JP2012530782A - 化学的に制御されたレドックス状態を用いたタンパク質のリフォールディング - Google Patents

化学的に制御されたレドックス状態を用いたタンパク質のリフォールディング Download PDF

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Abstract

非哺乳類細胞中で発現された、2.0g/L以上の濃度で存在するタンパク質をリフォールディングする方法を、開示する。該方法は、2.0g/L以上の濃度で効率的なフォールディングが実現される条件を実現する、チオール対比およびレドックス緩衝液強度を特定することを含み、商業的規模をはじめとする一定範囲の容量で用いることができる。

Description

本願は、本明細書に参考として組み込まれた2009年6月22日出願の米国特許仮出願第61/219,257号の利益を主張するものである。
本発明は、一般に、高濃度のタンパク質をリフォールディングすることに関し、より詳細には、タンパク質を2.0g/L以上の濃度で多量にリフォールディングすることに関する。
組換えタンパク質は、細菌および酵母などの非哺乳類細胞をはじめとする様々な発現系で発現することができる。細菌などの原核細胞における組換えタンパク質発現に関わる難題は、発現されたタンパク質が、典型的には封入体と呼ばれる難溶性の細胞内沈殿物中で沈殿することである。封入体は、細菌宿主細胞が組換えタンパク質を高レベルの発現では適切にフォールディングできない結果、形成され、その結果として、それらのタンパク質は不溶となる。このことは、大型の複合体の原核生物発現または真核生物源のタンパク質配列に特にあてはまる。間違ってフォールディングされた組換えタンパク質の形成によって、組換えられた大型の複合タンパク質を高い効率で生成させる細菌発酵の商業的利用が、ある程度制限されている。
細菌などの非哺乳類発現系における、商業的に実現可能なレベルのタンパク質組換え発現の出現以来、細菌封入体から正しくフォールディングされたタンパク質を得るための、様々な方法が開発されている。これらの方法は、一般に、典型的には封入体中に沈殿するタンパク質を発現させて、細胞を溶解し、封入体を回収し、その後、変性剤または界面活性剤、そして場合により還元剤を含む溶解緩衝液に封入体を可溶化させて、タンパク質をほどき、封入体をほとんど、または全く構造のない個々のタンパク質鎖に解体する、という手順に従う。続いて、生物活性形態への復元を支援するリフォールディング緩衝液で、タンパク質鎖を希釈または洗浄する。システイン残基がタンパク質のアミノ酸一次配列内に存在する時には、多くの場合、ジスルフィド結合を正しく形成させる環境(例えば、レドックス系)で、リフォールディングを達成する必要がある。
ジスルフィドを2個以上含む分子などの複合分子の典型的なリフォールディング濃度は、2.0g/L未満、より典型的には0.01〜0.5g/Lである(Rudolph & Lilie, (1996) FASEB J. 10:49-56)。このように、これらの典型的な生成物濃度ではタンパク質のリフォールディングに大容量が必要となるため、抗体、ペプチボディまたは他のFc融合タンパク質など質量の大きい複合タンパク質を工業的製造規模でリフォールディングするには、重大な限界があり、それは工業界が直面する共通問題となっている。これらのタイプのタンパク質のリフォールディング濃度を限定する一要因は、対合を間違えたジスルフィド結合の形成であり、それにより、そのような形態のタンパク質が凝集する傾向が高まる可能性がある。工業的規模のタンパク質製造に取り組む場合には、材料が大容量でプールの寸法も大きくなるため、工程で1ステップ以上排除または簡略化されれば、かなりの時間および供給源を節減することができる。
タンパク質のリフォールディングは、これまではより高濃度で実証されてきたが、リフォールディングされたタンパク質は、大幅に、より小さな分子量であるか、またはジスルフィド結合を1個または2個しか含まない、複合性の低い分子であった(例えば、Creighton, (1974) J. Mol. Biol. 87:563-577参照)。加えて、そのようなタンパク質のリフォールディング工程は、洗浄剤を基剤とするリフォールディング化学を利用するか(例えば、Stockel et al., (1997) Eur J Biochem 248:684-691参照)、または高圧のフォールディング方策を用いた(St John et al., (2001) J. Biol. Chem. 276(50):46856-63)。抗体、ぺプチボディおよび他の大型タンパク質などのより複雑な分子は、一般に洗浄剤のリフォールディング条件に従いにくく、典型的にはカオトロピックなリフォールディング溶液中でリフォールディングする。これらのより複雑な分子は、多くの場合、2個を超えるジスルフィド結合、多くの場合8〜24個のジスルフィド結合を有し、多重鎖タンパク質となってホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成する可能性がある。
本開示まで、これらのタイプの複合分子は、高濃度、即ち2.0g/L以上の濃度でリフォールディングすることができず、小規模の場合、とりわけ工業的規模でない場合には、意味のある程度に効率的であった。本開示の方法は、それとは対照的に、高濃度で小規模または大規模(例えば、工業的規模)に実施して、適切にリフォールディングされた複合タンパク質を提供することができる。タンパク質を高濃度かつ大規模にリフォールディングする能力は、リフォールディング操作そのものの効率を上昇させることにつながるだけでなく、追加の設備および人材を必要としないため時間および経費の節減も意味する。したがって、高濃度で存在するタンパク質をリフォールディングする方法は、タンパク質製造工程の効率を上昇させ、そして経費を節減することにつながる。
Rudolph & Lilie, (1996) FASEB J. 10:49-56 Creighton, (1974) J. Mol. Biol. 87:563-577 Stockel et al., (1997) Eur J Biochem 248:684-691 St John et al., (2001) J. Biol. Chem. 276(50):46856-63
(a)0.001〜100の範囲を有する最終的なチオール対比および2mM以上のレドックス緩衝液強度を含むレドックス成分と、(i)変性剤;(ii)凝集抑制剤;および(iii)タンパク質安定化剤のうちの1種以上と、を含むリフォールディング緩衝液にタンパク質を接触させて、リフォールディング混合物を形成させること;(b)リフォールディング混合物をインキュベートすること;ならびに(c)リフォールディング混合物からタンパク質を単離すること、を含む、非哺乳類発現系中に発現された、2.0g/L以上の濃度で、ある量で存在するタンパク質をリフォールディングする方法。
様々な実施形態において、レドックス成分は、0.001以上で100以下、例えば、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50の範囲内の最終的なチオール対比、および2mM以上、例えば、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM以上、5mM以上、7.5mM以上、10mM以上、または15mM以上のチオール対緩衝液強度を有し、チオール対緩衝液強度は、効果的には最大100mMを限界とする。範囲に関して言い換えれば、チオール緩衝液強度は、混合物を形成するのに、2〜20mM、例えば、2.25mM〜20mM、2.5mM〜20mM、2.75mM〜20mM、3mM〜20mM、5mM〜20mM、7.5mM〜20mM、10mM〜20mM、または15mM〜20mMであってもよい。
リフォールディング緩衝液の一実施形態において、リフォールディング緩衝液は、トリス緩衝液中に尿素、アルギニン塩酸、システインおよびシスタミンを含む。更なる実施形態において、該成分は、リフォールディング緩衝液中に、実施例3に記載される割合で存在する。
リフォールディング緩衝液の別の実施形態において、リフォールディング緩衝液は、トリス緩衝液中に尿素、アルギニン塩酸、グリセロール、システインおよびシスタミンを含む。更なる実施形態において、該成分は、リフォールディング緩衝液中に、実施例4に記載される割合で存在する。
幾つかの実施形態において、タンパク質は、最初は封入体などの非天然の難溶性形態で、ある量で存在する。あるいはタンパク質は、可溶性形態で、ある量で存在する。タンパク質は組換えタンパク質であってもよく、またはそれは内在性タンパク質であってもよい。タンパク質は、抗体または多量体タンパク質などの複合タンパク質であってもよい。別の実施形態において、タンパク質は、Fcドメインに融合または結合したタンパク質などのFc−タンパク質結合体である。
非哺乳類発現系は、細菌発現系または酵母発現系であってもよい。
リフォールディング緩衝液中の変性剤は、尿素、グアニジニウム塩、ジメチル尿素、メチル尿素およびエチル尿素からなる群より選択することができる。リフォールディング緩衝液中のタンパク質安定化剤は、アルギニン、プロリン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、多価アルコール、グリセロール、スクロース、ソルビトール、グルコース、トリス、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよびオスモライトからなる群より選択することができる。凝集抑制剤は、アルギニン、プロリン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、多価アルコール、グリセロール、スクロース、ソルビトール、グルコース、トリス、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよびオスモライトからなる群より選択することができる。チオール対は、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、システイン、シスチン、システアミン、シスタミンおよびβ−メルカプトエタノールからなる群より選択される成分を少なくとも1種含むことができる。
様々な実施形態において、精製は、混合物をプロテインAまたはプロテインG樹脂などのアフィニティー分離マトリックスと接触させることを含むことができる。あるいはアフィニティー樹脂が、混合方式の分離マトリックスまたはイオン交換分離マトリックスであってもよい。様々な態様において、インキュベーションは、有酸素条件下または無酸素条件下で実施することができる。
生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1aは、5mM緩衝液強度の影響を示す図である。 生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1bは、7.5mM緩衝液強度の影響を示す図である。 生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1cは、10mM緩衝液強度の影響を示す図である。 生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1dは、12.5mM緩衝液強度の影響を示す図である。 生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1eは、15mM緩衝液強度の影響を示す図である。 生成物種の分布に対するチオール対比およびレドックス緩衝液強度の影響を示す一連のプロットである。図1fは、20mM緩衝液強度の影響を示す図である。 固定されたチオール対比およびチオール対緩衝液強度の下での化学種分布に対する通気の程度の影響を示す一連のプロットである。 6g/Lで実施され、1Lおよび2000Lで実施された記載の方法の実施形態を用いて最適化された、化学的に制御された無酸素リフォールディングのアナリティカルオーバーレイである。
関連の文献は、様々なタンパク質リフォールディング操作を最適化する際に、リフォールディング緩衝液のチオール対比を意図的に変動させたが、結果として、チオール緩衝液強度が、広範囲の強度で知らずに変動したことを示唆している(例えば、Lilie, Schwarz & Rudolph, (1998) Current Opinion in Biotechnology 9(5):497-501、およびTran-Moseman, Schauer & Clark (1999) Protein Expression & Purification 16(1);181-189参照)。一研究において、チオール対比と緩衝液強度との関連性が、融解球状を形成する単純な単鎖タンパク質であるリゾチームに関して研究された(De Bernardez et al., (1998) Biotechnol. Prog. 14:47-54)。De Bernardezの研究は、一方向反応モデルの反応速度のみを考慮したモデルに関してチオール濃度を説明した。しかし、ほとんどの複合タンパク質は、説明が容易でない可逆的な熱力学的平衡に支配されている(例えば、Darby et al., (1995) J. Mol. Biol. 249:463-477参照)。抗体、ペプチボディおよび他のFc融合タンパク質など、多数のジスルフィド結合を含有する大型の多重鎖タンパク質の場合には、より複雑な挙動が予測される。本開示まで、タンパク質製造の効率に関係する複合タンパク質に関して、チオール緩衝液強度と、チオール対比化学と、タンパク質濃度とで、特異的な関連性が提供されなかった。その結果、高度に濃縮されたタンパク質をリフォールディングする能力は、大部分が非効率的または達成不可能な目標となっており、特に工業的規模では、タンパク質製造の障害となっていた。
本開示より以前には、チオール対比およびチオール対緩衝液強度の独立した影響についての特異的対照研究は、複合タンパク質に関して開示されていなかった。本明細書に記載される通り、チオール対緩衝液強度をチオール対比およびタンパク質濃度と協同して制御することにより、タンパク質のフォールディング操作の効率を最適化および向上させることができ、高濃度、例えば2g/L以上のタンパク質のリフォールディングを達成することができる。
このように、一態様において、本開示は、高タンパク質濃度、例えば2.0g/Lを超える濃度でのタンパク質リフォールディングを促進するレドックスチオール対比の化学作用の特定および制御に関する。該方法は、抗体、ペプチボディおよび他のFc融合タンパク質などのFcドメインを含むタンパク質をはじめとする単純タンパク質および複合タンパク質(例えば、2〜23個のジスルフィド結合もしくは250個を超えるアミノ酸残基を含むタンパク質、または20,000ダルトンを超える分子量を有するタンパク質)など、任意のタイプのタンパク質に適用することができ、実験室規模(典型的にはミリリットルまたはリットル規模)、パイロットプラント規模(典型的には数百リットル)、または工業的規模(典型的には数千リットル)で実施することができる。ペプチボディおよび他のFc融合体として知られる複合分子の例は、米国特許第6,660,843号、米国特許第7,138,370号および米国特許第7,511,012号に記載されている。
本明細書に記載される通り、タンパク質を2.0g/L以上の濃度で、様々な規模でリフォールディングする、再現性のある方法を提供するために、チオール緩衝液強度とレドックスチオール対比との関連性を研究および最適化した。数式を推定して、個々のレドックス対成分の比および強度の正確な計算を可能にし、緩衝液のチオール対比および緩衝液のチオール強度のマトリックスを実現した。この関係が確立されると、チオール緩衝液強度およびチオール対比が、相互作用して、リフォールディング反応における、得られた生成物関連種の分布を定義していることを、系統的に実証することができた。
しかし、緩衝液のチオール対比は、全反応での系全体のチオール対比を決定する際の一要素にすぎない。フォールディングされていないタンパク質のシステイン残基も反応体であるため、緩衝液のチオール強度が、タンパク質濃度の増加に比例して変動して、最適な系のチオール対比を実現する必要がある。このように、緩衝液のチオール強度がチオール対比と相互に関連することを実証したことに加えて、緩衝液のチオール強度が全反応でのタンパク質濃度に関係することも示された。緩衝液のチオール強度および系のチオール対比の最適化を、複合タンパク質などの特定のタンパク質に合わせて行い、システインの誤対合を最小限に抑え、なおかつリフォールディングを高濃度で促進することができた。
I.定義
本明細書における「a」および「an」という用語は、他に明記されない限りは、1以上を意味する。
本明細書で用いられる「非哺乳類発現系」という用語は、非限定的に、大腸菌(E. coli.)などの細菌をはじめとする原核生物、および酵母など、哺乳類以外の有機体から得られた細胞の中でタンパク質を発現するための系を意味する。多くの場合、非哺乳類発現系は、対象とする組換えタンパク質を発現するのに用いられるが、他の例では、対象とするタンパク質は、非哺乳類細胞により発現される内在性タンパク質である。本開示の目的では、該当するタンパク質が内在性か、または組換え体かに関わらず、タンパク質が非哺乳類細胞中で発現されるならば、その細胞は「非哺乳類発現系」とする。同様に、「非哺乳類細胞」は、哺乳類以外の有機体から得られた細胞であり、その例としては、細菌または酵母が挙げられる。
本明細書で用いられる「変性剤」という用語は、タンパク質と接触させると、タンパク質の二次および三次構造の一部または全てを除去する能力を有する任意の化合物を意味する。用語、変性剤は、変性に影響を及ぼす特定の化学的化合物に加え、変性に影響を及ぼす特定の化合物を含む溶液も指す。開示された方法で使用されうる変性剤の例としては、非限定的に、尿素、グアニジニウム塩、ジメチル尿素、メチル尿素、エチル尿素およびその混合物が挙げられる。
本明細書で用いられる「凝集抑制剤」という用語は、2種以上のタンパク質の間の相互作用を崩壊および低下または排除する能力を有する任意の化合物を意味する。凝集抑制剤の例としては、非限定的に、アルギニン、プロリン、およびグリシンなどのアミノ酸;グリセロール、ソルビトール、スクロース、およびトレハロースなどのポリオールおよび糖;ポリソルベート−20、CHAPS、トリトンX−100(Triton X-100)、およびドデシルマルトシドなどの界面活性剤;ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
本明細書で用いられる「タンパク質安定化剤」という用語は、タンパク質の反応平衡状態を変動させることで、タンパク質の本来の状態を改善するか、または有利にする能力を有する任意の化合物を意味する。タンパク質安定化剤の例としては、非限定的に、グリセロールまたはソルビトールなどの糖および多価アルコール;ポリエチレングリコール(PEG)およびα−シクロデキストリンなどのポリマー;アルギニン、プロリン、およびグリシンなどのアミノ酸塩;トリス、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムなどのオスモライトおよび特定のホフマイスター塩(Hoffmeister salts);ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
本明細書で用いられる「Fc」および「Fc領域」という用語は、互換的に用いられ、ヒトもしくはヒト以外(例えば、マウス)のCH2およびCH3免疫グロブリンドメインを含むか、またはヒトもしくはヒト以外のCH2およびCH3免疫グロブリンドメインと少なくとも90%同一である2ヶ所の近接領域を含む、抗体のフラグメントを意味する。しかしFcは、Fc受容体と相互作用する能力を有する必要はない。例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれるWilliam E. Paul編、Fundamental Immunology, Second Edition,209, 210-218(1989)のHasemann & Capra,"Immunoglobulins: Structure and Function"を参照されたい。
本明細書で用いられる「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、互換的に用いられ、ペプチド結合により連結した少なくとも5個の天然または非天然由来アミノ酸の任意の鎖を意味する。
本明細書で用いられる「単離された」という用語および「精製する」は、互換的に用いられ、該当するタンパク質を含む試料中に存在しうる異種要素、例えば、タンパク質またはDNAなどの生体高分子の量を、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%、またはそれを超えて減少させることを意味する。異種タンパク質の存在は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動法および染色、ならびに/またはELISAアッセイをはじめとする任意の適切な方法によりアッセイすることができる。DNAおよび他の核酸の存在は、ゲル電気泳動法および染色、ならびに/またはポリメラーゼ連鎖反応法を利用したアッセイをはじめとする任意の適切な方法によりアッセイすることができる。
本明細書で用いられる「複合分子」という用語は、(a)20,000を超える分子量であるか、または250個を超えるアミノ酸残基を含み、(b)天然形態でジスルフィド結合を2個以上含む、任意のタンパク質を意味する。しかし複合分子が、多量体を形成している必要はない。複合分子の例としては、非限定的に、抗体、Fcドメインを含むペプチボディおよび他のキメラ分子、ならびに他の大型タンパク質が挙げられる。ペプチボディおよび他のFc融合体として知られる複合分子の例は、米国特許第6,660,843号、米国特許第7,138,370号および米国特許第7,511,012号に記載されている。
本明細書で用いられる「ペプチボディ」という用語は、場合によりリンカーを通して、Fcドメインと一緒に結合した生物活性ペプチドを1個以上含むポリペプチドを指す。ペプチボディの例については、米国特許第6,660,843号、米国特許第7,138,370号および米国特許第7,511,012号を参照されたい。
本明細書で用いられる「リフォールディング」という用語は、例えば、発現条件の結果、または意図的な変性および/もしくは還元の結果として、インビトロまたはインビボのいずれかで、天然の二次または三次構造の一部または全てが除去されているタンパク質に、その二次および三次構造を再導入する過程を意味する。このように、リフォールディングされたタンパク質とは、天然の二次または三次構造の一部または全てが再導入されているタンパク質である。
本明細書で用いられる「緩衝液のチオール対比」という用語は、式1に定義される通り、リフォールディング緩衝液中で用いられる還元レドックス種と酸化レドックス種との関係により定義される:
Figure 2012530782
本明細書で用いられる「緩衝液チオール強度」、「チオール対緩衝液強度」、および「チオール対強度」という用語は、互換的に用いられ、式2において、即ち、一価チオールの全濃度として定義され、ここで全濃度は、還元種と、酸化種濃度の2倍との合計である。
Figure 2012530782
チオール対比とチオール対緩衝液強度との関連性を、式3および式4に記載する。
Figure 2012530782
Figure 2012530782
本明細書で用いられる「レドックス成分」という用語は、チオールと、タンパク質の別のチオールまたはシステイン残基との可逆的交換を促進するような化学剤を含む任意のチオール反応性化学剤または溶液を意味する。そのような化合物の例としては、非限定的に、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、システイン、シスチン、システアミン、シスタミン、β−メルカプトエタノールおよびそれらの混合物が挙げられる。
本明細書で用いられる「可溶化」という用語は、塩、イオン、変性剤、洗浄剤、還元剤および/または他の有機分子を、該当するタンパク質を含む溶液に添加し、それによりタンパク質の二次および/または三次構造の一部または全てを除去して、タンパク質を溶媒に溶解する過程を意味する。この過程は、高温、典型的には10〜50℃、より典型的には15〜25℃、および/またはアルカリ性pH、例えばpH7〜12の使用を包含することができる。可溶化は、70%ギ酸などの酸の添加により達成することもできる(例えば、Cowley & Mackin (1977) FEBS Lett 402:124-130参照)。
「可溶化されたタンパク質」は、タンパク質の二次および/または三次構造の一部または全てが除去されているタンパク質である。
「可溶化プール」は、該当する可溶化されたタンパク質に加えて、タンパク質を可溶化するために選択された塩、イオン、変性剤、洗浄剤、還元剤および/または他の有機分子を含む、ある量の溶液である。
本明細書で用いられる「無酸素条件」という用語は、機械的または化学的手段による混合物の意図的な通気を行わずに実施される、任意の反応またはインキュベーション条件を意味する。酸素が天然に存在し、酸素を系に追加することを意図して系への酸素導入を行わなかったという条件である限り、無酸素条件下で酸素が存在し得る。無酸素条件は、例えば、ヘッドスペースの圧力を限定することにより反応溶液への酸素移入を制限すること、保持容器に含まれる空気もしくは酸素への暴露をなくすこと、もしくはそれを制限すること、空気もしくは酸素のオーバーレイ(overlay)、工程の規模調整の際に物質移動の原因となる特別な設備(accommodation)がないこと、または反応系における酸素の存在を助長するガススパージングもしくは混合を行わないことにより実現することができる。無酸素条件は、化学処理により酸素を系から意図的に制限もしくは除去すること、不活性気体もしくは真空によるヘッドスペースのオーバーレイもしくは加圧、またはアルゴンもしくは窒素などのガススパージングによっても実現することができ、その結果、反応混合物中の酸素濃度が低下する。
本明細書で用いられる「非天然」および「非天然形態」という用語は、互換的に用いられ、Fcドメインを含むタンパク質など、対象とするタンパク質に関連して用いられる場合には、タンパク質が、タンパク質の生物活性を評価するよう設計された適切なインビボまたはインビトロアッセイで生物活性を示すタンパク質の形態で見出される、形成された構造属性が少なくとも一つ欠如していることを意味する。非天然形態のタンパク質に欠如しうる構造特性の例としては、非限定的に、ジスルフィド結合、四次構造、崩壊した二次もしくは三次構造、または適切なアッセイでタンパク質を生物学的不活性にする状態を挙げることができる。非天然形態のタンパク質は、凝集体を形成し得るが、そうである必要はない。
本明細書で用いられる「非天然の難溶性形態」という用語は、Fcドメインを含むタンパク質など、対象とするタンパク質に関連して用いられる場合には、タンパク質が、(a)タンパク質の生物活性を評価するよう設計された適切なインビボもしくはインビトロアッセイで生物活性を示し、そして/または(b)可溶性になるために化学処理などの処理を必要とする凝集体を形成している、タンパク質の形態で見出される、形成された構造特性を少なくとも一つ欠如している任意の形態または状態を意味する。この用語は、具体的には、封入体、例えば、組換えタンパク質が非哺乳類発現系で発現される際に見出される封入体の中に存在するタンパク質を包含する。
II.理論
プール中に2.0g/L以上の濃度で存在する微生物由来分子をリフォールディングすることは、様々な理由で、主として反応容量が関連して減少し、そして工程の処理能力が上昇するため、有利となる。工程の規模調整の見地から、有酸素条件を必要としない条件下でリフォールディングすることが有利であり、そのような条件は、例えば、一定した、もしくは間欠的なスパージングにより、空気もしくは酸素のヘッドスペースのオーバーレイを実行すること、ヘッドスペースを加圧すること、または効率の高い混合を利用することにより、実現することができる。系の酸素濃度は、物質移動に関連するため、リフォールディング反応の規模調整は、タンクの幾何学的配置、容量、および混合変化などの因子のため、かなり困難となる。更に、酸素はタンパク質中のジスルフィド結合形成における直接の反応体でない場合があるため、物質移動係数に直接結びつく可能性は低い。これは、反応の規模調整を更に複雑にする。それゆえ、無酸素で化学的に制御されたレドックス系が、タンパク質をリフォールディングするのに好ましい。そのような条件の例を、本明細書に提供する。
所定のタンパク質のための最適なリフォールディング化学は、フォールディング/酸化状態を最大にして、望ましくない生成物種、例えば、凝集体、未形成のジスルフィド架橋(例えば、システイン対の減少)、間違ったジスルフィド対合(ミスフォールディングにつながる可能性がある)、酸化されたアミノ酸残基、脱アミド化アミノ酸残基、間違った二次構造、および生成物関連の付加物(例えば、システインまたはシステアミン付加物)を最小限に抑える、注意深いバランスを表している。このバランスを実現する際に重要となる一つの因子が、リフォールディング系のレドックス状態である。レドックス状態は、非限定的に、タンパク質に含有されるシステイン残基の数、リフォールディング溶液中のレドックス対化学剤(例えば、システイン、シスチン、シスタミン、システアミン、還元型グルタチオンおよび酸化型グルタチオン)の比率および濃度、可溶化緩衝液から持ち越された還元剤(例えば、DTT、グルタチオンおよびβ−メルカプトエタノール)の濃度、混合物中の重金属レベル、ならびに溶液中の酸素の濃度をはじめとする多くの因子により影響を受ける。
チオール対比およびチオール対緩衝液強度を、例示としての還元剤および酸化剤としてそれぞれシステインおよびシスタミンを用いながら、下記の式1および式2に定義する。タンパク質濃度および可溶化から持ち越された還元剤と相まって、これらの量は、チオール対比とチオール対緩衝液強度とのバランスを実現する際の因子となりうる。
図1に移るが、この図は、複雑な二量体タンパク質に関して、逆相HPLC分析により視覚化された生成物関連種の分布に対する、チオール対比およびチオール緩衝液強度の影響を示す。図1a〜1fにおいて、点線は、酸化されたアミノ酸残基、単鎖種、および安定した混合ジスルフィド中間体を含むタンパク質種を表し、破線は、誤対合または間違って形成されたジスルフィドタンパク質種、およびジスルフィド結合が一部形成されなかったタンパク質種を表す。実線は、適切にフォールディングされたタンパク質種を表す。図1a〜1fは、一定の6g/Lタンパク質濃度では、チオール対緩衝液強度が上昇するに連れ、同等の化学種分布を実現するのに必要なチオール対比も上昇しなければならないことを実証している。例えば、図1に示されるとおり、緩衝液強度が5mMから10mMに上昇すれば、バランスのとれたチオール対比は、同等の化学種分布を実現するのに約2倍上昇することになる。これは、系全体のチオール対比に応じて、可溶化から持ち越された還元剤の緩衝作用が向上することに大きく起因する。レドックス緩衝液強度が低いと、系全体の制御がかなり困難になる。タンパク質濃度およびタンパク質配列に含まれるシステインの数も、系の制御に必要な最小チオール対緩衝液強度に関係する。タンパク質により変動する特定点未満では、タンパク質のチオール濃度が、レドックス対の化学を圧倒して、再現性のない結果をもたらす可能性がある。
図1に示された結果において、リフォールディング溶液のチオール対比を、より還元されているように意図的に設定した場合には、得られた生成物分布は、還元された生成物種をより多く生成するようにシフトしている(破線)。リフォールディング溶液のチオール対比をより低く、またはより酸化されているように意図的に設定した場合には、得られた生成物分布は、酸化された残基、単鎖形態、および安定した混合ジスルフィド中間体種をより多く生成するようにシフトしている(点線)。最適なチオール対比およびチオール対緩衝液強度を選択する能力により、所望のフォールディングされたタンパク質形態の収率を最適化することができる。この最適な収率は、リフォールディングプール中の所望のフォールディングされたタンパク質種の重量もしくは収率を最大限にすることにより、または得られた望ましくない生成物関連種を次の精製ステップで最も容易に除去する形態に意図的にシフトすることにより、実現することができ、示された方法で工程の収率または純度に全般的利益が与えられる。
レドックス成分であるチオール対比およびチオール対緩衝液強度の最適化は、各タンパク質で実施することができる。一つのマトリックスまたは一連の多要因マトリックスを評価して、所望の化学種の収率および分布を最適化する条件に合わせて、リフォールディング反応を最適化することができる。各成分を少なくとも3種の濃度またはpHレベルの範囲で変動させ、他のパラメータ全てを一定に保持しながら、レドックス化学、チオール対比、チオール対緩衝液強度、インキュベーション時間、タンパク質の濃度およびpHを、完全要因または一部要因マトリックスで系統的に評価する、最適化スクリーニングを設定することができる。標準的な多変量統計ツールを用いて、完了した反応を、収率および生成物の品質に関してRP−HPLCおよびSE−HPLC分析で評価することができる。
III.非哺乳類発現系中で発現された、2.0g/L以上の濃度で多量に存在するタンパク質をリフォールディングする方法
開示されたリフォールディング方法は、非哺乳類発現系中で発現されたタンパク質をリフォールディングするのに特に有用である。本明細書に注記される通り、非哺乳類細胞は、可溶性または完全に不溶性または非天然の難溶性形態のいずれかで細胞内に発現される組換えタンパク質を生成するように設計することができる。多くの場合、その細胞は、組換えタンパク質を封入体と呼ばれる大型の不溶性または難溶性凝集体中に沈着させる。しかし、特定の細胞増殖条件(例えば、温度またはpH)を改変して、組換えタンパク質を細胞内の可溶性モノマー形態で生成するように細胞を操作することができる。不溶性の封入体中でタンパク質を生成する代わりに、Fc領域を含むタンパク質をはじめとする可溶性タンパク質としてタンパク質を発現させて、それをアフィニティークロマトグラフィーにより細胞溶解物から直接捕捉することができる。溶解物から直接捕捉することで、比較的純粋なタンパク質のリフォールディングが可能になり、封入体の処理で必要となる非常に徹底した回収および分離工程が回避される。しかし、リフォールディング方法は、アフィニティー精製されている試料に限られるわけではなく、多量の細胞溶解物中に見出されるタンパク質(即ち、任意の方法で精製されていないタンパク質)など、非哺乳類発現系中で発現されたタンパク質を含む任意の試料に適用することができる。
一態様において、本開示は、タンパク質が発現される非哺乳類細胞の細胞溶解物からアフィニティークロマトグラフィーにより精製されているタンパク質など、可溶性形態で非哺乳類発現系中で発現された、2.0g/L以上の濃度で多量に存在するタンパク質をリフォールディングする方法に関する。そのボリューム(volume)は、タンパク質精製工程の任意の段階で得ることができるが、一実施例で、ボリュームは、アフィニティークロマトグラフィーの溶出プール(例えば、プロテインA溶出プール)である。別の実施例では、ボリュームは、プロセス流れに存在する。しかしその方法は、Fc含有タンパク質に限定されず、可溶性形態で発現され、非哺乳類由来細胞溶解物から捕捉される任意の種類のペプチドまたはタンパク質に適用することができる。単離された可溶性タンパク質は、多くの場合、非哺乳類細胞から還元型で放出され、それゆえ、カオトロープなどの変性剤の添加により、リフォールディング用に調製することができる。最適化されたチオール対比およびチオール対緩衝液強度では、タンパク質安定化剤、凝集抑制剤およびレドックス成分の更なる組合わせにより、1〜40g/Lの濃度、例えば10〜20g/Lの濃度でリフォールディングすることができる。
方法の一つの特定の実施形態において、タンパク質を非哺乳類発現系中で発現させて、高圧溶解により、発現細胞から放出させる。その後、タンパク質は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより溶解物から捕捉されて、10g/L以上の濃度で多量に存在する。その後、タンパク質を変性剤、凝集抑制剤、タンパク質安定化剤およびレドックス成分を含むリフォールディング緩衝液と接触させるが、レドックス成分は、0.001〜100の範囲、例えば、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50の範囲を有する最終的なチオール対比(本明細書に定義)、および2mM以上、例えば、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM以上、5mM以上、7.5mM以上、10mM以上、または15mM以上のチオール対緩衝液強度(本明細書に定義)を有し、チオール対緩衝液強度は、効果的には最大100mMを限界とする。範囲に関して言い換えれば、チオール緩衝液強度は、2〜20mM、例えば、2.25mM〜20mM、2.5mM〜20mM、2.75mM〜20mM、3mM〜20mM、5mM〜20mM、7.5mM〜20mM、10mM〜20mM、または15mM〜20mMである。
別の態様において、本開示は、封入体の形態など、不溶性または難溶性形態の非哺乳類発現系中で発現されたタンパク質をリフォールディングする方法に関する。タンパク質が封入体中に配置されている場合、封入体を溶解細胞から回収して、洗浄、濃縮、およびリフォールディングすることができる。
リフォールディング緩衝液の最適化は、本明細書に提供された新規方法を用いて、各タンパク質、および各最終タンパク質濃度で実施することができる。実施例に示された通り、リフォールディング緩衝液が、変性剤(例えば、尿素もしくは他のカオトロープ、有機溶媒、または強力な洗浄剤)、凝集抑制剤(例えば、弱性洗浄剤、アルギニンまたは低濃度のPEG)、タンパク質安定化剤(例えば、グリセロール、スクロースまたは他のオスモライト、塩)およびレドックス成分(例えば、システイン、シスタミン、グルタチオン)を含有する場合には、Fc領域を含むタンパク質をリフォールディングすれば、良好な結果を得ることができる。最適なチオール対比およびレドックス緩衝液強度は、チオール対緩衝液強度(2mMを超えうる、例えば、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM、5mM以上、7.5mM以上、10mM、または15mM以上)になりうるが、チオール対緩衝液強度は、効果的には最大100mMを限界とする。範囲に関して言い換えれば、チオール緩衝液強度は、タンパク質濃度および封入体を可溶化するのに用いられる還元剤の濃度に応じて、2〜20mM、例えば、2.25mM〜20mM、2.5mM〜20mM、2.75mM〜20mM、3mM〜20mM、5mM〜20mM、7.5mM〜20mM、10mM〜20mM、または15mM〜20mMである)に対するチオール対比(0.001〜100の範囲、例えば、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50の範囲を有しうる)の実験的マトリックスを用いて決定することができる。条件は、実施例2に記載された新規方法を用いて最適化することができる。
方法の一つの特定の実施形態において、タンパク質は、非哺乳類発現系中で発現され、2.0g/L以上の濃度で多量に存在する。タンパク質を変性剤、凝集抑制剤、タンパク質安定化剤およびレドックス成分を含むリフォールディング緩衝液と接触させるが、レドックス成分は、0.001〜100の範囲、例えば、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50の範囲を有する最終的なチオール対比(本明細書に定義)、および2mM以上、例えば、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM以上、5mM以上、7.5mM以上、10mM以上、または15mM以上のチオール対緩衝液強度(本明細書に定義)を有し、チオール対緩衝液強度は、効果的には最大100mMを限界とする。範囲に関して言い換えれば、チオール緩衝液強度は、混合物を形成させるのに、2〜20mM、例えば、2.25mM〜20mM、2.5mM〜20mM、2.75mM〜20mM、3mM〜20mM、5mM〜20mM、7.5mM〜20mM、10mM〜20mM、または15mM〜20mMである。広範囲の変性体タイプを、リフォールディング緩衝液中で用いてもよい。リフォールディング緩衝液中で用いることができる幾つかの一般的な変性剤としては、尿素、グアニジニウム、ジメチル尿素、メチル尿素、またはエチル尿素が挙げられる。変性剤の特異的濃度は、本明細書に記載された通り、日常的な最適化により決定することができる。
広範囲のタンパク質安定化剤または凝集抑制剤を、リフォールディング緩衝液中で用いることができる。リフォールディング緩衝液中で有用となりうる幾つかの一般的凝集抑制剤の例としては、アルギニン、プロリン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、多価アルコール、グリセロール、スクロース、ソルビトール、グルコース、トリス、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、他のオスモライト、または類似の化合物が挙げられる。凝集抑制剤の特異的濃度は、本明細書に記載された通り、日常的な最適化により決定することができる。
リフォールディング緩衝液のレドックス成分は、任意の組成であってもよいが、レドックス成分が、0.001〜100の範囲、例えば、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50の範囲内の最終的チオール対比、および2mM以上、例えば、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM以上、5mM以上、7.5mM以上、10mM以上、または15mM以上のチオール対緩衝液強度を有し、チオール対緩衝液強度が、効果的には最大100mMを限界とすることに注意する。範囲に関して言い換えれば、チオール緩衝液強度は、2〜20mM、例えば、2.25mM〜20mM、2.5mM〜20mM、2.75mM〜20mM、3mM〜20mM、5mM〜20mM、7.5mM〜20mM、10mM〜20mM、または15mM〜20mMである。適切なレドックス成分を特定する方法、即ち、適切なチオール対比およびレドックス緩衝液強度を決定する方法は、公知であり、そして/または本明細書内に提供されている。レドックス成分を形成しうる特異的なチオール対の例としては、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、システイン、シスチン、システアミン、シスタミンおよびβ−メルカプトエタノールのうちの1種以上を挙げることができる。このように、チオール対は、例えば、還元型グルタチオンおよび酸化型グルタチオンを含むことができる。チオール対の別の例は、システインおよびシスタミンである。レドックス成分は、本明細書に記載された通り最適化することができる。
列挙されたチオール対比およびレドックス緩衝液強度を有するレドックス成分にタンパク質を接触させて、リフォールディング混合物を形成させた後、リフォールディング混合物を所望の期間インキュベートする。インキュベーションは、本明細書に定義される通り、無酸素条件下で実施することができる。無酸素条件は、完全に無酸素にする必要はないが、ただし、最初の系に存在する酸素以外に追加の酸素を意図的に導入しない。インキュベーション期間は、可変的であるが、安定したリフォールディング混合物が、所望の分析特性と共に実現されうるように選択する。インキュベーション期間は、例えば、1時間、4時間、12時間、24時間、48時間、72時間以上であってもよい。
系に存在する酸素レベルに対する高濃度リフォールディングの感受性、および酸素の物質移動が小規模でより多くなる傾向により、インキュベーションステップで酸素レベルを制御して無酸素条件を保持する方法および/または装置を開発することができる。一実施形態において、その手順は、窒素またはアルゴンなどの不活性気体のブランケットの下で、全てのリフォールディング成分を調製、配置および混合することで、酸素レベルが反応物に同伴するのを回避することができる。このアプローチは、許容しうるチオール対比を特定する際に特に役立つ。15リットル以下の規模で有用な別の実施形態において、タンパク質およびリフォールディング緩衝液を含有するリフォールディング反応器のヘッドスペースを、不活性気体、または不活性気体と空気もしくは酸素との混合物でパージして、反応容器を密閉し、そしてインキュベーション時間の持続時に低回転速度で混合することができる。
インキュベーションの後、タンパク質をリフォールディング混合物から単離する。単離は、任意の公知タンパク質精製法を用いて実現することができる。タンパク質がFcドメインを含む場合、例えば、プロテインAカラムが、リフォールディング賦形剤からタンパク質を分離するための適切な方法を提供する。他の実施形態において、様々なカラムクロマトグラフィー方策を用いることができ、それは、単離されるタンパク質の性質に依存する。例としては、HIC、AEX、CEX、およびSECクロマトグラフィーが挙げられる。塩、酸またはPEGなどのポリマーを用いた沈殿など、非クロマトグラフィー分離も考慮することができる(例えば、米国20080214795参照)。タンパク質をリフォールディング成分から単離するための別の方法としては、透析、またはタンジェンシャルフローろ過装置での透析ろ過を挙げることができる。
別の例示的リフォールディング操作では、非哺乳類発現系から得られた封入体を、約10〜300分間で、タンパク質10〜100g/L、より典型的には20〜40g/Lの範囲内で可溶化する。その後、可溶化された封入体を希釈して、溶液中の変性剤および還元剤をタンパク質のリフォールディングが可能なレベルまで低下させる。希釈の結果、尿素、グリセロールまたはスクロース、アルギニンおよびレドックス対(例えば、システインおよびシスタミン)を含有するレドックス緩衝液中で、1〜15g/Lの範囲内のタンパク質濃度になる。一実施形態において、最終的な組成は、1〜4M尿素、5〜40%グリセロールまたはスクロース、25〜500mMアルギニン、0.1〜10mMシステイン、および0.1〜10mMシスタミンである。その後、1時間〜4日に及びうる時間のインキュベーション時に、溶液を混合する。
本明細書に注記された通り、開示される方法は、細菌発現系、より詳細にはタンパク質が細菌細胞内で封入体の形態で発現される細菌系の中で発現されるタンパク質にとって、特に有用となる。タンパク質は、複合タンパク質、即ち、(a)20,000を超える分子量であるか、または250個を超えるアミノ酸残基を含み、(b)天然形態のジスルフィド結合を2個以上含む、タンパク質であってもよい。タンパク質が封入体中で発現されると、タンパク質の天然形態に見出される任意のジスルフィド結合が、ミスフォームされるか、または全く形成されない可能性がある。開示される方法は、対象とするタンパク質のこれらの形態および他の形態に適用可能である。開示された方法を用いるリフォールディングで考慮しうるタンパク質の特異的例としては、比較的大きな寸法および多数のジスルフィド結合のために、典型的なリフォールディング法を用いて高濃度でリフォールディングすることが慣例的に非常に困難な抗体が挙げられる。該方法は、ペプチボディなどの他のFc含有分子をリフォールディングするのに、より一般的には、別のタンパク質に融合されたFcドメインを含む任意の融合タンパク質をリフォールディングするのに、用いることもできる。
開示された方法の別の態様は、そのスケーラビリティーであり、それが、ベンチスケールから工業的または商業的規模まで、任意の規模でその方法を実践することを可能とする。事実、開示された方法は、商業的規模で特定の適応法を見出し、それを多量のタンパク質を効率的にリフォールディングするのに用いることができる。
ここに、本開示を特定の実施形態を説明する以下の実施例に照らして例示する。しかし、これらの実施形態は例示であり、本発明を限定するものと解釈すべきではないことに注意しなければならない。
本明細書に示された実施例は、チオール対比およびレドックス緩衝液強度が、環境的影響および空気混入に感受性のない、効率的なリフォールディング反応を実現する際の、重大な要件であることを実証する。この非感受性は、規模調整を容易にするため、そして工業的または商業的規模の場合、プラント間で工程を移動させるための要件になる。
実施例では、典型的なリフォールディング反応濃度(0.01〜2.0g/L)で、外部からの空気混入への感受性が相対的に弱まることも実証する。しかし、約2g/以上の濃度では、チオール対比およびレドックス緩衝液強度に対するリフォールディング反応の感受性が上昇し、ほぼ全ての化学成分、特にレドックス成分が、反応におけるタンパク質濃度の変動に適応するように調整する必要があり得る。
実施例1
組換えタンパク質の発現
一実験において、Fc部分を含む組換えタンパク質を、非哺乳類発現系、即ち、大腸菌の中で発現させ、封入体の形態の細胞質沈着物を形成するように操作した。リフォールディングされた各タンパク質で、以下の手順に従った。
発現期の完了後に、細胞ブロスを遠心分離して液体画分を除去し、細胞をペーストとして残留させた。細胞を元の容量の約60%になるように水で再懸濁させた。その後、細胞を高圧ホモジナイザーに3回通すことにより溶解した。細胞を溶解した後、溶解物をディスクスタック遠心分離機で遠心分離して、固体画分中のタンパク質を回収したが、それは難溶性非天然形態で、即ち、封入体として発現された。捕捉された固体スラリーを元の発酵ブロス容量の50%〜80%になるように水で繰り返し再懸濁させ、混合および遠心分離して、タンパク質を固体画分に回収することにより、タンパク質スラリーを数回洗浄した。最後に洗浄された封入体を捕捉して、凍結保存した。
実施例2
リフォールディング条件/レドックス成分の特定
多重複合体である細菌由来タンパク質を評価した。各タンパク質を、グアニジンおよび/または尿素を適切なレベルで、典型的にはグアニジン4〜6Mもしくは尿素4〜9Mに相当するレベルで、または両方の変性剤の混合物で可溶化して、タンパク質を完全に変性させた。タンパク質をpH8.5のDTT 5〜20mMで還元して、室温で約1時間インキュベートした。
リフォールディング緩衝液の特定を、各タンパク質で実施した。一つの多要因マトリックスまたは一連の多要因マトリックスを評価し、収率が最適化されて凝集形成が最小限に抑えられる条件になるよう、リフォールディング反応を特定した。各成分を少なくとも3種の濃度またはpHレベルの範囲で変動させ、他のパラメータ全てを一定に保持しながら、尿素、アルギニン、グリセロールおよびpHを全要因マトリックスで系統的に評価する、特定スクリーニングを設定した。標準的な多変量統計ツールを用いて、完了した反応物を、収率および生成物の品質に関してRP−HPLCおよびSE−HPLC分析で評価した。その後、次のスクリーニングでは、所望の挙動を有する条件の部分集合を、pH、チオール対比、チオール対緩衝液強度、および潜在的に更なる賦形剤レベルの範囲を要因スクリーニングで評価して、更に評価した。二次的な相互作用も、標準的多変量統計ツールを用いて評価した。
逆相およびサイズ排除HPLC分析により決定された最良の結果は、変性剤(例えば、1〜4Mの非変性レベルの尿素、ジメチル尿素または他のカオトロープ)、凝集抑制剤(例えば、5〜500mMのレベルのアルギニン)、タンパク質安定化剤(例えば、5〜40%w/vのレベルのグリセロールまたはスクロース)およびレドックス成分(例えば、システインまたはシスタミン)を含有するレドックス緩衝液を用いて観察された。チオール対比およびレドックス緩衝液強度を、緩衝液強度(タンパク質濃度、タンパク質中のシステイン残基の数、および封入体を可溶化するのに用いられる還元剤の濃度に応じて、典型的には2mM〜20mM)に対するチオール対比(0.1〜100、より典型的には1〜25)の実験的マトリックスを用いて決定した。
各反応を、様々なレベルのシステインおよびシスタミンを用いて形成させ、様々なチオール対緩衝液強度でのチオール対比の制御されたマトリックスを可能にした。関係を、式3および式4を用いて計算した。本明細書に記載された技法を用いて、各条件を有酸素および無酸素条件の両方でスクリーニングした。収率、フォールディングされた化学種の所望の分布、環境の酸化剤(例えば、空気)への非感受性、および可溶化ステップから持ち越されたDTT中の正常な変動に対する非感受性の安定したバランスが適うように、最適条件を選択した。
実施例3
細胞溶解物から捕捉された非天然型可溶性タンパク質形態の高濃度リフォールディング
一実験において、Fc部分に結合した多数のポリペプチドを含む組換えタンパク質を、細胞内可溶性ペプチド鎖として大腸菌中で発現させ、回収および洗浄した細胞から溶解し、溶解物からアフィニティークロマトグラフィーにより単離し、その後、本明細書に記載された通り、約12g/Lの濃度でリフォールディングした。
発現期が完了した後、全ての発酵ブロスのアリコットを遠心分離して、液体画分を除去し、細胞をペーストとして残留させた。細胞を元の容量の約60%になるように水で再懸濁させた。その後、細胞を高圧ホモジナイザーに3回通すことにより溶解した。細胞を溶解した後、溶解物プールを空気の存在下で8〜72時間混合して、ペプチド鎖を二量体化させた。二量体化過程の後、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて、該当するペプチド鎖を溶解物プールから単離した。尿素(10M)、アルギニン塩酸(2.5M)、pH8.5のトリス(1050mM)およびシステイン(10mM、5mM、または4mM)およびシスタミン(4mM)を含有するリフォールディング緩衝液2部に対してプロテインA溶出材料8部の比率で、プロテインAカラム溶出プールを混合した。希釈された混合物をpH8.5に滴定して、安定したプールに達するまで(約24時間)、窒素の下、約5℃でインキュベートした。評価されたレドックス条件に応じて、所望の生成物の収率約30〜80%が得られた。
非常に大規模なタンパク質製造工程に典型的に存在するものと類似の無酸素条件を模倣するために、複数のステップを採り入れた。反応容量が約15L未満である場合、リフォールディング容器のヘッドスペースを窒素でパージして、酸素が装置内に有しうる影響を制限した。その後、容器を密閉して、インキュベーションを開始した。
反応容量が約15Lを超えるが、500L未満である場合、リフォールディング緩衝液を調製して、約5℃で平衡化させ、溶液中の安定した酸素レベル(典型的には、飽和空気に対して溶解酸素50%〜70%)を実現した。リフォールディング混合物が形成されたら、容器のヘッドスペースを窒素でパージして、酸素が装置内に有しうる任意の更なる影響を制限して、容器を密閉し、インキュベーション期間を開始した。
実施例4
封入体からの高濃度リフォールディング
一実験において、リンカーを介してIgG1分子のFc部分のC末端に結合した生物活性ペプチドを含み、約57kDaの分子量を有し、そしてジスルフィド結合を8個含む組換えタンパク質を、封入体として大腸菌中で発現させ、回収、洗浄、濃縮、可溶化、そして本明細書に記載された通り、6g/Lの濃度でリフォールディングした。
凍結濃縮した封入体のアリコートを、室温まで解凍して、適切な量のグアニジンおよび/または尿素と混合して、グアニジン4〜6Mに相当する変性剤レベルを調製して、タンパク質を完全に変性させた。その後、タンパク質をpH8.5のDTT 5〜20mMで還元して、室温で約1時間インキュベートした。封入体を溶解、変性および還元した後、それらを、尿素(1〜5M)、アルギニン塩酸(5〜500mM)、グリセロール(10〜30%w/v)、および実施例2に記載された手順により決定された、システインおよびシスタミンの識別されたレベルを含有するリフォールディング緩衝液で希釈した。最終的な成分濃度は、4M尿素、150mMアルギニン塩酸、20.9%(w/v)グリセロール、2.03mMシステイン、および2.75mMシスタミンであった。希釈レベルは、可溶化からの変性剤の希釈のバランスをとり、リフォールディング時に分子の熱力学的安定性を保持し、そしてリフォールディング混合物中で最高の可能なタンパク質濃度を保持するように選択した。希釈された混合物をアルカリ性pH(pH8〜pH10)に滴定し、関連の分析測定により決定して、安定したプールに達するまで(12〜72時間)、無酸素条件下、5℃でインキュベートした。得られた過程は、1L規模〜2000L規模で安定したスケーラビリティーを示すことが実証された(図3参照)。所望の生成物の収率約27〜35%が、両方の規模で得られた。生成物関連の不純物の分布も、狭い分散内に保持された(図3参照)。
大規模容器の空気の容積およびその表面に存在する表面積に対して、リフォールディング溶液の容積が大きければ、小規模での酸素物質移動が容易に実現され、大規模で観察された相対的に低い物質移動を模倣するためには、それを阻害しなければならない。こうして、非常に大規模なタンパク質製造工程に典型的に存在するものと類似の非嫌気的条件を模倣するために、複数のステップを採り入れた。反応容積が約15L未満である場合、リフォールディング緩衝液を窒素でパージして酸素を溶液から除去し、成分を窒素のブランケットの下に配置して、リフォールディング混合物が形成されたら、容器のヘッドスペースを窒素でパージして、酸素が装置内に有しうる影響を制限した。その後、容器を密閉して、インキュベーションを開始した。
反応容量が約15Lを超えるが、500L未満である場合、リフォールディング緩衝液を調製して、約5℃で平衡化させ、溶液中の安定した酸素レベル(典型的には、飽和空気に対して溶解された酸素50%〜70%)を実現した。リフォールディング混合物が形成されたら、容器のヘッドスペースを窒素でスパージングして、酸素が装置内に有しうる任意の更なる影響を制限して、容器を密閉し、インキュベーション期間を開始した。
500Lを超える規模では、リフォールディング緩衝液を調製して、約5℃で平衡化させ、溶液中の安定した酸素レベル(典型的には、飽和空気に対して溶解された酸素50%〜70%)を実現した。リフォールディング混合物が形成されたら、容器を密閉し、インキュベーション期間を開始した。
リフォールディング混合物のタンパク質濃度は6g/Lであり、それは、この実施例に記載された方法以外の方法を用いて得られる1.5g/Lの回収の4倍高い。一つの具体的製造施設において、既存の施設タンクでの容積効率が上昇することにより、全体的な年間工程生産率が930%を超える上昇となることが計算された。
実施例5
ジスルフィド対合に対するチオール対酸化状態の影響
図1a〜1fで、チオール対比をより酸化状態(より低いチオール対比)にする程、より高い割合の生成物種が、酸化されたアミノ酸および混合されたジスルフィド形態を有する。チオール対比をより還元状態(より高いチオール対比)に操作すれば、酸化されたアミノ酸変種がより低レベルになり、間違ったジスルフィド対合または未形成のジスルフィド結合を有する生成物種がより高レベルになる。全体的なチオール対緩衝液強度が改変されれば、対応する最適なチオール対比がシフトする。この効果は、緩衝液強度が緩衝溶液への酸および塩基付加に対するpHの感受性を調整する様式に類似している。
化学種の最適バランスを達成することができた。図1a〜1fに示される通り、チオール対緩衝液強度とチオール対比との間には、最適な化学種のバランスを保持し、こうして低溶解性タンパク質の効率的なリフォールディングを促進するように特定しうる、明白な関係がある。チオール対比およびチオール対緩衝液強度の調整を介して、間違ったジスルフィド結合種およびミスフォールディング種などの生成物の変種を制御する能力によって、次の精製工程が、効率的、効果的になり、信頼性が与えられる。
実施例6
リフォールディング効率に対する無酸素条件の影響
図2および3は、タンパク質濃度およびタンパク質中のシステイン残基の数を考慮して、チオール対緩衝液強度が適宜選択されると、酸素などの外部からの影響への感受性が大幅に低下することを実証している。これにより、無酸素リフォールディング条件が可能になり、規模と反応器の構成の間の転換が著しく容易になる。
図2は、複数の環境条件の下、15L規模のリフォールディングと20mL規模のリフォールディングとで、RP−HPLC分析種の分布を比較している。条件1(図1の表示記録「1」)では、可溶化化学剤および溶液を空気中に配置して、リフォールディング混合物を空気中でインキュベートした。条件2では、可溶化化学剤および溶液を空気中に配置して、ヘッドスペースの窒素の下でインキュベートした。条件3〜7は、可溶化化学剤および溶液を窒素のオーバーレイ条件下に配置して、条件3、5、6、および7では、可溶化化学物質および溶液を窒素下でインキュベートした。条件7では、可溶化溶液を混合する前に、リフォールディング溶液の窒素も除去した。条件4では、可溶化化学剤および溶液を、周囲空気条件下でインキュベートした。
図2に示された結果は、可溶化化学剤および溶液を空気の存在下に配置する、またはそこでインキュベートする条件(即ち、条件1、2、および4)では、大規模対照に匹敵する結果が実現されないことを実証している。条件1、2および4では、酸化種(プレピーク)の形成増加が観察された。プレピークは、条件1、2および4のパネルでは矢印で示されている。
図3は、実施例2に記載された通り実現された、同一条件のRP−HPLC分析結果を、1L規模と2000L規模とで比較している。この図では、化学種分布の差は、本質的に検出不能である。総括すると、図2および3は、通気を注意深く制御すれば、小規模のリフォールディング反応は、リフォールディング反応を規模拡大する際に予期される反応をより予測させ、大規模のタンパク質リフォールディング工程の実施が促進されることを実証している。

Claims (24)

  1. (a)0.001〜100の範囲を有する最終的なチオール対比および2mM以上のレドックス緩衝液強度を含むレドックス成分と、
    (i)変性剤;
    (ii)凝集抑制剤;および
    (iii)タンパク質安定化剤、
    のうちの1種以上と、を含むリフォールディング緩衝液にタンパク質を接触させて、リフォールディング混合物を形成させること;
    (b)前記リフォールディング混合物をインキュベートすること;ならびに
    (c)前記リフォールディング混合物から前記タンパク質を単離すること、
    を含む、非哺乳類発現系中に発現された、2.0g/L以上の濃度で多量に存在するタンパク質をリフォールディングする方法。
  2. 前記最終的なチオール対比が、0.05〜50、0.1〜50、0.25〜50、0.5〜50、0.75〜40、1.0〜50または1.5〜50、2〜50、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、30〜50または40〜50からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記チオール対緩衝液強度が、2.25mM以上、2.5mM以上、2.75mM以上、3mM以上、5mM以上、7.5mM以上、10mM以上または15mM以上からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記タンパク質が、非天然の難溶性形態の量で存在する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記非天然の難溶性形態が、封入体である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記タンパク質が、可溶性形態の量で存在する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記タンパク質が、組換え体である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記タンパク質が、内在性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記タンパク質が、抗体である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記タンパク質が、複合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記タンパク質が、多量体タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記タンパク質が、Fc−タンパク質結合体である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記非哺乳類発現系が、細菌発現系および酵母発現系のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
  14. 前記変性剤が、尿素、グアニジニウム塩、ジメチル尿素、メチル尿素およびエチル尿素からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  15. 前記タンパク質安定化剤が、アルギニン、プロリン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、多価アルコール、グリセロール、スクロース、ソルビトール、グルコース、トリス、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよびオスモライトからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記凝集抑制剤が、アルギニン、プロリン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、多価アルコール、グリセロール、スクロース、ソルビトール、グルコース、トリス、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよびオスモライトからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記チオール対が、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、システイン、シスチン、システアミン、シスタミンおよびβ−メルカプトエタノールからなる群より選択される成分を少なくとも1種含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記インキュベーションが、無酸素条件下で実施される、請求項1に記載の方法。
  19. 前記単離が、混合物とアフィニティー分離マトリックスとの接触を含む、請求項1に記載の方法。
  20. 前記アフィニティー分離マトリックスが、プロテインA樹脂である、請求項19に記載の方法。
  21. アフィニティー樹脂が、混合様式の分離マトリックスである、請求項19に記載の方法。
  22. 前記単離が、混合物とイオン交換分離マトリックスとの接触を含む、請求項1に記載の方法。
  23. 前記単離が、ろ過ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
  24. 前記ろ過ステップが、深層ろ過を含む、請求項23に記載の方法。
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