JP6037731B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、樹脂組成物に関する。
ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「PPE」とも言う。)は、寸法安定性、耐熱性、難燃性、耐水性、低吸水性、電気特性及び機械的物性の特徴を生かして、各種の電気・電子製品、事務機器製品や車両関係製品の材料に使用されている。
特に、PPEにガラス繊維と他の板状、鱗片状無機充填材を複合させた樹脂組成物から得られる成形品は、寸法安定性、機械的強度及び剛性が向上する。したがって、樹脂組成物は、寸法精度、機械的強度及び剛性の要求が高い用途の材料として好適に用いられている。例えば、テレビ、ドライブプレイヤー・レコーダー、音響機器、ゲーム機器等の家電製品のハウジングやシャーシ等部品、パーソナルコンピューター、ノート型若しくは携帯型コンピューター複写機、プリンター等事務機器製品のハウジングやシャーシ等部品、水道パイプやポンプ等部品、自動車ヘッドランプや車載オ−ディオ関係部品等に広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
従来から、耐水性の特徴を生かして、ポリフェニレンエーテル系樹脂を水と接触する水周り用途に使用することは知られている。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂を容器向けに改良した技術も提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
特開2003−41131号公報 特開2001−64463号公報 特開2001−100503号公報 特開2008−297476号公報 特開2009−224085号公報
しかしながら、近年、上述した多岐にわたる用途のうち、燃料電池、二次電池をはじめとした、純水又は水溶液と接する場合がある用途においては、従来の機械的強度、剛性、寸法精度の要求に加えて、新たにガスバリア性及び金属イオン溶出性等の要求が出てきている。従来提案されている樹脂組成物を用いた製品においては、ガスバリア性の不足による内液の減少や濃度変化、及び充填材や離型改良剤に起因する金属イオンの溶出による接している液体の導電率が変化したり、析出物が生成したりする等の問題があることが判明している。したがって、例えば、燃料電池の機能を確保するには、純水の導電率上昇が極めて少ないことが望まれる。
特許文献2又は3に記載の樹脂組成物は、ガスバリア性が不足しており、水蒸気の透過による内液の減少や濃度変化、及び製品の機能低下等の恐れがあり、改善の余地がある。一方、特許文献4又は5に記載の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリプロピレン樹脂との混合物に無機充填物を配合したものである。この組成物は、機械的強度、剛性、寸法精度、ガスバリア性が高いものの、無機充填物から溶出した金属イオンによる内液の導電率の変化や析出物の生成に起因する製品の機能低下等の恐れがあり、また、燃えやすく、難燃性が必要な用途に適用するには改善の余地がある。
したがって、純水又は水溶液と接触する用途、例えば、燃料電池、二次電池、プリンター、水処理装置等のタンク、パイプ、継ぎ手、チューブ、カートリッジ、ポンプ筐体、バルブ等においては、機械的強度、剛性、寸法精度、難燃性、ガスバリア性に優れ、金属イオンの溶出が少ない材料が要求されている。
以上のように、水又は水溶液と接触する用途に汎用性を持ち、機械的強度、剛性、寸法精度、難燃性、ガスバリア性、金属溶出性をバランス良く満足した樹脂組成物は、未だ市場に提供されておらず、新しい樹脂組成物の技術開発が高く待ち望まれている。
そこで、本発明は、機械的強度、剛性、寸法精度、難燃性、ガスバリア性に優れ、金属の溶出が少なく、水又は水溶液と接触使用時に、水蒸気透過性による液体の減少や濃度変化が少なく、更に液体の導電率上昇が少なく、析出物の生成を防止でき、製品の性能をより一層発揮し得る樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂と特定の繊維状充填材と鱗片状充填材とを特定の割合で組み合わせ、更には純水に対する金属イオンの溶出量を特定した樹脂組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に示す樹脂組成物である。
[1](A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(B)鱗片状充填材及び(C)繊維状充填材を含有する樹脂組成物であって、
前記(A)ポリフェニレンエーエル系樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂とを主成分とする樹脂組成物であり、
前記スチレン系樹脂が、ポリスチレン(GPPS)、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS、AAS、AES、ACS)、ゴム変性スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MBS)、及びゴム変性スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体(MABS)からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の含有量の合計が20〜120質量部であり、
前記(B)鱗片状充填材の比率が、前記(B)鱗片状充填剤と前記(C)繊維状充填材との合計質量に対して10〜60質量であり、
80℃の純水に浸漬させた時に溶出する金属イオン量が、30ppm以下である樹脂組成物
[2](B)鱗片状充填材が、マイカ及びタルクからなる群より選択される少なくとも1種である[1]に記載の樹脂組成物。
]前記マイカの酸化カルシウム(CaO)、酸化カリウム(K2O)、及び酸化マグネシウム(MgO)含有量の合計が30質量%以下である[2]に記載の樹脂組成物。
]前記(B)鱗片状充填材の酸化カルシウム(CaO)の含有量が1.4質量%以下である[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
]前記(C)繊維状充填材が、ガラス繊維である[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
]前記(C)繊維状充填材が、Eガラス繊維及びARガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
]前記樹脂組成物が、(D)有機リン化合物を更に含む、[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
]前記樹脂組成物が、(E)金属成分を含有しない離型改良剤を更に含む[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
]前記金属イオン量が、カルシウム、カリウム及びマグネシウムの金属イオン合計量である[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
10]JIS K7129B法(モコン法)に準拠する水蒸気透過性が2.0以下である[1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物。
11]ISO 178に準拠する曲げ弾性率が5〜15GPaである[1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
12]ISO 179に準拠するシャルピー衝撃が4.0以上である[1]〜[11]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
13][1]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
14][1]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂製容器。
15][1]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる燃料電池用樹脂製容器。
本発明の樹脂組成物は、機械的強度、剛性、寸法精度に優れ、且つ水又は水溶液と接触使用時に、金属成分の溶出や水蒸気の透過が少ない。また、本発明の樹脂組成物は、機械的強度が高く、水蒸気の透過が少ないので、この樹脂組成物からなる成形体や容器は薄肉軽量化が可能である。
寸法精度が測定される平板を示す上面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、特定の(B)鱗片状充填材及び特定の(C)繊維状充填材を含み、
前記(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の合計量を20〜100質量部を含有し、
当該樹脂組成物を、80℃の純水に浸漬させた時に溶出する金属イオン量が、30ppm以下である。
(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の種類及び含有量は、本実施形態の樹脂組成物における、80℃の純水と接触した際の、金属イオンの溶出に影響する。
80℃の純水へ溶出する金属イオン種としては、充填材の種類によって若干異なるが、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)が挙げられるが、これらの金属種の中で、特にカルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)は、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の構成成分量に比例して溶出傾向があり、したがって、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材中の含有量を制御する為には、本実施形態の樹脂組成物への(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の使用量を調整する必要がある。
一方、シリコン、アルミニウムのイオン溶出量は、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の構成成分量に比例せず、例えば、シリコンを主成分とするマイカ、タルク、ガラス繊維を用いた場合、使用量の増加によりシリコンのイオン溶出量も増加する傾向であるが、その溶出量は前記溶出し易い金属イオン種と比べて、ごく僅かである。
以下、本実施形態の樹脂組成物の各構成成分について、詳細に説明する。
<(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ポリフェニレンエーテル樹脂、又はポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂とを主成分とする樹脂組成物を意味する。本実施形態において、「ポリフェニレンエーテル樹脂、又はポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂とを主成分とする」とは、ポリフェニレンエーテル樹脂、又はポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂とを合計で30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含有することを意味する。
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂を構成するポリフェニレンエーテル樹脂としては、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、ホモ重合体及び/又は共重合体が挙げられる。
Figure 0006037731
式(1)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、第一級又は第二級の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜7のハロアルキル基、炭素数1〜7のアミノアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素オキシ基(ヒドロカルビロキシ基)、及び炭素数1〜7のハロ炭化水素オキシ基(なお、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てている)からなる群より選ばれるいずれかを示す。
ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、ホモ重合体として、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニルフェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロフェニレンエーテル)が挙げられる。また、共重合体としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール化合物との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されている2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)が挙げられる。
これらの中でも、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物が好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂として、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合、その共重合体における好ましい2,3,6−トリメチルフェノールの割合は、15〜40モル%である。
ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)の好ましい範囲は、0.30dL/g〜0.60dL/gの範囲内である。その還元粘度は、より好ましくは、0.35dL/g〜0.55dL/gの範囲であり、更に好ましくは、0.40dL/g〜0.50dL/gの範囲である。
本実施形態においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテル樹脂をブレンドしたものであっても、好ましく使用することができる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂は、その全部又は一部がマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体にて変性されたポリフェニレンエーテル樹脂であってもよい。変性されたポリフェニレンエーテル樹脂における変性化合物の付加率は、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。
無水マレイン酸で変性されたポリフェニレンエーテル樹脂を用いると、後述する(B)鱗片状無機充填材及び(C)繊維状充填材と、樹脂成分との密着性が向上するため、好ましい。
スチレン系樹脂としては、ゴム質重合体存在下又は非存在下で、スチレン系化合物、又は、スチレン系化合物と該スチレン系化合物と共重合可能な化合物とを重合して得られる重合体が挙げられる。
スチレン系化合物としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレンが挙げられる。特にスチレンが好ましい。
スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、以下に制限されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸、フェニルマレイミド等のマレイン酸誘導体が挙げられる。これらの化合物の中で、好ましくはアクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートであり、より好ましくはアクリロニトリルである。これらの化合物は、上述の通り、前記スチレン系化合物とともに使用される。前記スチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用割合は、前記スチレン系化合物との合計量に対して好ましくは60質量%以下、より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは8〜35質量%である。
ゴム質重合体としては、以下に制限されないが、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、共役ジエン化合物とアクリル酸エステル化合物との共重合体、エチレンとアクリル酸エステル化合物との共重合体、ゴム状アクリル酸エステル重合体、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。ゴム質重合体としては、以下に制限されないが、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体、ならびにこれらを部分的に、又は略完全に水素添加したゴム成分が挙げられる。
市場で入手できるスチレン系樹脂の具体例としては、例えば、(ホモ)ポリスチレン(アタクチックポリスチレン)、シンジオタクチックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(ゴム変性ポリスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ABS樹脂やACS樹脂等のゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体、MBS樹脂やMABS樹脂等のゴム変性スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPS)、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS、AAS、AES、ACS)、ゴム変性スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MBS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体(MABS)が好ましい例として挙げられる。特に、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ポリブタジエン変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS)、ポリブタジエン変性ポリスチレン(HIPS)がより好ましい。
スチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
2種以上併用する場合は、スチレン−無水マレイン酸共重合体を併用すると、後述する(B)鱗片状充填材及び(C)繊維状充填材との密着性が向上するため、より好ましい。
スチレン系樹脂が共重合体である場合の、当該共重合体の重合形態については、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、乳化重合等通常の公知の方法が用いられる。
また、別々に共重合した樹脂をブレンドすることも可能である。好ましくは、アルカリ金属や金属化合物等の不純物が少ない塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合法が使用される。特に、塊状重合又は溶液重合が好ましい。
樹脂組成物においては、スチレン系樹脂中のアルカリ金属含有量が少ないほど好ましく、好ましくは1質量ppm以下、より好ましくは0.5質量ppm以下、さらに好ましくは0.1質量ppm以下である。
アルカリ金属の中でもナトリウム及び/又はカリウムの成分の、ポリスチレン樹脂の中の含有量が、好ましくは1質量ppm以下、より好ましくは0.5質量ppm以下、さらに好ましくは0.1質量ppm以下である。
樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、ポリフェニレンエーテル系樹脂に機械的特性(特に靭性)の改良を目的として、熱可塑性エラストマーを配合することも可能である。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ブタジエン部分の一部又は全てが水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂、ゴム状のコア・シェルポリマーなどであり、特にスチレン−ブタジエンブロック共重合体及びブタジエン部分の一部又は全てが水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。
更に、本実施形態の樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、ポリフェニレンエーテル系樹脂と混合して用いることができる樹脂として、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<(B)鱗片状充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、ガスバリア性、寸法精度と剛性とのバランスの観点から、(B)鱗片状充填材を含むことが必須である。
(B)鱗片状充填材としては、鱗片状(板状、層状を含む)であれば、特に制限なく使用できる。(B)鱗片状充填材としては、例えば、マイカ、タルク、フレーク状ガラス、クレー、ワラストナイト等が挙げられる。
(B)鱗片状充填材としては、ガスバリア性、寸法精度、剛性、金属溶出性の観点からマイカ、タルク、フレーク状ガラスを好ましく使用できるが、燃料電池製容器には通常難燃性を求められ、かかる点においてはマイカ、タルクが有利である。また、マイカ、タルクはフレーク状ガラスが高価であるのに対しても有利であるため、より好ましい。従って本発明においては種々の観点からマイカとタルクが好適である。
(B)鱗片状充填材として使用できるマイカとタルク等の天然鉱物由来のものは、天然鉱物が故に代表的化学組成以外の不純物を含むことが多い。不純物としての金属種は充填材の種類によって異なるが、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)等の酸化物が含まれているものが一般的である。これらの金属種の中で、カルシウム(Ca)が最も溶出し易い傾向が多い。したがって、本実施形態の樹脂組成物において、純水との接触による金属イオンの溶出量を抑制するには、酸化カルシウム(CaO)の含有量を抑えることが非常に有効である。
マイカは、雲母、きらら、きらとも呼ばれている。マイカの構成成分中の金属種としては、一般的に、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)が挙げられる。これらの金属種の中で、カルシウム(Ca)、カリウム(K)及びマグネシウム(Mg)が純水に溶出し易く、中でもカルシウム(Ca)が最も溶出し易い。したがって、本実施形態の樹脂組成物において、純水との接触による金属イオンの溶出量を抑制するには、カルシウム(Ca)の含有量を抑えることが非常に有効である。
一般的に、マイカ中の、マグネシウムは酸化マグネシウム(MgO)、カリウムは酸化カリウム(K2O)、カルシウムは酸化カルシウム(CaO)の形で含まれる。
マイカにおいて、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(K2O)及び酸化カルシウム(CaO)の合計含有量は30質量%以下、好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。
最も溶出し易い酸化カルシウム(CaO)の含有量は、1.4質量%以下が好ましく、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
即ち、マイカ中の酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(K2O)及び酸化カルシウム(CaO)の合計量を30質量%以下に特定することにより、樹脂組成物における金属イオン溶出量を20ppm以下に抑制でき、これにより、十分な量のマイカ及びその他の充填材を配合することができ、ガスバリア性、寸法精度、剛性についても優れた効果が得られる。
なお、マイカにおける、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(K2O)及び酸化カルシウム(CaO)の含有量は、蛍光X線分析法により測定することができる。
マイカは、鱗片状のケイ酸アルミニウム系鉱物であり、化学組成や外見上の色の違いにより白マイカ(KAl2AlSi310(OH)2)、黒マイカ(K(Mg,Fe)3AlSi310(OH)2)、金マイカ(KMg3AlSi310(OH)2)、KLi2
Al(Si410)(OH)2(鱗マイカ)、NaAl2(AlSi310)(OH)2(ソーダマイカ)、KMg3(AlSi310)F2(フッ素金マイカ)等がある。これらのマイカは、いずれも壁開性を有している。本実施形態の樹脂組成物は、種類を問わず、いずれのマイカを含有してもよく、1種のみを含有しても、2種以上を含有してもよい。
マイカは、種類ごとに代表的な化学組成が示されているが、天然鉱物が故に代表的化学組成以外の不純物を含むことが多い。例えば、カルシウム(Ca)を化学組成には含まない白マイカ、金マイカであっても、数余%のカルシウムを含む場合がある。また、産地によっては、マイカの種類に関係なく、不純物を多く含むこともある。
例えば、一般的に白マイカは、純水に溶出し易い酸化カルシウム(CaO)の含有量が少ない傾向があり、樹脂組成物が純水と接触する時の金属イオン溶出の観点から、(B)鱗片状充填材としては、白マイカが好ましい。しかし、産地によっては白マイカであっても酸化カルシウム(CaO)を多く含有するものがあり、マイカの種類を特定するよりも、酸化カルシウム(CaO)の含有量を特定する方が好ましい。
(B)鱗片状充填材としてのマイカは、鱗片状(板状、層状を含む)のものであり、平均粒子径が3〜300μmが好ましく、より好ましくは5〜250μm以下、更に好ましくは10〜200μmである。アスペクト比(平均粒子径/平均厚み)10以上が好ましく、より好ましくは20〜300、更に好ましくは30〜200のものが更に好ましい。平均粒子径が300μm以下のマイカは、配合時に分級が少なく、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との均一混合が可能となり、また樹脂組成物のウェルド強度の低下や外観の悪化を小さくすることができ、好ましい。平均粒子径が3μm以上の(B)鱗片状充填材は、樹脂組成物のガスバリア性、寸法精度、剛性に対しての効果が顕著であり、好ましい。一方、アスペクト比が10以上のマイカは、樹脂組成物のガスバリア性、剛性の向上が高く、好ましく、アスペクト比が300以下の(B)鱗片状充填材は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との均一混合が可能となり、また樹脂組成物の物性にムラを生じ難くすることができ、好ましい。
平均粒子径及びアスペクト比は、以下のようにして求めることができる。走査型電子顕微鏡による任意の倍率での対象物の観察写真を用い、無作為に300個以上の粒子についての粒子径の長径及び短径を測定し、該測定した長径及び短径の平均径を平均粒子径とする。さらに、同様に無作為に300個以上の粒子の厚みを測定して、該測定値の平均値より求めた平均厚みを用い、平均粒子径/平均厚みで算出した値をアスペクト比とする。
(B)鱗片状充填材としてのマイカは、市販されているものをそのまま用いることができるが、樹脂組成物中に配合する際に適宜粉砕して用いてもよい。該マイカは、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との親和性を改良する為、例えばシラン系やチタネート系等の種々のカップリング材で表面処理したものも好適に使用できる。
(B)鱗片状充填材として使用するタルクとは、層状構造を持った鱗片状の鉱物であり、化学組成的には含水ケイ酸マグネシウムであり、一般的には4SiO2・3MgO・H2Oで表されており、金属種としてはシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)を含む。
タルクは、マイカと同様、天然鉱物が故に代表的化学組成以外の不純物を含むことが多く、不純物として鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)等の酸化物が含まれているものが一般的である。
これらの金属種の中で、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)が純水に溶出し易く、中でもカルシウム(Ca)が最も溶出し易い。したがって、本実施形態の樹脂組成物において、純水との接触による金属イオンの溶出量を抑制するには、カルシウム(Ca)の含有量を抑えることが非常に有効である。
タルクは、産地により異なるが、通常SiO2を55〜63質量%、MgOを25〜33質量%、灼熱減量(H2O)を5質量%程度から構成されている。その他の少量成分(不純物)としてFe23を0.1〜7質量%、Al23を0.1〜6質量%、CaOを0.1〜4質量%、K2Oを0.5質量%以下、Na2Oを0.5質量%以下等含有している。
タルクにおいて、最も溶出し易い酸化カルシウム(CaO)の含有量は、1.4質量%以下、好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1.0質量%、最も好ましくは0.8質量%以下である。
タルクの平均粒径は、0.5μm〜40μmであり、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。
タルクの平均粒子径は、振動式篩分け法により求めることができる。
<(C)繊維状充填材>
本実施形態の樹脂組成物には、機械的特性、特に耐衝撃性、ウェルド強度、剛性を満足させる為に、(C)繊維状充填材を(B)鱗片状充填材と併用配合することが必須である。使用する(C)繊維状充填材は特に限定されない。
(C)繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維等が好ましく使用できる。炭素繊維は金属イオン溶出性の点で優れている。一方、寸法精度、難燃性及びコストの観点からは、ガラス繊維がより好ましい。
ガラス繊維としては、特に制限はないが、Ca等の溶出し易い金属含有量が少ないARガラスが、金属イオン溶出量が少ない観点で優れているが、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との加工性、密着性の観点から、ARガラスは若干劣っている。
その他のガラス繊維としては、一般的なEガラス、Cガラス、Tガラスがあるが、熱可塑性樹脂に一般的に配合されるEガラス繊維は、入手性、低コスト、及び(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との加工性、密着性の観点から、好ましく使用できる。
ガラス繊維の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂への含有量と、金属イオン溶出性には加成性が成り立つ傾向がある。したがって、本実施形態の樹脂組成物において、純水との接触による金属イオンの溶出量を抑制するには、本実施形態の樹脂組成物への使用量を調整する必要がある。
ガラス繊維は、平均繊維径が5〜25μmであることが好ましく、8〜15μmのものが機械特性ならびに寸法精度のバランスの観点からより好ましい。樹脂組成物中に配合後及び成形品中における平均繊維長が20〜500μmであることが好ましく、30〜300μmがより好ましい。
機械特性と寸法精度とのバランスの観点から、カットファイバーとして市販されている0.1〜0.5mm程度の繊維長のガラス繊維、ミドルファイバーとして市販されている0.1mm以下の繊維長の粉状ガラス繊維が好ましく用いられる。
これらの各種ガラス繊維は、多くのガラスメーカーから入手できる。
(C)繊維状充填材は、そのまま使用することもできるが、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂との密着性を高めるための表面処理剤及び取扱い性を向上させるための集束剤で処理してから使用することが好ましい。
集束剤は、通常、フィルム形成剤、界面活性剤、柔軟剤、帯電防止剤、潤滑剤等より構成される。収束剤としては、ウレタン系、酢酸ビニル系、エポキシ系、アクリル系、ポリオレフィン系が挙げられる。(C)繊維状充填材としては、ウレタン系収束剤、酢酸ビニル系収束剤にて処理されたガラス繊維を用いることが好適である。
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂成分とガラス繊維との親和性或いは界面接合力(密着性)を改良する目的で、表面処理剤として、種々のカップリング剤を使用することができる。カップリング剤は、通常はシラン系やチタネート系、クローム系等の従来公知のカップリング剤を含む。特に、エポキシシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤を含むものが好ましい。
(C)繊維状充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
表面処理されたガラス繊維は、未処理品に比べ、本実施形態の樹脂組成物を純水に浸漬したときの金属イオン溶出量を抑制でき、好ましいが、各種カップリング剤、集束剤、界面活性剤等における、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム等の金属含有量が多い場合には、著しく金属イオン溶出量が増加することがあるため使用上制限がある。
<各成分の割合について>
本実施形態の樹脂組成物は、上記(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(B)鱗片状充填材、及び(C)繊維状充填材の必須成分を特定の割合で含むものである。かかる割合について次に説明する。
(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の合計含有量が20〜120質量部であり、好ましくは25〜110質量部、より好ましくは30〜100質量部である。
(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の合計含有量が20質量部以上では、樹脂組成物の機械的強度、剛性が十分であり、好ましい。一方、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の合計含有量が100質量部以下では、金属イオン溶出が少なく、押出混練の安定性が良く、樹脂組成物の機械的強度、難燃性、外観の低下が少なく、好ましい。
更に(B)鱗片状充填材の比率が、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の合計質量に対して10〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜55質量%、更に好ましくは20〜50質量%である。樹脂組成物のガスバリア性、寸法精度の観点から、(B)鱗片状充填材の比率が10質量%以上であるのが好ましく、一方機械的強度、特に耐衝撃性やウェルド強度の観点から、(B)鱗片状充填材の比率が60質量%以下であるのが好ましい。
<(D)有機リン化合物>
本実施形態の樹脂組成物は、(D)有機リン化合物(以下「成分(D)」とも記す。)を更に含んでいてもよい。成分(D)は難燃剤として用いられるものであり、代表的な化合物の例としては、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物が挙げられる。
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5’−トリ−メチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェートが挙げられる。
成分(D)としては、下記式(I)又は式(II)に示す芳香族縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
Figure 0006037731
Figure 0006037731
式中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を示し、n1及びn2は、それぞれ独立して0〜2の整数を示し、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立して1〜3の整数を示す。
成分(D)としては、従来市販されている材料も適用でき、例えば、大八化学(株)製 商品名CR−741、CR−747、CR733S、PX−200が挙げられる。
式(I)で示される縮合リン酸エステルは、上記式(II)で示される縮合リン酸エステルに比較すると、樹脂組成物の製造工程中の溶融混練において、分解や脱水反応による黒色異物が発生し難く、また最終的に得られる樹脂組成物の吸水性が小さくなるため好ましい。
さらに、式(I)で示される縮合リン酸エステルは、他のリン酸エステルを使用した場合に比べて、最終的に得られる樹脂組成物の表面硬度、セルフタッピング特性が優れたものとなるため好ましい。
成分(D)としてより好ましくは、上記式(I)におけるQ1、Q2、Q3及びQ4が、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、R1及びR2が水素、R3及びR4がメチル基であり、nの範囲が1〜3、特にnが1であるリン酸エステルを50モル%以上含有する縮合リン酸エステルである。成分(C)としてさらに好ましくは、酸価が0.1未満の縮合リン酸エステルである。
ここで、酸価とは、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値である。
縮合リン酸エステルの酸価が0.1未満の場合には、樹脂組成物の成形時に金型が腐食され難く、該化合物が分解し難いために成形加工時のガスの発生が少なく、更には樹脂組成物の電気特性が維持される。
ホスファゼン化合物としては、下記式(V)に示す環状及び直鎖状の構造を有するものが挙げられるが、環状構造化合物が好ましく、n=3及び4の6員環及び8員環のフェノキシホスファゼン化合物が特に好ましい。
Figure 0006037731
式(V)中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、nは3以上の整数である。
さらに、ホスファゼン化合物は、フェニレン基、ビフェニレン基、及び下記式(VI)で示される基から選ばれる架橋基によって架橋されていてもよい。
Figure 0006037731
式(VI)中、Xは、−C(CH32−、−SO2−、−S−、−O−、から選ばれるいずれかを示す。
一般式(VI)で示されるホスファゼン化合物は、公知の化合物であり、例えばJames E. Mark, Harry R. Allcock, Robert West著、”Inorganic Polymers”Pretice−Hall International, Inc., 1992, p61−p140に記載されている。
これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、例えば、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報及び特開平11−181429号公報等に開示されている。
例えば、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物の合成については、H.R.Allcock著、“Phosphorus−NitrogenCompounds“,Academic Press,(1972)に記載の方法に準じて行うことができ、ジクロルホスファゼンオリゴマー(3量体62%、4量体38%の混合物)1.0ユニットモル(115.9g)を含む20質量%クロルベンゼン溶液580gに、ナトリウムフェノラートのトルエン溶液を撹拌下で添加し、その後、110℃で4時間反応させ、精製することにより、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物が得られる。
ホスファゼン化合物は、当該化合物中のリン含有量が通常のリン酸エステル化合物よりも高いため、少量の添加でも十分な難燃性を確保でき、耐加水分解性や耐熱分解性にも優れているため、樹脂組成物の物性低下が抑えられ、リン系難燃剤としては特に好ましい化合物である。
さらに、酸価が0.5以下のホスファゼン化合物は、難燃性、耐水性及び電気特性の面からより好ましい。
(D)有機リン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態の樹脂製容器を形成する樹脂組成物において、(D)有機リン化合物の含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
<(E)金属成分を含有しない離型改良剤>
本実施形態の樹脂製容器を形成する樹脂組成物には、離型性を改良する為に(E)金属成分を含有しない離型改良剤を更に含有することが好ましい。(E)離型改良剤は、成形において離型の改良効果があれば、特に制限なく使用できる。離型改良材として一般的に使用されている脂肪酸化合物も好適に使用できる。ただし、脂肪酸化合物の中の脂肪酸金属塩は、成分中の金属イオンが液体との接触において溶出することがある為、(E)離型改良剤として使用しない。(E)離型改良剤は、成分中に金属を含有しないものである。(E)金属成分を含有しない離型改良剤の具体例として、ポリオレフィン化合物、脂肪酸化合物(ただし、脂肪酸金属塩を除く)、パラフィンオイル、アマイドワックス等が挙げられるが、熱安定性の観点から、ポリオレフィン化合物が特に好ましい。
ポリオレフィン化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体(例えば、エチレン共重合体)等が挙げられ、これらの部分酸化物又はこれらの混合物も含まれる。中でも、離型性改良の観点から、ポリエチレン、及びエチレン共重合体が好ましい。
ポリエチレン及びエチレン共重合体として、以下に制限されないが、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、並びにエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体及びエチレン−エチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
上記の中でも、離型性の向上及び剥離不良の防止の観点より、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及びα−エチレン共重合体が好ましい。ここで、前記α−エチレン共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体であることが好ましい。また、より好ましくは、低密度ポリエチレン及び非晶性α−エチレン共重合体である。ここで、前記非晶性α−エチレン共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体であることが好ましい。
ポリオレフィン化合物は、メルトフローレイト(MFR)が、好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは0.2〜30g/10分である樹脂を用いる。なお、本明細書におけるメルトフローレイトは、ASTM規格のD1238に規定され、190℃、2.16kgfの条件で測定したものを採用する。
上記の共重合体には、その性能に影響を与えない範囲で、その他の成分がさらに共重合されていてもよい。
エチレンとプロピレン又はブテンとの成分比率は、特に限定するものではないが、プロピレン又はブテン成分は、5〜50モル%の範囲が一般的である。これらは一般に市販されているものを入手でき、例えば三井化学(株)製「タフマー(商品名)」を適用できる。
脂肪酸化合物(ただし、脂肪酸金属塩を除く)として、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等が挙げられる。具体例として、一般的に市販され、入手できる、エチレンビスステアロアマイド(EBS)、モンタン酸エステルワックス等が好適に使用できる。
(E)金属成分を含有しない離型改良剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用した方が離型性の改良が更に向上し、より好ましい。離型性改良、コスト、成形性の観点から、ポリオレフィン化合物と脂肪酸化合物との併用が特に好ましい。
本実施形態の樹脂製容器を形成する樹脂組成物において、(E)金属成分を含有しない離型改良剤の含有量は、0.005〜10質量%であることが好ましく、0.008〜8質量%であることがより好ましく、0.01〜5質量%であることが更に好ましい。
<他の添加剤>
本実施形態に用いる樹脂組成物は、本発明に所望の効果を損なわない範囲内で、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、以下に制限されないが、例えば、衝撃改良剤、可塑剤、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃助剤、充填剤等が挙げられる。前記安定剤としては、亜リン酸エステル類、ヒンダードフェノール類、アルカノールアミン類、酸アミド類、ジチオカルバミン酸金属類、無機硫化物及び金属酸化物類よりなる群から選択される1種以上が使用可能である。
<金属成分の溶出性>
本実施形態の樹脂組成物は、80℃の純水に浸漬させたときに溶出する金属イオン量が30ppm以下である。
溶出する金属種としては、主に、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)等が挙げられる。これらの金属種の中でも、カルシウム(Ca)、カリウム(K)及びマグネシウム(Mg)は、純水に溶出し易い傾向があり、本実施形態の樹脂組成物の金属イオン溶出を抑制するには、カルシウム、カリウム及びマグネシウムの含有量は少ないことが非常に効果的である。
したがって、本実施形態の樹脂組成物を80℃の純水に浸漬させたときに溶出する金属イオンの濃度は、溶出する上記金属種のカルシウム(Ca)、カリウム(K)及びマグネシウム(Mg)の金属イオン合計量として算出した。
これらの合計が、30ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましい、20ppm以下であることが更に好ましい。
なお、金属化合物の溶出物は、上記金属種の化合物に限定されるものではない。
純水とは、化学式H2Oで表され、金属イオン等の不純物を含有しないものであれば、制限なく使用できる。
なお、本実施形態の樹脂組成物を用いた成形体を実際の製品として使用する際に、接触する液体が上述した純水に限定されないことは言うまでもない。純水には、超純水(和光純薬製)を用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物の純水への溶出量は、具体的には、テフロン(登録商標)製容器を用い、超純水100質量部、樹脂組成物のペレット20質量部を投入して浸漬し、テフロン(登録商標)容器を密閉し、80℃で48時間放置し、熱水抽出を行う。48時間後、室温まで冷却後、抽出液をシリンジで吸引し、セルロース製メンブランフィルター(細孔径0.02μm)でろ過して金属量測定用サンプルを得、当該サンプルを用いて測定することができる。
金属イオンの測定はイオンクロマト分析法(IC)により行うことができる。イオンクロマトグラフ分析計としては、ダイオネクス製 ICS−2000型を用いることができ、標準物質を用いる検量線法により定量することができる。
金属イオンの溶出量は、カルシウム、カリウム、マグネシウムの合計金属イオン溶出量より求め、100質量部へ、樹脂組成物100質量部を浸漬したと想定した濃度として計算し、以下の計算式により算出した。
金属溶出量(ppm)
=イオンクロマト測定結果濃度(ppm)×[純水量(100質量部)/サンプル量(20質量部)]
なお、測定時に用いた装置及び条件を以下に示す。
カラム:ダイオネクス製 CG16(ガードカラム)+CS16(分離カラム)
溶離液:30mM/Lメタンスルホン酸溶液
流速 :1.2mL/min
導入量:50μL
検出器:導電率検出器
温度 :カラム40℃、検出器35℃
本実施形態の樹脂組成物は、金属イオンの溶出量(Ca、K、Mgの合計量)が30ppm以下であることが必要であり、より好ましくは25ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。金属元素の溶出量が30ppm以下であることにより、接した液体の導電率上昇による反応阻害を防止でき、金属元素に由来する析出物の生成を抑制できる。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、上述した各成分を、加熱下で溶融混合することにより製造することができる。
前記溶融混合する際の溶融混合機としては、好ましくは押出機、より好ましくは二軸押出機、さらに好ましくはニーディングブロックを含むスクリュー構成を適宜選択可能な二軸押出機を用いることができる。
具体的な製造方法としては、全ての成分を押出機の第1供給口から供給して溶融混合して得ることもできるが、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂及び/又は(D)有機リン化合物を第1供給口から供給して混練し、その後の第2供給口以降で(B)鱗片状充填材及び(C)繊維状充填材を供給して溶融混合することが好ましい。
まず第1の押出機で(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、あるいはさらに(D)有機リン化合物を混練して樹脂組成物の中間原料ペレットを得、続いて、第2の押出機で、第一の押出機で得た中間ペレット、及び(B)鱗片状充填材、(C)繊維状充填材、その他の添加剤を溶融混練する2段階溶融混合押出法も好適である。第2の押出機において、さらに(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂及び/又は(D)有機リン化合物を混合してもよい。
(B)鱗片状充填材、(C)繊維状充填材の配合方法は特に制限されないが、押出加工時の剪断や熱による劣化を抑制するためにも、第1及び/又は第2の押出機中で、第1工程として(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂及び/又は(D)有機リン化合物を溶融混練した後に、第2工程として(B)鱗片状充填材及び(C)繊維状充填材を添加することが好ましく、特に本実施形態に用いる鱗片状や繊維状の充填材は第2工程の押出機シリンダーの途中から供給することが充填材の破砕を抑制し、樹脂組成物の特性を高めるためには好ましい。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらの例によって限定されるものではない。実施例及び比較例において使用した成分は以下のものである。
<成分(A):ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(A−1)PPE樹脂(ポリ2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
極限粘度[η]が0.45(30℃、クロロホルム中)であるポリ2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(A−2):GPPS樹脂(一般用ポリスチレン)
PSJポリスチレン 685(PSジャパン製)。
(A−3):HIPS樹脂(ハイインパクトポリスチレン)
ポリスチレン CT60(ペトロケミカル社製)。
(A−4):AS樹脂(スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂)
商標 スタイラックAS T9701(旭化成ケミカルズ製)。
<成分(B):鱗片状充填材>
(B−1):白マイカ
製品名 BHTマイカ200D(西日本貿易製)
ロットA:CaO含有量:0.04質量%、MgO含有量:1.2質量%、K2O含有量:9.6質量%
(B−2):白マイカ
製品名 BHTマイカ200D(西日本貿易製)
ロットB:CaO含有量:0.1質量%、MgO含有量:4.2質量%、K2O含有量:8.6質量%
(B−3):金マイカ
製品名 スゾライト・マイカ200KI(西日本貿易製)
CaO含有量:1.5質量%、MgO含有量:21.9質量%、K2O含有量:8.0質量%
(B−4)マイカ:マイカ(B−1)と、マイカ(B−3)を1:1で混合したマイカ
(B−5)タルク:竹原化学(株)製、製品名 ハイトロンA
CaO含有量:0.2質量%、MgO含有量:31.0質量%、K2O含有量:0.05質量%
(B−6)タルク:(株)福岡タルク製、福岡篠栗産タルク
CaO含有量:3.8、質量%、MgO含有量:24.8質量%、K2O含有量:0.04質量%
なお、MgO含有量及びCaO含有量は、蛍光X線分析法により測定した。
<成分(C):繊維状充填材>
(C−1):Eガラス繊維
製品名 T−849(日本電気硝子製)
13μm/3mmチョップドストランド。
(C−2):ARガラス繊維
製品名 (日本電気硝子製)
13μm/3mmチョップドストランド。
<成分(D):有機リン化合物>
(D):リン酸エステル系化合物
製品名CR741(大八化学工業社製)
主成分がビスフェノールA芳香族縮合リン酸エステル化合物、酸価0.1以下。
ここで、酸価は、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値とした。
<成分(E):金属成分を含有しない離型改良剤>
(E−1):エチレン−プロピレン共重合体(EP)
タフマーP0680(三井化学製)。
(E−2):エチレンビスステアロアマイド(EBS)
カオーワックスEB(花王製)。
<成分(E´):金属成分を含有する離型改良剤>
(E−1´):ステアリン酸マグネシウム
ダイワックスM(大日精化工業製)。
[実施例1〜11、及び比較例1〜7]
表1に示す組成の各成分を、温度250〜320℃、スクリュー回転数300rpmに設定した二軸押出機(ZSK−25:WERNER&PFLEIDERE社製)にて溶融混練し、樹脂製容器用の樹脂組成物ペレットを得た。
この樹脂組成物ペレットを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃にてISO−7391−2に準じて射出成形を行い材料物性評価用のテストピースを作製した。
更にこの樹脂組成物ペレットを用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃にて、平板(100×100×1mm及び150×150×2mm)を同一の条件で作製した。
得られた材料物性評価用のテストピース及び平板を用いて、以下の方法により各種試験を行なった。評価結果を表1に示す。
1)金属イオンの溶出試験
テフロン(登録商標)製容器を用い、超純水100質量部、樹脂組成物のペレット20質量部を投入して浸漬し、テフロン(登録商標)容器を密閉し、80℃で48時間放置し、熱水抽出を行う。48時間後、室温まで冷却後、抽出液をシリンジで吸引し、セルロース製メンブランフィルター(細孔径0.02μm)でろ過して金属量測定用サンプルを得、当該サンプルを用いて測定することができる。
金属イオンの測定はイオンクロマト分析法(IC)により行うことができる。イオンクロマトグラフ分析計としては、ダイオネクス製 ICS−2000型を用いることができ、標準物質を用いる検量線法により定量することができる。
金属イオンの溶出量は、カルシウム、カリウム、マグネシウムの合計金属イオン溶出量より求め、100質量部へ、樹脂組成物100質量部を浸漬したと想定した濃度として計算し、以下の計算式により算出した。
金属溶出量(ppm)
=イオンクロマト測定結果濃度(ppm)×[純水量(100質量部)/サンプル量(20質量部)]
なお、測定時に用いた装置及び条件を以下に示す。
カラム:ダイオネクス製 CG16(ガードカラム)+CS16(分離カラム)
溶離液:30mM/Lメタンスルホン酸溶液
流速 :1.2mL/min
導入量:50μL
検出器:導電率検出器
温度 :カラム40℃、検出器35℃
導電率(μs/cm)
また、得られた金属量測定用サンプルを用いてホリバES51型(セル定数:1cm-1)にて測定し、25℃における導電率に換算した。
3)ガスバリア性(水蒸気バリア性)
平板(100×100×1mm)を用いて、JIS K7129B法(モコン法)に準拠して水蒸気バリア性を評価した。
試験機: モコン社製 PERMATRAN W3/31
雰囲気: 40℃、90%RH
4)曲げ弾性率
材料物性評価用のテストピースを用い、ISO 178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
5)シャルピー衝撃強度
材料物性評価用のテストピースを用い、ISO 179に準拠してシャルピー衝撃強度を測定した。
6)引張ウェルド強度
ISO−7391−2に準じて射出成形を行い材料物性評価用のテストピースを使用し、テストピースの両側に設けたサイドゲートから充填させテストピース中央部にウェルドを作製した。得られたテストピースをISO 527に準拠して引張ウェルド強度を測定した。
7)難燃性
得られた樹脂組成物のペレットから、難燃性評価用の試験片を作製した。該試験片の厚み1.5mmで、UL94に基づいて難燃性(燃焼性)を評価した。
8)寸法精度(平面度)
平板(150×150×2mm)を用いて、平面度を評価した。なお、成形時に用いた金型はゲート径2mmのピンゲート(1点)であった。図1に示すように、試験片上の15点の位置から最小二乗法により仮想平面を設定し、3次元測定器にて方向のズレを測定して平面度を測定した。
平面度(mm)=(Maxズレ値−Minズレ値)
○:平面度 1.0mm以下
△:平面度 1.1〜1.9mm
×:平面度 2.0mm以上
9)押出混練性
樹脂組成物を実施例に示す方法により溶融混練する際の押出性に関して、以下の判断基準により判断した。
○:何ら問題なく30分間の押出が可能。
△:30分間の押出において、数回のストランド切れ発生あり。
×:30分間の押出において、10回以上のストランド切れ発生あり。
Figure 0006037731
本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性、金属溶出性、剛性、寸法精度、機械的強度、及び難燃性に優れ、各特性においてバランスを兼ね備えており、各種の電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、建材、その他各種外装材や工業用品等の用途に広範囲に利用され、特に水や溶液と接触して使用される製品に好適である。例えば、二次電池、燃料電池、プリンター、水処理装置のタンク、パイプ、継ぎ手、チューブ、カートリッジ、ポンプ筐体、バルブ等に好適に使用できる。

Claims (15)

  1. (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(B)鱗片状充填材及び(C)繊維状充填材を含有する樹脂組成物であって、
    前記(A)ポリフェニレンエーエル系樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂とを主成分とする樹脂組成物であり、
    前記スチレン系樹脂が、ポリスチレン(GPPS)、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS、AAS、AES、ACS)、ゴム変性スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MBS)、及びゴム変性スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体(MABS)からなる群より選ばれる1種以上であり、
    前記(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、(B)鱗片状充填材と(C)繊維状充填材の含有量の合計が20〜120質量部であり、
    前記(B)鱗片状充填材の比率が、前記(B)鱗片状充填材と前記(C)繊維状充填材との合計質量に対して10〜60質量であり、
    80℃の純水に浸漬させた時に溶出する金属イオン量が、30ppm以下である樹脂組成物。
  2. (B)鱗片状充填材が、マイカ及びタルクからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記マイカの酸化カルシウム(CaO)、酸化カリウム(K2O)、及び酸化マグネシウム(MgO)含有量の合計が30質量%以下である、請求項に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(B)鱗片状充填材の酸化カルシウム(CaO)の含有量が1.4質量%以下である、請求項の1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記(C)繊維状充填材が、ガラス繊維である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(C)繊維状充填材が、Eガラス繊維及びARガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物が、(D)有機リン化合物を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記樹脂組成物が、(E)金属成分を含有しない離型改良剤を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記金属イオン量が、カルシウム、カリウム及びマグネシウムの金属イオン合計量である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. JIS K7129B法(モコン法)に準拠する水蒸気透過性が2.0以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  11. ISO 178に準拠する曲げ弾性率が5〜15GPaである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  12. ISO 179に準拠するシャルピー衝撃が4.0以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂製容器。
  15. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる燃料電池用樹脂製容器。
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