JP4381637B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびシャーシ成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびシャーシ成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種機構部品を組み込むシャーシ(例えばOA関連機器のシャーシなど)として好適な、剛性、寸法精度、機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、各種駆動部品より発生する振動の影響を受けにくい特性を有し、難燃性にも優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。加えてかかる熱可塑性樹脂組成物より形成されたシャーシ成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、レーザービームプリンタ(LBP)、複写機、ファクシミリ、画像処理機器(イメージスキャナー)、バーコードスキャナー、プロジェクターなどの光学部品を搭載する画像記録装置や、光記録媒体または光磁気記録媒体(例えば、CD(コンパクトディスク)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD−RW、MO、MDなど)の記録再生装置において、各種の樹脂材料がシャーシを形成するのに使用されている。かかるシャーシにおいては従来、高剛性、高強度、耐熱性、難燃性、高寸法精度などが要求されていた。
【0003】
一方、近年これら装置において処理の高速化や情報の高密度化が進展している。例えば、LBPにおいては高速の印刷機能が要求されている。また光記録媒体の記録再生装置などにおいては高密度化が急速に進展し、光学装置により高い精度が必要とされている。これら装置の進展においては装置の駆動部分から発生する振動への対策が重要視されるようになっている。したがって、シャーシを形成する材料においても、従来の高剛性、高寸法精度などの特性に加えて、振動の影響を受けにくい材料が求められている。
【0004】
シャーシなどに適した樹脂組成物としては従来より数多くが提案されている。(i)特開平5−287185号公報には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂にガラス繊維などを高充填した樹脂組成物が開示されている。(ii)特開平6−207189号公報には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂、非円形断面繊維、および板状無機充填材からなる樹脂組成物が開示され、良好な低反り性を達成している。また(iii)特開平9−12733号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂、並びに特定粒径および特定厚みを有するマイカからなる樹脂組成物で形成された光書き込みユニット固定シャーシが開示されている。殊に上記(iii)特開平9−12733号公報に記載された発明は、高剛性と低いそり率およびねじれ率を達成する材料に関するものである。かかる材料はその高剛性により共振周波数が高く、振動の影響を受けにくいという点においても好ましい特性を有する。しかしながら更に改良を求められる場合があった。
【0005】
一方で振動の影響を受けにくいシャーシ材料の提案も既になされている。特開平11−140288号公報には、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる特定の条件を満足する樹脂組成物が開示されている。かかる公報は、その基本的な材料設計としていわゆる制振性能の高いエラストマーを配合してシャーシにおける振動の影響を低減するものである。同様の提案が特開2000−7904号公報において、ポリカーボネート系樹脂においてなされている。
【0006】
しかしながらかかる制振性能の高いエラストマーの配合を基本とする材料設計は、剛性の低下も大きく実際の製品においては十分な効果があげられない場合が多かった。一般に駆動装置の高速化に伴い共振周波数は高くなる傾向にある。エラストマーの配合は剛性の低下による共振周波数の低下を招く。かかる関係から制振性能が向上してもそれを十分にカバーできないためか、制振性能の高いエラストマーの配合は材料自体の制振特性から予測されるほど十分な効果が得られない場合が多かった。
【0007】
更にシャーシ材料には難燃性も必要であるが、かかるエラストマーの存在は難燃性を低下させる。難燃剤の増量は強度などの低下を招く傾向にあった。
【0008】
上述の如く、振動の影響を受けにくいシャーシ材料が求められているものの、未だかかる材料が見出されていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、剛性、寸法精度、機械的特性に優れ、更に各種駆動部品により生ずる振動の影響を受けにくいシャーシ用に好適な熱可塑性樹脂組成物、およびその樹脂組成物より得られたシャーシ成形品を提供することにある。
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、特定の条件を満足する樹脂組成物が、殊に振動の影響を受けにくいシャーシの達成において好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)および(2)の条件を満足するシャーシ成形品に適する熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
25≦(f×η)/ρ3≦100 (1)
f≧10,000 (2)
(ここで、fはASTM D790に従い測定された樹脂組成物の50℃における曲げ弾性率(MPa)、ρは樹脂組成物の50℃における真密度(g/cm3)、およびηは本文中に規定する方法により測定された50℃における損失係数を表す。)
【0012】
更に好適には本発明は、下記式(3)〜(5)の条件を満足する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
30≦(f×η)/ρ3≦80 (3)
11,000≦f≦18,000 (4)
ρ≧1.5 (5)
【0013】
更に好適には本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物が、UL規格94−Vに準拠する1.6mm厚みの試験片の燃焼試験において、燃焼ランクとしてV−1を満足する熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0014】
更に好適には本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂(A成分)20〜74重量%、上記fおよびηを向上させる成分(B成分)1〜20重量%、および強化充填材(C成分)25〜65重量%からなる熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0015】
更に好適には本発明は、上記C成分が、C成分100重量%中、板状充填材(C1成分)を40重量%以上含有してなる上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものであり、より好適には上記C成分が、板状充填材(C1成分)および繊維状充填材(C2成分)からなり、C1成分とC2成分との合計100重量%中、C1成分が45〜90重量%およびC2成分が10〜55重量%である上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものであり、更に好適には上記C1成分はマイカおよびタルクから選択された少なくとも1種の板状充填材である上記樹脂組成物にかかるものであり、特に好適には上記C1成分が白雲母を原料として得られたマイカである上記樹脂組成物にかかるものである。
【0016】
また本発明は好適には、上記A成分は、A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂(a−1成分)、ポリフェニレンエーテル樹脂(a−2成分)および非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)から選択される少なくとも1種の樹脂を50重量%以上含有する上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものであり、より好適にはかかるa−1成分〜a−3成分から選択される少なくとも1種の樹脂を50重量%以上含有するA成分において、更に非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)をA成分100重量%中少なくとも1重量%含んでなる上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものであり、更に好適には上記A成分が、A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂40〜95重量%および非晶性ポリアリレート樹脂5〜60重量%からなる上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0017】
また本発明は好適には、上記B成分がTGAによる5%重量減少温度が250℃以上の有機リン化合物である上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものであり、より好適には上記B成分の融点が50℃以上である上記熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0018】
また本発明は好適には、上記熱可塑性樹脂組成物が、C1成分の板状充填材がA成分中a−1成分、a−2成分、またはa−3成分と溶融混練する際、B成分の共存下において溶融混練され製造された熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0019】
更に本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物より形成されたシャーシ成形品にかかるものである。
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記式(1)および(2)の条件を満足するものである。
25≦(f×η)/ρ3≦100 (1)
f≧10,000 (2)
(ここで、fはASTM D790に従い測定された樹脂組成物の50℃における曲げ弾性率(MPa)、ρは樹脂組成物の50℃における真密度(g/cm3)、およびηは本文中に規定する方法により測定された50℃における損失係数を表す。)
材料がモーターなど各種駆動部品から生ずる振動の影響を受けにくくするためには、(i)曲げ剛性を高くして共振周波数を高くし、駆動部品から生ずる振動の周波数がその部品の共振周波数と重ならないようにする、並びに(ii)生じた振動が速やかに減衰するよう材料の損失係数を増大する、などの方策が必要となる。
【0021】
上記式(1)において、fおよび(1/ρ3)の項は上記(i)の因子を表わすものである。すなわち、曲げ剛性は材料の曲げ弾性率に比例すると共に、厚みの3乗に比例する。同じ質量であれば厚みは密度の逆数倍にすることが可能であるから、曲げ剛性は(1/ρ3)に比例する。一方上記式(1)におけるηは材料の損失係数であり、振動吸収の能力を直接に表わすものである。そして50℃という温度は装置の平均的な内部温度に基づくものである。
【0022】
一方、材料の厚みは限られた範囲内であることが求められ、かかる範囲内で振動の影響を受けにくくするためには、上記式(2)に示す如く10,000以上の曲げ弾性率が必要とされる。
【0023】
尚、ここでηは、インピーダンスヘッドを短冊状試験片の一端に取り付け、機械インピーダンス法により50℃において求められたものである。また、損失係数の算出には正規円法を用いる。具体的な測定装置としては、松下インターテクノ(株)製のMS1018制振性能評価システムが挙げられる。
【0024】
更に本発明において好ましくは、下記式(3)〜(5)の条件を満足する熱可塑性樹脂組成物である。
30≦(f×η)/ρ3≦80 (3)
11,000≦f≦18,000 (4)
ρ≧1.5 (5)
【0025】
ある程度の難燃性を達成するためには、熱可塑性樹脂として芳香環を多く含み比較的比重の高い樹脂が必要となる場合が多い。そのためρの値は高くなり上記式(3)で表わされる範囲が好ましい。更に好ましい範囲は下記式(6)で表わされる。
30≦(f×η)/ρ3≦70 (6)
【0026】
一方で曲げ弾性率は高いことが好ましいが、寸法安定性、成形性などを考慮すると18,000MPaを上限とすることが好ましく、上記式(4)で表わされる範囲を好適に挙げることができる。更に好ましい範囲は下記式(7)で表わされる。
13,000≦f≦18,000 (7)
【0027】
更にρは上記式(5)で表わされる範囲であることが好ましい。これは上記の難燃性と共に、振動の減衰性においてはある程度密度が高いことが有利に働くことによる。一方で上記式(1)および(3)の条件を満足するためにはρは低いことが有利である。したがってより好ましい範囲は下記式(8)で表わされる。
1.5≦ρ≦1.7 (8)
【0028】
更に上記ηの範囲としては0.008〜0.030が好ましく、0.009〜0.028がより好ましく、0.011〜0.025が更に好ましい。ηが上記範囲の場合には、制振性能において十分である。一方でηが高すぎる場合には強度、難燃性、または寸法精度などにおいて不十分となる場合がある。
【0029】
通常シャーシ成形品においては良好な難燃性が求められる場合が多い。したがって、更に本発明の熱可塑性樹脂組成物は、UL規格94−Vに準拠する1.6mm厚みの試験片の燃焼試験において、燃焼ランクとしてV−1を満足するものが好適である。かかる難燃性を達成するためには、熱可塑性樹脂として良好な難燃性を有すると共に、ある程度の難燃剤成分を含んでいることが必要となる。
【0030】
上記の条件を満足する本発明の熱可塑性樹脂組成物は、いかなる構成を取るものであってもよいが、好ましい構成として、熱可塑性樹脂(A成分)20〜74重量%、上記f(曲げ弾性率)およびη(損失係数)を向上させる成分(B成分)1〜20重量%、および強化充填材(C成分)25〜65重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。
【0031】
上記においてより好ましい範囲は次のとおりである。A成分は20〜64重量%が好ましく、25〜57重量%がより好ましく、35〜55重量%が更に好ましい。B成分は2〜20重量%が好ましく、3〜16重量%がより好ましく、3〜14重量%が更に好ましく、5〜12重量%が特に好ましい。C成分は35〜65重量%が好ましく、40〜65重量%がより好ましく、40〜60重量%が更に好ましく、40〜55重量%が特に好ましい。
【0032】
A成分の熱可塑性樹脂としては従来公知の各種熱可塑性樹脂を挙げることができる。振動の影響の受けにくさにおいては、比重の低いオレフィン系樹脂などのビニル系樹脂が有利である。しかしながら難燃性が求められる場合にはやや不利である。一方、難燃性が必要とされる場合には芳香環を含む熱可塑性樹脂、特に主鎖中に芳香環を含む熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、より具体的には芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂(ボリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリアルキレンナフタレート樹脂など)、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などを挙げることができる。更に寸法安定性の点から非晶性ポリマーが好ましく、加えて複雑な形状を成形加工することから良好な成形加工性(射出成形時の流動特性など)も必要とされる。したがって更に好適なA成分としては、A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂(a−1成分)、ポリフェニレンエーテル樹脂(a−2成分)および非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)から選択される少なくとも1種の樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂を挙げることができる。尚、かかるa−1成分〜a−3成分の詳細については後述する。
【0033】
中でも非晶性ポリアリレート樹脂は損失係数ηに優れている。したがってより好適なA成分として、上記a−1成分、a−2成分およびa−3成分から選択される少なくも1種の樹脂を50重量%以上含有する樹脂において、非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)をA成分100重量%中少なくとも1重量%含んでなる熱可塑性樹脂を挙げることができる。かかる熱可塑性樹脂において更にa−3成分はA成分100重量%中、少なくとも5重量%含んでなることがより好ましく、少なくとも10重量%含んでなることが更に好ましく、15重量%含んでなることが特に好ましい。一方非晶性ポリアリレート樹脂のみの場合には成形加工性に劣る場合があるため、上限としては70重量%がより好ましく、60重量%が更に好ましい。
【0034】
より好適には、A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂(a−1成分)40〜95重量%および非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)5〜60重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。より好ましくはa−1成分45〜90重量%およびa−3成分10〜55重量%であり、更に好ましくはa−1成分50〜85重量%およびa−3成分15〜50重量%である。かかる樹脂組成物は、機械特性、制振性、難燃性、寸法精度およびコストを総合的に判断するとポリフェニレンエーテルを主体とする場合よりも有利となる。
【0035】
本発明のB成分は、上記本発明のfおよびηを共に向上させる成分である。かかる点はエラストマータイプの制振材では達成しえない特性である。fの向上のためには、ポリマーの自由体積を減少させて弾性率を向上させることが必要である。したがってB成分はA成分の熱可塑性樹脂と相溶する比較的低分子量の成分であることが好ましい。一方でηの向上のためには、分子運動性を高めて、損失係数を高温側からシフトさせることが必要である。したがってB成分はA成分の熱可塑性樹脂を可塑化する効果を有する成分であることが好ましい。
【0036】
かかるB成分の条件を満足する例としては、具体的には、有機リン化合物やエステル化合物を挙げることができる。有機リン化合物としては、各種亜リン酸エステル、リン酸エステル、およびポリホスファゼンオリゴマーなどを挙げることができる。エステル化合物としては、ポリカプロラクトンなどを挙げることができる。
【0037】
これらの中でも好ましいB成分としては、有機リン化合物を挙げることができる。有機リン化合物の配合は難燃性の点からも有利であり、本発明の目的により合致するためである。更にかかる有機リン化合物としては、TGAによる5%重量減少温度が250℃以上の有機リン化合物が好ましい。ここでTGA(Thermogravimetric Analysis;熱重量解析)の測定は、チッ素雰囲気中で行われたものである。
【0038】
かかる重量減少温度は280℃以上がより好ましく、320℃以上が更に好ましく、330℃以上が特に好ましい。上限としては370℃、好ましくは355℃が挙げられる。上記重量減少温度が低すぎる場合には、かかるB成分を多量に配合した場合耐熱性が低下し、50℃における曲げ弾性率が逆に低下する場合がある。更に好ましくはかかるB成分としては、その融点が50℃以上である有機リン化合物を挙げることができる。上記の中でも特にリン酸エステルが特に好ましい。尚、有機リン酸エステルの詳細については後述する。
【0039】
本発明の上記C成分としては、各種繊維状充填材、板状充填材、および粒状充填材などを挙げることかできる。例えば、タルク、マイカ、ワラストナイト、クレー、酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、炭素短繊維、耐熱有機繊維、金属繊維、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0040】
更に好ましいC成分としては、寸法安定性および制振性の点から、板状充填材(C1成分)を含んでいることが好ましい。より好ましくは板状充填材(C1成分)をC成分100重量%中、40重量%含有してなる場合であり、更に好ましくは少なくとも45重量%含有してなる場合であり、特に50重量%以上含有する場合が好ましい。
【0041】
殊に強度の点から、C成分としては板状充填材(C1成分)と繊維状充填材(C2成分)が組み合わされてなることが好ましい。両者の割合としては、C1成分とC2成分との合計100重量%中、C1成分が45〜90重量%、C2成分が10〜55重量%であることが好ましい。より好ましくはC1成分が45〜80重量%、C2成分が20〜55重量%であり、更に好ましくはC1成分が50〜75重量%、およびC2成分が25〜50重量%である。
【0042】
上記の板状充填材(C1成分)としては、C1成分がマイカおよびタルクから選択された少なくとも1種の板状充填材であることが好ましい。更にC1成分がマイカであることがより好ましく、殊にC1成分は、白雲母を原料として得られたマイカであることが好適である。かかるマイカは剛性に極めて優れ、更に色調において良好な性質を有するためである。マイカおよびタルクの詳細については後述する。
【0043】
一方で繊維状充填材(C2成分)としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、耐熱有機繊維、またはこれらの表面に金属が被覆した金属被覆繊維などを挙げることができる。これらは目的に応じて適宜使用することが可能である。
【0044】
これらにおいて、ガラス繊維は炭素繊維に比較すると剛性も低く、密度も高いため、振動の影響の受けにくさにおいては炭素繊維にやや劣る。しかしながらシャーシには通常難燃性が求められるため、難燃性の点で炭素繊維に対して十分に有利となる。したがって総合的には炭素繊維に比してガラス繊維は有利な点が多い。ガラス繊維は、金属繊維および金属被覆繊維に対しても剛性が高くおよび密度が低い点で好適であり、耐熱有機繊維に対しても剛性の点が好適である。すなわち、繊維状充填材としてはガラス繊維が最も好適である。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記特定式を満足するものである。より好適な態様としてはかかる条件を満足する、特定の構成からなる熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各原料を押出機に供給して溶融混合するなど従来公知の各種方法により製造することが可能である。
【0046】
一方、次の特定の製造方法で得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱安定性に優れるためより好適な態様として挙げられる。かかる点に関して以下に説明する。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、C1成分の板状充填材がA成分中a−1成分、a−2成分、またはa−3成分と溶融混練する際、B成分の共存下において溶融混練され製造されたものが好ましい。更にC2成分の繊維状充填材を含む場合、C1成分と、a−1成分、a−2成分、またはa−3成分と、およびB成分とを含有する溶融状態の樹脂組成物中にC2成分を供給して製造したものがより好適である。
【0048】
かかる製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は熱安定性により優れ、大型のシャーシ成形品、形状が複雑なシャーシ成形品、および薄肉部を有するシャーシ成形品などにおいてより好適である。これらシャーシ成形品は熱安定性の問題が生じやすいためである。
【0049】
更にかかる製法に基づく熱可塑性樹脂組成物においては、上記C1成分は集束処理などがなされていないものがより好ましい。集束処理剤(集束剤)は場合によっては樹脂の熱劣化の原因となる場合があるからである。
【0050】
上記の製造方法による熱可塑性樹脂組成物を得るためには、例えば供給口を2つ以上有する押出機を用いて、第1供給口(スクリュー根元部供給口)でA成分中a−1成分、a−2成分、またはa−3成分と、B成分と、およびC1成分とを混合し、第2供給口(押出機途中)からサイドフィーダーなどを使用して、かかる溶融状態の混合物中にC2成分を供給する方法が挙げられる。A成分中のa−1〜a−3成分以外の成分は、第1供給口において供給することも、下流の第2供給口などにおいて供給することも可能である。しかしながら本発明においては強化充填材の含有率が高いため、より熱安定性を良好とするためにはa−1成分〜a−3成分以外の成分も第1供給口から供給することが適切である。
【0051】
更に本発明において好適な態様であるC成分がC1成分およびC2成分からなる場合の製造方法としては、次の方法がより好適である。すなわち、押出機の第1供給口に集束剤を実質的に含有しないC1成分を供給しC1成分を含有する溶融状態の樹脂組成物を作り、その下流側の第2供給口においてC2成分を供給し、更に溶融混練して製造する方法である。C1成分は全量を第1供給口で供給するだけでなく、一部を第2供給口などの下流側に供給することもできる。しかしながら、第1供給口においてC1成分100重量%中50重量%以上のC1成分を供給することが好ましく、70重量%以上を供給することが更に好ましい。
【0052】
かかる方法によって本発明の熱可塑性樹脂組成物においてより良好な熱安定性が達成される。上記方法は(i)溶融粘度が低い樹脂中で強化充填材の混練時間を長くとることで、無理のない混練で強化充填材の良好な分散を達成する、(ii)上記の無理のない混練により熱劣化を抑制し、以後の熱安定性を良好に保つ、および(iii)比較的充填材量の少ない部分で集束剤の少ないC1成分を供給することで、良好な混練と集束剤の低減による熱安定性の向上が達成される等の利点を有する。
【0053】
より具体的には、まず押出機の第1供給口から、A成分、B成分、およびC1成分を供給する。これらの成分は全てを予備混合して供給する方法、その一部を予備混合して供給する方法、またはそれぞれ独立に供給する方法のいずれの供給方法を取ることも可能である。予備混合には、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの各種混合機を使用することができる。次に押出機の途中からサイドフィーダーなどを用いて、C2成分を溶融状態の樹脂組成物中に供給する。
【0054】
押出機としては、単軸押出機、多軸押出機のいずれも使用可能であるが、好ましくはかみ込み性に優れる多軸押出機である。特に2軸押出機が好ましくまたその方式としては完全かみ合い型の同方向回転型が好ましい。更にベント口が設置されベント吸引する方法か好ましく、特にそのベント孔の長さがスクリュー径(D)に対して、1D〜5Dの長さを有するものが好ましい。このような十分な脱気孔を設けることで樹脂中に混入した酸素を十分に除去することが可能となり、良好な熱安定性を有する強化充填材を高充填した熱可塑性樹脂組成物が達成される。
【0055】
尚、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、押出機ダイスから押出されるストランドは水槽中を通して完全に冷却せず、冷却の際にベルトコンベアなどを使用し途中霧状シャワーによる水冷および/またはエアーによる冷却を行い急激な冷却を避けるのが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物のストランドは極めて剛直であるため、完全に冷却するとペレタイザーによる切断が困難となるためである。
【0056】
かくして得られた熱可塑性樹脂組成物は通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、コールドランナー方式の成形法だけでなく、ランナーレスを可能とするホットランナーによって製造することも可能である。また射出成形においても、通常の成形方法だけでなくガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、超高速射出成形、射出プレス成形、インサート成形、局所高温金型成形(断熱金型成形を含む)等を使用することができる。
【0057】
以上本発明によれば、剛性、寸法精度、機械的特性に優れ、かつ各種駆動部品に由来する振動の影響を受けにくい特性を有し、更に難燃性にも優れた熱可塑性樹脂組成物が提供される。更にこれにより上記樹脂組成物より形成されたシャーシ成形品が提供される。本発明の熱可塑性樹脂組成物は精密な機構部品が搭載されるOA関連機器のシャーシに特に好適である。OA関連機器としては、プリンター(殊にレーザービーム方式のもの)、複写機、ファクシミリ、プロジェクター装置などを挙げることができる。他に精密なセンサーを搭載する家庭用ロボットなどのシャーシに好適なものである。
【0058】
最後に、本発明の構成成分のうち、A成分として好ましい態様である、a−1成分の芳香族ポリカーボネート樹脂、a−2成分のポリフェニレンエーテル系樹脂、およびa−3成分の非晶性ポリアリレート樹脂、並びに他のA成分として使用される熱可塑性樹脂、B成分として好ましい有機リン酸エステル、並びにC1成分として好ましいマイカおよびタルク、およびC2成分として好ましいガラス繊維について説明する。
【0059】
本発明のa−1成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0060】
二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。特に、ビスフェノールAの単独重合体を挙げることができる。
【0061】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0062】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化を防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、ポリオルガノシロキサンを共重合したポリカーボネート−オルガノシロキサン共重合体であってもよい。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0063】
かかる分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性芳香族化合物の割合は、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても同様である。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0064】
界面重縮合法による反応では通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0065】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0066】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。
【0067】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、分子量が10,000未満であると成形品として十分な強度が得られ難く、50,000を超えると成形加工性が低下する。したがって、粘度平均分子量で表して10,000〜50,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものがより好ましく、更に好ましくは14,000〜24,000である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0068】
特に粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物はエントロピー弾性が高く、ジェッティングなどに代表されるレオロジー挙動による成形品の外観不良が生じくい特徴がある。かかる外観不良が生ずる場合には、適切な態様である。更にガスインジェクション成形などにおいてもガス注入量が安定し有利である。
【0069】
より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上のポリカーボネート樹脂との混合物であり、更に好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂との混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの測定法において2ピーク以上の分子量分布を観察できるものが好ましく使用できる。
【0070】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0071】
本発明で使用するa−2成分のポリフェニレンエーテル系樹脂とは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)、および必要に応じてスチレン系重合体、ゴム変性スチレン系重合体を含んだものである。
【0072】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0073】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0074】
上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0075】
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0076】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル系樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0077】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂には、スチレン系重合体、ゴム変性スチレン系重合体を含んだものを使用することもできる。かかるスチレン系重合体および/またはゴム変性スチレン系重合体(以下単にPS系重合体と称する場合がある)とPPE重合体との割合は、これらの合計100重量%中、PPE重合体が少なくとも20重量%以上であることが必要である。PPE重合体は30重量%以上であることがより好ましい。難燃性についてはPPE重合体の割合が増加するほど好ましいものであるが成形加工性に劣る場合があるので、より好ましくはPPE重合体が30〜80重量%の範囲である。
【0078】
ビニル芳香族化合物重合体としては、スチレンのほか、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン等の重合体、及びこれら1種以上と他のビニル化合物の少なくとも1種以上との共重合体、これら2種以上の共重合体が挙げられる。
【0079】
ビニル芳香族化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物類、無水マレイン酸等の酸無水物などが挙げられる。これらの重合体の中で特に好ましい重合体は、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンを含む。)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)である。
【0080】
また、ゴム変性ビニル芳香族化合物重合体に用いるゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ゴム変性芳香族化合物重合体としては、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)が好ましい。
【0081】
更にa−2成分のポリフェニレンエーテル系樹脂には、下記のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物等のエチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂も含むことができる。これらを用いて変性したポリフェニレンエーテル系樹脂を用いた場合には、ビニル化合物系重合体との混合性に優れ、相剥離等のない成形体を提供できる。α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物の例として、特公昭49−2343号公報、特公平3−52486号公報等に記載される無水マレイン酸、フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミツク酸、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸、あるいはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0082】
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物とポリフェニレンエーテル系樹脂との反応は、有機過酸化物の存在下、または非存在下で両者を混合しPPE重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。本発明の難燃性樹脂組成物を製造する際には、あらかじめ無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を結合したポリフェニレンエーテル系樹脂を用いてもよい。また、難燃性樹脂組成物を製造する際に同時に、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を添加することによりポリフェニレンエーテル重合体と反応させる方法でもよい。
【0083】
本発明のa−3成分である非晶性ポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と二価フェノールまたはその誘導体とから得られるものである。かかる非晶性ポリアリレート樹脂は上述の如く、分子のかさ高さに起因して良好な損失係数を有する。一方で非晶性であるため寸法安定性に優れ、難燃性などにおいても良好な特性を有するものである。
【0084】
ポリアリレートの調製に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、二価フェノールと反応し満足な重合体を与えるものであればいかなるものでもよく、1種または2種以上を混合して用いられる。
【0085】
好ましい芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。
【0086】
二価フェノール成分の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(4ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどが挙げられる。これら二価フェノール成分はパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらに二価フェノール成分にエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを併用してもよい。
【0087】
上記の中でも好ましいポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸からなり、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)からなるものが挙げられる。テレフタル酸とイソフタル酸との割合は、テレフタル酸/イソフタル酸=9/1〜9/1(モル比)が好ましく、特に溶融加工性、性能バランスの点で7/3〜3/7が望ましい。
【0088】
他の代表的な非晶性ポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸からなり、二価フェノール成分がビスフェノールAおよびハイドロキノンからなるものが挙げられる。かかるビスフェノールAとハイドロキノンとの割合は、ビスフェノールA/ハイドロキノン=50/50〜70/30(モル比)が好ましく、55/45〜70/30がより好ましく、60/40〜70/30が更に好ましい。
【0089】
本発明におけるポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は約7,000〜100,000の範囲が物性および押出加工性から好ましい。また非晶性ポリアリレート樹脂は界面重縮合法およびエステル交換反応法のいずれの重合方法も選択できる。
【0090】
本発明のA成分として上記a−1成分〜a−3成分のいずれかと共に併用する樹脂としてはスチレン系樹脂を挙げることができる。かかるスチレン系樹脂は良好な成形加工性と、適度な耐熱性および難燃性を有しているため、これら特性のバランスを保つために好ましい熱可塑性樹脂である。
【0091】
かかるスチレン系樹脂は、芳香族ビニル化合物の重合体または共重合体、またこれと必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上を共重合して得られる重合体である。
【0092】
芳香族ビニル化合物としては、特にスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。特に好適なシアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリルが挙げられ、特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0093】
シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
【0094】
上記芳香族ビニル化合物と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0095】
上記スチレン系重合体として具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、およびSMA樹脂などのスチレン系樹脂、並びに(水添)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、(水添)スチレン−イソプレン−スチレン共重合体樹脂などを挙げることができる。尚、(水添)の表記は水添していない樹脂および水添した樹脂のいずれをも含むことを意味する。ここでMS樹脂はメチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体樹脂、AES樹脂はアクリロニトリル、エチレン−プロピレンゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、ASA樹脂はアクリロニトリル、スチレン、およびアクリルゴムから主としてなる共重合体樹脂、MABS樹脂はメチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、MAS樹脂はメチルメタクリレート、アクリルゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、SMA樹脂はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体樹脂を示す。
【0096】
尚、かかるスチレン系樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。
【0097】
これらの中でも、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。また、スチレン系重合体を2種以上混合して使用することも可能である。
【0098】
本発明で使用するAS樹脂とは、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。かかるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。AS樹脂中における各成分の割合としては、全体を100重量%とした場合、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、好ましくは15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%、好ましくは85〜65重量%である。更にこれらのビニル化合物に、前記記載の共重合可能な他のビニル系化合物を混合使用することもでき、これらの含有割合は、AS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0099】
かかるAS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS樹脂の還元粘度としては、0.2〜1.0dl/gであり、好ましくは0.3〜0.5dl/gである。還元粘度は、AS樹脂0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mlに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20〜100秒のものを用いる。還元粘度は溶媒の流下秒数(t0)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求める。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t0)−1}/0.5
【0100】
還元粘度が0.2dl/gより小さいと衝撃が低下し、1.0dl/gを越えると流動性が悪くなる。
【0101】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転位温度が−30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95〜20重量%が好ましく、特に好ましくは92〜50重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0102】
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0103】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の還元粘度は、先に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.7dl/gであるものである。
【0104】
またグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はジエン系ゴム成分に対して、グラフト率(重量%)で表して20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜70%のものである。
【0105】
かかるABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
【0106】
本発明のB成分として使用される有機リン酸エステルとしては、特に下記一般式(1)で表される1種または2種以上のリン酸エステルを挙げることができる。
【0107】
【化1】
Figure 0004381637
【0108】
(但し上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ独立して0または1であり、nは0〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値であり、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導されるものである。)
この中で好ましくは、上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールAから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ1であり、nは0〜3の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルのブレンドの場合は0〜3の平均値であり、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
【0109】
かかる有機リン酸エステルの中でも、ホスフェート化合物としてはトリフェニルホスフェート、ホスフェートオリゴマーとしてはレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ジヒドロキシジフェニルビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が耐加水分解性などにも優れるため好ましく使用できる。更に好ましいのは、耐熱性などの点からレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)である。
【0110】
本発明のC1成分として使用されるマイカとしては、剛性確保の面から、平均粒径が10〜700μmの粉末状のものが好ましい。マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等があり、本発明で使用するマイカとしてはいずれのマイカも使用できるが、白雲母は金雲母や黒雲母に比べてそれ自体が剛直であり、剛性の点では白雲母が好適である。また、金雲母、黒雲母は白雲母に比べて主成分中にFeが多く含まれているためそれ自体の色相が黒っぽくなり、種々の着色をする場合にも白雲母は好適である。また白雲母は、人造雲母(天然金雲母のOH基がFに置換されたもの)が高価であるのに対しても有利である。したがって本発明においては種々の点から白雲母が好適である。
【0111】
また、マイカの製造に際しての粉砕法としては、マイカ原石を乾式粉砕機にて粉砕する乾式粉砕法とマイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水などの粉砕助剤を加えてスラリー状態にて湿式粉砕機で本粉砕し、その後脱水、乾燥を行う湿式粉砕法がある。
【0112】
尚、マイカの平均粒径の下限は、マイクロトラックレーザー回折法により10μm以上であるものが好まれ、一方上限は振動式ふるい分け法により測定された平均粒子径で700μm以下が好ましい。マイクロトラックレーザー回折法は、振動式篩分け法により325メッシュパスが、95重量%以上のマイカに対して行うのが好適である。それ以上の粒径のマイカに対しては、振動式篩分け法を使用するのが一般的である。本発明の振動式篩分け法は、まず振動篩器を用い使用するマイカ粉体100gを目開きの順番に重ねたJIS規格の標準篩により10分間篩分けを行う。各篩の上に残った粉体の重量を測定して粒度分布を求める方法である。振動式篩分け法で測定した重量平均粒径が80〜700μmの範囲が好ましく、さらに150〜400μmの範囲が衝撃強度に優れるためより好ましい。かかる粒径の効果は特に白雲母を原料として得られたマイカにおいて好適に発揮される。700μmを越えるものは稀であり、また成形時のゲート詰まり等の成形不良が生じ易くなるため好ましくない。一方10μm未満の粉砕は現在では極めて多くの工数を要するため経済的でない。
【0113】
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが通常0.01〜10μmのものを使用できる。更にかかるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、更に上述のガラス繊維と同様の各種樹脂や高級脂肪酸エステルなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0114】
本発明のC1成分として使用されるタルクは、層状構造を持った鱗片状の粒子であり、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO2・3MgO・2H2Oで表され、通常SiO2を56〜65重量%、MgOを28〜35重量%、H2O約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFe23が0.03〜1.2重量%、Al23が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2Oが0.2重量%以下、Na2Oが0.2重量%以下などを含有しており、比重は約2.7である。ここで示されるタルクの粒径は、JIS M8016に従って測定したアンドレアゼンピペット法により測定した粒度分布から求めた積重率50%時の粒子径である。その粒子径が0.3〜15μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。またかかるタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、及び容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。更に粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0115】
更にかかるタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の組成物中に混入させない点で好ましい。
【0116】
本発明のC2成分であるガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものでなく、場合によりTiO2、SO3、P25等の成分を含有するものであってもよい。但しより好ましくは、Eガラス(無アルカリガラス)が芳香族ポリカーボネート樹脂に悪影響を及ぼさない点で好ましい。ガラス繊維は溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸条件についても特に限定されるものでない。また断面の形状は一般的な真円状の他に、異形断面形状であってもよい。異形断面形状としては、例えば真円状の繊維を平行に重ね合わせた形状などが代表的である。さらに真円状と異形断面形状の混合したガラス繊維であってもよい。またこれらのガラス繊維は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、高級脂肪酸エステルなど(樹脂にはオリゴマー、ワックスなどを含む)により集束処理することができる。かかる集束処理剤の量としては、集束処理されたガラス繊維100重量%中0.05〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。またシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等で表面処理されたものが好ましい。付着量の測定はJIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」に準じて測定した値である。即ち、ガラス繊維を110℃×1時間乾燥後、その重量を基準とし600℃×30分間加熱した時の重量%で表したものである。
【0117】
また、このガラス繊維は、平均繊維径が1〜25μmが好ましく、5〜17μmがより好ましい。平均繊維径が1〜25μmの範囲では十分な剛性および強度が達成される。
【0118】
C2成分のガラス繊維としては集束処理されたチョップドストランドが好ましい。かかる平均繊維径は1〜25μmが好ましく、5〜17μmがより好ましい。そのカット長は1〜15mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜10mmが更に好ましい。かさ密度は0.4g/cm3以上が好ましく、0.55〜0.9g/cm3がより好ましい。かかるかさ密度の範囲を満足する状態で押出機などの溶融混練機に供給されたガラス繊維はかみ込み性が良好である。したがって、不安定なかみ込みや酸素を含んだ空気を巻き込むことによる熱劣化を十分に低減する。
【0119】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その熱安定性を改良するためリン系熱安定剤などを含むことができる。かかるリン系熱安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェートのようなリン酸エステルまたはトリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、更にその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等が挙げられる。これらのリン系熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかるリン系熱安定剤の割合は、本発明のA成分〜C成分の合計100重量部に対して0.0001〜0.5重量部が好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0120】
フェノール系抗酸化剤としては、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどが挙げられる。フェノール系抗酸化剤の割合は、A成分〜C成分の合計100重量部に対して0.0001〜0.05重量部が好ましい。
【0121】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で各種難燃剤(例えば、ハロゲン化カーボネートオリゴマー等のハロゲン系難燃剤、赤燐系難燃剤、シリコーン系難燃剤、有機アルカリ金属塩系難燃剤など)、各種離型剤(モンタン酸エステル、グリセリンの脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス等)、帯電防止剤(アニオン系界面活性等の、カーボンブラック等の着色剤などを添加してもよい。
【0122】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は本発明の目的を損なわない範囲で難燃剤(ハロゲン系難燃剤、赤リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、有機アルカリ金属塩系難燃剤など)、難燃助剤(フィブリル化PTFEなどのドリップ防止剤、金属酸化物、フェノールノボラック樹脂などのチャー形成樹脂など)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系など)、光安定剤(HALSなど)、離型剤(飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、フッ素化合物、パラフィンワックス、蜜蝋など)、滑剤、着色剤(カーボンブラックや各種の有機染料など)、光拡散剤(アクリル架橋粒子、シリコーン架橋粒子など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などを含むことができる。
【0123】
【発明の実施の形態】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。
【0124】
参考例1−4、5−7、実施例5、6、10−12、比較例1〜5]
表1〜表3に記載の成分を以下の要領でベント式二軸押出機[日本製鋼所(株)製TEX−30XSST]を用い、溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。原料は最後部の第1供給口(表中(1)で表記)および押出機途中の第2投入口(表中(2)で表記)より供給した。かかる押出機は、第1供給口から第2供給口の間にニーディングディスクによる混練ゾーンがあり、その直後に開放されたベント口が設けられていた。ベント口の長さはスクリュー径(D)に対して約2Dであった。かかるベント口の後にサイドフィーダーが設置され第2供給口から供給された原料が溶融された樹脂中に供給された。サイドフィーダー以後に更にニーディングディスクによる混練ゾーンおよびそれに続くベント口が設けられていた。かかる部分のベント口の長さは約1.5Dであり、その部分では真空ポンプを使用し0.5kPaの真空下とした。
【0125】
第1投入口から供給した原料は、A成分、C成分のうち第1供給口から供給するもの、およびB成分と難燃剤などのその他の原料をV型ブレンダーで予備混合したものであった。これらをそれぞれ別々の計量器に入れ、所定の割合になるように3台の計量器を設定し、これらの原料を第一供給口より供給した。また、押出機の途中の第2供給口からは、C成分の残り分を計量器を用いて所定の割合でサイドフィーダーを通して押出機に供給した(ただし、参考例2、3、5、実施例5および比較例4のB成分は80℃に加温し定量液体移送装置にて独立して押出機に所定割合を配合した。)。シリンダー温度270℃、スクリュー回転数は160rpm、吐出量30kg/hでストランドを溶融押出し、ベルトコンベアによりペレタイザーまで搬送した。かかる工程でストランドに水を霧状に噴霧させて冷却した。これによりある程度柔軟な状態でペレタイザーに供給しストランドを切断してペレットを得た。得られたペレットを110℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[住友重機械工業(株)SG−150U]により参考例1−4、7、実施例510〜12および比較例1、2、4および5はシリンダー温度290℃、金型温度70℃、参考例6はシリンダー温度310℃、金型温度90℃、また実施例6、参考例5および比較例3はシリンダー温度270℃、金型温度70℃で評価用の試験片を作成し、下記の評価方法で評価を行った。
【0126】
(1)曲げ弾性率
ASTM D−790に従って50℃環境下での曲げ弾性率を測定した。
【0127】
(2)真密度
ミラージュ貿易(株)電子比重計MD−200Sを用いて50℃環境下の密度を測定した。
【0128】
(3)損失係数
長さ(固定治具幅を除いた有効長)100mm、幅13mm、厚み2mmの短冊状試験片を、複素弾性係数測定装置(ブリュエル&ケア社製3560型マルチアナライザーシステム使用))松下インターテクノ(株)社製)にて、(株)いすゞ製作所製卓上型低温恒温槽装置氷河(η−252R)を用い50℃の環境下での損失係数(放置時間は1時間)を試験片の一端を固定(加振、応答検出)一端を自由にして測定し、損失係数を求めた。
【0129】
(4)耐熱性
ASTM D−648に従って1.813MPa荷重にて荷重たわみ温度を測定した。
【0130】
(5)燃焼性
UL94垂直燃焼試験を実施した(試験片厚み:1.6mm)。
【0131】
(6)熱安定性
150mm×150mm×2mm板状成形品を射出速度50mm/sおよび成形サイクル30秒で50ショット連続成形し、その後計量終了状態でシリンダーを後退させ、10分間放置した後、再度成形を行った。すなわち10分間280℃のシリンダー内で樹脂を滞留させた後の成形品を得た。得られた滞留後成形品の分子量を測定し、ペレットからの分子量(粘度平均分子量)低下を調べた(A成分としてポリカーボネート樹脂を主体とするもののみ実施)。
【0132】
(7)共振周波数測定
上記(3)の損失係数の測定装置と同じ装置および条件により3次共振周波数を測定した。但しサンプルの厚みは約2mm前後で全てのサンプルの重量がほぼ同一となるよう表1および表2記載の厚みにおいて実施した。
尚、表に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
(A成分)
PC:芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製 パンライトL−1225WP 粘度平均分子量22,500)
PAR:ポリアリレート樹脂(ユニチカ(株)製 Uポリマー U100)
ABS:ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製 サンタック UT−61;
還元粘度:0.60dl/g、ゴム平均粒子径0.6μm)
PPE:ポリフェニレンエーテル樹脂(GEM社製 PPE)
SIS:スチレン−水素添加イソプレンブロック共重合体((株)クラレ製ハイブラー5127(VS−1)ガラス転移温度8℃)
【0133】
(B成分)
PFR−1:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)(旭電化工業(株)製「FP−500」;TGA5%重量減少温度=351.0℃)
PFR−2:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学工業(株)製CR−741;TGA5%重量減少温度=335.9℃)
【0134】
(C成分)
(C1成分)
マイカ−1:集束処理されてないマイカ(山口雲母工業所(株)製「B−82」、白雲母、かさ密度:0.22g/cm3、マイクロトラックレーザー法で平均粒子径約170μm、振動式篩分け法で平均粒子径約90μm:乾式粉砕)
マイカ−2:集束処理されたマイカ(山口雲母工業所(株)製「ミカレット41PU5」、白雲母、集束処理剤付着量:約0.8%、かさ密度:0.65g/cm3、マイクロトラックレーザー法で平均粒子径40μm:湿式粉砕)
マイカ−3:集束処理されていないマイカ(林化成(株)製「FM−40」、白雲母、かさ密度:0.30g/cm3・、振動式篩分け法で平均粒子径約250μm:乾式粉砕、pH=6.92(JIS K5101))
タルク:圧縮処理されたタルク((株)勝光山鉱業所製「ビクトリライトTK−RC」、かさ密度:0.80g/cm3、アンドレアゼンピペット法で平均粒子径2μm)
(C2成分)
GF:ガラス繊維(日東紡績(株)製「3PE937」;繊維径:13μm、カット長:3mm、アミノシラン処理−エポキシ/ウレタン系集束ガラス繊維、処理剤付着量:約1.0%、かさ密度:0.80g/cm3
【0135】
(その他の成分)
添加剤−1:トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製「TMP」)
添加剤−2:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイトを主成分とする安定剤(クラリアントジャパン(株)製「サンドスタブP−EPQ PLUS」)
添加剤−3:モンタン酸エステル系離型剤(東洋ペトロライト(株)製「ルザワックスEP」)
添加剤−4:カーボンブラックマスター(カーボンブラック40重量%/粘度平均分子量15,000の芳香族ポリカーボネート樹脂60重量%)
添加剤−5:カーボンブラックマスター(越谷化成工業(株)製「904S」)カーボンブラック40重量%/スチレン系樹脂60重量%
添加剤−6:ドリップ防止剤(ダイキン工業(株)製「ポリフロンMPA FA−500」フィブリル形成ポリテトラフルオロエチレン)
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製「TPP」)
難燃剤:ブロム化ビスフェノールAのカーボネートオリゴマー(帝人化成(株)製「ファイヤガードFG−7000」)
【0136】
【表1】
Figure 0004381637
【0137】
【表2】
Figure 0004381637
【0138】
【表3】
Figure 0004381637
【0139】
上記より、本発明の熱可塑性樹脂組成物はシャーシに要求される振動特性に対しての剛性、重量、振動減衰効果のバランスに優れる材料であることが分かる。すなわち、同じ重量で比較した場合、共振周波数が良好であると共に、損失係数においても優れていることが分かる。また全体が非晶性の樹脂を主体とし、更に異方性の低い板状充填材を比較的多めに含むことから寸法精度などにおいても良好な特性を有するものである。更に本発明の熱可塑性樹脂組成物は特定の製造方法により良好な熱安定性を達成することも分かる。
【0140】
更に上記参考例1および7の樹脂組成においてASTM D256に従って測定したアイゾットノッチ付きインパクト(A法:厚み3.2mm)は、参考例1は40J/m、および参考例7は55J/mであり、白雲母を原料として得られたより粒径の大きな上記マイカ−3を用いたものはより良好な衝撃強度が得られた。
【0141】
上記参考例1−5、および実施例5、6、並びに参考例7、および実施例10〜12の樹脂組成物においてはいずれも光記録媒体ドライブのシャーシ成形品を成形し、良好なシャーシ成形品が得られた。更に実施例5においてはポリゴンミラーおよびシータレンズを搭載する光学シャーシを成形したところ、良好な成形品が得られ、またその印字特性もにじみ等のない良好なものが得られた。
【0142】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、シャーシ等に要求される振動特性および熱安定性において優れるものである。特に剛性を高めることにより共振周波数を高めるものであり、かかる特性は近年駆動系の振動周波数が高速化するシャーシ成形品に対して極めて有効な特性である。更に本発明の熱可塑性樹脂組成物は熱安定性にも優れるものであり、OA機器の品質向上にも極めて好適なものである。したがって本発明の奏する工業的効果は格別なものである。

Claims (9)

  1. A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂(a−1成分)、ポリフェニレンエーテル樹脂(a−2成分)および非晶性ポリアリレート樹脂(a−3成分)から選択される少なくとも1種の樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂(A成分)20〜64重量%、下記一般式(1)で表されるホスフェートオリゴマー(B成分)1〜20重量%、および強化充填材(C成分)35〜65重量%からなり、該C成分はC成分100重量%中、白雲母を原料として得られたマイカ(C1成分)を40重量%以上含有してなり、下記式(1)および(2)の条件を満足し、かつC1成分の白雲母を原料として得られたマイカがA成分中a−1成分、a−2成分、またはa−3成分と溶融混練する際、B成分の共存下において溶融混練され製造されたものであるシャーシ成形品に適する熱可塑性樹脂組成物。
    25≦(f×η)/ρ≦100 (1)
    f≧10,000 (2)
    (ここで、fはASTM D790に従い測定された樹脂組成物の50℃における曲げ弾性率(MPa)、ρは樹脂組成物の50℃における真密度(g/cm)、およびηは本文中に規定する方法により測定された50℃における損失係数を表す。)
    Figure 0004381637
    (但し上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ独立して0または1であり、nは1〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は1〜5の平均値であり、R 、R 、R 、およびR はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導されるものである。)
  2. 更に下記式(3)〜(5)の条件を満足する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    30≦(f×η)/ρ≦80 (3)
    11,000≦f≦18,000 (4)
    ρ≧1.5 (5)
  3. 上記熱可塑性樹脂組成物は、UL規格94−Vに準拠する1.6mm厚みの試験片の燃焼試験において、燃焼ランクとしてV−1を満足するものである請求項1または2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記C成分は、白雲母を原料として得られたマイカ(C1成分)および繊維状充填材(C2成分)からなり、C1成分とC2成分との合計100重量%中、C1成分が45〜90重量%およびC2成分が10〜55重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記A成分は、A成分100重量%中a−3成分を少なくとも1重量%含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 上記A成分は、A成分100重量%中芳香族ポリカーボネート樹脂40〜95重量%および非晶性ポリアリレート樹脂5〜60重量%からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 上記B成分は、TGAによる5%重量減少温度が250℃以上の有機リン化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 上記B成分は、その融点が50℃以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物より形成されたシャーシ成形品。
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