酸化変性型ポリエチレンワックス [三井化学(株)社製ハイワックス405MP(商品名) 熱分解開始温度=354℃、JIS K7112に準拠して測定した密度960kg/m、JIS K5902に準拠して測定した酸価1mgKOH/g、粘度法により測定した分子量4000]
B−2:ペンタエリスリトールテトラステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールVPG861 熱分解開始温度=336℃、酸価1mgKOH/g]
B−3:ペンタエリスリトールテトラステアレート[理研ビタミン(株)製リケスターEW400 熱分解開始温度=342℃、酸価20mgKOH/g]
B−4:ジペンタエリスリトールヘキサステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールVPG2571 熱分解開始温度=339℃、酸価1mgKOH/g]
B−5:アジピン酸ペンタエリスリトールステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールG70S 熱分解開始温度=318℃、酸価10mgKOH/g]
B−6:グリセリントリステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールEP218 熱分解開始温度=300℃、酸価2mgKOH/g]
B−7:エチレングリコールジモンタレート[クラリアントジャパン(株)製リコワックスEパウダー 熱分解開始温度=300℃、酸価15mgKOH/g]
B−8:エチレングリコールジステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールEP237 熱分解開始温度=288℃、酸価2mgKOH/g]
(B成分以外の離型剤)
R−1:グリセリントリステアレートとステアリルステアレートの混合物[理研ビタミン(株)製SL900 熱分解開始温度=277℃、酸価3mgKOH/g]
R−2:グリセリンモノステアレート[理研ビタミン(株)製S100A 熱分解開始温度=235℃、酸価2mgKOH/g]
R−3:ステアリルステアレート[エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製ロキシオールG32 熱分解開始温度=268℃、酸価1mgKOH/g]
R−4:グリセリントリラウリレート[熱分解開始温度=265℃、酸価3mgKOH/g]
(C成分)
C−1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル[大八化学工業(株)製:CR−741(商品名)]
C−2:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)[大八化学工業(株)製:PX200(商品名)]
(D成分)
D−1:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン[ダイキン工業(株)製:ポリフロンMPAFA500(商品名)]
D−2:ポリテトラフルオロエチレン系混合体(乳化重合法で製造された、ポリテトラフルオロエチレンおよびアクリル系共重合体からなる混合物)[三菱レイヨン(株)社製:A3700(商品名)ポリテトラフルオロエチレン含有量50重量%、カリウム金属イオン16ppm以上)]
(その他の成分)
E−1:カーボンブラックマスター[越谷化成(株)製 ROYALBLACK961S(商品名)カーボンブラック50重量%、PS樹脂50重量%]
E−2:フェノール系熱安定剤[Ciba Specialty Chemicals K.K.製;IRGANOX1076(商品名)]
Figure 2013053271
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上記表から明らかなように、本発明の樹脂組成物は特定の離型剤を特定量配合することにより、発泡成形における金型腐食性に優れ、かつ従来品と同等レベルの機械的強度、離形性を有する、事務機、家庭用電化製品、電気電子機器、車両向け樹脂成形品に好適な樹脂組成物が得られた。尚、B成分が少なすぎるときは離型性に劣り、逆に多すぎる場合には製品外観が損なわれた。
1 金型腐食評価用のU字型金型 (幅20mm、流路厚み2mm、材質:NAK80)
2 製品面金型腐食評価用入子(直径20mm、流路厚み2mm ツバ付き、材質:S50C)
3 ダイレクトゲート(直径7mm)
4 ガスベント(幅20mm、深さ0.03mm)
5 ガスベント部金型腐食評価用入子(直径20mm、ガスベント深さ0.03mm、 ツバ付き、材質:S50C)
6 モールドベース
A−A’ 2の入子部分の中心断面線(図2の断面を示す)
B−B’ 5の入子部分の中心断面線(図3の断面を示す)
21 カップ状成形品本体
22 へた部の対称軸(26)からの距離(15mm)
23 へた部
24 へた部の高さ(20mm)
25 カップ上面端面(コーナー部R:2.5mm)
26 対称軸
27 内定孔(半径1mm)
28 Zピン突起(中心軸から外周部まで半径7.5mm)
29 カップ内底部(コーナー部R:5mm)
30 へた部厚み(4mm)
31 中心軸(34)から内底孔(27)中心軸までの距離(13mm)
32 中心軸(34)からカップ底面(36)外縁部までの距離(26mm)
33 中心軸(34)からカップ上面端(25)外縁部までの距離(30mm)
34 カップ中心軸
35 スプルー(外半径6mm、先端部半径3mm、長さ39mm)
36 カップ底面部
37 カップ底面部厚み(4mm)
38 カップ外周部厚み(2.5mm、外周部全て同一)
39 カップ外周壁
41 固定側金型
42 成形品
43 突き出しピン(先端Zピン)
44 ロードセル

Claims (10)

  1. (A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)熱分解開始温度が280℃以上である離型剤(B成分)0.05〜2重量部を含有する超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  2. B成分がエステル系離型剤である請求項1記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  3. B成分が、原料である多価アルコールの炭素数が2〜30、価数(水酸基数)が2〜12、カルボン酸の炭素数が15〜32であり、かつエステル化率が80%以上であるエステル化合物である請求項2記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  4. A成分が、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A−1成分)、スチレン系樹脂(A−2成分)、およびポリフェニレンエーテル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  5. A成分100重量部に対し、(C)難燃剤(C成分)2〜30重量部を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  6. A成分100重量部に対し、(D)フィブリル形成能を有する含フッ素滴下防止剤(D成分)0.05〜5重量部を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  7. 超臨界流体が窒素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の超臨界発泡成形用熱可塑性樹脂組成物からなる発泡成形品。
  9. 軽量化率が3%以上である事務機、家庭用電化製品、電気電子機器、および車両に用いられる部品である請求項8に記載の発泡成形品。
  10. 樹脂組成物として、(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)非エステル系離型剤(B成分)0.05〜2重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用することにより、超臨界発泡成形における金型の腐食を防止する方法。
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