JP5577630B2 - 架橋熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は非架橋熱可塑性樹脂に溶融混練で分散する架橋熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、熱可塑性樹脂に溶融混練によって容易に微細化分散し、熱可塑性樹脂に機能性を付与したり熱可塑性樹脂の成形性を改良する架橋熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
非架橋熱可塑性樹脂に分散する架橋樹脂や架橋ゴム成分として最も良く知られているものは動的加硫法による熱可塑性エラストマーの分散成分である。動的加硫法による熱可塑性エラストマーの製造は1980年代から主にモンサント社によって広く研究開発が行われ、「サントプレン」という商標で市販されている。この動的加硫法による熱可塑性エラストマーはポリプロピレン(PP)にEPDM等のゴム成分とゴムの架橋剤等を配合し高剪断で溶融混錬することによってEPDMゴムの加硫(架橋)を起こすと同時にPPの樹脂中にEPDMゴムを分散するものである(特許文献1、非特許文献1など)。熱可塑性エラストマーとしては硬度が低くかつ柔軟性が必要なため、PP成分よりEPDMゴム成分が多い組成で溶融混錬を行い、混錬工程でEPDMゴムの架橋を起こすと同時にPPをマトリックスにするためにPPとEPDMゴム成分の相反転を行うという高度な製造技術が必要となる。
しかしながら、この動的加硫法は樹脂とゴムを組み合わせは、硬度が低く、永久歪みの小さな柔軟性を持った熱可塑性エラストマーを製造するためのもので、硬度が高いエンプラ等の一般の樹脂に適用することには問題がある。また、動的加硫は溶融混練工程でゴム成分の加硫(架橋)とゴム/樹脂の相転換および樹脂中にゴム成分を微分散するという3つの過程を一つの混錬工程で行うため、常に均一な品質の製品を得ることがかなり困難である。
一方、硬度が高いエンプラ等の一般の樹脂に対しても種々の高度な特性や幅広い成形性を付与することが求められており、複数の異なる特性をもつ樹脂同士をアロイし、その分散構造を設計して機能複合化する方法が提案されている(特許文献2、3など)。しかしながら、改良効果が不十分である、一方の特性が向上しても他の特性が低下したりする欠点がある、成形性が劣る、など改善の余地があった。
特開昭59−58043号公報 特開平5−156141号公報 特開平9−31325号公報
ラバーケミストリー・アンド・テクノロジー(Rubber chemistry and Technology)1996年発行 第 69巻 p.476
本発明の課題は、複数の樹脂を溶融混練して複数の樹脂の長所を併せ持つ樹脂組成物の提供を可能にしたり、射出成形、ブロー成形、押出し成形、発泡成形などにおいて、安定した幅広い成形性を付与するためにそれぞれの成形に応じたレオロジー的な改良を可能とする架橋熱可塑性樹脂組成物を提供することである。なお、以下で、単に熱可塑性樹脂と表記する場合は、断らない限り非架橋熱可塑性樹脂を意味する。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、複数の熱可塑性樹脂を溶融混練するに際し、一方の熱可塑性樹脂に適度の架橋結合を導入して、他方の熱可塑性樹脂(以下、非架橋熱可塑性樹脂とも表記)と溶融混練することで、架橋熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂中に微細かつ均一に分散構造化する特性を発現することがあること、この架橋度を調整された架橋熱可塑性樹脂はマトリックスとなる熱可塑性樹脂のレオロジー特性を大きく改良することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂(A)を架橋処理して得られた架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)であって、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が熱可塑性樹脂(A)の溶媒に溶解せずに該溶媒と溶媒ゲルを形成する架橋状態を示し、該架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の溶融時の粘弾性特性が周波数‐貯蔵弾性率の両対数プロット曲線において0.1〜10rad/sの範囲で周波数に対する貯蔵弾性率の傾きが0.2〜 1.0であり、かつ、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)を熱可塑性樹脂(A)に相溶性の熱可塑性樹脂(B)と300sec-1以上のせん断速度で溶融混練した場合に、熱可塑性樹脂(B)中に最大粒子径100μm以上のゲルを生成することなく溶融分散することを特徴とする架橋熱可塑性樹脂組成物。
(2) 溶融時の粘弾性特性が、周波数0.1〜10rad/s範囲の周波数-貯蔵弾性率の両対数プロット曲線における貯蔵弾性率の傾きをα、周波数-損失弾性率の両対数プロット曲線における損失弾性率の傾きをβとしたとき、αとβの差の絶対値が0.15以下である前記(1)に記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(3) 熱可塑性樹脂(A)が架橋助剤及び/又は有機過酸化物を含有する前記(1)又は(2)に記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(4)架橋処理が活性エネルギー線照射処理である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(5) 活性エネルギー線が放射線である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(6) 動的粘弾性測定における融点以上の貯蔵弾性率が0.1〜10rad/s の範囲で1E+5Pa以下である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(7) 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のいずれかであること前記(1)〜(6)のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(8) 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリカプロラクトン50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部とを含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜25kGyに放射線照射されてなる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(9) 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリエステルエラストマー50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜60kGyに放射線照射されてなる前記(1)〜()のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
(10) 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリアミド50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜20kGyに放射線照射されてなる前記(1)〜()のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物は、容易にかつ微細に非架橋の熱可塑性樹脂へ微細分散化が可能な、調整された架橋度をもつ架橋熱可塑性樹脂組成物であるため、熱可塑性樹脂の本来持っている特性を保持しつつ、熱可塑性樹脂のレオロジー特性を改良することができ、特に低せん断速度における増粘効果を容易に付与することができるため、ブロー成型性や押出し成形性を付与する有効な改質材となる。
また、この架橋熱可塑性樹脂組成物は混練によって熱可塑性樹脂に容易に分散し、なおかつ架橋分散体特有の非常に遅い相分離挙動をとることにより、溶融時の分散構造が長期的に安定化する。さらに架橋体ゆえに高い配合比率で熱可塑性樹脂へ混練しても完全に相反転してマトリクス化することはない。さらに架橋熱可塑性樹脂内で分子鎖が橋架け構造によって相互に拘束されているため熱可塑性樹脂への分散形態は一定形状の単独分散常態となり、例えば添加によって見かけ上均一化してしまう極度に相溶性の良い熱可塑性樹脂や、分子鎖交換を起こしやすい熱可塑性樹脂へ添加しても、熱可塑性樹脂との相溶化や分子鎖交換(ポリエステル系樹脂におけるエステル交換反応や、ポリアミド系樹脂におけるアミド交換反応など)などによって見かけ上均一のポリマーのように同一化したり、早く制御の困難な相分離化をすることなく単独で安定な分散構造をとる。
このように溶融混練で長期的に安定な架橋体の微細分散構造得ることができるためモルフォロジー構造を利用した機能設計に非常に有益である。本発明による架橋熱可塑性樹脂組成物が強度、耐衝撃性、耐熱性、摺動性、ガスバリア性、導電性、熱伝導性などの機能性を持つ場合は、熱可塑性樹脂へ配合することによって、熱可塑性樹脂にそれらの機能性を容易に付与することができる。
図1は実施例2−1、比較例2−1の架橋熱可塑性樹脂組成物の190℃における周波数‐貯蔵弾性率、損失弾性率、溶融粘度についての両対数プロット曲線を示す図である。 図2は実施例3−1、比較例3−1の架橋熱可塑性樹脂組成物の220℃における周波数‐貯蔵弾性率、損失弾性率、溶融粘度についての両対数プロット曲線を示す図である。 図3は実験例1において、実施例1−1と比較例1−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を用いて非架橋熱可塑性樹脂に溶融混練して得た樹脂組成物(実験例1−1と1−2)のSEM画像を示す図(写真)である。 図4は実験例3において、実施例3−1、比較例3−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を用いた実験例3−1、3−2の架橋熱可塑性樹脂組成物の微分干渉顕微鏡画像を示す図(写真)である。
以下に本発明を具体的に説明する。本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(B)としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂。ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)などの生分解性かつ橋かけ型ポリエステル樹脂。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体、およびポリブチレンテレフタレート/ポリラクトンブロック共重合体、ポリブチレンナフタレート/ポリラクトンブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリマプロラクトン共重合体等のポリエステル系樹脂。 ナイロン6(NY6)、ナイロン66(NY66)、ナイロン46(NY46)、ナイロン11(NY11)、ナイロン12(NY12)、ナイロン610(NY610)、ナイロン612(NY612)、メタキシリレンアジパミド(MXD6)、ヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸重合体(6T)、ヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸およびアジピン酸重合体(66T)、ヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸およびε−カプロラクタム共重合体(6T/6)、トリメチルヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸(TMD−T)、メタキシリレンジアミンとアジピン酸およびイソフタール酸重合体(MXD−6/I)、トリヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸およびε−カプロラクタム共重合体(TMD−T/6)、ジアミノジシクロヘキシレンメタン(CA)とイソフタール酸およびラウリルラクタム重合体等のポリアミド系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではなく、前述以外の熱可塑性樹脂を含めた複数樹脂の共重合体およびポリマーアロイコンパウンドもこれに含まれる。
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との組み合わせは、ポリアミド系樹脂同士、ポリエステル系樹脂同士、ポリオレフィン系樹脂同士など同じ系統の樹脂同士であり、相溶性がある樹脂の組み合わせである。
本発明における熱可塑性樹脂(A)を架橋処理して得られた架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は、架橋することによって熱可塑性樹脂(A)の溶媒には溶解しなくなっており、溶媒に浸漬して放置あるいは過熱した場合、溶媒を吸収して膨潤して透明性のあるゲル状物になる、すなわち、溶媒ゲルを形成する程度にまで架橋していることが必要である。
その架橋方法としては、放射線や紫外線などの活性エネルギー線照射による方法や有機過酸化物を配合して溶融混錬する方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、特に放射線照射による架橋は架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の架橋度をコントロールすることが容易にできるので特に好ましい。
熱可塑性樹脂の溶媒とは、架橋前の熱可塑性樹脂を溶解可能な溶媒のことであり、各熱可塑性樹脂に適した溶媒を選択すれば良い。例えば、ナイロンではギ酸、硫酸などが挙げられるが、ギ酸が好ましい。ポリエステルに対してはフェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒やジクロルベンゼンなどが挙げられるが、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒が好ましい。
放射線照射による架橋法としては、電子線やガンマ線(γ線)を用いることが好ましく、電子線やガンマ線(γ線)を照射することにより、そのエネルギーで分子間架橋を起こすことが出来る。放射線の種類によって波長が異なり、電子線より波長が短いガンマ線は厚みのある熱可塑性樹脂の内部まで架橋することが可能である。吸収したエネルギーの総量(吸収線量)はグレイ(Gy)で表される。放射線照射は吸収線量を自由にコトロールすることが出来るため、熱可塑性樹脂(A)の架橋度も自由にコントロール出来る。
熱可塑性樹脂(A)のペレット等への放射線照射による架橋は、照射される上部下部とで透過線量を均一にしなければ均一な架橋度が得られない場合があるため、特にペレットの架橋を放射線で行う場合は、波長の短いガンマ線が均一な架橋度を得られやすいので最適な架橋法である。
本発明における放射線照射の吸収線量は0.5〜50kGyが好ましい。0.5kGy未満であると、吸収線量のコントロールが難しくなり、50kGyを超えると架橋が進みすぎる上、ポリマー種によっては分子切断の進行が進みすぎて架橋部分と非架橋部分が極端に不均一なものしか得られない。
放射線照射による架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の架橋度調整では、架橋させたい熱可塑性樹脂にあらかじめ架橋助剤を練り込むことにより架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の架橋処理効率を促進させることも出来る。
具体的な架橋助剤としてはトリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチルアリルイソシアヌレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA)、トリスハイドロオキシエチルイソシアヌリックアクリレート(THEICA)およびN,N’−m−フェニレンビスマレイミド(MPBM)等の多官能性化合物を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。取り扱いやすさの点でトリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。これらの架橋助剤は一種類または二種類以上を併用することもできる。
架橋助剤の配合量は熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部である。0.01重量部未満では架橋効率促進の効果が少なくなる。また10重量部を超えると架橋助剤自体の分散に均一性がなくなり、架橋密度の均一な架橋熱可塑性樹脂が得られない。さらに多量の架橋助剤の添加は架橋助剤としての効率が悪くなるばかりか、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の物性を低下させるので好ましくない。
架橋させたい熱可塑性樹脂(A)にあらかじめ架橋助剤を配合し混合した後、溶融混錬して得たペレットに放射線を照射することによって架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)を製造することが出来る。架橋助剤を溶融混錬する装置は特に限定しないが、二軸押出機を使うのが好ましい。二軸押出機のシリンダー温度は架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の融点またはガラス転移点温度より20〜50℃、もしくはそれ以上高い温度で設定するのが好ましい。溶融混錬工程の滞留時間は一般的に30秒〜15分程度である。架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の架橋度は使用する架橋助剤の配合量と照射される放射線の吸収線量によってコントロールすることが出来る。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の架橋を有機過酸化物によって架橋処理する場合は、架橋させたい熱可塑性樹脂(A)に有機過酸化物と架橋助剤を配合し、混合と溶融混錬をすることによって製造できる。架橋度は有機過酸化物および架橋助剤の種類と量および溶融混錬の温度と溶融混錬している滞留時間によって決定される。
有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミールパーオキサイド、ジー(t−ブチルパーオキシ)m−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2−5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2−5−t−ブチルパーオキシヘキサン−3等を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。有機過酸化物の添加量は架橋処理したい熱可塑性樹脂100重量部に対して0.02〜5重量部である。好ましくは0.05〜3重量部である。 架橋助剤としては放射線照射による架橋の時に用いた架橋助剤と同じものを使用することができる。また架橋助剤の配合量も同様である。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は溶媒に不溶となる一定以上の架橋度を持つと同時に、熱可塑性樹脂(A)と相溶性があり架橋していない熱可塑性樹脂(B)と300sec-1以上のせん断速度で溶融混練した場合に、熱可塑性樹脂(B)中に100μm以上のゲルを生成することなく均一に溶融分散する程度の架橋度に抑えられていなければならない。300 sec-1以上のせん断速度での溶融混練する方法については特に限定はしないが2軸押出機での溶融混練が容易であり、100μm以上のゲルが生成されているか否かの確認についてもその方法は限定されないが、二軸押出機で架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)と熱可塑性樹脂(B)を溶融混練して得たペレットからなる成型品を用いて評価することが好ましい。
架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)を熱可塑性樹脂(B)に均一微分散するためには混錬装置の剪断速度が重要となる。剪断速度は混錬装置のスクリュウ直径とバレルとスクリュウとのクリアランスおよびスクリュウの回転数によって最大剪断速度が決まる。本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物を非架橋熱可塑性樹脂組成物に分散させる際の溶融剪断速度は架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)のレオロジー特性にもよるが、剪断速度は300sec-1以上が必要である。好ましくは剪断速度500 sec-1以上、更に好ましくは剪断速度1000sec-1以上である。
100μm以上のゲル生成の確認についてはその方法は限定されないが、例えば200μm以下のフィルム成形品を溶融成形し、ブツを目視もしくは実態顕微鏡や電子顕微鏡で確認する方法が挙げられる。架橋度が低すぎると、分岐構造や部分的に架橋した橋架け構造をとっていても溶媒に溶解する。このような架橋の程度は本発明の目的とする架橋度には達しておらず、非架橋熱可塑性樹脂に混練した場合、レオロジー改良効果はない。逆に溶媒に不溶であっても架橋度が高くなりすぎている場合は300 sec-1以上のせん断速度で溶融混練しても100μm以上のゲルが生成し、微細に分散しているとは言いがたい状態となり、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物は得られていないことになる。
なお、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)と組み合わせられる熱可塑性樹脂(B)は、前記の熱可塑性樹脂(A)と同じ系統の樹脂か又は架橋処理される前の熱可塑性樹脂(A)と同一の樹脂であってもよい。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の好ましい架橋状態の調整は放射線を用いて架橋を行なう場合は、架橋助剤の配合量と照射される放射線の吸収線量によってコントロールすることができ、架橋助剤と有機過酸化物との溶融混錬で行なう場合、その架橋度は有機過酸化物および架橋助剤の種類と量および溶融混錬の温度と溶融混錬している滞留時間によって決定される。架橋させたい任意の熱可塑性樹脂および樹脂組成物に対して、それぞれ最適な架橋状態と架橋条件があり、かつ、目的の架橋度が融点以上でも一定せん断で非架橋樹脂に分散するソフトな状態であるため、一般的に架橋度の指標として用いられる溶媒膨潤率や、ゲル化度では明確に数値を規定することが難しく、本特許の様に良溶媒に対する不溶化(溶媒ゲルの形成)と相溶樹脂に対する分散性を指標として架橋度を調整することが、最も効率的かつ精度が高い。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は、その架橋度が調整される過程で、架橋度が上がっていくと、溶融粘弾性測定において、溶融時の貯蔵弾性率は架橋処理を行う前よりも増大することになる。これは溶融時の周波数‐貯蔵弾性率の関係において架橋処理後、任意の周波数に対して貯蔵弾性率は増大していることで確認できる。この貯蔵弾性率の増大は、系の架橋が均一に進行していく場合は、周波数‐貯蔵弾性率両対数プロット曲線における周波数に対する貯蔵弾性率の傾きの減少で見ることができる。
アロイされていない単一の非架橋の熱可塑性樹脂(B)は、周波数‐貯蔵弾性率両対数プロット曲線において周波数に対する貯蔵弾性率の傾きが2に近い値であるのに対して、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は、少なくとも0.1〜10rad/sの範囲でその傾きが0.2〜1.0の範囲であり、好ましくは0.2〜0.6である。この傾きの最適な値は架橋処理される熱可塑性樹脂組成物によって異なるが、この値が1.0より大きいと、架橋が不充分であることを示し、非架橋熱可塑性樹脂(B)に溶融混練されても、レオロジー改良効果はなく、低せん断速度における増粘効果を付与することができない。また橋架け構造の導入が不充分であると、溶融分散状態での緩和挙動が早く分散構造が安定しないため、熱可塑性樹脂(B)に対する改良効果がない。逆に周波数‐貯蔵弾性率両対数プロットにおける貯蔵弾性率の傾きが0.2よりも小さくなるまで架橋している場合は、もはや硬いゲルとなって固体に近い粘弾特性であることを意味し、あらかじめ粒子を100μm以下に調整しない限り、溶融混練で非架橋熱可塑性樹脂(B)中に100μm未満の粒子に微分散化することはできない。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は融点以上の粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1〜10rad/sの範囲で1E+5Pa以下であることが好ましい。1E+5 Paを超えると、溶融温度以上でも見かけ上、固体として形状を保持し得る領域であり、二軸押出機による混練においても100μm以上の分散不良なゲル塊状物となってしまうため1E+5Pa以下であることが好ましい。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が非架橋熱可塑性樹脂に溶融混練され微細分散化した際に、低いせん断速度領域での増粘効果と相構造の安定性を充分得るためには、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が溶融状態において適度に弾性的であることが好ましい。一般的に溶融時の熱可塑性樹脂では貯蔵弾性率のせん断速度依存性のほうが損失弾性率のせん断速度依存性より大きい。溶融粘弾性測定で得られた少なくとも周波数0.1〜10rad/s範囲の貯蔵弾性率-周波数両対数プロット曲線における貯蔵弾性率の傾きをαとすると、αは貯蔵弾性率の周波数依存性パラメーターとして扱うことができる。
損失弾性率-周波数両対数プロット曲線における損失弾性率の傾きをβとすると、βは損失弾性率の周波数依存性パラメーターとして扱うことができる。さらに、α−βはtanδの周波数依存性パラメーターとして扱うことができ、一般的な熱可塑性樹脂の場合α>βでかつα−βの絶対値は1.0に近い値となる。α−βの値が正で大きいほど低せん断速度での損失弾性率に対する貯蔵弾性率が小さくなる傾向を表しており、より粘性的な状態であることを示す。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の適度に弾性的な状態としては、α−βはα、βの大小に関わらず、その絶対値が0.15以下であることが好ましい。さらに好ましいのはα−βの絶対値が0.10以下である。α>βでかつα−βの絶対値が0.15以上である場合は低せん断速度領域での損失弾性率に対して貯蔵弾性率が低すぎて非架橋熱可塑性樹脂に溶融混練されて微細分散化した際に、低いせん断速度領域での増粘効果と相構造の安定性を得られない。またα<βでかつα−βの絶対値が0.15以上である場合は、もはや固体に近い粘弾特性であり2軸押出機による混練においても100μm以上の分散不良なゲル塊状物となってしまう。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)には、架橋を阻害したりあるいは促進しすぎたりしないで架橋度の調整が容易である範囲において、必要に応じて他の樹脂、配合剤、添加剤等を配合することが出来る。例えば ガラス繊維や炭素繊維および各種の無機フィラー等の強化材、および熱安定剤、紫外線安定剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、難燃剤、導電性フィラー、熱伝導性フィラー、帯電防止剤、顔料、染料等の配合剤および添加剤であるが、これらに限定されるものではない。
架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のいずれかであることが好ましい。
架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリエステル系樹脂の場合、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)100重量部に対してポリカプロラクトン50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部とを含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜25kGyに放射線照射されてなることが好ましい。
また、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリエステル系樹脂の場合、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)100重量部に対してポリエステルエラストマー50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜60kGyに放射線照射されてなることが好ましい。
架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリアミド系樹脂の場合、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)100重量部に対してポリアミド50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練りして得たペレットを吸収線量0.5〜20kGyに放射線照射されてなることが好ましい。
上記の範囲をはずれた場合、所望の特性の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が得られにくくなることがある。
本発明における熱可塑性樹脂(A)を架橋させるために、架橋助剤を添加する場合や有機過酸化物と混練する場合の溶融混錬装置としては、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー、バンバリー等があるが、特に好ましいのは二軸押出機である。
本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)は、非架橋熱可塑性樹脂や配合剤を混合した混合物を製品化する射出成形機または押出機等に投入して、溶融混錬と製品化をダイレクトに行なう形で使用することもできる。このような場合でも射出成形機や押出製品を賦形する射出成形機や押出機等での溶融混錬の剪断速度は重要である。溶融混錬の剪断速度は300 sec-1以上が必要である。好ましくは剪断速度500 sec-1以上、更に好ましくは剪断速度1000 sec-1以上である。射出成形機または押出機等では混合物を投入するホッパーから金型やダイスまでの間で溶融混錬が可能であり、この間の剪断速度によって架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)および他の配合剤が非架橋熱可塑性樹脂の中に100μm未満に微細分散される。この溶融された熱可塑性樹脂組成物は成形装置の先端にある金型やダイスで製品化される。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下に実施例、比較例で採用した測定法、評価法、実験方法を示す。
(1) 架橋処理物の溶媒溶解試験法:
径Φ約3mm×長さ約3mmカットペレット形状の架橋処理物を、カットペレットがポリエステル系樹脂の場合はフェノールとテトラクロロエタンとの混合溶媒へ常温で40hr以上浸漬、ポリアミド系は蟻酸へ常温で40hr以上浸漬し、溶媒除去した後の残存物の有無を目視で確認した。透明性のある溶媒ゲルが浸漬前ペレットの膨潤形状で残存しており、浸漬したペレット個数と同数の溶媒膨潤ゲルが確認できた場合を「不溶」と表現して○とした。溶媒に溶解し溶媒除去の際に溶媒と一緒に除去されるか、もしくは浸漬したペレット形状より溶媒膨潤ゲルの形状が大きく崩れ、分割されて形状を保持していない状態の場合「溶解」と表現して×とした。
(2) 架橋処理物の非架橋熱可塑性樹脂への分散試験法:
任意の熱可塑性樹脂X(A)に架橋処理を行った架橋熱可塑性樹脂組成物X(A’)に関して、非架橋熱可塑性樹脂X(A)への分散性は次のように評価した。
架橋処理を行った架橋熱可塑性樹脂X(A’)と非架橋熱可塑性樹脂X(A)とを二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM30)用で両樹脂の融点より少なくとも10℃以上高いシリンダー温度設定、スクリュー回転数120rpmにて、X(A’)とX(A)の合計が100重量部としてX(A)/X(A’)=70重量部/30重量部の比率で混合および溶融混練し、水浴にストランド状に押出して冷却後、カットして樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物ペレットを真空乾燥で水分率0.05質量%以下になるまで乾燥後、厚み200μmのシート状成型品を押出成形で作成した。
得られたシート表面状態を目視観察でゲル生成物による凹凸がないか、100μm以上のゲル生成物がないか確認した。厚み200μmのシートの場合、100μm以上のゲル生成物が存在する場合、必ず凹凸が認められることが確認できているので、シート表面が平滑となるものは「分散する」と判定した。200μmのシートに凹凸が目立つもの、シートを成形するまでもなく平滑なストランドの引けないものは「分散不良」とした。目視とゲル生成物の関係が分かりに難い場合は透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは、走査型電子顕微鏡(SEM)で架橋熱可塑性樹脂組成物X(A’)が非架橋熱可塑性樹脂X(A)中に分散している構造を確認した。また、放射線による分解傾向の強いポリ乳酸などの樹脂に関しては電子顕微鏡における観察中に分解傾向を示すため走査型プローブ顕微鏡(SPM)で構造観察を行なった。
(3) 架橋熱可塑性樹脂組成物の溶融時貯蔵弾性率、損失弾性率測定法
回転式レオメータARES(レオメトリックス社)を用いて動的粘弾性測定を以下の条件で行い、周波数‐貯蔵弾性率、周波数‐損失弾性率及び周波数‐せん断溶融粘度の両対数プロット曲線を得た。
・Strain=10%
・Temperature=DSCの結晶融点の少なくとも10℃以上
・Initial Frequency=100rad/s
・Final Frequency=0.1rad/s
・Gap=0.7〜1.5mm
・Geometry Type=Parallel Plate(Diameter=25mm)
また、架橋熱可塑性樹脂組成物の周波数0.1〜10rad/s範囲の周波数-貯蔵弾性率の両対数プロット曲線における貯蔵弾性率の傾きαと周波数-損失弾性率の両対数プロット曲線における損失弾性率の傾きβとを求め、tanδの周波数依存性パラメーターとなるα−βを求めた。
なお、架橋熱可塑性樹脂調整例において架橋が進行しすぎた架橋熱可塑性樹脂組成物についてはTA Instruments社製ARESで貯蔵弾性率測定ができないため「測定不能」とした。
・ 溶融粘度測定法(増粘効果の確認法)
架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の非架橋熱可塑性樹脂(B)への分散による粘度改良効果は東洋精機社製キャピロ曲線試験装置を用いて得た、せん断速度-溶融粘度の両対数プロット曲線より、低せん断速度(12.2 sec-1もしくは 48.6 sec-1)における粘度上昇を指標に増粘効果の有無を判断した。キャピロ曲線の測定条件として、キャピラリー径1.0mm×長さ10mmのものを用い、ずり速度4E+1〜5E+4/secの範囲で、DSC融点の少なくとも10℃以上の測定温度で評価した。非結晶樹脂の場合はガラス転移温度以上で、その素材の適切な成形温度条件と同等に近い温度で測定を行なうことが好ましい。DSC融点に関して、試料融点(融解ピーク温度Tpm)はJIS K7121に準拠して求めた。
<実施例、比較例で使用した原材料>
PA6(イ): 相対粘度RV=2.5の6ナイロンである東洋紡社製「東洋紡ナイロンT−800」
PA6(ロ): 相対粘度RV=3.1の6ナイロンである東洋紡社製「東洋紡ナイロンT−820」
PA6T/6: 相対粘度RV=2.6の芳香族ナイロンであるBASF社製「KR4351」
MXD6: 相対粘度RV=2.1のMXD6ナイロン、「東洋紡ナイロンT−600」
PA66: 相対粘度RV=2.78の66ナイロン、「東レアミランCN3001N」
PCL: 分子量70000のポリカプロラクトンであるダイセル化学工業社製「PCL−H7」
PLA: 融点164℃のポリ乳酸である三井化学社製「レイシアH100」
ポリエステルエラストマー(イ): 融点210℃、溶液粘度1.45dl/gのポリブチレンテレフタレート/ポリカプロラクトン=57/43(重量%)共重合体である東洋紡社製「GS430」
ポリエステルエラストマー(ロ): 融点203℃、溶液粘度1.95dl/gのポリブチレンテレフタレート/PTMG=53/47(重量%)共重合体である東洋紡社製「GP84D」
PET: 相対粘度IV=0.63のポリエチレンテレフタレートである東洋紡社製「RE530」
ポリアミドエラストマー: 密度1.01g/cm、融点160℃のポリエーテルブロックアミド共重合体であるアルケマ社製「PEBAX4033」
PA9T: 融点304℃のノナンジアミンとテレフタール酸共重合体であるクラレ社製「ジェネスタN1000A」
架橋助剤A: 日本化成社製トリメタリルイソシアヌレートである「TMAIC」
架橋助剤B: 日本化成社製トリアリルイソシアヌレートである「TAIC」
離型剤: クラリアント社製 モンタン酸エステルワックス「WE40」
安定剤: チバスペシャリティケミカルズ社製 「イルガノックスB1171」
実施例1、比較例1
二軸押出機(池貝PCM30ダイス直径4mm×2孔)を用いて、熱可塑性樹脂(A)としてPA6(イ)を用い、架橋助剤Bを表1に記載した比率および条件で溶融混練し、ストランドを冷却およびカットしてペレットを得た。得られたペレットを乾燥後アルミ防湿袋に入れ、Co−60を線源とするγ線照射装置(MDS Nordion社製、型式JS10000HD)で表1中記載の線量に達するまでγ線を照射し、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)である実施例1−1、比較例1−1〜1−5のサンプルペレットを得た。得られたサンプルペレットは前述に詳細を記載した方法で、(1)良溶媒への不溶性、(2)熱可塑性樹脂(A)に対する分散性、(3)架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の溶融時貯蔵弾性率、損失弾性率を測定した。周波数0.1〜10rad/s範囲の貯蔵弾性率-周波数両対数プロット曲線における貯蔵弾性率の傾きαと損失弾性率-周波数両対数プロット曲線における損失弾性率の傾きβとを求め、tanδの周波数依存性パラメーターとなるα−βを求めた。その結果を表1に示す。
熱可塑性樹脂(B)として、MXD6、PA(イ)、PA(ロ)、PA6T6、PA66を用い、その粘度特性改良効果については、実験例1(表2)に示した。なお、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)と熱可塑性樹脂(B)との溶融混練は、表2中記載の比率および条件で二軸押出機(池貝PCM30ダイス直径4mm×2孔)を用いて行ない、ストランドを冷却およびカットして得たペレットでキャピロ曲線による溶融粘度評価を行なった。また、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の分散状態については実験例で得られたペレットを研磨し、リンタングステン酸水溶液で染色したものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するか、クライオミクロトームで得た凍結切片をRuOで染色したものを透過型電子顕微鏡で観察し、その構造を確認した。
実施例1−1〜4−1、比較例1−1〜4−4 および実験例1−1〜4−5で、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が非架橋の熱可塑性樹脂(B)に対して良好な分散性と明確な粘度改良効果があることが分かる。溶媒に不溶であった比較例は熱可塑性樹脂(B)に対して二軸混錬でも良好な分散をせず、分散不良となったゲル化物が100μm以上で残存するため熱可塑性樹脂(B)の改質材としては適さない。架橋熱可塑性樹脂組成物が溶媒に溶解する比較例は熱可塑性樹脂(B)との混錬によって粘度改良の効果がない。比較例においては分散性も安定しないため分散構造制御も困難であることが示されている。
実施例2、比較例2
熱可塑性樹脂(A)をPCLとし、熱可塑性樹脂(B)をPLAとする以外は、実施例1、比較例1と同様にして実施例2−1、比較例2−1〜2−5のサンプルペレットを製造し、得られたサンプルペレットを実施例1、比較例1と同様にして評価した。その結果を表3、表4に示す。
実施例3、比較例3
熱可塑性樹脂(A)としてポリエステルエラストマー(イ)および(ロ)、熱可塑性樹脂(B)としてPET、ポリエステルエラストマー(イ)および(ロ)を用いた以外は実施例1、比較例1と同様にして実施例3−1、比較例3−1〜3−5のサンプルペレットを製造し、得られたサンプルペレットを実施例1、比較例1と同様にして評価した。その結果を表5、表6に示す。
実験例3−4、実験例3−5については同素材同士の分散であるため電子顕微鏡による観察やSPM観察、もしくは微分干渉顕微鏡によって架橋熱可塑性樹脂非架橋熱可塑樹脂の分散構造を可視化ことはできなかった。
実施例4、比較例4
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドエラストマー(イ)、熱可塑性樹脂(B)としてPA66、ポリアミドエラストマー(イ)およびPA9Tを用いた以外は実施例1、比較例1と同様にして実施例4−1、比較例4−1〜4−4のサンプルペレットを製造し、得られたサンプルペレットを実施例1、比較例1と同様にして評価した。その結果を表7、表8に示す。
実施例1−1〜4−1、比較例1−1〜4−4 および実験例1−1〜4−5で、本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が非架橋の熱可塑性樹脂(B)に対して良好な分散性と明確な粘度改良効果があることが分かる。溶媒に不溶であった比較例は熱可塑性樹脂(B)に対して2軸混錬でも良好な分散をせず、分散不良となったゲル化物が100μm以上で残存するため熱可塑性樹脂(B)の改質材としては適さない。架橋熱可塑性樹脂組成物が溶媒に溶解する比較例は熱可塑性樹脂(B)との混錬によって粘度改良の効果がない。比較例においては分散性も安定しないため分散構造制御も困難であることが示されている。
次いで図について補足説明する。
図1には実施例2−1、比較例2−1の架橋熱可塑性樹脂組成物の190℃における貯蔵弾性率、損失弾性率周波数依存性を示す。本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物は貯蔵弾性率(G’)の各周波数における値は、比較例に比べて明らかに増大し、実施例における周波数に対する貯蔵弾性率の傾きは比較例のそれに比べ減少していることが示されている。損失弾性率(G’’)はG’よりも低い値となっているがこの様な架橋熱可塑性樹脂組成物でも非架橋熱可塑性樹脂に分散できることが分かる。
図2には実施例3−1、比較例3−1の架橋熱可塑性樹脂組成物の220℃における貯蔵弾性率、損失弾性率周波数依存性を示す。ここでも本発明の架橋熱可塑性樹脂組成物は貯蔵弾性率(G’)の周波数に対する傾きは、比較例に比べて明らかに減少していることが示されている。
図3には実施例1−1と比較例1−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を用いた実験例1−1と1−2で得た樹脂組成物のSEM画像を示す。実施例1−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を使用した実験例1−1では本発明による架橋熱可塑性樹脂組成物とMXD6が独立で分散している様子が観察されるのに対して、比較例1−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を用いた実験例1−2は2種の樹脂組成物のSEMにおける観察では見かけ上均一な状態となるまで相溶しており、単独の分散構造をとっていないことが分かる。
図4には実施例3−1、比較例3−1の架橋熱可塑性樹脂組成物を用いた実験例3−1、3−2の微分干渉顕微鏡画像を示す。実験例3−1の架橋熱可塑性樹脂組成物は本発明による架橋熱可塑性樹脂組成物がPET樹脂に均一かつ微細に分散している様子が示されているのに対して、実験例3−2で得られたペレットの構造は不均一かつ粗大な分散構造であり、明らかに顕著な相分離挙動を示している様子が観察される。
本発明は溶融混合される熱可塑性樹脂の特性を損なうことなく、すくなくともブロー成形性や押出特性に有利なレオロジー改良効果を付与することがでると同時に、架橋樹脂の特性である耐熱性や各種の機械特性を付与する。さらに機能設計のためのモルフォロジー構造制御に新しい手法として加える価値のあるものである。したがって摺動性や各種のバリア、導電性などの機能特性、および等の種々の機能設計を分散構造設計によって付与できる可能性を広げ、幅広い分野での樹脂改質に有用な架橋熱可塑性樹脂組成物である。そのため家電製品や自動車部品および各種の押出製品等の幅広い分野で使用することが出来る。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂(A)を架橋処理して得られた架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)あって、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が熱可塑性樹脂(A)の溶媒に溶解せずに該溶媒と溶媒ゲルを形成する架橋状態を示し、該架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)の溶融時の粘弾性特性が周波数‐貯蔵弾性率の両対数プロット曲線において0.1〜10rad/sの範囲で周波数に対する貯蔵弾性率の傾きが0.2〜 1.0であり、かつ、架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)を熱可塑性樹脂(A)に相溶性の熱可塑性樹脂(B)と300sec-1以上のせん断速度で溶融混練した場合に、熱可塑性樹脂(B)中に最大粒子径100μm以上のゲルを生成することなく溶融分散することを特徴とする架橋熱可塑性樹脂組成物。
  2. 溶融時の粘弾性特性が、周波数0.1〜10rad/s範囲の周波数-貯蔵弾性率の両対数プロット曲線における貯蔵弾性率の傾きをα、周波数-損失弾性率の両対数プロット曲線における損失弾性率の傾きをβとしたとき、αとβの差の絶対値が0.15以下である請求項1記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂(A)が架橋助剤及び/又は有機過酸化物を含有する請求項1又は2記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  4. 架橋処理が活性エネルギー線照射処理である請求項1〜3のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  5. 活性エネルギー線が放射線である請求項1〜4のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  6. 動的粘弾性測定における融点以上の貯蔵弾性率が0.1〜10rad/s の範囲で1E+5Pa以下である請求項1〜5のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  7. 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)中の少なくとも50重量%がポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  8. 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリカプロラクトン50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部とを含む樹脂組成物を溶融混練して得たペレットを吸収線量0.5〜25kGyに放射線照射されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  9. 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリエステルエラストマー50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練して得たペレットを吸収線量0.5〜60kGyに放射線照射されてなる請求項1〜のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
  10. 架橋熱可塑性樹脂組成物(A’)が、ポリアミド50〜99.9重量部と架橋助剤0.1〜3重量部を含む樹脂組成物を溶融混練して得たペレットを吸収線量0.5〜20kGyに放射線照射されてなる請求項1〜のいずれかに記載の架橋熱可塑性樹脂組成物。
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