JP2012153775A - フィルム、前記フィルムの製造方法及びそれを用いたledパッケージの製造方法 - Google Patents

フィルム、前記フィルムの製造方法及びそれを用いたledパッケージの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
良好な離型性と金型追従性を有するフィルムと、それを製造する手段を提供する。
【解決手段】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されないフィルム。
【選択図】図9

Description

本発明は、LEDパッケージをはじめとする金型を用いた樹脂成形品の製造に用いられる離型フィルムとして有用なフィルムに関する。
発光ダイオード(以下、単に「LED」とも記す)を含む半導体チップは、通常、封止樹脂で封止された半導体パッケージと呼ばれる成形品として基板上に実装される。このような半導体パッケージは、例えば、半導体チップを配置した金型に封止樹脂を注入し、注入された封止樹脂を硬化成形することで製造される。
近年、半導体パッケージの小型軽量化に伴い、封止樹脂の量を減らすことが検討されている。また、封止樹脂の量を減らした場合であっても半導体チップと封止樹脂とが強固に接着されるように、封止樹脂に含有させる離型剤の量を減らすことが検討されている。このため、硬化成形後の封止樹脂を金型から容易に離型させるべく、金型内面と封止樹脂との間に離型フィルムを配置する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、樹脂材料の金型成形に用いられる離型フィルム等として、例えば、引用文献2〜4に開示されたものが知られている。引用文献2には、4−メチル−1−ペンテン樹脂からなる表面層と、ポリエステルを含有するポリマーアロイからなる支持体層とを備えた離型フィルムが記載されている。引用文献3には、4−メチル−1−ペンテン共重合体からなる樹脂層と、ポリオレフィン又はポリアミドからなる樹脂層が積層された多層インフレーションフィルムが記載されている。また、引用文献4には、4−メチル−1−ペンテン系重合体樹脂からなる表面層と、ポリアミド樹脂からなる基材層とを備えた離型フィルムが記載されている。
特許第4096659号公報 特開2000−218752号公報 特開2001−62893号公報 特開2004−82717号公報
しかしながら、LEDの封止体(パッケージ)を製造するに際して使用される金型などは、通常の半導体パッケージを製造するための金型に比してギャップが大きく、形状が複雑である場合が多い。このため、引用文献2〜4等に記載された離型フィルムをLEDパッケージ製造に使用すると、これらの離型フィルムは金型の形状に対する追従性が低いために、金型の微細な形状がパッケージに転写され難いという問題が生ずる場合がある。また、金型成型時に離型フィルムにかかる圧力(以下、応力ともいう)により、前記フィルム表面に皺や凹凸が発生し、成形品表面に転写され、成形品の外観が損なわれるという問題が生じる場合がある。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、金型及び成形品からの離型性に優れているとともに、複雑な形状の金型に対しても優れた追従性を示し、かつ金型成形時にかかる応力により発生する離型フィルム表面の皺などが転写されることで成形品表面の外観を損なうことが少ない、フィルムを提供することにある。
本発明の第1は、フィルムに関する。
[1]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されないフィルム。
[2]130℃における引張弾性率が1〜15MPaである、[1]に記載のフィルム。
[3]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)のASTM−0638準拠にして測定される23℃における引張弾性率が500〜2000MPaである、[1]または[2]に記載のフィルム。
[4]熱可塑性エラストマー(B)のJIS K7113‐2に準拠して測定される23℃における引張弾性率が1〜50MPaである、[1]ないし[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5]熱可塑性エラストマー(B)が、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーのいずれか1種類以上のエラストマーからなる、[1]ないし[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[6]さらに、プロピレン(共)重合体(C)を含む請求項1に記載のフィルムであって、前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(C)に由来する融点TmC2が110〜175℃の範囲内にある、[1]ないし[5]のいずれか一項に記載のフィルム。
[7]100重量部の熱可塑性エラストマー(B)に対して1〜30重量部のプロピレン(共)重合体(C)を含む、[1]ないし[6]のいずれか一項に記載のフィルム。
[8]熱可塑性エラストマー(B)の密度が850〜980kg/mである、[1]ないし[7]のいずれか一項に記載のフィルム。
[9][1]に記載のフィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的に構成される相と、熱可塑性エラストマー(B)から実質的に構成される相の相分散構造が観察される、[1]ないし[8]のいずれか一項に記載のフィルム。
[10][1]ないし[9]のいずれか一項に記載のフィルムを含んでなる、金型成形用離型フィルム。
[11][1]に記載の金型成形用離型フィルムを少なくとも一方の主面の表面層または中間層として備える、金型成形用積層離型フィルム。
本発明の第2は、フィルムの製造方法に関する。
[12]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下である熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部の溶融混練物を成形する工程を含む、[1]ないし[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
本発明の第3は、LEDパッケージの製造方法に関する。
[13][10]または[11]に記載の離型フィルムを成形用の金型に配置する第一の工程と、前記離型フィルムを介して前記金型内に封止樹脂を充填するとともに、前記封入樹脂内に発光ダイオードを配置して型締めし、前記封止樹脂を硬化させてLEDパッケージを成形する第二の工程と、成形された前記LEDパッケージを前記離型フィルムから離型させる第三の工程と、を含むLEDパッケージの製造方法。
本願発明のフィルムは、金型及び成形品からの離型性に優れているとともに、複雑な形状の金型に対しても優れた追従性を示し、かつ良好な外観を有する成形品を得ることできるものである。本発明のフィルムは、これらの優れた特性を生かし、LEDパッケージをはじめとする比較的複雑な形状を有する金型を用いた各種樹脂成形品を製造する工程で好適に用いることができる。
金型に離型フィルムを配置した状態を模式的に示す断面図である。 金型内に封止樹脂を充填した状態を模式的に示す断面図である。 型締めして封止樹脂を硬化させる状態を模式的に示す断面図である。 型開きした状態を模式的に示す断面図である。 LEDパッケージの一例を模式的に示す断面図である。 金型追従性などの評価方法について説明する図で金型内に封止樹脂を充填した状態を模式的に示す断面図である 金型追従性などの評価方法について説明する図で型締めして封止樹脂を硬化させる状態を模式的に示す断面図である。 金型追従性などの評価方法について説明する図で成型体を金型から分離した状態を模式的に示す断面図である。 本願発明のフィルムのMD方向の断面TEM写真の一例である。 本願発明のフィルムのTD方向の断面TEM写真の一例である。 本願発明のフィルムの130℃における応力―歪み曲線の一例である。
1.フィルム 本発明のフィルムは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含み、さらに前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記(B)に由来する融点TmB2が実質的に観測されないフィルムである。
また本願発明のフィルムは、金型を用いて成形品(例えば、樹脂封止された半導体素子やLED素子等)を製造する際に金型の内面に配置され、成形品を離型しやすくするために用いられる離型フィルムとして、特に好適に用いられる。
(1)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)とは、4−メチル−1−ペンテンから導かれる繰り返し単位を有していればよく、それ以外の制限はない。つまり、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体とは、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体であっても、4−メチル−1−ペンテン以外の4−メチル−1−ペンテンと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。なお、後述するプロピレン(共)重合体(C)など、本願明細書における「(共)重合体」とは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と同様に単独重合体も共重合体も含むことを意味する。
前記4−メチル−1−ペンテンと共重合可能なモノマーとは、具体的には、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のオレフィン(以下「炭素原子数2〜20のオレフィン」という)が挙げられる。
4−メチル−1−ペンテンと共重合される炭素原子数2〜20のオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が含まれ、フィルムに適度な可とう性を付与するという観点からは、炭素原子数10〜18のオレフィンが好ましい。
4−メチル−1−ペンテンと共重合される炭素原子数2〜20のオレフィンは、一種類であってもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体における、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の割合は通常、85モル%以上であり、後述する離型性を向上させるという観点からは90モル%以上が好ましい。4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンに由来する構成単位の割合は15モル%以下、10モル%以下であることが好ましい。4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の割合が85モル%未満であると、成型品や金型からの十分な離型性が得られにくい。特に、本発明の樹脂組成物の離型性を高め、かつ可とう性を維持するために、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が90モル%以上99モル%以下であり、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンに由来する構成単位の割合が1モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、結晶性の高い重合体であることが好ましい。結晶性の重合体としては、アイソタクチック構造を有する重合体、シンジオタクチック構造を有する重合体のいずれであってもよいが、特にアイソタクチック構造を有する重合体であることが好ましく、また入手も容易である。さらに、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、フィルム状に成形でき、金型成形時の温度や圧力等に耐える強度を有していれば、立体規則性も特に制限されない。
4−メチル−1−ペンテン重合体(A)のASTM−0638準拠にして測定される23℃における引張弾性率は、500〜2000MPaが好ましく、800〜1500がより好ましい。前記範囲よりも、引張弾性率が大きいと、本願発明のフィルムを用いて金型成形した際に、前記フィルムがネッキングしやすくなり、本願発明のフィルムを用いた金型成形により製造した成形品に皺や欠け等の外観不良を起こす恐れがある。一方、前記範囲よりも引張弾性率が小さいと、本願発明の離型フィルムのハンドリング性が低下し、金型成形時にフィルムが破断しやすくなるなどの不具合が懸念される。
本願発明の4−メチル−1−ペンテン重合体(A)のASTM DM1505に準拠して測定される密度は、825〜840(kg/m)であるのが好ましく、830〜835(kg/m)であるのがさらに好ましい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)の、ASTM D1238に準拠して260℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、後述する熱可塑性エラストマー(B)と押出機内で混ざりやすく、共押出できる範囲であれば特に規定されないが、0.5〜50g/10minであり、より好ましく1〜30g/10minである。MFRが上記範囲であれば、比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、オレフィン類を重合して直接製造してもよく、高分子量の4−メチル−1−ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を重合反応により直接製造する場合には、例えば4−メチル−1−ペンテンおよび炭素原子数2〜20のオレフィンの仕込量、重合触媒の種類、重合温度、重合時の水素添加量などを調整することにより、融点、立体規則性および分子量等を制御する。4−メチル−1−ペンテン系重合体の重合反応により製造する方法は、公知の方法であってよい。例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造され、好ましくはメタロセン系触媒を用いて製造されうる。 一方、4−メチル−1−ペンテン系重合体を、より高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を熱分解して製造する場合には、熱分解の温度や時間を制御することで、所望の分子量に制御する。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、前述のように製造したもの以外にも、例えば三井化学株式会社製TPX等、市販の重合体であってもよい。
(2)熱可塑性エラストマー(B)
本願発明のフィルムに含まれる熱可塑性エラストマー(B)は、本願発明のフィルム自体、すなわち少なくとも前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と混合している状態のものに対して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB2が100℃以下または実質的に融点TmB2が観測されないものである。
融点TmB2を後述する金型成形時の温度より低く調整ないし、そもそも融点を有さない熱可塑性エラストマー、すなわち低結晶性かつ熱可塑性のエラストマーを用いることで、前記成形時の温度で熱可塑性エラストマー(B)と、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)が微分散したアロイ構造(相分散構造ともいう)を形成し、金型成形時の離型フィルムのネッキングなどを抑制することができる。これにより、金型成形により製造される成形品の皺や欠け等の外観不良を少なくすることができる。
熱可塑性エラストマー(B)単体の融点TmB1と、前記フィルム中の熱可塑性エラストマー(B)の融点TmB2は、通常、ほぼ同じだが、前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)や後述する他の成分の結晶性が高い場合に、それらの結晶成分の影響により熱可塑性エラストマー(B)自体の融点が変化する場合があり、また単独では融点を有さない熱可塑性エラストマー(B)を用いても、フィルム中の融点TmB2が観測されることがある。具体的には、通常、TmB1とTmB2の差は20℃以内になる。また、通常、融点が100℃以下または融点が実質的に観測されない熱可塑性エラストマー(B)を用いることで、上記融点TmBも100℃以下または実質的に融点TmB2が観測されないフィルムを得ることができる。
熱可塑性エラストマー(B)としては、上記融点を有する熱可塑性エラストマーならば特に限定されないが、具体例としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。
オレフィン系エラストマーは、具体例として、プロピレン・α−オレフィン共重合体、すなわちプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィンである。炭素数2〜20のα−オレフィンの例には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンおよび1−デセン等が含まれ、好ましくはエチレン、1−ブテンである。プロピレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィンは、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。プロピレン・α−オレフィン共重合体は、より好ましくはプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体である。
スチレン系エラストマーとは、ハードセグメントとしてポリスチレンと、ソフトセグメントであるポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンの共重合物、或いはそれらの水素添加物からなるものである。水素添加はポリブタジエンやポリイソプレンの一部のみであっても良いし、全てが水素添加されていても良い。このようなスチレン系エラストマーがカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基などの官能基により変性されていることにより良好な接着性を付与することができる。変性スチレン系エラストマーの市販品としては、「タフテック」(旭化成ケミカルズ社製、登録商標)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製、登録商標)、「ダイナロン」(JSR社製、登録商標)、「セプトン」(クラレ社製、登録商標)、「SIBSTER」(株式会社カネカ製、登録商標)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマーは、従来公知の製造方法、例えばチーグラーナッタ触媒あるいはメタロセン系触媒の存在下に、前記エラストマーを構成する単量体(モノマー)を共重合させることで得ることができる。具体的には、プロピレン・α-オレフィン共重合体は、プロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとを共重合させることにより得ることができる。
熱可塑性エラストマー(B)のJIS K7113−2に準拠して測定される23℃における引張弾性率は、1〜50MPaが好ましく、3〜45MPaがより好ましい。前記範囲よりも引張弾性率が小さいと、フィルムのハンドリング性が低下する。一方、前記範囲よりも引張弾性率が大きいと、本願発明のフィルムの柔軟性が低下し、金型成形用離型フィルムとして用いた場合、離型が困難になる、または成形品の外観が損なわれる恐れがある。
また熱可塑性エラストマー(B)のASTM DM1505に準拠して測定される密度は850〜980kg/m3であることが好ましく、860〜970kg/m3がより好ましい。
熱可塑性エラストマー(B)のASTM D1238に準拠して260℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と押出機内で混ざりやすく、共押出できる範囲であれば特に規定されない。後述するように熱可塑性エラストマー(B)のハンドリング性などを向上させるためプロピレン(共)重合体(C)と熱可塑性エラストマー(B)とを混合させ混合物を作成した後、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と前記混合物を押出機内で混ぜる場合、熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)との混合物のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜50g/10minであり、より好ましく3〜40g/10minである。MFRが上記範囲であれば、比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。本願発明のフィルムに含まれる熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部であることが好ましく、10〜45重量部であることがより好ましい。上記比率で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とが含まれることで、後述するように成分Aと成分Bが適度に相分散し、例えば離型フィルムとして本願発明を用いた場合、金型成形時に金型でフィルムが伸張されることにより前記フィルムにかかる応力を分散することができる。
本願発明のフィルムは、比較的結晶性が高い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー組成物(B)とが相分離しそれぞれが分散している構造(相分散構造)をもつことが好ましい。具体的には、本願発明のフィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で海島構造または積層構造が観察され、前記海部が前記4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)から実質的に構成され、前記島部が前記プロピレン系エラストマー組成物(B)から実質的に構成される、相分散構造を有するのが好ましい。
図9は、本願発明のフィルムのMD方向に平行な断面のTEM画像の一例であり、図10は、本願発明のフィルムのTD方向に平行な断面のTEM画像の一例である。図9および図10に示されるように、MD方向、TD方向のフィルム断面TEM像には、フィルム表面と平行な方向に伸びた明部、すなわち暗部に比べて電子密度が低い部分が見られる。
このような相分散構造は、本願発明のフィルムの断面を薄切片化して観察した透過型電子顕微鏡(TEM)画像により「明暗構造」として観察されうる。図1のTEM画像では、例えば「明部」が、電子密度が相対的に低い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A);「暗部」が、電子密度が相対的に高い熱可塑性エラストマー(B)ないし、熱可塑性エラストマー(B)後述するプロピレン(共)重合体(C)など比較的、熱可塑性エラストマー(B)と相溶解性が高く4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)との相溶解性が低い化合物の混合物であると考えられる。
前記相分散構造が本願発明の効果に及ぼすメカニズムは、必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、前記のような相分離構造を有する離型フィルムに応力がかけられると、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)が弾性変形し局所的にネッキングしないうちに、熱可塑性エラストマー(B)を介して、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)にかかる応力がフィルムの断面方向に均一化される。これにより離型フィルム全体として、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)の高次構造がより均一に変形し、ネッキングを生じにくくなり、弾性変形可能な範囲が広がり、本願発明のフィルム表面の皺が発生しにくくなると考えられる。
(3)プロピレン(共)重合体(C)
本願発明の離型フィルムは、プロピレン(共)重合体(C)をさらに含んでもよい。このようなプロピレン(共)重合体(C)を含むことで、原料の混練時あるいはフィルム成形時のブロッキングの抑制する効果やフィルム成形性を改善するなどの効果が期待できる。
プロピレン(共)重合体(C)は、実質的にはプロピレンの単独重合体であるが、プロピレン以外のα−オレフィンなどを微量含んでもよく、いわゆるホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)およびブロックポリプロピレン(bPP)のいずれでも良い。ポリプロピレンにおける、プロピレン以外のα−オレフィンの含有量は、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。
離型フィルムにプロピレン(共)重合体(C)を含まれる場合は、本願発明の離型フィルム自体、すなわち少なくとも前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)と成分Cが混合している状態のものに対して、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmC2が110℃〜175℃にあることが好ましく、120〜170℃がより好ましい。
実質的にプロピレン(共)重合体(C)のみなからなるプロピレン(共)重合体(C)単体の融点TmC1と、前記フィルム中のプロピレン(共)重合体(C)の融点TmC2は、通常、ほぼ同じであるが、融点が低いまたは融点を実質的に有さない熱可塑性エラストマー(B)と、融点が高い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)を混練して、分散構造を形成すると、TmC2がTmC1より高くあるいは低くなる場合があるが、通常、TmC1とTmC2の差は20℃以内である。
プロピレン(共)重合体(C)の含有量は、100重量部の熱可塑性エラストマー組成物(B)の合計に対して1〜30重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。プロピレン(共)重合体(C)の含有量が5重量部未満であると、熱可塑性エラストマー(B)がブロッキングしやすい場合がある。一方、20重量部を超えると、本願発明のフィルムを離型フィルムとして用いた場合、金型成形時に離型性が低下する可能性がある。
(4)その他の成分
本願発明のフィルムは、上記の成分(A)と成分(B)および/または成分(C)から実質的になるのが前述の相分離構造を形成する上で好ましいが、本願発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂や添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、および帯電防止剤等が含まれる。添加剤の含有量は、本願発明のフィルムを構成する樹脂組成物全体100質量部に対して0.0001〜10質量部とすることが好ましい。
また本願発明の金型形成用離型フィルムは、金型成形を行なう対象すなわち離型フィルムに接触する被成形体の成分に硬化性のシリコーン樹脂が含まれる場合、硬化触媒の能力を低下させる化合物、たとえば、硫黄、リン、窒素等を含む有機化合物、スズ、鉛、銀、ビスマス、砒素等の重金属のイオン性化合物、アセチレン基等の多重結合を含む有機化合物をできる限り含まない方が好ましい。具体的には、IRGAFOS168(BASF製)などのリン系加工熱安定剤であれば、本願発明のフィルムの重量を100部としたときに、0.5部以下が好ましい。また特に4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)に前記リン系加工熱安定剤ができるだけ含まれない方が好ましく、本願発明のフィルムの重量を100部としたときに、0.07部以下が好ましい。これは金型成形時に、離型フィルムに含まれる上記の低分子化合物が、金型成形時に前記被成形体に含まれるシリコーン樹脂に移動し、シリコーン樹脂の加熱硬化反応の硬化触媒と強い相互作用をもつため、シリコーンのヒドロシリル化反応を阻害し、離型性や成形体の外観を損ねる恐れがある。また特に含有量が多く相分散構造を形成し、被成形体との接触面積が大きいと考えられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)にこれらの化合物が含まれると、成形体の外観などへの影響が大きいと推測される。
(5)積層体
本願発明のフィルムは、他のフィルムと積層させた積層フィルム(金型成形用離型積層フィルム)としても用いることができる。本願発明のフィルムの離型性を生かすため、金型成形を行なう被成形材料と離型フィルムを接触させられるように、本願発明のフィルムを、前記金型成形用離型積層フィルムの少なくとも一方の主面の表面層(最外層)として用いるのが好ましいが、前記フィルムのさらに表層に、後述する薄いスキン層を形成してもよい。また機械的な強度や耐熱性を調整するために、被成形材料と接触させない基材層を備えてもよい。
(スキン層)
スキン層は、後述する本願発明のフィルムの製造時に形成される前記フィルム中の成分が偏在することで形成されるものであってもよいし、共押出法によって形成されるものであってよいし、前記離型フィルムを製造後、さらに他のフィルムをラミネートして形成してもよく、塗布法などにより液状の材料を塗工し乾燥させることで形成してもよく、特に限定されない。
スキン層は、離型性を有する材料で形成されていることが好ましく、具体的には、前述した4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)ないし成分Aの含有量が多い樹脂が例として挙げられる。
スキン層は、離型フィルムの金型追従性を損ねない程度の引張弾性率や厚さであることが好ましく、具体的には厚さが1〜10μm程度であることが好ましい。
また金型成形用離型積層フィルムは、中間層を有していてもよい。前記中間層の少なくとも一方の主面には、本願発明の離型フィルムが備えられており、金型成形時には中間層は被成形材料に接触しないように用いるのが好ましい。
(基材層)
基材層は、本願発明の積層離型フィルムの機械的な強度などを調整するために用いられる。具体的には、プロピレン(共)重合体、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)および/またはプロピレン(共)重合体(C)との混合物であって前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10重量部未満の混合物、ポリエチレンテレフタラートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、およびこれらの混合物が例として挙げられる。これらの材質で形成された基材層と積層させることで、金型追従性と耐破れ性を兼ね備えた離型フィルムとすることができる。
基材層の厚さは、通常、5〜40μmであり、好ましくは5〜25μm、更に好ましくは10〜25μmである。基材層の厚さが上記範囲内であると、優れた金型追従性と耐破れ性が発揮される。また、基材層の厚さを上記範囲内とすることで、積層離型フィルム全体の130℃における引張弾性率などを所定の数値範囲内とすることが容易となる。
(接着層)
基材層と表面層との間には接着層を配置することが好ましい。接着層を配置することで、基材層と表面層の接着をより確実なものとし、使用時に剥離する等の不具合を効果的に抑制することができる。
接着層は、接着樹脂によって形成することができる。接着樹脂の具体例としては、少なくとも一部が不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の酸無水物によりグラフト変性された変性4−メチル−1−ペンテン系重合体;この変性4−メチル−1−ペンテン系重合体とα−オレフィン系重合体を含む混合物;ポリオレフィン系エラストマー等を挙げることができる。
接着層の厚さは、表面層と基材層の接着性を向上させることができる厚さであればよく、特に制限はないが、通常は4〜6μm程度である。
本発明の離型フィルムの層構造としては、表面層を「A」、基材層を「B」、接着層を「C」、スキン層を「S」とすると、S/A(2層構造)、A/B(2層構造)、A/B/A(3層構造)、A/C/B(3層構造)、S/A/B(3層構造)、S/A/B/A/S(5層構造)等がある。なお積層体ではない本願発明の離型フィルムは、上記表記ではA(単層構造)と表記される。
離型フィルムの厚さは40〜60μmであることが好ましく、40〜55μmであることが更に好ましい。離型フィルムの厚さが40μm未満であると、取り扱い性が低下したり、剥離時に切れたりする場合がある。一方、60μm超であると、金型の形状を忠実に再現することが困難になる場合がある。本願発明の離型フィルムを用いた積層離型フィルムの場合も、同様に、前記積層体全体の厚さは40〜60μmであることが好ましく、40〜55μmであることが更に好ましい。
本願発明のフィルムのJIS K7127に準拠して測定される130℃における引張弾性率は、1〜15MPaが好ましく、3〜12がより好ましい。引張弾性率が小さすぎると、本願発明のフィルムのハンドリング性が低下して、前記フィルムが変形しやすくなり、本願発明のフィルムを、離型フィルムとして用いた場合、金型成形により製造した成形品に皺や欠け等の外観不良を起こす恐れがある。一方、引張弾性率が大きすぎると、本願発明のフィルムの離型性が低下する恐れがある。
本願発明の離型フィルムおよび積層離型フィルムの130℃における破断伸びは1000%以上であることが好ましく、1100%以上であることが更に好ましく、通常、1100〜1400%である。「130℃における破断伸び」は、高温条件下におけるフィルムが破れるまでの伸び量を示す物性値である。離型フィルムの130℃における破断伸びが上記範囲内であると、金型に圧着させて130℃前後の温度条件下で高延伸させた場合であっても破れ難く、優れた金型追従性を示す。なお、本明細書における「破断伸び」は、局所的な破れが生ずることなく、フィルムが実質的に破断するまでの伸びを意味する。
2.離型フィルムの製造方法
本発明の離型フィルムは、任意の方法で製造されうるが、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下である熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部の溶融混練物を成形する工程を含む製造方法で製造するのが好ましい。
また具体的なフィルムの成形方法は、たとえば、1)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)のペレットと熱可塑性エラストマー(B)のペレットとを押出機で溶融混練し、押出成形して離型フィルムを製造する方法(ドライブレンド法);2)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを二軸押出機等で溶融混練してペレタイズしたメルトブレンド樹脂を、再度押出機にて溶融混練して押出成形して離型フィルムを製造する方法(メルトブレンド法);3)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)を押出機等で溶融混練してペレタイズしたメルトブレンド樹脂を、プレス機で所定の厚みにプレスする方法(プレスフィルム法)などがある。
前記1)および2)の押出成形により離型フィルムを製造する場合、押出温度は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを均一に混練し、均一な厚みに成形できる温度であればよく、例えば230〜290℃程度とすることができる。押出成形は、例えばTダイやインフレーションダイ等を有する公知の押出機にて行うことができる。
前記3)のプレス成形により離型フィルムを製造する場合、プレス条件は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを溶融させて均一な厚みのシートに成形できる条件に設定されればよい。プレス温度は、例えば230〜290℃程度とすることができる。プレス成形は、公知のプレス機にて行うことができる。
また前述のプロピレン(共)重合体(C)を添加する場合は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とは別に、プロピレン(共)重合体(C)を添加してもよいが、予め熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)を混練した後、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と混練するのが、離型フィルムの製造がしやすい場合がある。これは室温近傍においても粘性がある熱可塑性エラストマー(B)を単独ではハンドリングしにくく、またペレット状に成形し保存した場合、ペレット同士で固着する場合があるため、融点が高いプロピレン(共)重合体(C)を成分Bに混合し混合体を作成することで、混合体の粘性を低下させハンドリング性などを向上させることができるためである。
本発明の金型成形用離型フィルムは、前述の通り、優れた離型性と追従性とを有する。このため、本発明の金型成形用離型フィルムは、例えば半導体素子を樹脂封止する工程に用いられる半導体封止プロセス用離型フィルムや;LED素子を樹脂封止する工程に用いられるLED封止プロセス用離型フィルム等として好ましく用いられる。
3.離型フィルムを用いた金型成型方法
本願発明の離型フィルムは、金型成形用の離型フィルムとして好適に用いられるが、特に樹脂封止半導体の製造に好ましく用いられ、特にLEDパッケージの製造に好ましく用いられる。本願発明のLEDパッケージ製造方法は、離型フィルムを成形用の金型に配置する第一の工程と、前記離型フィルムを介して前記金型内に封止樹脂を充填するとともに、前記封入樹脂内に発光ダイオードを配置して型締めし、前記封止樹脂を硬化させてLEDパッケージを成形する第二の工程と、 成形された前記LEDパッケージを前記離型フィルムから離型させる第三の工程と、を含む。以下、上述の離型フィルムを使用方法についてLEDパッケージの製造方法を例に挙げて図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、まず上金型2a上に配置された基板3の上に、複数のLED5を配置する。次に、上金型2a、及び所定形状のキャビティ7が形成された下金型2bからなる成形用の金型2の下金型2bに離型フィルム1を配置する。なお、上金型2aには、複数のLED5を配置した基板3を配設する(前記第一の工程に対応)。
下金型2bに配置された離型フィルム1は、例えば吸引等の操作によって下金型2bの内面に密着させる。LEDパッケージを製造するためのキャビティ7は直径0.5〜3mm程度の半球状あるいはそれに類似する形状である。即ち、従来の半導体用金型に比して、LEDパッケージ製造用の金型は、段差が大きい。このため、従来の離型フィルムではLEDパッケージ製造用の金型へ十分に追従することが難しいが、本実施形態の離型フィルム1は金型追従性に優れたものであるため、キャビティ7の直径が上記の範囲内であっても下金型2bの内面に密着して配置させることができる。
次に、図2に示すように、上金型2aと離型フィルム1を介した下金型2bとの間に被成形材料として封止樹脂9を充填する。封止樹脂9としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも、透明性を有する樹脂が好ましく、特に本願発明の離型フィルムはシリコーン樹脂を被成形材料として用いた場合に、その成形温度における高い離型性や金型追従性などにより、良好な外観の成形体を得ることができる。その後、図3に示すように、金型2内に充填した封入樹脂9内にLED5を配置して型締めする。型締め時の圧力は特に限定されないが1.0〜10.0MPa程度である。また、型締め時の温度も特に限定されないが110〜190℃程度とすればよい(前記第二の工程に対応)。
所定の条件で封止樹脂9を硬化させた後、図4に示すように金型2を型開きする(前記第三の工程に対応)。封止樹脂9としてシリコーン樹脂を用いた場合は、通常、80〜160℃あり、エポキシ樹脂を用いた場合は、150〜200℃である。離型フィルム1は離型性に優れたものであるため、金型2(上金型2a及び下金型2b)や封止樹脂9から容易に離型させることができる。以上の操作により、図5に示すようなLEDパッケージ15を得ることができる。 本実施形態の離型フィルム1は金型追従性に優れたものであるため、下金型2bの内面形状を忠実に反映し、寸法精度の高いLEDパッケージ15を製造することができる。
また離型フィルム1は、金型成形時に前記フィルムにかかる応力がその構造により分散され、ネッキングなどのフィルム表面の形状に凹凸やシワが発生しにくい。このため前記凹凸やシワなどのフィルム表面の形状が転写される成形体の外観を損ないにくく、LEDパッケージ15の製造歩留まりの向上も図ることができる。また本願発明の離型フィルム1は単層フィルムであるため、本願発明の金型成形用積層離型フィルムに比べて積層体内部での層間剥離が生じるという恐れがないという利点がある。
なお、上記「3.」では、LED製造方法を例に挙げて説明したが、本発明の離型フィルムは、LED体素子を樹脂封止する工程に限らず、成型金型を用いて各種成形品を成形および離型する工程に好ましく使用できる。またトランスファー成形など、通常、半導体素子の封止成形に用いられる成形方法になら、特に限定されることなく用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
(1)4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)
金型成形用離型フィルムに含まれる4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)として、表1に示される4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)(商品名 TPX DX310、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A2)(商品名 TPX MX004、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A3)(商品名 TPX DX350、三井化学(株)製)を用いた。
さらに、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)〜(A3)の1)引張弾性率(室温)2)MFRを、以下のようにして測定した。その結果を表1に示す。
1)引張弾性率(室温)
ASTM−0638に準拠し、射出成形体について弾性率を測定した。
2)MFRの測定
ASTM D1238に準拠して、温度240℃または260℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)熱可塑性エラストマー(B)
熱可塑性エラストマー(B)を以下のように合成した。
(合成例1)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、100gの1−ブテン、および1.0mmolのトリイソブチルアルミニウムを常温で仕込んだ後、重合装置内の温度を40℃に昇温して、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した。次いで、重合装置内の圧力を、エチレンで0.8MPaに調整した。次いで、0.001mmolのジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドと、アルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを接触させたトルエン溶液を、重合装置内に添加し、内温40℃、エチレンで系内圧力を0.8MPaに保ちながら20分間重合させた後、20mlのメタノールを添加して重合反応を停止させた。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出させて、真空下130℃で12時間乾燥させて、36.4gの熱可塑性エラストマー(B1)を得た。
(合成例2〜3)
プロピレン、エチレンおよび1−ブテンの共重合比を表2に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして熱可塑性エラストマー(B2)〜(B3)を得た。
合成例1〜3で得られた熱可塑性エラストマー(B1)〜(B3)の組成を表にまとめた。その結果を表2に示す。
(3)組成物(D)の合成
熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)との混合物である組成物(D)を以下のようにして合成した。
(合成例4)
合成例2で得られた95重量部の熱可塑性エラストマー(B2)と、プロピレン(共)重合体(C)として5重量部のホモポリプロピレン(C1)(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)とを200℃で2軸押出機にて混練し、組成物(D1)を得た。
(合成例5)
合成例3で得られた90重量部の熱可塑性エラストマー(B3)と、プロピレン(共)重合体(C)として10重量部のホモポリプロピレン(C1)(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)とを混練した以外は、合成例4と同様にして組成物(D2)を得た。
(合成例6)
合成例1で得られた85重量部の熱可塑性エラストマー(B1)と、プロピレン(共)重合体(C)として15重量部のホモポリプロピレン(C1)(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)とを混練した以外は、合成例4と同様にして組成物(D3)を得た。
得られた組成物(D1)〜(D3)のMFRを前述と同様にして測定した。また4)引張弾性率(室温)および密度と融点は以下のように測定した。それらの結果を表3に示す。
3)引張弾性率(室温)
JIS K7113−2に準拠し、試験温度を室温(23℃)、試験速度を200mm/分とし、フィルムのMD方向における弾性率を測定した。
4)密度
ASTM D1505に準拠して測定した。
5)融点
JIS K7122に準拠して測定した。
(合成例7)
60重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、40重量部の合成例4で得られた組成物(D1)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E1)を得た。
(合成例8)
60重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、40重量部の合成例5で得られた組成物(D2)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E2)を得た。
(合成例9)
80重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、20重量部の合成例5で得られた組成物(D2)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E3)を得た。
(合成例10)
60重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A2)と、40重量部の合成例5で得られた組成物(D2)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E4)を得た。
(合成例11)
80重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A2)と、20重量部の合成例5で得られた組成物(D2)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E5)を得た。
(合成例12)
60重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、20重量部の合成例5で得られた組成物(D2)と、さらにプロピレン(共)重合体(C)として20重量部のホモポリプロピレン(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E6)を得た。
(合成例13)
80重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、10重量部の合成例5で得られたプロピレン系エラストマー組成物(D2)と、さらにプロピレン(共)重合体(C)として10重量部のホモポリプロピレン(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E7)を得た。
(合成例14)
60重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、40重量部の合成例6で得られた組成物(D3)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E8)を得た。
(合成例15)
95重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、5重量部の合成例6で得られた組成物(D3)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E9)を得た。
得られた混合物(E1)〜(E9)のMFRを前述と同様にして測定した。その結果を表4に示す。
(実施例1)
金型用離型フィルムの原料として混合物E1を、フルフライト型のスクリューを備えた押出機に投入し、溶融混練させ、押出温度を260℃とし、溶融樹脂を単層Tダイで押出し成形した。
(実施例2〜8、比較例1〜4)
金型用離型フィルムの原料として混合物E1を表5に示されるような原料に変更した以外は、実施例1と同様にして金型用離型フィルムを得た。
実施例および比較例で得られたフィルムの、6)引張弾性率(130℃)や7)離型性、追従性、レンズ表面の平滑性を以下のようにして評価した。これらの結果を表5および表6に示す。さらに一部の実施例のフィルムについて8)TEM観察を以下のようにして行った。これらの結果を図9および図10に示す。なお表5中のF107BVは、ホモポリプロピレン h−PP(プライムポリマー(株)製 商品名 F107BV、)である。
6)引張弾性率(130℃)
JIS K7127に準拠し、試験温度130℃、試験速度200mm/分とし、離型フィルムのMD方向における弾性率を測定した。図11に、実施例2と比較例4の応力―歪み曲線(S−Sカーブ)を示す。引張弾性率は、S−Sカーブにおいて、伸び量ゼロを起点とししたS−Sカーブの接線の傾きから算出した。
7)金型離型性、追従性、レンズ表面の平滑性
図6に示すように、クッション性マット、ステンレス板(厚さ:1mm)、ポリイミドテープ(厚さ:50ミクロン)、シリコーン樹脂、離型フィルム、金型、ステンレス板(厚さ:1mm)をこの順に積層し、押さえ金具で離型フィルムを固定し、20t油圧成形機(東邦マシナリー社製)を使用して上下方向に圧縮した(図7)。圧縮条件は、温度130℃、圧力51kgf/cm2(3MPa)、圧縮時間:3分または5分間とした。なお、ステンレス板の平面寸法は12×20cm、離型フィルムの平面寸法は15×20cm、金型の平面寸法は6.5×11cmである。また、金型には半径1.25mmの半球状の孔100個と、半径0.9mmの半球状の孔300個が、それぞれ均等な間隔で配置されている。
この圧縮により、離型フィルムが孔の形状に追従して延伸されるとともに、延伸されて形成された離型フィルムの孔に、液状シリコーンが侵入し、加熱硬化反応によって半球形状のシリコーンに成形される。離型フィルムを剥離後、光学顕微鏡(装置名)を用いて、成形されたレンズ状のシリコーンの表面状態(離型フィルムの残渣、平滑性、追従性)を以下の7−1)〜7−4)の方法で評価した。シリコーンは信越シリコーン製KER2500(メチル系)を使用した。
7−1)離型フィルムの残渣
半径1.25mmのレンズ100個上に、離型フィルム残渣が存在するレンズの数で評価を行なった。残渣の有無はマイクロスコープ(倍率100倍)で確認した。
7−2)追従性
レンズ高さを金型深さで除し、100をかけたもの(100×(レンズ高さ)/(金型深さ))を追従性として評価した。前記追従性の数値が高いほど、金型の形がレンズに反映されており、追従性が高いと評価できる。
7−3)レンズ表面の平滑性
光学顕微鏡下(100倍)でレンズ表面に50〜100μmの間隔の皺が観測されないものが○、観測されるものが×と評価した。
○:レンズ表面が平滑
×:レンズ表面に凹凸
7−4)レンズ表面の光沢
光学顕微鏡下(100倍)でレンズ表面が平滑であり透明性があるものを○、レンズ表面がマット上であり透明性がないものを×と評価した。
○:光沢あり
×:光沢なし
8)TEM観察
実施例2のフィルムの、厚み100μmの試料片を用意した。この試料片を、MD方向と平行方向とTD方向に平行方向とで切り出して得た断面を、それぞれ透過電子顕微鏡(TEM、日立製作所製H−7650(装置名))を用いて、10000倍率でそれぞれ観察した。図9は、実施例2のフィルムのMD方向に平行な断面TEM写真であり、図10はフィルムのTD方向に平行な断面TEM写真である。
表5に示されるように、実施例1〜8のフィルムは、フィルム残渣が少なく離型性に優れており、かつ十分な金型追従性を有することがわかる。また実施例1〜8のフィルムを金型成型用離型フィルムとして用いることで表面が平滑かつ光沢がある成形体(レンズ)を得られることがわかる。一方、表6に示されるように、比較例1〜4のフィルムは、フィルム残渣が多く、離型性に劣ることがわかる。特に、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A3)を原料としてフィルムを作成した比較例3と、実施例1〜8で4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)に添加することで上記離型性が向上した熱可塑性エラストマー(B)を含む組成物D3を少量添加した比較例4とを比較すると、D3を添加した比較例4の方がかえって比較例3よりも離型性が悪化していることがわかる。メカニズムは明確ではないが、熱可塑性エラストマー(B)の含有量が少なすぎるためと考えられる。また図9と図10の断面TEM写真から、実施例2のフィルムは相分散構造を有することがわかる。なお前記TEM写真の明部(相対的に淡い灰色の部分)は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的になる相、暗部(相対的に濃い黒い部分)は、熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)とから実質的になる相であると考えられる。
本発明のフィルムは、離型性に優れるので、離型フィルムとして幅広く用いることができる。特に、本発明のフィルムは金型追従性にも優れるため、金型の形状が複雑な半導体やLEDを封止した封止体(パッケージ)を製造する金型成型用離型フィルムとして、好ましく用いられる。
1,11,67 離型フィルム
2a,61 上金型
2b,64 下金型
2 金型
3 基板
5 LED
7,66 キャビティ
9、63 封止樹脂
15 LEDパッケージ62 ポリイミドテープ
65 押さえ金具
88 レンズ(成形体)

Claims (13)

  1. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、
    熱可塑性エラストマー(B)と、
    を含むフィルムであって、
    前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されないフィルム。
  2. 130℃における引張弾性率が1〜15MPaである、請求項1に記載のフィルム。
  3. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)のASTM−0638準拠にして測定される23℃における引張弾性率が500〜2000MPaである、請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 熱可塑性エラストマー(B)のJIS K7113‐2に準拠して測定される23℃における引張弾性率が1〜50MPaである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のフィルム。
  5. 熱可塑性エラストマー(B)が、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーのいずれか1種類以上のエラストマーからなる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のフィルム。
  6. さらに、プロピレン(共)重合体(C)を含む請求項1に記載のフィルムであって、前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(C)に由来する融点TmC2が110〜175℃の範囲内にある、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のフィルム。
  7. 100重量部の熱可塑性エラストマー(B)に対して1〜30重量部のプロピレン(共)重合体(C)を含む、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のフィルム。
  8. 熱可塑性エラストマー(B)の密度が850〜980kg/mである、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のフィルム。
  9. 請求項1に記載のフィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的に構成される相と、熱可塑性エラストマー(B)から実質的に構成される相の相分散構造が観察される、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のフィルム。
  10. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載のフィルムを含んでなる、金型成形用離型フィルム。
  11. 請求項1に記載の金型成形用離型フィルムを少なくとも一方の主面の表面層または中間層として備える、金型成形用積層離型フィルム。
  12. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下である熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部の溶融混練物を成形する工程を含む、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  13. 請求項10または請求項11に記載の離型フィルムを成形用の金型に配置する第一の工程と、前記離型フィルムを介して前記金型内に封止樹脂を充填するとともに、前記封入樹脂内に発光ダイオードを配置して型締めし、前記封止樹脂を硬化させてLEDパッケージを成形する第二の工程と、成形された前記LEDパッケージを前記離型フィルムから離型させる第三の工程と、を含むLEDパッケージの製造方法。
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