JP2012166604A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤの横方向のユニフォミティを向上しつつ、転がり抵抗の増大と耐偏摩耗性能の低下を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッドゴム10に埋設された導電部13が、接地面からタイヤ径方向内側に延びてキャップ部12の内周面に達する第一導電部13aと、第一導電部13aに連続して設けられ、キャップ部12とベース部11との間をタイヤ幅方向の一方側に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに達する第二導電部13bと、キャップ部12とベース部11との間で第二導電部13bに接続されるとともに、ベース部11の外周面からタイヤ径方向内側に延びてトレッドゴム10の底面に達する第三導電部13cと、第三導電部13cに連続して設けられ、トレッドゴム10の底面沿いにタイヤ幅方向の他方側に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに達する第四導電部13dとを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる空気入りタイヤに関する。
近年、車両の低燃費化と関係が深い転がり抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能(ウェット制動性能)の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズなどの不具合を生じ易いという問題があった。
そこで、シリカ等を配合した非導電性ゴムからなるトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電性ゴムからなる導電部を埋設して、通電性能を発揮できるようにした空気入りタイヤが開発されている。例えば、特許文献1,2に記載のタイヤでは、非導電性ゴムで形成したトレッドゴムに、接地面からタイヤ径方向に延びてベルト層に至る導電部を設けて、静電気を放出するための導電経路を形成している。しかし、当該タイヤでは、導電経路がベルト層を介して形成されるため、ベルト層のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成した場合には対応できない。
一方、特許文献3に記載の空気入りタイヤでは、非導電性ゴムで形成したトレッドゴムに、接地面からタイヤ径方向内側に延びるとともに、キャップ部とベース部との間をタイヤ幅方向に延びて、サイドウォールゴム又はカーカス層のトッピングゴムに接続された導電部を設けている。しかしながら、このような断面L字状に形成された導電部(図13参照)では、タイヤ幅方向の一方側に片寄った形状になるため、タイヤの横方向のユニフォミティが悪化することが判明した。
そこで、ユニフォミティを改善するべく、導電部を逆T字状に形成し、キャップ部とベース部との間で導電部をタイヤ幅方向の両側に延ばすことが考えられるが、そのように構成した場合には、タイヤ幅方向の両側においてショルダー領域の歪みが大きくなり、転がり抵抗が増大する傾向にある。これに対し、両側のショルダー領域において導電部を接地面から遠ざけた場合には、歪みを軽減できるものの、ショルダー領域が優先的に摩耗しやすくなるために耐偏摩耗性能が低下する傾向にある。
特開2003−326614号公報 特開2010−115935号公報 特開2009−126291号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤの横方向のユニフォミティを向上しつつ、転がり抵抗の増大と耐偏摩耗性能の低下を抑制できる空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記サイドウォール部の前記カーカス層の外側に設けられたサイドウォールゴムと、前記トレッド部の前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性ゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられるベース部と、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの底面に至る導電部とを有し、前記導電部が、接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記キャップ部の内周面に達する第一導電部と、前記第一導電部に連続して設けられ、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに達する第二導電部と、前記キャップ部と前記ベース部との間で前記第二導電部に接続されるとともに、前記ベース部の外周面からタイヤ径方向内側に延びて前記トレッドゴムの底面に達する第三導電部と、前記第三導電部に連続して設けられ、前記トレッドゴムの底面沿いにタイヤ幅方向の他方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに達する第四導電部とを含むものである。
本発明の空気入りタイヤでは、接地面からトレッドゴムの底面に至る導電部を通じて、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出できる。しかも、この導電部は、第一及び第二導電部を介して、或いは、第一、第二、第三及び第四導電部を介して、接地面からカーカス層のトッピングゴム又はサイドウォールゴムに達することから、ベルト層のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成した場合であっても、通電性能を良好に発揮することができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、導電部が、タイヤ幅方向の一方側に延びる第二導電部と他方側に延びる第四導電部とを含むことから、左右にバランスのとれた形状となり、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。それでいて、第二導電部がキャップ部とベース部との間で延び、第四導電部がトレッドゴムの底面沿いに延びるため、歪みの増大を片側のショルダー領域に分担させるとともに、摩耗の促進を他側のショルダー領域に分担させて、転がり抵抗の増大と耐偏摩耗性能の低下を抑制することができる。
本発明では、前記第一導電部と前記第三導電部とが、それぞれタイヤ径方向に対して傾斜して延びており、それらの傾斜幅の差が20mm以下であるものが好ましい。かかる構成では、第一導電部と第三導電部との幅寸法を近付けることにより、キャップ部とベース部との剛性バランスを改善して、タイヤの横方向のユニフォミティを向上することができる。
本発明では、前記第一導電部と前記第三導電部とが、それぞれタイヤ赤道の近傍に配置されていることにより、導電部における左右のバランスを良好にして、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。また、前記第一導電部が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側又は他方側にオフセットした位置に配され、前記第三導電部が、タイヤ赤道から前記第一導電部とは反対側にオフセットした位置に配されているものでもよく、かかる構成であれば、第一導電部と第三導電部を左右にバランス良く配置して、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。
本発明では、前記第一導電部、前記第二導電部、前記第三導電部及び前記第四導電部に、それぞれタイヤ径方向外側に向かって分岐した複数本の枝部分が形成されているものでもよい。第一導電部と第二導電部に上記の如き枝部分を形成することにより、摩耗が進行する過程で導電部の露出頻度が高められ、通電性能を確保するうえで有利になる。また、第一導電部と第二導電部だけでなく、第三導電部と第四導電部にも枝部分を形成することにより、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図 図1の要部拡大図 加硫成形前のトレッドゴムを概略的に示す断面図 トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 枝部分を有する導電層を形成する様子を示す断面図 比較例1に係るトレッドゴムを示す断面図 比較例2に係るトレッドゴムを示す断面図 比較例3に係るトレッドゴムを示す断面図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が設けられ、その端部がビード1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ赤道Cに対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が設けられている。
ビード部1のカーカス層7の外側には、リム装着時にリム(不図示)と接するリムストリップゴム4が設けられている。また、サイドウォール部2のカーカス層7の外側には、サイドウォールゴム9が設けられている。本実施形態では、カーカス層7のトッピングゴム(カーカスプライのトッピングゴム)及びリムストリップゴム4が、それぞれ導電性ゴムで形成され、サイドウォールゴム9が非導電性ゴムで形成されている。
トレッド部3のカーカス層7の外側には、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6と、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8と、トレッドゴム10とが設けられている。各ベルトプライは、タイヤ赤道Cに対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト補強層8は、必要に応じて省略しても構わない。
トレッドゴム10は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、非導電性ゴムで形成され且つキャップ部12のタイヤ径方向内側に設けられるベース部11と、導電性ゴムで形成され且つ接地面からトレッドゴム10の底面に至る導電部13とを有する。トレッドゴム10の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の主溝15が形成されている。本明細書では、最外側に位置する主溝15よりもタイヤ幅方向外側におけるトレッドゴム10の領域を、ショルダー領域17A,17Bと称する。
トレッドゴム10のゴム硬度は特に限られないが、キャップ部12のゴム硬度Hcをベース部11のゴム硬度Hbよりも高くすることにより、例えば、ゴム硬度Hcを67±5°、ゴム硬度Hbを57±5°、硬度差Hc−Hbを1〜20°(好ましくは3〜15°)と設定することにより、接地面を構成するキャップ部12を硬くして早期の摩耗を抑制できる。また、ベース部11のゴム硬度Hbをキャップ部12のゴム硬度Hcよりも高くすることも可能である。ゴム硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて25℃で測定した値である。
ここで、導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。また、非導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合することにより作製される。
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
導電部13を形成する導電性ゴムは、導電部13の耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着比表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが好ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
図3は、加硫成形前のトレッドゴム10を概略的に示している。図1〜3に示すように、導電部13は、キャップ部12を縦断する第一導電部13aと、第二導電部13bと、ベース部11を縦断する第三導電部13cと、第四導電部13dとを含む。第一導電部13aは、接地面からタイヤ径方向内側に延びてキャップ部12の内周面に達し、これに連続して第二導電部13bが設けられている。第二導電部13bは、キャップ部12とベース部11との間をタイヤ幅方向の一方側(図例では右側)に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに達している。
第三導電部13cは、キャップ部12とベース部11との間で第二導電部13bに接続され、ベース部11の外周面からタイヤ径方向内側に延びてトレッドゴム10の底面に達しており、これに連続して第四導電部13dが設けられている。第四導電部13dは、トレッドゴム10の底面沿いにタイヤ幅方向の他方側(図例では左側)に延びて、即ちトレッドゴム10とベルト補強層8との間をタイヤ幅方向の他方側に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに達している。
車体やタイヤで発生した静電気は、リムから、リムストリップゴム4、カーカス層7のトッピングゴム及び導電部13を介した導電経路を通じて路面に放出される。したがって、このタイヤTでは、ベルト層6やベルト補強層8のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成することが可能である。導電部13は二通りの導電経路を含んでおり、一つは、カーカス層7から第二導電部13bと第一導電部13aを経由して接地面に至る経路であり、もう一つは、カーカス層7から第四導電部13d、第三導電部13c、第二導電部13b及び第一導電部13aを経由して接地面に至る経路である。
このようにタイヤ幅方向の一方側に延びた第二導電部13bと他方側に延びた第四導電部13dとを含む導電部13は、左右にバランスのとれた形状となり、これによってタイヤTの横方向のユニフォミティが向上する。それでいて、第二導電部13bがキャップ部12とベース部11との間で延び、第四導電部13dがトレッドゴム10の底面沿いに延びるため、歪みの増大を片側のショルダー領域に分担させるとともに、摩耗の促進を他側のショルダー領域に分担させて、転がり抵抗の増大と耐偏摩耗性能の低下を抑制できる。
第四導電部13dが延在する側のショルダー領域17Aでは、反対側のショルダー領域17Bに比べて、導電部13が接地面から遠ざけられているため、転がり抵抗を増大させる歪みが軽減されるものの、比較的に摩耗が促進される傾向にある。しかし、通常は車種や使用条件(キャンバなど)に基づいて左右どちらのショルダー領域が摩耗しやすいかの傾向を知り得ることから、第四導電部13dを摩耗しにくい側に配することで、耐偏摩耗性能の低下を良好に抑制できる。
導電部13が露出する接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部の表面を指す。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
第一導電部13aと第三導電部13cは、それぞれタイヤ径方向に対して傾斜して延びている。傾斜幅W13aは、第一導電部13aが傾斜する区間の幅であり、接地面からキャップ部12の内周面に至るまでの区間で計測される。本実施形態では、パターンデザインの自由度を高められるように、接地面上で第一導電部13aの先端をタイヤ幅方向に延ばしている。傾斜幅W13cは、第三導電部13cが傾斜する区間の幅であり、ベース部11の外周面からトレッドゴム10の底面に至るまでの区間で計測される。
本実施形態では、傾斜幅W13aと傾斜幅W13cとを同じ寸法に設定しているが、これらを相違させても構わない。但し、タイヤの横方向のユニフォミティを向上する観点から、それらの傾斜幅の差を20mm以下とすることが好ましい。また、傾斜幅W13a,W13cは、好ましくは10〜50mm、より好ましくは10〜20mmであるが、トレッド幅10Wに対する比率では20±15%が好適である。
このように第一導電部13aや第三導電部13cが傾斜する構造では、それらがタイヤ径方向に平行に延びる構造に比べて、摩耗が進行する過程での露出頻度が高められ、特に後述するような枝部分を有する場合において、摩耗時の接地面に枝部分が露出しやすくなることから、通電性能を向上するうえで有利である。また、第一導電部13aと第三導電部13cとが互いに逆向きに傾斜することにより、この箇所での陸部の剛性バランスが良好となるため、偏摩耗を抑制するうえで有利である。
導電部13における左右のバランスを良好にするためには、第一導電部13aと第三導電部13cとを、それぞれタイヤ赤道Cの近傍に配置することが考えられる。本実施形態では、第一導電部13aが傾斜する区間と第三導電部13cが傾斜する区間とがタイヤ幅方向にオーバーラップし、且つ、それらの区間にタイヤ赤道Cが含まれているため、左右のバランスがより良好となって、タイヤの横方向のユニフォミティを的確に向上できる。
第三導電部13cは、傾斜した区間から更に右側に向かってベース部11の外周面沿いに延びる部分を有しており、その部分を第二導電部13bの内周面に重ねて接触させている。このように、キャップ部12とベース部11との間で第三導電部13cが第二導電部13bに重なる部分を設けていることにより、第三導電部13cを第二導電部13bに確実に接続することができる。
導電部13は、リム装着時にリム又はリムから通電可能なゴムに接続されるように設けられる。このタイヤTにおいて、カーカス層7のトッピングゴム、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9のうち、何れか又は全てを非導電性ゴムで形成することも可能であり、その場合には、サイドウォールゴム9、リムストリップゴム4、或いはリムに接触するリムストリップゴム4の外壁面にまで第二導電部13b又は第四導電部13dを延長させればよい。
次に、この空気入りタイヤTを製造する方法の一例について、図4を参照しながら簡単に説明する。このタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来のタイヤ製造工程と同様にして製造できるため、トレッドゴムの成形工程を中心に説明する。
まず、図4(A)に示すように、成形ドラムの外周面などで構成される成形面31に非導電性ゴムを貼り付け、ベース部11の右半分11Rを形成する。このとき、後工程で第三導電部13cを載せるための斜面16aを形成しておく。続いて、図4(B)に示すように、導電性ゴムと非導電性ゴムを貼り付けてベース部11の左半分11Lを形成する。このとき、導電性ゴムを斜面16aに貼り付けて第三導電部13cを形成し、その第三導電部13cから左側に延びるように導電性ゴムを貼り付けて第四導電部13dを形成する。
次に、図4(C)に示すように、非導電性ゴムによりキャップ部12の左半分12Lを形成する。このとき、後工程で第一導電部13aを載せるための斜面16bを形成しておく。続いて、図4(D)に示すように、導電性ゴムと非導電性ゴムを貼り付けてキャップ部12の右半分12Rを形成する。このとき、導電性ゴムを斜面16bに貼り付けて第一導電部13aを形成し、その第一導電部13aから右側に延びるように且つ第三導電部13cと接続されるように導電性ゴムを貼り付けて第二導電部13bを形成する。
上記の工程は、押出成形法やリボン巻き工法により行われ、それらを併用することも可能である。押出成形法とは、所定の断面形状を有する未加硫の帯状ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法であり、リボン巻き工法とは、小幅で未加硫のゴムリボンをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。また、導電部13は、導電性ゴムからなるゴムシートを配置することにより形成してもよい。
図4では記載を省略しているが、トレッドゴム10の内周にはベルト層6とベルト補強層8が配設されており、このトレッドゴム10を、カーカス層7やサイドウォールゴム9など他のタイヤ構成部材と組み合わせることでグリーンタイヤが形成され、該グリーンタイヤに加硫処理を施すことにより、図1に示した空気入りタイヤTが得られる。
[別実施形態]
(1)前述の実施形態では、第一導電部13aと第三導電部13cをタイヤ赤道Cの近傍に配置した例を示したが、図5,6に示すように、それらを相互に反対側にオフセットした位置に配した場合であっても、左右にバランスのとれた形状となり、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。図5は、第一導電部13aをタイヤ幅方向の他方側(図例の左側)にオフセットした位置に配した例であり、図6は、第一導電部13aをタイヤ幅方向の一方側(図例の右側)にオフセットした位置に配した例である。
タイヤのユニフォミティを向上する観点から、第一導電部13aのオフセット量G13aと第三導電部13cのオフセット量G13cとの差は、20mm以内が好ましく、10mm以内がより好ましい。オフセット量G13aは、タイヤ赤道Cから、第一導電部13aのタイヤ径方向に延びた部分における接地面上の位置までの距離であり、オフセット量G13cは、タイヤ赤道Cから、第三導電部13cのタイヤ径方向に延びた部分におけるベース部11の外周面上の位置までの距離である。
第一導電部13aをタイヤ幅方向にオフセットした位置に配する場合には、車両装着時のキャンバを考慮し、タイヤ赤道Cよりも車両装着時の車両内側に第一導電部13aを配置することが好ましく、それによって導電部13の接地頻度を確保しやすくなる。尚、車両に対するタイヤの装着方向の特定は、例えばサイドウォール部2に車両内側或いは車両外側となる旨の表示を付すことによって行われる。
(2)本発明では、図7〜10に示すような構造であっても適用可能である。図7は、第一導電部13aと第三導電部13cの傾斜幅を大きくした例であり、そのこと以外は図3に示したトレッド構造と同様である。図8,10は、キャップ部のゴム配合を両側のショルダー領域と中央のセンター領域とで相違させ、その界面に第一導電部13aを設けた例である。図9は、キャップ部のゴム配合を左右で相違させ、その界面に第一導電部13aを設けた例である。
(3)本発明では、図11に示すように、第一導電部13a、第二導電部13b、第三導電部13c及び第四導電部13dに、それぞれタイヤ径方向外側に向かって分岐した複数本の枝部分14が形成されている構造でもよい。第一導電部13aと第二導電部13bに枝部分14を形成することで、摩耗が進行する過程での導電部13の露出頻度を高めて、通電性能を良好に確保できる。また、第三導電部13cと第四導電部13dにも枝部分14を形成することにより、タイヤの横方向のユニフォミティを向上できる。
図12は、枝部分14を有する第三導電部13cと第四導電部13dをリボン巻き工法で形成する様子を示している。この工程では、非導電性ゴム部21と導電性ゴム部22とからなる複層ゴムリボン20を、その導電性ゴム部22の片方の端部が隣り合う導電性ゴム部22の腹部に接触するように、タイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻き付けている。この導電性ゴム部22のうち、斜面16aに沿った部分が第三導電部13cとなり、成形面31に沿った部分が第四導電部13dとなり、残りの部分が枝部分14となる。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
(1)通電性能(電気抵抗値)
リムに装着したタイヤに所定の荷重を負荷し、リムを支持する軸からタイヤが接地する金属板に印加電圧(500V)をかけて電気抵抗値を測定した。
(2)転がり抵抗
転がり抵抗試験機により転がり抵抗を測定して評価した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が小さいほど転がり抵抗に優れていることを示す。
(3)耐偏摩耗性能
12000kmの距離を走行後、トレッドゴムの中央側(センター領域)と外側(ショルダー領域)とで摩耗量を測定し、それらの比(ショルダー/センター)を評価した。数値が1.0に近いほど偏摩耗が抑制され、耐偏摩耗性能に優れていることを示す。
(4)ユニフォミティ
JISD4233に規定する試験方法に基づいて、LFV(ラテラルフォースバリエーション)を測定し、タイヤのユニフォミティを評価した。具体的には、空気圧200kPaとしたタイヤを荷重640Nが負荷されるように回転ドラムに押し付け、両軸間隔を一定に保持しながらタイヤを回転させたときに発生するタイヤ横方向の力の変動量を測定した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が小さいほど横方向のユニフォミティが良好であることを示す。
評価に供したタイヤのサイズは195/65R15であり、表1に示した事柄を除いて、各例におけるタイヤ構造やゴム配合は共通である。各例におけるトレッドゴムの仕様を表1に示し、評価結果を表2に示す。比較例1〜3及び実施例1〜7に係るトレッド構造は、それぞれ図13〜15,3,5〜10の通りであり、これらの図では、左側が車両内側(イン側)、右側が車両外側(アウト側)に相当する。
ここで、図13に表される比較例1は、第三導電部と第四導電部を具備しない導電部43を設けたこと以外は、実施例1と同じ構造である。また、図14に表される比較例2は、両側のショルダー領域において、導電部53がキャップ部12とベース部11との間でタイヤ幅方向に延びること以外は、比較例1と同じ構造である。更に、図15に表される比較例3は、両側のショルダー領域において、導電部63がトレッドゴムの底面沿いにタイヤ幅方向に延びること以外は、比較例1と同じ構造である。
Figure 2012166604
Figure 2012166604
表2より、実施例1〜7では、タイヤの横方向のユニフォミティを向上しつつ、転がり抵抗の増大と耐偏摩耗性能の低下を抑制できていることが分かる。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 リムストリップゴム
7 カーカス層
9 サイドウォールゴム
10 トレッドゴム
11 ベース部
12 キャップ部
13 導電部
13a 第一導電部
13b 第二導電部
13c 第三導電部
13d 第四導電部
14 枝部分

Claims (5)

  1. 一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記サイドウォール部の前記カーカス層の外側に設けられたサイドウォールゴムと、前記トレッド部の前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性ゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられるベース部と、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの底面に至る導電部とを有し、
    前記導電部が、
    接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記キャップ部の内周面に達する第一導電部と、
    前記第一導電部に連続して設けられ、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに達する第二導電部と、
    前記キャップ部と前記ベース部との間で前記第二導電部に接続されるとともに、前記ベース部の外周面からタイヤ径方向内側に延びて前記トレッドゴムの底面に達する第三導電部と、
    前記第三導電部に連続して設けられ、前記トレッドゴムの底面沿いにタイヤ幅方向の他方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに達する第四導電部とを含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記第一導電部と前記第三導電部とが、それぞれタイヤ径方向に対して傾斜して延びており、それらの傾斜幅の差が20mm以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第一導電部と前記第三導電部とが、それぞれタイヤ赤道の近傍に配置されている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記第一導電部が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側又は他方側にオフセットした位置に配され、前記第三導電部が、タイヤ赤道から前記第一導電部とは反対側にオフセットした位置に配されている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記第一導電部、前記第二導電部、前記第三導電部及び前記第四導電部に、それぞれタイヤ径方向外側に向かって分岐した複数本の枝部分が形成されている請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

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