発明者らは、鋭意検討を行った結果、ガラス粉末、エチレン性不飽和基を有する化合物、熱重合開始剤および光重合開始剤を含有する誘電体ペーストで達成できることを明らかにした。
本発明の誘電体ペーストはプラズマディスプレイパネル背面板の誘電体層形成用に特に好ましく用いられる。以下に本発明をプラズマディスプレイパネル背面板の誘電体層形成に用いる場合を中心に説明する。但し本発明はプラズマアドレス液晶ディスプレイならびに電子放出素子または有機電界発光素子を用いたディスプレイにおいても好ましく適用される。
プラズマディスプレイの背面板には、通常、ソーダガラスや旭硝子社製のPD−200などの高歪み点ガラス基板が用いられる。ガラス基板上に、導電性金属により電極を形成する。導電性金属としては、銀、銅、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などを用いることができ、特に銀を用いることが好ましい。電極は幅20〜200μmのストライプ状に形成される。
次に、上記の基板上に誘電体ペーストを塗布した後、加熱することにより誘電体前駆体層を形成する。ここで、誘電体前駆体層は硬化させることが好ましい。硬化させることにより、感光性ガラスペーストの現像時に現像液に対する耐性が向上する。さらに、感光性ガラスペーストとの同時焼成工程で発生する誘電体層の亀裂や誘電体層と基板との剥離を抑制する効果がある。
このような特徴を有する誘電体ペーストとするため、本発明の誘電体ペーストは熱重合開始剤とエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することを必須とする。これにより本発明の誘電体ペーストは、塗布後に加熱することにより熱重合反応が進行して誘電体ペースト硬化膜となる。
熱重合開始剤は、加熱により活性ラジカルとなり、炭素−炭素二重結合のような不飽和結合の重合反応を開始することができる。本発明で用いる熱重合開始剤は、半減期10時間を得るための分解温度が60〜130℃であるものが好ましい。半減期とは、一定温度における熱重合開始剤の分解速度を表す指標で、元の熱重合開始剤が分解して、その濃度が1/2になるまでに要する時間によって示される。その時間が10時間となる温度を半減期10時間を得るための分解温度とする。半減期10時間を得るための分解温度が60℃未満である熱重合開始剤を用いた誘電体ペーストは、常温保管中にも徐々に反応が進行してしまうためペーストのポットライフが短くなる。また、半減期10時間を得るための分解温度が130℃より高温である熱重合開始剤を用いた誘電体ペーストは、効率的に熱重合が開始せず、十分な強度を有する硬化膜が得られない。
このような熱重合開始剤は、有機過酸化物、アゾ化合物から選ばれた少なくとも1種のラジカル重合開始剤を好ましく選択することができる。これらの化合物で上記の半減期10時間を得るための分解温度が60〜130℃であるものとして具体例をあげると、有機過酸化物としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、琥珀酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどが上げられる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシメチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチルーメチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドなどが上げられる。
本発明の誘電体ペーストにおいて、熱重合開始剤の含有量は誘電体ペーストに対して0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。熱重合開始剤の含有量が0.01質量%未満であると、誘電体ペースト塗布膜は十分に硬化せず、焼成時、誘電体層に亀裂が発生する。また、熱重合開始剤の含有量が20質量%より多いと、誘電体ペースト硬化膜中に過剰な熱重合開始剤残留し、この熱重合開始剤が感光性ガラスペースト塗布膜の乾燥工程で重合反応を開始してしまうため、感光性ガラスペーストパターンの残渣が発生しやすくなる。
本発明の誘電体ペーストは光重合開始剤を含むことを必須とする。光重合開始剤とは、光照射により活性ラジカルとなり、エチレン性不飽和基の重合反応を開始することができる化合物である。
本発明の誘電体前駆体層上に感光性ガラスペーストを塗布することで、誘電体前駆体層から感光性ガラスペースト塗布膜中に光重合開始剤を移動させることができる。これにより、感光性ガラスペースト塗布膜下部の光重合開始剤濃度を上部に比べて高めたり、光照射に伴う活性ラジカル発生効率の高い開始剤を感光性ガラスペースト塗布膜の下部のみに選択的に導入したりすることができる。このような構成にすることにより、特に感光性ガラスペースト塗布膜下部において光重合反応を効率的に進行させ、感光性ガラスペースト塗布膜下部の硬化不足を防ぐことができるため、細幅の隔壁を形成する場合に発生する感光性ガラスペーストパターンの蛇行や剥れを解消することができる。
本発明の誘電体ペースト中に含まれる光重合開始剤は、モル吸光係数が波長365nm(i線)において1.0×102(mol−1・L・cm−1)以上、波長405nm(h線)において2.0×101(mol−1・L・cm−1)以上であることが好ましい。上記のモル吸光係数を有する光重合開始剤を含む誘電体ペーストを用いることで、感光性ガラスペースト塗布膜下部の硬化が特に促進される。
また、光重合開始剤は、感光性ガラスペーストパターン形成の工程まで、加熱工程などで留去や分解しない耐熱性を有することが好ましい。具体的には、窒素雰囲気下、10℃/分で昇温し、加熱された光重合開始剤が5%重量減少するときの温度を5%重量減少温度として、その温度が190℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が190℃未満であると、誘電体ペースト硬化工程において基板面内で光重合開始剤の一部が昇華か熱分解して、誘電体ペースト硬化膜中に残存する光重合開始剤濃度が不均一となる。これにより、感光性ガラスペーストパターンの幅が不均一となる。
また、光重合開始剤の融点が80℃以上であることが好ましい。融点が80℃未満では、誘電体ペーストの硬化後や感光性ガラスペースト乾燥後の誘電体ペースト硬化膜や感光性ガラスペースト塗布膜に亀裂やシワが生じやすい。
本発明における光重合開始剤は、具体的には以下のものが挙げられる。ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミンベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エステル〕−4,6ビス(トリクロロメチル−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エーテル〕−4,6ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン,2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−ブチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリフェニル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジカルボキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(η8−1,5−シクロオクタジエン−1−イル)−ビス(3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(η8−シクロオクタトリエン−1−イル)−ビス(3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,4−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−],2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−ブチル−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−メチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−カルボニル−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−フェニル−,1−(o−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−7−アミン−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−フェニル−,1−(o−アセチルオキシム)、エタノン,1−(9−オクチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−(エトキシフェニル)−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]、エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−アセチルオキシム]、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−オクチルオキシム)]、エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[4−(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシ−,2−エトキシフェニル]−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]、エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[4−(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシ−,2−フルオロフェニル]−,1−[o−オセチルオキシム]、エタノン,1−[9−(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシエチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、トリブロモフェニルスルホン等が挙げられる。これらの中でも、モル吸光係数が波長365nmにおいて1.0×102(mol−1・L・cm−1)以上、波長405nmにおいて2.0×101(mol−1・L・cm−1)以上、融点が80℃以上かつ5%重量減少温度が190℃以上である光重合開始剤が好ましい。具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、エタノン,1−[9−メチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−(9−オクチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−(エトキシフェニル)−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]、エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]、エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−アセチルオキシム]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがあげられる。
本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤の含有量は、誘電体ペーストに対して0.05〜10質量%の範囲が好ましい。光重合開始剤の含有量が0.05質量%未満であると、感光性ガラスペーストパターン下部の硬化促進効果が不十分となり、感光性ガラスペーストパターンの蛇行や剥れの抑制効果が小さくなる。また、光重合開始剤の含有量が10質量%より多いと、感光性ガラスペースト下部の硬化が過剰となり、相対的に上部が硬化不足となり、感光性ガラスペーストパターンの上部が蛇行しやすい。
光重合開始剤と共に増感剤を使用することにより、感度を向上させたり、光重合反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
増感剤の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。
本発明では、これらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。増感剤の含有量は、誘電体ペーストに対して0.05〜10質量%の範囲が好ましい。増感剤の含有量が0.05質量%未満であると、感光性ガラスペーストパターン下部の硬化促進効果が不十分となり、感光性ガラスペーストパターンの蛇行や剥れの抑制効果が小さくなる。また、増感剤の含有量が10質量%より多いと、感光性ガラスペースト下部の硬化が過剰となり、相対的に上部が硬化不足となり、感光性ガラスペーストパターンの上部が蛇行しやすい。
本発明の誘電体ペーストに用いるエチレン性不飽和基を有する化合物を加えることが必須である。エチレン性不飽和基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物を用いることができる。エチレン性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和基を有するモノマーなどが好ましく用いられる。
エチレン性不飽和基を有する化合物の具体的な例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタメタクリレート、およびそれらのアルキレンオキサイド変成物などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、誘電体ペーストに用いるバインダー樹脂としてエチルセルロース、メチルセルロース等に代表されるセルロース系樹脂や、アクリル系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸アルキル類またはメタクリル酸アルキル類の単独または共重合体を用いることが好ましく、ペーストに好ましい特性を与えるようにその特性を選択することができるが、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ヘキシルなどを単独重合体やこれらの重合体を構成するモノマーの組合せで得られる共重合体が好ましい。
エチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、バインダー樹脂とエチレン性不飽和基を有する化合物の重量比が、60:40〜5:95(質量%)が好ましく、20:80〜5:95(質量%)がより好ましい。エチレン性不飽和基を有する化合物の比率が95を超えると、誘電体ペースト硬化膜中から感光性ガラスペースト中に移動したエチレン性不飽和基を有する化合物で硬化した感光性ガラスペーストパターンの残渣が発生する。また、エチレン性不飽和基を有する化合物の比率が40未満であると、誘電体ペースト硬化膜が十分に硬化されず、焼成時、誘電体ペースト硬化膜に亀裂が発生する。
また、紫外線吸収剤を含有することで、感光性ガラスペースト塗布膜を透過した露光光を誘電体ペースト硬化膜表面で吸収し、誘電体ペースト硬化膜表面から感光性ガラスペースト塗布膜へ乱反射する光を弱めることができる。紫外線吸収剤としては、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物などが挙げられる。これらの中でもシアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物が特に有効である。これらの具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、インドール系の吸収剤であるBONASORB UA−3901(オリエント化学社製)、BONASORB UA−3902(オリエント化学社製)SOM−2−0008(オリエント化学社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、これらを1種以上使用することが好ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、誘電体ペーストに対して好ましくは0.001〜10質量%の範囲である。紫外線吸収剤の含有量が0.001質量%未満であると、感光性ガラスペースト塗布膜を透過した露光光を吸収する効果が無い。また、紫外線吸収剤の含有量が10質量%を越えると、感光性ガラスペーストパターン下部の硬化が不十分となり、細幅の隔壁を形成することができない。
また、誘電体ペースト塗布膜の硬化を好ましく達成するために、有機シランおよび有機チタニウム、有機ジルコニウム、有機アルミニウムなどの有機金属化合物を用いることができる。ペーストの安定性のために常温で安定な有機シラン、有機チタニウムを用いることが好ましい。
このような有機金属化合物の具体例として、テトラエトキシシラン、メチルアセトキシシラン、トリエトキシメチルシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラステアロイルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルトリステアロイルチタネート等があげられる。
本発明の誘電体ペーストの粘度を調整するために有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、テルピネオール、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶剤混合物が用いられる。
また、本発明の誘電体ペーストは、これらの他にも必要に応じて、分散剤、安定剤、消泡剤、レべリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤などを添加することもできる。
本発明の誘電体ペーストは、ガラス粉末を含有することが必須であり、ガラス粉末として軟化点450〜700℃であるガラス粉末(以下、「低軟化点ガラス粉末」と称する)を含有することが好ましい。誘電体層を形成する低軟化点ガラス粉末の軟化点が450℃未満である場合、誘電体ペーストや感光性ガラスペースト中に含まれる有機成分が十分に焼き飛ばないうちに低軟化点ガラスが軟化してしまい、誘電体層に有機成分が残存しやすくなる。このような残存有機成分は、ディスプレイパネルの輝度劣化の要因となるので好ましくない。また、誘電体層を形成する低軟化点ガラスの軟化点が700℃を越えると、誘電体前駆体層の焼成に高温が必要となるため、ディスプレイ用部材の製造において基板としてガラス基板を用いる場合、ガラス基板が高温で歪んでパネルの歩留まりが低下するため好ましくない。
誘電体ペーストに配合される無機粉末中の低軟化点ガラスは、酸化物換算表記で、
酸化ビスマス 10〜85質量%
酸化ケイ素 3〜50質量%
酸化ホウ素5〜40質量%
酸化亜鉛 4〜40質量%
からなる組成を有するものが好ましい。この組成範囲であると軟化点450〜700℃となる。
低軟化点ガラス粉末中の酸化ビスマスは、10〜85質量%の範囲で配合される。10質量%以上とすることで、焼き付け温度や軟化点を制御する効果が現れる。85質量%以下にすることによって、ガラス粉末の軟化点が低くなりすぎることが防止される。
酸化ケイ素は、3〜50質量%の範囲で配合される。3質量%以上とすることにより、ガラス層の緻密性、強度や安定性を向上させる。また、熱膨張係数がガラス基板の値と近いものとなる。50質量%以下とすることによって、ガラス転移点や軟化点が低くなり、580℃以下でガラス基板上に緻密に焼き付けることができる。
酸化ホウ素は5〜40質量%の範囲で配合される。この範囲内で、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。
酸化亜鉛は4〜40質量%の範囲で配合される。4質量%以上にすることにより、緻密性向上の効果が現れる。40質量%以下にすることによって軟化点が高くなる。
上記低軟化点ガラス粉末は、実質的にアルカリ金属を含まないことが好ましい。
アルカリ金属を含有すると、電極に含まれる銀とのイオン交換により、黄色化するため好ましくない。具体的には、アルカリ金属の含有量が0.5質量%以下であることを意味する。
本発明の誘電体ペーストは、全無機粉末あたり低軟化点ガラス粉末を40〜95質量%含むことが好ましい。
本発明の誘電体ペーストは、低軟化点ガラス粉末以外にフィラー粉末を含有することが好ましい。フィラー粉末を含有することにより、焼成時の収縮率を小さくし、ガラス基板にかかる応力を低下させる効果や、誘電体層の反射率が高く輝度の高いディスプレイを得られるなどの効果が得られる。
フィラー粉末として、700℃以下に軟化点を有しない高軟化点ガラス、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
フィラー粉末として用いられる高軟化点ガラスは、例えば、酸化物換算表記で、
酸化ナトリウム1質量%
酸化ケイ素40質量%
酸化ホウ素10質量%
酸化アルミニウム33質量%
酸化亜鉛4質量%
酸化カルシウム9質量%
酸化チタン3質量%
の組成を有するものであるが、これに限定されない。
本発明の誘電体ペーストに含有するフィラー粉末は、全無機粉末あたり5〜60質量%であることが好ましい。無機粉末あたりフィラー粉末を5質量%以上含有させることで、焼成収縮率を低くしたり、熱膨張係数を制御する効果が得られる。また、無機粉末あたりフィラー粉末を60質量%以下含有させることで、焼成後の誘電体層の緻密性や強度を保つことが可能となる。
本発明の誘電体ペーストは、有機成分に無機粉末を混合・分散した様態を有するものであり、無機粉末を有機成分の中に均一に混合・分散することが良好な塗布性のために好ましく、このようなペーストを得るため、低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末の平均粒子径、最大粒子径およびタップ密度などが適正な範囲にあることが好ましい。
低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末の平均粒子径は0.2〜1.5μm、最大粒子径は10μm以下であり、タップ密度を0.6g/cm3以上、好ましくは0.7g/cm3以上あることが好ましい。このような範囲の粒度およびその分布、そして単位容積当たりの粉末質量を有するものが、誘電体ペーストへの充填性および分散性が良好である。
粒子径は、レーザー回折散乱法で測定した値である。重量分布曲線における50%粒子径が平均粒子径として定義される。また検出された上限の粒子径が最大粒子径として定義される。粒子の凝集力は表面積に依存するため、低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末の平均粒子径を0.2μm以上として表面積を小さくすることで凝集性を抑え、ペースト中での分散性がよくなり、緻密かつ均一な塗布膜が得られる。また、低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末の平均粒子径を1.5μm以下とすることで形成された誘電体ペースト塗布膜の緻密性がよくなり、内部にボイドなどが発生しない。また、塗布膜表面に不要な凹凸も生じない。低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末の最大粒子径を10μm以下にすることも、内部でのボイド発生や表面の不要な凹凸の発生を防止するために好ましい。
さらに、本発明の誘電体ペーストは、導電性粉末を含有することが好ましい。AC型プラズマディスプレイパネルにおいて、表示電極とアドレス電極間でプラズマ放電させると空間電荷が発生する。その大部分が表示電極上に形成される誘電体層上に蓄積される。この蓄積された電荷による電圧で偶発的に放電が生じて画質を悪くするという問題が起こる。このような画質の劣化の原因となる電荷の蓄積を解消するために、誘電体層に導電性粉末を配合し、蓄積電荷をリークさせることが有効である。導電性粉末は、具体的には、クロムまたはニッケルから選んだ金属粉末や酸化インジュウム、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物に不純物を混入した半導体を使用することができる。導電性粉末の平均粒子径は1〜10μmが好ましい。導電性粉末の平均粒子径を1μm未満にすると十分な効果を発揮することができない傾向がある。また、導電性粉末の平均粒子径を10μmより大きくすると誘電体層上で凹凸が生じ、プラズマディスプレイパネルの前面板と背面板との間に設けられた放電空間が均一とならない。
本発明の誘電体ペーストに含有される導電性粉末は、全無機粉末あたりの0.5〜10質量%であることが好ましい。全無機粉末あたり導電性粉末を0.5質量%以上とすることで、有効に電荷をリークすることができ、偶発放電を防ぐことができる。全無機粉末あたり導電性粉末を10質量%以下とすることで、誘電体層の緻密性を保持することができる。
本発明の誘電体ペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、プラネタリーミキサー等のミキサーによって予備分散した後、3本ローラーなどの分散機で分散・混練される。分散・混練後は、濾過を行い、異物を取り除くことが好ましい。
以下、本発明のディスプレイ用部材の製造方法について説明する。
まず、必要に応じてあらかじめ電極や電極前駆体を設けた基板上に、本発明の誘電体ペーストを塗布する。焼成後の誘電体層の厚みは、4〜18μm、より好ましくは6〜15μmであることが均一で緻密な誘電体層を形成するために好ましい。焼成後の誘電体層の厚みを18μm以下とすることで、誘電体ペースト中に含まれる有機成分を十分に焼き飛ばすことができる。またガラス基板にかかる応力も小さくなるのでガラス基板が反るなどの問題も生じにくい。また、焼成後の誘電体層の厚みを4μm以上とすることで、平坦かつ緻密な誘電体層を形成することができ、電極部分の凹凸によって誘電体層にクラックが入るなどの問題が生じにくい。
誘電体ペースト塗布膜を熱により硬化する条件としては、100〜160℃で10〜30分が適当である。熱による硬化には熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いることができる。
次いで隔壁を形成する。感光性ガラスペーストは、次のような様態のものが好ましい。
感光性有機成分は、露光光のエネルギーを吸収して生起する光反応による変化を利用してパターンを形成するものである。これには、光の作用した部分が現像液に対して溶解するようになる光溶解型(ポジ型)と光の作用した部分が現像液に対して不溶になる光不溶化型(ネガ型)が知られている。本発明の誘電体ペーストを用いた場合、重合で感光性ガラスペーストパターン下部の硬化性を向上させることが目的であるため、光不溶化型で用いることが好ましい。
感光性ガラスペーストは、感光性有機成分およびガラス粉末を必須成分として含む。
感光性ガラスペーストの感光性有機成分は、感光性モノマーと感光性オリゴマーもしくはポリマーを主成分とし、光重合開始剤を含有するものである。感光性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用される。特に多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物を感光性有機成分中に10〜80質量%含有させたものが好ましい。多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物には多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、屈折率などを考慮して選択することが可能である。
感光性有機成分として、光反応で形成される硬化物の物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たすと共に、未露光部の現像性をコントロールする機能を果たす成分としてオリゴマーもしくはポリマーが加えられる。これらのオリゴマーもしくはポリマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られるものが好ましい。特に、分子側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有する重量平均分子量2000〜60000、より好ましくは3000〜40000のオリゴマーもしくはポリマーが用いられる。エチレン性不飽和基を導入するには、カルボキシル基を側鎖に有するオリゴマーもしくはポリマーに、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させるとよい。エチレン性不飽和基数は、反応条件により適宜選択することができる。前記のオリゴマーもしくはポリマーの酸価は、未露光部の現像液に対する溶解性の点から50〜160が好ましく、さらに好ましくは70〜140である。
感光性有機成分として、光重合開始剤が好ましく添加される。また、光重合開始剤の硬化を補助するために増感剤を加えることもできる。
感光性ガラスペーストに含有する無機粉末のガラス転移点、軟化点、熱膨張係数は、誘電体ペーストの無機粉末と近似していることが好ましい。基板となるガラス板に悪影響を与えることなく誘電体層形成と隔壁形成との同時焼成を実現するためである。また、100μm以上の膜厚を有する感光性ガラスペースト塗布膜に露光し、高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成するためには、露光光を感光性ガラスペースト塗布膜の最下部まで出来るだけ直進的に透過させることが好ましい。露光光の波長において、感光性有機成分と無機粉末を焼結した無機成分の屈折率の差が0.03位内であることが好ましい。また、感光性ガラスペーストに配合する無機粉末は光透過性の高いものを選ぶことが好ましい。
感光性ガラスペーストの無機粉末の組成として、これに限定されるものでないが、以下組成の低軟化点ガラス粉末であることが好ましい。すなわち、酸化物換算表記で、
酸化リチウム 3〜15質量%
酸化ケイ素 10〜30質量%
酸化ホウ素 20〜40質量%
酸化バリウム 2〜15質量%
酸化アルミニウム 10〜25質量%
の組成を有するものである。この組成範囲であると軟化点450〜700℃となる。
感光性ガラスペーストに含有する全無機粉末あたり低軟化点ガラス粉末を60〜95質量%含有することが好ましい。全無機粉末あたり低軟化点ガラス粉末を60質量%以上含有させることで、隔壁を良好に焼結することができる。また、全無機粉末あたり低軟化点ガラス粉末を95質量%以下とすることで、焼成時の無機成分全体の流動性を制御し、隔壁の形状を保持することができる。
さらに、感光性ガラスペーストパターン幅や高さの形状保持性を向上させるために、感光性ガラスペースト中に含有する全無機粉末あたりフィラー粉末を5〜50質量%含有することが好ましい。全無機粉末あたりフィラー粉末を5質量%以上含有させることで、焼成収縮率を低くしたり、熱膨張係数を制御することができ、感光性ガラスペーストパターン幅や高さの形状保持性が向上する。一方、全無機粉末あたりフィラー粉末を50質量%以下とすることで、焼成後の隔壁の緻密性を維持し、隔壁の強度を保ち、欠けなどの欠陥を防ぐことができる。
感光性ガラスペーストに含有するフィラー粉末は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、コーディエライト、ムライト、スピネルおよび高軟化点ガラスの群から選ばれた少なくとも1種を好ましく用いることができる。
感光性ガラスペーストに含有するフィラー粉末として用いられる高軟化点ガラスは、本開発の誘電体ペーストに含有する高軟化点ガラスと同組成のガラス等も用いることができる。
誘電体ペーストと同様に、感光性ガラスペーストを含有する低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末も良好な塗布性を得るための平均粒子径、最大粒子径およびタップ密度の好ましい範囲が存在する。低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の平均粒子径は1.5〜6μm、最大粒子径は30μm以下が好ましい。低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の平均粒子径を1.5μm以上とすることで低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の凝集を抑え、ペースト中での分散性を良好なものとし、高精細な感光性ガラスペーストパターンを得ることができる。低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の平均粒子径を6μm以下とすることで、隔壁の頂部に不要な凹凸がなく、均一な高さを有する隔壁を形成することができる。また、低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の最大粒子径を30μm以下にすることで、隔壁頂部の不要な凹凸を防止することができる。低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末のタップ密度は0.6g/cm3以上、より好ましくは0.7g/cm3以上とすることで、低軟化点ガラス粉末やフィラー粉末の充填性・分散性をよくし、気泡や凝集物を生じにくくし、光透過性が高く、優れたパターン特性を示す感光性ガラスペーストを得ることができる。
感光性ガラスペーストは、低軟化点ガラス粉末とフィラー粉末からなる無機粉末と、感光性モノマーと感光性オリゴマーもしくはポリマーと光重合開始剤からなる感光性有機成分を調合し、作製される。無機粉末と感光性有機成分との配合比率としては、60/40〜90/10(質量%)が好ましい。さらに、65/35〜85/15(質量%)であることが焼成による収縮率、無機粉末の均一分散の点からも好ましい。
感光性ガラスペーストの粘度を調整するために有機溶剤を用いることができる。また、本発明の誘電体ペースト硬化膜に含有する光重合開始剤を感光性ガラスペースト中に移動させるため、誘電体ペーストに含まれる光重合開始剤を溶解する有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、テルピネオール、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶剤混合物が用いられる。
以上の無機粉末や感光性有機成分に加え、必要に応じて感光性ガラスペーストに紫外線吸収剤、重合禁止剤、分散剤、安定剤などの添加剤を加えることもできる。
感光性ガラスペーストの塗布は、スクリーン印刷法、バーコータ法、ロールコータ法、ドクターブレード法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができるが、通常好ましい隔壁の焼成後の高さは60〜200μmである。焼成収縮を考慮すると、塗布する感光性ガラスペースト塗布膜の厚みは100〜280μmであることが好ましい。
感光性ガラスペーストを塗布後に乾燥して露光を行う。露光に使用される光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが使用される。超高圧水銀灯を光源とした平行光線を用いる露光機が一般的である。
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行う。現像方法として、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。現像液には、感光性ガラスペースト中の有機成分、特にオリゴマーもしくはポリマーが溶解可能な現像液を用いるとよい。本発明で好ましく使用されるカルボキシル基を側鎖に有する感光性オリゴマーもしくはポリマーは、アルカリ水溶液で現像することができる。
感光性ガラスペーストのパターニングは、焼成による収縮を考慮して行うとよい。焼成後の隔壁の形状としてはピッチ70〜700μm、高さ70〜200μm、隔壁の頂部幅12〜60μm、底部幅15〜75μmを有する矩形状もしくは台形状の隔壁が好ましい。主として格子状に形成されるが、ストライプ状に形成される場合もある。
感光性ガラスペーストパターンを形成した後に、予め熱により硬化した誘電体ペースト硬化膜と感光性ガラスペーストパターンを同時に焼成して、誘電体層と隔壁を形成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストやガラス基板の特性によって異なるが、通常は空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。バッチ式の焼成の場合、誘電体ペースト硬化膜の上に感光性ガラスペーストパターンが形成されたガラス基板を室温から500℃程度まで数分〜数時間かけて昇温する。さらに焼成温度として設定された500〜580℃に30〜40分間かけて上昇させて、15〜30分間保持して焼成を行う。
焼成温度は用いるガラス基板のガラス転移点より低いことが好ましいので、自ずから上限が存在する。焼成温度が580℃以下、焼成温度での保持時間を15〜30分に設定することで、ダレなどの欠陥がない良好な隔壁を得ることができる。
このようにして得られた隔壁に挟まれたセル内に、赤、緑、青に発光する蛍光体ペーストを塗布してプラズマディスプレイ用パネルの背面板が構成される。
この背面板と前面板とを張り合わせた後、封着、ガス封入し、駆動用ドライバーICを実装してプラズマディスプレイが作製される。
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の濃度は断りのない場合は質量%である。
(測定方法)
(1)光重合開始剤のモル吸光係数測定
光重合開始剤をγ−ブチロラクトン溶剤に溶解させた試料溶液を、日立製作所(株)社製分光光度計U−3010を用いて、i線(365nm)とh線(405nm)における吸光度を測定し、モル吸光係数を算出した。
(2)光重合開始剤の融点測定
島津製作所(社)製示差走査熱量測定装置DSC−60を用いて昇温速度5℃/分で融点を測定した。
(3)光重合開始剤の熱重量減少率測定
島津製作所(社)製ミクロ熱重量測定装置TGA−50を用いて窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で熱重量減少率を測定した。
(4)低軟化点ガラス粉末、高軟化点ガラス粉末の軟化点
リガク(株)社製差動型示差熱天秤TG8120を用いて、アルミナ粉末を標準試料として室温から20℃/分で昇温して得られたDTA曲線より、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して軟化点を求めた。
(5)低軟化点ガラス、フィラー粉末の平均粒子径と最大粒子径
日機装(社)製マイクロトラック粒度分布測定装置MT3000を用いて測定した。
(6)隔壁の頂部幅、底部幅
キーエンス社製リアルサーフェスビュー(VE−7800)を用いて電極方向に平行に並ぶ隔壁形状を観察し、隔壁の高さ、頂部および底部の幅を測定した。
(PDP作製方法)
125mm角のガラス基板(旭硝子社製PD200)上に、感光性銀ペースト(東レ(株)製)を用いてストライプ状の線幅40μm、ピッチ140μm、厚み5μmの電極前駆体を形成した。その電極前駆体付きガラス基板上の全面に以下の誘電体ペーストをスクリーン印刷法により塗布した。
誘電体ペーストは、後述の原料を表1に記載の比率で混合した後、3本ローラー混練機で混練して作製した。得られた誘電体ペーストを乾燥後の厚みが15μmになるようにスクリーン印刷(印刷版:SUS#165)し、熱風乾燥機(タバイ(株)製)を用いて150℃で15分間、乾燥した。得られた誘電体ペースト硬化膜の表面にシワや亀裂が発生せず、均一な膜であるか観察した。
本発明の誘電体ペーストに用いた原料の組成と物性を以下に示す。
低軟化点ガラス粉末A:酸化ビスマス45質量%、酸化ケイ素3質量%、酸化ホウ素17質量%、酸化亜鉛22質量%、酸化アルミニウム3質量%、酸化バリウム10質量%の組成を有するガラスを粉砕、分級して平均粒子径を1.8μm、最大粒子径を8μmとしたものを使用した。ガラス粉末の軟化点515℃、熱膨張係数75×10−7/℃。
フィラー粉末A:酸化ケイ素粒子“アエロジル”350、日本アエロジル(株)製
フィラー粉末B:酸化チタン粒子“R550”、石原産業(株)製
導電性粉末:導電性酸化チタン、平均粒子径5.0μm
バインダー樹脂:エチルセルロース、ハーキュレス社製
エチレン性不飽和基を有する化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
有機溶剤A:テルピネオール
紫外線吸収剤A:BONASORB UA−3901、オリエント化学社製
熱重合開始剤A:1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
熱重合開始剤B:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
熱重合開始剤C:ジベンゾイルパーオキサイド
光重合開始剤A:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
光重合開始剤B:ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム
光重合開始剤C:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
光重合開始剤D:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン
光重合開始剤E:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
光重合開始剤F:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
光重合開始剤G: エタノン,1−[9−メチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−(o−ベンゾイルオキシム)
光重合開始剤H:1,2−オクタンジオン,1−[9−エチル−6−カルボニル−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)
光重合開始剤I: エタノン,1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−アセチルオキシム]
光重合開始剤J: エタノン,1−(9−オクチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−,2−(エトキシフェニル)−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]
光重合開始剤K: エタノン,1−[9−(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシエチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−[(1−メトキシプロパン−2−イル)オキシフェニル]−,1−[o−(4―エトキシ)ベンゾイルオキシム]
増感剤:2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザルシクロヘキサノン)
次に感光性ガラスペーストを用いて感光性ガラスペーストパターンの形成を行った。感光性ガラスペーストに用いた原料の組成と物性を以下に示す。
低軟化点ガラス粉末B:酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素23質量%、酸化ホウ素32質量%、酸化バリウム4質量%、酸化アルミニウム20質量%、酸化カルシウム5質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化亜鉛3質量%の組成を有するガラスを粉砕、分級して平均粒子径を1.8μm、最大粒子径を20μmとしたものを使用した。低軟化点ガラス粉末の軟化点530℃、熱膨張係数75×10−7/℃
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/30/30(質量%)からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4等量のグリシジルメタクリレートを付加反応させた感光性共重合ポリマー。重量平均分子量43000、酸価100
感光性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート、日本化薬社製
光重合開始剤A:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン
有機溶剤B:γ−ブチロラクトン
紫外線吸収剤B:2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート
感光性ガラスペーストは各原料を以下の比率で混合した。
低軟化点ガラス粉末Bを60質量%、感光性ポリマーを10質量%、感光性モノマーを10質量%、光重合開始剤Aを3質量%、有機溶剤Bを16.5質量%、紫外線吸収剤Bを0.5質量%。
感光性ガラスペーストは、これらの成分からなる混合物を3本ローラー混練機で混練して作製した。感光性ガラスペーストをダイコート法で、上記の誘電体ペースト塗布膜を熱重合した硬化膜上に塗布した。感光性ガラスペースト塗布後、熱風乾燥機(タバイ(株)製)を用いて100℃で60分間、乾燥した。乾燥後の感光性ガラスペースト塗布膜の厚み180μmであった。次に露光を行った。露光用マスクは、電極前駆体に対して平行方法にピッチ140μm、線幅30μm、垂直方向にピッチ500μm、線幅30μmの格子パターンを有するフォトマスクを用いた。感光性ガラスペースト塗布膜と露光用マスク間のギャップは100μmとした。光源が3kW水銀ショートアークランプである露光装置(オーク製作所(株)製、)を用いて露光した後、0.5質量%のエタノールアミン水溶液で現像し、感光性ガラスペーストパターンを形成した。現像後の基板を焼成し、電極、誘電体および隔壁が得られた。焼成は、ローラーハース焼成炉(光洋サーモテック(株)製)を用いて570℃で10分間行った。得られた誘電体層の表面にシワや亀裂が発生せず、均一な膜であるか観察した。また、本検討では、露光量を変化させることにより、感光性ガラスペーストパターンの幅を変化させ、基板面内において感光性ガラスペーストパターンの蛇行や剥れが無く、最も細幅に加工できる隔壁形状を評価した。本実施例では、電極方向に平行に並ぶ隔壁形状を観察し、隔壁の底部幅45μm以下の隔壁を良好な細幅の隔壁とした。また、隔壁の高さは120μmであった。
評価結果を表1〜2に示す。
実施例については、底部幅の細い隔壁を形成することができた。また、誘電体ペースト硬化膜の表面状態は実施例6と実施例12を除き良好であった。なお、実施例6と実施例12についても、誘電体ペースト硬化膜状態では若干のシワが見られたものの、焼成後の誘電体層の表面状態は良好であり、ディスプレイ用部材としては問題なかった。また、実施例6と実施例9については、隔壁の底部幅が基板面内で変わり、均一性が悪化したが、ディスプレイ用部材としては問題なかった。また、実施例17については、隔壁底部幅43μm未満では、隔壁頂部幅が比較的細いため、隔壁頂部に蛇行が見られた。一方、比較例1は光重合開始剤を含まない誘電体ペーストを用いたため、底部幅の細い隔壁を形成することができなかった。また、比較例2は熱重合開始剤を含まない誘電体ペーストを用いたため、焼成後の誘電体層に亀裂が入り、この亀裂により隔壁が剥れてしまい、隔壁を形成することができなかった。