JP3978072B2 - 熱可塑性エラストマー製シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー製シートに関し、詳しくは、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物から成るシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩化ビニル樹脂(PVC)は、自動車内装材、土木シート等で広く使用されている。しかしながら、専ら塩化ビニル樹脂を使用した押出シートは、耐熱性、耐寒性、耐熱老化性、耐光性、臭気、ソフト感、見た目の安物感に問題点がある。そこで、これらの欠点を解決した材料として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムとポリプロピレンとのブレンド物のゴム成分を部分的に或いは完全に動的架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が塩化ビニル樹脂の代替品として有望視されている。
【0003】
しかしながら、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物をシート状に押出成形する場合、押出機ダイス出口周辺部での液状物付着、いわゆる目やにが多く発生して押出し成形性に問題があり、しかも、得られたシートは、耐傷付き性が悪いため用途によっては問題がある。一方、耐傷付き性を高めるために樹脂成分を多く配合した場合は、硬度が高くなり、所望のソフト感が得られないという問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、押出成形性にも優れ、更に、耐傷付き性およびソフト感に優れた熱可塑性エラストマー製シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物により、上記の目的を達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、下記の成分(a)〜(c)を含有し、成分(a)及び(b)の合計量に対し、成分(a)の割合が20〜80重量%であり、成分(b)の割合が20〜80重量%であり、成分(a)及び(b)の合計100重量部に対し、成分(c)の割合が1〜300重量部である組成物から成ることを特徴とする熱可塑性エラストマー製シートに存する。
【0007】
(a)重量平均分子量が50,000〜500,000であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体。
【化2】
A(B−A)nおよび/または(A−B)n・・・・・(I)
(ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック、Bはエラストマー性重合体ブロックであり、nは1〜5の整数である。)
(b)炭化水素系ゴム用軟化剤
(c)オレフィン系樹脂
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する成分(a)は、重量平均分子量が50,000〜500,000であるブロック共重合体であって、前記の一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。
【0009】
上記のブロック共重合体において、ビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(A)はハードセグメント、エラストマー性重合体ブロック(B)はソフトセグメントを構成する。ブロック共重合体の代表例は、A−B又はA−B−Aで表される共重合構造を有し、Bの二重結合が部分的に或いは完全に水素添加されていてもよいブロック共重合体であって、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとして知られている。
【0010】
上記のビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(A)におけるビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0011】
上記のエラストマー性重合体ブロック(B)としては、エラストマー性が発現される限り、その種類は特に制限されないが、共役ジエンが好ましい。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、特に、ブタジエン、イソプレン又はブタジエン/イソプレンの2/8〜6/4重量割合の混合物が好ましい。
【0012】
ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素の重合体ブロックの含有量は、通常10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。ビニル芳香族炭化水素の重合体ブロックの含有量が前記範囲未満では、得られる組成物の機械的強度や耐熱性が劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、得られる組成物の柔軟性、ゴム弾性が劣ると共に、後述する(b)成分の炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードが生じ易い傾向となる。
【0013】
共役ジエンとしてブタジエンのみが使用されている場合、熱可塑性エラストマーとしてのゴム弾性を保持する面から、エラストマー性重合体ブロック(B)における共役ジエンの1,2−結合の割合は、通常20〜50%、好ましくは25〜45%である。
【0014】
また、成分(a)は、水素添加して得られる水添ブロック重合体であることが好ましい。この場合、エラストマー性重合体ブロック(B)の二重結合の水素添加率は、通常30%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは90%以上である。水素添加率が前記範囲未満では、得られる組成物の耐候性や耐熱性が劣る傾向となる。
【0015】
また、ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量として、50,000〜500,000であるが、好ましくは 100,000〜450,000、更に好ましくは150,000〜400,000である。重量平均分子量が50,000未満の場合は、得られる組成物のゴム弾性や機械的強度が劣り成形加工性も劣る。一方、重量平均分子量が500,000超過の場合は、得られる組成物の成形加工性が劣ることとなる。
【0016】
上記のブロック共重合体の製造方法は、上記の構造・物性が得られる限り、如何なる方法であってもよい。例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法、すなわち、リチウム触媒の存在下に不活性溶媒中でブロック重合を行う方法を採用することが出来る。また、ブロック共重合体の水素添加処理は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下で行うことが出来る。
【0017】
また、上記の様なブロック共重合体は、スチレン又はその誘導体とエラストマー性ブロックを重合し、これをカップリング剤によりカップリングして得ることも出来る。また、ジリチウム化合物を開始剤としてエラストマー性ブロックを重合し、次いで、スチレン又はその誘導体を逐次重合して得ることも出来る。
【0018】
上記の様なブロック共重合体の市販品としては、「KRATON−G」(シェル・ケミカル社)、「セプトン」(株式会社クラレ)、「タフテック」(旭化成株式会社)等の商品が例示できる。
【0019】
本発明で使用する成分(b)は炭化水素系ゴム用軟化剤である。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、重量平均分子量が通常300〜2,000、好ましくは500〜1,500の炭化水素が使用され、鉱物油系炭化水素または合成樹脂系炭化水素が好適である。
【0020】
一般に、鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35重量%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45重量%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50重量%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。本発明においては、パラフィン系オイルが好適に使用される。
【0021】
パラフィン系オイルの40℃での動粘度は通常20〜800cst(センチストークス)、好ましくは50〜600cSt、流動点は通常0〜−40℃、好ましくは0〜−30℃、引火点(COC)は通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃である。炭化水素系ゴム用軟化剤は、得られる組成物の流動性を向上して成形加工性に寄与すると共に得られるシートの柔軟性向上にも寄与する。
【0022】
本発明で使用する成分(c)はオレフィン系樹脂である。オレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのエチレン系樹脂が挙げられるが、プロピレン系樹脂が好適に使用される。プロピレン系樹脂の具体例としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂などが挙げられる。重合様式は、樹脂状物が得られる限り、如何なる重合様式を採用しても差し支えない。
【0023】
上記のプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS−K7210、230℃、21.2N荷重)は、通常0.05〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが0.05g/10分未満の場合は、得られる組成物成形性が悪化し、得られるシートの外観に不良が生じ易く、200g/10分超過の場合は、得られる組成物の機械的特性、特に引張破断強度が低下する傾向となる。
【0024】
本発明において、上記の各成分の組成割合は次の通りである。すなわち、成分(a)及び(b)の合計量に対し、成分(a)の割合は、20〜80重量%、好ましくは25〜75重量%であり、成分(b)の割合は、20〜80重量%、好ましくは30〜75重量%である。成分(a)の割合が20重量%未満(成分(b)の割合が80重量%超過)の場合は、得られる組成物のゴム弾性が劣ると共に軟化剤の耐ブリード性が低下し、成分(a)の割合が80重量%超過(成分(b)の割合が20重量%未満)の場合は、得られる組成物の柔軟性および成形加工性が劣る。一方、成分(c)の割合は、成分(a)及び(b)の合計100重量部に対し、1〜300重量部、好ましくは10〜100重量部である。成分(c)の割合が1重量部未満の場合は得られる組成物の成形加工性が劣り、300重量部超過の場合は得られる組成物の柔軟性およびゴム弾性が劣る。
【0025】
本発明における組成物は、有機過酸化物の存在下に動的に熱処理されていてもよく、この動的熱処理により、シートにした際の耐熱性と耐油性を向上させることが可能となる。
【0026】
ここに、動的熱処理とは溶融状態または半溶融状態で混練することを指す。通常、動的熱処理は、前記の各成分を均一に混合した後、必要に応じて有機過酸化物と架橋助剤の存在下に溶融混練することによって行われる。そして、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸または二軸の押出機などが使用される。
【0027】
有機過酸化物の使用割合は、通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜1重量部であり、架橋助剤の使用割合は、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量であり、また、混錬温度は、通常100〜300℃、好ましくは110〜280℃であり、混錬時間は、通常10秒〜30分、好ましくは20秒〜20分間である。動的熱処理時の材料の状態は、使用する材料の種類や動的熱処理温度によって異なり、通常は半溶融状態または溶融状態となるが、特に制限されない。混練に際しては、各成分を一括混練する方法の他、任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を採用してもよい。
【0028】
上記の有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類などが挙げられる。これらの中では、1分間の半減期温度が140℃以上の有機過酸化物が好ましい。斯かる有機過酸化物としては、例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0029】
前記の架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン、m−フェニレンビスマレイミド等の過酸化物架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)クリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0030】
また、本発明における組成物には酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール等のビスフェノール系、1,1,3−トリス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のトリ以上のポリフェノール系、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のチオビスフェノール系、アルドール−α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系、p−イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系のもの等が挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の使用割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0031】
また、本発明における組成物には、本発明の目的を損わない範囲内において、必要に応じ、他の成分を配合することが出来る。斯かる配合成分としては、各種の樹脂やゴム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、マイカ、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の充填剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、導電性付与剤、着色剤などが挙げられる。これらは、前記の成分(a)、(b)又は(c)の何れかに予め配合しておくか、または、各成分の混合時、溶融混練時、動的熱処理時に任意の段階で配合される。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマー製シートは前記の組成物から成る。シートの成形法としては、押出成形法、カレンダー加工法などが採用される。本発明において、材料を押出機で加熱溶融した後にダイから押出す押出成形法が好適に使用される。ダイとしては通常Tダイが使用される。押出機のシリンダー温度およびスクリュウ回転数、ダイ温度などは、使用する組成物の物性を考慮して適宜選択される。また、本発明のシートの厚さは、特に制限されず、フイルムの領域の厚さも含め、50μmから10mmの広範囲から選択することが出来る。本発明のシートの好ましい厚さは0.1〜1mmである。
【0033】
本発明のシートは、積層成形、熱成形、真空成形などの二次加工によって、単体として又は他材料との積層体として成形体とされる。そして、自動車部品、家電部品、医療用機器部品、包装用資材、土木建築用資材、電線、雑貨などの広汎な分野での資材として好適に使用することが出来る。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した材料および評価方法は以下に示す通りである。なお、以下において「%」は重量%を意味する。
【0035】
<材料>
成分(a1):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量33%、水素添加率98%以上、重量平均分子量245,000)。
【0036】
成分(a2):スチレンブロック−ブタジエン/イソプレンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエン/イソプレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30%、水素添加率98%以上、重量平均分子量243,000)。
【0037】
成分(a3):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエンブロック共重合体の部分水素添加物(スチレン含有量31%、水素添加率56%、重量平均分子量100,000)。
【0038】
成分(a4)(比較例用):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量29%、水素添加率98%以上、重量平均分子量47,000)。
【0039】
成分(b):パラフィン系オイル(重量平均分子量746、40℃における動粘度382cSt、流動点−15℃、引火点300℃、出光興産社製「PW380」)。
【0040】
(c)成分:プロピレン重合体樹脂(メルトフローレート0.9g/10分)
【0041】
架橋剤:1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(POX)
【0042】
架橋助剤:ジビニルベンゼン(DVB)
【0043】
<評価方法>
以下の(1)〜(5)の測定には、渡辺加工機製の45mmφ押出機(シングルフライトタイプスクリュウ)のTダイから、シリンダー温度190℃、ダイ温度210℃、スクリュウ回転数70rpmの条件で押出成形した、幅250mm、厚さ0.35mmのシートを使用した。
【0044】
(1)成形加工性:上記の成形条件で成形上に問題が無く、更に得られた押出シートの著しい外観不良が無い場合、成形加工性を良好とした。
【0045】
(2)目やに:上記の成形時においてダイス出口周辺部での液状物付着状況を目視観察し次の表1に示す5段階で評価した。
【0046】
【表1】
5…非常に少ない
4…少ない
3…普通
2…多い
1…非常に多い
【0047】
(3)ソフト感:試料シートの表面を手で触れてその感触を次の表2に示す5段階で評価した。
【0048】
【表2】
5…非常に柔らかい
4…柔らかい
3…普通
2…硬い
1…非常に硬い
【0049】
(4)耐傷付き性:試料シートの上に半径10mmのフェルト布を置き、その上に159g/cm3の圧力の掛かるおもりを乗せて100往復させ、その前後の光沢度(JIS−K7105に準拠)を測定し、その変化度をもって耐傷付き性の評価とした。変化度の低いものを良好とした。
【0050】
(5)シートの強度:
JIS3号ダンベル型試験片で試料シートを横方向に打ち抜き、常温常圧下で引張速度500mm/分で引張り破断する強度を測定した。
【0051】
実施例1〜5及び比較例1〜2
表3及び表4に示す配合量(重量部)にて配合したエラストマー組成物の(a)〜(c)成分の合計量100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3‘,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「イルガノックス1010」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1重量部を添加し、更に、表3及び表4に示す量のPOXとDVBを添加し、L/Dが41、シリンダー径44mmの二軸押出機を使用し、110〜180℃の温度に設定して溶融混練させ、これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。そして、得られたペレットを上記の方法にてシート状に押し出し成形し、評価を行なった。評価結果を表3及び表4に示す。
【0052】
比較例3
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムとポリプロピレンとのブレンド物の動的架橋品であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(三菱化学社製「サーモラン3602N」)を使用して上記と同様の成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
<結果の評価>
(1)重量平均分子量が本発明の範囲外である成分(a4)を使用した比較例1では、実施例1及び2に比較し、成形加工性が悪く、耐傷付性およびシート強度も劣る。
(2)重量平均分子量が本発明の範囲外である成分(a4)を使用した比較例2では、実施例3〜5に比較し、成形加工性が悪く、耐傷付性およびシート強度も劣る。
(3)オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用した比較例3では、実施例 1〜5に比較し、目やにの発生が認められ、耐傷付性およびシート強度も劣る。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、押出成形性にも優れ、更に、耐傷付き性およびソフト感に優れた熱可塑性エラストマー製シートが提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
Claims (10)
- 下記の成分(a)〜(c)を含有し、成分(a)及び(b)の合計量に対し、成分(a)の割合が20〜80重量%であり、成分(b)の割合が20〜80重量%であり、成分(a)及び(b)の合計100重量部に対し、成分(c)の割合が1〜300重量部であり、且つ、少なくとも部分的に架橋されている組成物(但し、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBを1個以上含有するブロック共重合体であって、該共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の35%以上が水素添加され、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有量が5〜75質量%であり、かつ重量平均分子量が40万以上であるブロック共重合体100質量部、非芳香族系ゴム用軟化剤50〜300質量部およびオレフィン系樹脂10〜100質量部を含有する熱可塑性重合体組成物を除く)から成ることを特徴とする熱可塑性エラストマー製シート。
(a)重量平均分子量が50,000〜500,000であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体。
(b)炭化水素系ゴム用軟化剤
(c)オレフィン系樹脂 - 一般式(I)に記載のBが共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックである請求項1に記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- 成分(c)がプロピレン系重合体である請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- 一般式(I)に記載のAがスチレン重合体ブロック、Bがブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック又はブタジエン・イソプレン重合体ブロックであり、成分(a)中のAの含有量が10〜50重量%である請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- 架橋が1分間の半減期温度が140℃以下である有機過酸化物を使用して行われる請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- 架橋が、有機過酸化物0.1〜3重量部、架橋助剤0.1〜5重量部を使用して行われる請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- シートの成形法が押出成形である請求項1〜6の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製シート。
- 下記の成分(a)〜(c)を含有し、成分(a)及び(b)の合計量に対し、成分(a)の割合が20〜80重量%であり、成分(b)の割合が20〜80重量%であり、成分(a)及び(b)の合計100重量部に対し、成分(c)の割合が1〜300重量部である混合物を、1分間の半減期温度が140℃以下である有機過酸化物の存在下で動的熱処理することにより架橋されている組成物(但し、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBを1個以上含有するブロック共重合体であって、該共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の35%以上が水素添加され、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有量が5〜75質量%であり、かつ重量平均分子量が40万以上であるブロック共重合体100質量部、非芳香族系ゴム用軟化剤50〜300質量部およびオレフィン系樹脂10〜100質量部を含有する熱可塑性重合体組成物を除く)を得、次いで、押出成形によりシートに成形することを特徴とする熱可塑性エラストマー製シートの製造方法。
(a)重量平均分子量が50,000〜500,000であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体。
(b)炭化水素系ゴム用軟化剤
(c)オレフィン系樹脂 - 動的熱処理が、有機過酸化物0.1〜3重量部、架橋助剤0.1〜5重量部の存在下で行われる請求項8に記載の熱可塑性エラストマー製シートの製造方法。
- 動的熱処理が、混練温度100〜300℃、混練時間10秒〜30分の条件で行われる請求項8又は9に記載の熱可塑性エラストマー製シートの製造方法。
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