JP2004359913A - ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及び塩基性無機充填材を含有する熱安定性良好なポリカーボネート樹脂組成物の提供。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)、芳香族ポリエステル樹脂(b成分)、塩基性無機充填材(c成分)、及びホスファイト安定剤(d成分)からなり、(i)a成分とb成分及びc成分の合計100重量部当り、d成分が0.005〜5重量部であり、かつa成分/b成分=5〜95重量%/5〜95重量%であり、(ii)d成分の酸価が特定条件下において、酸価上昇値が0.1〜30mgKOH/gの範囲にある事が特徴のポリカーボネート樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を製造する際、該押出機は供給口を少なくとも二箇所備え、少なくとも前記a成分とd成分を第一供給口より、b成分とc成分を少なくとも第二供給口以降の供給口より供給する事を特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、塩基性無機充填材、および特定の酸価上昇値を有するホスファイト安定剤からなり、高剛性で、しかも熱安定性に優れ、外観が良好な成形品を得ることができる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と、その製造方法に関するものである。殊に製造時の周囲の影響を受け難く、安定して前記特性を発揮するポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性などに優れ、機械部品、自動車部品、電気・電子部品等様々な用途において幅広く使用されている。さらに自動車分野における内・外装材あるいは電機・電子部品分野におけるハウジング材等に使用する場合には、上記の特性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に、芳香族ポリエステル樹脂を配合し、耐薬性や成形時の流動性などを付与している。さらにこれらの樹脂組成物に微細な無機充填材を配合することで、高剛性で、かつ外観が良好な成形品を得るようにしている。かかる微細な無機充填材としては、例えば天然鉱物である珪酸塩鉱物の粉砕物や、各種の合成ウイスカーおよび合成珪酸塩無機充填材などが例示される。
【0003】
しかしこれらの無機充填材のほとんどは塩基性であることから、芳香族ポリカーボネート樹脂および芳香族ポリエステル樹脂からなる樹脂マトリックスに配合された場合、製造時または成形加工時にエステル交換反応に起因するカーボネート結合の分解は更に促進され、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量の低下による強度低下を誘起する。また、無機充填材の塩基性は、成形品の表面肌荒れによる平滑性の低下を誘起し外観を悪化させる。
【0004】
これらの課題を解決するために、ホスファイト化合物を、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびタルクなどの無機充填材からなる樹脂組成物に配合することは公知である(特許文献1〜3参照)。より具体的にはビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを配合したかかる樹脂組成物などが公知であるが、かかる樹脂組成物は未だ十分な熱安定性を有していない。すなわち近年要求される複雑な形状であってかつ高品位な外観が求められる分野において、十分に適用されない場合があった。
【0005】
またホスファイト化合物を、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびワラストナイトからなる樹脂組成物に配合することは公知であり、該ホスファイト化合物は具体的にはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトである(特許文献4参照)。かかる樹脂組成物は良好な熱安定性を有するものの、高温多湿の環境下において製造においてはその本来の特性が十分に発揮されない場合があった。したがって製造時の原材料の管理において不利な場合があった。
【0006】
すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および塩基性無機充填材からなる樹脂組成物は、多様な製造環境に適応可能で、かつ従来以上に良好な熱安定性を有することが望まれている。尚、芳香族ポリカーボネート樹脂にビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを配合することは公知である(特許文献5参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平05−222283号公報
【特許文献2】
特開平04−085360号公報
【特許文献3】
特開昭60−092350号公報
【特許文献4】
特開平09−012846号公報
【特許文献5】
特開昭53−010650号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮する、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および塩基性無機充填材を含有するポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および塩基性無機充填材に対して、特定の酸価上昇値を有するホスファイト安定剤を組合せると、上記課題が解決できること、すなわち多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮する良質なポリカーボネート樹脂組成物を提供できることを見出し、殊に特定の製造方法が適切であることを見出し、更に鋭意検討を進めて本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)、芳香族ポリエステル樹脂(b成分)、塩基性無機充填材(c成分)、及びホスファイト安定剤(d成分)からなり、(i)a成分〜d成分の組成割合は、a成分とb成分との合計40〜99重量部およびc成分1〜60重量部の合計100重量部あたり、d成分が0.005〜5重量部であり、かつa成分とb成分の合計100重量%中a成分5〜95重量%およびb成分5〜95重量%であり、(ii)該d成分であるホスファイト安定剤は、その酸価が10mgKOH/g未満である条件下において、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間処理されたとき、その酸価の上昇値が0.1〜30mgKOH/gの範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物にかかるものである。
【0011】
かかる構成(1)によれば、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮する良質な、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および塩基性無機充填材を含んでなるポリカーボネート樹脂組成物が提供される。品質のバラつきの減少は、結果として更に過酷な使用条件に耐え、また外観などの品質に優れた樹脂組成物からなる部品の提供を可能とする。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(2)前記a成分〜d成分を溶融混練してなる樹脂組成物であって、その酸価が10mgKOH/g未満であるd成分を配合してなる前記(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(2)によれば、d成分の特定のホスファイト安定剤の効力がより有効に発揮され、高品質なポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(3)前記d成分におけるホスファイトは、下記一般式(I)および(II)より選択される少なくとも1種の化合物である前記(1)〜(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0014】
【化3】
Figure 2004359913
(式中、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
【0015】
【化4】
Figure 2004359913
(式中、R〜Rは炭素数5〜18のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
【0016】
d成分のホスファイトの好適な具体例として上記の一般式(I)および(II)が例示され、かかるホスファイトは入手容易であり容易に本発明のポリカーボネート樹脂組成物が得られる点で優位である。したがってかかる構成(3)によれば、高品質なポリカーボネート樹脂組成物が容易に提供される。
【0017】
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記a成分とb成分との割合は、両者の合計100重量%中a成分50〜93重量%およびb成分50〜7重量%である前記(1)〜(3)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(4)によれば、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮すると共に、強度、疲労特性、寸法安定性、および外観などにより優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、(5)前記c成分は、繊維状の塩基性無機充填材がである前記(1)〜(4)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(5)によれば、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮すると共に、強度および剛性においてより優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。また繊維状の充填材を含む樹脂組成物は、概して高温の成形加工条件を課されやすく、本発明の熱安定性の効果がより有効に発揮される。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、(6)更にゴム質ポリマー(e成分)をa成分〜c成分の合計100重量部当り、1〜20重量部を含んでなる前記(1)〜(5)に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(6)によれば、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮すると共に、強度、靭性および剛性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。かかる効果は、前記(4)の構成を取る場合に殊に有効である。
【0020】
本発明は、前記(1)〜(6)の構成からなるポリカーボネート樹脂組成物と共に、(7)前記(1)〜(6)に記載のポリカーボネート樹脂組成物を押出機を用いて製造する方法であって、該押出機はそのスクリュー根元部に設けた第一供給口、第一供給口の下流に設けた第二供給口を少なくとも備え、少なくとも前記a成分とd成分を第一供給口より供給し、前記b成分とc成分を少なくとも第二供給口以降の供給口より供給することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法にかかるものである。
【0021】
かかる構成(7)の製造方法によれば、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮するとの効果においてより優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。すなわち、かかる構成(7)は、特定のホスファイト安定剤と、特定の製造方法とを組合せることにより、従来になく良質なポリカーボネート樹脂組成物(芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、および塩基性無機充填材を含んでなる)の提供を可能とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分、並びに樹脂組成物の製造方法等について、順次詳細に説明する。
【0023】
<a成分について>
本発明のa成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0024】
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0025】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0026】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0027】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0028】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0029】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0030】
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0031】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種の芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。さらに下記に示す製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0032】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0033】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0035】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0036】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。さらにアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0037】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0038】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩なとが好ましく挙げられる。
【0039】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、分子量が10,000未満であると成形品として十分な強度が得られ難く、50,000を超えると成形加工性が低下する。したがって、粘度平均分子量で表して10,000〜50,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものがより好ましく、更に好ましくは17,000〜27,000である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0040】
特に粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物はエントロピー弾性が高く、ジェッティングなどに代表されるレオロジー挙動による成形品の外観不良が生じくい特徴がある。かかる外観不良が生ずる場合には、適切な態様である。更にガスインジェクション成形などにおいてもガス注入量が安定し、また発泡成形においては発泡セルが安定し、微細かつ均質なセルが形成されやすいことから有利である。
【0041】
より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上のポリカーボネート樹脂との混合物であり、更に好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂との混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの測定法において2ピーク以上の分子量分布を観察できるものが好ましく使用できる。
【0042】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
【0043】
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0044】
本発明のa成分の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も当然に可能である。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは上記の粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため好ましい態様として挙げられる。尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
【0045】
<b成分について>
b成分の芳香族ポリエステル樹脂について説明する。芳香族ポリエステル樹脂とはポリエステルを形成するジカルボン酸成分とジオール成分の内、ジカルボン酸成分100モル%の70モル%以上、好ましくは90モル%以上、最も好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるポリエステルである。
【0046】
このジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等があげられる。これらのジカルボン酸は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0047】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂には、上記の芳香族ジカルボン酸以外に、30モル%未満の脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することができる。その具体例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等があげられる。
【0048】
本発明のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)などを挙げることができる。更にジオール成分としてわずかにポリエチレングリコールを共重合した芳香族ポリエステル樹脂も使用できる。ポリエチレングリコールの分子量としては150〜6,000の範囲が好ましい。これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。尚、ジオール成分中の二価フェノールは30モル%以下であることが好ましい。
【0049】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどの他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのような共重合ポリエステルが挙げられる。
【0050】
また本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0051】
本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。例えば、チタン系重合触媒である有機チタン化合物としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子が芳香族ポリエステル樹脂を構成する酸成分に対し、3〜12mg原子%となる割合が好ましい。
【0052】
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。更に芳香族ポリエステル樹脂の製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。また得られた芳香族ポリエステル樹脂には、各種の安定剤および改質剤を配合することができる。本発明の芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.4〜1.5dl/gの範囲であるのが好ましく、特に好ましくは0.45〜1.2dl/gの範囲である。
【0053】
更に前記芳香族ポリエステル樹脂の中でも好適であるのは、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートである。
【0054】
本発明のポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸あるいはその誘導体と、1,4−ブタンジオールあるいはその誘導体とから重縮合反応により得られるポリマーであるが、上述のとおり他のジカルボン酸成分および他のアルキレングリコール成分を共重合したものを含む。
【0055】
ポリブチレンテレフタレートの末端基構造は上記と同様、特に限定されるものではないが、より好ましいのは末端カルボキシル基が末端水酸基に比較して少ないものである。
【0056】
また製造方法についても上記の各種方法を取り得るが好ましくは次のものである。製造方法としては、連続重合式のものがより好ましい。これはその品質安定性が高く、またコスト的にも有利なためである。更に重合触媒としては有機チタン化合物を用いることが好ましい。これはエステル交換反応などへの影響が少ない傾向にあるからである。
【0057】
本発明のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する場合がある)とは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであって、そのジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を85モル%以上、およびジオール成分としてエチレングリコールを85モル%以上含有してなるポリエステルである。PETは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を90モル%以上含むことが好ましく、95モル%以上含むことがより好ましい。PETは、ジオール成分としてエチレングリコールを90モル%以上含むことが好ましく、95モル%以上含むことがより好ましい。
【0058】
PETは、上記の中でも特に他の共重合成分を含まず実質的にテレフタル酸成分とエチレングリコール成分のみから製造されたポリエステルが好ましい。しかしながら、かかるポリエステルにおいても、通常重合時の副反応生成物としてジオール成分100モル%中、約0.5モル%以上のジエチレングリコール成分が含まれている。したがってPETはジエチレングリコール成分を少量含むものであってよい。ジエチレングリコール成分は、ジオール成分100モル%中6モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、4モル%以下が更に好ましい。
【0059】
上記のPETの分子量は、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定された極限粘度数が0.4〜1.3dl/gの範囲であることが好ましく、0.45〜1.2dl/gの範囲がより好ましい。またその末端カルボキシル基量は特に制限されないものの、30eq/ton以下が好ましく、25eq/ton以下が更に好ましい。下限としては1eq/ton以上が実用上適切である。
【0060】
<c成分について>
本発明のc成分である塩基性無機充填材とは、下記方法で測定されたpH値が7.5以上である無機充填材をいう。c成分のpH値は好ましくは8〜12の範囲であり、より好ましくは9〜12の範囲であり、更に好ましくは10〜11.5の範囲である。ここでかかるpH値は、c成分1gと、電気抵抗値が18MΩ・cm以上(すなわち電気伝導度が約0.55μS/cm以下)である水99gとを23℃において混合し懸濁液(又は溶液)を作成し、密栓状態で10分間振とうした後、pHメーターにより23℃にて測定されるものである。
【0061】
かかるc成分としては具体的には、炭酸カルシウム、タルク、セピオライト、マイカ(合成マイカ含む)、合成スメクタイト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、およびホウ酸アルミニウムウイスカーなどが例示される。
【0062】
殊に本発明の塩基性無機充填材は、好ましくはその組成が実質的に下記式(1)で示されるものである。
x(MO−1)・y(MO−2)・zHO (1)
(ここでxおよびyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MO−1はMO−2以外の金属酸化物成分を表し、複数の成分であってもよく、MO−2はTiO、B、またはSiOのいずれかの成分を表し、複数の成分であってもよい。)
【0063】
更に前記式(1)においてはxおよびyの関係において、x:yが1:5〜10:1であることが好ましく、1:4〜3:1であることがより好ましく、1:3〜3:1であることが更に好ましい。尚、かかるxおよびyの値はそれぞれ複数の成分が存在する場合には、それらの合計の数を示す。
【0064】
前記式(1)におけるMO−1としては、塩基性の高い順位からKO、NaO、LiO、BaO、CaO、ZnO、MnO、FeO、CoO、MgO、Fe、ZrO、およびAlが例示され、本発明の効果がより発揮される点において好ましくは塩基性の高い順位からKO〜MgOであり、より好ましくはKO〜CaOの範囲である。したがって、c成分の無機充填材としても前記の好ましいMO−1が含まれる塩基性無機充填材が好ましい。更に複数のMO−1が含まれる塩基性無機充填材においては、前記の好ましいMO−1が実質的に含まれる態様であればよい。ここで実質的に含まれるとは前記式(1)のMO−1の合計100mol%中20モル%以上含む場合をいい、より好ましくは25mol%以上、更に好ましくは40mol%以上、特に好ましくは50mol%以上である場合をいう。
【0065】
上記珪酸金属塩としては、任意の形状(粒状、繊維状、針状、板状等)のものが使用できる。また平均粒子径も任意のものが使用できるが、平均粒子径は細かいほど好ましく、なかでも平均粒子径20μm以下のものが好ましく、更に10μm以下のものがより好ましく、特に5μm以下のものは好適である。一方で下限としては0.03μm以上のものが適当であり、それ未満のものは比較的稀である。尚、平均粒子径が低いほど好ましい理由は、c成分の粒径が小さいほどその表面積が増加し、本発明の効果がより有効に発揮されるためである。また平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0066】
前記のより好適な態様としては具体的には、珪酸塩化合物の塩基性無機充填材としては、ワラストナイト、マイカ、タルクなどが例示され、チタン酸塩化合物の塩基性無機充填材としては、チタン酸カリウムウイスカーなどが例示される。特に繊維状の無機充填材は補強効果が高い点で好ましく、したがってc成分としてワラストナイトおよびチタン酸カリウムウイスカーが特に好ましい。
【0067】
本発明で好適に使用されるワラストナイト、およびチタン酸カリウムウイスカーなどの繊維状無機充填材の繊維径は0.1〜10μmが好ましく、0.2〜8μmがより好ましく、0.2〜5μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。すなわち繊維状の無機充填材の好ましい態様として繊維径0.1〜10μm、およびアスペクト比3〜30の繊維状の無機充填材が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で無機充填材を観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上600本以下で行う。
【0068】
本発明で使用されるタルクは、その前記した沈降法により測定される平均粒子径が0.1〜50μm(より好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.2〜5μm、特に好ましくは0.2〜3.5μm)の範囲であることが好ましい。更にかさ密度を0.5(g/cm)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。かさ密度が低い場合、溶融混練時に熱安定性が低下する等の問題が生ずる場合がある。タルクを造粒してかさ密度を高くする方法としては、バインダーを使用する方法と、実質的に使用しない方法がある。バインダーを使用する方法は、通常、バインダーとなる樹脂などが溶解または分散した液体とタルクをスーパーミキサーなどの混合機で均一に混合し、その後乾燥する。その他液体とタルクとの均一混合物を造粒機を通して造粒し、その後乾燥する。尚、いずれの場合も乾燥を省略する場合がある。バインダーを使用しない方法は、通常脱気圧縮の方法である。かかる方法は、脱気しながらブリケッティングマシーンなどでローラー圧縮する方法を代表例として挙げることができる。一方で特に水などの粉砕助剤を使用して粉砕されたタルクの場合には、転動造粒や凝集造粒の方法が好ましい。更にその後かかるタルクを乾燥処理をして十分に水などの成分をそこから取り除くことが好ましい。かかるタルクの好ましいものとしては、水と粉砕されたタルクの混合物からなるスラリーを、転動造粒などの方法で造粒し、その後乾燥した造粒品を挙げることができる。
【0069】
好適なタルクの具体的な事例としては、林化成(株)製UPN HS―Tシリーズやイタリア国IMI−FABI社で製造されているHiTalc HTP ultra10C、およびHiTalc HTP ultra5Cなどを挙げることができる。その他好ましいタルクとして、具体的な事例としては日本タルク(株)製SG2000、およびSG1000などを挙げることができる。
【0070】
更に、本発明で使用されるマイカは、剛性確保の面から、平均粒径が1〜80μmの粉末状のものが好ましい。マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等があり、本発明のマイカとしては何れのマイカも使用できるが、金雲母、黒雲母は白雲母に比べてそれ自体が柔軟であり、また、金雲母、黒雲母は白雲母に比べて主成分中にFeが多く含まれているためそれ自体の色相が黒っぽくなるため、更に人造雲母は天然金雲母のOH基がFに置換されたものであるがそれ自体が高価であり実用的ではない。好ましくは白雲母である。また、マイカ製造に際しての粉砕法としては、マイカ原石を乾式粉砕機にて粉砕する乾式粉砕法とマイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕機で本粉砕し、その後脱水、乾燥を行う湿式粉砕法があり、乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるがマイカを薄く細かく粉砕することが困難であるため本発明においては湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0071】
マイカの平均粒径としては、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10〜100μmのものを使用できる。好ましくは平均粒径が20〜50μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性に対する改良効果が十分でなく、100μmを越えても剛性の剛性の向上が十分でなく、衝撃特性等の機械的強度の低下も著しく好ましくない。マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmのものを使用できる。好ましくは厚みが0.03〜0.3μmである。
【0072】
前記c成分は2種以上を併用することができ(例えば異種、異なる形状、および異なる大きさなどの2種以上)、また予め表面処理をすることもできる。表面処理としては例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、およびポリアルキレングリコールなどの各種処理剤での化学的処理のほか、メカノフュージョン法、高速気流中衝撃法などの物理的な表面処理も可能である。しかしながら本発明の樹脂組成物は、表面処理することなく熱安定性に優れた樹脂組成物を提供できる点において、表面処理をしていない無機充填材においてその有効性はより高くなる。
【0073】
<d成分について>
本発明のd成分であるホスファイト安定剤は、その酸価が10mgKOH/g未満である条件下において、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間処理されたとき、その酸価の上昇値が0.1〜30mgKOH/gの範囲にあることを特徴とする。かかる酸価上昇の範囲は、好ましくは0.1〜10mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは0.15〜5mgKOH/gの範囲であり、更に好ましくは0.2〜3mgKOH/gの範囲である。前記酸価上昇が0.1mgKOH/g未満である場合には塩基性無機充填材存在下においてその抗酸化作用が充分に発揮されず、また30mgKOH/gより大きい場合には、加水分解性が非常に高く保存安定性に劣るため、環境適応性に劣りその利用が制限される。
【0074】
尚、酸価の測定は以下の手順に従って測定される。ホスファイト安定剤を約0.6gを精秤し、トルエン20mlに溶解する。さらにエタノール20mlを添加し、攪拌しながらフェノールフタレインを指示薬として、1/20N水酸化カリウム−エタノール溶液で赤色を呈するまで滴定を行う。終点確認はフェノールフタレイン指示薬の変色と、さらに電位差滴定によって行う。かかる滴定測定によりホスファイト安定剤単位質量(1g)当りの水酸化カリウム(KOH)の量(mg)を算出し、その酸価(mgKOH/g)を求める。但しかかる測定はホスファイト安定剤自体の酸価が10mgKOH/g未満である条件下において測定される値である。かかる条件が必要な理由は次の通りである。ホスファイト安定剤は正確にはホスファイトが加水分解した成分とホスファイト化合物との混合物となっているが、ホスファイトの加水分解特性は、周囲の酸価が極めて高い場合には異なる特性を示す場合がある。したがってホスファイトとしての挙動はできるかぎり酸価の低い状態において測定されることが望ましいためである。
【0075】
更にかかる理由から、ホスファイト安定剤はその有効成分たるホスファイトが十分に残存した状態で、他の成分と混合され組成物が製造されることが好ましい。ホスファイト安定剤中のホスファイト化合物の割合が減少している場合その配合割合を増加する必要がある。かかる増量は特性およびコストの点において効率的でない。したがって、d成分の酸価が好ましくは10mgKOH/g未満(より好ましくは8.5mgKOH/g未満、更に7mgKOH/g未満)の状態において、前記a成分〜d成分が溶融混練され樹脂組成物が形成されることが好ましい。
【0076】
本発明のd成分は、前記条件を満足するホスファイト安定剤であれば、特に限定されるものではないが、d成分のホスファイトとしてより好適な具体例としては、下記一般式(I)および(II)より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0077】
【化5】
Figure 2004359913
(式中、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
【0078】
【化6】
Figure 2004359913
(式中、R〜Rは炭素数5〜18のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
【0079】
前記一般式(I)の好適な具体例としては、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられ、前記一般式(II)の好適な具体例としてはトリデシルホスファイトが挙げられる。より好適には前記一般式(I)のホスファイトであり、特にビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0080】
<各成分の組成割合について>
次に前記a成分〜d成分の各成分の組成割合について説明する。本発明においてはa成分〜d成分の組成割合は、a成分とb成分との合計40〜99重量部およびc成分1〜60重量部の合計100重量部あたり、d成分が0.005〜5重量部であり、かつa成分とb成分の合計100重量%中a成分5〜95重量%およびb成分5〜95重量%である。a成分およびb成分が両者の合計100重量%中それぞれ5重量%未満となる場合には、耐薬品性と強度との両立が不十分となり易い。c成分がa成分〜c成分の合計100重量部中、1重量部未満では、補強効果が不十分であり、60重量部を越える場合にはa成分およびb成分からなる樹脂の特性を十分に活かすことができず、またかかる範囲であると高品位な外観が得られにくくなる。更にd成分がa成分〜c成分の合計100重量部あたり0.005重量部未満の場合には、ホスファイト安定剤の効果が十分に発揮されず熱安定性に劣る場合があり、5重量部を超える場合にはその効果が飽和すると共に、強度や耐湿熱性など他の特性に影響を与え好ましくない場合がある。
【0081】
前記a成分とb成分との割合は、両者の合計100重量%中、好ましくはa成分20〜94重量%(より好ましくは25〜85重量%、更に好ましくは30〜75重量%)およびb成分6〜80重量%(より好ましくは15〜75重量%、更に好ましくは25〜70重量%)である。
【0082】
前記a成分とb成分との合計と、c成分との割合は、両者の合計100重量部あたり、好ましくはa成分とb成分との合計50〜97重量部(より好ましくは60〜95重量部、更に好ましくは70〜92重量部)、およびc成分3〜50重量部(より好ましくは5〜40重量部、更に好ましくは8〜30重量部)である。
【0083】
前記d成分の割合は、好ましくはa成分〜c成分の合計100重量部あたり0.01〜1重量部(より好ましくは0.03〜0.5重量部、更に好ましくは0.05〜0.4重量部)である。
【0084】
<その他の成分について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、a成分である前記芳香族ポリカーボネート樹脂、b成分である前記芳香族ポリエステル樹脂、c成分である前記塩基性無機充填材、およびd成分である前記ホスファイト安定剤にて構成されるが、さらに、所望により付加的成分として、a成分およびb成分以外の重合体やその他の添加剤を加えても差し支えない。
【0085】
かかる重合体としては殊にゴム質ポリマー(e成分)が好適に例示される。ゴム質ポリマーの存在はポリカーボネート樹脂組成物の靭性を大幅に向上できる点で好ましい。
【0086】
かかるゴム質ポリマーとは、ガラス転移温度が10℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であるゴム成分と、該ゴム成分と共重合可能な単量体成分とを共重合した重合体をいう。ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びにアクリル・ブタジエンゴム(アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体)など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0087】
かかるゴム成分に共重合される単量体成分としては、スチレン系単量体、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物等を挙げることができる。
【0088】
より具体的には、SB(スチレン−ブタジエン)重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)重合体、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)重合体、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム)重合体、AES(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン)重合体、MA(メチルメタクリレート−アクリルゴム)重合体、MAS(メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン)重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)重合体などを挙げることができる。
【0089】
その他ゴム質ポリマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど各種の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0090】
上記ゴム質ポリマー中、ゴム成分の割合は5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%である。同様に熱可塑性エラストマーの場合ソフトセグメントの割合は5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%である。ゴム質ポリマー(e成分)の割合は、a成分〜c成分の合計100重量部当り、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部、更に好ましくは1.5〜6重量部である。またゴム質ポリマー中に含まれるゴム成分のa成分〜c成分の合計100重量部当りの割合は、該100重量部当り、0.3〜18重量部が好ましく、0.5〜9重量部がより好ましく、1〜5重量部が更に好ましい。
【0091】
更に、a成分およびb成分以外の重合体としては、前記ゴム質ポリマー以外の熱可塑性樹脂を挙げることができ、かかる樹脂としては例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトル−スチレン共重合体樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、およびスチレン−マレイミド共重合体樹脂などのゴム成分を含有しないスチレン系樹脂の他、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルクロライド樹脂、ポリビニリデンクロライド樹脂、塩素化エチレン樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、およびポリフェニレンサルファイド樹脂などが例示される。かかる熱可塑性樹脂の組成割合は、a成分〜c成分の合計100重量部当たり20重量部以下が適切であり、より好ましくは5重量部以下とするのが適切である。
【0092】
更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、溶融弾性効果改質剤を含むことができる。かかる改質剤は溶融弾性を向上し、その結果射出圧縮成形時の外観改良、ガスアシスト射出成形時の偏肉の防止、発泡成形時のセルの均一化、およびバラス効果による射出成形時のジェッティング防止などの効果が得られ、よってより高品質な成形品が提供される。かかる溶融弾性の改質効果は、基本的に高分子量のポリマーにより得られ、エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーの場合には、その重量平均分子量が100万〜2,000万、より好ましくは200万〜1,000万のものが好適である。エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーとしては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)コポリマー、およびポリテトラフルオロエチレンなどを代表的に挙げることができる。中でもポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これは緩和時間が長いほど効果を得る上で有利であり、そのためには軟化温度や融点が本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工温度よりも高いものがより好ましいためである。
【0093】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下単にPTFEと称することがある)は、通常フィブリル形成能を有するPTFEとして溶融滴下防止剤などに広く利用されている。かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。
【0094】
更に、PTFEとしては樹脂との混合形態のものも使用可能である。混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0095】
かかる溶融弾性効果改質剤の組成割合は、樹脂組成物100重量%中0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。
【0096】
更に本発明においては前記塩基性無機充填材(c成分)の折れを抑制するための折れ抑制剤を含むことができる。かかる折れ抑制剤はとしては、(i)強化フィラーとの間に反応性を有する官能基を含む滑剤、および(ii)強化充填剤に予め表面被覆された滑剤から選択される成分が使用できる。好適な折れ抑制剤としては、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィンワックスが好ましく、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体が更に好ましい。また好適な折れ抑制剤としては、炭素数5以上のアルキル基が珪素原子に結合したアルコキシシラン化合物が挙げられる。かかる珪素原子に結合したアルキル基の炭素数は好ましくは5〜60、より好ましくは5〜20、更に好ましくは6〜18、特に好ましくは8〜16である。アルキル基は1または2が好適であり、特に1が好ましい。またアルコキシ基としてはメトキシ基およびエトキシ基が好適に例示される。かかる折れ抑制剤はポリカーボネート樹脂組成物100重量%中0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましく、0.05〜1重量%が更に好ましい。
【0097】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、c成分以外の強化充填材、難燃剤、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、および三酸化アンチモン等)、チャー形成化合物(例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ピッチ類とホルムアルデヒドとの縮合物など)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、およびエチレン−アクリル酸ナトリウム等)、d成分以外の熱安定剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、およびイオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、滑剤、着色剤(各種有機染料、顔料(カーボンブラック、酸化チタン、および各種金属酸化物など)、およびメタリック顔料など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などを配合することができる。
【0098】
本発明は、c成分として塩基性無機充填材を必須成分とするものであるが、c成分以外の強化充填材を含んでいてもよい。かかる強化充填材としては例えばクレー、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維、およびアラミド繊維などが例示される。
【0099】
本発明は熱安定剤としては前記d成分を必須成分とし、かかるd成分単独の配合によって十分な効果を奏するものであるが、他のホスファィト、ホスフェート、およびホスホナイトなどを併用することも可能である。これは、他のホスフェートは芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂および塩基性無機充填材からなる樹脂組成物に特有の熱安定性不良を抑制するには不十分であっても、それぞれの樹脂単独の劣化には効果があるためである。かかるホスファィト、ホスフェート、およびホスホナイトなどは芳香族ポリカーボネート樹脂の安定剤として既に公知の各種のものが使用できる。代表的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトなどが例示される。これらのd成分以外の熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の組成割合は樹脂組成物100重量%中0.5重量%未満が好ましく、0.1重量%未満が更に好ましい。
【0100】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを好ましく挙げることができ、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネートをより好ましく挙げることができる。
【0101】
本発明のイオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0102】
紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0103】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0104】
更に紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0105】
更に紫外線吸収剤としては例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などの環状イミノエステル系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0106】
またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0107】
前記紫外線吸収剤および光安定剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤および/または光安定剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体および光安定性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびヒンダードアミン骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0108】
前記フェノール系酸化防止剤、またはイオウ系酸化防止剤の組成割合は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、0.005〜1重量%がより好ましく、0.01〜0.5重量%が更に好ましい。
【0109】
また紫外線吸収剤、光安定剤の組成割合は、それぞれポリカーボネート樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0110】
また離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックスが挙げられ、例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレートなどグリセリン脂肪酸エステル類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリルステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。離型剤は本発明のポリカーボネート樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0111】
また帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、(ii)有機スルホン酸カリウム、および有機スルホン酸セシウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩(具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩など)、(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩、(iv)グリセリンモノステアレート、無水マレイン酸モノグリセライド、および無水マレイン酸ジグリセライドなどのグリセリン誘導体エステル、並びに(v)ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルエステルなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。
【0112】
更に難燃剤としては、赤リンまたは赤リン表面を公知の熱硬化樹脂および/または無機材料を用いてマイクロカプセル化されている安定化赤リンに代表される赤リン系難燃剤;テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンエーテル、ポリジブロムフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物および含ハロゲンリン酸エステルに代表されるハロゲン系難燃剤;モノホスフェート化合物としてトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステルとしてレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、その他ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェートなどに代表される有機リン酸エステル系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム塩、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムなどの無機系リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどに代表される無機系難燃剤;パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウムに代表される有機アルカリ(土類)金属塩系難燃剤;フェニル基、ビニル基およびメチル基を含有する(ポリ)オルガノシロキサン化合物や(ポリ)オルガノシロキサンとポリカーボネート樹脂の共重合体に代表されるシリコーン系難燃剤;フェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーに代表されるホスファゼン系難燃剤などを挙げることができる。
【0113】
<樹脂組成物の製造方法について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたっては様々な方法を用いることができる。例えば前記の成分添加剤などを乾燥させた後に、単軸押出機や二軸押出機などの溶融混練機を用いて溶融混練することにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各成分の原材料を乾燥することなく溶融混練した場合であっても十分な性能を発揮するが、より高品質な製品が求められる場合には原材料を乾燥しその吸水量を低減した後に溶融混練することが好ましい。殊に溶融混練前のa成分およびb成分の吸水量は低減されていることが好ましく、したがって各種熱風乾燥、マイクロ波乾燥、遠赤外線乾燥、真空乾燥などの方法により乾燥処理されたa成分またはb成分を溶融混練することが好ましい。a成分およびb成分の溶融混練前の吸水量は0.1重量%以下が好ましく、0.05重量%以下がより好ましく、0.03重量%以下が更に好ましい。
【0114】
溶融混練にあたっては、予め各原料を予備混合することも可能であり、予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。
【0115】
また溶融混練に際しては、該混練中に揮発する成分を脱気しかつ溶融樹脂組成物を酸化させない目的で、ベント孔において吸引処理をすることが好ましい。またベント吸引しない方法として窒素ガスなどを循環させながら揮発分を強制的に系外に排出する方法などもとることができる。
【0116】
更に配合する原材料として液体を押出機などの溶融混練機に供給する場合には、液体供給ポンプなどを備えたいわゆる液注装置などを用いて溶融混練機中に供給することができる。
【0117】
前記の製造方法の中でも、本発明のポリカーボネート樹脂組成物がその効果をより発揮する好ましい製造方法としては、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を押出機を用いて製造する方法であって該押出機はそのスクリュー根元部に設けた第一供給口、第一供給口の下流に設けた第二供給口を少なくとも備え、少なくとも前記a成分とd成分を第一供給口より供給し、前記b成分とc成分を少なくとも第二供給口以降の供給口より供給することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法が挙げられる。
【0118】
すなわちかかる製造方法は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)とホスファイト安定剤(d成分)を第一供給口から供給することで充分に混練し均一分散させた後に、その下流に設けられた第二供給口以降の供給口から、芳香族ポリカーボネート樹脂とエステル交換反応を起こす芳香族ポリエステル樹脂、および芳香族ポリカーボネート樹脂の分解を促進する塩基性無機充填材(c成分)を供給することで、ホスファイト安定剤の効果を向上させるものである。b成分およびc成分の供給は、第二供給口以降の同一の供給口または異なる供給口に供給するものであってもよい。しかしながらc成分における好適な態様(ワラストナイトやチタン酸カリウムウイスカー)などはかさ高く(かさ密度が低く)、押出機への安定供給が困難な場合があるため、b成分と同一の供給口に供給することによりその供給の安定性を高めることが好ましい。したがってより好適な態様としては、少なくとも前記a成分とd成分を第一供給口より供給し、前記b成分とc成分を第二供給口より供給することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法が挙げられる。
【0119】
a成分〜d成分以外の他の成分は、押出機のいずれの供給口から供給されるものであってもよい。
【0120】
本発明で使用される押出機としては、単軸スクリュー型押出機、2軸スクリュー型押出機、多軸スクリュー押出機(3軸以上の押出機)、および遊星ローラ型押出機などを挙げることができる。
【0121】
単軸スクリュー型押出機としては、フルフライトとダルメージやトーピードなどとを組合せたタイプのものが代表的に挙げられる。その他フィード部分のみ2本のスクリューを有するタイプや、トランスファーミックスなど特殊なタイプも挙げることができる。
【0122】
2軸スクリュー型押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としはてTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX(神戸製鋼所(株)製、商品名)などを挙げることができる。その他、FCM(Farrel社製、商品名)、Ko−Kneader(Buss社製、商品名)、およびDSM(Krauss−Maffei社製、商品名)などの溶融混練機も具体例として挙げることができる。
【0123】
更に、上記のスクリュー型押出機としては、円錐型スクリューのタイプや、可塑化工程とメータリング工程が独立したタイプなども挙げることができる。
【0124】
本発明における溶融混練機としては、上述のとおり押出機が好ましく、中でも2軸押出機が好ましく、更にZSKに代表されるタイプがより好ましい。高い混練性と優れた溶融樹脂の搬送能力を持ち、原料の粘度、組成、フィラーの有無、種類、含有量などによらず適用範囲が広いためである。
【0125】
2軸押出機においては、スクリューの回転方向も特に制限はなく同方向回転、異方向回転の二軸押出機が好ましく使用できる。同方向回転は溶融樹脂の搬送能力が小さくなる反面、混練能力は大きくなり、異方向回転では溶融樹脂の搬送能力が大きくなる反面、混練能力は小さくなる。本発明においては適切な混練により良好な機械的特性を達成できる点から同方向回転のものがより好ましく使用できる。
【0126】
更に2軸押出機においては、そのスクリューも適宜選択できる。例えば、形状は1条、2条、3条のネジスクリューを使用することができ、多条ネジスクリューになるほどスクリュー1回転あたりの噛み合い回数は増大し大きなせん断混練能力が得られる。その一方多条になるほど押出機内での溶融樹脂の搬送能力は低下してくるため、排出量は低下してくる。本発明においては、特に溶融樹脂の搬送能力やせん断混練能力の両方の適用範囲が広い2条ネジスクリューが好ましく使用できる。
【0127】
2軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、20〜45が好ましく、更に24〜42が好ましい。L/Dが大きい方が供給口を増やすことが容易である一方、大きすぎる場合には樹脂組成物にかかる熱負荷が高くなり過ぎるため機械的特性が低下するようになる。
【0128】
2軸押出機のスクリュー構成としては各種の仕様が可能である。かかる仕様が任意に変更できる点もZSKタイプの大きな利点である。スクリューには混練性能を上げるためのニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント)から構成された混練ゾーンを1箇所以上有することが好ましい。特に前記の好適な製造方法においては、a成分とd成分の供給後、b成分またはc成分の供給される前に、1箇所以上(好ましくは1箇所)の混練ゾーンを有し、b成分およびc成分の供給後に更に1箇所以上(好ましくは1箇所)の混練ゾーンを有するスクリュー構成が好ましい。一方で前記のとおりスクリューのL/Dは適切な上限があるため、この点においてもb成分およびc成分が第二供給口から供給される製造方法が好適となる。ニーディングディスクセグメントは正方向の他、逆方向およびトーピードリングを含めることにより溶融樹脂の滞留部分を設けたスクリュー構成が好ましい。殊にb成分およびc成分が供給された後のニーディングディスクセグメントにおいて、かかる構成を有することが好ましい。
【0129】
製造時のスクリュー回転数は50〜500rpmの範囲が適切であり、好ましくは100〜350rpmの範囲であり、より好ましくは150〜300rpmの範囲である。また押出の温度としては、220〜350℃の範囲が適切であり、好ましくは230〜320℃の範囲であり、更に好ましくは240〜290℃の範囲である。
【0130】
またスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、固形異物を樹脂組成物中から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0131】
各供給口には各原料を押出機に供給するためのフィーダー(供給装置)が設置されることが好適である。かかるフィーダーは計量器上に設置され、所定の割合で押出機に原料を供給する。フィーダーは振動式、スクリュー式、翼回転式のものが好ましい。さらに供給口にはフィーダーから排出された各原料を押出機内部へ送り込むための装置であるサイドフィーダーが設置されるものであってもよい。特に第1供給口以外の供給口では設置されることが好ましい。サイドフィーダーを使用すれば、上流から送られる成分が強い圧縮を受けている場合でも安定した材料の供給が可能となるためである。かかるサイドフィーダーはせん断発熱することのない2軸スクリュー式のものが好ましい。
【0132】
押出機より押出されたストランドは、冷却後ペレタイザーで所定の大きさに切断され、ペレット化される。その後振動式の篩などを用いて、カットくずやカット長の長いペレットなどを除去し、更に磁選機を通して所定の容器内に収納され製品とされる。かかる磁選機を通す以前に時間変動による特性のバラツキを軽減するため、各種ブレンダーを用いて均一化することもできる。本発明において塩基性無機充填材が天然鉱物であることが多い理由から、強力な磁選機を用いて鉄などの金属異物を極力除去することが好ましい。例えば800mT以上の最大表面磁束密度を有する磁石を備えた磁選機が好適であり、該磁選機はペレット製造後ペレットの収袋に至るまでの経路において1箇所または2箇所以上設けられる。更に同様の磁選機は、塩基性無機充填材を押出機に供給するまでの経路においても備えられることが好ましい。
【0133】
<樹脂組成物の成形方法および用途などについて>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常前記で製造されたペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0134】
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0135】
かくして得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、幅広い分野に使用することが可能であり、各種電子・電気機器、OA機器、車輌部品、機械部品、その他農業資材、搬送容器、包装容器、および雑貨などの各種用途にも有用である。特に耐薬品性、剛性、および耐衝撃性との両立、並びに成形品の外観に対する品質の要求が厳しい車輌内装用部品および車輌外装用部品に適したものである。
【0136】
車輌内装用部品としては、例えばセンターパネル、インストルメンタルパネル、ダッシュボード、コンソールボックス、インナードアハンドル、リアボード、インナーピラーカバー、インナードアカバー、インナードアポケット、シートバックカバー、インナールーフカバー、ラゲッジフロアボード、カーナビゲーション・カーテレビジョンなどのディスプレーハウジングなどが挙げられる。
【0137】
車輌外装用部品としては、例えば、アウタードアハンドル、フェンダーパネル、ドアパネル、スポイラー、ガーニッシュ、ピラーカバー、フロントグリル、リアボディパネル、モーターバイクのカウル、トラックの荷台カバーなどが挙げられる。
【0138】
したがって、本発明によれば芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)、芳香族ポリエステル樹脂(b成分)、塩基性無機充填材(c成分)、及びホスファイト安定剤(d成分)からなり、(i)a成分〜d成分の組成割合は、a成分とb成分との合計40〜99重量部およびc成分1〜60重量部の合計100重量部あたり、d成分が0.005〜5重量部であり、かつa成分とb成分の合計100重量%中a成分5〜95重量%およびb成分5〜95重量%であり、(ii)該d成分であるホスファイト安定剤は、その酸価が10mgKOH/g未満である条件下において、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間処理されたとき、その酸価の上昇値が0.1〜30mgKOH/gの範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物より形成された車輌内装用部品および車輌外装用部品が提供され、更に好適には該樹脂組成物より形成された車輌外装用部品が提供され、特に好適には該樹脂組成物より形成されたアウタードアハンドルが提供される。
【0139】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明を具体的に説明する。本発明はこれに限定されるものではない。なお、評価は下記の(1)〜(3)の方法により行った。
【0140】
(1)塩基性無機充填材のpH値の測定
無機充填材(c成分およびそれ以外)1000mgを200ml容量のパイレックスガラス製のフラスコの中に電子天秤を用いて測り取った。更に、かかるフラスコ内にヤマト科学(株)製オートピュアWQ500型を通して得られた電気抵抗値が18MΩ・cm以上(すなわち電気伝導度が約0.55μS/cm以下)である23℃の水99000mgを測り取った。かかる水とC成分との混合物を密栓した状態で振とう機(ヤマト科学(株)製MK200D型)で10分間振とうした。振とう終了後1分間静置させ、静置後すぐにpHメーター(堀場製作所(株)製pHメーターD−24型)により23℃においてpH値を測定し、塩基性無機充填材のpH値を求めた。
【0141】
(2)ホスファイト安定剤の初期酸価および酸価上昇値の測定
ホスファイト安定剤の初期酸価は以下のように測定した。即ち、組成物を製造する直前に採取したホスファイト安定剤を約0.6gを精秤し、トルエン20mlに溶解し、さらにエタノール20mlを添加し、攪拌しながらフェノールフタレインを指示薬として、1/20N水酸化カリウム−エタノール溶液で赤色を呈するまで滴定を行った。終点確認はフェノールフタレイン指示薬の変色と、さらに電位差滴定によって行った。かかる滴定測定によりホスファイト安定剤単位質量(1g)当りの水酸化カリウム(KOH)の量(mg)を算出し、その酸価(mgKOH/g)を求めた。かかる初期の酸価が10mgKOH/g未満であることを確認した後、ホスファイト安定剤を23℃、相対湿度50%の環境下に24時間保管し、保管後すぐに上記と同様の測定方法により酸価を求め、かかる環境下で処理された際の酸価の上昇値を求めた。
【0142】
(3)ホスファイト安定剤の耐環境性の評価
ホスファイト安定剤が多様な環境に対応可能か否かを評価するため、ホスファイト安定剤を23℃、相対湿度50%の雰囲気下に72時間処理し、かかる処理前後のホスファイト安定剤を配合した樹脂組成物を作成し、それぞれの樹脂組成物の特性比較を成形品外観(滞留時の安定性)および機械的特性(耐衝撃性)を指標に行った。使用した指標の測定方法は次のとおりであった。
【0143】
(3−i)成形品外観(滞留時の安定性)
得られたペレットを120℃で6時間熱風乾燥機により乾燥した後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]によりシリンダー温度280℃、金型温度80℃で衝撃試験片を含む所望の試験片を作成した。かかる試験片を20ショット連続成形した後、計量が完了した状態で射出シリンダーを後退させてシリンダー内で溶融樹脂を10分間滞留させ、その後更に同様の条件で成形を行い、試験片の外観を目視観察した。評価の基準は以下のとおりとした。
○:シルバーストリーク等の表面肌荒れなし
×:シルバーストリーク等の表面肌荒れ有り
【0144】
(3−ii)機械的特性(耐衝撃性)
前記(3−i)の評価で得られた滞留処理前の衝撃試験片(厚み3.2mm)を用いて、ASTM D256に準拠してノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値(J/m)を測定した。温度23℃、および相対湿度50%RHの雰囲気下で試験を行った。
【0145】
[実施例1〜11、比較例1〜4]
樹脂組成物は、以下の方法−イおよび方法−ロの2種類の方法を用いて製造された。
方法−イ:図1に記載の第一供給口より、a成分、d成分(その類似成分を含む)、および必要に応じてその他の成分((E)〜(G))を混合した予備混練物を供給し、第二供給口よりb成分およびc成分(その類似成分を含む)を供給する方法
方法−ロ:図1に記載の第一供給口より全ての成分を予備混合して供給する方法
【0146】
ここでd成分(その類似成分を含む)は、予めa成分((A))中10重量%となる予備混練物をスーパーミキサータイプの混合機を用いて作成した後、残りの成分とポリエチレン袋中で上下方向および左右方向に十分に回転させることにより均一に予備混合した。
【0147】
前記の予備混合物を方法−イまたはロを用いて押出機に供給し、溶融混練してストランドを製造し、振動式篩を用いて所定のペレットを選別した後、更に表面最大磁力密度800mTの棒状磁石を径方向に一列に上側5本、下側4本を配列し、互いが平行となる配列とした磁選機(カネテック(株)製PCMB−25、永久磁石型、棒状磁石の長さ:244mm、棒状磁石の直径:25mm、棒状磁石間の水平方向の間隔:25mm、上下磁石の断面円中心間の上下方向の間隔:37mm)を用いて、選別処理を行い通過したペレットを用いて評価を行った。
【0148】
押出機としてスクリュー直径30mmのベント付2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30HSST;完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を用いた。その第一供給口上部に原料供給装置であるカセットウェイングフィーダー(久保田鉄工(株)製CE−T−1 0S01)を1台設置し所定の予備混合物を供給した。第二供給口にはサイドフィーダーを接続し、方法−イにおいては、その上部の2台のカセットウェイングフィーダーを用いて、塩基性無機充填材とb成分の芳香族ポリエステル樹脂のペレットとをそれぞれ独立に第二供給口に供給した。重量式定量供給制御装置(久保田鉄工(株)製KF−Cコントローラー)を用いてそれぞれの供給口に所定量の原料が供給されるよう設定し押出を行った。排出量の合計は20,000g/hrに設定した。押出温度は全てのゾーンにおいて270℃とした。またスクリュー回転数180rpm、ベントの減圧度70kPaで行った。
【0149】
尚、各供給口、混練ゾーン、およびベント口の配置は次のとおりであった(スクリューのL/Dで表示。スクリュー根元部分を0とする。またスクリューのL/Dは31.5である)。第1供給口はL/D:約1〜2、第2供給口(サイドフィーダー)はL/D:約15〜16、混練ゾーンはL/D:約11〜14(第1ゾーン)、およびL/D:約23〜24(第2ゾーン)、並びにベント口はL/D:約26〜27の位置であった。また混練ゾーンのニーディングディスクの構成はすべて45°位相の5枚1組のセグメント(L/D=1)を使用した。第1ゾーンは根元部からトーピードリング、正方向、逆方向、および正方向の組合せとし、第2ゾーンはトーピードリング、および正方向の組合せとした。
【0150】
表に示す各成分の記号の内容は、下記のとおりである。
(a成分)
(A):ホスゲン法により製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WQ、粘度平均分子量25,000)
(b成分)
(B−1):ポリブチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製:TRB−H)
(B−2):ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製:TR−8580H)
(c成分)
(C−1):ワラストナイト(ナイコミネラルズ社製:NYGLOS4、pH値10.0)
(C−2):タルク(IMIFABI社製:HiTalc ultra5C、pH値9.7)
(d成分)
(D−1):ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなるホスファイト安定剤(旭電化工業(株)製:アデカスタブPEP−24G、初期酸価6.1mgKOH/g、酸価上昇値1.9mgKOH/g)
(D−2):トリス(イソデシル)ホスファイトからなるホスファイト安定剤(旭電化工業(株)製:アデカスタブ3010、初期酸価0.6mgKOH/g、酸価上昇値0.23mgKOH/g)
(d成分の類似成分)
(D−3):トリフェニルホスファイトからなるホスファイト安定剤(旭電化工業(株)製:アデカスタブTPP、初期酸価1.6mgKOH/g、酸価上昇値67.2mgKOH/g)
(D−4):ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなるホスファイト安定剤(旭電化工業(株)製:アデカスタブPEP−36、初期酸価0.9mgKOH/g、酸価上昇値0mgKOH/g)
(その他の成分)
(E):難燃剤(ブロム化ビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、帝人化成(株)製:ファイヤガードFG−7000)
(F):ゴム質ポリマー(三菱レイヨン(株)製:メタブレンS−2001)
(G):粘弾性増加剤(GEプラスチックス社製:BLENDEX B449)
【0151】
【表1】
Figure 2004359913
【0152】
【表2】
Figure 2004359913
【0153】
前記表から明らかなように、本発明の特定の酸価上昇値を有するホスファイト安定剤を用いた場合、良好な特性を安定して発揮することが分かる。一方酸価上昇値が所定値未満の場合には、十分な特性が得られておらず(例えば実施例1と比較例2との比較参照)、一方酸価上昇値が所定値を超えた場合には安定剤の安定性能が経時的に劣化するため良好な特性を発揮できない場合があることがわかる(例えば実施例1と比較例1との比較参照)。これらの挙動が塩基性無機充填材を配合した場合に特有の効果であることは、参考例1および2の比較より明らかである。またワラストナイトとタルクとを比較すると塩基性の高い金属酸化物成分から構成されるワラストナイトでは、本発明の特定のホスファイト安定剤を用いた場合の耐衝撃値の向上が1.5倍であり(例えば実施例1と比較例3との比較参照)、1.2倍であるタルクの場合(例えば実施例3と比較例4との比較参照)に比較して、本発明の効果がより発揮されていることがわかる。
【0154】
更に上記実施例1〜6の樹脂組成物からなるペレット(ホスファィト安定剤の調湿処理なしおよび72時間調湿処理ありのいずれについても)を用いて、図2に示される捨てキャビ付きハンドル模擬成形品を、ガスインジェクション成形した。なお、ガスインジェクションの成形条件は、おおよそシリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出圧力100MPa、遅延時間1秒、ガス圧力2〜8MPa、ガス注入時間5秒にて実施した。いずれも外観良好な成形品が得られた。
【0155】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、多様な製造環境においても極めて良好な熱安定性を発揮する、良好な剛性、靭性、および耐薬品性などの特性を有する樹脂組成物であり、かかる特性が安定して発揮される樹脂組成物である。かかる特性は、車輌内外装用部品においては特に有用である。更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物は上記特性を有することから車輌用分野以外にもOA機器分野、機械分野、電子・電気機器分野、建材分野、農業資材分野、漁業資材分野など幅広い産業分野に有効に活用されるものであり、その奏する産業上の効果は格別なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂組成物を製造する押出機の構成を示す模式図である。
【図2】2−A:評価に使用した捨てキャビ付きハンドル模擬成形品の側面図を表す。
2−B:評価に使用した捨てキャビ付きハンドル模擬成形品のキャビティ側から見た上面図を表す。
【符号の説明】
1 原料第一供給口
2 原料第二供給口(サイドフィーダー供給)
3 取り出し口
4 動力源
5 ハンドル模擬成形品本体
6 ハンドル模擬成形品の幅(25mm)
7 ハンドル模擬成形品の長さ(160mm)
8 ハンドル模擬成形品のゲート部分(幅5mm、厚さ2.5mm)
9 捨てキャビ部のゲート部分(幅25mm、厚さ1mm、長さ2mm)
10 捨てキャビ部(幅30mm、厚さ20mm、長さ30mm)
11 ハンドル模擬成形品の厚み(15mm)
12 ガス注入口(内径5mm)
13 ハンドルラッチ部(長さ30mm、幅10mm、厚み6mm、中央部に長円形の孔を有しウエルド部分あり)

Claims (7)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)、芳香族ポリエステル樹脂(b成分)、塩基性無機充填材(c成分)、及びホスファイト安定剤(d成分)からなり、(i)a成分〜d成分の組成割合は、a成分とb成分との合計40〜99重量部およびc成分1〜60重量部の合計100重量部あたり、d成分が0.005〜5重量部であり、かつa成分とb成分の合計100重量%中a成分5〜95重量%およびb成分5〜95重量%であり、(ii)該d成分であるホスファイト安定剤は、その酸価が10mgKOH/g未満である条件下において、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間処理されたとき、その酸価の上昇値が0.1〜30mgKOH/gの範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記a成分〜d成分を溶融混練してなる樹脂組成物であって、その酸価が10mgKOH/g未満であるd成分を配合してなる請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記d成分におけるホスファイトは、下記一般式(I)および(II)より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004359913
    (式中、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
    Figure 2004359913
    (式中、R〜Rは炭素数5〜18のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても相異なっていてもよい)
  4. 前記a成分とb成分との割合が、両者の合計100重量%中a成分50〜93重量%およびb成分50〜7重量%である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記c成分が、繊維状の塩基性無機充填材である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 更にゴム質ポリマー(e成分)をa成分〜c成分の合計100重量部当り、1〜20重量部を含んでなる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を押出機を用いて製造する方法であって、該押出機はそのスクリュー根元部に設けた第一供給口、第一供給口の下流に設けた第二供給口を少なくとも備え、少なくとも前記a成分とd成分を第一供給口より供給し、前記b成分とc成分を少なくとも第二供給口以降の供給口より供給することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
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