JP2019183098A - 改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂発泡シート - Google Patents

改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂発泡シート Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性に優れ、再利用しやすいポリ乳酸樹脂を提供すること。【解決手段】有機過酸化物でポリ乳酸樹脂を改質し、しかも、有機過酸化物を特定の割合で用いる。【選択図】 図1

Description

本発明は、改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂発泡シートに関する。
従来、ポリエステル樹脂発泡体は、軽量で緩衝性に優れており、しかも、多様な形状に成形加工することが容易であるため包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
近年、山野、河川、或いは、海岸といった場所において不法に投棄された包装材で景観が損なわれるといった問題への対策が求められるようになってきている。
このようなことを背景として自然環境において生分解され得るポリ乳酸樹脂を使って成形品を作製することが検討されており、ポリ乳酸樹脂発泡体を種々の用途に展開することが検討されている(下記特許文献1参照)。
特開2015−218327号公報
上記のようなポリ乳酸樹脂発泡体の形成には、溶融張力がある程度大きい樹脂の方が有利である。
そのため、ポリ乳酸樹脂を改質して分岐構造を付与することが、従来、検討されている。
しかしながら、そのような改質が施されたポリ乳酸樹脂は、熱安定性が不十分となる場合がある。
そうすると、ポリ乳酸樹脂をリサイクルして再利用することが難しくなる。
そこで本発明は、熱安定性に優れたポリ乳酸樹脂を提供し、ひいては、リサイクルし易いポリ乳酸樹脂を提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、所定の改質方法でポリ乳酸樹脂を改質させることで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
上記課題を解決すべく本発明は、
ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させてポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含む改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法であって、
前記ラジカル開始剤が有機過酸化物であり、前記改質工程では、前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記有機過酸化物を0.1質量部以上2質量部以下の割合で用い、
前記改質されたポリ乳酸樹脂は、
前記改質工程を終えた時点における190℃での溶融張力が5cN以上40cN以下で、該溶融張力を「MT0」(cN)とし、前記改質工程を終えた後、190℃での溶融混練を1度実施した後の前記溶融張力を「MT1」(cN)としたときに下記式(B1)によって求められる溶融張力一次変化率が0%以上60%以下である改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法を提供する。

溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
上記課題を解決すべく本発明は、
190℃での溶融張力が5cN以上40cN以下で、該溶融張力を「MT0」(cN)とし、190℃での溶融混練を1度実施した後の前記溶融張力を「MT1」(cN)としたときに下記式(B1)によって求められる溶融張力一次変化率が0%以上60%以下であるポリ乳酸樹脂を提供する。

溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
上記課題を解決すべく本発明は、上記のようなポリ乳酸樹脂を含むポリ乳酸樹脂発泡シートを提供する。
本発明によれば熱安定性に優れたポリ乳酸樹脂を提供し得る。
ポリ乳酸樹脂の分子量分布を示した概略図。 ポリ乳酸樹脂の分子量分布を示した概略図。 発泡シートの製造装置の構成を示す概略図。 発泡成形品である折箱を示した概略斜視図。 改質されたポリ乳酸樹脂を用いて作製した押出発泡シートの断面(MD方向に沿って切断した断面)のSEM写真。 改質されたポリ乳酸樹脂を用いて作製した押出発泡シートの断面(TD方向に沿って切断した断面)のSEM写真。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
以下においては、ポリ乳酸樹脂発泡体が押出発泡シートである場合を主たる例として本発明について説明する。
本実施形態のポリ乳酸樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」などともいう)は、上記のように押出発泡シートである。
即ち、本実施形態の発泡シートは、ポリ乳酸樹脂と該ポリ乳酸樹脂を発泡状態にさせるための成分とが押出機で溶融混練された後に押出機の先端に装着されたダイを通じて大気中に押出されることによって作製されたものである。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。
前記共重合体での他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
前記モノマーは、例えば、多官能多糖類などであってもよい。
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸は、L−体とD−体とのいずれか一方でも両方であってもよい。
即ち、前記単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L−乳酸)樹脂、ポリ(D−乳酸)樹脂、及び、ポリ(DL−乳酸)樹脂の内のいずれであってもよい。
前記共重合体を構成する脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸は、無水物であってもよい。
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
前記共重合体を構成する乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
前記多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロール、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムなどが挙げられる。
本実施形態におけるポリ乳酸樹脂は、分子中に乳酸(L−体及びD−体)に由来する構造部分が50質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。
前記構造部分(L−体及びD−体)の含有量は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、190℃での溶融張力測定や同温度での伸長粘度測定において特定の特性値を示すものである。
具体的には、ポリ乳酸樹脂は、190℃での溶融張力測定において5cN以上40cN以下の溶融張力を示す。
ポリ乳酸樹脂の前記溶融張力は、39cN以下であることが好ましく、37cN以下であることがより好ましく、35cN以下であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記溶融張力は、8cN以上であることが好ましく、10cN以上であることがより好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、溶融張力が5cN以上であることにより、発泡時の破泡を抑制することができる。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、溶融張力が40cN以下であることにより、発泡時に気泡膜が良好な伸びを示して破泡を抑制することができる。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、発泡時の破泡が抑制されることで高い発泡倍率で発泡させても連続気泡率が高くなり難く、外観も良好なものとなり得る。
190℃での溶融張力測定は、ツインボアキャピラリーレオメーターRheologic5000T(チアスト(CEAST)社製)を用いて以下のようにして測定できる。
(溶融張力測定方法)
各試料は80℃、5時間真空乾燥後、測定直前まで密閉してデシケータに保存する。
試験温度190℃に加熱された径15mmのバレルに測定試料樹脂を充填後、5分間予熱したのち、上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(0.07730mm/s)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて、その巻取り速度を初速4.0mm/s、加速度12mm/s2で徐々に増加させつつ巻き取っていき、紐状物が切断する直前の極大値と極小値の平均を試料の溶融張力とする。
なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力とする。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、190℃での伸長粘度測定において破断点での伸長粘度が0.5MPa・s以上となるものである。
ポリ乳酸樹脂の前記伸長粘度は、0.55MPa・s以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記伸長粘度は、1MPa・s以下であることが好ましく、0.9MPa・s以下であることがより好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、190℃での伸長粘度測定では、伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しない。
190℃での伸長粘度測定は、レオテンス装置で測定することができ、以下のようにして測定することができる。
(レオテンスによる伸長粘度の測定)
本明細書中での「伸長粘度の測定」とは、伸長粘度を測定できる装置を用いた伸長粘度の測定をいい、以下に限定されるものではないが、例えば、ゴットフェルト(Gottfert)社のレオテンス(Rheotens71.97)を用いて測定ができる。
伸長粘度の測定は、各試料に合わせた最適な条件に調整して実施するが、例えば下記の条件にて実施できる。
(測定条件例)
試料を事前に80℃、5時間真空乾燥する。
キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)にレオテンスを設置する。
レオテンスは、キャピログラフ1Dのダイ出口から測定部までが80mmとなるよう設置する。
尚、そのままでは干渉してしまい80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットする。
キャピログラフの測定条件を下記に設定する。
ダイス 直径 2.095mm、長さ 8mm、流入角度 90度(コニカル)
ピストン径 9.55mm
ピストンスピード 20mm/min
測定温度190℃
レオテンスの測定条件を下記のように設定する。
ホイール間 上 0.2mm、下 1.0mm
加速度 10mm/s2
引き取りスピード 初速 11.281mm/s
「横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフ」とは、上記測定結果から得られる伸長粘度を、伸長速度(引き取りスピードにより調整)によってグラフ化したものである。
「横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しない」とは、上記グラフにピークが現れないということである。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、伸長粘度の測定を行った際に、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しない。
そのことにより、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、高い引張強度を有する。
ポリ乳酸樹脂は、熱溶融時に適度な流動性を示すことが好ましくメルトマスフローレイト(MFR)が0.5g/10min以上であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂のMFRは、1.0g/10min以上であることがより好ましく、1.5g/10min以上であることがさらに好ましく、2.0g/10min以上であることが特に好ましい。
前記MFRは、20g/10min以下であることが好ましく、10g/10min以下であることがより好ましく、6.0g/10min以下であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、例えば、(株)東洋精機製作所製の「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定することができる。
MFRは、JIS K7210−1:2014「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方−第1部」B法記載のピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定することができる。
測定条件は、原則的に以下の通りとする。
試料:3〜8g
尚、測定用の試料は80℃、5時間真空乾燥し、乾燥後は測定直前まで密閉してデシケータに保存する。
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:190℃
試験荷重:2.16kg(21.18N)。
そして、試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
上記のような熱溶融特性は、ポリ乳酸樹脂に嵩高い分子構造を持たせることによって発揮させ得る。
前記ポリ乳酸樹脂は、質量平均分子量(Mw)が10万以上100万以下であることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は、50万以下であることがより好ましく、40万以下であることがさらに好ましく、35万以下であることがとりわけ好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、図1、2に示すように、分子量分布曲線において、最大ピークTPよりも高分子量側にショルダーSL又は別ピークSPを有することが好ましい。
即ち、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、最大ピークTPよりも高分子量側でショルダーSLや別ピークSPを発揮させる成分(以下「高分子量成分」ともいう)と、最大ピークTPを示している成分(以下「主ピーク成分」ともいう)とを含んでいる。
前記高分子量成分は、ポリ乳酸樹脂を熱溶融させた時に主ピーク成分と溶け合って発泡に適した溶融粘弾性を発揮させるのに有効な成分である。
このような効果を発揮させる上において主ピーク成分と高分子量成分とは別ピークSPとなるよりもショルダーSLとなる関係を有していることが好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、Z平均分子量(Mz)が50万以上であることが好ましく、60万以上であることがより好ましく、70万以上であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂のZ平均分子量(Mz)は、120万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、90万以下であることが特に好ましい。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、質量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比率(Mz/Mw)が2.5以上であることが好ましく、2.7以上であることがより好ましく、2.9以上であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記比率(Mz/Mw)は、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)やZ平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定することができ、ポリスチレン(PS)換算した値として求めることができる。
具体的には、ポリ乳酸樹脂の平均分子量は、下記の手順で求めることができる。
(平均分子量の求め方)
試料20mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1.0h)、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の質量平均分子量を求める。

使用装置=東ソー(株)製 「HLC−8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
<GPC測定条件>
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL−H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側=抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
検出器=RI検出器
注入量=50μL
測定時間=26min
サンプリングピッチ=500msec

検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」および「STANDARD SH−75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを各々2〜10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも各々3〜10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作製した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得、その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
前記の溶融特性や分子量分布を有するポリ乳酸樹脂は、市販のポリ乳酸樹脂を改質することによって得ることができる。
前記改質では、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたり、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたりすることができる。
ポリ乳酸樹脂の高分子量化には、カルボジイミドなどの鎖伸長剤などが用いられ得る。
また、鎖伸長剤による改質は、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物など、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に存在する水酸基やカルボキシル基と縮合反応させることが可能な官能基を1又は複数有する化合物を用いて行うことができる。
即ち、前記改質は、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物などを反応によってポリ乳酸樹脂に結合させる方法で実施することができる。
架橋や長鎖分岐によるポリ乳酸樹脂の改質は、例えば、ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させる方法などによって行うことができる。
上記の改質方法の中では、発泡シートに他の成分が含有することを抑制できる点においてポリ乳酸樹脂どうしをラジカル開始剤で反応させることが好ましい。
尚、適度な反応性を有するラジカル開始剤を使ってポリ乳酸樹脂どうしを反応させると、押出機内でのポリ乳酸樹脂の分解起点が前記ラジカル開始剤によって発生させたフリーラジカルによってアタックされ、当該箇所が架橋点(分岐点)となって安定化され得る。
ポリ乳酸樹脂は、このような改質がなされることで熱安定性が増して押出機を通過する際に低分子量化され難くなる。
ポリ乳酸樹脂の改質に用いられる前記ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、ハロゲン分子などが挙げられる。
これらの中では有機過酸化物が好ましい。
本実施形態で用いられる該有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、及び、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。
前記パーオキシエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、及び、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
前記ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、及び、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3等が挙げられる。
前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ブタン、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、及び、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
前記ケトンパーオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
前記有機過酸化物による改質では、改質後のポリ乳酸樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、当該有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれを有する。
このような問題を生じさせるおそれを抑制でき、ポリ乳酸樹脂を発泡に適した状態に改質することが容易である点において、前記有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。
また、パーオキシエステルの中でもポリ乳酸樹脂の改質に用いられる有機過酸化物は、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物であることが好ましい。
本実施形態においてポリ乳酸樹脂の改質に用いられる有機過酸化物は、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でもパーオキシモノカーボネート系有機過酸化物であることが好ましく、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることが特に好ましい。
上記のような有機過酸化物は、その分子量などにもよるが、通常、改質をするポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上の割合で用いられる。
有機過酸化物の使用量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。
有機過酸化物の使用量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましい。
このような割合で有機過酸化物を用いてポリ乳酸樹脂を改質することで改質後のポリ乳酸樹脂を発泡に適したものにすることができる。
上記のような有機過酸化物は、その使用量が0.1質量部以上とされることにより、ポリ乳酸樹脂に対して改質による効果をより確実に発揮させ得る。
また、有機過酸化物は、その使用量が2.0質量部以下とされることで、改質後のポリ乳酸樹脂にゲルが混在することを抑制し得る。
上記のようなポリ乳酸樹脂を発泡シートとする際に用いられる発泡のための成分としては、発泡剤や気泡調整剤などが挙げられる。
前記発泡剤としては、一般的なものを採用することができ、常温(23℃)、常圧(1気圧)において気体となる揮発性発泡剤や、熱分解によって気体を発生させる分解型発泡剤を採用することができる。
前記揮発性発泡剤としては、例えば不活性ガス、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等が採用可能である。
前記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が挙げられ、前記脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。
本実施形態においては、上記の中でも特にノルマルブタンやイソブタンが好ましく用いられ得る。
前記分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウム又はクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物などが挙げられる。
前記気泡調整剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、タルク、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。
尚、前記分解型発泡剤は、揮発性発泡剤と併用することで発泡状態を調整することができ、気泡調整剤としても用いることができる。
本実施形態の発泡シートは、前記の通り押出発泡シートである。
従って、本実施形態の発泡シートは、通常、前記ポリ乳酸樹脂、前記発泡剤、及び、前記気泡調整剤を含む樹脂組成物(以下「ポリ乳酸樹脂組成物」ともいう)を押出発泡させることにより形成される。
前記ポリ乳酸樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
該添加剤としては、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂、無機フィラー、及び、各種薬剤などが挙げられる。
前記薬剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤等が挙げられる。
尚、これらの添加剤の割合は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態における発泡シートは、二軸押出機などを使ってポリ乳酸樹脂を改質する工程(改質工程)と、改質されたポリ乳酸樹脂を含むポリ乳酸樹脂組成物をサーキュラーダイを先端に装着した押出機を通じて押出発泡させる工程(押出発泡工程)とを実施して作製することができる。
前記改質工程では、例えば、造粒ダイ(ホットカットダイ)を装着した二軸押出機を使って改質されたポリ乳酸樹脂を直後にペレット化するようにしてもよい。
前記改質工程で用いる二軸押出機には、ストランドダイやTダイを装着し、前記改質工程では改質されたポリ乳酸樹脂によるストランドやシートを作製し、その後、ストランドやシートをカットして造粒する工程を別途実施してもよい。
尚、要すれば、タンデム押出機を用いて改質工程に連続して押出発泡工程を実施するようにしてもよい。
例えば、本実施形態での押出発泡工程は、図3に示したような装置を用いて実施することができる。
図3に例示の装置は、タンデム押出機10と、タンデム押出機10において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。
さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻取りローラ22が備えられている。
前記タンデム押出機10の上流側の押出機(以下「第1押出機10a」ともいう)には、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11と、炭化水素などの発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。
この第1側押出機10aの下流側には、発泡剤を含んだポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練するための押出機(以下「第2押出機10b」ともいう)が備えられている。
このような装置にて押出発泡工程を実施する場合、第1押出機10aでポリ乳酸樹脂の改質を実施し、第1押出機10aの末端部又は第2押出機10bの基端部において発泡剤などを混合して発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂組成物を調製し、前記サーキュラーダイCDから押出発泡を行うようにしてもよい。
本実施形態の発泡シートは、熱溶融時に前記のような特性を示すことから、優れた強度を有するものとなる。
前記押出発泡工程では、サーキュラーダイCDから吐出される直前に溶融混練物中に発泡剤による微小気泡が発生し、溶融混練物がサーキュラーダイCDから吐出されて圧力が解放された瞬間に前記微小気泡が一気に拡大するとともに溶融混練物中に溶存していた発泡剤によって新たな気泡が発生する。
そして、押出された発泡シートは、マンドレルMDでの拡径によって周方向に延伸を受けるとともに巻取りローラ22での巻取りによって押出方向にも延伸を受ける。
上記のような押出発泡工程において、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、安易な形で伸びてしまうことがなく、気泡膜が過度に薄くなってしまい難い。
即ち、本実施形態の発泡シートでは、前記のようなポリ乳酸樹脂を含む気泡膜が発泡剤による発泡力で延伸される際に一定以上の抵抗力を発揮する。
また、本実施形態の発泡シートでは、気泡膜の中央部が薄く周縁部が厚い状態になり易い。
そのため、本実施形態の発泡シートは、この厚い気泡膜が3次元的にシート全体にわたって連結された状態になることで優れた機械的特性を発揮する。
尚、本実施形態の発泡シートは、発泡時において破泡が生じ、気泡膜に穴が開いてしまった場合においても、穴を取り囲む気泡膜がそのままの状態になるのではなく、縮んで強度の発揮に有効な形で厚みを増すため、ある程度の割合で連続気泡を有していても優れた強度が発揮され得る。
本実施形態の発泡シートは、上記のような生分解性を勘案すると、連続気泡率が10%以上であることが好ましい。
発泡シートの連続気泡率は、15%以上であることがより好ましい。
発泡シートの連続気泡率は、発泡シートに優れた強度を発揮させる上において、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
発泡シートの発泡倍率は、優れた軽量性を発揮させる上において、3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることが特に好ましい。
発泡シートの発泡倍率は、優れた強度を発揮させる上において、15倍以下であることが好ましく、12倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることが特に好ましい。
発泡シートの連続気泡率は、以下に示した方法によって測定することができる。
(連続気泡率)
発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求める。
次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を使用して、1−1/2−1気圧法により測定用試料の体積(cm3)を求める。
これらの求めた値と下記式とにより連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求める。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で行う。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc 小8.5cc)にて補正を行う。

連続気泡率(%)=100×(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積
発泡シートの発泡倍率は、発泡シートの見掛け密度(ρ1)を求め、発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度(真密度:ρ0)を求め、該真密度(ρ0)を前記見掛け密度(ρ1)で除して求めることができる。
即ち、発泡倍率は、下記の式を計算して求めることができる。

発泡倍率=真密度(ρ0)/見掛け密度(ρ1)
前記発泡シートの密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチックおよびゴム−見掛け密度の測定」に記載される方法によって求めることができ、具体的には下記のような方法で測定することができる。
(密度測定方法)
発泡シートから、100cm3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出する。

見掛け密度(g/cm3)=試料の質量(g)/試料の体積(cm3

なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
ポリ乳酸樹脂組成物の密度は、発泡シートを熱プレスするなどして非発泡体化した試料に対してアルキメデス法(JIS K8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」の液中ひょう量法)に基づく測定を実施して求めることができる。
本実施形態の発泡シートは、例えば、発泡倍率が3〜8倍程度の発泡状態において、所定の強度を有することが好ましい。
具体的には、発泡シートは、長手方向が押出方向となるように採取した試料に対して引張試験を実施した際に、引張強さが5.5MPa以上であることが好ましく、6MPa以上であることがより好ましく、6.5MPa以上であることが特に好ましい。
発泡シートの引張強さの上限は特に定められる必要はないが、発泡シートの引張強さは、通常、25MPa以下の値となる。
発泡シートの引張強さは、JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定することができる。
すなわち、(株)オリエンテック製「テンシロンUCT−10T」万能試験機、ソフトブレーン(株)製「UTPS−458X」万能試験機データ処理を用いて、引張速度500mm/min、つかみ具間隔は100mm、試験片はダンベル形タイプ1(ISO1798規定)、厚み1.0〜1.5mmで前記引張強さを測定する。
但し伸びはつかみ具間の試験前と切断時の距離から算出する。
試験片の数は5個とし、試験片をJIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定を行う。
引張強さは次式により算出する。
T=F/(W × t)

T:引張強さ(MPa)
F:切断にいたるまでの最大荷重(N)
W:試験片の幅(mm)
t:試験片の厚さ(mm)
本実施形態の発泡シートは、ポリ乳酸樹脂が前記のような分子量分布を示すことで、ゲルのような熱溶融時における挙動が他と異なる成分によって“ブツ”などと称される微小突起や気泡膜の破れが生じることを抑制できる。
本実施形態の発泡シートは、各種のシート成形品の原材料とすることができる。
発泡シートは、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形、プレス成形、マッチモールド成形などの熱成形によって3次元的な形状を付与して容器などの発泡成形品(例えば、トレー、丼、カップなど)とすることができる。
また、発泡シートは、平板状のまま、折箱などの発泡成形品の形成材料とすることもできる。
即ち、発泡シートは、図4に示すように折箱100の底板101、側壁枠102、蓋板103、などの形成材料とすることができる。
本実施形態では、発泡シートを作製する際に生じる製品外のシート(発泡シートが設定通りの発泡状態になるまでに押出発泡されて製品にはならなかった部分の発泡シート)や上記のような成形品を作製する際に生じる端材などをリペレット化してリサイクル材として再利用することが望ましい。
そこで、本実施形態で発泡シートの原材料として用いるポリ乳酸樹脂は、初期状態で測定されるMFR(190℃、2.16kg)を「MFR0(g/10min)」とし、190℃で1度溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR1(g/10min)」とし、この溶融混練された後に190℃で再び溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR2(g/10min)」とし、3度190℃で溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR3(g/10min)」としたときに、下記式(A1)で表される「MFR一次変化率」の値が25%以下であることが好ましい。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(A2)で表される「MFR二次変化率」の値が40%以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(A3)で表される「MFR三次変化率」の値が55%以下であることが好ましい。

MFR一次変化率=(MFR1−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A1)
MFR二次変化率=(MFR2−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A2)
MFR三次変化率=(MFR3−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A3)
前記MFR一次変化率は、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
前記MFR二次変化率は、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
前記MFR三次変化率は、52%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態で発泡シートの原材料として用いるポリ乳酸樹脂は、初期状態で測定される溶融張力(at190℃)を「MT0(cN)」とし、190℃で1度溶融混練された後に測定される前記溶融張力を「MT1(cN)」とし、この溶融混練された後に190℃で再び溶融混練された後に測定される前記溶融張力を「MT2(cN)」とし、3度190℃で溶融混練された後に測定される前記溶融張力を「MT3(cN)」としたときに、下記式(B1)で表される「溶融張力一次変化率」の値が60%以下であることが好ましい。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(B2)で表される「溶融張力二次変化率」の値が70%以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(B3)で表される「溶融張力三次変化率」の値が80%以下であることが好ましい。

溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
溶融張力二次変化率=(MT0−MT2)/MT0×100[%]・・・(B2)
溶融張力三次変化率=(MT0−MT3)/MT0×100[%]・・・(B3)
前記溶融張力一次変化率は、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
前記溶融張力二次変化率は、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることがさらに好ましい。
前記溶融張力三次変化率は、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
尚、MFR一次変化率、MFR二次変化率、及び、MFR三次変化率のそれぞれの値の下限値は、通常、0%である。
また、溶融張力一次変化率、溶融張力二次変化率、及び、溶融張力三次変化率のそれぞれの値の下限値は、通常、0%である。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、溶融張力一次変化率が60%以下であることで、リサイクル材の利用拡大を図ることができる。
また、溶融張力二次変化率や溶融張力三次変化率が上記のような範囲にあることで、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、リサイクル材の利用をさらに拡大させ得る。
即ち、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、熱履歴による特性変化が少ないためバージン材(改質前の市販ペレット)に添加してもその特性を大きく低下させるおそれが低い。
また、発泡シートを製造する際の原料の一部にリサイクル材を用いても、押出条件などを大きく変更することなく良質な発泡シートを作製することができる。
このようなことから本実施形態のポリ乳酸樹脂や発泡シートは、より環境に優しい製品づくりを可能にさせ得る。
上記における「190℃で『溶融混練』がされた後の状態」とは、原則的に、二軸押出機によって押出した後の状態を意味する。
より詳しくは、口径が30mmの二軸押出機(L/D=42)を用い、二軸押出機の温度設定を、押出方向上流側から下流側に向かって、順に160℃、200℃、それ以降の温度を190℃に設定し、回転数140rpmの条件にて二軸押出機中で、溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数2個のダイから、10kg/hの吐出量で、この「二軸押出機」を通過させた後の状態を本明細書では「190℃で『溶融混練』がされた後の状態」として定めている。
なお、MFRや溶融張力の測定は、上記のように設定された「二軸押出機」にポリ乳酸樹脂を供給してストランド状に押出させ、このストランド状の試料を20℃の水を入れた1.5mの水槽中を通過させて冷却し、冷却された試料を切断してペレットを作製して求めることができる。
より詳しくは、このペレットのMFRや溶融張力を測定することで、ポリ乳酸樹脂の190℃で溶融混練がされた後のMFRや溶融張力の値を測定することができる。
上記の「190℃で『溶融混練』がされた後の状態」は、二軸押出機の用意ができないような場合、二軸押出機に代えて株式会社 東洋精機製作所製「ラボプラストミル(商品名)」を使って再現できる。
より詳しくは、東洋精機製作所製の「ラボプラストミル」の本体(型式:4M150)に、単軸押出機(型式:D2020(口径:20mm、L/D:20 備え付けの標準スクリュー(1条フルフライト))を取り付け、単軸押出機の3ゾーンの温度を、押出し方向上流側から下流側に向かって、順に190℃、190℃、190℃に設定し、且つ、先端金型温度を190℃に設定するとともに吐出量が1kg/hとなるようにスクリューの回転数を固定し、この「ラボプラストミル」を通過させることでポリ乳酸樹脂を「190℃で『溶融混練』がされた後の状態」とすることができる。
なお、ポリ乳酸樹脂の各種特性は、上記のように設定された「ラボプラストミル」にポリ乳酸樹脂を供給してストランド状に押出させ、このストランド状の試料を20℃の水を入れた1mの水槽中を通過させて冷却し、冷却された試料を切断して4mm程度の長さの棒状ペレットを作製して求めることができる。
より詳しくは、この棒状ペレットを溶融張力やMFRの測定試料とすることができる。
本実施形態の発泡シートは、使用されるポリ乳酸樹脂に上記のような熱安定性が発揮されることから原材料として用いるポリ乳酸樹脂の一部をリサイクル材としてもよい。
即ち、発泡シートの原材料には、押出機を1回以上通過したポリ乳酸樹脂組成物を含有させてもよい。
ポリ乳酸樹脂発泡シート、ポリ乳酸樹脂発泡シートが熱成形されてなる発泡成形品、及び、該発泡成形品を製造する際に生じた端材の内の少なくとも1つを含むリサイクル材は、発泡シートを環境に優しい製品とする上において、発泡シートの原材料中に含まれる全てのポリ乳酸樹脂に占める質量割合が1%以上となるように発泡シートに含有させることが好ましく、5%以上となるように発泡シートに含有させることがより好ましい。
但し、リサイクル材は、発泡シートの物性を良好なものとする上において、前記質量割合が25%以下となるように発泡シートに含有させることが好ましく、20%以下となるように発泡シートに含有させることがより好ましい。
リサイクル材は、そのままの状態で発泡シートの原材料としても、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートなどによって改質を行ってから発泡シートの原材料としてもよい。
リサイクル材に改質を行う場合、リサイクル材とバージン材とを混合して二軸押出機などの溶融混練装置に供給し、該溶融混練装置でバージン材とともに改質することが好ましい。
前記改質工程で、改質するポリ乳酸樹脂の一部をリサイクル材とすると改質されたポリ乳酸樹脂に前記のような熱溶融特性を付与することが容易になるという利点を有する。
前記リサイクル材の利用は、ポリ乳酸樹脂発泡体を作製する際に当該ポリ乳酸樹脂発泡体を低い見掛け密度とし且つ粗い気泡が少ない緻密な発泡状態とするのにも有効である。
なかでも、前記リサイクル材の利用は、押出発泡シートの気泡を細かくするのに有効である。
リサイクル材を用いることで気泡が細かくなる理由は、定かではないが、改質されたポリ乳酸樹脂(mPLA)を使ってポリ乳酸樹脂発泡体を作製する過程において、改質されたポリ乳酸樹脂に含まれている未反応成分や分解生成物などの比較的低分子量の成分が加熱されることによってポリ乳酸樹脂に結合したり、発泡剤ガスとともに揮発除去されたりすることが原因であるとみられる。
リサイクル材を用いた発泡シートは、平均気泡径が500μm以下であることが好ましい。
該平均気泡径は、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、250μm以下であることがとりわけ好ましい。
該平均気泡径は、通常、50μm以上である。
尚、リサイクル材が用いられていない発泡シートについても、平均気泡径が上記のような値であることが好ましい。
発泡シートの平均気泡径は、以下のようにして求めることができる。
発泡シートの幅方向中央部からMD方向(押出方向)、及び、TD方向(押出方向と直交するシートの幅方向)に沿って発泡シートの表面に垂直に切リ出した断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、30〜100倍に拡大して撮影する。
このとき、顕微境画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影する。
具体的には、上記のように印刷した画像上に、MD、TDの各方向に平行する60mmの任意の直線、及び、各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描いた際に、この直線上に存在する気泡の数が3〜10個程度となるように電子顕微鏡での撮影倍率を調整する。
MD方向に沿って切断した断面(以下、MD断面という)、及び、TD方向に沿って切断した断面(以下、TD断面という)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、上記のようにA4用紙に印刷する。
MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描く。
また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描く。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えることとする。
MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とする。
気泡数を数えた画像の倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式より算出する。

平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)

画像倍率は画像上のスケールバーを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求める。

画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)

そして次式により各方向における気泡径を算出する。

気泡径D(mm)=t/0.616

さらにそれらの積の3乗根を平均気泡径とする。

平均気泡径(mm)=(DMD×DTD×DVD1/3

MD:MD方向の気泡径(mm)
TD:TD方向の気泡径(mm)
VD:VD方向の気泡径(mm)
このような気泡の細かなポリ乳酸樹脂発泡体を作製する上において、ポリ乳酸樹脂発泡体におけるリサイクル材の含有量は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態においては、ポリ乳酸樹脂発泡体の例として上記のように押出発泡シートを例示しているが、本発明のポリ乳酸樹脂発泡体の具体的な態様は押出発泡シートに限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸樹脂発泡体は、射出成形品であってもビーズ発泡成形品等であってもよい。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが本発明は以下の例示にも何等限定されるものではない。
<第1の評価検討>
(試験例1−1)
(1)改質されたポリ乳酸樹脂の作製
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 8052D」、MFR=7.4g/10min、密度=1.24g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)に供給した。
フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数150rpmの条件にて二軸押出機中で、前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数18個のダイから、50kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
(試験例1−2〜1−7)
試験例1−2〜1−7についてはポリ乳酸樹脂の種類や有機過酸化物の添加量(ポリ乳酸樹脂100質量部に対する添加量(phr))をそれぞれ変更した以外は試験例1−1と同様の方法で改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
(試験例2−1〜2−4)
試験例2−1〜2−4についてはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとは異なる有機過酸化物を用いて改質を行ったこと以外は、試験例1−1〜1−7と同様の方法で改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
尚、一部の例では、有機過酸化物ではなく鎖伸長剤による改質を行っている。
試験例1−1〜1−7、及び、試験例2−1〜2−4で用いたポリ乳酸樹脂及び有機過酸化物の種類、並びに、ポリ乳酸樹脂100質量部に対する有機過酸化物の添加量(phr)を表1〜表3に示す。
(2)発泡体の作製
試験例1−1で得られたポリ乳酸樹脂100質量部と、気泡調整剤(松村産業(株)製 「クラウンタルク」)1.0質量部とをドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)及び口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、得られた混合物をホッパーを通じて供給し、加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)を第1押出機に圧入し、前記混合物とともに溶融混合させた。
次いで、この溶融混合物を口径65mmの第2の押出機に移送して押出発泡に適した温度に均一に冷却した後、口径70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状の発泡シートを得た。
試験例1−2〜1−7、試験例2−1〜2−4についても上記と同様の方法で発泡シートを作製した。
しかし、試験例2−2、2−3については、樹脂の溶融張力がなく安定したシートの引き取りができなかったため、発泡シートが得られなかった。
試験例1−1〜1−7、試験例2−1〜2−4で改質された後のポリ乳酸樹脂について、質量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、及び、これらの比(Mz/Mw)を求めた。
また、これらの改質された後のポリ乳酸樹脂の分子量分布曲線において、最大ピークTPよりも高分子量側にショルダーSL又は別ピークSPが存在しているかを確認した。
さらに、改質された後のポリ乳酸樹脂のMFR(190℃、2.16kg)、及び、溶融張力(at190℃)を測定した。
そして、作製された発泡シートについては見掛け密度、及び、連続気泡率を測定した。
さらに、発泡シートについては、目視にて外観を観察し、以下の基準で判定した。

(発泡体の外観)
○:発泡が均一で外観美麗。
△:発泡は均一だがシート表面に一部ブツが見られる。
×:気泡が不均一で顕著な破泡が見られる。又はシート表面に多数のブツが見られる。

以上の評価結果を表4に示す。
尚、上記の試験例2−4では、ポリ乳酸樹脂を改質する際や発泡シートを押出発泡する際に有機過酸化物の分解残渣(アセトフェノン、クミルアルコールなど)が原因であると考えられる臭気が感じられた。
以上のことからも、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを用いることで、発泡に適した状態にポリ乳酸樹脂を改質する際に臭気の問題などが発生することを抑制できることがわかる。
<第2の評価検討>
(試験例3−1)
第1の評価検討での試験例1−4と同じく、Nature Works社製のポリ乳酸樹脂(商品名「Biopolymer Ingeo 4032D」)とt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとを100:0.5の割合で用いて改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
この改質されたポリ乳酸樹脂について、伸長粘度(at190℃)を測定した。
その結果、伸長粘度測定では、伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフには、上向きに凸となるピークが出現しないことがわかった。
また、試験例3−1で改質されたポリ乳酸樹脂を用い、「第1の評価検討」と同様に発泡シートを作製し、発泡シートの厚さ、坪量、発泡倍率、及び、連続気泡率を求めた。
さらに、発泡シートに対し、長手方向が押出方向となるようにダンベル状試験片を採取して、該ダンベル状試験片により引張強さの測定を実施した。
(試験例4−1)
発泡用としてユニチカ社から市販されているポリ乳酸樹脂(商品名「テラマック HV−6250H」、MFR:1〜3g/10min、引張強さ:69MPa(メーカー公表値))を用意した(改質せず)。
試験例3−1と同様に試験例4−1のポリ乳酸樹脂についてもレオテンス装置を用いた熱溶融特性を調査した。
なお、試験例4−1のポリ乳酸樹脂では、伸長粘度測定の結果を横軸が伸長速度、縦軸が伸長粘度となったグラフで表したところピークが見られた。
試験例4−1のポリ乳酸樹脂についても発泡シートを作製し、試験例3−1と同様に評価した。
結果を、下記表5に示す。
上記の結果からは、190℃での伸長粘度測定において破断点での伸長粘度が0.5MPa・s以上となるポリ乳酸樹脂で、しかも、前記伸長粘度測定では伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しないポリ乳酸樹脂を用いることでポリ乳酸樹脂発泡体に優れた強度が発揮されることがわかる。
<第3の評価検討>
(試験例5−1)
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 4032D」、MFR=4.4g/10min、密度=1.24g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が30mmの二軸押出機(L/D=42)に供給した。
二軸押出機の温度設定を、フィード部の設定温度を160℃、それ以降の温度を220℃に設定し、回転数180rpmの条件にて二軸押出機中で、前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数2個のダイから、10kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押出した。
次いで、押出されたストランド状の混練物を、20℃の水を収容した長さ1.5mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
試験例5−1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂について、MFR(190℃、2.16kg)と溶融張力(at190℃)とを測定した。
そして、試験例5−1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂に対し、190℃での溶融混練を合計3度実施し、都度、MFRと溶融張力とを測定することにより、MFR一次変化率、MFR二次変化率、MFR三次変化率、溶融張力一次変化率、溶融張力二次変化率及び、溶融張力三次変化率を測定した。
(試験例5−2、5−3)
ポリ乳酸樹脂とt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとの比率を、それぞれ100:0.3(試験例5−2)、100:0.7(試験例5−3)とした以外は試験例5−1と同様の評価を実施した。
(試験例6−1)
Nature Works社製のポリ乳酸樹脂(商品名「Biopolymer Ingeo 8052D」)に対し、改質を行うことなく試験例5−1〜5−3と同様の評価を実施した。
(試験例6−2)
ユニチカ社から市販されているポリ乳酸樹脂(商品名「テラマック HV−6250H」)に対し、改質を行うことなく試験例5−1〜5−3と同様の評価を実施した。
これらの結果を下記表6に示す。
<第4の評価検討>
(試験例7−1)
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 4032D」、MFR=4.4g/10min、密度=1.24g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が30mmの二軸押出機(L/D=42)に供給した。
二軸押出機の温度設定を、フィード部の設定温度を160℃、それ以降の温度を220℃に設定し、回転数180rpmの条件にて二軸押出機中で、前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数2個のダイから、10kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押出した。
次いで、押出されたストランド状の混練物を、20℃の水を収容した長さ1.5mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
試験例7−1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂について、MFR(190℃、2.16kg)と溶融張力(at190℃)とを測定した。
そして、試験例7−1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂に対し、東洋精機製作所製「ラボプラストミル(商品名)」を使って190℃での溶融混練を合計3度実施し、都度、MFRと溶融張力とを測定することにより、MFR一次変化率、MFR二次変化率、MFR三次変化率、溶融張力一次変化率、溶融張力二次変化率及び、溶融張力三次変化率を測定した。
(試験例8−1)
ユニチカ社から市販されているポリ乳酸樹脂(商品名「テラマック HV−6250H」)に対し、改質を行うことなく試験例7−1と同様の評価を実施した。
これらの結果を下記表7に示す。
<第5の評価検討>
試験例7−1で190℃での溶融混練を実施する前の改質されたポリ乳酸樹脂を使って坪量が約250g/m2となるように押出発泡シート(#7−1−0)を作製した。
また、試験例7−1で190℃での溶融混練を1回実施した後の改質されたポリ乳酸樹脂を使って坪量が約250g/m2となるように押出発泡シート(#7−1−1)を作製した。
さらに、試験例8−1で190℃での溶融混練を実施する前の改質されたポリ乳酸樹脂を使って坪量が約250g/m2となるように押出発泡シート(#8−1−0)を作製するとともに試験例8−1で190℃での溶融混練を1回実施した後の改質されたポリ乳酸樹脂を使って坪量が約250g/m2となるように押出発泡シート(#8−1−1)を作製した。
これらの押出発泡シートの厚さ、坪量、発泡倍率、連続気泡率、及び、押出発泡シートの断面観察を行った際に観測される平均気泡径を測定した。
結果を、下記表8に示す。
また、上記の(#7−1−0)の押出発泡シートと(#7−1−1)の押出発泡シートとをそれぞれ押出方向(MD)に沿って切断した際の断面の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像(SEM写真)を図5に示す。
さらに、上記の(#7−1−0)の押出発泡シートと(#7−1−1)の押出発泡シートとをそれぞれ押出方向と直交するシート幅方向(TD)に沿って切断した際の断面の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像(SEM写真)を図6に示す。
この第5の評価検討からは改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力一次変化率が60%以下の場合は、リサイクル材の使用が気泡の細かな発泡体の形成に有利であることがわかる。
また、以上の結果から、特定の改質を施すことで熱安定性に優れたポリ乳酸樹脂が得られることがわかる。

Claims (6)

  1. ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させてポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含む改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法であって、
    前記ラジカル開始剤が有機過酸化物であり、前記改質工程では、前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記有機過酸化物を0.1質量部以上2質量部以下の割合で用い、
    前記改質されたポリ乳酸樹脂は、
    前記改質工程を終えた時点における190℃での溶融張力が5cN以上40cN以下で、該溶融張力を「MT0」(cN)とし、前記改質工程を終えた後、190℃での溶融混練を1度実施した後の前記溶融張力を「MT1」(cN)としたときに下記式(B1)によって求められる溶融張力一次変化率が0%以上60%以下である改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法。

    溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
  2. 前記改質工程を実施するポリ乳酸樹脂の一部は、ポリ乳酸樹脂発泡シート、ポリ乳酸樹脂発泡シートが熱成形されてなる発泡成形品、及び、該発泡成形品を製造する際に生じる端材の内の少なくとも1つを含むリサイクル材である請求項1記載の改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法。
  3. 190℃での溶融張力が5cN以上40cN以下で、該溶融張力を「MT0」(cN)とし、190℃での溶融混練を1度実施した後の前記溶融張力を「MT1」(cN)としたときに下記式(B1)によって求められる溶融張力一次変化率が0%以上60%以下であるポリ乳酸樹脂。

    溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
  4. 190℃での溶融混練を2度実施した後の前記溶融張力を「MT2」(cN)としたときに下記式(B2)によって求められる溶融張力二次変化率が0%以上70%以下である請求項3記載のポリ乳酸樹脂。

    溶融張力二次変化率=(MT0−MT2)/MT0×100[%]・・・(B2)
  5. 190℃での溶融混練を3度実施した後の前記溶融張力を「MT3」(cN)としたときに下記式(B3)によって求められる溶融張力三次変化率が0%以上80%以下である請求項3又は4記載のポリ乳酸樹脂。

    溶融張力三次変化率=(MT0−MT3)/MT0×100[%]・・・(B3)
  6. 請求項3乃至5の何れか1項に記載のポリ乳酸樹脂を含むポリ乳酸樹脂発泡シート。
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