JP4605571B2 - 誘電体ペースト、ディスプレイ用部材の製造方法およびプラズマディスプレイパネル - Google Patents

誘電体ペースト、ディスプレイ用部材の製造方法およびプラズマディスプレイパネル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体ペーストおよびそれを用いた誘電体層上に高精細の隔壁層を歩留まりよく形成したディスプレイ用部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大きく重いブラウン管に代わる画像形成装置として、軽く、薄型のいわゆるフラットディスプレイが注目されている。フラットディスプレイとして液晶ディスプレイが盛んに開発されているが、これは画像が暗い、視野角が狭いといった課題が残っている。この液晶ディスプレイに代わるものとして自発光型の放電型ディスプレイであるプラズマディスプレイパネルや電子放出素子を用いた画像形成装置は、液晶ディスプレイに比べて明るい画像が得られると共に、視野角が広い、さらに大画面化、高精細化の要求に応えうることから、そのニーズが高まりつつある。
【0003】
電子放出素子には、熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子がある。冷陰極電子放出素子には電界放出型(FE型)、金属/絶縁層/金属型(MIM型)や表面伝導型などがある。このような冷陰極電子源を用いた画像形成装置は、それぞれのタイプの電子放出素子から放出される電子ビームを蛍光体に照射して蛍光を発生させることで画像を表示するものである。この装置において、前面ガラス基板と背面ガラス基板にそれぞれの機能を付与して用いるが、背面ガラス基板には、複数の電子放出素子とそれらの素子の電極を接続するマトリックス状の配線が設けられる。これらの配線は、電子放出素子の電極部分で交差することになるので絶縁するための誘電体層が設けられる。さらに両基板の間で耐大気圧支持部材として隔壁が形成される。
【0004】
プラズマディスプレイパネルの場合、それぞれの機能を付与した前面板と背面板との間に設けられた放電空間内で対向する表示電極およびアドレス電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内の蛍光体にあてることにより表示を行うものである。前面板と背面板にはそれぞれ電極が形成されているが、これらを被覆する形で誘電体層が形成されている。さらに、背面ガラス基板には、放電の広がりを一定領域に抑え、表示を規定のセル内で行わせると同時に、かつ均一な放電空間を確保するために隔壁が設けられている。
【0005】
背面板のガラス基板上に形成する誘電体層は、隔壁の剥がれや倒れを防ぐ効果を有することが知られている。特に、隔壁を感光性ガラスペースト法で形成する場合には、隔壁上部と下部の重合硬化の差に起因する剥がれが生じ易く、隔壁層形成のアンダーガラス層として、誘電体層を形成することは歩留まり向上に有効である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、誘電体層上に隔壁パターンを塗布した際、隔壁ペースト中の有機成分が誘電体層表面の凹凸に染み込み、隔壁現像時に残渣が発生し、歩留まりが低下するという問題があった。また、現像残渣を防ぐため、現像時間が長くなり、生産性が低下するという問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、誘電体層表面の凹凸への隔壁ペーストの染み込みを解消する誘電体層、誘電体ペーストならびにそれを用いたディスプレイ用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、少なくとも一般式(1)で示される分散剤およびバインダー樹脂を含有することを特徴とする誘電体ペーストである。
R1−R2−R3−R4 (1)
(R1、R4は水素、水酸基のいずれかであり、R2は1種以上のアルキレンオキサイド基からなるオリゴマー、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、同じであっても異なっていても良い)、さらに前記誘電体ペーストを用いて製造したディスプレイ用部材の製造方法およびプラズマディスプレイパネルである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をプラズマディスプレイの作製手順に従って説明する。但し本発明はプラズマアドレス液晶ディスプレイならびに電子放出素子または有機電界発光素子を用いたディスプレイにおいても、好ましく適用される。
【0011】
プラズマディスプレイの背面板の基板には、通常、ソーダガラスや旭硝子社製のPD−200などの高歪み点ガラス基板が用いられ、ガラス基板上には、導電性金属により電極が形成される。導電性金属としては、銀、銅、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などを用いることができ、電極は幅20〜200μmのストライプ状に形成される。
【0012】
次に誘電体層の形成のために、基板上に誘電体ペーストを塗布する。誘電体ペーストは有機成分と無機成分からなり、それによって得られた誘電体層は基板上に形成された電極を被覆して保護し絶縁する作用を有すると共に、その上に形成される隔壁の形成性を改良する効果を有するものである。
【0013】
本発明の誘電体層は、JIS B 0601 に規定する表面粗さの試験法に基づき、基準長さ0.25mmで測定した10点平均表面粗さが0.2μm〜0.8μm、更に好ましくは0.2〜0.5μmであることを特徴とする。10点平均表面粗さを0.2μm以上とすることで隔壁パターンの誘電体層への接着性を向上する効果を有する。一方、10点平均表面粗さを0.8μm以下とすることで、隔壁ペーストの誘電体層表面の凹凸への染み込みを抑制し、隔壁の現像時に残渣が発生しにくくなる。さらに10点平均表面粗さを0.5μm以下とすることで、一層隔壁ペーストの染み込みを抑制して現像残渣が発生しなくなるため、隔壁現像時間を低減し、生産性を向上する効果を得る。
【0014】
このような誘電体を形成する手段は特に限定されないが、例えば、特定の誘電体ペーストによって達成することができる。そのような誘電体ペーストは、一般式(1)で示される分散剤を含有することが好ましい。
R1−R2−R3−R4 (1)
(R1、R4は水素、水酸基のいずれかであり、R2は1種以上のアルキレンオキサイド基からなるオリゴマー、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、同じであっても異なっていても良い)
このような化合物としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
また、一般式(1)で示される分散剤は、エチレンオキサイドオリゴマーを分子全体の40〜80重量%含むことが好ましい。エチレンオキサイドオリゴマーをこの範囲とすることでペースト中の他の有機成分との相溶性が向上することができる。
【0016】
さらに(a)一般式(1)で示される分散剤の分子量は250〜1000であることが好ましい。分子量を250以上とすることで、ペーストの分散性を向上させることができ、かつ1000以下とすることで他の有機成分との相溶性を向上させることができる。
【0017】
バインダー樹脂としては、エチルセルロースやアクリル系樹脂を用いることが焼成の際の脱バインダー性向上の点で好ましい。また誘電体ペーストの有機成分としてアクリル系樹脂を用いると、ペーストに含まれる成分である無機粉末を分散させるための媒体(バインダー)となることができ、ペーストを塗布する際に適度の粘度を示すことができるなど、ペースト塗布性を調整する役割も果たすことができ、また、焼成の際には速やかに熱分解し揮散することができるという利点がある。
【0018】
そのようなアクリル系樹脂としては、例えば(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキル類を単独または共重合させて用いたものが好ましく、ペーストに好ましい特性を与えるようにその特性を選択することができるが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ヘキシルなどの単独重合体やこれらの重合体を構成するモノマーの組合せで得られる共重合体などが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の誘電体ペーストには、熱重合開始剤および架橋剤を含有させることができる。不飽和結合の開裂反応の連鎖によって重合または架橋反応を進行させ、誘電体ペースト塗布膜の分子構造を3次元網目構造を有するものに変化させることができるためである。
【0020】
そのような熱重合開始剤としては、例えば熱により活性ラジカルとなり、炭素−炭素2重結合のような不飽和結合の開裂反応を開始することができるものが挙げられる。具体的には、熱重合開始剤は、半減期10時間の温度が40〜130℃であるものが好ましく、60〜110℃であるものがより好ましい。半減期とは、一定温度における熱重合開始剤の分解速度をあらわす指標で、元の熱重合開始剤が分解して、その濃度が1/2になるまでに要する時間によって示される。その時間が10時間となる温度を半減期10時間の温度とする。熱重合開始剤として適当な安定性と活性とを有することが、ペーストの安定性を保持すると共に本発明の目的に適した熱重合活性を示すために好ましい。半減期10時間の温度を40℃以上とすることで、誘電体ペーストの安定性を保持することができ、130℃以下とすることで加熱に対する活性を十分に発揮することができる。
【0021】
このような熱重合開始剤は、有機過酸化物、アゾ化合物から選ばれた少なくとも一種のラジカル重合開始剤を好ましく選択することができる。これらの化合物で上記の半減期10時間の温度が40〜130℃を有するものとして具体例をあげると、有機過酸化物としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−yトリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、琥珀酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどが上げられる。アゾ化合物としては、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシメチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]2,2’−アゾビス(N−ブチルーメチルプロピオンアミド)2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレイトなどが上げられる。
【0022】
架橋剤としては、例えば炭素−炭素2重結合を有するモノマー類を加えることが好ましく、また、重合体に炭素−炭素2重結合を有する側鎖を導入するなどの方法を用いることも好ましい。
【0023】
誘電体、隔壁同時焼成技術を用いて誘電体層を形成する場合は、基板上に誘電体ペーストを塗布した後に、塗布膜を熱または光により硬化させる。誘電体ペースト塗布膜を熱により硬化させることは、後の工程において隔壁を形成する際に、誘電体ペースト塗布膜が隔壁形成用ペーストの塗布膜もしくは隔壁パターンの収縮による応力に耐え、また感光性ペースト法における現像時の溶剤による溶解にも耐え、誘電体層と隔壁の同時焼成を歩留まり良く実現するうえで好ましい。誘電体ペースト塗布膜を熱により硬化させる条件としては、通常120〜150℃で10〜30分が適当であり、誘電体ペーストを塗布した後に上記の温度、時間で塗布膜の乾燥と硬化とを同時に行えば良い。熱による硬化には熱風乾燥機やIR乾燥機を用いることができる。
【0024】
本発明の誘電体ペーストは、無機成分として、ガラス転移点が400〜550℃、軟化点が450〜600℃である低融点ガラスとフィラーを含有することが好ましく、それぞれ無機成分全体の50〜95重量%と5〜50重量%であることが好ましい。低融点ガラスのガラス転移点が500℃以下、かつ軟化点が600℃以下であることで、高温焼成を必要とせず、焼成の際にガラス基板に歪みを生じにくい。また、ガラス転移点を400℃以上、軟化点を450℃以上とすることで、後工程の蛍光体層の形成や封着の際に誘電体層に歪みを生じにくく、膜厚精度を保つことができやすくなる。
【0025】
誘電体ペーストに配合される低融点ガラスは、酸化物換算表記で、
酸化ビスマス 10〜85重量%
酸化珪素 3〜50重量%
酸化ホウ素 5〜40重量%
酸化亜鉛 4〜40重量%
からなる組成を有するものが好ましい。この組成範囲であると520〜580℃程度の適切な条件でガラス基板上に焼き付けることができる誘電体ペーストが得られる。
【0026】
フィラーは、焼成時の収縮率を小さくし、基板にかかる応力を低下させるなどの効果がある。フィラー添加量を5重量%以上とすることで、焼成収縮率を低くしたり、熱膨張係数を制御する効果が得られる。また、フィラー添加量を50重量%以下とすることで、焼成後の誘電体層の緻密性や強度を保つことが可能となり、同時に、クラック発生などの欠陥を防止することができる。
【0027】
フィラーとして、軟化点650〜850℃の高融点ガラス、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましく用いられる。
【0028】
さらに、本発明の誘電体ペーストは、導電性粉末を無機成分の0.5〜10重量%含有することも好ましい。AC型プラズマディスプレイパネルにおいて、表示電極とアドレス電極間でプラズマ放電させると空間電荷が発生し、その大部分が表示電極上に形成されている誘電体層上に蓄積される。この蓄積された電荷による電圧で偶発的に放電が生じて画質を悪くするという問題が起こる。このような画質の劣化の原因となる電荷の蓄積を解消するために、誘電体層に導電性粉末を配合し、蓄積電荷をリークさせることが有効である。導電性粉末は、具体的には、クロムまたはニッケルから選んだ金属粉末や酸化インジュウム、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物に不純物を混入した半導体を使用することができる。導電性粉末の添加量は0.5〜10重量%であることが好ましい。0.5重量%以上とすることで、有効に電荷をリークすることができ、偶発放電を防ぐことができる。10重量%以下とすることで、誘電体層の緻密性を保持することができる。
【0029】
無機粉末の平均粒径は0.2〜1.5μm、最大粒径は10μm以下であり、タップ密度が0.6g/cm3であることが好ましい。このような範囲の粒度およびその分布、そして単位容積当たりの粉末質量を有するものが、ペーストへの充填性および分散性が良好であり、従って塗布性の優れたペーストが調製できるので、緻密で均一な塗布膜を得ることが可能になる。
【0030】
粒径は、レーザ散乱・回折法で測定した値であり、平均粒径は50%体積粒径、最大粒径は粒径の最大値である。粒子の凝集力は表面積に依存するため、平均粒径を0.2μm以上とすることで凝集性を抑え、ペースト中での分散性がよくなり、緻密かつ均一な塗布膜が得られる。また、1.5μm以下とすることで形成された誘電体ペースト塗布膜の緻密性がよくなり、内部にボイドなどが発生しない。また、塗布膜表面に不要な凹凸も生じにくい。最大粒径を10μm以下にすることも、内部でのボイド発生や表面の不要な凹凸の発生を防止するために好ましい。また、無機粉末のタップ密度を0.6g/cm3以上、好ましくは0.7g/cm3以上とすると、粉末の充填性・分散性がよくなり、気泡や凝集物を生じにくくなる。
【0031】
ここで、誘電体層の厚みは、焼成後で4〜18μmであることが好ましく、8〜15μmであることが均一で緻密な誘電体層を形成するためにより好ましい。厚さを18μm以下とすることで、焼成の際の脱バインダー性が良好となり、バインダーの残存に起因するクラックが生じにくくなる傾向がある。またガラス基板にかかる応力も小さくなるので基板が反るなどの問題も生じにくくなる。また、4μm以上とすることで平坦で均一かつ緻密な誘電体層を形成することができ、電極部分の凹凸によって誘電体層にクラックが入るなどの問題が生じにくいという傾向がある。
【0032】
誘電体層の塗布は、SUS#325(中沼アートスクリーン(株)製)のスクリーン版を用いてスクリーン印刷により行い、塗布後は80℃で20分間乾燥する。焼成は、ローラーハース式焼成炉を用いて、焼成温度570℃で15分間行う。焼成は誘電体ペーストを塗布・乾燥した後に行っても良いが、誘電体を塗布・乾燥した後、続いて誘電体塗布膜上に隔壁パターンを形成し、その後誘電体層と隔壁パターンを同時に焼成する同時焼成技術を用いることができる。同時焼成技術を用いる場合、誘電体ペースト膜を光や熱により予備的に硬化させておくことが好ましい。つまり、このような誘電体ペーストをディスプレイ用部材の誘電体層の形成に用いて予め熱または光により硬化させることにより、隔壁形成用ペーストの塗布膜もしくは隔壁パターンの収縮による応力に耐えることができ、また感光性ペーストを用いて隔壁を形成する際、現像時の溶剤にも耐性を有し、誘電体層と隔壁の同時焼成を歩留まり良く実現できる。
【0033】
次いで隔壁のパターンを形成する。隔壁のパターン形成には、ペーストのスクリーン印刷を繰り返すスクリーン印刷法やペーストの塗布膜上にレジストを形成し、研磨剤により不要な部分を取り除き、最後にレジストを剥離するサンドブラスト法、感光性ペーストを塗布し、乾燥後に露光・現像する感光性ペースト法、ペースト塗布膜を金型で加圧した後、金型を取り除いて隔壁パターンを形成するプレス成型法等が用いられる。隔壁のパターニングは、焼成による収縮を考慮して行うとよいが、焼成後の隔壁のサイズとしてはピッチ100〜250μm、高さ60〜170μm、幅15〜60μmを有するものが好ましく、主としてストライプ状に形成されるが、格子状を有する場合もある。
【0034】
隔壁パターンを形成した後に、隔壁パターンのみ、あるいは同時焼成技術を用いた場合には誘電体ペーストの塗布膜と隔壁パターンを同時に焼成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の特性によって異なるが、通常は空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。バッチ式の焼成の場合、誘電体ペースト塗布膜の上に隔壁パターンが形成されたガラス基板を室温から500℃程度まで数時間掛けてほぼ等速で昇温した後、さらに焼成温度として設定された500〜580℃に30〜40分間で上昇させて、15〜30分間保持して焼成を行う。
【0035】
焼成温度は用いるガラス基板のガラス転移点より低いことが好ましいので、自ずから上限が存在する。焼成温度を580℃以下、焼成時間を15〜30分に設定することで、ダレなどの欠陥がない良好な隔壁を得ることができる。
【0036】
このようにして得られた隔壁に挟まれたセル内に、赤、緑、青に発光する蛍光体層を設けてプラズマディスプレイ用パネルの背面板が構成される。
【0037】
この背面板と前面板とを張り合わせた後、封着、ガス封入し、駆動用ドライバーICを実装してプラズマディスプレイが作製される。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の濃度は断りのない場合は重量%である。
【0039】
それぞれの誘電体ペーストの有機成分を表1に示す。誘電体ペーストは、表1の有機成分と、無機成分(ガラス粉末70重量部、フィラー(酸化ケイ素:日本アエロジル社のアエロジル200)1重量部、導電体粉末(酸化チタン)7重量部)からなる混合物を3本ローラー混練機で混練して作製した。導電性粉末として混入された酸化チタンはフィラー成分としての役割も有する。なお、表中の化合物(a)−1〜(d)−2は以下の化合物である。
分散剤1:HO−C1224−(C24O)9−OH
(分子量607,エチレンオキサイド含有率66.7%)
分散剤2:HO−C1224−(C35O)9−OH
(分子量724,エチレンオキサイド含有率0%)
分散剤3:HO−(C35O)15−OH
(分子量709,エチレンオキサイド含有率95.2%)
分散剤4:H−C28−(C35O)3−OH
(分子量209,エチレンオキサイド含有率64.6%)
分散剤5:HO−(C24O)35−(C35O)20−OH
(分子量2780,エチレンオキサイド含有率57%)
バインダー樹脂1:エチルセルロース
バインダー樹脂2:ポリメタクリル酸メチル(数平均分子量25000)
バインダー樹脂3:アクリル系ポリマー(ダイセル化学製、サイクロマーP・ACA250)
開始剤1:過酸化ベンゾイル
開始剤2:1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
架橋剤1:ビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロオキシプロピル)イソプロピルアミン
架橋剤2:DPHA
【0040】
【表1】
Figure 0004605571
【0041】
(実施例1〜5)
125mm角のガラス基板(旭硝子社製“PD200”)上に、感光性銀ペーストを用いてストライプ状の線幅110μm、ピッチ55μm、厚さ3μmの電極を形成した。その電極付きガラス基板上の全面に上記の誘電体ペーストをスクリーン印刷法(印刷版:SUS#325)により塗布し、ローラーハース式焼成炉を用いて焼成温度570℃で15分間焼成して得た誘電体層の10点平均表面粗さをJIS B 0601 に規定する表面粗さの試験法に基づき測定したところ、表2の通りであった。
【0042】
次に隔壁形成用の感光性ペーストを用いて隔壁パターンの形成を行った。上記の誘電体層上にダイコート法で感光性ペーストを塗布した。感光性ペーストの組成は次の通りである。
【0043】
感光性ペーストの組成は、ガラス粉末60重量部、バインダー(X4007)10重量部、感光性モノマー(MGP400)10重量部、光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア369)、γ−ブチロラクトン17重量部とした。
【0044】
ペーストは、これらの成分からなる混合物を3本ローラー混練機で混練して作製した。
【0045】
感光性ペースト塗布膜は乾燥した後、ストライプ状パターンのフォトマスクを介して、200mJ/cm2の露光量を与えた後、0.2%の2−アミノエタノール水溶液で現像し、ピッチ220μm、線幅30μm、高さ160μmの隔壁パターンを形成した。このときの現像残渣の程度および現像時間を表2に示す。その後、ローラーハース式焼成炉を用いた焼成温度570℃で15分間焼成して、良好な形状の隔壁層を得た。
【0046】
この隔壁形成した基板に赤、緑、青3色の蛍光体層を形成し、前面板と合わせて封着し、ガス注入を行ってパネルを作製した。隔壁の欠陥によるクロストーク等の表示欠陥のない良好なディスプレイを得ることができた。
【0047】
【表2】
Figure 0004605571
【0048】
(比較例1)
誘電体ペーストに分散剤を添加しない系で、実施例1を繰り返した。焼成後、誘電体層、の10点平均表面粗さは1.2μmとなり、隔壁パターン現像時に現像残渣が発生した。
【0049】
この隔壁形成した基板に赤、緑、青3色の蛍光体層を形成し、前面板と合わせて封着し、ガス注入を行ってパネルを作製した。隔壁の欠陥によるクロストーク等の表示欠陥のない良好なディスプレイを得ることができた。
【0050】
この隔壁形成した基板に赤、緑、青3色の蛍光体層を形成し、前面板と合わせて封着し、ガス注入を行ってパネルを作製した。クロストークが発生し、良好なディスプレイを得ることができなかった。
【0051】
(比較例2)
誘電体ペーストに分散剤を添加しない系で、実施例1を繰り返した。焼成後、誘電体層、の10点平均表面粗さは1.5μmとなり、隔壁パターン現像時に現像残渣が発生した。PDPの作製に耐える良好な背面板が得られなかった。
【0052】
この隔壁を形成した基板に赤、緑、青3色の蛍光体層を形成し、前面板と合わせて封着し、ガス注入を行ってパネルを作製した。クロストークが発生し、良好なディスプレイを得ることができなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明のPDPは、10点平均表面粗さが0.2μm〜0.8μmである誘電体層を有することにより、隔壁パターン現像時の現像残渣の発生を抑制することができた。また、本発明の誘電体ペーストは、少なくとも一般式(1)で示される分散剤およびバインダー樹脂を含有することにより、誘電体層の表面凹凸を低減することができた。さらに本発明のPDPの製造方法は、10点平均表面粗さが0.2μm〜0.8μmである誘電体層を用いるか、または、少なくとも一般式(1)で示される分散剤およびバインダー樹脂を含有する誘電体ペーストを用いることにより、隔壁パターン現像時の現像残渣の発生を抑制し、歩留まりを向上することができた。

Claims (6)

  1. 少なくとも一方の基板に誘電体層を有し、かつ前記誘電体層上に隔壁を有するプラズマディスプレイパネルに用いる誘電体ペーストであって、少なくとも一般式(1)で示される分散剤およびバインダー樹脂を含有することを特徴とする誘電体ペースト。
    R1−R2−R3−R4 (1)
    但し、上記一般式(1)において、R1、R4は水素、水酸基のいずれかであり、R2は1種以上のアルキレンオキサイド基からなるオリゴマー、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかである。
  2. 一般式(1)で示される分散剤の分子量が400〜2000であることを特徴とする請求項1記載の誘電体ペースト。
  3. 一般式(1)で示される分散剤が、エチレンオキサイドオリゴマーを分子全体の50〜80重量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体ペースト。
  4. さらに重合開始剤および架橋剤を含有し、熱または光によって硬化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体ペースト。
  5. 少なくとも一方の基板に誘電体層および隔壁を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記基板上に請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体ペーストを塗布する工程と、前記誘電体ペーストを塗布した塗布膜を、熱または光により硬化させる工程と、前記硬化させた塗布膜上に前記隔壁を形成する工程と、前記誘電体層と前記隔壁を同一の工程にて焼成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体ペーストを塗布、乾燥、焼成して設けられ、かつ10点平均表面粗さが0.2μm〜0.8μmである誘電体層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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