JP2012144241A - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩耗の進行具合に関係なく通電性能が良好に確保されるとともに、トレッドゴムに設けられる導電部のボリュームを低減できる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】非導電性ゴムで形成されたトレッドゴム10に、導電性ゴムで形成され且つ接地面からトレッドゴム10の側面に至る導電部13が設けられている空気入りタイヤにおいて、その導電部13が、トレッドゴム10の表面に形成され、トレッドゴム10の側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端Eを超えた位置で終端する外皮部13aと、接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、外皮部13aからタイヤ径方向内側に突出してトレッドゴム10の底面に達することなく終端する突起部13bとを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる空気入りタイヤとその空気入りタイヤの製造方法に関する。
近年、燃費性能と関係が深いタイヤの転がり抵抗の低減を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズなどの不具合を生じやすいという問題があった。
そこで、シリカ等を配合した非導電性ゴムからなるトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電性ゴムからなる導電部を設けて、通電性能を発揮できるようにした空気入りタイヤが開発されている。例えば下記特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、非導電性のトレッドゴムの表面に、一端が導電性ゴムからなるウイングゴムに接続され、他端が接地端よりもタイヤ幅方向内側で終端する肉薄の導電部を設けて、静電気を放出するための導電経路を形成している。
ところが、上記のようなタイヤでは、トレッドゴムの表面が導電部の厚みの分だけ消滅する程度に摩耗が進行すると、導電部が短くなって終端位置が接地端の近くにまで移動し、路面に対する導電部の接触頻度が大幅に減少するため、摩耗後の通電性能が低下する傾向にあった。これに対して、導電部を肉厚に形成する方策が考えられるものの、トレッドゴムを非導電性ゴムで形成することによる改善効果を高めるうえでは、導電部のボリュームを極力少なくしうる手段が望ましい。
また、下記特許文献2に記載された空気入りタイヤでは、非導電性のトレッドゴムに、タイヤ周方向に沿って螺旋状に連続する導電部を埋設して、静電気を放出するための導電経路を形成しているが、かかる構造では、導電経路が長距離化するために電気抵抗が増大する傾向にあった。通電性能を良好に確保するうえでは、少なくとも摩耗の初期段階において導電経路の長距離化を抑制しうる手段が望まれる。
特開2000−190709号公報 特開2008−13000号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、摩耗の進行具合に関係なく通電性能が良好に確保されるとともに、トレッドゴムに設けられる導電部のボリュームを低減できる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、非導電性ゴムで形成されたトレッドゴムに、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面に至る導電部が設けられている空気入りタイヤにおいて、前記導電部が、前記トレッドゴムの表面に形成され、前記トレッドゴムの側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端を超えた位置で終端する外皮部と、前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて前記接地端よりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、前記外皮部からタイヤ径方向内側に突出して前記トレッドゴムの底面に達することなく終端する突起部とを有するものである。
本発明の空気入りタイヤによれば、摩耗の初期段階では、トレッドゴムの表面に外皮部が形成されていることにより、単なる螺旋状に連続させた導電部と比べて導電経路の長距離化が抑制され、通電性能を良好に確保できる。また、摩耗の中期段階では、摩耗の進行により外皮部が消滅していても、接地面からトレッドゴムの側面に至る導電経路が突起部を介して形成されるため、やはり通電性能を良好に確保できる。それでいて、外皮部と突起部を上記の如く終端させていることにより、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤでは、前記外皮部の終端位置を、接地端からタイヤ幅方向内側に向かって接地幅の5〜30%となる領域内に設定したものが好ましい。これが5%以上であることにより、路面に対する外皮部の接触頻度を確保して、優れた通電性能を発揮することができる。また、これが30%以下であることにより、外皮部を必要以上に延長させることなく、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤでは、前記突起部の終端位置を、前記トレッドゴムの表面から主溝深さの15〜80%の範囲内に設定したものが好ましい。これが15%以上であることにより、摩耗の進行による突起部の早期の消滅を防いで、摩耗後の通電性能を良好に保持できる。また、これが80%以下であることにより、突起部を必要以上に延長させることなく、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤでは、前記突起部の厚みを、前記外皮部の厚みよりも大きくしたものが好ましい。これにより、突起部の分断を防いで摩耗後の通電性能を確保できるとともに、突起部のクラックを防いで耐久性能を確保することができる。
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、非導電性ゴムで形成されたトレッドゴムに、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面に至る導電部が設けられている空気入りタイヤの製造方法において、前記トレッドゴムを成形する工程が、帯状の非導電性ゴム部の外周面の少なくとも一部を導電性ゴム部で被覆してなるゴムリボンを、タイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻き付けて、前記導電性ゴム部の片方の端部を隣り合う前記導電性ゴム部の腹部に接続する段階を含み、前記導電性ゴム部の前記トレッドゴムの表面に露出する部分を、前記トレッドゴムの側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端を超えた位置で終端する外皮部とし、前記導電性ゴム部の残りの部分を、前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて前記接地端よりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、前記外皮部からタイヤ径方向内側に突出して前記トレッドゴムの底面に達することなく終端する突起部とするものである。
本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、上記の如きゴムリボンを螺旋状に巻き付けることにより、上述した本発明の空気入りタイヤの導電部を簡便且つ効率的に形成できる。製造した空気入りタイヤは、摩耗の初期段階では、外皮部により導電経路の長距離化を抑制して通電性能を良好に確保できるとともに、摩耗の進行により外皮部が消滅した段階では、突起部によって通電性能を良好に確保できる。それでいて、外皮部と突起部を上記の如く終端させていることで、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、前記外皮部を、接地端からタイヤ幅方向内側に向かって接地幅の5〜30%となる領域内で終端させるものが好ましい。これが5%以上であることにより、路面に対する外皮部の接触頻度を確保して、優れた通電性能を発揮することができる。また、これが30%以下であることにより、外皮部を必要以上に延長させることなく、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、前記突起部を、前記トレッドゴムの表面から主溝深さの15〜80%の範囲内で終端させるものが好ましい。これが15%以上であることにより、摩耗の進行による突起部の早期の消滅を防いで、摩耗後の通電性能を良好に保持できる。また、これが80%以下であることにより、突起部を必要以上に延長させることなく、導電部のボリュームを有効に低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、前記突起部になる前記導電性ゴム部の部分の厚みを、前記外皮部になる前記導電性ゴム部の部分の厚みよりも大きくしたものが好ましい。これにより、突起部の分断を防いで摩耗後の通電性能を確保できるとともに、突起部のクラックを防いで耐久性能を確保することができる。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図 図1の要部拡大図 ゴムリボンの巻き付けを行うための設備を示す概略構成図 トレッドゴムの成形に使用するゴムリボンの一例を示す断面図 トレッドゴムの成形工程を示す断面図 ゴムリボンの巻き付けを概略的に示す断面図 本発明の別実施形態におけるトレッドゴムの要部を示す断面図 図7のトレッドゴムの成形に使用するゴムリボンの一例を示す断面図 図8のゴムリボンの巻き付けを概略的に示す断面図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が配され、その端部がビード1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ赤道Cに対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内周には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配されている。
カーカス層7のビード部1外周には、不図示のリムに接するリムストリップゴム4が配されている。また、カーカス層7のサイドウォール部2外周には、サイドウォールゴム9が配されている。本実施形態では、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9が、それぞれ導電性ゴムで形成されている。
カーカス層7のトレッド部3外周には、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6が配されている。各ベルトプライは、タイヤ赤道Cに対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト層6の外周には、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8を配しているが、必要に応じて省略しても構わない。
トレッド部3には非導電性ゴムで形成されたトレッドゴム10が配され、そのトレッドゴム10に、導電性ゴムで形成され且つ接地面からトレッドゴム10の側面に至る導電部13が設けられている。本実施形態のトレッドゴム10は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、非導電性ゴムで形成され且つキャップ部12のタイヤ径方向内側に接合されるベース部11とを備える。トレッドゴム10の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の主溝15が形成されている。
ここで、導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。また、非導電性ゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合することにより作製される。
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
導電部13を形成する導電性ゴムは、導電部13の耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着比表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが好ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
図2に拡大して示すように、導電部13は外皮部13aと突起部13bとを有する。外皮部13aは、トレッドゴム10の表面に形成され、トレッドゴム10の側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端Eを超えた位置で終端する。外皮部13aは、トレッドゴム10の側面に接合されたサイドウォールゴム9に接続されており、摩耗の初期段階では導電経路を構成する。即ち、車体やタイヤで発生した静電気は、リムから、リムストリップゴム4、サイドウォールゴム9、導電部13の外皮部13aを通って路面に放出される。
突起部13bは、接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、外皮部13aからタイヤ径方向内側に突出してトレッドゴム10の底面に達することなく終端する。本実施形態では、螺旋状に連続して延びている突起部13bが、タイヤ周方向に垂直なタイヤ子午線断面において三本の髭状突起として現れている。かかる髭状突起は、接地端Eのタイヤ幅方向外側とタイヤ幅方向内側とに少なくとも1本ずつ現れる。
図1,2に示したタイヤ新品時の状態から或る程度まで摩耗が進行すると、外皮部13aの大部分が消滅し、その終端位置Paが接地端Eの近くに移動する。かかる段階では、タイヤに作用する負荷荷重が小さい場合などに、路面に対する外皮部13aの接触頻度が大幅に減少するものの、このタイヤTにおいては、突起部13bを介した導電経路を通じて通電性能を良好に確保できる。即ち、摩耗の進行により外皮部13aが消滅した状態では、トレッドゴム10の表面に出現した突起部13bを介して、接地面からトレッドゴム10の側面に至る導電経路が形成される。
突起部13bによる導電経路は螺旋状であるものの、この段階であれば、摩耗の初期段階に比べてサイドウォールゴム9の先端が接地しやすくなるため、導電経路の長距離化の問題は軽減される。尚、摩耗の末期段階では、更なる摩耗の進行によりサイドウォールゴム9が容易く接地する状態となるため、通電性能が確保される。サイドウォールゴム9は、15%摩耗時(主溝深さDの15%が摩耗した状態)には、その先端が路面に接地可能な状態となる。
上述のように、摩耗の初期段階では、外皮部13aがサイドウォールゴム9からタイヤ幅方向に延びて接地面内にまで到達しているため、単なる螺旋状に連続させた導電部と比べて、導電経路の長距離化が抑制されたものとなり、通電性能が良好に確保される。また、摩耗の中期段階では、たとえ外皮部13aが消滅していても、突起部13bを介した導電経路を通じて通電性能を良好に確保できる。したがって、このタイヤTでは、摩耗の進行具合に関係なく通電性能が良好に確保される。
トレッドゴム10は、導電部13以外が全て非導電性ゴムにより形成されているうえ、外皮部13aの終端位置Pa及び突起部13bの終端位置Pbに、他の導電性ゴムは接続されておらず、このように外皮部13aと突起部13bを終端させていることにより、導電部13のボリュームを有効に低減できる。その結果、トレッドゴム10を非導電性ゴムで形成することによる改善効果(シリカ高配合とした場合には、転がり抵抗の低減効果や濡れた路面での制動性能の向上効果)を良好に高められる。
本実施形態では、導電部13をタイヤ幅方向の片側だけに設けている例を示すが、これをタイヤ幅方向の両側に設けることも可能である。但し、導電部13のボリュームを低減するうえでは、本実施形態のようにタイヤ幅方向の片側だけに導電部13を設けることが好ましい。
外皮部13aの終端位置Paは、接地端Eよりもタイヤ幅方向内側に位置し、つまりは接地面内に配置される。この接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部の表面を指し、そのタイヤ軸方向の最外位置が接地端Eとなる。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
外皮部13aの終端位置Paは、導電部13のボリュームを低減する観点から、タイヤ幅方向の最外側に位置する主溝15よりもタイヤ幅方向外側にあることが好ましい。また、終端位置Paは領域a内に設定することが好ましく、この領域aは、接地端Eからタイヤ幅方向内側に向かって接地幅CWの5〜30%となる領域である。接地幅CWは、接地端E,E間におけるタイヤ幅方向距離として定義される。
本実施形態では、トレッドゴム10とサイドウォールゴム9との界面に導電部13を介在させており、導電部13がサイドウォールゴム9と確実に接続されるようにしている。トレッドゴム10とサイドウォールゴム9との界面の幅BWに対して、導電部13とサイドウォールゴム9とが重なる領域の幅bは50〜100%であることが好ましく、導電部13のボリュームを低減するうえでは50〜80%が好ましい。尚、導電部13がサイドウォールゴム9に接続されていれば、幅bを略ゼロにしても構わない。
導電部13は、リム又はリムから通電可能なゴムに接続されるように設けられ、静電気を路面に放出するための導電経路を構成する。このタイヤTにおいて、カーカスプライのトッピングゴム、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9のうち、何れか又は全てを非導電性ゴムで形成することも可能であり、その場合には、サイドウォールゴム9、リムストリップゴム4、或いはリムに接触するリムストリップゴム4の外壁面にまで導電部13を延長させればよい。また、ベルト層6やベルト補強層8のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成することも可能である。
突起部13bの終端位置Pbは、トレッドゴム10の表面から主溝深さDの15〜80%の範囲内に設定することが好ましい。即ち、トレッドゴム10の表面から終端位置Pbまでの深さ寸法cは、主溝深さDの15〜80%であることが好ましい。また、タイヤ子午線断面に現れる突起部13bの本数(髭状突起の本数)としては、2〜10本が例示される。接地端Eに対する突起部13bの相対位置は、突起部13bの付け根(外皮部13aとの接続箇所)を基準にして定められる。
外皮部13aは肉薄に形成されており、導電部13のボリュームを低減するために、その厚みtは1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。また、導電経路の断線を防いで通電性能を保持できるように、厚みtは0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましい。このことは、突起部13bの厚みについても同じである。
本実施形態では、トレッドゴム10の両端部にサイドウォールゴム9の端部を載せてなるサイドオントレッド構造を採用した例を示すが、これに限られるものではなく、サイドウォールゴム9の端部にトレッドゴム10の端部を載せてなるトレッドオンサイド構造を採用しても構わない。その場合には、導電性ゴムで形成したウイングゴムをトレッドゴムの側面に接合して、そのウイングゴムに外皮部を接続することになる。
このタイヤTにおける更なる好ましい実施形態として、図7に示すように、突起部13bの厚みtbを、外皮部13aの厚みtaよりも大きくしたものが挙げられる。これにより、突起部13bの分断を防いで摩耗後の通電性能を確保できるとともに、突起部13bのクラックを防いで耐久性能を確保することができる。このような突起部13bの分断やクラックは、加硫成形時におけるトレッドパターンの形成工程に起因するものである。
即ち、タイヤ周方向に対して交差する方向に延びる横溝が導電部13上に形成される場合、トレッドゴム10の表面に押し当てられる金型には、横溝を形成するための凸部が設けられ、この凸部が突起部13bを圧迫することになる。それにより、突起部13bが分断してしまうと、摩耗後の通電性能の確保が難しく、また横溝の下方で突起部13bが薄く形成されると、オゾン等によるクラックが発生して耐久性能が低下してしまう。
上記の如き不具合を回避するうえで、厚みtbを厚みtaよりも大きくすることが有効であり、その場合、外皮部13aの厚みtaは、0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましい。また、突起部13bの厚みtbは、厚みtaの1.5〜3.0倍であることが好ましい。
次に、この空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。このタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来のタイヤ製造工程と同様にして製造できるため、トレッドゴムの成形工程を中心に説明する。後述するように、トレッドゴム10は、いわゆるリボン巻き工法によって成形される。リボン巻き工法とは、小幅で未加硫のゴムリボンをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。
ゴムリボンの成形及び巻き付けは、図3に例示したような設備を用いて行うことができる。この設備は、二種のゴムを共押出して複層のゴムリボン20を成形可能なゴムリボン供給装置30と、ゴムリボン供給装置30より供給されたゴムリボン20が巻き付けられる回転支持体31と、ゴムリボン供給装置30及び回転支持体31の作動制御を行う制御装置32とを備える。回転支持体31は、軸31aを中心としたR方向の回転と、軸方向への移動とが可能に構成されている。
押出機33は、ホッパー33a、スクリュー33b、バレル33c、スクリュー33bの駆動装置33d、及び、ギアポンプを内蔵するヘッド部33eを備えている。これと同様に、押出機34もホッパー34a、スクリュー34b、バレル34c、駆動装置34d及びヘッド部34eを備える。一対の押出機33、34の先端には、口金36が付設されたゴム合体部35が設けられている。
ホッパー33aにゴム材料である非導電性ゴムを投入し、ホッパー34aにゴム材料である導電性ゴムを投入すると、各ゴムはスクリュー33b、34bで混練されながら前方に送り出され、ヘッド部33e、34eを経由し、ゴム合体部35にて所定の形状で合体され、複層のゴムリボン20として吐出口36aから押出成形される。成形されたゴムリボン20は、ロール37によって前方に送り出され、ローラ38によって押さえ付けられながら回転支持体31に巻き付けられる。
図4(A)は、複層のゴムリボン20を示す断面図であり、巻き付け時には、図4の下側が回転支持体31に対向する内周側となる。ゴムリボン20は、帯状の非導電性ゴム部21と、その非導電性ゴム部21の外周面の少なくとも一部を被覆する導電性ゴム部22とにより構成されている。導電性ゴム部22の幅22Wは、例えばゴムリボン20の全幅20Wの75〜100%に設定される。ゴムリボン20の断面は、三角形状に限られず、四角形状や楕円形状など他の形状でも構わない。
ゴムリボン20を押出成形する際に、ヘッド部34e内のギアポンプの回転を制止し、必要であればスクリュー34bの回転も制止して、導電性ゴムの押出を停止すれば、図4(B)のような非導電性ゴム部21のみで形成した単層のゴムリボン20’が得られる。このようなヘッド部33e、34e内のギアポンプ及びスクリュー33b、34bの作動は制御装置32により制御され、ゴムリボンにおける単層と複層との切り換えを自在に行うことができる。
トレッドゴム10を成形する工程では、回転支持体31の外周面に非導電性ゴムからなるゴムリボンをタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻き付け、それによって図5(A)のようにベース部11を形成する。次に、図4(B)の如き単層のゴムリボン20’をタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻き付け、図5(B)に示すようにキャップ部12の導電部13が設けられない部位を形成する。
続いて、図4(A)の如き複層のゴムリボン20をタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻き付け、図5(C)に示すように、キャップ部12の導電部13が設けられる部位を形成する。このとき、図6に示すように、導電性ゴム部22の片方の端部を隣り合う導電性ゴム部22の腹部に接続する。このようにして、導電性ゴム部22のトレッドゴム10の表面に露出する部分を外皮部13aとし、導電性ゴム部22の残りの部分を突起部13bとする。
上記においては、ゴムリボン20’とゴムリボン20とを適宜に切り換えることにより、図5(B)の段階から図5(C)の段階へと連続的に移行できる。また、これらの順序は、逆であっても構わない。尚、ベース部11や、キャップ部12の導電部13が設けられない部位の形成については、押出成形法を採用してもよい。押出成形法は、所定の断面形状を有する未加硫ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法である。
複層のゴムリボン20を巻き付ける際には、外皮部13aを、接地端Eからタイヤ幅方向内側に向かって接地幅CWの5〜30%となる領域内で終端させることが好ましい。また、突起部13bを、トレッドゴム10の表面から主溝深さDの15〜80%の範囲内で終端させることが好ましい。
図5では記載を省略しているが、トレッドゴム10の内周にはベルト層6とベルト補強層8が配設されており、このトレッドゴム10を、カーカス層7やサイドウォールゴム9など他のタイヤ構成部材と組み合わせることでグリーンタイヤが形成され、該グリーンタイヤに加硫処理を施すことにより、図1に示した空気入りタイヤTを製造することができる。
図7のように突起部13bを肉厚にする場合には、図8に示したゴムリボン20が用いられる。このゴムリボン20では、突起部13bになる導電性ゴム部の部分22bの厚みtbを、外皮部13aになる導電性ゴム部の部分22aの厚みtaよりも大きくしている。これを図5,6と同じ要領で巻き付けることで、図9のように、厚みtaを有する外皮部13aと、厚みtbを有する突起部13bとを備えた導電部13が設けられる。
グリーンタイヤに加硫処理を施す際には、トレッドゴム10の表面に金型が押し当てられ、横溝を形成するための凸部が突起部13bを圧迫することになるが、このように突起部13bを肉厚にしていることにより、突起部13bの分断を防いで摩耗後の通電性能を確保できるとともに、突起部13bのクラックを防いで耐久性能を確保することができる。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 リムストリップゴム
7 カーカス層
9 サイドウォールゴム
10 トレッドゴム
13 導電部
13a 外皮部
13b 突起部
20 ゴムリボン
21 非導電性ゴム部
22 導電性ゴム部

Claims (8)

  1. 非導電性ゴムで形成されたトレッドゴムに、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面に至る導電部が設けられている空気入りタイヤにおいて、
    前記導電部が、
    前記トレッドゴムの表面に形成され、前記トレッドゴムの側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端を超えた位置で終端する外皮部と、
    前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて前記接地端よりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、前記外皮部からタイヤ径方向内側に突出して前記トレッドゴムの底面に達することなく終端する突起部とを有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記外皮部の終端位置を、接地端からタイヤ幅方向内側に向かって接地幅の5〜30%となる領域内に設定した請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記突起部の終端位置を、前記トレッドゴムの表面から主溝深さの15〜80%の範囲内に設定した請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記突起部の厚みを、前記外皮部の厚みよりも大きくした請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 非導電性ゴムで形成されたトレッドゴムに、導電性ゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面に至る導電部が設けられている空気入りタイヤの製造方法において、
    前記トレッドゴムを成形する工程が、帯状の非導電性ゴム部の外周面の少なくとも一部を導電性ゴム部で被覆してなるゴムリボンを、タイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻き付けて、前記導電性ゴム部の片方の端部を隣り合う前記導電性ゴム部の腹部に接続する段階を含み、
    前記導電性ゴム部の前記トレッドゴムの表面に露出する部分を、前記トレッドゴムの側面からタイヤ幅方向内側に延びて接地端を超えた位置で終端する外皮部とし、前記導電性ゴム部の残りの部分を、前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の位置からタイヤ周方向に沿って螺旋状に延びて前記接地端よりもタイヤ幅方向内側の位置に至り、前記外皮部からタイヤ径方向内側に突出して前記トレッドゴムの底面に達することなく終端する突起部とすることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  6. 前記外皮部を、接地端からタイヤ幅方向内側に向かって接地幅の5〜30%となる領域内で終端させる請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  7. 前記突起部を、前記トレッドゴムの表面から主溝深さの15〜80%の範囲内で終端させる請求項5又は6に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  8. 前記突起部になる前記導電性ゴム部の部分の厚みを、前記外皮部になる前記導電性ゴム部の部分の厚みよりも大きくした請求項5〜7いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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