JP2012102231A - ポリオキサゾリンからなる樹脂の相溶化剤 - Google Patents

ポリオキサゾリンからなる樹脂の相溶化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】少量添加で脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂との相溶性を 向上させ、これらからなる熱可塑性樹脂組成物に良好な成形性、十分な機械的特性、耐衝撃性、耐熱性と耐加水分解性を付与できる相溶化剤を提供する。
【解決手段】アルケニルオキサゾリンの単独重合体もしくはアルケニルオキサゾリンと(メタ)アクリルアミド系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系とのラジカル共重合体であるオキサゾリン系脂肪族ポリマー、または、該オキサゾリン系脂肪族ポリマーを用いて得られたオキサゾリン変性ポリオレフィンを相溶化剤とする。脂肪族ポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂と前記相溶化剤をドライブレンドしてから溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂の混合性に優れた相溶化剤に関するものである。更に詳しくは、本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂を良好に相溶化させる作用を有するオキサゾリン系脂肪族ポリマー、オキサゾリン変性ポリオレフィン、該オキサゾリン系脂肪族ポリマー及び/又はオキサゾリン変性ポリオレフィンを配合した熱可塑性樹脂組成物、該樹脂組成物の成型品に関するものである。
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルは生分解性を有する熱可塑性樹脂であり、植物由来の原料から製造できることから、地球温暖化など環境問題の緩和の点でプラスチック業界に注目され、フィルム、シート、繊維、電子機器、自動車部分など様々な分野での利用が期待されている。しかしながら、これらの生分解性樹脂は吸湿性が高く、耐加水分解性が低いという大きな欠点がある。特にポリ乳酸などの加水分解は連鎖反応であり、分子鎖末端のカルボキシル基が引き金となって起こり、ポリ乳酸の溶融状態、または高温・多湿環境下で著しく進行し、それに起因して分子量、溶融粘度および強度などの物性が低下する。そのため、溶融成形段階、特に製品貯蔵段階においてポリ乳酸はプラスチックとしての安定性が十分に得られず、汎用用途への拡大が難しいといった問題がある。また、ポリ乳酸の射出成形などによる成型品は、剛性は高いが、耐熱性、耐衝撃性および透明性に乏しく、家電製品の筐体、自動車部品などの実用化に耐える物性は有していなかった。
かかる問題を解決する目的で、汎用合成樹脂の性質改善に広く使用されているポリマーブレンドの方法が生分解性ポリエステルの改良に検討されてきた。ポリマーブレンドとは、複数のポリマーを混合することにより各ポリマーの優れた性質を取り込んで、新しい特性を持たせる方法である。生分解性樹脂の欠点を補うために、軽量でしかも耐衝撃性に優れ、また耐薬品性や、成形性、耐水性などの環境特性が良好であるポリオレフィン樹脂とブレンドすることを提案されている。ところが、ポリ乳酸などの生分解性樹脂とポリオレフィン樹脂の極性や結晶構造が異なるため、両樹脂お互いの混合性(相溶性)が悪く、ブレンドさせても相分離してしまうので耐衝撃性などの性能改善が十分に満足できないという問題があった。
そこで、脂肪族ポリエステルとポリオレフィンの相溶性を向上させるため、多数の試みがなされている。例えば、ポリ乳酸とエポキシ基含有オレフィン系共重合体をブレンドする方法(特許文献1)が提案されている。また、生分解性樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶化剤としてエポキシ基含有エチレン系共重合体を配合する方法(特許文献2)、互いに反応する官能基をそれぞれ担持する水素添加ジエン系重合体とオレフィン系重合体の二成分を同時添加する方法(特許文献3、4)、酸無水物などのエステル形成官能基を有するポリオレフィン樹脂を使用する方法(特許文献5)が提案されている。これらの従来技術では、従来の変性ポリオレフィンを用いることでポリ乳酸などのポリエステル樹脂との相溶性を向上させているが、変性用官能基の導入率が極めて低いため、やはり耐衝撃性、耐熱性の改善についても、成形加工性、長期保存安定性の面においても、十分に満足できるものではなく、変性率の向上(官能基の高濃度化)による更なる改善の余地があった。
しかし、ポリオレフィンの末端或いは側鎖に無水マレイン酸基や水酸基、エポキシ基などの極性基、反応性官能基を高濃度且つ均一的に導入することは工業的に容易ではない。変性ポリオレフィンの製造として、ポリオレフィンに特定官能基を有する不飽和化合物をグラフト重合させる方法は最も一般的であるが、通常、電子線や紫外線などの放射線やオゾンなどでポリオレフィンを処理し、ラジカルを発生させることにより不飽和化合物を反応させるか、あるいは有機過酸化物などのラジカル発生剤の存在下で不飽和化合物を反応させている。例えば、特許文献6では、ポリオレフィン樹脂とN−ビニルアルキルアミドを有機過酸化物の存在下で溶融混練し、アミド変性ポリオレフィン樹脂を合成する方法が提案されている。特許文献7では、ポリオレフィン樹脂と2−(4−N−アクリロイルアミノフェニル)−2−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニルモノマーを有機過酸化物の存在下で溶融混練し、オキサゾリン変性ポリオレフィン樹脂を合成する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法において、ラジカル生成工程ではポリオレフィン主鎖の切断が起こるため、変性ポリオレフィンの分子量が低下し、それを配合した成型品の強度も低下するという問題が生じた。
また、これらのラジカルグラフト反応に用いられる不飽和化合物モノマーがラジカル重合性の高いものである場合、モノマー自身の単独重合によるホモポリマーの副生が多い。一方、ラジカル重合性の低いものである場合、未反応の残存モノマーによる臭気や着色などの問題も生じる恐れがある。
特許文献8では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いて、二官能の有機カルボン酸と反応させ、末端のエポキシ基をカルボキシル基に変換させてから、ビスオキサゾリンとさらに反応させ、末端オキサゾリン基を有する樹脂が合成されている。また、特許文献9では、無水マレイン酸で変性されたポリエチレンやポリプロピレンをビスオキサゾリンと反応させることでオキサゾリン変性ポリオレフィンが合成されている。しかし、これらの方法で得られる生成物中には未反応のカルボン酸や酸無水物で変性された原料または中間物が多く残存し、製造工程が煩雑であり、多くの時間とエネルギーを消耗し、生産性が低いという問題点があった。
即ち、従来のポリオレフィン樹脂に極性基や反応性官能基を導入する方法では、得られる変性ポリオレフィンの変性率、すなわち、極性基や反応性官能基などの導入率が数重量%に留まっており、さらにこれらの変性ポリオレフィンを相溶化剤として用いる場合、例えば、変性ポリオレフィンを数重量%添加すると、極性基や反応性官能基の配合量が目的の熱可塑性樹脂組成物中で1重量%に満たず(最終目的の熱可塑性樹脂組成物又は成型品中の官能基含有量は、特許文献6のアミド基モノマーに換算すると0.20重量%、特許文献7のオキサゾリン基モノマーに換算する場合は0.40重量%)、満足な特性付与ができるとは言えない。
また、反応性基を有するモノマーと共重合可能なビニル系モノマーから得られる共重合体を高分子相溶化剤としてポリエステル樹脂と他種樹脂のブレンドに用いる方法が報告されている(特許文献10)。この方法では反応性基が0.1〜20重量%導入できるため、従来の変性ポリオレフィンに比べ、反応性基(官能基)の高濃度化は可能になる反面に、共重合体の主成分であるスチレン系樹脂がポリエステルともポリオレフィンとも相溶性が悪く、反応性基が局部的に高濃度化されやすく、特に高濃度添加する場合は、溶融粘度の著しく増加によるフレンド樹脂の成形性、加工性が低下していく問題がある。
ポリエステルのうちポリ乳酸など生分解性樹脂の耐加水分解性向上の観点から、相溶化剤に用いられる反応性基としてはオキサゾリン基が最も好ましい。これは、(1)カルボキシル基を使用する場合、ポリ乳酸の加水分解が促進される、(2)酸無水物を使用する場合、ポリ乳酸の末端水酸基と反応し、カルボキシル基を生成するので、同様にポリ乳酸の加水分解が促進される、(3)エポキシ基を使用する場合、ポリ乳酸の末端カルボキシル基及び末端水酸基とは共に反応するので、耐加水分解性の向上効果が低いと同時に、部分ゲル化による成形性が低下する、(4)イソシアネート基を使用する場合、主にポリ乳酸の末端水酸基と反応し、カルボキシル基へのキャッピングによる耐加水分解性の向上特性が提供できない、(5)アミド基、水酸基等は200℃前後のポリ乳酸の成形温度ではカルボキシル基との反応性が低く、一方、280℃以上の高温では反応性向上されるがポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂の熱分解が激しくなる、(6)オキサゾリン基の特徴としては、カルボキシル基との反応性が高く、ポリ乳酸の成形温度でも十分に反応でき、またアルコール性水酸基とは反応せず、集中的にポリ乳酸の末端カルボキシル基をキャッピングすることによって、ポリ乳酸の耐加水分解性を向上させる、等の理由が挙げられる。
しかしながら、高濃度のオキサゾリン基を有し、脂肪族ポリエステル樹脂にもポリオレフィン樹脂にも優れる相溶性を示し、良好な成形性、十分な耐衝撃性と耐加水分解性を付与できる、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドに用いられる高性能の相溶化剤は従来の技術では得られていない。
特開平9−316310号公報 特開2007−277460号公報 WO2008/023758 特開2009−227982号公報 特開2007−326961号公報 特許第3368651号公報 特開平6−287222号公報 特開平3−269034号公報 特開平2008−19298号公報 特開平10−7922号公報
本発明は、上記の問題を解決した、各種脂肪族ポリエステル樹脂にも汎用ポリオレフィン樹脂にも優れる相溶性を有し、少量添加で、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドに際して、両樹脂の相溶性を向上させる効果に特に優れた相溶化剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、このような相溶化剤を配合した、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドから形成される、耐衝撃性、強度等機械的特性、耐熱性、耐加水分解などが優れた、成形性の良い熱可塑性樹脂組成物及び該樹脂組成物から得られる成型品を提供することを課題とする。
本発明者らはこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のオキサゾリン系脂肪族ポリマー、及び/又は該ポリマーで修飾した変性ポリオレフィンが脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂に対して優れた相溶性向上効果を有することを見出した。具体的には、一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R〜Rは同一または異なって水素原子または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を、Rは水素原子またはメチル基を、RとR10は同一または異なって水素原子または炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を表し、構成単位aの配合量は5〜100モル%、構成単位bと構成単位cの配合量は合わせて95〜0モル%である。)で示されるオキサゾリン系脂肪族ポリマーが脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂に対して優れた相溶性向上効果を有することを見出した。また、末端又は側鎖がカルボキシル基などのオキサゾリンと反応できる官能基で変性されたポリオレフィンと、前記ポリマーとを反応させることによって、高濃度のオキサゾリン基を導入した変性ポリオレフィンが得られること、該変性ポリオレフィンも脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂に対して優れた相溶性向上効果を有することを見出した。さらに、当該オキサゾリン系脂肪族ポリマー及び/又は当該オキサゾリン変性ポリオレフィンを脂肪族ポリエステル樹脂、汎用ポリオレフィン樹脂とドライブレンドしてから押出機などで溶融混練することにより、耐衝撃性、強度等機械的特性、耐熱性、耐加水分解などが優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
Figure 2012102231
すなわち本発明は、
(1)一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R〜Rは同一または異なって水素原子または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を、Rは水素原子またはメチル基を、R、R10は同一または異なって水素原子または炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を表し、構成単位aの配合量は5〜100モル%、構成単位bと構成単位cの配合量は合わせて95〜0モル%である。)で示されるオキサゾリン系脂肪族ポリマーからなる、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶化剤、
Figure 2012102231


(2)前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーの重量平均分子量が1,000〜500,000であることを特徴とする前記(1)記載の相溶化剤、
(3)前記(1)または(2)に記載のオキサゾリン系脂肪族ポリマーと、末端または側鎖にカルボキシル基、酸無水物基、チオール基またはフェノール性水酸基を有するポリオレフィンとを反応させることによって得られた、オキサゾリン基を含有する変性ポリオレフィンからなる、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶化剤、
(4)前記(1)または(2)に記載の相溶化剤、脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂を、該相溶化剤の含有量が0.1〜50重量%となるように混合し、溶融混練して得られる熱可塑性樹脂組成物、
(5)前記(3)記載の相溶化剤、脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂を、該相溶化剤の含有量が1〜90重量%となるように混合し、溶融混練して得られる熱可塑性樹脂組成物、
(6)前記(5)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成型品
を提供するものである。
本発明の相溶化剤であるオキサゾリン系脂肪族ポリマー及びオキサゾリン変性ポリオレフィンは、両親媒性に優れたオキサゾリン基を有し、脂肪族ポリエステル樹脂に対しても、汎用ポリオレフィン樹脂に対しても優れた相溶性を示すため、少量添加するだけで、両樹脂の相溶性を向上させ、均一且つ安定的に混合された脂肪族ポリエステル・ポリオレフィンの熱可塑性樹脂組成物を形成することができる。そのため、ポリオレフィン樹脂に対して特別な変性処理をせず、特殊な混合装置や精製技術などを必要とせず、脂肪族ポリエステル、ポリオレフィン樹脂と本発明の相溶化剤を溶融混練するだけで、引張強度、曲げ強度等の良好な機械的特性と耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性を併せ持つ熱可塑性樹脂組成物を高収率で取得することができる。
また、本発明の相溶化剤の添加により、樹脂組成物の加工中熱履歴による分子量の低下、それによる加工中の溶融粘度低下などが抑えられ、成形性、加工性を顕著に改善することができる。
本発明のオキサゾリン系脂肪族ポリマーは汎用のラジカル重合法で簡易かつ高収率で製造でき、また、オキサゾリン変性ポリオレフィンも汎用の溶融混練法で簡易に製造することができる。
また、オキサゾリン基がカルボキシル基と豊富な反応性を有するため、熱可塑性樹脂組成物中の脂肪族ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基をキャッピングすることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐加水分解性も向上できる。該熱可塑性樹脂組成物の成型品においては、長期間の使用あるいは貯蔵後も、ポリマーである本発明の相溶化剤であるオキサゾリン系脂肪族ポリマー及びオキサゾリン変性ポリオレフィンはブリードせず、良好かつ安定的な混合、相溶効果に優れている。
さらに、本発明で得られる複合熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が特に優れる理由として、オキサゾリン系脂肪族ポリマーのオキサゾリン基、アミド基、エステル基の存在による水素結合を形成しやすいことにあると、本発明者らは推察している。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の相溶化剤は、前記一般式(1)に記載のオキサゾリン系脂肪族ポリマー及び、該ポリマーで変性したオキサゾリン基を含有するポリオレフィン樹脂、即ち、オキサゾリン変性ポリオレフィンである。
前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーは、アルケニルオキサゾリンの単独重合体、あるいはアルケニルオキサゾリンと(メタ)アクリルアミド系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの共重合体である。
アルケニルオキサゾリンは一般式(2)で示されるオキサゾリン基を有するビニルモノマーであり、式中のRは水素原子又はメチル基を、R〜Rは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖、分岐鎖のアルキル基を表す。具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4−エチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−エチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジエチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,5−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,5−ジエチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−エチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−エチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジエチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,5−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,5−ジエチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなど等が挙げられる。これらアルケニルオキサゾリンの中では、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、チオール基などの反応性基と高反応性を有する2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリンが好ましく、さらに2−ビニル−2−オキサゾリンが最も好ましい。これらアルケニルオキサゾリンは1種あるいは2種以上を用いることができる。
Figure 2012102231
(メタ)アクリルアミド系モノマーは一般式(3)で示されるアクリルアミド、N−置換アクリルアミド、N,N−二置換アクリルアミド、メタクリルアミド、N−置換メタクリルアミド、N,N−二置換メタクリルアミドであり、式中のRは水素原子又はメチル基を、RとR10は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基、アルケニル基を表す。具体的には、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−ペンチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−へプチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−ノニル(メタ)アクリルアミド、N−デシル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド、N−オレイル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリルアミド、N−エイコシル(メタ)アクリルアミド、N−ドコシル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−イソボルニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなど等が挙げられる。これらの(メタ)アクリルアミド系モノマーは、1種あるいは2種以上を用いることができる。特に、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが工業品を入手しやすいため、好ましい。
Figure 2012102231
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは一般式(4)で示されるアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルであり、式中のRは水素原子又はメチル基を、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基、アルケニル基を表す。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル鎖長C8〜C20の長鎖脂肪族(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。これらの中では、1種あるいは2種以上を用いることができる。また、安価な工業品を容易に入手できるメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレートなどが好ましい。
Figure 2012102231
本発明に用いられるアルケニルオキサゾリンは、本発明者等が先に出願した特許文献11記載の方法で製造できる。
特許文献11:特開2001−058986号公報、
特開2002−275166号公報、
特開2004−250391号公報、
特開2004−238342号公報、
特開2004−238343号公報、
特開2004−238344号公報
アルケニルオキサゾリンの単独重合、(メタ)アクリルアミド系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの共重合方法としては、特に限定されるものではなく、公知のラジカル重合法により実施可能である。例えば、本発明者等が先に出願した特許文献12記載の方法を参考できる。例えばアルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒中の溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合法などが挙げられる。有機溶媒中の溶液重合法を採用する場合、重合溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコールなどの単独もしくは混合で用いることができる。
特許文献12:特開2007−246615号公報、
特開2009−120802号公報
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系、有機過酸化物系、無機過酸化物系、レドックス系など一般的に知られている重合開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量としては、通常重合性単量体成分総量に対して0.001〜10重量%程度である。また、連鎖移動剤による分子量の調整など通常のラジカル重合技術が適用される。
前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーはアルケニルオキサゾリンのホモポリマーあるいはアルケニルオキサゾリンと(メタ)アクリルアミド系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの共重合体であり、構成単位であるアルケニルオキサゾリンが5〜100モル%、好ましいアルケニルオキサゾリン配合量は10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。5モル%未満であると、十分な相溶性向上効果と耐加水分解性向上効果を付与することが困難である。また、後述する(メタ)アクリルアミド系モノマーの配合比は1モル%以上とすることが望ましく、その場合、アルケニルオキサゾリンの配合比は99モル%以下となる。
(メタ)アクリルアミド系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとのモル比は特に限定する必要は無いが、合わせて95〜0モル%である。 耐熱性の面から、 (メタ)アクリルアミド系モノマーを1モル%以上とすることが望ましい。アミド基がより水素結合を形成しやすいため、耐熱性を向上させたい場合、(メタ)アクリルアミド系モノマーの配合比を増やせばよい。
前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーの重量平均分子量は1,000〜500,000である。また、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは5,000〜100,000である。重量平均分子量が1,000未満であると、ポリオレフィン樹脂組成物中の配合量が多い場合、例えば10重量%以上では、樹脂組成物の引張強度、曲げ強度などの機械的特性が十分に満足できない可能性がある。一方、重量平均分子量が500,000を越えると、ポリオレフィンの構造と分子量によって異なるが、十分な相溶性向上効果が得られない場合がある。
本発明のもう一方の相溶化剤であるオキサゾリン変性ポリオレフィンは、前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーと末端または側鎖にオキサゾリン基と反応できる反応性基を有する変性ポリオレフィンと反応させることにより得たものである。末端または側鎖にオキサゾリン基と反応できる反応性基を有する変性ポリオレフィンとして、末端または側鎖にカルボキシル基、酸無水物基、チオール基またはフェノール性水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらの変性ポリオレフィンの製造方法、即ち、反応性基のポリオレフィン中への導入方法について、特に制限はせず、従来公知の方法が使用できる。例えば、これらの反応性基を有するビニルモノマーをエチレンやプロピレンなどの付加重合性単量体と共重合させる方法、オレフィン重合体とこれらの官能基を有するビニルモノマーをラジカル開始剤存在下でグラフト反応させる方法が挙げられる。また、グラフト反応において、有機溶媒中で行う溶液法や押出機などの溶融混練装置を用いた混練法が挙げられることができる。これらの変性ポリオレフィンは単独でも、2種以上併用してもよい。また、官能基の導入方法について、上記各種手法の組み合わせや、同一または異なる手法を複数回実施してもよい。
前記のカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、例えは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸などが挙げられる。
前記の酸無水物基を有するビニルモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、アコニット酸などが挙げられる。
前記のチオール基を有するビニルモノマーとしては、例えば、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アリルメルカプタンなどが挙げられる。
前記のフェノール性水酸基を有するビニルモノマーとしては、例えば、o−、m−及びp−ヒドロキシスチレン、β−メチルo−、m−及びp−ヒドロキシスチレン、o−、m−及びp−アリルフェノール、α-メチル-4-ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。
オキサゾリン系脂肪族ポリマーと末端または側鎖にオキサゾリン基と反応できる反応性基を有する変性ポリオレフィンとの反応に当たって、配合比(仕込み重量比)がそれぞれの官能基濃度及び分子量によって任意に調整することができるが、オキサゾリン系ポリマー/変性ポリオレフィンが1/99〜99/1の範囲が好ましい。この範囲であれば、それぞれの構成成分と官能基の提供機能がはっきり発揮できるためである。
オキサゾリン系脂肪族ポリマーとカルボキシル基、酸無水物基、チオール基またはフェノール性水酸基を有する変性ポリオレフィンとの反応は、オキサゾリン系ポリマーとこれらの変性ポリオレフィンを溶解する共通溶媒に溶かして行う溶液法と、オキサゾリン系ポリマーとこれらの変性ポリオレフィンをドライフレンドし、押出機などの溶融混練装置を用いて行う溶融法がある。
上記溶液法の共通溶媒としてはクロロベンゼン、トリクレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、メシチレン等が使用できる。反応温度は、通常20℃〜300℃、好ましくは50℃〜250℃、更に好ましくは80℃〜200℃の範囲である。反応温度が20℃未満であれば、反応が起こり難い場合があり、一方300℃超すと変性ポリオレフィンの劣化が招かれる恐れがある。反応時間は、1分〜30時間、好ましくは5分〜20時間、更に好ましくは10分〜10時間の範囲である。反応時間が1分より短い場合、十分な反応率が得られない可能性があり、一方30時間より長い場合、効率が悪くなるので、コストが上昇してしまう。反応温度と反応時間の組み合わせにより十分な反応率を得ることができる。例えば、低温反応が場合、反応時間が伸ばしていくことなどが挙げられる。
溶融法における反応装置としては、プラストミル、バンバリーミキサー、押出機等が例示できる。その他の装置でもいわゆる高粘度攪拌機乃至高粘度混合機であればよく、具体的には、多軸混練機、横型二軸多円板装置や横型二軸表面更新機の様な横型二軸攪拌機並びにダブルヘリカルリボン攪拌機の様な縦型攪拌機等も用いることができる。
さらに、溶液法は原料であるオキサゾリン系ポリマー及び変性ポリオレフィンの溶解工程、反応工程、生成物の精製工程、溶媒の回収工程などから構成され、作業が煩雑であり、また用いる溶媒はハロゲン系が多く、環境付加が高い。これらの点から見ると、簡便な溶融法が好ましい。
上記の溶融法は、従来公知の溶融混練の方法であるが、反応後取得するオキサゾリン変性ポリオレフィンのペレット化の簡便性から、一軸又は二軸押出機等が好ましい。また、混練を行う部分の温度(例えば、押出機のシリンダー温度)は、通常50〜300℃であり、好ましくは100〜250℃である。押出機の混練を行う部分の温度は、混練を前半と後半の二段階に分け、前半より後半の温度を高めた設定にしても良い。混練温度は50℃未満であると、原料のオキサゾリン系ポリマー及び変性ポリオレフィンが均一に軟化・融解できない場合があり、そのため、十分に反応できないか押出機のスクリュウ軸が折れてしまうなどのトラブル発生可能性がある。一方、混練温度が300℃越えると、各種樹脂組成物の熱分解、酸化などが起こりやすくなり、溶融粘度の低下や樹脂生成物の着色などの問題が発生する。混練時間は、通常0.1〜30分であり、好ましくは0.5〜5分間である。この時間範囲では十分に且つ効率よく反応させることができる。
以上の製造方法で得られるオキサゾリン変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は2,000〜1,000,000である。また、好ましくは5,000〜500,000、さらに好ましくは10,000〜200,000である。重量平均分子量が2,000未満であると、オキサゾリン変性ポリオレフィンの配合量が多い場合、例えば10重量%以上では、目的のポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂の複合熱可塑性樹脂組成物の引張強度、曲げ強度などの機械的特性が十分に満足できない可能性がある。一方、重量平均分子量が1,000,000を越えると、オキサゾリン変性ポリオレフィン自身の溶融粘度が高くなり、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂に添加して混練する時、成形性が低下し、十分な相溶性向上効果が得られない場合がある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂はL−乳酸および/又はD−乳酸を主な構成成分とするポリマーであるが、他のエステル形成能を有する単量体成分と共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボキシル基、2,6−ナフタレンジカルボキシル基、ジフェニルジカルボキシル基、ジフェノキシエタンジカルボキシル基、ジフェニルエーテルジカルボキシル基、ジフェニルスルホンジカルボキシル基などの芳香族ジカルボキシル基、1,3−シクロペンタンジカルボキシル基、1,3−シクロヘキサンジカルボキシル基、1,4−シクロヘキサンジカルボキシル基などの脂環式ジカルボキシル基、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボキシル基、およびそれらのエステル形成性誘導体などから誘導されるジカルボキシル基、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブダンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの低分子量ポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの分子内に複数の水酸基を含有する化合物又はそれらの誘導体が挙げられる。なお、他の重合性単量体に由来する重合鎖がポリマー全量に占める割合は、モノマー換算で50モル%以下であることが好ましい。さらに、20モル%以下であることが特に好ましい。また、共重合体の配列様式は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れであってもよい。
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは5万以上、さらに10万以上であることが特に好ましい。
本発明に用いられる原料樹脂ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3以上のα−オレフィンの単独重合体、これらのうち2種以上のモノマーのランダム、ブロック、グラフト等の共重合体、エチレンもしくは炭素数3以上のα−オレフィンの主要部と他の不飽和モノマーとのランダム、ブロック、グラフト等の共重合体又はこれらの混合物である。
エチレンの重合体としては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)や低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)あるいは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を挙げることができる。プロピレンの重合体の例としては、ホモ、ブロック又はランダムのポリプロピレンを挙げることができる。
また、α−オレフィンの2種又は3種以上の共重合体の例としては、エチレン、プロピレン及びジエンの三元共重合体からなるゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)などを挙げることができる。
これらのポリオレフィン樹脂の分子量は、成形性の維持及び最終目的熱可塑性樹脂への耐衝撃性付与の観点から、重量平均では10,000〜1,000,000が好ましく、また20,000〜800,000が特に好ましい。
上記各種ポリオレフィンは単独でも、2種以上併用してもよい。また、これらの中、フィラーの分散性改善による機能性付与の観点から好ましいのはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/不飽和単量体共重合体である。
さらに、必要に応じて、上記のポリオレフィン樹脂と同時に、極性基及び/又は反応性基を導入した一般に公知化された変性ポリオレフィン樹脂を適宜に添加して併用することもできる。ここで、極性基及び/又は反応性基は、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、チオール基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、水酸基などの官能基である。
本発明の原料樹脂である脂肪族ポリエステルとポリオレフィンの配合比率は特に制限せず、用途により好ましい範囲が異なるが、通常はポリエステル/ポリオレフィンは1/99〜99/1(重量比)、好ましくは10/90〜80/20、さらに好ましくは80/20〜40/60である。
本発明のオキサゾリン系脂肪族ポリマー及びオキサゾリン変性ポリオレフィンはそのまま相溶化剤として脂肪族ポリエステル及びポリオレフィンの混合物に配合して使用することができる。また、他のポリマー、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂等に混合したものを相溶化剤として使用することもできる。
本発明の相溶化剤は、ペレット状又は粉末状に加工し、脂肪族ポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂からなる樹脂混合物のペレット製造時又は成形加工時に添加、混合することが好ましい。添加成分の均一配合を行うために、相溶化剤を高濃度で含有するポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂をペレット化したマスターバッチとポリオレフィン樹脂を混合して使用する方法、相溶化剤を高濃度で含有するポリオレフィン樹脂をペレット化したマスターバッチと脂肪族ポリエステル樹脂を混合して使用する方法、あるいは、ポリエステル樹脂系マスターバッチ、ポリオレフィン樹脂系マスターバッチとポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂を同時に混合して使用する方法が好ましい。
本発明の相溶化剤の添加量は、該ポリマー中のオキサゾリン基の濃度、該ポリマーの分子量等によって異なる。
本発明の相溶化剤の一つの形であるオキサゾリン系脂肪族ポリマーにおいては、通常、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂と該オキサゾリン系脂肪族ポリマーの合計量のうち、該オキサゾリン系脂肪族ポリマーが0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%となるように添加する。
本発明の相溶化剤のうちもう一方の形であるオキサゾリン変性ポリオレフィンにおいては、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂と該オキサゾリン変性ポリオレフィンの合計量のうち、該オキサゾリン変性ポリオレフィンが1〜90重量%、好ましくは2〜70重量%、さらに好ましくは5〜50重量%となるように添加する。
添加量がこれらより低い場合、十分な相溶化効果が得られず、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱性が不十分となる可能性があり、一方、添加量がこれらの範囲を超えると、機械的物性の低下を招くことがある。
本発明において熱可塑性樹脂組成物とは、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び本発明の相溶化剤を混合し、溶融混練する工程を経て得られたものである。
溶融混練工程での原料供給方法としては、ペレット状の脂肪族ポリエステル、ポリオレフィン、粉末状あるいはペレット状相溶化剤、またはペレット状に加工した相溶化剤のマスターバッチ及びその他の添加剤を所定比例でドライブレンドし、その混合物を溶融混練機に直接フィードする方法、あるいは、ペレット状のポリオレフィン、ペレット状又は粉末状のポリエステル、粉末状又はペレット状の相溶化剤及びその他の添加剤をそれぞれの定量装置を用い、所定比例で連続的に溶融混練機に直接フィードする方法があり、いずれの方法においても良好な混練が可能である。
溶融混練工程で用いられる溶融混練機としては、公知の溶融混練機が例示され、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。フィラーを良好に分散させ、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や剛性を向上させるという観点から、一軸押出機又は二軸押出機により溶融混練することが好ましく、特に二軸押出機が好ましい。
二軸押出機は通常、原料供給口、ベント口、ジャケットを備えたバレル、バレルの内部に配置され、同方向、異方向に回転する二本のスクリュー、及び押出機先端に取り付けられたダイ、スクリーンメッシュから構成される。さらに、二軸押出機には、スクリュー途中に設置された複数枚のニーディングディスクによって構成される少なくとも一つの溶融混練部(ニーディング部)が含まれる。
一つの溶融混練部(ニーディング部)を構成するニーディングディスクの枚数は、フィラーを良好に分散させるという観点や、せん断によっる発熱で樹脂が分解することを防止するという観点から、好ましくは3〜200枚であり、より好ましくは5〜50枚である。また、一つの溶融混練部(ニーディング部)を1ユニットとして、せん断による発熱で樹脂が分解することを防止するという観点から、好ましくは1〜20ユニット、更に好ましくは1〜15ユニットである。
スクリーンメッシュは、フィラーを良好に分散させるという観点や、せん断による発熱で樹脂が分解することを防止するという観点から、好ましくは10〜500メッシュであり、より好ましくは20〜200メッシュである。
押出機の溶融混練部(シリンダー部)の温度は、脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂を良好に相溶化させ、原料のポリエステル樹脂及び製造される熱可塑性樹脂組成物の分解を防止するという観点から、通常100〜280℃であり、好ましくは150〜250℃である。
溶融混練時間は、分散不良や、製造される熱可塑性樹脂組成物の分解を防止するという観点から、全体として、通常0.1〜30分であり、好ましくは0.5〜15分である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造においては、その物性を損なわない限り、必要に応じて結晶核剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、染料や顔料などの着色剤及び流動性や離型性の改善のための滑剤、潤滑剤、ワックス類、無機物など公知の熱可塑性樹脂の添加剤を含有してもよい。このような添加剤の含有量は、本発明の複合樹脂組成物において、20重量%以下であることが好ましい。これらの添加剤は単独で用いても、複数を組み合わせてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途としては、射出成形用材料、押出成形用材料、プレス成形用材料、ブロー成形用材料、フィルム成形用材料等が挙げられる。特に、好ましくは剛性や耐衝撃性が必要とされる用途であり、例えば自動車用材料や家電用材料が挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
実施例及び比較例に用いた材料は以下の通りである。
PLA:三井化学社製、レイシアH−100(ポリ乳酸)
PP:サンアロマー社製、PM600A(ポリプロピレン樹脂)
B−PP:三井化学社製、B701WB(エチレン−プロピレンのブロック型ポリオレフィン樹脂)
M−PP:三菱化学社製、モディックAP−P502(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)
A−PE:三井化学社製、エクセレックス15341PA(カルボン酸変性ポリエチレン)
E−PE:住友化学社製、ボンドファストE(エポキシ変性エチレン系コポリマー)
RPS:日本触媒社製、エポクロスRPS(スチレンと2−イソプロペニル−2−オキサゾリンの共重合体)
実施例における各種物性の測定方法と評価方法は以下の通りである。
(1)外観成形性:樹脂組成物のペレット、プレスフィルム及び射出成形ダンベル試験片の外観を目視により観察し、成形性を以下の4段階で評価した。
◎:ムラ、剥離が視認できず、かつ、光沢がある。
○:ムラ、剥離が視認できないが、光沢がない。
△:僅かなムラがあるが、剥離が視認できず、かつ、光沢がない。
×:ムラ、剥離が視認でき、かつ、光沢がない。
(2)加工安定性:樹脂組成物の混練押出工程の加工安定性をモーター負荷値の変動により次の3段階で評価した。
比較対照:ポリ乳酸樹脂とポリプロピレン樹脂の混合物を押出した際のモーター負荷値
◎:負荷の増加、低下は殆ど見られず、安定的にストランド状に押出できた。
○:負荷の小幅な増加、低下が見られたが、ほぼ安定的に混練、押出できた。
△:負荷の増加、低下が見られ、不安定であったが、混練、押出はできた。
×:負荷の急激な増加、低下が見られ、混練、押出はできなかった。
(3)引張強度:熱可塑性樹脂のプレスフィルム(100mm×15mm、厚さ200μm)の試験片5枚を用い、300mm/分の速度で引張テストを行い、引張破断強度の平均値を算出した。
引張強度が高いほど熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が高い。
(4)耐衝撃性:熱可塑性樹脂のプレスフィルム(100mm×100mm、厚さ200μm)の試験片5枚を用い、JIS P−8134に準拠し、インパクトテスター(東洋精機製作所)で衝撃テストを行い、衝撃強度の平均値を算出した。
衝撃強度が高いほど熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高い。
(5)耐熱性:熱可塑性樹脂の射出成形試験片(厚さ4mm)2枚を用い、K7191に準拠し、荷重たわみ温度を0.45MPaの条件で測定し、平均値を算出した。
温度が高いほど、耐熱性に優れることを示す。
(6)相溶性:熱可塑性樹脂のペレットを加熱、溶融させた後、100℃で偏光顕微鏡により観察し、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶性を以下の4段階で評価した。
◎:界面が視認できず、細かく均一に分散されている。
○:界面が視認できず、均一に分散されている。
△:僅かな界面が視認できる。
×:数多くのはっきりとした界面が視認できる。
(7)耐加水分解性:熱可塑性樹脂のプレスフィルム(厚さ200μm)を作製し、該プレスフィルムを用いて、100mm×15mmの試験片10枚を採取した。その5枚の試験片を300mm/分の速度で引張テストを行い、引張破断強度の平均値を算出し、初期破断強度値とした。また、残り5枚の試験片を70℃、相対湿度95%の高温高湿機に入れ、60時間保持した後に取り出し、冷却、乾燥を行い、高温高湿処理後の試験片とした。これらの試験片を用い、同様に300mm/分の速度で引張試験を行い、引張破断強度の平均値を算出し、高温高湿処理後の引張強度値とした。高温高湿処理後の強度保持率を数式(1)により算出した。
強度保持率が大きいほど熱可塑性樹脂の耐加水分解性が高い。
Figure 2012102231
オキサゾリン系脂肪族ポリマーの合成
<合成例1−1>
2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)のホモポリマー(PolyVOZO)の合成
撹拌装置、温度計、冷却器及び乾燥窒素導入管を備えた容量500mLの反応容器にVOZO
100.0g(1030.9mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.7g(10.3mmol)と酢酸エチル200mLを仕込んだ。乾燥窒素気流下、反応液を30℃で60分攪拌した後、60℃で8時間重合反応を行った。反応終了後、室温に戻し、粘性の高い反応液をジイソプロピルエーテルに注ぎ、ポリマーを沈殿させることにより粗生成物を得た。該粗生成物をメタノールに溶解させ、ジイソプロピルエーテルで再沈殿、分離した後、50℃において減圧下で乾燥し、白色粉末状固形物93.5gを得た(収率=93.5%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収が検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、ホモポリマーPolyVOZOの生成を確認した。さらに、該ホモポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、23,000であることを確認した。
<合成例1−2>
2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)とメチルメタクリレート(MMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)のコポリマー(PolyVOZO−MMA−DMAA)の合成
VOZO 25.0g(257.7mmol)、MMA 25.8g(257.7mmol)、DMAA 51.1g(515.4mmol)、AIBN 1.7g(10.3mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物93.4gを得た(収率=91.7%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収、MMAのエステルの特有吸収及びDMAAのアミドの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyVOZO−MMA−DMAAの生成を確認した。コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、VOZO由来ユニット/MMA由来ユニット/DMAA由来ユニット=1.00/1.06/1.97であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、30,000であることを確認した。
<合成例1−3>
2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPOZO)のホモポリマー(PolyIPOZO)の合成
IPOZO 100.0g(899.6mmol)、AIBN 1.5g(9.0mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物90.9gを得た(収率=90.9%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収が検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、ホモポリマーPolyIPOZOの生成を確認した。さらに、該ホモポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、19,500であることを確認した。
<合成例1−4>
2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPOZO)と2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)のコポリマー体(PolyIPOZO−2EHA−DEAA)の合成
IPOZO 50.0g(449.8mmol)、2EHA 41.4g(224.9mmol)、DEAA 28.6g(224.9mmol)、AIBN 1.5g(9.0mmol)と酢酸エチル240mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物113.0gを得た(収率=94.2%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収、2EHAのエステルの特有吸収及びDEAAのアミドの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyIPOZO−2EHA−DEAAの生成を確認した。該コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、IPOZO由来ユニット/2EHA由来ユニット/DEAA由来ユニット=1.00/0.53/0.48であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、37,000であることを確認した。
<合成例1−5>
5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(MVOZO)のホモポリマー(PolyMVOZO)の合成
MVOZO 100.0g(899.6mmol)、AIBN 1.5g(9.0mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物91.9gを得た(収率=91.9%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収が検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収が検出されず、ホモポリマーPolyMVOZOの生成を確認した。さらに、該ホモポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、27,500であることを確認した。
<合成例1−6>
4,4‘−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン(DMVOZO)、メチルメタクリレート(MMA)とN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)のコポリマー(PolyDMVOZO−MMA−NIPAM)の合成
DMVOZO 50.0g(400.0mmol)を、MMA 20.0g(200.0mmol)、NIPAM 22.7g(200.0mmol)、AIBN 1.3g(8.0mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物85.3gを得た(収率=92.0%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収、MMAのエステルの特有吸収及びNIPAMのアミドの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyMVOZO−MMA−NIPAMの生成を確認した。該コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、MVOZO由来ユニット/MMA由来ユニット/NIPAM由来ユニット=1.00/0.55/0.46であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、28,500であることを確認した。
<合成例1−7>
2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)とN−オクチルアクリルアミド(NOAM)の共重合体(PolyVOZO−NOAM)の合成
VOZO 50.0g(515.5mmol)、NOAM 47.3g(257.7mmol)、AIBN 1.3g(7.7mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物89.9gを得た(収率=92.4%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収及びNOAMのアミドの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyVOZO−NOAMの生成を確認した。該コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、VOZO由来ユニット/NOAM由来ユニット=1.00/0.46であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、29,500であることを確認した。
<合成例1−8>
2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)とメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー(PolyVOZO−MMA)の合成
VOZO 25.0g(257.7mmol)、MMA 77.4g(773.0mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.7g(10.3mmol)と酢酸エチル200mLを仕込んで、合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物95.7gを得た(収率=93.5%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、オキサゾリンの環状構造由来の特有吸収及びMMAのエステルの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyVOZO−MMAの生成を確認した。コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、VOZO由来ユニット/MMA由来ユニット=1.00/3.16であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、33,000であることを確認した。
<合成例1−9>
メチルメタクリレート(MMA)とN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)のコポリマー(PolyMMA−DMAA)の合成
MMA 51.6g(515.4mmol)、DMAA 51.1g(515.4mmol)、AIBN 1.7g(10.3mmol)と酢酸エチル200mLを用いて合成例1−1と同様に重合、精製を行い、白色粉末状固形物94.5gを得た(収率=92.0%)。該白色粉末状固形物は、赤外線吸収スペクトル(IR)により、MMAのエステルの特有吸収及びDMAAのアミドの特有吸収がそれぞれ検出され、また、モノマー由来のビニル基の吸収は検出されず、コポリマーPolyMMA−DMAAの生成を確認した。コポリマーの組成を1H−NMR(CDCl3)により分析し、MMA由来ユニット/DMAA由来ユニット=1.00/0.92であることを確認した。さらに、該コポリマーの重量平均分子量(Mw)がGPC法(標準ポリスチレン)により分析し、34,500であることを確認した。
オキサゾリン変性ポリオレフィンの合成
<合成例2−1〜2−6>
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(M−PP)又はカルボン酸変性ポリエチレン(A−PE)と合成例1−1,1−2,1−7で得られたオキサゾリン系脂肪族ポリマーを表1に示す割合で予備混合し、小型ニ軸混練押出機(栗本鐵工所製S1KRCニーダ)に供給して、180℃、50rpmで溶融混練を行い、オキサゾリン変性ポリオレフィンのペレットを得た。
Figure 2012102231
実施例1〜10、比較例1〜8
ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、オキサゾリン系脂肪族ポリマーとその他の添加剤を表2に示す割合で予備混合し、小型ニ軸混練押出機(栗本鐵工所製S1KRCニーダ)に供給して、200℃、50rpmで溶融混練を行い、目的樹脂組成物のペレットを得た。混練押出中にモーター負荷値の変動を観察し、組成物の加工安定性を評価した。また、各種熱可塑性樹脂組成物のペレットを120℃で2時間乾燥後、180℃の熱プレス機により厚さ200μmのプレスフィルムを製作した。得られたプレスフィルムを23℃×50%RHの条件下で24時間放置した後、各種物性評価に用いた。さらに、射出成形機(東芝機械製IS100GN)により、射出圧力55Kg/cm、射出時間5秒、シリンダ温度170℃、ノズル温度180℃、金型温度40℃の条件下で多目的射出成形試験片を作製した(JIS K7152)。得られた各種熱可塑性樹脂組成物のペレット、プレスフィルムと射出成形試験片を用いて、前記各種物性測定と評価を行った。結果を表3、図1〜7に示す。
Figure 2012102231
Figure 2012102231
実施例11〜22
ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、オキサゾリン変性ポリオレフィンとその他の添加剤を表4に示す割合で予備混合し、小型ニ軸混練押出機(栗本鐵工所製S1KRCニーダ)に供給して、200℃で溶融混練した後ストランド状に押出し(回転数:30rpm/分)、水冷後、切断してペレット化し、目的熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。混練押出中にモーター負荷値の変動を観察し、組成物の加工安定性を評価した。また、各種熱可塑性樹脂組成物のペレットを120℃で2時間乾燥後、熱プレス機によりプレスフィルム、射出成形機(東芝機械製IS100GN)により、多目的射出成形試験片を作製した(JIS K7152)。得られた各種熱可塑性樹脂組成物のペレット、プレスフィルムと射出成形試験片を用いて、前記各種物性測定と評価を行った。結果を表5、図8と図9に示す。
Figure 2012102231
Figure 2012102231
実施例と比較例の結果から、本発明のオキサゾリン系脂肪族ポリマーまたはオキサゾリン変性ポリオレフィンを相溶化剤として配合することによって、非相溶性の脂肪族ポリエステルと汎用ポリオレフィンが均一且つ安定的に混合(相溶化)され、良好な機械的特性を維持しながら、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、また耐加水分解性が大幅に向上することがわかる。また、成形性、加工性を顕著に改善することができる。
本発明の相溶化剤は、少量添加で脂肪族ポリエステル樹脂と汎用ポリオレフィン樹脂を良好に相溶化させることができる。それにより、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的特性を高く維持しながら、熱的特性、耐衝撃性と耐加水分解性を顕著に向上させることができる。そのため、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各産業分野、特に建築材料分野、自動車分野の内外装部品や電装部品、家電製品などに使用できる。具体的には、各種エンジニアリングプラスチックとして、特にバンパー、インパネ、コンソールボックス、ルーフシート、パネル表装材、電装部品などの自動車・輸送機器関連内外装部品、家電、家具、雑貨などの日用品関連製品、医療材料の成型品、食品容器、食品包装、一般包装などの包装材料、電線やケーブルなどの被覆用材料、建築・土木、文具・事務用品などの産業資材等に好適である。また、本発明の相溶化剤は、ポリエステル、ポリオレフィン樹脂以外の異種の熱可塑性樹脂の相溶化剤としても用いることができる。

Claims (6)

  1. 一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R〜Rは同一または異なって水素原子または炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を、Rは水素原子またはメチル基を、R、R10は同一または異なって水素原子または炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基もしくは2−アルケニル基を表し、構成単位aの配合量は5〜100モル%、構成単位bと構成単位cの配合量は合わせて95〜0モル%である。)で示されるオキサゾリン系脂肪族ポリマーからなる、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶化剤。
    Figure 2012102231
  2. 前記オキサゾリン系脂肪族ポリマーの重量平均分子量が1,000〜500,000であることを特徴とする、請求項1に記載の相溶化剤。
  3. 請求項1または2に記載のオキサゾリン系脂肪族ポリマーと、末端または側鎖にカルボキシル基、酸無水物基、チオール基またはフェノール性水酸基を有するポリオレフィンとを反応させることによって得られた、オキサゾリン基を有する変性ポリオレフィンからなる、脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶化剤。
  4. 請求項1または2に記載の相溶化剤、脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂を、該相溶化剤の含有量が0.1〜50重量%となるように混合し、溶融混練して得られる熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項3に記載の相溶化剤、脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂を、該相溶化剤の含有量が1〜90重量%となるように混合し、溶融混練して得られる熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成型品。

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