JP2012107261A - 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記の成分(a)及び(b)の合計質量に対する、成分(a)の質量比率が10%以上、90%以下であり、成分(b)の質量比率が90%以下、10%以上であり、架橋されている。
(a)エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα−オレフィンとからなり、GPCによる分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成され、密度が0.850g/cm3以上、0.900g/cm3以下であり、GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上である、オレフィン系共重合体群。
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。
【選択図】なし
Description
(a)エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα−オレフィンとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という。)法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成され、密度が0.850g/cm3以上、0.900g/cm3以下であり、GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上であるオレフィン系共重合体群。
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。
(c)スチレン系熱可塑性エラストマー。
(d)炭化水素系ゴム用軟化剤。
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。
以下、各特徴について詳しく説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用される成分(a)のオレフィン系共重合体群は、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成される。ここで、個々のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数が3以上、12以下のα−オレフィンとからなる。エチレンのみからなる重合体や、α−オレフィンのみからなる重合体は、結晶を形成してしまう場合がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用される成分(b)は、密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体である。密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体は、耐熱性の点で優れている。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における成分(a)及び(b)の質量比率は、以下の通りである。成分(a)及び(b)の合計量(100質量%)に対し、成分(a)の割合は、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下の範囲であり、成分(b)の割合は、通常90質量%以上、好ましくは85質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは15質量%以下、特に好ましくは20質量%以下の範囲である。成分(a)の割合が前記下限以上(即ち、成分(b)の割合が前記上限以下)の場合は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性の点で好ましく、成分(a)の割合が前記上限以下(即ち、成分(b)の割合が前記下限以上)の場合は、熱可塑性エラストマー組成物の射出成形性及び押出成形性の点で好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内において、上述の成分(a)及び(b)以外の成分を含んでいても良い。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、強度の向上、外観の向上等の観点から、成分(c)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとは一般に、以下に説明するビニル芳香族炭化水素−エラストマー性重合体ブロック共重合体を表わす。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性や成形性の向上等の観点から、成分(d)として、炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。炭化水素系ゴム用軟化剤の例としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油系炭化水素、及び、ポリブテン系、ポリブタジエン系等の低分子量物等の合成樹脂系炭化水素等が挙げられるが、中でも、鉱物油系炭化水素が好ましい。また、その質量平均分子量(Mw)が、GPCにより測定したポリプロピレン換算の値で、通常300以上、中でも500以上、また、通常2000以下、中でも1500以下の範囲であるものが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、上述の成分(a)〜(d)以外に含有していてもよい熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を挙げることができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、上述の成分(a)〜(d)以外に含有していてもよいゴムとしては、例えば、必須成分以外のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系ゴム、ポリブタジエン等、またスチレン系共重合体ゴム等を挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上述の成分を含有するとともに、架橋されていることを特徴としている。架橋の方法は特に制限されないが、通常は、ゴム弾性、押出成形性の改良の観点から、架橋剤の存在下に動的に熱処理する(動的架橋する)ことが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて公知の方法により成形し、成形体として使用することができる。成形法としては、熱可塑性エラストマーに通常用いられている成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。また、その後に積層成形、熱成形等の二次加工を行なってもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は単体で成形体としてもよく、他の材料と組み合わせ、積層体等としてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、異形押出成形加工性に優れると共に、柔軟性、ゴム弾性、耐傷付き性に優れ、表面が平滑でブツの少ない押出成形品が得られるという特性を有する。
尚、実施例及び比較例で使用した材料、成型方法及び評価方法は以下の通りである。
〔成分(a):エチレン・α−オレフィン共重合体〕
各実施例及び比較例における成分(a)として、下記の成分(a−1)、(a−2)及び/又は(A)を、後述の表2に示す組み合わせ及び比率で混合して用いた。各実施例及び比較例における成分(a)全体のMw/Mnを表2に示す。
成分(a−1)として、エチレンとブテン−1との共重合体(三井化学(株)社製タフマーA0250S)を用いた。重合触媒はメタロセン系、密度は0.860g/cm3、Mw/Mn=2.2、MFR(190℃、21N荷重)=0.2g/10分であった。即ち、この成分(a−1)は本発明に規定する成分(a)の構成要素であるエチレン・α−オレフィン共重合体に該当する。
成分(a−2)として、エチレンとブテン−1との共重合体(三井化学(株)社製タフマーA1050S)を用いた。重合触媒はメタロセン系、密度は0.860g/cm3、Mw/Mn=2.2、MFR(190℃、21N荷重)=1.5g/10分であった。即ち、この成分(a−2)は、本発明に規定する成分(a)の構成要素となるエチレン・α−オレフィン共重合体に該当する。
成分(A)として、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体(JSR(株)社製EP57C)を用いた。重合触媒はチーグラー系、エチレン含有量は66質量%、エチリデンノルボルネン含量は4.5質量%、密度は0.860g/cm3、Mw/Mn=3.2であった。即ち、この成分(A)は、本発明に規定する成分(a)の構成要素となるオレフィン系共重合体には該当しないものである。
各実施例及び比較例における成分(b)として、プロピレン重合体を用いた(これを以下「成分(b−1)」とする)。密度は0.905g/cm3、MFR(230℃、21.2N荷重)=0.9g/10分であった。
各実施例及び比較例における成分(c)として、スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンポリマー社製G1651)を用いた(これを以下「成分(c−1)」とする)。スチレン含有量は33質量%、水素添加率は98%以上、質量平均分子量は245000、1,2−結合の割合は37%であった。
各実施例及び比較例における成分(d)として、パラフィン系オイル(出光興産社製PW90)を用いた(これを以下「成分(d−1)」とする)。質量平均分子量は539、40℃の動粘度は96cSt、流動点は−15℃、引火点は272℃であった。
架橋剤として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下「POX」と略称する。)を使用した。
架橋助剤として、ジビニルベンゼン(以下「DVB」と略称する。)を使用した。
下記表2に示す量の成分(c)、成分(d)を、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。更に、下記表2に示す量の成分(a)、成分(b)、POX、DVBを加え、ヘンシェルミキサーにて更に1分間混合した。この混合物を、2個の原料供給口を有する同方向2軸押出機(神戸製鋼製「KTX44」、L/D=41、シリンダブロック数=11)の第1供給口へ30kg/時間の速度で投入し、110℃〜220℃で溶融混練することにより動的に熱処理した。この熱処理の際に、押出機シリンダーの途中に設けられた第2の供給口から、下記表2に示す量の成分(d)を供給した。熱処理後、生成物をダイよりストランド状に押し出し、カッティングして、熱可塑性エラストマー組成物(それぞれ実施例1〜4及び比較例1〜4の熱可塑性エラストマー組成物とする。)のペレットを得た。なお、ここで、実施例1〜4中の成分(a−1)と成分(a−2)とを合わせた密度は、0.860g/cm3である。
得られた実施例1〜4及び比較例1〜4の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、下記の方法にて評価を行なった。
40mmφの単軸押出機(三菱重工(株)社製)を使用し、スクリュー回転数70rpm、温度180℃にて、図1に示す断面形状を有する口金から、各実施例及び比較例の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを押し出した成形品の形状を評価した。成形品の口金形状の反映性及び表面状態を目視で判定し、偏肉やエッジ切れ等の問題があるものを「不良」、そのような問題がないものを「良好」とした。
各実施例及び比較例の熱可塑性エラストマー組成物のペレットから、インラインスクリュータイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130G」)を用いて、射出圧力500kg/cm2、射出温度220℃、金型温度30℃の条件で、横120mm、縦80mm、肉厚2mmのシートを射出成形した。得られたシートを必要に応じて横方向に打ち抜いて、試料を作製した。得られた試料を用いて、以下に示す方法で、耐傷付き性、硬度及びゴム弾性(圧縮永久歪)を測定した。
上記試料の表面を、(株)東洋精機社製(テーバースクラッチテスタ)を用いて、タングステンカーバイト製のカッターにより、加重300gにて引っ掻き、目視にて表面を観察し、以下に示す3段階で評価した。
○:傷付かない
△:殆ど傷付かない
×:傷が付く
JIS K6253に準拠し、デュロ硬度Aを測定した。
JIS K6262に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮で測定した。
各実施例及び比較例の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、渡辺加工機製の45mmφ押出機(シングルフライトタイプスクリュウ)のTダイから、幅250mm、厚さ0.35mmのシート状に押し出した。得られたシートを試料として、表面粗さRa及びブツを評価した。
上記試料の表面について、JIS B0601に準拠し、東洋精密社製表面粗さ計(サーフコム570A)を用いて、中心線平均粗さRaを測定した。
上記試料のシート肌を目視にて観察し、試料のシート長さ1.5mの範囲のブツの数の多少とブツの大きさに基づいて、以下に示す3段階で評価した。
○:優れる
△:良
×:不良
上述の方法により得られた各実施例及び各比較例の熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を下記表2に示す。
(a)密度が0.850g/cm 3 以上、0.900g/cm 3 以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という。)法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上であるオレフィン系共重合体群であって、該オレフィン系共重合体群は、以下の2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成される。
エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα−オレフィンとからなり、GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。
(c)質量平均分子量が80000以上、500000以下のスチレン系熱可塑性エラストマー。
また、下記の成分(d)を更に含有することが好ましい(請求項3)。
(d)炭化水素系ゴム用軟化剤。
Claims (8)
- 下記の成分(a)及び(b)を含有し、
成分(a)及び(b)の合計質量に対する、成分(a)の質量比率が10%以上、90%以下であり、成分(b)の質量比率が90%以下、10%以上であり、
架橋されている
ことを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物。
(a)エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα−オレフィンとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という。)法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成され、
密度が0.850g/cm3以上、0.900g/cm3以下であり、
GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上である、オレフィン系共重合体群。
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。 - 下記の成分(c)及び(d)を更に含有する
ことを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
(c)スチレン系熱可塑性エラストマー。
(d)炭化水素系ゴム用軟化剤。 - 架橋剤の存在下に動的熱処理することにより架橋されたものである
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記成分(a)が、メタロセン系触媒を用いて製造されたものである
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記成分(b)が、プロピレン系重合体である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記成分(a)中のエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンの炭素数が、4以上である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 下記の成分(a)及び(b)を、成分(a)及び(b)の合計質量に対する、成分(a)の質量比率が10%以上、90%以下であり、成分(b)の質量比率が90%以下、10%以上となるように混合し、架橋させる
ことを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
(a)エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα−オレフィンとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という。)法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α−オレフィン共重合体から構成され、
密度が0.850g/cm3以上、0.900g/cm3以下であり、
GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上である、オレフィン系共重合体群。
(b)密度が0.900g/cm3より大きいオレフィン系重合体。 - 前記架橋を、架橋剤の存在下に動的熱処理することにより行なう
ことを特徴とする、請求項7記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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