JP4255735B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性熱可塑樹脂組成物に関する。さらに詳しくは本発明は、特定粒子径のマイカ、およびタルク(好ましくは特定粒子径のタルク)等を併用し、難燃剤を特定割合で含有することにより、高剛性、高寸法精度、良好な摺動表面性および良好な難燃性を有し、かつ金型を摩耗させにくい特性を有する、シャーシ成形品に好適な難燃性熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザービームプリンター、複写機、およびプロジェクター装置など、光学系ユニットを有する装置のシャーシ(以下単に“光学ユニットシャーシ”と称する場合がある)に使用されるプラスチック材料に対しては、多くの場合、高剛性、高強度、高寸法精度(低異方性)、および良好な難燃性が要求される。かかるシャーシ用のプラスチック材料に対しては既に多くの提案がなされている。光学ユニットシャーシにおいては低異方性の要求は依然として高いものがある。また上記の各種光学系ユニットを有する装置は長年製造が続けられており、既に多くのノウハウが蓄積されている。かかる状況にある光学系ユニットを有する装置においてはより高性能な新規機種が開発される一方で、いわゆる汎用機種は低コスト化をより重要視して改良がなされている。
【0003】
低コスト化の課題に対しては、例えば(i)金型に要するコストの低減(高切削鋼の使用や熱処理等の省略)および金型寿命の延長、(ii)成形のハイサイクル化(成形時間の短縮)、および(iii)金型修正回数の低減などが鋭意検討されている。かかる各検討項目(i)〜(iii)においてプラスチック材料に求められる特性は次の通りである。すなわち(i)金型摩耗のより少ないこと(以下“低金型摩耗性”と称する)、(ii)熱伝導率が高く形状保持性に優れること、並びに(iii)成形時の寸法安定性に優れ、材料の異方性に起因する反り等を考慮した金型キャビティ形状の修正を極力低減できることである。
【0004】
更に上記の要求以外の点が重視される場合もある。シャーシは多くの場合、回転体、ギア、およびスライド機構体などの各種機構部品が組み込まれ、その結果これらの機構部品とシャーシが摺動する構造を有する。かかる構造を有する場合には、かかる機構部品が摩耗しないこと、およびシャーシ自体が摩耗しないことのいずれもが要求され、かかる要求がより重視される場合がある。またプリンターや複写機などのシャーシにおいては通紙時の摺動性も重要である。摺動性が必要とされる場合には、シャーシ自体の摩耗、および相手材の摩耗のいずれもが抑制されるシャーシ表面の特性が必要である。本発明においてはかかる特性を摺動表面性と称する。かかる摺動表面性は、成形のハイサイクル化に伴い悪化する傾向にある。よって摺動表面性がより重視される部品において低コスト化を図る知見は十分に得られていない。
【0005】
シャーシなどに適した樹脂組成物としては従来から数多くが提案されている。
(i)特許文献1には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂にガラス繊維などを高充填した樹脂組成物が開示されている。(ii)特許文献2には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂、非円形断面繊維、および板状無機充填材からなる樹脂組成物が開示され、良好な低反り性を達成している。また(iii)特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂、並びに特定粒径および特定厚みを有するマイカからなる樹脂組成物で形成された光書き込みユニット固定シャーシが開示されている。殊に上記(iii)に記載された発明は、極めて高い剛性、低異方性に基づく低いそり率およびねじれ率、および良好な難燃性とを達成するものである。すなわち光学ユニットシャーシに必要な好ましい特性を有するものである。しかしながら、高剛性、高強度、低異方性、難燃性、および低金型摩耗性の要求を全て満足する組成物が十分に開示されたとはいい難い。
【0006】
特許文献4には芳香族ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、および炭素繊維からなる樹脂組成物が開示され、該組成物は低減された金型摩耗性を有することが記載されている。しかしながらかかる公報に記載された発明は低異方性を十分に考慮しておらず、また低異方性を達成した上で十分な強度を有するための技術的知見を開示していない。
【0007】
特許文献5には、ポリカーボネート樹脂、鱗片状無機充填材、および特定の構造を有するリン酸エステル化合物からなるCD−ROM機構部品が開示されている。しかしながら該公報も高剛性および高強度であり、かつ良好な難燃性と低金型摩耗性の要求をも満足する樹脂組成物を十分に開示したとはいい難い。
【0008】
特許文献6には、芳香族ポリカーボネート樹脂、難燃剤、ガラス繊維とタルク等とを特定割合で組み合わせた無機充填材、およびフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂組成物が記載され、該組成物は高剛性、高強度、高寸法精度、および良好な難燃性を有することが開示されている。しかしながら該組成物は、低コスト化をより重要視する機種に使用する材料としては更に改良の余地があった。
【0009】
特許文献7〜9には、芳香族ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、リン酸エステル、タルク等の鱗片状充填材、およびフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンに対して、更に摺動付与成分としてポリテトラフルオロエチレン、低分子量ポリエチレン、およびシリコーンオイルなどを添加して、摺動性の改良された難燃性樹脂組成物が開示され、かかる組成物は公知である。
【0010】
特許文献10には芳香族ポリカーボネート樹脂、強化充填材、摺動性付与材、特定のポリエステルエラストマーからなり、特定の摩擦摩耗試験方法における摩耗量が規定された摺動性および外観を併有する樹脂組成物が開示され、かかる組成物は公知である。更にかかる特許文献10においては、摺動性における表面状態の重要性が記載されている。
【0011】
また特許文献11には、ゴム強化スチレン系樹脂組成物に特定の化合物並びに特定の高級脂肪酸エステルを配合することにより摺動性の改良された難燃性樹脂組成物が開示され、かかる組成物は公知である。しかしながらこれらの組成物はいずれもシャーシとして使用するには更なる改良の余地が多分にあった。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−287185号公報
【特許文献2】
特開平6−207189号公報
【特許文献3】
特開平9−12733号公報
【特許文献4】
特開平1−185360号公報
【特許文献5】
特開平8−115589号公報
【特許文献6】
特開2001−164105号公報
【特許文献7】
特開平9−003313号公報
【特許文献8】
特開平09−279006号公報
【特許文献9】
特開平10−101920号公報
【特許文献10】
特開平10−306206号公報
【特許文献11】
特開平11−279370号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特に機構部品が備えられるシャーシ用プラスチック材料として好適な、高剛性、高強度、高寸法精度(低異方性)、良好な難燃性、良好な摺動表面性および低金型摩耗性のいずれをもバランスよく満足する、熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。かかる摺動表面性の向上は、軸およびシャーシ材の摩耗が低減し機構部品に求められる精度が長期に保たれ、また通紙部分での紙の引っかかりや紙の削れ分の発生が減少し、プリントアウト速度の高速化を可能にする。
【0014】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂とリン酸エステル化合物からなる樹脂組成物に、更に特定粒子径のマイカと特定粒径のタルク等とを併用して特定割合で含有させることにより、中でも特定のリン酸エステルと特定の高級脂肪酸エステルとの組み合わせにより、上記の課題を解決できることを見出した。そして更に検討を進めることにより本発明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(I)下記A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計を100重量%としたとき、B成分は0.1〜30重量%であり、C−1成分はc1重量%およびC−2成分はc2重量%であって、該c1およびc2は下記式(1)、(2)、および(3)の条件を満足する難燃性熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
(A)芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)、スチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)、およびポリフェニレンエーテル(A▲3▼成分)より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(A成分)、
(B)有機リン化合物からなる難燃剤(B成分)、
(C−1)平均粒子径10〜30μmのマイカ(C−1成分)(C−2)タルクおよびワラストナイトから選択される少なくとも1種の充填材(C−2成分)
10≦c1+c2≦50 (1)
5≦c1≦30 (2)
0.5≦c2≦20 (3)
【0016】
本発明の好適な態様の1つは、更に含フッ素滴下防止剤(D成分)をA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部あたり、0.05〜2重量部含んでなる上記難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
【0017】
上記構成(I)によれば、特定粒子径のマイカと特定粒径のタルク等とを併用して特定割合で含有させることにより、中でも特定のリン酸エステルと特定の高級脂肪酸エステルとの組み合わせにより、高剛性、高強度、高寸法精度(低異方性)、良好な難燃性、良好な摺動表面性および低金型摩耗性のいずれをもバランスよく満足する(以下、“本発明の効果”と総称する場合がある)、機構部品が備えられるシャーシ用プラスチック材料として好適な特性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、(II)更に含フッ素滴下防止剤(D成分)をA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部あたり、0.05〜2重量部含んでなる上記(I)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかるD成分の配合によって、燃焼時のドリップが抑制され、UL規格94におけるV−1レベルまたは5VBレベルのより優れた難燃性が達成される。したがって上記構成(II)によれば、本発明の効果を有し更にかかる優れた難燃性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、(III)更に一価または多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル(E成分)をA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部あたり、0.01〜2重量部含んでなる上記構成(I)〜(II)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかるE成分の含有は良好な難燃性と良好な摺動表面性とを本発明の樹脂組成物に併有させる。殊に本発明の好適な有機リン化合物との組み合わせにおいてかかる効果は顕著に発揮される。したがって構成(III)によれば、本発明の効果を有し、更に摺動表面性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0020】
本発明の好適な態様の1つは、(IV)上記有機リン化合物からなる難燃剤(B成分)は、TGAによる、窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が280℃以上である上記(I)〜(III)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかる構成(IV)によれば、本発明の効果を有し更に良好な耐熱性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0021】
本発明の好適な態様の1つは、(V)上記タルクは平均粒子径0.5〜30μmであり、上記ワラストナイトは平均繊維径が0.5〜20μmである上記(I)〜(IV)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、(VI)更に下記式(4)、(5)および(6)を満足する上記(I)〜(V)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
15≦c1+c2≦40 (4)
8≦c1≦25 (5)
3≦c2≦15 (6)
【0023】
本発明の好適な態様の1つは、(VII)A成分は、その100重量%中A▲1▼成分および/またはA▲3▼成分50〜99重量%とA▲2▼成分1〜50重量%からなる上記(I)〜(VI)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
【0024】
上記の好適な態様である構成(V)〜(VII)によれば、本発明の効果においてより優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0025】
更に本発明は、(VIII)上記難燃性熱可塑性樹脂組成物から形成されたシャーシ成形品にかかるものである。
【0026】
以下本発明の詳細について説明する。
本発明のA成分は、芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)、スチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)、およびポリフェニレンエーテル(A▲3▼成分)より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ポリマーである。
【0027】
スチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)は次の3点、即ち(i)低い溶融粘度、(ii)低比重、および(iii)高剛性(高い曲げ弾性率)を有する点でA成分中に含まれることが好ましい。低い溶融粘度は樹脂組成物全体の溶融成形時の流動抵抗を低減し、金型面に対する圧力を緩和しその摩耗を低減する。低比重すなわち軽量であってかつ高い曲げ弾性率を有することは、曲げ剛性の向上を可能とする(同一重量で比較すれば厚みを増加することが可能であり、厚みの3乗に比例して曲げ剛性は向上し、また曲げ弾性率に比例して曲げ剛性は向上する)。曲げ剛性の向上は共振周波数の向上をもたらし、光学ユニットなどのシャーシ成形品における不要な振動を低減する。しかしながらスチレン系硬質ポリマー単独の使用は難燃性の点が不利であり、また概して耐熱性においても不利である。
【0028】
一方、芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)やポリフェニレンエーテル(A▲3▼成分)は難燃性および耐熱性に優れるため、これらをスチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)と混合して使用することが好適である。したがってA成分は、好ましくはその100重量%中A▲1▼成分および/またはA▲3▼成分50〜99重量%とA▲2▼成分1〜50重量%からなる。
【0029】
A▲1▼成分および/またはA▲3▼成分とA▲2▼成分との更に好ましい混合割合は、A▲1▼成分、A▲3▼成分それぞれにつき次の通りである。A▲1▼成分とA▲2▼成分との混合割合は、その合計100重量%中A▲1▼成分がより好ましくは60〜95重量%(更に好ましくは75〜90重量%、特に好ましくは80〜88重量%)、A▲2▼成分がより好ましくは5〜30重量%(更に好ましくは10〜25重量%、特に好ましくは12〜20重量%)である。A▲3▼成分とA▲2▼成分との混合割合は、その合計100重量%中A▲3▼成分がより好ましくは50〜85重量%(更に好ましくは50〜80重量%、特に好ましくは55〜75重量%)、A▲2▼成分がより好ましくは15〜50重量%(更に好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%)である。
【0030】
中でも芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)とスチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)との組み合わせは、良好な耐衝撃性を有し、一方芳香族ポリカーボネートの比重や曲げ弾性率における特性不足を補うことができ有効である。したがって本発明において特に好適なA成分として、A▲1▼成分およびA▲2▼成分からなり、A成分100重量%中A▲1▼成分80〜88重量%およびA▲2▼成分12〜20重量%である熱可塑性ポリマーの組合せが挙げられる。A成分の熱可塑性ポリマーの詳細については後述する。
【0031】
本発明の難燃剤(B成分)は有機リン化合物である。有機リン化合物の添加は樹脂組成物の曲げ弾性率を向上させ、またハロゲン系難燃剤などと比較して低比重化が可能である。したがって有機リン化合物は成形品における曲げ剛性の向上を可能とする。更にその可塑化効果に基づく樹脂組成物の低い溶融粘度が金型面の摩耗を低減する。
【0032】
本発明のB成分の有機リン化合物としては、特に下記一般式(I)で表される1種または2種以上のリン酸エステルを挙げることができる。
【0033】
【化1】
Figure 0004255735
【0034】
(但し上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ独立して0または1であり、nは0〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値であり、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導されるものである。)
【0035】
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ1であり、nは1〜3の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルのブレンドの場合はその平均値であり、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
【0036】
また、B成分の有機リン化合物は、そのTGAによる、窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が280℃以上であるものが好ましい。該重量減少温度は更に、320℃以上がより好ましく、330℃以上が更に好ましく、340℃以上が特に好ましい。該重量減少温度の上限としては380℃以下が一般に入手可能で適切であり、370℃以下がより適切である。上記の如く重量減少温度が比較的高温の有機リン化合物は、樹脂組成物の溶融粘度の低下と共に、良好な耐熱性(良好な荷重たわみ温度など)を樹脂組成物に付与できる点で好ましい。
【0037】
上記の点などを考慮すると、上記式のリン酸エステルの中でも、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー、4,4−ジヒドロキシジフェニルビス(ジキシレニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー、およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマーが好適である(ここで主体とするとは、重合度の異なる他の成分を少量含んでよいことを示す)。
【0038】
更に同様の点からB成分としては、フェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーに代表されるホスファゼンポリマーも好適に使用することが可能である。B成分以外の難燃剤については後述する。
【0039】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、無機充填材として、特定粒径のマイカ(C−1成分)、並びにタルクおよびワラストナイトから選択される少なくとも1種の充填材(C−2成分)との組合せを含有する。
【0040】
本発明でC−1成分として使用するマイカの平均粒子径は走査型電子顕微鏡により観察し、無差別に1μm以上のものを抽出した合計1000個の数平均にて算出される数平均粒子径である。その数平均粒子径は10〜30μmであり、好ましくは12〜25μm、より好ましくは15〜23μmである。数平均粒子径が10μm未満となるとマイカが樹脂マトリックスから脱落するに要する力が低くなるため、その結果本発明の樹脂組成物からなる成形品の耐摩耗性が低下しやすい。更に本発明において好適な樹脂である芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性も低下する場合がある。また30μmを超えると、摺動表面性が低下しやすい。すなわち、表面摺動性が重視される部品において好ましくない。
【0041】
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡観察により実測した厚みが0.01〜10μmのものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき(樹脂組成物の強度は摺動表面性の向上にも寄与する)、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。
【0042】
また、マイカの粉砕法としては、マイカ原石を乾式粉砕機にて粉砕する乾式粉砕法と、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水などの粉砕助剤を加えてスラリー状態にて湿式粉砕機で本粉砕し、その後脱水、乾燥を行う湿式粉砕法がある。本発明のマイカはいずれの粉砕法において製造されたものも使用できるが、乾式粉砕法の方が低コストで一般的である。また乾式粉砕法で製造されたマイカにおいても磁力選別処理を十分に行う(例えば1000mT以上の磁力選別機による選別を行う)ことにより、鉄含有不純物の割合を低減し、良好な特性を有するマイカを得ることが可能である。湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であるがコストがかかる。マイカは、シランカップリング剤、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの各種表面処理剤で表面処理されていてもよく、更に各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0043】
本発明でC−2成分として使用するタルクとは、層状構造を持った鱗片状の粒子であり、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO2・3MgO・2H2Oで表され、通常SiO2を56〜65重量%、MgOを28〜35重量%、H2O約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFe23が0.03〜1.2重量%、Al23が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2Oが0.2重量%以下、Na2Oが0.2重量%以下などを含有しており、比重は約2.7、モース硬度は1である。本発明は、上記の特定粒径のマイカにタルクを併用することにより、良好な難燃性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物を達成する。かように同じ板状無機充填材である特定粒径のマイカとタルクを併用し、良好な難燃性熱可塑性樹脂を達成し得ることは従来知られていなかった。
【0044】
本発明のタルクの平均粒子径は0.5〜30μmが好ましい。該平均粒子径はJIS M8016に従って測定したアンドレアゼンピペット法により測定した粒度分布から求めた積重率50%時の粒子径である。タルクの粒子径は2〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましく、10〜20μmが更に好ましい。0.5〜30μmの範囲では良好な難燃性が達成される。
【0045】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、及び容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。更に粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0046】
更にタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0047】
また、もう一つのC−2成分であるワラストナイトは、実質的に化学式CaSiO3で表され、通常SiO2が約50重量%以上、CaOが約47重量%、その他Fe23、Al23等を含んでいる。ワラストナイトは、ワラストナイト原石を粉砕、分級した白色針状粉末で、モース硬度は約4.5である。使用するワラストナイトの平均繊維径は0.5〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1〜5μmが最も好ましい。該平均繊維径は走査型電子顕微鏡により観察し、無差別に0.1μm以上のものを抽出した合計1000個の数平均にて算出されるものである。また、ワラストナイトの数平均繊維長は、1μm以上のものを抽出したもので、3〜30μmが好ましく、4〜10μmがより好ましく、5〜9μmが最も好ましい。
【0048】
上記C−2成分の中でも、低金型摩耗性により優れるためタルクがより好ましい。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の必須成分を特定割合で含むものである。かかる割合について次に説明する。
【0050】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計を100重量%としたとき、B成分は0.1〜30重量%であり、C−1成分はc1重量%およびC−2成分はc2重量%であって、該c1およびc2は下記式(1)、(2)、および(3)の条件を満足してなるものである。
10≦c1+c2≦50 (1)
5≦c1≦30 (2)
0.5≦c2≦20 (3)
【0051】
上記においてB成分は0.1重量%未満であると難燃効果が不十分であり、また30重量%より多いと機械的強度が低下する。B成分の割合は1〜20重量%が好ましい。更により好適なA成分におけるB成分の範囲は次のとおりである。(i)A成分がA▲1▼成分とA▲2▼成分との組合せからなる場合、B成分の割合は、より好ましくは3〜10重量%、更に好ましくは3〜8重量%、特に好ましくは3.5〜7重量%である。(ii)A成分がA▲3▼成分とA▲2▼成分との組合せからなる場合、B成分の割合は、より好ましくは4〜14重量%、更に好ましくは6〜14重量%、特に好ましくは7〜13重量%である。
【0052】
上記式(1)においてC−1成分とC−2成分との合計が10重量%未満では、樹脂組成物の剛性が不十分であり、また大きい熱膨張のため成形品の寸法精度が不十分となる場合がある。一方、C−1成分とC−2成分との合計が50重量%を超えると、樹脂組成物の難燃性が低下するようになり、また摺動表面性の点においても好ましくなくなる。上記式(2)においてC−1成分の割合が5重量%未満の場合には樹脂組成物の剛性および摺動表面性の点で不十分となりやすい。一方、C−1成分の割合が30重量%を超える場合には難燃性が悪化するようになる。
【0053】
上記式(3)においてC−2成分の割合が上記式(1)および(2)の条件の下で0.5重量%未満では剛性および摺動表面性の点で悪化する。一方20重量%を超えると樹脂組成物自体が摩耗しやすくなる。
【0054】
上記式(1)において、その下限は13が好ましく、15がより好ましく、その上限は40が好ましく、35がより好ましい。更に上記式(3)において、その下限は3が好ましく、5がより好ましく、その上限は上記式(1)の上限を40として15が好ましく、10がより好ましい。
【0055】
本発明においてC−1成分とC−2成分の割合は、更に下記式(4)、(5)および(6)を満足することが好ましい。
15≦c1+c2≦40 (4)
8≦c1≦25 (5)
3≦c2≦15 (6)
【0056】
上記式(4)において、その上限は35が好ましく、30がより好ましい。上記式(6)において、その下限は5が好ましく、その上限は上記式(4)の上限を35として10が好ましい。
【0057】
本発明においてC−1成分とC−2成分の割合は、更に下記式(7)、(8)および(9)を満足することがより好ましい。
15≦c1+c2≦35 (7)
10≦c1≦25 (8)
3≦c2≦15 (9)
【0058】
上記式(7)において、その上限は30が好ましい。上記式(8)においてその上限は20が好ましい。上記式(9)においてその下限は5が好ましく、その上限は12が好ましく、10がより好ましい。
【0059】
本発明においてC−1成分とC−2成分の割合は、更に下記式(10)、(11)および(12)を満足することが更に好ましい。
15≦c1+c2≦30 (10)
10≦c1≦20 (11)
5≦c2≦12 (12)
【0060】
上記式(11)においてその下限は12が好ましく、その上限は18が好ましい。上記式(12)においてその上限は10が好ましい。
【0061】
更に本発明のC−1成分の割合(c1重量%)とC−2成分の割合(c2重量%)との関係は下記式(13)を満足することが好ましい。
0.4≦c1/(c1+c2)≦0.9 (13)
【0062】
かかる条件を満足することにより、より良好な耐衝撃性と難燃性を有する樹脂組成物を得ることができる。上記式(13)においてその下限は0.5が好ましく、0.55がより好ましく、一方、その上限は0.8が好ましく、0.75がより好ましく、0.7が更に好ましい。
【0063】
本発明は、更に上記A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して、含フッ素滴下防止剤(D成分)を0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.15〜0.8重量部含むことが好ましい。D成分の含有により、他の特性を損なうことなくより良好な難燃性を達成することができる。本発明のA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の構成において、含フッ素滴下防止剤が有効に作用することはこれまで知られていない。
【0064】
含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0065】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0066】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。
【0067】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0068】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。尚、上記D成分の割合は正味の含フッ素滴下防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0069】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、更に一価または多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル(E成分)を含有することが好ましい。これにより本発明の効果を有し、更に摺動表面性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。殊にB成分がTGAによる、窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が280℃以上である有機リン化合物であるとき、かかるE成分は特に好ましい効果を発揮する。E成分は、上記A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部、更に好ましくは0.1〜0.6重量部、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に含有される。
【0070】
E成分のエステルを構成する高級脂肪酸は、好ましくは炭素数20以上(より好ましくは炭素数20〜32、さらに好ましくは炭素数26〜32)の脂肪酸を60重量%以上含有する。かかる高級脂肪酸として、モンタン酸を主成分とする高級脂肪酸が好ましく例示される。かかる高級脂肪酸は通常モンタンロウを酸化することにより製造される。
【0071】
E成分を構成する一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。
【0072】
E成分を構成する多価アルコールとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリンなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、およびプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの中でもジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンが好ましく、特にジエチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0073】
モンタン酸を主成分とする高級脂肪酸と一価または多価アルコール(好ましくは多価アルコール)とのエステルは、密度:0.94〜1.10g/cm3、酸価:1〜200、鹸化価:50〜200の範囲であることが好適である。
【0074】
次に本発明のA成分の熱可塑性ポリマーの詳細について説明する。
本発明のA▲1▼成分の芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる芳香族ポリカーボネートであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0075】
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0076】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0077】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明の芳香族ポリカーボネートは三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートを含む。また、得られたポリカーボネートの2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0078】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0079】
分岐芳香族ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0080】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0081】
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0082】
芳香族ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なる芳香族ポリカーボネート、分岐成分を含有する芳香族ポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種の芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。さらに下記に示す製造法の異なる芳香族ポリカーボネート、末端停止剤の異なる芳香族ポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0083】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0084】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0085】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0086】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0087】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。さらにアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0088】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0089】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0090】
本発明の芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は10,000以上であり、好ましくは15,000〜50,000である。粘度平均分子量の下限はより好ましくは16,000であり、更に好ましくは17,000であり、最も好ましくは18,000である。一方、粘度平均分子量の上限は、より好ましくは26,000であり、更に好ましくは25,000であり、最も好ましくは23,000である。
【0091】
また、芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。
【0092】
特に粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネートとの混合物はエントロピー弾性が高く、ジェッティングなどに代表されるレオロジー挙動による成形品の外観不良が生じくい特徴がある。かかる外観不良が生ずる場合には、適切な態様である。更にガスインジェクション成形などにおいてもガス注入量が安定し、また発泡成形においては発泡セルが安定し、微細かつ均質なセルが形成されやすいことから有利である。
【0093】
より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上の芳香族ポリカーボネートとの混合物であり、更に好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネートとの混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの測定法において2ピーク以上の分子量分布を観察できるものが好ましく使用できる。
【0094】
また本発明の芳香族ポリカーボネートにおいて、そのフェノール性水酸基量は30eq/ton以下が好ましく、25eq/ton以下がより好ましく、20eq/ton以下が更に好ましい。尚、かかる値は十分に末端停止剤を反応せさることで実質的に0eq/tonとすることも可能である。尚、該フェノール性水酸基量は、1H−NMR測定を行い、カーボネート結合を有する2価フェノールユニット、フェノール性水酸基を有する2価フェノールユニット、および末端停止剤のユニットのモル比を算出し、それに基づきポリマー重量当りのフェノール性水酸基量に換算することで求められる。
【0095】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0096】
尚、本発明のA▲1▼成分は、二価フェノールの異なるもの、末端停止剤を使用したものと使用していないもの、直鎖状のものと分岐状のもの、製法の異なるもの、末端停止剤の異なるもの、芳香族ポリカーボネートとポリエステルカーボネート、粘度平均分子量の異なるものなど、2種以上の芳香族ポリカーボネートを混合することができる。
【0097】
本発明のスチレン系硬質ポリマー(A▲2▼成分)は、芳香族ビニル化合物の重合体または共重合体、またこれらと共重合可能な他のビニル単量体とを共重合して得られる重合体をいう。芳香族ビニル化合物は該ポリマー100重量%中少なくとも30重量%以上含有することが好ましい。
【0098】
硬質ポリマーとは、非晶性ポリマーにおいては少なくともそのガラス転移温度が40℃以上であるポリマーをいい、少なくとも10℃以下にガラス転移温度を有するA−1成分のゴム質重合体とは明確に区別される。結晶性ポリマーの場合にはその融点が40℃以上であるポリマーをいう。これらのガラス転移温度および融点はJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
【0099】
スチレン系硬質ポリマーの分子量は、好ましくは40,000〜250,000である。かかる下限はより好ましくは50,000、更に好ましくは70,000である。またかかる上限はより好ましくは160,000、更に好ましくは150,000である。スチレン系硬質ポリマーの分子量は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値、すなわち標準ポリスチレンのGPC測定によりリテンションタイムと分子量との較正線を作成し、各ポリマーのリテンションタイムの値をかかる較正線を用いて分子量に換算した値である。
【0100】
本発明において芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0101】
本発明において芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0102】
本発明において(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。尚(メタ)アクリレートの表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0103】
本発明においてシアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
【0104】
本発明において好適なスチレン系硬質ポリマーとしては、ポリスチレン、MS共重合体、AS共重合体、MAS共重合体およびSMA共重合体などが挙げられる。尚、ここでMS共重合体はメチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体、AS共重合体はアクリロニトリルとスチレンから主としてなる共重合体、MAS共重合体はメチルメタクリート、アクリロニトリルとスチレンから主としてなる共重合体、並びにSMA共重合体はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体を示す。
【0105】
更に本発明のA▲2▼成分はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体や共重合体、ブロック共重合体、並びに立体規則性の高い重合体や共重合体であってもよい。更にはA▲2▼成分の共重合体はマクロモノマーを使用した制御された櫛型構造の重合体など、分子レベルで精密に制御された各種の共重合体が広く知られている。A▲2▼成分としてはこれら公知の精密制御された共重合体の使用が可能である。
【0106】
上記の中でもA▲2▼成分としてはAS共重合体およびポリスチレンが好適である。A▲1▼成分との組合せにおけるA▲2▼成分は、AS共重合体が特に好適である。A▲3▼成分との組合せにおけるA▲2▼成分は、ポリスチレンが特に好適である。
【0107】
本発明においてAS共重合体とは、アクリロニトリルを主とするシアン化ビニル化合物とスチレンを主とする芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。シアン化ビニル化合物や芳香族ビニル化合物の具体例は前記のとおりである。AS共重合体中におけるシアン化ビニル化合物の割合は、該共重合体100重量%中、5〜50重量%、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは20〜30重量%であり、一方、芳香族ビニル化合物の割合は、95〜50重量%、好ましくは85〜65重量%、より好ましくは70〜80重量%である。更にこれらのビニル化合物に、前記の共重合可能な他のビニル系化合物が共重合されたものでもよい。これらの含有割合は、AS共重合体中15重量%以下であることが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0108】
かかるAS共重合体は塊状重合、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合または懸濁重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS共重合体の重量平均分子量は、GPC測定による標準ポリスチレン換算において40,000〜200,000が好ましい。かかる下限は50,000がより好ましく、70,000が更に好ましい。また上限は160,000がより好ましく、150,000が更に好ましい。またかかるAS共重合体をスチレン系硬質ポリマーとして含む場合であっても、少量の他のスチレン系硬質ポリマーを含むことができる。かかる場合AS共重合体以外のスチレン系硬質ポリマーはスチレン系硬質ポリマー100重量%中好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、更に3重量%以下である。
【0109】
本発明のA▲3▼成分であるポリフェニレンエーテルとは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)である。
【0110】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0111】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0112】
上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0113】
また、ポリフェニレンエーテルの分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0114】
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0115】
本発明でB成分として使用可能な上記の有機リン化合物以外の難燃剤としては、赤リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、および金属塩系難燃剤などを挙げることができる。
【0116】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲においてC−1成分およびC−2成分以外の無機充填材を少量含むことも可能である。ここでガラス繊維やガラスフレークなどのガラス系充填材(モース硬度約6.5)や、ホウ酸アルミニウムウイスカー(モース硬度約7)および酸化チタン(ルチル型でモース硬度約7)などの硬度の高い充填材は、その割合がA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して3重量部以下とすることが適切であり、1重量部以下がより好ましい。一方、モース硬度が5以下の充填材であれば、3重量部を超えて配合することも可能であるが、5重量部以下とすることが好ましい。
【0117】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、他に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料等を配合することもできる。
【0118】
更に本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、少量のゴム質重合体を含むことができる。かかる割合としてはA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して1.5重量部以下とすることが適切であり、1.3重量部以下がより好ましい。
【0119】
ゴム質重合体とは、ガラス転移温度が10℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であるゴム成分からなる重合体、並びに該ゴム成分からなる重合体に他のポリマー鎖が結合してなる共重合体をいう。かかる他のポリマー鎖が結合してなる共重合体はより好適なゴム質重合体である。
【0120】
ゴム成分からなる重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びにアクリル・ブタジエンゴム(アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体)など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0121】
かかるゴム成分に結合するポリマー鎖を構成する単量体化合物としては、スチレン系硬質ポリマーで例示した各種の化合物と同様である。中でも、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。
【0122】
他のポリマー鎖が結合してなるゴム質重合体においては、該共重合体100重量%中ゴム成分からなる重合体は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、更に好ましくは65重量%以上である。また該共重合体100重量%中ゴム成分からなる重合体は好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは85重量%以下であり、更に好ましくは80重量%以下である。
【0123】
ゴム質重合体において、これらの単量体からなるポリマー鎖は、代表的にはブロック共重合体やグラフト共重合体の構成を有することができ、特にグラフト共重合体の構成を有することが好ましい。またグラフト共重合体においては、ゴム成分からなる重合体のコアに上記単量体からなるポリマー鎖が結合したコア−シェルタイプのグラフト共重合体がより好ましい。またグラフト共重合体は、1段反応によるグラフト反応、および2段以上の多段反応によるグラフト反応のいずれで製造されてもよい。A−1成分がグラフト共重合体の場合、ゴム成分からなる重合体にグラフトされたポリマー鎖の割合(ゴム成分の重量に対するかかるグラフトポリマー鎖の重量の割合)、すなわちグラフト率(重量%)は好ましくは11〜100重量%であり、より好ましくは17〜66重量%であり、更に好ましくは25〜53重量%である。
【0124】
尚、本発明のゴム質重合体はA成分中に単体で配合される必要はなく、他の硬質ポリマー中に含有される形式で含まれるものであってもよい。例えばABS樹脂がA成分の構成成分の1つとして配合された場合、硬質ポリマーとしてAS共重合体、ゴム質重合体としてABS共重合体を含有する。
【0125】
A成分が芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)を主成分とするとき、ゴム質重合体は、芳香族ビニル化合物または(メタ)アクリル酸エステル化合物をその必須の単量体成分として含有する共重合体、殊にその必須のグラフト鎖の単量体成分として含有するグラフト共重合体である。A成分がポリフェニレンエーテル(A▲3▼成分)を主成分とするとき、芳香族ビニル化合物をその必須の単量体成分として含有する共重合体である。
【0126】
ゴム質重合体としてより具体的には、SB(スチレン−ブタジエン)重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)重合体、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)重合体、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム)重合体、AES(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン)重合体、MA(メチルメタクリレート−アクリルゴム)重合体、MAS(メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン)重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)重合体などを挙げることができる。これらの重合体はいずれもゴム成分からなる重合体のコアに上記単量体からなるポリマー鎖が結合したコア−シェルタイプのグラフト共重合体であることが好ましい。
【0127】
上記の例示されたゴム質重合体はA成分が芳香族ポリカーボネート(A▲1▼成分)を含む場合にはいずれも好適であり、特にSB重合体を除く重合体は好適に利用される。またA成分の硬質ポリマーがポリフェニレンエーテル(A▲3▼成分)を含む場合には、SB重合体がより好適である。
【0128】
その他ゴム質重合体としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど各種の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0129】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、他に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料等を配合することもできる。
【0130】
熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等のリン系の熱安定剤が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル化合物、更にその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等を挙げることができる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0131】
酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して0.0001〜0.05重量部が好ましい。
【0132】
紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。更にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0133】
離型剤としては、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対し、0.01〜1重量部が好ましい。
【0134】
帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。かかる帯電防止剤の配合量は、A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましい。
【0135】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、更にその際、C−1成分およびC−2成分はサイドフィーダー等により第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。かくして得られた組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、または回転成形等の既知の方法で容易に成形することができ、特に射出成形により精密機器等の高精度シャーシを成形することが可能である。その際さらに高精度を達成するため、射出圧縮成形、断熱金型による成形等を組合わせることが可能であり、また軽量化および低歪み化のためガスアシスト成形等を組合わせて使用することも可能である。
【0136】
以上本発明によれば、剛性、寸法精度、摺動表面性に優れ、かつ低金型摩耗性を有する、難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。更にこれにより上記樹脂組成物より形成されたシャーシ成形品が提供される。本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は摺動する機構部品や通紙部分を有するOA関連機器のシャーシに特に好適である。OA関連機器としては、プリンター(殊にレーザービーム方式のもの)、複写機、ファクシミリ、およびプロジェクター装置などを挙げることができる。他に精密なセンサーを搭載する家庭用ロボットなどのシャーシに好適なものである。
【0137】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。
【0138】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
表1に記載成分のうち、無機充填材(C−1成分、C−2成分および本発明以外の無機充填材)を除いた成分であるA成分、B成分およびその他の成分をV型ブレンダーにて混合して混合物を作成した。尚、D成分は、その含有率が2.5重量%となるA成分(PCまたはPPE)との予備混合物を、これらをポリエチレン袋中に入れ手動で撹拌することにより作成した後、他の成分と混合した。スクリュー径30mmのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所TEX−30XSST]を用いて、V型ブレンダーにて混合した混合物を最後部の第1投入口より、また無機充填材(C−1成分、C−2成分および本発明以外の無機充填材)をシリンダー途中の第2供給口よりサイドフィーダーを用いて、計量器を用いて所定の割合となるように供給し、真空ポンプを使用し3kPaの真空下において、シリンダー温度270℃で溶融押出ししてペレット化した。ただし実施例3および6のB成分(FR−2)は80℃に加熱した状態で液注装置(富士テクノ工業(株)製HYM−JS−08)を用いてシリンダー途中(第1供給口と第2供給口との間)から所定の割合になるよう押出機に供給した。得られたペレットを100℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、下記評価項目の説明において特に記載がない限りは、射出成形機[住友重機械工業(株)製 SG−150U]によりシリンダー温度260℃、金型温度70℃で評価用の試験片を作成し、下記の評価方法で評価を行った。
【0139】
(1)難燃性熱可塑性樹脂組成物の機械的特性
▲1▼ 剛性(曲げ弾性率):ASTM D−790に従って曲げ弾性率を測定した(試験片寸法:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)。
▲2▼ 耐熱性 :ASTM D−648に従って1.82MPa荷重にて荷重たわみ温度を測定した。
▲3▼ 燃焼性 :UL規格94Vに従い厚み2.0mmの試験片を用いて燃焼試験を実施した。
▲4▼ 成形収縮率:幅50mm×長さ100mm×厚み4mmの角板を同一の条件で射出成形により成形し23℃、50%RH雰囲気にて24時間放置した後、角板寸法を3次元測定機(ミツトヨ(株)製)により測定し、成形収縮率を算出した。尚、上記角板は、幅50mmおよび厚み1.5mmのフィルムゲートを長さ方向の一端に有する金型キャビティを用いて成形されたものである。したがって長さ方向が流れ方向、および幅方向が流れ方向と直角の方向となる。更に角板の成形条件は次のとおりである。すなわち、射出成形機:住友重機械工業(株)製SG−150U、シリンダ温度:260℃、金型温度:70℃、充填時間:0.8秒、保圧:58.8MPa、保圧時間:15秒、および冷却時間:23秒であった。かかる条件によって良好な成形品が得られた。更に寸法評価用の角板は、15ショットを上記条件により連続成形した後、10ショットを連続して成形し、該成形品の中から5つのサンプルを任意に抽出した。かかるサンプルの平均値を成形収縮率とした。
【0140】
▲5▼ 金型摩耗性の評価:図1に示す成形品を2000ショット成形し、成形前後のピン(材質アルミニウム)の重量を測定し、その重量減少程度を調べた。測定はピンをヘキサンで洗浄した後100℃で3時間熱風乾燥機により乾燥し、デシケータ中で1時間放冷した後電子天秤により重量を測定した。金型に組込む際にはキャビティ表面に露出する部分を除いて潤滑油を塗布し、成形試験後は上記と同様に再度ヘキサン洗浄、乾燥、および放冷した後重量を測定した。評価は以下のように行った。
◎:重量減少が0.05mg以下
○:重量減少が0.05mgを超え0.1mg以下
△:重量減少が0.1mgを超え0.2mg以下
×:重量減少が0.2mgを超える
【0141】
▲6▼ 摺動表面性(動摩擦係数、摩耗ピン削れ半径):評価機器として(株)オリエンテック製往復動摩擦摩耗試験機AFT−15Mを使用した。ポリアセタール樹脂(旭化成(株)製テナックC 4520)より、図3に示すピン状試験片を射出成形により作成した。かかる試験片を試験機の固定試験片ホルダーに装着した。一方実施例および比較例の樹脂組成物より長さ150mm×幅150mm×厚さ2mmの平板状試験片(ゲートは辺の一端より幅40mm×厚み1mmのフィンゲート)を射出成形により作成し、中心部を長さ50mm×幅100mmに切削し、かかる切削試験片を往復動作する台座上に固定した。
【0142】
平板状試験片の成形条件は次のとおりである。すなわち、射出成形機:住友重機械工業(株)製SG−150U、シリンダ温度:260℃、金型温度:40℃(チラーユニットにより冷媒を通してかかる温度を維持した)、充填時間:1.0秒、保圧:58.8MPa、保圧時間:3秒、および冷却時間:12秒であった。
【0143】
かかる平板上試験片は摺動表面性の評価前に(株)東京精密製表面粗さ計サーフコム1400Aを使用し、測定前の平板状試験片の表面粗さ(Ra値:中心面平均値)が1.5μm以下であることを確認した。
【0144】
上記ポリアセタール樹脂製のピン状試験片の先端球面部分をかかる平板状試験片の切削試験片の平面部分に、ピン状試験片の円柱軸方向と平板状試験片の平面法線方向が平行となる状態で負荷荷重9.8Nで接触させた。かかる接触状態で、23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で平面内の1直線上を最大速度25mm/secで片道20mmの距離を1000回往復動作させた。さらにピン状試験片側に接続した容量49Nのロードセルにより摩擦力を測定し、前記負荷荷重との関係より動摩擦係数を算出した。
【0145】
かかる試験後ピン状試験片の摩耗断面を画像解析可能なビデオマイクロスコープ(キーエンス社製)により観察し摩耗により生じた円形断面の半径(μm)を測定し摩耗量の指標とした。尚、平板状試験片はいずれも目視観察から摩耗が認められなかった。
【0146】
(2)難燃性熱可塑性樹脂組成物の組成成分
尚、表1に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
▲1▼A成分
PC:芳香族ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量22,500の芳香族ポリカーボネート樹脂粉末、帝人化成(株)製「パンライトL−1225WP」]
AS:アクリロニトリル−スチレン共重合体[第一毛織(株)製「HF5670」、GPC測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量:95000、アクリロニトリル含有量:28.5重量%、スチレン含有量:71.5重量%]
PPE:ポリフェニレンエーテル樹脂[GEM社製「PPE」]
PS:ポリスチレン樹脂[電気化学工業(株)製「デンカスチロールGP−1」]
【0147】
▲2▼B成分
FR−1:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)[旭電化工業(株)製「アデカスタブFP−500」、TGA5%重量減少温度=351.0℃]
FR−2:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステル[大八化学工業(株)製「CR−741」、TGA5%重量減少温度=335.9℃]
【0148】
▲3▼C−1成分
マイカー1:マスコバイト[山口雲母(株)「A−41」、平均粒子径 約20μm]
▲4▼C−2成分
タルク−1:タルク[勝光山鉱業所(株)製「ビクトリライト タルクR」、
積重率50%粒子径:8.5μm、JIS M8016に従って測定されたハンター白色度:83.8%、pH:9.6、およびモース硬度:1]
タルク−2:タルク[勝光山鉱業所(株)「ビクトリライト SG−A」、積重率50%粒子径:15.2μm、JIS M8016に従って測定されたハンター白色度:90.2%、pH:9.8、およびモース硬度:1]
WSN:ワラストナイト[川鉄鉱業(株)「PH−450」、数平均繊維径:1.6μm、数平均繊維長:6.7μm、モース硬度:4.5]
【0149】
▲5▼本発明以外の無機充填材
マイカ−2:マスコバイト[山口雲母(株)「B−82」、平均粒子径 約80μm]
【0150】
▲6▼D成分
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン[ダイキン工業(株)製「ポリフロンMPA FA500」]
▲7▼E成分
WAX−1:モンタン酸エステル[クラリアントジャパン(株)製「WAX−Eパウダー」]
▲8▼その他の成分
WAX−2:酸変性ポリオレフィン系ワックス[三菱化成(株)ダイヤカルナ30M]
CB:カーボンブラックマスター[越谷化成(株)カーボンブラック40%含有ポリスチレン樹脂マスター]
RU:アクリル系ゴム質重合体[三菱レイヨン(株)製:メタブレンW−450A、コアがn−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体からなるゴム状重合体の2種のゴム成分からなり、2−エチルヘキシルアクリレート35重量%およびn−ブチルアクリレート45重量%であり、シェルがメチルメタクリレート20重量%であるコア−シェル弾性重合体]
【0151】
【表1】
Figure 0004255735
【0152】
上記表から明らかなように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は高剛性、高寸法精度、良好な摺動表面性および良好な難燃性を有し、かつ金型を摩耗させにくい特性を有することがわかる。また上記実施例1〜7の樹脂組成物においてはいずれもギアの組み込みおよび通紙部分を有する通紙ガイドシャーシ成形品を成形し、良好なシャーシ成形品が得られた。
【0153】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、高剛性、難燃性、寸法安定性、摺動表面性を必要とするあらゆる材料に利用可能である。特に光学ユニットシャーシであるレーザービーム式プリンター光学シャーシおよびレーザービーム式プリンターの構造体フレームなど高い寸法精度を要求されるOA機器分野に有効である。かかる用途では、表面性の向上は通紙部分での紙の引っかかりや紙の削れ分の発生が減少し、プリントアウト速度の高速化を可能にする。また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、成形機のスクリューおよび金型摩耗なども少なく成形加工における経済効果も高い。よってその奏する工業的効果は格別なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】[1−A] 実施例において使用した、金型摩耗評価用の板状成形品の形状を示す正面図である。ゲート近傍に配置されたピン部分は円錐状の凹部を形成する。[1−B] 実施例において使用した、金型摩耗評価用の板状成形品の形状を示す側面図である。[1−C] 実施例において使用した、金型摩耗評価用の板状成形品の形状を示す底面図である。
【図2】実施例において使用した、金型摩耗評価用のピンの形状を示す正面図である。先端の円錐部分が金型キャビティ表面に露出し溶融樹脂と接触する。
【図3】[3−A] 実施例において使用した、摺動表面性評価用のピン状試験片の形状を示す上面図である。[3−B] 実施例において使用した、摺動表面性評価用のピン状試験片の形状を示す正面図である。先端の半球部分が対抗する平板状試験片と接触する。
【符号の説明】
1 金型摩耗評価用の板状成形品
2 ピンにより形成された円錐状の凹部
3 ゲート(幅4mm、厚み1.5mm)
4 金型摩耗評価用の板状成形品の長さ(100mm)
5 ピンのゲート部からの距離(10mm)
6 ピンにより形成された円錐状の凹部の径(ピン径)(10mm)
7 中心線(ピン中心は成形品中心線上)
8 ピンにより形成された円錐状の凹部の深さ(ピン高さ)(3mm)
9 金型摩耗評価用の板状成形品の厚み(5mm)
10 金型摩耗評価用の板状成形品の幅(50mm)
11 ピン直径(10mm)
12 ピンの円錐部分(金型キャビティ面露出部分)の高さ(3mm)
21 摺動表面性評価用のピン状試験片本体
22 ピン状試験片ピン部分(先端直径5mmφ半球状)
23 摩耗試験機ホルダー装着のための台座
24 摩耗試験機ホルダー装着のための切り欠き
25 ピン状試験片ピン部分直径(5mm)
26 台座直径(10mm)
27 ゲート(幅1mm、長さ1.5mm)
28 ピン状試験片ピン部分高さ(5mm)
29 台座高さ(14.5mm)
30 切り欠き長さ(10mm)
31 切り欠き代(0.5mm)
32 底面部面取り(C1.0)

Claims (7)

  1. 下記A成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計を100重量%としたとき、B成分は0.1〜30重量%であり、C−1成分はc1重量%およびC−2成分はc2重量%であって、該c1およびc2は下記式(1)、(2)、および(3)の条件を満足する赤燐を含有しない難燃性熱可塑性樹脂組成物。
    (A)芳香族ポリカーボネート(A成分)、スチレン系硬質ポリマー(A成分)、およびポリフェニレンエーテル(A成分)よりなり、その100重量%中A1成分および/またはA3成分が50〜99重量%、A2成分が1〜50重量%である熱可塑性ポリマー(A成分)、
    (B)有機リン化合物からなる難燃剤(B成分)、
    (C−1)平均粒子径10〜30μmのマイカ(C−1成分)(C−2)タルクおよびワラストナイトから選択される少なくとも1種の充填材(C−2成分)
    10≦c1+c2≦50 (1)
    5≦c1≦30 (2)
    0.5≦c2≦20 (3)
  2. 更に含フッ素滴下防止剤(D成分)をA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部あたり、0.05〜2重量部含んでなる請求項1に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 更に一価または多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル(E成分)をA成分、B成分、C−1成分およびC−2成分の合計100重量部あたり、0.01〜2重量部含んでなる請求項1または2のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記有機リン化合物からなる難燃剤(B成分)は、TGAによる、窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が280℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記タルクは平均粒子径0.5〜30μmであり、上記ワラストナイトは平均繊維径が0.5〜20μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  6. 更に下記式(4)、(5)および(6)を満足する請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
    15≦c1+c2≦40 (4)
    8≦c1≦25 (5)
    3≦c2≦15 (6)
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物からなるシャーシ成形品。
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