JP2012224652A - 液体洗浄剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非イオン界面活性剤(A)を40質量%以上と、バチルス属由来で、かつ、10℃での酵素活性値が35℃での酵素活性値の6%以上であるプロテアーゼ(B)と、一般式(c1)で表される水混和性有機溶剤(C)と、キレート剤(D)とを含有する液体洗浄剤。但し、(B)成分の酵素活性値は、ミルクカゼインを基質として測定される値である。式(c1)中、R1は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基である。mはPOの平均繰返し数、nはEOの平均繰返し数を表し、mは0〜3の数、nは0〜3の数であり、1≦m+n≦6である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を表し、EOとPOとは混在して配列してもよい。
[化1]
【選択図】なし
Description
また、衣料用洗剤には、界面活性剤と共に洗浄力をさらに高めるために酵素が配合されているものがある。たとえば衣料の襟や袖口の汚れに含まれるタンパク質汚れは、界面活性剤だけでは充分に除去できない汚れである。これに対してタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を配合することにより、タンパク質汚れは分解されて容易に除去される。
しかし、酵素は、液体中で、特にキレート剤の作用によりその構造が崩れて失活しやすいという問題がある。このため、液体洗浄剤中の酵素の安定性は、粉末状洗剤の場合と比較して低いのが実情である。
従来、キレート剤を含有する液体洗浄剤中での酵素の安定化技術としては、遊離カルシウムイオンを生じるカルシウム塩をキレート剤と共に配合する方法(特許文献1参照)、短鎖カルボン酸塩(蟻酸塩、乳酸塩)をキレート剤と共に配合する方法(特許文献2参照)等が開示されている。
そこで、このような洗濯条件下、少ない洗浄剤使用量でも高い洗浄効果を発現するため、高活性の酵素を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤が求められる。
しかしながら、酵素は、上記のように、液体中で特にキレート剤の作用により失活しやすく、界面活性剤が高濃度であるほど、より失活しやすい。さらに、高活性を示す酵素ほど、反応性が高いために失活しやすい傾向がみられる。
これに対して、従来の液体洗浄剤中での酵素の安定化技術では、高濃度の界面活性剤の存在下で、高活性の酵素の安定化を図るのは困難であった。
すなわち、本発明の液体洗浄剤は、非イオン界面活性剤(A)を40質量%以上と、バチルス属由来で、かつ、10℃での酵素活性値が35℃での酵素活性値の6%以上であるプロテアーゼ(B)と、下記一般式(c1)で表される水混和性有機溶剤(C)と、キレート剤(D)とを含有することを特徴とする。但し、(B)成分の酵素活性値は、ミルクカゼインを基質として測定される値である。
以下、これらの4成分をそれぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分ともいう。
(A)成分は、本発明の液体洗浄剤において、主として洗浄力を付与するために用いられる。
(A)成分としては、下記一般式(a1)で表されるポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、下記一般式(a2)で表されるポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が好適に挙げられる。
R12のアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。R12のアルケニル基は、炭素数2〜3のアルケニル基が好ましい。
XはO、COOが好ましい。
前記式(a1)中、XがCOOのとき、(A)成分は脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤である。この場合において、洗浄力が良好であることから、R11の炭素数は9〜18であることが好ましく、より好ましくは11〜18である。R11は不飽和結合を有していてもよい。また、この場合において、R12は、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
tは、好ましくは0〜3の数である。tが6を超えると、液体洗浄剤の高温下での保存安定性が低下する傾向にある。
EOとPOとは混在して配列してもよく、(EO)s/(PO)tは、EOとPOとがランダム状に付加していてもよく、ブロック状に付加していてもよい。
前記式(a2)中、rは、r≧0であり、好ましくはr≧1である。p+r=10〜30を満たす数であり、好ましくはp+r=14〜20を満たす数である。
前記式(a2)中、EOとPOとの比率は、q/(p+r)で表される比で0.1〜0.5であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3である。
q/(p+r)で表される比が下限値以上であると、泡が立ちすぎず、泡立ちの適正化が図られやすい。上限値以下であると、適度な粘度が得られやすくなり、ゲル化が抑制されやすい。
(EO)p/(PO)qにおけるEOとPOとは、いずれか一方のみが存在していてもよく、混在して配列してもよい。(EO)p/(PO)qは、EOとPOとがランダム状に付加していてもよく、ブロック状に付加していてもよい。
この式(a2)で表される(A)成分を用いると、液体洗浄剤は適度な粘度が得られやすくなり、ゲル化も抑制される。また、泡立ち性が向上し、生分解性もより良好になる。
上記のなかでも、(A)成分としては、ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が好ましく、前記式(a1)で表されるものがより好ましく、そのなかでもアルコールアルコキシレートが特に好ましい。
(A)成分の含有量が40質量%以上であると、本発明の効果が顕著に発揮される。また、液体洗浄剤組成物に高い洗浄力を付与できる。(A)成分の含有量が上限値以下であると、液体洗浄剤の保存安定性(外観安定性、液面における皮膜形成性など)が向上する。
なお、従来、主な洗浄成分として第1級アルコールエトキシレートのような非イオン界面活性剤が知られているが、この第1級アルコールエトキシレートはそのゲル化領域が大きいため、40質量%以上配合して濃縮タイプの液体洗浄剤とすることは困難である。
(B)成分は、本発明の液体洗浄剤において、主として界面活性剤と共に、洗浄力をさらに高める作用を奏する。特に、(B)成分は、低温(5〜15℃)でも高活性を示すものであり、その一方、従来の酵素に比べて反応性が高く、安定化配合が難しいものである。
ミルクカゼイン(Casein、Bovine Milk、Carbohydrate and Fatty Acid Free/Calbiochem(登録商標))を1N水酸化ナトリウム(1mol/L水酸化ナトリウム溶液(1N)、関東化学社製)に溶解してpHを10.5とし、0.05Mホウ酸(ホウ酸(特級)、関東化学社製)水溶液でミルクカゼインの濃度が0.6質量%になるよう希釈し、プロテアーゼ基質とする。
次いで、酵素製剤をイオン交換水に溶解して、濃度0.4質量%の酵素製剤水溶液を調製する。
該酵素製剤水溶液1gを、塩化カルシウム(塩化カルシウム(特級)、関東化学社製)3°DH硬水で25倍希釈した溶液をサンプル溶液とする。
該サンプル溶液1gに、上記プロテアーゼ基質5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、10℃又は35℃で30分間静置して酵素反応を進める。
その後、酵素反応停止剤のTCA(トリクロロ酢酸(特級)、関東化学社製)の0.44M水溶液5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、20℃で30分間静置して、析出する未反応基質を0.45μmフィルターで除去し、ろ液を回収する。
回収したろ液の波長275nmにおける吸光度(吸光度A)を、島津製作所社製の紫外可視分光光度計UV−160を用いて測定し、反応温度10℃における吸光度と、反応温度35℃における吸光度とを比較する。このとき、吸光度Aが大きいほど、ろ液中に存在するチロシン(プロテアーゼがプロテアーゼ基質を分解することにより産生する)の量が多いことを示す。
目的成分以外の吸収の影響を除くため、別途、サンプル溶液1gに、TCA5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、プロテアーゼ基質5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌し、0.45μmフィルターで除去してろ液を回収し、該ろ液の波長275nmの吸光度(吸光度B)を、前記UV−160を用いて測定する。
上記測定結果から、下式により、10℃下でのプロテアーゼ活性値と35℃下でのプロテアーゼ活性値との比較を行う。なお、下式に代入する各試料の波長275nmにおける吸光度の値は、気泡などの散乱光の影響を除外するため、同時に測定した600nmの吸光度の値を差し引いて用いる。
35℃下での酵素活性値を100%としたときの10℃下でのプロテアーゼ活性値(%)=(10℃反応品の吸光度A−10℃反応品の吸光度B)/(35℃反応品の吸光度A−35℃反応品の吸光度B)×100
10℃での酵素活性値が35℃での酵素活性値の6%以上であると、低温の水を用いても高活性を示し、特にタンパク質汚れに対する洗浄力が従来のプロテアーゼに比べて高くなる。
液体洗浄剤中の(B)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.01〜2質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましく、0.2〜1質量%であることが特に好ましい。
(B)成分の含有量が下限値以上であると、本発明の効果が発揮されやすくなる。また、液体洗浄剤組成物の洗浄力がより高まる。(B)成分の含有量が上限値以下であると、液体洗浄剤の保存安定性(外観安定性など)が向上し、濁りや沈殿を生じにくい。また、コストがより低減する。
(C)成分は、下記一般式(c1)で表される水混和性有機溶剤である。
本発明において「水混和性有機溶剤」とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解する有機溶剤をいう。
(EO)n/(PO)mにおけるEOとPOとは、いずれか一方のみが存在していてもよく、混在して配列してもよい。(EO)n/(PO)mは、EOとPOとがランダム状に付加していてもよく、ブロック状に付加していてもよい。
(C)成分として具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−モノ2−エチルへキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、オキシエチレン・ジオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル;エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類などが挙げられる。
上記のなかでも、(C)成分としては、(D)成分を含有し、かつ、高濃度の界面活性剤の存在下での酵素安定性が良好に維持されやすいことから、炭素数1〜3のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと、炭素数1〜8のアルカノールとからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−モノ2−エチルへキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、オキシエチレン・ジオキシプロピレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
(C)成分の含有量が下限値以上であれば、液体洗浄剤の保存安定性(液面で皮膜が形成しにくいなど)、流動性がいずれも向上する。(C)成分の含有量が上限値を超えると、液体洗浄剤組成中の水分量が少なくなり、酵素安定性が低下するおそれがある。
本発明の液体洗浄剤においては、(D)成分を含有することにより、主として液体洗浄剤の透明均一性がより高まり、外観安定性が良好となる。
(D)成分のなかで好適なものとしては、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、クエン酸、メチルグリシン二酢酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
なかでも、(D)成分としては、外観安定性がより向上しやすいことから、クエン酸、メチルグリシン二酢酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、クエン酸又はその塩とメチルグリシン二酢酸又はその塩との組合せが特に好ましい。
液体洗浄剤中の(D)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.01〜3質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましく、0.01〜0.5質量%であることが特に好ましい。
(D)成分の含有量が下限値以上であれば、液体洗浄剤の保存安定性(外観安定性など)が向上する。(D)成分の含有量が上限値以下であると、酵素の安定化がより図られる。
本発明の液体洗浄剤は、液体洗浄剤の調製しやすさ、使用する際の水への溶解性等の観点から、溶媒として水を含有することが好ましい。
液体洗浄剤中の水の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して10〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
水の含有量が下限値以上であると、経時に伴う液体洗浄剤の液安定性がより良好となり、上限値以下であれば、液粘度が適度に低くなり、使用性の観点から良好である。
本発明の液体洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分を配合してもよい。
その他の成分としては、特に限定されず、衣料用の液体洗浄剤組成物に通常用いられる成分を配合することができ、具体的には以下に示すものが挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられ、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられる。
また、これら以外のその他の界面活性剤として、天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤等を含有してもよい。
(C)成分以外の有機溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などの炭素数2〜6のアルキレングリコール類;エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらのなかでも、液体洗浄剤の液面で皮膜が形成しにくいこと、高濃度の界面活性剤組成中でのゲル化が抑えられやすいことから、プロピレングリコールを(C)成分と併用することが好ましい。アルコール類の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して3質量%以下とすることが好ましい。アルコール類の含有量を3質量%以下とすることにより、酵素がより失活しにくくなる。
pH調整剤としては、液安定性の面から、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。
ハイドロトロープ剤としては、パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩などが挙げられる。
着色剤としては、アシッドレッド138、Polar Red RLS、アシッドイエロー203、アシッドブルー9、青1号、青色205号、ターコイズP−GR(いずれも商品名)等の汎用の色素や顔料を使用できる。着色剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.00005〜0.0005質量%程度が好ましい。
着香剤としては、特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A、B、C、D等を使用できる。着香剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.1〜1質量%が好ましい。
乳濁化剤としては、ポリスチレンエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられ、通常、固形分30〜50質量%のエマルジョンが好適に用いられる。具体例としては、ポリスチレンエマルジョン(サイデン化学社製、「サイビノールRPX−196 PE−3」、固形分40質量%)等が挙げられる。乳濁化剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.01〜0.5質量%が好ましい。
液体洗浄剤のpHが前記範囲内であると、液体洗浄剤を長期保存した際、特に酵素活性が保たれ、良好な洗浄力が維持されやすい。
本発明において、液体洗浄剤(25℃に調温)のpHは、pHメーター(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)等により測定される値を示す。
本発明の液体洗浄剤では、液体中での安定化が難しいとされる酵素の活性が高い。加えて、本発明によれば、従来の酵素に比べて低温領域でも高活性を示し、一方で反応性が高いために失活しやすい酵素の安定化が図られる。
かかる効果が得られる理由としては定かではないが以下のように推測される。
酵素とキレート剤とを含有する液体洗浄剤においては、一般的に、キレート剤の作用により、酵素の構造を維持しているカルシウムイオン等の金属イオンが引き抜かれて酵素の構造が崩れることで、酵素の活性が著しく低下してしまう。
本発明においては、高濃度(40質量%以上)の非イオン界面活性剤(A)とキレート剤(D)の存在下で、特定のプロテアーゼ(B)と共に、特定の水混和性有機溶剤(C)を含有する。
水混和性有機溶剤としてエタノール等の1価アルコールを用いた場合、(D)成分のキレート定数が高くなることにより、(B)成分中のカルシウムイオンが容易に引き抜かれて酵素活性が著しく低下しやすくなる。これに対して、(C)成分を用いた場合、(D)成分のキレート定数はほとんど変化しないため、1価アルコールを用いた場合に比べて、(B)成分中のカルシウムイオンが引き抜かれず、その構造が保たれやすくなっている、と考えられる。このように、1価アルコールを用いた場合と(C)成分を用いた場合とで効果に差があるのは、本発明の液体洗浄剤が水の比較的少ない系であることが考えられる。
以上により、本発明においては、高濃度の界面活性剤の存在下でも、さらに高活性のプロテアーゼであっても、酵素の安定化が図られる、と推測される。
本発明においては、特定の(C)成分を選択していることにより、さらに、液体洗浄剤のゲル化や固化が抑制され、透明均一性と流動性が良好であり、液面に皮膜が形成しにくい。また、キレート剤(D)を含有することにより、本発明の液体洗浄剤は、低温保存での析出が抑制され、透明均一性が高まる。
本発明の液体洗浄剤は、少ない洗浄剤使用量で高い洗浄効果を発現する。
本発明の液体洗浄剤は、特に衣料用として好適であり、界面活性剤濃度の高い組成(濃縮組成)に適したものである。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
A−1:以下のようにして合成された、天然アルコール(P&G社製の商品名CO−1214)に12モル相当のエチレンオキシドが付加したもの[LMAO(C12/14−15EO)]、合成品。以下のようにして合成した。
P&G社製の商品名「CO−1214」861.2gと、30質量%NaOH水溶液2.0gとを耐圧型反応容器中に採取し、容器内を窒素置換した。次に、温度100℃、圧力2.0kPa以下で30分間脱水した後、温度を160℃まで昇温した。次いで、反応液を撹拌しながら、エチレンオキシド(ガス状)760.6gを反応液中に徐々に加えた。このとき、吹き込み管を使って、反応温度が180℃を超えないように添加速度を調節しながら加えた。エチレンオキシドの添加終了後、温度180℃、圧力0.3MPa以下で30分間熟成した後、温度180℃、圧力6.0kPa以下で10分間、未反応のエチレンオキシドを留去した。次に、温度を100℃以下まで冷却した後、反応物の1質量%水溶液のpHが約7になるように、70質量%p−トルエンスルホン酸を加えて中和し、LMAO(C12/14−15EO)を得た。
特開2000−144179号公報に記載の合成方法(サンプルDに対応するもの)に準じて合成した。すなわち、化学組成が2.5MgO・Al2O3・nH2Oである水酸化アルミナ・マグネシウム(協和化学工業社製の商品名「キョーワード330」)を600℃で1時間、窒素雰囲気下で焼成して得られた焼成水酸化アルミナ・マグネシウム(未改質)触媒2.2gと、0.5規定の水酸化カリウムエタノール溶液2.9mLと、ラウリン酸メチルエステル280gと、ミリスチン酸メチルエステル70gとを4Lオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内で触媒の改質を行った。次いで、オートクレーブ内を窒素で置換した後、昇温を行い、温度を180℃、圧力を3×105Paに維持しつつ、エチレンオキシド1052gを導入し、撹拌しながら反応させた。さらに、反応液を80℃に冷却し、水159gと、濾別助剤として活性白土及び珪藻土をそれぞれ5gとを添加した後、触媒を濾別し、MEE(C12/14−15EO)を得た。
A−4:ペンタノールをガーベット反応に供して得られる炭素数10のアルコールに9モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(BASF社製、商品名Lutensol XP90)。
B−1:コロナーゼ(ノボザイムス社製、商品名Coronase 48L)、由来菌Bacillus clausii、分子量27kDa、等電点10.1;サビナーゼをアミノ酸置換したもの。
B−2:リカナーゼ(ノボザイムス社製、商品名Liquanase 2.5L)、由来菌Bacillus clausii、分子量27kDa、等電点10.1;サビナーゼをアミノ酸置換したもの。
B−3:プロペラーゼ(ジェネンコア社製、商品名Properase 1600L)。
B’−1:エバラーゼ(ノボザイムス社製、商品名Everlase 16L TYPE EX)、由来菌Bacillus clausii、分子量27kDa、等電点10.1;サビナーゼをアミノ酸置換したもの。
B’−2:サビナーゼ(ノボザイムス社製、商品名Savinase 16L)、由来菌Bacillus clausii、分子量27kDa、等電点10.1。
B’−3:ピュラフェクト(ジェネンコア社製、商品名Purafect 4000L)。
(酵素活性値の測定方法)
ミルクカゼイン(Casein、Bovine Milk、Carbohydrate and Fatty Acid Free/Calbiochem(登録商標))を1N水酸化ナトリウム(1mol/L水酸化ナトリウム溶液(1N)、関東化学社製)に溶解してpHを10.5とし、0.05Mホウ酸(ホウ酸(特級)、関東化学社製)水溶液でミルクカゼインの濃度が0.6質量%になるよう希釈し、プロテアーゼ基質とした。
次いで、酵素製剤をイオン交換水に溶解して、濃度0.4質量%の酵素製剤水溶液を調製した。
該酵素製剤水溶液1gを、塩化カルシウム(塩化カルシウム(特級)、関東化学社製)3°DH硬水で25倍希釈した溶液をサンプル溶液とした。
該サンプル溶液1gに、上記プロテアーゼ基質5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、10℃又は35℃で30分間静置して酵素反応を進めた。
その後、酵素反応停止剤のTCA(トリクロロ酢酸(特級)、関東化学社製)の0.44M水溶液5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、20℃で30分間静置して、析出する未反応基質を0.45μmフィルターで除去し、ろ液を回収した。
回収したろ液の波長275nmにおける吸光度(吸光度A)を、島津製作所社製の紫外可視分光光度計UV−160を用いて測定し、反応温度10℃における吸光度と、反応温度35℃における吸光度とを比較した。
目的成分以外の吸収の影響を除くため、別途、サンプル溶液1gに、TCA5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、プロテアーゼ基質5gを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌し、0.45μmフィルターで除去してろ液を回収し、該ろ液の波長275nmの吸光度(吸光度B)を、前記UV−160を用いて測定した。
上記測定結果から、下式により、10℃下でのプロテアーゼ活性値と35℃下でのプロテアーゼ活性値との比較を行った。なお、下式に代入する各試料の波長275nmにおける吸光度の値は、気泡などの散乱光の影響を除外するため、同時に測定した600nmの吸光度の値を差し引いて用いた。
35℃下での酵素活性値を100%としたときの10℃下でのプロテアーゼ活性値(%)=(10℃反応品の吸光度A−10℃反応品の吸光度B)/(35℃反応品の吸光度A−35℃反応品の吸光度B)×100
C−1:上記一般式(c1)におけるR1=CH3、m=0、n=2の化合物。
C−2:上記一般式(c1)におけるR1=C4H9、m=0、n=2の化合物。
C−3:上記一般式(c1)におけるR1=C4H9、m=0、n=3の化合物。
C−4:上記一般式(c1)におけるR1=C4H9、m=2、n=1の化合物。
C−5:上記一般式(c1)におけるR1=C4H9、m=2、n=0の化合物。
C’−1:エタノール(日本アルコール販売(株)製、商品名「特定アルコール95度合成」)。
C’−2:メタノール。
C’−3:ブタノール。
D−1:メチルグリシン二酢酸(BASFジャパン(株)製、商品名「Trilon M」)。
D−2:クエン酸(扶桑化学工業(株)製、商品名「液体クエン酸」)。
プロピレングリコール:旭硝子(株)製。
LAS−H:直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸[ライオン(株)製、ライポンLH−200(LAS−H 純分96質量%)]。
PTS:パラトルエンスルホン酸(協和発酵工業(株)製、商品名「PTS酸」)。
MEA:モノエタノールアミン((株)日本触媒製)。
pH調整剤:2M−水酸化ナトリウム(鶴見曹達(株)製)、6M−硫酸(東邦亜鉛(株)製)。
イオン交換水
表2〜4に示す組成の配合成分、含有量(質量%)に従い、下記の製造方法により各例の液体洗浄剤をそれぞれ製造した(表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合しない)。
表中、配合成分の含有量は純分換算量を示す。水の含有量を示す「バランス」とは、最終調製物である液体洗浄剤の総量が100質量%になるように調整した配合量を示す。
pH調整剤の含有量を示す「適量」とは、液体洗浄剤のpH(25℃)を表に示すpHに調整するために配合した量を示す。
500mLのビーカーに、それぞれ表に示す含有量(質量%)の(C)成分又は(C’)成分と、(D)成分と、プロピレングリコールと、PTSと、MEAと、LAS−Hとを加えて撹拌した。
次いで、pH調整剤として2M−水酸化ナトリウムと6M−硫酸を用いて、溶液のpH(25℃)が表に示す値となるように調整した。
次いで、(A)成分を加えて撹拌した後、(B)成分又は(B’)成分を加えて撹拌し、その後、最終調製物の総量が100質量%になるようにイオン交換水を加えることにより、各例の液体洗浄剤をそれぞれ得た。
溶液のpH(25℃)は、pHメーター(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、25℃に調温した溶液に、前記pHメーターの電極を入れ、2分後の値を読み取ることにより測定した。
各例の液体洗浄剤について、以下に示す評価方法により「洗浄力」、「外観安定性」及び「液面における皮膜形成性」の評価をそれぞれ行った。その結果を表2〜4に併記した。
各例の液体洗浄剤としては、製造直後のもの(製造直後品)と、5℃の恒温槽中で1ヶ月間保存した後のもの(5℃1M保存品)とをそれぞれ用いた。
汚垢布として、タンパク汚れ布であるEMPA117(EMPA Testmaterialien社製、Polyester/cotton,65/35,soiled with blood/milk/ink)を5cm×5cm角に裁断したものを用いた。
洗浄試験器として、Terg−O−tometer(UNITED STATES TESTING社製)を用いた。
洗浄液として、水90mLに対して、液体洗浄剤300μLを加え、30秒間撹拌して調製したものを用いた。
その後、二槽式洗濯機(三菱電機社製:製品名CW−C30A1−H1)に移し、1分間脱水後、水道水(15℃、4゜DH)30L中で3分間濯ぎ、風乾した。
未汚れ布(ここで未汚れ布とは、汚れの付着していない、基準となる白布をいう)、未洗浄のEMPA117、及び洗浄後のEMPA117について、それぞれ反射率を色差計(日本電色株式会社製:製品名SE200型)で測定し、下式により洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄前の汚垢布のK/S−洗浄後の汚垢布のK/S)/(洗浄前の汚垢布のK/S−未汚れ布のK/S)×100
ただし、K/Sは、(1−R/100)2/(2R/100)である(Rは、未洗浄布、洗浄前後のEMPA117の反射率(%)を示す)。
◎:洗浄率が55%以上。
○:洗浄率が45%以上、55%未満。
△:洗浄率が35%以上、45%未満。
×:洗浄率が35%未満。
また、製造直後品における洗浄率と、5℃1M保存品における洗浄率との差が小さいほど、酵素の安定化が図られている、と云える。
なお、比較例5の液体洗浄剤は、水に溶解せず、洗浄液を調製することができなかったため、洗浄力の評価を行っていない。
各例の液体洗浄剤30mLを、円筒ガラス瓶に取り、蓋を閉めて密閉した。この状態で5℃の恒温槽中に放置し、1ヶ月間保存した。
その後、該恒温槽より取り出し、5℃の液体洗浄剤の透明均一性と流動性を観察し、下記基準に基づいて、各例の液体洗浄剤の外観安定性の評価をそれぞれ行った。
◎:透明均一であり、流動性を示した。
○:一部にゲル化が認められた。
×:固化又は析出が認められた。
縦5.3cm×横3.3cm×高さ1.5cmの容器(マルエム製、MAJYケース、型番SS)に、各例の液体洗浄剤5gをそれぞれ採取した。前記の縦×横の面に蓋をせず、開放したままの状態で、5℃下で24時間放置した後の液面を観察し、下記基準に基づいて、各例の液体洗浄剤の液面における皮膜形成性の評価をそれぞれ行った。
○:液面に皮膜の形成は認められず、液体洗浄剤は流動性を有していた。
△:液面に皮膜の形成が認められたが、液体洗浄剤は流動性を有していた。
×:液体洗浄剤は全体的にゲル化又は固化していた。
実施例1、10、11と比較例3、4との対比より、酵素B−1〜B−3を選択することにより、洗浄力がより高まることが分かる。
また、実施例1〜24の液体洗浄剤は、少ない洗浄剤使用量で高い洗浄効果を発現することも確認できた。
Claims (2)
- 非イオン界面活性剤(A)を40質量%以上と、
バチルス属由来で、かつ、10℃での酵素活性値が35℃での酵素活性値の6%以上であるプロテアーゼ(B)と、
下記一般式(c1)で表される水混和性有機溶剤(C)と、
キレート剤(D)とを含有する液体洗浄剤。
但し、(B)成分の酵素活性値は、ミルクカゼインを基質として測定される値である。
- 前記キレート剤(D)が、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、クエン酸、メチルグリシン二酢酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載の液体洗浄剤。
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