JP2009040948A - 射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】射出成形に好適なレオロジー特性を有し、所望の射出成形体を得ることができる射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、所定のポリ乳酸樹脂100質量部と、所定の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。ポリ乳酸樹脂は、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minのものである。有機過酸化物は、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種のものである。
【選択図】なし
【解決手段】射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、所定のポリ乳酸樹脂100質量部と、所定の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。ポリ乳酸樹脂は、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minのものである。有機過酸化物は、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種のものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、射出成形に好適なレオロジー特性(流動性、粘弾性)を有し、射出成形における生産性が良く、さらに射出成形体の耐熱性に優れる射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保護という見地から、自然環境中又はコンポスト中で微生物などにより分解される生分解性ポリマーが望まれており、中でも脂肪族ポリエステル樹脂の研究が活発に行われている。特にポリ乳酸樹脂は、その原料である乳酸がトウモロコシなどの天然資源から得られることから、今後枯渇する可能性のある石油資源に頼らない材料として注目され、その用途が拡大している。また物性面においては、得られる成形品の剛性や透明性が高いことから、汎用プラスチックの代替材料として使用され始めている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は結晶化速度が極端に遅く、かつ非晶部分のガラス転移温度がプラスチック製品の使用環境温度内の50〜60℃にあることから、ポリ乳酸樹脂の結晶化度が低いと、非晶部分の性質、すなわちガラス転移温度以上では成形品が軟化する性質が支配的になり、耐熱性が低下してしまう。従って、耐熱性が要求される家電用又は自動車用樹脂部品には使用できない。特にこれら家電用又は自動車用樹脂部品は、生産性に優れる射出成形により成形されるため、結晶化速度が遅いと短時間で成形品が得られず、生産性が低下してしまう。これらの問題を解決するために、従来ポリ乳酸樹脂に分岐構造を導入して結晶化を促進させ、耐熱性を向上させるという方法が知られている。
具体的には、ポリ乳酸樹脂をフリーラジカル反応によって架橋を生成させ、分岐したポリ乳酸組成物を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。その分岐型ポリ乳酸樹脂組成物は、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィによる数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.5以上である。そのため、溶融強度やレオロジー特性が改善され、押出成形やブロー成形の溶融強度に優れている。
さらに、ポリ乳酸樹脂と有機過酸化物とを溶融混練することにより、架橋したポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。係るポリ乳酸樹脂組成物は、GPCによる数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)と体積平均分子量(Mv)とから算出されるMw/Mnが2以上であり、かつMv/Mnが5以上であることから、機械的強度と耐熱性に優れ、発泡体、押出成形体、射出成形体、ブロー成形体等の成形に有利なレオロジー特性を有している。
加えて、ポリ乳酸と、有機過酸化物例えばジベンゾイルペルオキシドやt−ブチルペルオキシベンゾエートとを溶融混練して得られるポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。係るポリ乳酸樹脂組成物は、溶融強度と成形加工性に優れ、フィルム又はシートの成形を容易にすることができる。
その上、ポリ乳酸樹脂と有機過酸化物を溶融混練して得られるポリ乳酸樹脂架橋物から、優れた二次成形性を有するポリ乳酸樹脂組成物シートが得られることが開示されている(例えば、特許文献4を参照)。係るポリ乳酸樹脂組成物は、190℃におけるメルトテンション(溶融粘度)が2gf以上で、かつ180℃における歪硬化指数が0.20以上であることから、優れた二次成形性を有するシート、及びそれを真空成形又は真空圧空成形することにより、厚み偏肉の小さい成形体が得られる。
特許3369185号公報(第1頁、第2頁及び第3頁)
特開2006−241227号公報(第2頁及び第3頁)
特許3295717号公報(第1頁、第2頁及び第4頁)
特開2004−231766号公報(第2頁及び第3頁)
ところが、特許文献1〜4に記載の組成物は、ポリ乳酸樹脂に分岐構造が導入されるため耐熱性には優れるが、有機過酸化物が溶融樹脂中で均一に分散した後に分解するような混練条件、即ち有機過酸化物の分解開始温度よりも35〜65℃程度高い温度で溶融混練されている。そのため、有機過酸化物の分解による架橋反応が均一に進行して全体に均一な架橋物が形成される。従って、得られるポリ乳酸樹脂組成物は、GPCによる質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.5以上であり、さらに180℃における歪硬化指数が0.20以上であるため、ブロー成形や発泡成形さらにはシート成形の加工性と耐熱性に優れている。
ところで、射出成形では溶融樹脂を金型の成形凹部(キャビティ)に一定の圧力をもって注入する必要がある。特に、射出成形体として薄肉成形体を得るためには成形凹部が薄くなり、大型成形体を得るためには成形凹部が長くなる。しかしながら、前記従来のポリ乳酸樹脂組成物では、粘性が高く、流動性が悪いことから特に薄肉成形体や大型成形体を成形する場合、溶融樹脂が成形凹部の先端まで十分に注入されず、所望の射出成形体を得ることができなかった。所望の射出成形体を得るべく溶融樹脂を成形凹部の先端まで注入するためには、非常に高い成形圧力が必要とされていた。従って、そのようなポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形には向かないという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、射出成形に好適なレオロジー特性を有し、所望の射出成形体を得ることができる射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
前記の目的を達成するために、本発明における第1の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなることを特徴とする。
第2の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、第1の発明において、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィによる数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.2〜2.4であり、さらに180℃における一軸伸長粘度の立ち上がりを示す歪硬化指数が0.12〜0.19であることを特徴とする。
第3の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、第2の発明において、剪断速度243sec−1、引取速度12m/min及び190℃における溶融張力が5〜40mNであることを特徴とする。
第4の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、第3の発明において、さらに結晶核剤を含有することを特徴とする。
第5の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、第1の発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することを特徴とする。
第5の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、第1の発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物では、光学純度が97%以上でかつ前記メルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。このため、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差が少ない従来の方法と比べて、有機過酸化物の分解が促進され、有機過酸化物が均一に分散される前に架橋反応が起き、分子の広がりがあまり大きくない架橋物と、架橋しない未架橋物とが混在した組成物が形成される。分子の広がりがあまり大きくない架橋物は分岐はしているものの、溶融時における絡み合いが少なく、適度な粘性が得られると共に、結晶化を促進することができる。一方、未架橋物は粘性が低く、流動性に優れている。従って、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形に好適なレオロジー特性を発現でき、所望の射出成形体を得ることができる。
第1の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物では、光学純度が97%以上でかつ前記メルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。このため、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差が少ない従来の方法と比べて、有機過酸化物の分解が促進され、有機過酸化物が均一に分散される前に架橋反応が起き、分子の広がりがあまり大きくない架橋物と、架橋しない未架橋物とが混在した組成物が形成される。分子の広がりがあまり大きくない架橋物は分岐はしているものの、溶融時における絡み合いが少なく、適度な粘性が得られると共に、結晶化を促進することができる。一方、未架橋物は粘性が低く、流動性に優れている。従って、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形に好適なレオロジー特性を発現でき、所望の射出成形体を得ることができる。
第2の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物では、前述の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.2〜2.4であり、さらに180℃における一軸伸長粘度の立ち上がりを示す歪硬化指数が0.12〜0.19である。このため、ポリ乳酸は分子量分布が狭くなると共に、歪硬化指数も小さくなり、一軸伸長時における高分子鎖同士の絡み合いが少なく、溶融状態が保持される。従って、第1の発明の効果に加えて、ポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形に一層好適なレオロジー特性を発揮することができる。
第3の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物では、剪断速度243sec−1、引取速度12m/min及び190℃における溶融張力が5〜40mNである。このため、第2の発明の効果に加えて、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形のための溶融樹脂の注入時や射出成形時におけるレオロジー特性を向上させることができる。
第4の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物では、さらに結晶核剤を含有することから、その結晶核剤を中心にして結晶化が一層促進され、第3の発明の効果に加えて、射出成形体の耐熱性や機械的物性を向上させることができる。
第5の発明の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法では、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することにより行われる。従って、第1の発明の効果を奏する射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物を簡便な方法で効率良く製造することができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物(以下、ポリ乳酸樹脂組成物又は単に樹脂組成物ともいう)は、特定のポリ乳酸樹脂100質量部と、所定の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物は、適度な粘性及び結晶性を有する架橋物と、粘性が低く、流動性の良い未架橋物との混合物であり、射出成形に好適なレオロジー特性(流動性、粘弾性)を発揮することができる。前記ポリ乳酸樹脂は、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minのものである。また、有機過酸化物は、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種のものである。
本実施形態の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物(以下、ポリ乳酸樹脂組成物又は単に樹脂組成物ともいう)は、特定のポリ乳酸樹脂100質量部と、所定の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物は、適度な粘性及び結晶性を有する架橋物と、粘性が低く、流動性の良い未架橋物との混合物であり、射出成形に好適なレオロジー特性(流動性、粘弾性)を発揮することができる。前記ポリ乳酸樹脂は、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minのものである。また、有機過酸化物は、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種のものである。
ポリ乳酸樹脂とは、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)やこれらの混合物である。ここでポリ乳酸樹脂の光学純度とは、ポリ乳酸樹脂中のL−乳酸(L体)又はD−乳酸(D体)の構成モル分率を表し、次式で計算され、光学純度が高いほど結晶化しやすいという性質がある。
光学純度(%)=100×([L]−[D])/([L]+[D])、又は、光学純度(%)=100×([D]−[L])/([L]+[D])
ここで、[L]はポリ乳酸樹脂中のL体のモル濃度、[D]はポリ乳酸樹脂中のD体のモル濃度を表す。
ここで、[L]はポリ乳酸樹脂中のL体のモル濃度、[D]はポリ乳酸樹脂中のD体のモル濃度を表す。
そのため、耐熱性などの物性が要求される材料にはL体又はD体の光学純度が97%以上であることが必要である。L体又はD体の光学純度が97%未満の場合には、射出成形体の耐熱性などの物性が得られにくく、用途が限定される。
係るポリ乳酸樹脂を得る方法としては、縮合重合(縮重合)法、開環重合法等の公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸又はD−乳酸或いはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、例えばオクチル酸スズなどの適当な触媒を選択し、必要に応じて重合調節剤も併用して、乳酸の環状二量体であるラクチドからポリ乳酸樹脂を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成及び結晶性を有するポリ乳酸樹脂を得ることができる。
前記ポリ乳酸樹脂は、射出成形に用いるため高流動性が必要で、具体的には190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFL)が10〜40g/10minである必要があり、10〜20g/10minであることが好ましい。このメルトフローレートが10g/10minを下回る場合には、流動性が不足し、射出成形時に溶融したポリ乳酸樹脂が成形凹部(キャビティ)の細部に十分に注入されず、所望の射出成形体を得ることができない。その一方、メルトフローレートが40g/10minを上回る場合には、溶融したポリ乳酸樹脂の流動性が高くなり過ぎ、分子量が低くなり過ぎて射出成形体の機械的物性が悪化すると共に、耐熱性も不足する。
前記ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ、GPCともいう)によるポリスチレン換算値で、好ましくは5〜20万、より好ましくは10〜15万である。質量平均分子量が5万未満の場合、質量平均分子量が低く、得られる射出成形体について機械的物性などの実用上必要な物性が得られにくい。一方、質量平均分子量が20万を超える場合、ポリ乳酸樹脂の粘度が上昇する傾向が強く、射出成形性が悪くなりやすい。
前記ポリ乳酸樹脂の代表的なものとしては、三井化学(株)製の「レイシア」シリーズ、ユニチカ(株)製の「テラマック」シリーズ、トヨタ自動車(株)製の「U−z」シリーズ、ネイチャーワークス社製の「Nature Works」シリーズ等が商業的に入手されるものとして挙げられる。
前記有機過酸化物は、ポリ乳酸樹脂を架橋させるための架橋効率に優れるものが用いられ、具体的にはペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類からなる群から選択される少なくとも1種のものである。
有機過酸化物としては、例えばt−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(分解開始温度130℃)、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(分解開始温度136℃)等のペルオキシモノカーボネート類、ジベンゾイルペルオキシド(分解開始温度105℃)等の芳香族系ジアシルペルオキシド類、ジクミルペルオキシド(分解開始温度151℃)、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(分解開始温度155℃)等の芳香族系ジアルキルペルオキシド類、t−ブチルペルオキシベンゾエート(分解開始温度126℃)、2,5−ジメチル2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン(分解開始温度128℃)等の芳香族系ペルオキシエステル類が挙げられる。こられの有機過酸化物のうち、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(分解開始温度130℃)、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(分解開始温度136℃)のペルオキシモノカーボネート類が、得られるポリ乳酸樹脂組成物の着色が少ないという点からより好ましい。
前記有機過酸化物の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部である。有機過酸化物の含有量が0.1質量部より少ないと射出成形時における架橋反応の進行が遅く、生産性が低下する一方、1質量部を超えると架橋反応の進行が過度になって射出成形に必要なレオロジー特性が悪化する傾向にある。
ポリ乳酸樹脂組成物は、前述のようにポリ乳酸樹脂100質量部と有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。ここで、溶融混練温度と有機過酸化物の分解開始温度との差が75℃未満の場合には、射出成形に必要なレオロジー特性が悪化し、ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形に使用することが困難になる。その一方、溶融混練温度と有機過酸化物の分解開始温度との差が120℃を超える場合には、溶融混練温度が高温になり、ポリ乳酸樹脂の分解が起こり、射出成形体の物性が悪化する。
ポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形に好適なレオロジー特性を有するものであり、係る射出成形に優れるレオロジー特性とは、高剪断時における溶融粘度が低いことである。そのためには、GPCによる数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が好ましくは2.2〜2.4であり、180℃における歪硬化指数が好ましくは0.12〜0.19である。この範囲の分散度と歪硬化指数であれば、射出成形機の適正圧力内で、溶融樹脂を金型の成形凹部の細部まで充填させることができ、複雑かつ薄肉な射出成形体も容易に得ることができる。
前記分散度が2.2より低いときには、溶融樹脂の絡み合いが少ないため、射出成形体の結晶性が低くなって良好な機械的強度を有する射出成形体が得られなくなる。その一方、分散度が2.4よりも高いときには、射出成形機の適正圧力では、溶融樹脂の流動性が悪くなって金型の成形凹部の細部まで充填させることができなくなり、複雑かつ薄肉な射出成形体が得られなくなる。
また、歪硬化指数が0.12未満である場合には、一軸伸張粘度の立ち上がりが低いため、良好な機械強度を有する射出成形体が得られなくなる傾向を示す。その一方、歪硬化指数が0.19よりも高い場合には、一軸伸張粘度の立ち上がりが高く、溶融樹脂の粘性が上がり、射出成形機の適正圧力では、溶融樹脂を金型細部まで充填させることができなくなり、複雑かつ薄肉な射出成形体が得られなって好ましくない。
さらに、射出成形に優れるレオロジー特性を向上させるためには、上記の各要件のほかにポリ乳酸樹脂組成物について、剪断速度243sec−1、引取速度12m/min及び190℃における溶融張力が5〜40mNであることが好ましい。この溶融張力が5mNよりも低い場合、溶融張力が低くなり過ぎ、良好な耐熱性を有する射出成形体が得られなくなる。一方、溶融張力が40mNよりも高い場合には、溶融張力が過度に作用し、射出成形機の適正圧力では溶融樹脂を金型細部まで充填させることができなくなり、複雑かつ薄肉な射出成形体が得られなくなる。
加えて、ポリ乳酸樹脂組成物には、結晶化を促進させ、射出成形体の耐熱性、機械的物性などの物性を高め、射出成形時の生産性を向上させるために、さらに結晶核剤を含有することが好ましい。係る結晶核剤としては、汎用されているタルク、クレイ、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母等の層状ケイ酸塩類、メラミンシアヌレート等のメラミン誘導体類、フェニルホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸亜鉛等のフェニルホスホン酸金属塩類、銅フタロシアニン等のフタロシアニン金属塩類、オクタンカルボンジベンゾイルヒドラジド等のヒドラジド類が挙げられる。中でもタルク、クレイ、メラミンシアヌレート等のメラミン誘導体類、フェニルホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸亜鉛等のフェニルホスホン酸金属塩類、銅フタロシアニン等のフタロシアニン金属塩類、オクタンカルボンジベンゾイルヒドラジド等のヒドラジド類はポリ乳酸に対して最も結晶化効率の高い物質であることから結晶核剤として好適である。また、タルク及びクレイは非常に安価で、しかも自然界に存在する無機物質であるため、工業的にも有利で地球環境にも負荷を与えないため好ましい。
この結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。結晶核剤の含有量が1質量部より少ないときには結晶核剤を配合して結晶化を促進する効果が十分に得られず、20質量部より多いときには含有量に見合う効果が得られず、相対的にポリ乳酸の含有量が低下して射出成形体の物性が悪くなる傾向を示す。
また、結晶核剤をポリ乳酸樹脂組成物に効率よく分散させるために、ポリ乳酸樹脂組成物の特性を損なわない範囲で分散剤を配合することが好ましい。分散剤としては、ポリ乳酸との相溶性に優れると共に結晶核剤との濡れ性にも優れるものが好適に使用できる。このような物質としては、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド等のアミド類が挙げられ、これらは単独で使用しても複数組み合わせて使用しても良い。
特にクレイを結晶核剤として用いる場合には、クレイの層間に存在するナトリウムイオンなどの水溶性カチオンを1−アミノドデセン、オクタデシルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ジオクタデシルアンモニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム等の有機カチオンで置換した後に、分散させる方法が好ましい。
次に、以上のように構成される射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物は、次のような簡便な方法によって製造することができる。すなわち、前述した特定のポリ乳酸樹脂100質量部と、前記所定の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することにより実施される。このようにポリ乳酸樹脂及び有機過酸化物の種類と含有量を決め、溶融混練温度を設定するだけでポリ乳酸樹脂組成物を簡便に得ることができる。溶融混練温度は、ポリ乳酸樹脂が溶融する170℃以上であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂が分解しやすくなる250℃以下であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物を製造するための溶融混練時間は、20min以内が好ましく、10min以内がより好ましく、5min以内が最も好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の製造は、上記の条件以外には常法に従って行われるが、例えばポリ乳酸樹脂と有機過酸化物とをドライブレンドした後、溶融混練装置に投入する方法が挙げられる。係る溶融混練装置としては、公知のものであれば特に限定されないが、例えば一軸押出機、二軸押出機等の各種押出機やバンバリーミキサー、ブラベンダー、プラストグラフ、熱ロール、ニーダー等の溶融混練機が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物には、射出成形体の外観をより向上させるために、必要に応じて有機過酸化物にビニル単量体の二官能体又は三官能体である架橋助剤を併用することができる。架橋助剤の具体例としては、例えばジビニルベンゼン(オルト体、メタ体、パラ体)等のスチレン系ジビニル単量体や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート〔ここでいう(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称を意味する〕、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のジ又はトリ(メタ)アクリレート系ビニル単量体、ジ(メタ)アリルフタレート等のジ(メタ)アリル系単量体、及びトリ(メタ)アリルイソイソシアヌレート等のトリ(メタ)アリル系単量体が挙げられる。
これらの中でも、有機過酸化物が熱分解して発生するラジカルへ付加する反応性や付加されたラジカルの反応性が高いビニル単量体の二官能体又は三官能体が好ましく、具体的にはジ又はトリ(メタ)アクリレート系ビニル単量体では、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく、ジ又はトリ(メタ)アリル系単量体では、ジ(メタ)アリルフタレート、トリ(メタ)アリルイソイソシアヌレートが好ましい。これらは、単独で、或いは二種以上を混合して使用することができる。架橋助剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。架橋助剤の含有量が3質量部より多くなると、射出成形がしにくくなるため好ましくない。
さらに、ポリ乳酸樹脂組成物には、衝撃強度や物性の改善等のために、必要に応じてポリ乳酸樹脂以外のゴム、弾性体、樹脂、天然繊維等の高分子物質を配合することができる。そのような高分子物質としては、エチレンープロピレン共重合ゴム、エチレンープロピレンージエン共重合ゴム等のエチレン−プロピレン系弾性体、天然ゴム等の天然系弾性体、脂肪族ジオールと脂肪族カルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル系弾性体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ケナフなどのセルロース系天然繊維が衝撃強度改善のためには好ましい。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系樹脂、6ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等などの汎用の熱可塑性樹脂が物性改善には好ましい。
上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、着色剤、離型剤、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤等をポリ乳酸樹脂組成物の特性を損なわない範囲で配合することができる。
次に、射出成形体は、ポリ乳酸樹脂組成物を所定形状の成形凹部を有する金型を用いて射出成形することによって得られる。射出成形体を得るための射出成形法は、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法のほか、ガスアシスト法や射出圧縮法等の特殊な射出成形法を採用することもできる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法及びサンドイッチ成形法等、複数の射出ユニット及び複数の金型内のゲートを有する装置を用いる方法等を採用することもできる。但し、射出成形法はこれらに限定されるものではない。
続いて、射出成形体を得るための射出成形装置は、射出成形機とこれらの成形機に用いられる成形用金型及び付帯機器、金型温度制御装置、原材料乾燥装置等から構成される。射出成形機の成形条件は、射出シリンダー内でのポリ乳酸樹脂組成物の熱分解を避けるため、溶融樹脂温度を170℃〜210℃の範囲に設定することが好ましい。
優れた耐熱性や機械的物性を有する射出成形体を高生産性で製造する場合には、成形サイクル(型閉工程、射出工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、取出工程)のうち冷却工程における冷却時間を短くするために、金型温度はできるだけ高温とすることが好ましい。金型温度は60〜130℃であることが好ましく、耐熱性に優れる射出成形体を得るには80〜120℃であることがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物より得られる射出成形体は、優れた耐熱性を有している。ここで、耐熱性とはJIS K 7207A法における低荷重たわみ温度が高いことを意味する。優れた耐熱性を有することにより、低荷重たわみ温度よりも低い温度では、射出成形体の形状を保持したまま構造体として使用することが可能となる。射出成形体の耐熱性は、その用途に応じて有機過酸化物の含有量や成形温度等によって適宜調節することができる。例えば、家電用樹脂部品などの比較的高温に晒されないような部品として用いる場合においても、耐熱性を実用上80℃以上とすることが好ましく、90℃以上とすることがさらに好ましく、100℃以上とすることが最も好ましい。なお耐熱性が100℃以上の場合には、自動車樹脂部品として用いることができる。
以上の実施形態によって発揮される作用、効果につき、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物では、前述のポリ乳酸樹脂100質量部と、前記有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。このため、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差が少ない従来の方法と比べ、有機過酸化物の分解が促され、有機過酸化物が均一に分散される前に架橋反応が生じ、その架橋反応により分子の広がりがあまり大きくない架橋物と、架橋されない未架橋物とが混在した組成物が形成される。分子の広がりがあまり大きくない架橋物は分岐はしているものの、溶融時における絡み合いが少なく、適度な粘性が発現されると共に、結晶化を促進することができる。一方、未架橋物は粘性が低く、流動性に優れている。従って、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形に好適なレオロジー特性を発現することができ、欠損のない所望の射出成形体を得ることができる。
・ 本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物では、前述のポリ乳酸樹脂100質量部と、前記有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなるものである。このため、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差が少ない従来の方法と比べ、有機過酸化物の分解が促され、有機過酸化物が均一に分散される前に架橋反応が生じ、その架橋反応により分子の広がりがあまり大きくない架橋物と、架橋されない未架橋物とが混在した組成物が形成される。分子の広がりがあまり大きくない架橋物は分岐はしているものの、溶融時における絡み合いが少なく、適度な粘性が発現されると共に、結晶化を促進することができる。一方、未架橋物は粘性が低く、流動性に優れている。従って、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形に好適なレオロジー特性を発現することができ、欠損のない所望の射出成形体を得ることができる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.2〜2.4であり、さらに180℃における一軸伸長粘度の立ち上がりを示す歪硬化指数が0.12〜0.19である。このため、ポリ乳酸は分子量分布が狭くなると共に、歪硬化指数も小さくなり、一軸伸長時における高分子鎖同士の絡み合いが少なく、溶融状態が良好に保持される。従って、ポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形に一層好適なレオロジー特性を発揮することができる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物について、剪断速度243sec−1、引取速度12m/min及び190℃における溶融張力が5〜40mNであることにより、ポリ乳酸樹脂組成物は射出成形のための溶融樹脂の注入時や射出成形時におけるレオロジー特性を向上させることができる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物に結晶核剤を含有することにより、その結晶核剤を中心にして結晶化が一層促進され、射出成形体の耐熱性や機械的物性を向上させることができる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸樹脂100質量部と、前記有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することにより製造される。従って、前記の効果を奏するポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂及び有機過酸化物の種類と含有量を決め、溶融混練温度を従来よりも高く設定するだけで、簡便に、しかも効率良く製造することができる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸樹脂100質量部と、前記有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することにより製造される。従って、前記の効果を奏するポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂及び有機過酸化物の種類と含有量を決め、溶融混練温度を従来よりも高く設定するだけで、簡便に、しかも効率良く製造することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
各例における各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
(1)メルトフローレート
JISK7210に基づくメルトフロー測定装置(メルトフローインデクサー、東洋精機製作所(株)製、TYPEC−5059D)を用い、シリンダー温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレート(g/10min)を測定した。
(2)数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、(株)島津製作所製)を用い、溶出液をクロロホルム、カラム温度を40℃として、標準ポリスチレン換算により求めた。
(3)有機過酸化物の分解開始温度
ステンレス鋼製の密封型試料容器に、約1mgの有機過酸化物を入れ、走査型示差熱量計(DSC、(株)エスアイアイナノテクノロジーズ製、DSC6200)にセットし、10℃/minの加熱温度で加熱し、分解を開始する温度(℃)を測定した。
(4)歪硬化指数
幅10mm、長さ55mm及び厚さ2mmの試験片を、一軸伸長粘度測定装置(RME、(株)レオメトリックス製)を用い、測定温度180℃、歪速度1.0及び0.5sec−1の条件で、各歪速度における時間t(sec)の対数と一軸伸長粘度η(Pa・s)の対数との関係をグラフ化した。その測定結果の一例を図1に示した。
各例における各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
(1)メルトフローレート
JISK7210に基づくメルトフロー測定装置(メルトフローインデクサー、東洋精機製作所(株)製、TYPEC−5059D)を用い、シリンダー温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレート(g/10min)を測定した。
(2)数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、(株)島津製作所製)を用い、溶出液をクロロホルム、カラム温度を40℃として、標準ポリスチレン換算により求めた。
(3)有機過酸化物の分解開始温度
ステンレス鋼製の密封型試料容器に、約1mgの有機過酸化物を入れ、走査型示差熱量計(DSC、(株)エスアイアイナノテクノロジーズ製、DSC6200)にセットし、10℃/minの加熱温度で加熱し、分解を開始する温度(℃)を測定した。
(4)歪硬化指数
幅10mm、長さ55mm及び厚さ2mmの試験片を、一軸伸長粘度測定装置(RME、(株)レオメトリックス製)を用い、測定温度180℃、歪速度1.0及び0.5sec−1の条件で、各歪速度における時間t(sec)の対数と一軸伸長粘度η(Pa・s)の対数との関係をグラフ化した。その測定結果の一例を図1に示した。
一方、同サンプルをレオメーター(ARES、TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定温度180℃、角速度0.04rad/sの条件で、時間t(sec)と溶融粘度ηL(Pa・s)を測定した。この溶融粘度ηL(Pa・s)を3倍し、時間t(sec)と3ηL(Pa・s)(以下、規定粘度と表す)との関係を示す曲線Mを図1の実線に示した。
図1から、例えばある時間t1(sec)における歪速度0.5sec−1での一軸伸長粘度η1(Pa・s)と、t1(sec)における規定粘度3ηL1(Pa・s)との比λn=η1/3ηL1を計算する。また、時間t1(sec)における歪ε1〔=歪速度0.5(sec−1)×時間t1(sec)〕を計算した。
以上の結果を、各歪速度(1.0及び0.5sec−1)、各時間から計算した歪εを横軸に、その際のλnの対数を縦軸にとり、グラフ化した。この関係より得られた直線Lの傾きαを最小二乗法で計算し、歪硬化指数とした。その測定結果の一例を図2に示した。
(5)溶融張力
JISK7199に基づく流れ特性試験装置(キャピログラフ、東洋精機製作所(株)製)を用い、シリンダー下部に直径1mm、長さ10mmのオリフィス部を設けた。シリンダー温度を190℃に設定した後、ポリ乳酸樹脂組成物をシリンダー内に投入して溶融させた。ピストンを20mm/min(剪断速度243sec−1)の速度で押し下げたときの溶融物を、張力検出プーリーを通過させて送りロールに導き、引取速度12m/minで巻き取った際の溶融張力を測定した。
(6)射出成形体の耐熱性(低荷重たわみ温度)
射出成形装置(日精樹脂工業(株)、ES600)を用い、JIS1号試験片(2個取り、Zランナー)の金型を用いて射出成形を行い(成形温度200℃、金型温度110℃)、JIS1号試験片の四角柱部分を切り出し、幅10mm、長さ80mm及び厚さ4mmの試験片を作製した。荷重たわみ温度試験装置(東洋精機製作所(株)製)を用い、上記試験片を支点間距離64mmの治具の上に置き、上部中央部に0.45MPaの圧力を加えた状態で、伝熱媒体中に浸した。伝熱媒体を2℃/minで室温から200℃まで昇温させ、たわみ量が0.34mmになったときの伝熱媒体の温度(℃)を求め、それを低荷重たわみ温度とした。
(5)溶融張力
JISK7199に基づく流れ特性試験装置(キャピログラフ、東洋精機製作所(株)製)を用い、シリンダー下部に直径1mm、長さ10mmのオリフィス部を設けた。シリンダー温度を190℃に設定した後、ポリ乳酸樹脂組成物をシリンダー内に投入して溶融させた。ピストンを20mm/min(剪断速度243sec−1)の速度で押し下げたときの溶融物を、張力検出プーリーを通過させて送りロールに導き、引取速度12m/minで巻き取った際の溶融張力を測定した。
(6)射出成形体の耐熱性(低荷重たわみ温度)
射出成形装置(日精樹脂工業(株)、ES600)を用い、JIS1号試験片(2個取り、Zランナー)の金型を用いて射出成形を行い(成形温度200℃、金型温度110℃)、JIS1号試験片の四角柱部分を切り出し、幅10mm、長さ80mm及び厚さ4mmの試験片を作製した。荷重たわみ温度試験装置(東洋精機製作所(株)製)を用い、上記試験片を支点間距離64mmの治具の上に置き、上部中央部に0.45MPaの圧力を加えた状態で、伝熱媒体中に浸した。伝熱媒体を2℃/minで室温から200℃まで昇温させ、たわみ量が0.34mmになったときの伝熱媒体の温度(℃)を求め、それを低荷重たわみ温度とした。
次に、実施例及び比較例に用いた原料を以下に示す。
ポリ乳酸樹脂A:三井化学(株)製、商品名「レイシアH100」、L体の光学純度98%、メルトフローレート11、数平均分子量(Mn)72,000、質量平均分子量(Mw)150,000、分散度(Mw/Mn)2.1
ポリ乳酸樹脂B:ユニチカ(株)製、商品名「テラマックTE4000」、L体の光学純度98%、メルトフローレート15、数平均分子量(Mn)62,000、質量平均分子量(Mw)130,000、分散度(Mw/Mn)2.1
有機過酸化物a(分解開始温度=130℃):t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルI」、工業純品)
有機過酸化物b(分解開始温度=136℃):t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルE」、工業純品)
有機過酸化物c(分解開始温度=105℃):ジベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名「ナイパーBW」、濃度75%)
有機過酸化物d(分解開始温度=126℃):t−ブチルペルオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルZ」、工業純品)
有機過酸化物e(分解開始温度=151℃):ジクミルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名「パークミルD」、工業純品)
タルク:日本タルク(株)製、商品名「ミクロエースP−6」
分散剤:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(伊藤製油(株)、商品名「ITOHWAXJ−530」)
(実施例1)
ポリ乳酸樹脂A100質量部と有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)0.4質量部(純分換算)をドライブレンドし、230℃に設定された二軸押出機(池貝化成(株)製、PCM−30、長さL900mm、直径D30mm、L/D=30)にて約2分間溶融混練し、口金よりストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーにて切断し、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量と歪硬化指数及び溶融張力を測定し、その結果を表1に示した。
ポリ乳酸樹脂A:三井化学(株)製、商品名「レイシアH100」、L体の光学純度98%、メルトフローレート11、数平均分子量(Mn)72,000、質量平均分子量(Mw)150,000、分散度(Mw/Mn)2.1
ポリ乳酸樹脂B:ユニチカ(株)製、商品名「テラマックTE4000」、L体の光学純度98%、メルトフローレート15、数平均分子量(Mn)62,000、質量平均分子量(Mw)130,000、分散度(Mw/Mn)2.1
有機過酸化物a(分解開始温度=130℃):t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルI」、工業純品)
有機過酸化物b(分解開始温度=136℃):t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルE」、工業純品)
有機過酸化物c(分解開始温度=105℃):ジベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名「ナイパーBW」、濃度75%)
有機過酸化物d(分解開始温度=126℃):t−ブチルペルオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、商品名「パーブチルZ」、工業純品)
有機過酸化物e(分解開始温度=151℃):ジクミルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名「パークミルD」、工業純品)
タルク:日本タルク(株)製、商品名「ミクロエースP−6」
分散剤:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(伊藤製油(株)、商品名「ITOHWAXJ−530」)
(実施例1)
ポリ乳酸樹脂A100質量部と有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)0.4質量部(純分換算)をドライブレンドし、230℃に設定された二軸押出機(池貝化成(株)製、PCM−30、長さL900mm、直径D30mm、L/D=30)にて約2分間溶融混練し、口金よりストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーにて切断し、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量と歪硬化指数及び溶融張力を測定し、その結果を表1に示した。
また、得られたペレットを80℃で真空乾燥し、射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)によってJIS1号試験片を得、耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、その結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から0.1質量部に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から1質量部(純分換算)に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物b(分解開始温度=136℃)に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例5)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物c(分解開始温度=105℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を200℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例6)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物d(分解開始温度=126℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を230℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例7)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物e(分解開始温度=151℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を245℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から0.1質量部に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から1質量部(純分換算)に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物b(分解開始温度=136℃)に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例5)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物c(分解開始温度=105℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を200℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例6)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物d(分解開始温度=126℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を230℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例7)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)を有機過酸化物e(分解開始温度=151℃)に変更し、二軸押出機の設定温度を245℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表1に示した。
実施例1において、二軸押出機の設定温度を230℃から205℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(実施例9)
実施例1において、二軸押出機の設定温度を200℃から220℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(実施例10)
実施例1において、さらにタルクを1質量部、分散助剤を1質量部追加添加した以外は同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(実施例11)
実施例1において、ポリ乳酸樹脂Aをポリ乳酸樹脂Bに変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(比較例1)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から0.05質量部に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(比較例2)
実施例1において、有機過酸化物a(分解開始温度=130℃)の配合量を、0.4質量部(純分換算)から1.2質量部に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(比較例3)
実施例1において、二軸押出機の設定温度を230℃から200℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
(比較例4)
実施例1において、二軸押出機の設定温度を230℃から255℃に変更した以外は同様の方法で、射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットの分子量、歪硬化指数、溶融張力及び射出成形(成形温度210℃、金型温度110℃及び冷却時間90秒)で得られたJIS1号試験片の耐熱性(低荷重たわみ温度)を測定し、それらの結果を表2に示した。
また、実施例8、1及び9では、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差がそれぞれ75、100、120℃であるのに対し、比較例3及び4では、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差がそれぞれ70、125℃であった。このため、有機過酸化物の分解開始温度と溶融混練温度との差が特定の温度範囲で溶融混練する実施例8、1及び9においては、特定の温度範囲以外の温度で溶融混練した比較例3及び4と比較して、射出成形に好適なレオロジー特性を有し、耐熱性に優れる射出成形体を短時間で得ることができた。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 有機過酸化物として、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類を2種類以上適宜組合せて使用することもできる。
・ 有機過酸化物として、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類を2種類以上適宜組合せて使用することもできる。
・ 有機過酸化物として、分解開始温度の異なるものを複数種類組合せて使用し、溶融混練する温度を調整することもできる。
・ ポリ乳酸樹脂、有機過酸化物、結晶核剤、架橋助剤などの原料の所定量をそれぞれ別個に溶融混練装置に投入することができるほか、原料を予めニーダーなどでコンパウンド化したものを溶融混練装置に投入することもできる。
・ ポリ乳酸樹脂、有機過酸化物、結晶核剤、架橋助剤などの原料の所定量をそれぞれ別個に溶融混練装置に投入することができるほか、原料を予めニーダーなどでコンパウンド化したものを溶融混練装置に投入することもできる。
・ ポリ乳酸樹脂組成物に、変性ポリウレタン樹脂、変性ポリアクリル樹脂などの粘度調整剤や増粘剤などを配合し、ポリ乳酸樹脂組成物のレオロジー特性を調整することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする射出成形体。このように構成した場合、射出成形体を家電用や自動車用の樹脂部品などの耐熱性や機械的物性が要求される部品として好適に利用することができる。
・ 請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする射出成形体。このように構成した場合、射出成形体を家電用や自動車用の樹脂部品などの耐熱性や機械的物性が要求される部品として好適に利用することができる。
・ さらに分散剤を含有することを特徴とする請求項4に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物。このように構成した場合、請求項4に係る発明の効果に加え、結晶核剤の分散性を向上させることができる。
α…歪硬化指数。
Claims (5)
- 光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート類、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練してなることを特徴とする射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物。
- 示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィによる数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とから算出される分散度(Mw/Mn)が2.2〜2.4であり、さらに180℃における一軸伸長粘度の立ち上がりを示す歪硬化指数が0.12〜0.19であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物。
- 剪断速度243sec−1、引取速度12m/min及び190℃における溶融張力が5〜40mNであることを特徴とする請求項2に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物。
- さらに結晶核剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、光学純度が97%以上でかつ190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜40g/10minであるポリ乳酸樹脂100質量部と、ペルオキシモノカーボネート、芳香族系ジアシルペルオキシド類、芳香族系ジアルキルペルオキシド類及び芳香族系ペルオキシエステル類から選択される少なくとも1種の有機過酸化物0.1〜1質量部とを、該有機過酸化物の走査型示差熱量計を用いた10℃/minの昇温過程での分解開始温度よりも75〜120℃高い温度で溶融混練することを特徴とする射出成形用ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
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