JP2012529462A - アスコルビン酸の不飽和脂肪酸モノエステルおよびジエステルならびにそれらの化粧使用 - Google Patents

アスコルビン酸の不飽和脂肪酸モノエステルおよびジエステルならびにそれらの化粧使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、以下の一般式(I)(式中、R1は少なくとも1つの不飽和を含むC12−C24の不飽和脂肪酸の炭化水素鎖であり;R2およびR3は、独立してまたは同時に、水素、C1−C3アルキルまたはフェニルであり;R4は、水素原子、またはCOR1’であり、ここでR1’は、少なくとも1つの不飽和、有利には1〜6、好ましくは1〜4の不飽和を含むC12−C24不飽和脂肪酸の炭化水素鎖である)を有する化合物に関する。

Description

本発明は、アスコルビン酸誘導体およびそれらを含有する薬学的または化粧組成物、それらの調製方法ならびにそれらの特に薬剤としてのまたは活性化粧成分としての使用に関する。
アスコルビン酸は、抗酸化性を有する有機酸である。アスコルビン酸の天然資源は、新鮮果実および野菜、特に柑橘類果実である。
その抗酸化性の故に、アスコルビン酸は、農産食品産業において食品添加物のリスト中コード番号E300の下、防腐剤としてしばしば使用される。アスコルビン酸は、化粧品産業においても、その知られた抗ラジカル性および角質溶解性のために使用される。
アスコルビン酸は、空気中または湿気の存在で容易に着色する白色粉末の形態にある。
不飽和脂肪酸は、1つまたは複数の不飽和を有する脂肪酸に相当する。
モノ不飽和脂肪酸という用語は、それらが単一の不飽和を含むときに使用される。多価不飽和脂肪酸という用語は、それらが数個の不飽和を含むときに使用される。
不飽和脂肪酸も植物起源のものであってもよい。
不飽和脂肪酸は、異なる種類に分けられる。これらの種類は、酸基に対する側位から数えて最初の不飽和の位置により定義される。
特に、不飽和脂肪酸の3つの主な種類:オメガ3(ω3)、オメガ6(ω6)およびオメガ9(ω9)に分類される。ω3、ω6およびω9シリーズのシス不飽和脂肪酸は、数種のいわゆる必須脂肪酸を含む。これらの脂肪酸は、それらが食品摂取によってのみ供給され得るので必須であるといわれる。
主要な構成要素がオレイン酸(C18:1)であるω9モノ不飽和脂肪酸は、心臓血管疾患の予防に有益な効果があることが知られている。
ω3およびω6の種類に属する多価不飽和脂肪酸(PUFA)も、心臓血管疾患および癌に対して予防効果があることが知られている。食品中のω3不飽和脂肪酸とω6不飽和脂肪酸との間の比、即ち5リノール酸当たり1αリノレン酸の比を順守することがフランス食品安全局AFSSAPにより特に推奨されている。
それらの代謝効果に加えて、それらは細胞内タンパク質をコードする遺伝子の発現を改変し得る。PUFAのこれらの遺伝子効果は、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)と呼ばれる核受容体により作動するように思われる。PPARは、ステロイドタイプのホルモンの核受容体のファミリーに属する。それらはレチノイン酸のRXR受容体(レチノイドX受容体)とヘテロダイマーを形成して、遺伝子発現を調節する。したがって、ω3PUFAは、NF−KB経路の主要な阻害剤IKBαの発現を誘発することによりNF−KB活性化経路を阻害する、炎症性応答の負の調節剤であるように思われる(Ren J and Chung SH.J Agric Food Chem.2007 55:5073-80)。それに加えて、ω3PUFAは、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸の合成の利益に加えてアラキドン酸の合成に対する阻害作用を有する(Calder PC.Lipids:2001:36,1007-24)。
不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸は、それらの皮膚科学的性質が知られている(Monpoint S,Guillot B,Truchetet F et al. Essential fatty acids in dermatology. Ann Dermatol Venereol,1992,119:233-239)。特にリノール酸は、細胞膜の作製に関与する多価不飽和脂肪酸である。リノール酸が欠乏すると皮膚の乾燥およびアレルギーの存在を招く。
本発明の化合物は、5位および6位のヒドロキシルが環状アセタール、より詳細にはアセトンの環状アセタール(アセトニド)により保護されるアスコルビン酸の不飽和脂肪酸のジエステルまたはモノエステルである。この官能基は微酸性媒体で、即ち5.2〜7の酸性pHを有する皮膚上で容易に加水分解可能である。それ故、環状アセタールはアスコルビン酸をその側鎖の酸化から保護するであろう。環状アセタールの使用により、脂肪相に大きい溶解性を有する許容されるサイズの構造を得ることが可能になる。
脂肪酸のエステルも、皮膚中に存在するエステラーゼにより容易に開裂され得て、それが不飽和脂肪酸の遊離を可能にする(Redoules,D.,Tarroux,R.,Assalit,M.F.and Perie,J.J. Characterization and assay of five enzymatic activities in the stratum corneum using tape-stripping, Skin Pharmacol.Appl.Skin Physiol.,12, 182-192(1999))。皮膚中に存在するエステラーゼによる不飽和脂肪酸エステルの開裂は、それ故、有効成分の緩慢な拡散を可能にして、それは薬剤送達概念に相当する。
本発明による式(I)の化合物について、皮膚エステラーゼのエステル結合に対する作用により、不飽和脂肪酸のモノエステルが使用されるときは1つの不飽和脂肪酸および1分子のアスコルビン酸;または不飽和脂肪酸のジエステルが使用されるときは2位のモノエステル経由で2つの不飽和脂肪酸および1分子のアスコルビン酸の遊離が生ずる。
特に不飽和脂肪酸のジエステルについて、エステラーゼの作用は、先ず不飽和脂肪酸のモノエステルの形成およびアスコルビン酸の遊離を生じ、次にアスコルビン酸およびもう1つの不飽和脂肪酸の遊離を生ずるであろう(スキーム1)。
スキーム1:皮膚エステラーゼによる開裂反応の例
したがって、本発明の主題は以下の一般式(I)の化合物である:
(式中、
は、少なくとも1つの不飽和、有利には1〜6、および好ましくは1〜4の不飽和を含むC12−C24不飽和脂肪酸から誘導される炭化水素鎖であり;および
およびRは独立してまたは同時に:水素またはC−Cアルキルまたはフェニルであり;および
は水素原子またはCOR’であり、ここでR’は少なくとも1つの不飽和、有利には1〜6、および好ましくは1〜4の不飽和を含むC12−C24不飽和脂肪酸から誘導される炭化水素鎖である。)
発明の具体的説明
本発明の意味における「不飽和」は、二重結合C=Cを意味する。
本発明の意味における「不飽和脂肪酸」は、12〜24個の炭素原子、好ましくは14〜18個の炭素原子、より好ましくは18個の炭素原子(カルボン酸官能基の炭素原子を含む。)を含み、且つ少なくとも1つのC=C二重結合、好ましくは1〜4のC=C二重結合(これらの二重結合は好ましくはシス配置を有する。)を含む直鎖カルボン酸(RCOH)または(R’COH)酸を意味する。
本発明の意味における「不飽和脂肪酸の炭化水素鎖」は、不飽和脂肪酸(RCOH)または(R’COH)の酸官能基に結合した炭化水素鎖(R)またはR’)を意味する。RおよびR’は、したがって、11〜23個、好ましくは13〜17個、およびさらに好ましくは17個の炭素原子を含み、且つ少なくとも1つ、好ましくは1〜4のC=C二重結合(これらの二重結合は、好ましくはシス配置を有する。)を含む直鎖炭化水素鎖を表す。本発明によれば、RがCOR’を表す場合、RとR’とは同じであっても異なっていてもよい。
不飽和脂肪酸は、ラウロレイン酸(C12:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リシノール酸(C18:1);ガドレイン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、α−リノレン酸(C18:3);ステアリドン酸(C18:4)、エイコサトリエン酸(C20:3)、エイコサテトラエン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、テトラコサペンタエン酸(C24:5)、テトラコサヘキサエン酸(C24:6)、リノール酸(C18:2)、γ−リノレン酸(C18:3)、エイコサジエン酸(C20:2)、ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、ドコサテトラエン酸(C22:2)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、アドレン酸(C22:4)およびカレンジン酸(C18:3)であってよい。
有利には、発明の化合物は、Rが、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α−リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)を含む群から選択された不飽和脂肪酸である化合物である。
有利には、本発明の化合物は、RがCOR’を表すとき、R’がオレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α−リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)を含む群から選択された不飽和脂肪酸である化合物である。
本発明の意味における「アルキル」は、特定数の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和脂肪族炭化水素鎖を意味する。例えば、メチル、エチルおよびプロピルを挙げることができる。
有利には、本発明の化合物は、RおよびRがC−Cアルキルを表す化合物である。
有利には、本発明の化合物は、RおよびRがメチルを表す化合物である。
有利には、本発明の化合物は、Rが1〜3の不飽和を含むC14−C18不飽和脂肪酸の炭化水素鎖を表す化合物である。
有利には、本発明の化合物は、RがCOR’を表すとき、R’が1〜3の不飽和を含むC14−C18の不飽和脂肪酸の炭化水素鎖を表す化合物である。
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、RがCOR’を表す化合物である。
本発明のもう一つの実施形態によれば、式(I)の化合物は、Rが水素原子を表す化合物である。
特に、本発明の化合物は、以下の分子のなかから選択することができる。
1.R がCOR ’を表す一般式(I)の分子
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12−ジエノエート
(9Z,9’Z,12Z,12’Z,15Z,15’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12,15−トリエノエート、
(6Z,6’Z,9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−6,9,12−トリエノエート
(Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオレエート。
2.R が水素原子を表す一般式(I)の分子
(9Z,12Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12−ジエノエート
(9Z,12Z,15Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12,15−トリエノエート
(6Z,9Z,12Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−6,9,12−トリエノエート
5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オレエート。
本発明のさらなる主題は、薬剤として使用するための一般式(I)の化合物である。
本発明のさらなる主題は、化粧有効成分として使用するための一般式(I)の化合物である。
詳細には、本発明のさらなる主題は、色素脱失有効成分、老化防止有効成分、抗酸化有効成分、水和有効成分、抗炎症性有効成分として、または身体および/または頭部の毛の再成長を刺激するための有効成分として使用するための一般式(I)の化合物である。
本発明は、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を、薬学的にまたは化粧品として許容される賦形剤、特に経皮投与に適合した賦形剤との組合せで含んでなることを特徴とする、薬学的または化粧組成物にも拡張される。
本発明において、「薬学的にまたは化粧品として許容される」とは、一般的に安全な、無毒性の且つ生物学的にも他の面でも望ましくないことがなく、治療用または化粧使用、とりわけ局所適用の使用が許容される、薬学的または化粧組成物の調製に有用なことを意味する。
本発明の薬学的または化粧組成物は、賦形剤、特に有効成分の性質および利用しやすさを改善するために皮膚中への浸透を可能にする賦形剤を加えた、皮膚または頭皮への局所投与のために通常知られている形態、即ち詳細にはローション、フォーム、ゲル、分散液、エマルション、シャンプー、スプレー、セラム、マスク、ボディミルクまたはクリームであってもよい。本発明の薬学的または化粧組成物は、しわ改善剤として通常使用される注射用ゲルの形態(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲンまたはアルギン酸塩等との組合せ)であってもよい。
これらの組成物は、本発明の化合物に加えて、一般的には水系または溶媒系の生理学的に許容される媒体、例えばアルコール、エーテルまたはグリコールを含有する。それらは、界面活性剤、錯化剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、微量元素、精油、芳香剤、着色剤、マティファイング(matifying)剤、化学的または鉱物フィルタ、水和剤または鉱泉水、その他も含有してもよい。
これらの組成物は、相補性または場合により相乗効果をもたらす他の有効成分も含有してもよい。
有利には、本発明の組成物は、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の一般式(I)の化合物を含んでなる。
これらの組成物は、より詳細には、皮膚および/または頭髪および/または体毛の色素脱失、皮膚老化の治療および/または予防、表皮の水和、頭髪および/または体毛の再成長刺激、または皮膚炎症の治療を目的とする。
本発明のさらなる主題は、皮膚老化を治療および/または予防するための化粧方法である。
本発明の主題は、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を含有する化粧組成物を適用することによりヒト皮膚および/または体毛および/または頭髪を白くするおよび薄くする方法にも拡張される。
本発明のさらなる主題は、式(I)の化合物を、カルボキシル官能基が活性型である不飽和脂肪酸と、式(II)のアスコルビン酸誘導体とのカップリングにより調製する方法に関する。
スキーム2:式(I)の化合物を調製する方法
(式中、RはCOR’または水素原子を表すことができる)
本発明のカップリング反応は、塩基の存在、および場合によりカップリング助剤の存在下で実施する。
塩基は、例えばピリジンまたはトリエチルアミンであってよい。
カップリング助剤は、例えば4−ジメチルアミノピリジンであってよい。
本発明の意味における「活性型」は、求核剤に対してより活性になるように改変されたカルボン酸官能基を意味する。これらの活性型は、当業者に周知であり、特に酸塩化物であってよい。
本発明は、以下の限定するものではない実施例に照らして、よりよく理解されるであろう。
例1:本発明の化合物の合成
がCOR ’を表す一般式(I)の分子:
1.1 一般的方法A:不飽和脂肪酸塩化物およびピリジンから出発
1.1a 分子1:
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイル−のジオクタデカ−9,12−ジエノエート
経路1: 10ml無水ピリジン中および窒素下の5,6−O−イソプロピリデン−アスコルビン酸(1.08g、5mmol、1eq.)および4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol、0.1eq.)の溶液に、2.9g塩化リノレオイル(10mmol、2eq.)を加えて、次に混合物を周囲温度で16時間攪拌し続ける。反応は薄層クロマトグラフィー(TLC)により追跡する。
周囲温度に戻した後、溶媒を蒸発させ、次に残渣をエーテル/水混合物で抽出する。有機相を1NHCl溶液で2回、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒蒸発後に油状物が得られる。
次に、残渣をヘプタン/酢酸エチル混合物(100:0〜70:30)を用いたシリカで、または分取HPLCにより精製する。無色油状物の形態で得られた生成物を一晩真空乾燥する。
1.49gが40%の収率で得られる。
H NMR(400MHz、CDCl):δ:0.83(2t、6H);1.27−1.39(m、34H);1.68(m、4H);2.06(m、8H);2.53(2t、4H);2.77(2t、4H);4.01(dd、1H);4.18(dd、1H);4.35(td、1H);5.14(d、1H);5.35(m、8H)。
13C NMR(100MHz、CDCl):δ:14.01;22.6−33.6(脂肪族);65.19;72.9;75.3;76.7;77;110.8;122.0;127−130;150.8;167.7;168、169。
経路2: 5,6−O−イソプロピリデン−アスコルビン酸(1g)をジクロロメタン(19ml)中の懸濁液に入れる。ピリジン(0.79ml)を加えると反応媒体は不均一に白色になる(T=15℃)。10分攪拌後、氷浴を用いて反応媒体を0℃に冷却する。ジクロロメタン(6ml)中の塩化リノレオイルの溶液(2.98ml)を5分かけて加え、その後氷浴を外して反応媒体を30分攪拌し続ける。
反応媒体を、水(3×50ml)、2%硫酸銅溶液(w/v)(2×50ml)で洗浄し、次に再び水(50ml)で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、次に真空で濃縮して褐色に着色した油状物を得る(3.3g;収率96%)。
この油状物を窒素雰囲気中、−18℃で貯蔵する。
1.2 一般的方法B:不飽和脂肪酸塩化物およびトリエチルアミンから出発
1.2a 分子2:
(9Z,9’Z,12Z,12’Z,15Z,15’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイル−のジオクタデカ−9,12,15−トリエノエート
20ml無水ジクロロメタン中および窒素下の5,6−O−イソプロピリデン−アスコルビン酸(432mg、2mmol、1eq.)およびトリエチルアミン(960μl、7mmol、3.5eq.)の溶液に、1.91ml塩化リノレオイル(6mmol、3eq.、70%、工業用)を加え、次に混合物を周囲温度で16時間攪拌し続ける。反応はTLCにより追跡する。
周囲温度に戻した後、溶媒を蒸発させて、残渣をエーテル/水混合物で抽出する。有機相を1NHCl溶液2回、次に飽和NaCl溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を蒸発させた後で油状物が得られる。次に残渣をヘプタン/酢酸エチル混合物(100:0から70:30)を用いたシリカで、または分取HPLCにより精製する。無色油状物の形態で得られた生成物を一晩真空乾燥する。
604mgが収率41%で得られる。
H NMR(400MHz、CDCl):δ:0.91(2t、6H);1.27−1.39(m、30H);1.67(m、4H);2.06(m、4H);2.53(2t、4H);2.79(2t、4H);4.09(dd、1H);4.18(dd、1H);4.36(td、1H);5.14(d、1H);5.38(m、12H)。
1.2b 分子3:
(6Z,6’Z,9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイル−のジオクタデカ−6,9,12−トリエノエート
2.5当量のγ塩化リノレオイル(98%)から出発。
収率68%で無色油状物。
H NMR(400MHz、CDCl):δ:0.89(2t、6H);1.27−1.44(m、20H);1.47(m、4H);1.68(m、4H);2.06(m、8H);2.55(m、4H);2.80(m、8H);4.01(dd、1H);4.18(dd、1H);4.36(td、1H);5.14(d、1H);5.37(m、12H)。
1.2.c 分子4
(Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオレエート
2.5当量のオレオイル塩化物(98%)から出発。
精製後、収率53%で無色油状物。
H NMR(400MHz、CDCl):δ:0.88(2t、6H);1.26−1.55(m、46H);1.67(m、4H);2.00(m、8H);2.53(m、4H);2.77(2t、4H);4.09(dd、1H);4.18(dd、1H);4.36(td、1H);5.14(d、1H);5.34(m、4H)。
例2:本発明の化合物の合成
が水素原子を表す一般式(I)の分子
2.1 分子5
(9Z,12Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12−ジエノエート−
窒素下の3口フラスコ中で、110mlアセトン中の5,6−O−イソプロピリデン−アスコルビン酸(5.5g;25.44mmol)の懸濁液を調製し、その後3.53mlトリエチルアミンを加える。大量の白色沈殿が形成される。次に塩化リノレオイル(3.55ml;11.06mmol)を3分間かけて滴下し、次に混合物を周囲温度で10分攪拌し続ける。混合物は再び透明になり、次に少量の塩化トリエチルアンモニウムの沈殿が生ずる。固体を、焼結フィルタを通して濾過し、濾液を引いて油状物を得る。この油状物を100ml酢酸エチルに溶解して、飽和NaCl溶液で3回洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して蒸発させ、90%の収率で4.76gの褐色固体を得る。H NMR(300MHz、CDCl):δ:0.90(t,3H);1.27−1.39(m、20H);1.70(m、2H);2.06(m、4H);2.58(t、2H);2.78(t、2H);4.13(dd、1H);4.20(dd、1H);4.43(m、1H);4.65(d、1H);5.37(m、4H)。
[M+Na]=501.2;[2M+Na]=979.7
[M−H]=477.3;[2M−H]=955.7
2.2 分子6
5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オレエート− オレオイル塩化物から出発して、分子5についてと同じ操作様式。
白色固体、収率:96%;
H NMR(300MHz、CDCl):δ:0.89(t、3H);1.28−1.42(m、26H);1.69(m、2H);2.02(m、4H);2.62(m、2H);4.15(dd、1H);4.22(dd、1H);4.45(td、1H);4.70(d、1H);5.36(m、2H)。
[MNa]=503.2
[MH]=479.3
2.3 分子7
(9Z,12Z,15Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12,15−トリエノエート−
塩化リノレオイルから出発して分子5についてと同じ操作様式。
褐色固体。収率:91%。
H NMR(300MHz、CDCl):δ:0.99(t、3H);1.30−1.42(m、14H);1.72(m、2H);2.08(m、4H);2.62(m、2H);2.82(m、4H);4.15(dd、1H);4.22(dd、IH);4.45(td、1H);4.70(d、1H);5.38(m、6H)。
[MNa]=499.1
[MH]=477.2
例3:本発明による組成物
1.クリーム剤
2.乳剤
例4:生物学的試験の結果
4.1 生物学的試験の対象
細胞外マトリックス(ECM)は、組織とって構造的、調節的役割を有する動的構造である。真皮のECMは、線維(コラーゲンおよびエラスチン)および基本的物質(水、鉱物塩、糖タンパク質、ヒアルロン酸およびプロテオグリカン)で形成されている。それは皮膚にその膨満状態および機械的性質、即ち、硬度、弾性および張りを与える。ECMは、その構成高分子の合成と分解との平衡に関して絶えず再配列を受ける。ECMは、4タイプの高分子、即ち、コラーゲン、エラスチン、構造糖タンパク質およびグリコサミノグリカン(ヒアルロン酸など)で形成されている。
コラーゲンは、真皮中に非常に多く含まれる繊維状タンパク質である。それらは、大部分、タイプI、IIIおよびVの線維性コラーゲンである。コラーゲンは繊維状網目構造の必須成分を形成して、皮膚に抵抗力および弾性を付与する機械的役割を果たす。
ECMの分解は、幾つかの生理学的過程の道筋(瘢痕治癒、胚発生、血管新生…)にわたって起こるが、病理学的過程(関節炎、関節症、動脈硬化、腫瘍発生および転移形成…)中にも起こる(Fisher et al., N.Engl.J.Med.333:1419,1997;Shapiro SD Current Opinion in Cell Biology 10:602,1998)。ECMの成分は、マトリックスメタロプロテアーゼまたはMMPと呼ばれるエンドペプチダーゼタイプの酵素により主に分解される(Nagase and Woessner, J.Biol.Chem.274:21491,1999)。MMPは、瘢痕治癒過程において有効な役割を果たすが、それらは、皮膚のたるみおよびしわの発生の原因にもなる。MMPは亜鉛エンドペプチダーゼタイプの酵素である。
MMP−1、または間質コラゲナーゼは、主にタイプIの線維性コラーゲンの三重ヘリックスを分解し、コラーゲンII、II、VIIIおよびXも分解する(Kahari VM and Saarialho-Kere U, Exp.Dermatol.6:199,1997)。MMP−1は、それ故、コラーゲンの分解開始において決定的役割を果たす。このコラーゲン分解活性は瘢痕治癒とも関連する。タイプ1ストロメライシン(MMP−3)は、フィブロネクチンおよびラミニンなどの糖タンパク質、ある種のプロテオグリカン、エラスチン、ゼラチンおよびコラーゲンIVおよびVを分解する。皮膚レベルにおいて、MMP−1およびMMP−3は、ケラチン生成細胞および線維芽細胞の両方により発現する。皮膚老化中に、ヒアルロン酸量の減少も上皮および真皮両方のレベルで観察される。この減少はヒアルロン酸合成の低下およびヒアルロニダーゼ活性の上昇の結果である(Stern R, Maibach HI(2008) Hyaluronan in skin:aspects of aging and its pharmacologic modulation. Clin Dermatol 26:22)。
それに加えて、多数の研究により、老化進行中の炎症促進性サイトカイン(IL−6、IL−8…)の増加が証明されている(Franceschi et al, Mechanisms of ageing and development, 92, 2006)。この炎症促進性状況または「炎症性老化」は、老化の徴候の発症、特に皮膚レベルにおける老化の徴候の発症に直接関与しているように思われる(Mocchegiani et al., Biomed Central, 1:5, 2004; Licastro et al., Neurobiol. Aging, 2006)。そのとき、Tリンパ球により産生されるサイトカインであるインターロイキン(IL−6またはIL−8)が発現する。
一般式(I)の化合物の皮膚老化および炎症に対する活性を証明するために、これらの化合物の効果を、Hで処理して細胞老化過程を模倣したヒト真皮の線維芽細胞におけるMMP−1、MMP−3およびIL8の遺伝子発現で測定した。これらの一般式(I)の化合物の効果は、ヒアルロン酸合成およびヒアルロニダーゼ活性でも測定した。ヒアルロン酸合成を刺激すると、皮膚水和が改善および/または回復させることもできる(Bissett DL. J. Cosmet. Dermatol. 2006 Dec. 5(4): 309-15. Glucosamine: an ingredient with skin and other benefits)。
同様に、本発明による一般式(I)の化合物の色素脱失活性を証明するために、これらの化合物の効果を、マウスの黒色腫の細胞系:系B16−F10における比色アッセイによるメラニン合成で測定した。
それに加えて、一般式(I)の化合物の頭部および/または身体の毛の再成長に対する効果も、真皮乳頭細胞の増殖刺激およびヒト毛包の成長刺激に対するそれらの活性を測定することにより評価した。
4.2.1. ヒト線維芽細胞におけるMMP−1、MMP−3およびIL8の遺伝子発現についての試験プロトコル
細胞処理
ヒト真皮の線維芽細胞(手術で廃棄された皮膚から単離された)をDMEM培地+10%FCS中で培養した。細胞をビタミンCおよび試験すべき化合物で、16時間37℃で前処理して、次にHで刺激した。次に細胞をビタミンCおよび(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12−ジエノエートを含むDMEM中に移し替えた。負荷終了の72時間後に、線維芽細胞の老化が始まった:老化を示す線維芽細胞はもはや増殖しないが代謝活性は残る(Hayflick, J.Invest.Dermatol.,73;8-14,1979)。次に細胞をRNeasy(商標)キット(QIAGEN)のライシスバッファーで溶解した。
逆転写およびリアルタイムPCR
抽出したRNAをQiagenによるQuantitect逆転写キットの指示にしたがって相補性DNAに変換した。リアルタイムPCR分析は、iQ Icycler fluorescence thermocycler(BIO−RAD)を使用して行った。
MMP−1、MMP−3、IL8をコードするmRNAの発現レベルを、リアルタイムPCR技法を使用して分析した。目的の遺伝子の発現レベルを標準化するために、Vandesompela et al., Genome Biol. 3: RESEARCH 0034(2002)により開発された分析戦略を選択した。1回目のPCR中に得られたΔC値を使用して、Genorm software version 3.4(Vandesompele J et al., Genome Biol. 3: RESEARCH 0034 2002)のアルゴリズムにより、細胞試験の精密な実験条件下における3種の参照遺伝子の安定性のレベルが比較され、最も安定な参照遺伝子の決定が可能になる。本発明者らのモデルにおいて、試験した3種の参照遺伝子は以下のものである:β−アクチン(ヒトβ−アクチン)、GAPDH(ヒトグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)およびYWHAZ(チロシン−3−モノオキシゲナーゼ、トリプトファン(tryptopgan)−5−モノオキシゲナーゼ活性化タンパク質ゼータポリペプチド)。
最初のステップで、目的の遺伝子について得たCt値を、参照遺伝子について得たCt値との比較で、各実験条件に対して標準化する。
したがって、計算は以下のようにした:
ΔCt=Ct目的の遺伝子−Ct参照遺伝子
これらのΔCt値は統計分析に使用される生の未変換値を表す。
計算の第2ステップで、目的の遺伝子の処理中のコピー数の変動を決定する。そのようにしてΔΔCtを計算する:
ΔΔCt=ΔCt未処理NHF−ΔCt処理NHF
したがって、未処理対照について、このQRは1に等しい。次に、この対照と比較して目的の遺伝子の誘発または阻害要因を計算することが可能である。
4.2.2 ヒト線維芽細胞におけるMMP−1、MMP−3およびIL8の発現についての試験結果
統計分析
統計分析は、「一元配置分散分析(one−way ANOVA)」といわれる検定を使用して実施した。次にDunnett検定を使用する分散分析により、分析された遺伝子の各々について、両方の場合におけるHの存在下での化合物による正常成人線維芽細胞のΔCt値の比較ができる。次にこの検定により、両方の条件について得られた結果の有意性を特徴づける「p値」が得られる。有意度は以下のようにして決定した:
有意 p<0.05(
非常に有意 p<0.005(**
高度に有意 p<0.001(***
有意でない p>0.05。
本発明の化合物により処理したまたは未処理の老化を示すヒト真皮線維芽細胞におけるMMP−1、MMP−3およびIL−8のmRNAの発現分析
・mRNAの相対量の分析
ヒト真皮線維芽細胞を、Hで刺激する前および後に、アスコルビン酸または(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12−ジエノエート(=表2中の有効成分1)の存在下でインキュベートした。Hにより変化されたmRNAの発現に対するこれらの抽出物の効果を分析するために、有効成分で処理してHで刺激した試料を、Hのみで刺激した試料と比較した。各試料について、目的のmRNAの発現レベルは、最も安定な参照遺伝子のmRNAの発現レベルで標準化しなければならなかった。
・活性比率の分析
評価すべき有効成分による異なったmRNAの発現レベルの阻害率も、式:
を使用して計算することが可能である。
分子1((9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイル)のジオクタデカ−9,12−ジエノエート)は、MMP1、MMP3およびIL−8の発現を、アスコルビン酸よりも実質的に強く阻害する。
本発明は、皮膚老化を予防および/または治療するための一般式(I)の化合物の使用に関する。
本発明は、炎症性皮膚反応を治療するための式(I)の化合物の使用にも拡張される。
4.3.1 分子B16−F10におけるメラニンのアッセイのための試験プロトコル
原理:
これは、マウス黒色腫の細胞系:系B16−F10における比色アッセイによりメラニン合成を測定する試験である。この試験により有効成分の色素脱失特性の評価が可能になる。
B16−F10細胞を、96ウェルプレート上にFCS(ウシ胎児血清)で補完したDMEM媒体中に播種して、37℃、5%COで24時間インキュベートした。次に細胞をα−MSH(メラニンの合成を刺激するため、観察された刺激は約150%であった)で刺激して、試験すべき有効成分で72時間処理した。有効成分の各濃度を少なくとも3つ試験した。次に、ライシスバッファーに溶解した細胞内メラニンにより追跡した合計メラニンを、405nmでの吸収によりアッセイした。合計タンパク質を溶解産物中で定量して、結果はmgメラニン/mgタンパク質で表す。活性比率(%)は以下のようにして計算した:
負の値は阻害を示し、それに対して正の値はメラニンの誘導された合成を示す。
4.3.2 B16−F10細胞におけるメラニンのアッセイ結果
これらの試験結果(表2)は、分子1、2、3、4、5、6による細胞内メラニンの合成阻害がビタミンCによるものよりも大きいことを示す。
本発明は、皮膚および/または体毛および/または頭髪を色素脱失するための一般式(I)の化合物の使用にも関する。
4.4.1 ヒアルロン酸合成のためのアッセイプロトコル
ケラチン生成細胞HaCaTをDMEM培地+10%FCS中で培養する。細胞を試験すべき有効成分(表1)により37℃で48時間処理する。ELISAタイプキット(Echelon(商標))を使用して、合成されたヒアルロン酸(HA)を培地中でアッセイする。
活性比率は以下のようにして定量した。
対照と比較した変化率
%p/C=([HA]有効成分/[HA]対照×100)−100
4.4.2 ヒトケラチン生成細胞HaCaT系におけるヒアルロン酸のアッセイ結果
これらの試験結果(表3)は、生物学的活性濃度(30および300μM)で使用されたビタミンCが、HaCaTケラチン生成細胞におけるヒアルロン酸合成に対して効果を有しないことを示す。
分子1は、2および20μMで、ヒアルロン酸合成を強く刺激する:+132% +70%。
本発明は、したがって、皮膚老化の予防および/または治療のための一般式Iの化合物の使用に関する。本発明は、皮膚水和を改善および/または回復するための一般式Iの化合物の使用にも拡張される(Bissett DL. J. Cosmet. Dermatol. 2006 Dec. 5(4): 309-15. Glucosamine: an ingredient with skin and other benefits)。
4.5.1 ヒアルロニダーゼ活性のアッセイプロトコル
ヒアルロニダーゼ活性は、残存ヒアルロン酸(HA)のアッセイにより測定する。基質を担体に固定化して、次に酵素および試験すべき多量の化合物の存在下に入れる。残存HA、即ち加水分解されなかったHAをHA−Elisa検出システム:Hyaluronan enzyme−linked immunosorbent assay(Echelon Biosciences(商標))を使用してアッセイする。
ウシ起源の0.5単位のヒアルロニダーゼ(BTH、ウシ精巣ヒアルロニダーゼ)を、試験すべき化合物で、37℃で予めインキュベートした。この混合物を、マイクロプレートウェルの表面に固定化されたHA上に堆積した。酵素反応はpH7.2、37℃で行った。洗浄に続いてヒアルロネクチン(NH)による残存HAの認識ステップを実施した。結合したNHの量を、アルカリホスファターゼと結合した抗NH抗体を用いたELISAにより測定した。ホスファターゼの基質p−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩(pnNpp)により405nmにおける分光学的検出が可能になる(Delpech B et al., Analytical Biochemistry 149, 555(565(1985); Robert Stern et al. Analytical Biochemistry 251, 263-269(1997))。OD強度は残存HA量と相関づけられた。残存HA量は酵素活性と直結する。阻害剤の存在において、残存HAの量が多いほど、試料の阻害性が大きい。ヒアルロニダーゼの阻害率(%)が示されるだろう。
したがって、酵素不在の平均総活性と、試験すべき化合物の添加または無添加における酵素の総活性とにおける差を表す正味の酵素活性を計算した。
試験すべき化合物に関する酵素阻害率は以下のようにして計算した:
阻害(%)=(最大正味酵素活性)−試験すべき化合物の存在下の正味酵素活性)/最大正味酵素活性。
式中、最大正味酵素活性は、0.5Uの平均正味酵素活性を表す。
4.5.2 ヒアルロニダーゼ活性のアッセイ結果
これらの試験結果(表4)は、これらの濃度(100および500μM)で使用されたビタミンCがヒアルロニダーゼ(BTH)に対して効果を有しないことを示す。
これらの試験結果は、6−パルミチン酸アスコルビルが、10〜250μMで、有利に、用量効果をもってヒアルロニダーゼを阻害することを示す。
5μM〜500μMの分子1、4、5および6は、ヒアルロニダーゼを強く阻害する:分子1は用量効果を有し、そのIC50は25〜30μMの領域にある。
分子1、4、5および6は、参照分子であるとみなされるパルミチン酸アスコルビルと同等またはより活性である(A. Botzki et al, JBC Vol. 279 N° 44, pp 45990-450007)。
これらの試験結果は、分子1、4、5および6によるヒアルロニダーゼ阻害が、パルミチン酸アスコルビルおよびビタミンCと同等またはそれより大きいことを示す。したがって、記載された分子の抗ヒアルロニダーゼ活性は、アスコルビン酸および6−パルミチン酸アスコルビルよりも大きい。
本発明は、したがって、皮膚老化の予防および/または治療のためならびに皮膚水和を改善および/または回復するための一般式Iの化合物の使用に関する。
4.6.1 真皮乳頭細胞の増殖のインビトロ刺激のためのプロトコル
ヒト真皮の乳頭細胞(Promocell)を培養液に入れて、10%FCSで補完したDMEM培地中で初期継代培養物に保った。それらを、次に96ウェルプレートで、10%FCSで補完したDMEM培地中に播種して12時間おいた。培地を無血清DMEM培地により置き換え、次に1%FCSおよび異なった試験濃度の分子1、2、3および4で補完したDMEMにより置き換えた。60時間のインキュベーション後、細胞増殖をBrdU組込みにより評価した。
4.6.2 真皮乳頭細胞のインビトロ刺激増殖試験結果
添付図1中のダイアグラムは、異なる分子の存在下での細胞のBrdU組込みの増加および刺激された細胞増殖を示す(対照の%として)。
分子1は真皮乳頭細胞の増殖を、用量効果をもって刺激し、活性は濃度12.5μMで最高である(169%増殖)。同様に、分子4は、濃度6.25μMで113.9%の刺激で増殖を誘発する。分子2および3も細胞増殖を誘発するが、分子1および4より程度は小さい。
本発明は、頭部および/または身体の毛の再成長を刺激するための一般式(I)の化合物の使用にも関する。
4.7.1 ヒト毛包の成長を刺激するためのプロトコル
ヒト頭皮の後頭部域の生検材料を手術廃棄物から得た。毛包を双眼顕微鏡下で顕微解剖により単離した。それらを、Philpottの技法(Philpott MP et al, J Cell Sci. 97: 463-471, 1990)にしたがって培養液中に個々に入れた。成長期相にある毛包を、分子3または4の存在下で、10μg/mLインスリン、10μg/mLトランスフェリン、10ng/mLヒドロコルチゾン、1mMグルタマックスI、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、250ng/mLアンホテリシンBで補完したWilliamの培地を入れた24ウェル培養シャーレ中で11日間インキュベートした。インキュベーション培地は定期的に更新した。4日および8日の培養で各毛包の伸長(μm)を毛包の取り込み画像で測定した。
4.7.2 ヒト毛包の刺激された成長についての試験結果
添付図2中のダイアグラムは、4日および8日のインキュベーション後の毛包の伸張に対する分子3および4の効果を示す。
次の表(表5)は、各処理条件について得られた成長率(%)、ならびに分子3および4で得られた刺激された毛髪成長率(%)を対照と比較して示す。
分子3および4は15μMの濃度で毛成長を有意に刺激し、4日培養後の成長をそれぞれ25%および19%で刺激した。
本発明は、頭部および/または身体の毛の再成長を刺激するための一般式(I)の化合物の使用にも関する。
4.8.1. 毛球変性の評価のためのプロトコル
毛包変性は、カイネティクス(kinetics)が11日培養後に終了したときに、毛球の形態学的損傷(丸まり、変形)の観察により評価する。アポトーシス率(%)は、毛包数の合計に対するアポトーシス毛包数を計数することにより計算する。
4.8.2 毛球変性の評価結果
次の表(表6)は、11日のインキュベーション期間後の毛包の生存に対する分子4の効果を示す。
分子4は毛髪変性の顕著な抑制を可能にする(アポトーシス毛髪が対照の75%に対して50%)。したがって、分子4は、毛髪生存が維持されることを可能にする抗アポトーシス効果を有するように思われる。
本発明は、頭部および/または身体の毛の再成長を刺激するための一般式(I)の化合物の使用にも関する。

Claims (18)

  1. 一般式(I)の化合物:
    (式中、
    は、少なくとも1つの不飽和、有利には1〜6、好ましくは1〜4の不飽和を含むC12−C24不飽和脂肪酸の炭化水素鎖であり、
    およびRは、独立してまたは同時に、水素、C−Cアルキルまたはフェニルを表し、および
    は、水素原子またはCOR’であり、ここでR’は、少なくとも1つの不飽和、有利には1〜6、好ましくは1〜4の不飽和を含むC12−C24不飽和脂肪酸の炭化水素鎖である)。
  2. およびRがC−Cアルキルを表す、請求項1に記載の一般式(I)の化合物。
  3. およびRがメチルを表す、請求項1または2に記載の一般式(I)の化合物。
  4. が1〜3の不飽和を含むC14−C18不飽和脂肪酸の炭化水素鎖を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  5. ’が1〜3の不飽和を含むC14−C18不飽和脂肪酸の炭化水素鎖を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  6. 不飽和脂肪酸が、ラウロレイン酸(C12:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リシノール酸(C18:1);ガドレイン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、α−リノレン酸(C18:3);ステアリドン酸(C18:4)、エイコサトリエン酸(C20:3)、エイコサテトラエン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、テトラコサペンタエン酸(C24:5)、テトラコサヘキサエン酸(C24:6)、リノール酸(C18:2)、γ−リノレン酸(C18:3)、エイコサジエン酸(C20:2);ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、ドコサテトラエン酸(C22:2)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、アドレン酸(C22:4)およびカレンジン酸(C18:3)からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  7. 不飽和脂肪酸が、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α−リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  8. がCOR’を表す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  9. とR’とが同じであってもまたは異なっていてもよい、請求項8に記載の一般式(I)の化合物。
  10. が水素原子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  11. (9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12−ジエノエート
    (9Z,9’Z,12Z,12’Z,15Z,15’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−9,12,15−トリエノエート
    (6Z,6’Z,9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオクタデカ−6,9,12−トリエノエート
    (Z)−2−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3,4−ジイルのジオレエート
    (9Z,12Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12−ジエノエート
    (9Z,12Z,15Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−9,12,15−トリエノエート
    (6Z,9Z,12Z)−5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オクタデカ−6,9,12−トリエノエート
    5−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−イル オレエート
    のなかから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  12. 薬剤としてまたは化粧有効成分としてそれらを使用するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  13. 色素脱失有効成分、老化防止有効成分、水和有効成分、抗炎症性有効成分、頭部および/または身体の毛の再成長を刺激するための有効成分、または抗酸化性有効成分として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物。
  14. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1種の一般式(I)の化合物を含んでなる、局所投与用組成物。
  15. 少なくとも0.01重量%〜10重量%の一般式(I)の化合物、好ましくは0.1重量%〜5重量%の一般式(I)の化合物を含んでなる、請求項14に記載の局所投与用組成物。
  16. 皮膚および/または頭髪および/または体毛の色素脱失、皮膚老化の治療および/または予防、表皮の水和、頭部および/または身体の毛の再成長の刺激、または皮膚炎症の治療を目的とする、請求項14または15に記載の局所投与用組成物。
  17. カルボキシル官能基が活性型にある不飽和脂肪酸と、以下の式(II):
    のアスコルビン酸誘導体とのカップリングによる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物の合成方法。
  18. カルボン酸官能基が酸塩化物の形態に活性化されている不飽和脂肪酸から出発して、塩基および場合によりカップリング助剤の存在下で、カップリング反応を実施する、請求項17に記載の方法。
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