JP2012111940A - ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド樹脂発泡成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド樹脂発泡成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れかつ充分に軽量で高い耐荷重性を持つ発泡成形体を簡便な成形方法で与えうるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)と、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し、重量平均分子量4000〜25000であり、かつエポキシ価が400〜2500当量/1×106gであるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)と、無機強化材(C)とを、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、前記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が0.2〜25質量部、前記無機強化材(C)が0〜350質量部となる割合で含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂の耐熱性を損なうことなく、軽量で高い耐荷重性を持つ発泡成形体を簡便な成形方法で与えうるポリアミド樹脂組成物と、これを用いたポリアミド樹脂発泡成形体とに関する。
ポリアミド樹脂発泡成形体の製造方法としては、一般に化学発泡剤を用いる方法が知られている。化学発泡法は、原料樹脂と加熱により分解してガス発生する有機発泡剤とを混合し、該発泡剤の分解温度以上に加熱することにより発泡成形する方法である。例えば特許文献1においては、ポリアミド3元共重合体を用い、化学発泡剤によって比重1.2のポリアミド発泡成形体を得ている。しかし、このポリアミド発泡体は、発泡倍率が低く、軽量化を充分に満足させることはできなかった。
また化学発泡剤を用いた方法以外のポリアミド樹脂発泡成形体の製造方法として、特許文献2では、あらかじめポリアミド成形体に二酸化炭素を吸収させ、後工程で加熱することによって2倍の発泡倍率でポリアミド発泡成形体を得る方法が提案されている。しかし、この方法で得られたポリアミド発泡成形体も、やはり充分に軽量化されているとは言えず、しかも成形工程と発泡工程が実質別工程となっているため、煩雑で生産性が悪いという欠点がある。
さらに特許文献3では、窒素もしくは二酸化炭素の超臨界流体を溶融樹脂に溶解させて射出成形する発泡ポリアミド成形体の製造方法を開示している。しかし、この方法も発泡倍率は1.25と低く、充分な軽量化を実現できなかった。
他方、特許文献4では、ポリスチレン樹脂を用いて平均セル径の微細な発泡成形体を得る方法が開示されているが、目的の発泡成形体を得るためには、一般的な射出成形機に加えて、特殊な射出プランジャーと特殊な射出装置とが別途必要であり、汎用性に欠けるという欠点がある。しかも、当該文献で報告されている発泡成形体は、既存の発泡成形法においても比較的発泡成形が容易なポリスチレン樹脂を用いたもののみであり、この方法を発泡成形が難しいポリアミド樹脂に適用したとしても、所望の発泡成形体を容易に得ることはできないのが実情であった。
さらに特許文献5では、金型内に充填した溶融樹脂が冷却過程で一定の粘弾性状態になった時に、コア側金型を型開き方向に移動させるとともに金型内樹脂に臨界状態の不活性ガスを直接注入することにより発泡成形体を得る方法が提案されている。しかし、この方法では、固化速度の速い結晶性ポリアミドは適当な粘弾性状態を保持する時間が短いため、均一な発泡セルを形成するのは困難であった。
特開2009−249549号公報 特開2006−35687号公報 特開2005−126545号公報 特開2006−69215号公報 特開2006−212945号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性に優れかつ充分に軽量で高い耐荷重性を持つ発泡成形体を簡便な成形方法で与えうるポリアミド樹脂組成物と、これを用いたポリアミド樹脂発泡成形体とを提供することにある。
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、ポリアミド樹脂の固化速度をコントロールし、溶融時の線形−非線形領域における変形の緩和効果を増大させることを目指し、これを達成するには、ポリアミド樹脂とともに特定のグリシジル基含有スチレン系共重合体を所定の比率で含有させればよいことを見出した。そして、かかる特定のグリシジル基含有スチレン系共重合体を含むポリアミド樹脂組成物を射出成形の原料に用いれば、耐熱性に優れかつ充分に軽量で高い耐荷重性を持つ発泡成形体が得られることを確認した。さらに、発泡成形体を製造するにあたり、射出成形直後に金型を拡張させるプロセスを適用すれば、軽量性と耐荷重性をより高めることができることをも見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)ポリアミド樹脂(A)と、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し、重量平均分子量4000〜25000であり、かつエポキシ価が400〜2500当量/1×106gであるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)と、無機強化材(C)とを、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、前記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が0.2〜25質量部、前記無機強化材(C)が0〜350質量部となる割合で含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)ポリアミド樹脂(A)が、結晶性ポリアミド樹脂(a)と非結晶性ポリアミド樹脂(b)とからなり、その比率が(a):(b)=0〜100:100〜0(質量比)である前記(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、(X)20〜99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1〜80質量%のグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、および(Z)0〜79質量%のエポキシ基を含有していない前記(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体である前記(1)又は(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率(単位:Pa)を、周波数(x)と貯蔵弾性率(y)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y=axα;ここでaは定数)をαとし、線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる損失弾性率(単位:Pa)を、周波数(x’)と損失弾性率(y’)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y’=bx’β;ここでbは定数)をβとしたとき、ポリアミド樹脂(A)およびグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)からなるマトリクス組成物のαが1.4未満であり、かつα−βの絶対値が0.5以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とするポリアミド樹脂発泡成形体。
(6)樹脂連続相と平均セル径10〜300μmの独立した発泡セルから構成される発泡層と、該発泡層に積層された厚み100〜800μmの非発泡スキン層とが前記ポリアミド樹脂組成物により形成されており、比重が0.2〜1.0である前記(5)記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
(7)前記発泡層の両面に前記非発泡スキン層が設けられたサンドイッチ構造を有する前記(6)記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
(8)型締めされた複数の金型で形成されるキャビティ内に溶融状態の前記ポリアミド樹脂組成物を化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガスとともに射出、充填し、表層に厚み100〜800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型を型開き方向へ移動してキャビティの容積を拡大させることにより得られた前記(5)〜(7)のいずれかに記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
本発明によれば、耐熱性に優れかつ充分に軽量で高い耐荷重性を持つ発泡成形体を簡便な成形方法で与えうるポリアミド樹脂組成物と、これを用いたポリアミド樹脂発泡成形体とを提供することができる。かかるポリアミド樹脂発泡成形体は、均一で発泡倍率が高い発泡構造を有し、優れた軽量性と耐荷重性を兼ね備えるものであるので、自動車部品や家電部品などの用途において、要求特性の高い樹脂機能部品や機能性を求められる意匠部品として好適に用いることができる。
図1は、本発明の一実施形態(実施例27)であるポリアミド樹脂発泡成形体の断面写真である。 図2は、比較例9のポリアミド樹脂発泡成形体の断面写真である。 図3は、本発明のポリアミド樹脂発泡成形体の製造方法の一例を説明するための概略構成図である。 図4は、実施例4におけるマトリクス組成物の溶融粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率、損失弾性率の周波数依存データのグラフである。 図5は、比較例1におけるマトリクス組成物の溶融粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率、損失弾性率の周波数依存データのグラフである。
以下、本発明のポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた発泡成形体について詳述する。
(ポリアミド樹脂組成物)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、特定のグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)と、必要に応じて無機強化材(C)とを含有する。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)は、ラクタムやω−アミノカルボン酸、ジカルボン酸及びジアミンなどを原料とするものであり、このようなアミン成分及び酸成分の重縮合によって得られるポリアミド樹脂、又はこれらの共重合体やブレンド物である。
具体的には、ポリアミド樹脂(A)を構成するアミン成分としては、例えば、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカメチレンジアミン、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,18−オクタデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン;ピペラジン、シクロヘキサンジアミン、ビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタン、ビス−(4,4‘−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミンのような脂環式ジアミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびこれらの水添物;等が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)を構成する酸成分としては、多価カルボン酸や酸無水物が挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸;等が挙げられる。
また、ポリアミド樹脂(A)を構成する成分としては、ε−カプロラクタムなどのラクタムおよびこれらが開環した構造であるアミノカルボン酸、ウンデカンラクタム、又はラウリルラクタムおよびこれらが開環した構造である11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸なども挙げられる。これらの成分より重合されるポリアミド樹脂(A)としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロンM−5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン6T(H))、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド・ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6T6I)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACM・I)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)などのポリアミドのほか、これらポリアミド群の共重合体および/もしくはこれらのブレンド組成物が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)としては、結晶化の速い結晶性ポリアミド樹脂(a)と、結晶性ポリアミド樹脂(a)の結晶化速度を低下させる効果のある非結晶性ポリアミド樹脂(b)とをブレンドして結晶化速度をコントロールすることが好ましい。結晶性ポリアミド樹脂(a)としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などの結晶性脂肪族ポリアミドが挙げられるがこれに限定されるものではない。非結晶性ポリアミド樹脂(b)としては、結晶性ポリアミド樹脂(a)との相溶性の高いポリアミドが好ましく、この観点からは、例えば、ナイロン6T6I、ナイロンPACM14、ナイロンPACM12、ナイロンPACM12・Iなどが好ましい。結晶化速度の低下効果はDSC降温時結晶化温度(Tc2)で評価することができ、ポリアミド樹脂(A)としては200℃以下であることが好ましく、さらに190℃以下であることが特に好ましい。
ポリアミド樹脂(A)が結晶性ポリアミド樹脂(a)と非結晶性ポリアミド樹脂(b)とのブレンド組成である場合は、耐熱性の観点から少なくとも1つの樹脂のDSC融点は150℃以上350℃以下であることが好ましい。融点が150℃未満では耐熱性が不充分になる傾向があり、融点が350℃を超えると、成形プロセスにおいて分解が進む可能性が高く、良好な成形性および安定した発泡成形体を得にくくなる。このような融点を示す樹脂には、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)が含まれる。
ポリアミド樹脂(A)の主成分(全てのポリアミド樹脂(A)のうちの80質量%以上)が非結晶性ポリアミド樹脂(b)である場合は、ガラス転移温度が120℃以上、200℃以下の非結晶性ポリアミドが好ましい。ガラス転移温度が120℃未満であれば、耐熱性が不充分となる虞があり、ガラス転移点が200℃を超えると固化温度が高すぎるため後述する金型を拡張する発泡法が適用しにくくなる。
ポリアミド樹脂(A)が結晶性ポリアミド樹脂(a)と非結晶性ポリアミド樹脂(b)とのブレンド組成である場合、両者の比率は、結晶性ポリアミド樹脂(a):非結晶性ポリアミド樹脂(b)=0〜100:100〜0(質量比)であればよいが、好ましくは結晶性ポリアミド樹脂(a):非結晶性ポリアミド樹脂(b)=97:3〜50:50、より好ましくは95:5〜50:50である。
ポリアミド樹脂(A)の96%濃硫酸中20℃で測定した相対粘度(RV)は、0.4〜4.0が好ましく、より好ましくは1.0〜3.5、さらに好ましくは1.5〜3.0である。ポリアミドの相対粘度を一定範囲とする方法としては、分子量を調整する手段が挙げられる。なお、本明細書で記載の相対粘度(RV)は、いずれも96%濃硫酸中20℃で測定したものである。
ポリアミド樹脂(A)は、アミノ基とカルボキシル基とのモル比を調整して重縮合する方法や末端封止剤を添加する方法によって、ポリアミドの末端基量および分子量を調整することができる。アミノ基とカルボキシル基とのモル比を一定比率で重縮合する場合には、使用する全ジアミンと全ジカルボン酸のモル比をジアミン/ジカルボン酸=1.00/1.05から1.10/1.00の範囲に調整することが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の末端を封鎖する場合は、末端封止剤を添加する時期として、原料仕込み時、重合開始時、重合後期、または重合終了時が挙げられる。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物(無水フタル酸等)、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを使用することができる。具体的には、末端封止剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)の酸価およびアミン価としては、いずれも0〜200当量/1×106gが好ましく、0〜100当量/1×106gであることがより好ましい。末端官能基が200当量/1×106gを超えると、溶融滞留時にゲル化や劣化が生じやすくなるだけでなく、使用環境下においても、着色や加水分解等の問題を引き起こす虞がある。特に、ガラスファイバーやマレイン酸変性ポリオレフィンなどの反応性化合物をコンパウンドする際は、反応性および反応基に合わせ、酸価および/またはアミン価を5〜100当量/1×106gとすることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の分子量は、特に限定されないが、後述する実施例で記載の方法で測定した数平均分子量が、3000〜40000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が3000より小さいと機械的強度が低下し、逆に40000より大きいと分子量が高くなりすぎて成形性を損なう虞があるので、いずれも好ましくない。
本発明で用いられるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)としては、例えば、(X)ビニル芳香族モノマーと、(Y)グリシジルアルキル(メタ)アクリレートと、必要に応じて(Z)エポキシ基を含有していない前記(X)以外のビニル基含有モノマー(以下「その他のビニル基含有モノマー」と称する)とを含有する単量体混合物を重合して得られるものを用いることができる。本発明では、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を含有させることにより、分子量を増加させて溶融伸張粘度増大効果を発現させることにより、加工条件管理幅を広げ、その結果、耐熱性とともに優れた軽量性および耐荷重性を有する発泡成形体を得るという所期の目的を達成することができるのである。
(X)ビニル芳香族モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。(Y)グリシジルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、反応性の高い点で(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。(Z)その他のビニル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。また(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンモノマーなどもその他のビニル基含有モノマーとして使用可能である。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、(X)20〜99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1〜80質量%のグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、および(Z)0〜79質量%のその他のビニル基含有モノマーからなる共重合体であることが好ましい。より好ましくは(X)が20〜99質量%、(Y)が1〜80質量%、(Z)が0〜40質量%からなる共重合体であり、さらに好ましくは(X)が25〜90質量%、(Y)が10〜75質量%、(Z)が0〜35質量%からなる共重合体である。これらの組成は、ポリアミド樹脂(A)との反応に寄与する官能基濃度に影響するため、前記範囲に適切に制御することが好ましい。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の具体例としては、例えば、スチレン/メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック、フェノールノボラック型のエポキシ系化合物等が挙げられる。グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は1種のみであってもよいし2種以上を混合して使用することももちろん可能である。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、ポリアミド樹脂(A)の持つアミノ基あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基として、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有することが重要である。これにより、速やかに樹脂全体に一部架橋を導入することができ、溶融押出時においてポリアミド樹脂(A)の持つアミノ基あるいはカルボキシル基とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)との反応により一部が架橋生成物となり、溶融伸張粘度向上効果を得ることができるのである。なお、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)中のグリシジル基は、例えばポリマーの主鎖、側鎖、末端のいずれに存在していてもよい。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、溶融伸張粘度調整が可能であるように制御するために、重量平均分子量が4000〜25000であることが重要である。重量平均分子量は、好ましくは5000〜15000、より好ましくは6000〜10000である。グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の重量平均分子量が4000未満であると、未反応のグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が成形工程で揮発し、もしくは成形品表面にブリードアウトし、製品の接着性低下、表面の汚染をひきおこす可能性がある。さらにグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)同士の過剰な反応による焼けゴミが生成し、混練時の生産性低下や最終製品の品質低下に繋がる。一方、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の重量平均分子量が25000を超えると、混練押出時の反応が遅くなって分子量保持の効果が下がるだけでなく、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性が悪くなる為、ポリアミド樹脂(A)が本来持つ耐熱性等の耐久性が低下する可能性が大きくなる。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)のエポキシ価は、400〜2500当量/1×106gであることが重要である。好ましくは500〜1500当量/1×106gであり、より好ましくは600〜1000当量/1×106gである。エポキシ価が400当量/1×106g未満であると、目標としたレオロジーコントロールの効果が発現しないことがあり、2500当量/1×106gを超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えることがある。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.2〜25質量部である。好ましくは0.2〜15質量部、より好ましくは0.3〜12質量部である。0.2質量部未満であると、目標としたレオロジーコントロールの効果を発現させにくくなることがあり、25質量部を超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えたり、成形品の機械的特性に影響を与える傾向がある。
本発明で用いられる無機強化材(C)は、強度や剛性および耐熱性等の物性を最も効果的に改良するものであり、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ジルコニヤ繊維等の繊維状のもの、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウイスカー類、針状ワラストナイト、ミルドフファイバー等を挙げることができる。またこれらのほか、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、層間剥離を目的として有機処理を施した層状ケイ酸塩等の充填材も無機強化材(C)として用いることができる。これらの中でも特に、ガラス繊維、炭素繊維などが好ましく用いられる。これら無機強化材(C)は、1種のみであってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
例えばガラス繊維としては、繊維長1〜20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面や非円形断面のガラス繊維を用いることができる。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において、略楕円形、略長円形、略繭形であるものをも含み、その場合偏平度が1.5〜8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1〜20μm、長径2〜100μm程度である。
無機強化材(C)は、ポリアミド樹脂(A)との親和性を向上させるため、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ系化合物等のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基と反応しやすいものが特に好ましい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のいずれを使用しても良いが、その中でも特に、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤などのシラン系カップリング剤が好ましい。例えばカップリング剤で処理してあるガラス繊維を配合したポリアミド樹脂組成物では機械的特性や外観特性に優れた成形品が得られるので好ましい。なお、カップリング剤による処理は、予め行うことが好ましいが、カップリング剤を後添加して使用することもできる。
無機強化材(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0〜350質量部である。好ましくは0〜150質量部、より好ましくは0〜120質量部である。無機強化材(C)が350質量部を超えると、発泡時の溶融樹脂の伸びが低くなり、隣接するセル同士が結合して粗大化しやすくなる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及び無機強化材(C)の含有割合は、ポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及び無機強化材(C)の合計100質量%に対して、ポリアミド樹脂(A)が30〜99質量%、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が0.2〜10質量%、無機強化材(C)が0〜65質量%であることが好ましい。より好ましくは、ポリアミド樹脂(A)が40〜95質量%、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が0.5〜10質量%、無機強化材(C)が0〜55質量%である。さらに好ましくは、ポリアミド樹脂(A)が50〜90質量%、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が1.2〜10質量%、無機強化材(C)が0〜45質量%であり、特にポリアミド樹脂(A)は60質量%以上がよい。ポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及び無機強化材(C)がそれぞれ前記割合で含有されていることにより、目標としたレオロジーコントロールの効果をより効果的に発現させて、耐熱性とともに優れた軽量性および耐荷重性を有する発泡成形体を得ることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、前述のもの以外に、ポリアミド樹脂に従来から使用されている各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、離型剤、摺動性改良材、着色剤、可塑剤、結晶核剤などが挙げられる。また添加剤として、金型等の金属腐食を防止する目的でハイドロタルサイト系化合物を用いることもできる。添加剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ホスファイト化合物、チオエーテル系化合物などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤、金属不活性化剤などが挙げられる。また熱安定剤の一つとして、銅化合物(具体的には、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、燐酸第二銅、ピロリン酸第二銅、硫化銅、硝酸銅、酢酸銅などの有機カルボン酸の銅塩など)が、120℃以上の高温環境下で有効な長期熱老化を防止しうるので有用である。さらにこの銅化合物は、ハロゲン化アルカリ金属化合物と併用することが好ましい。ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。安定剤を含有させる場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0〜5質量部とするのが好ましい。特に安定剤が銅化合物の場合には、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
難燃剤としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物の組み合わせが好ましい。ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン及び臭素化架橋芳香族重合体等が好ましく、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が好ましい。中でも、熱安定性の点で、ジブロムポリスチレンと三酸化アンチモンとの組み合わせが好ましい。また、難燃剤として非ハロゲン系難燃剤を用いることもでき、具体的には、メラミンシアヌレート、赤リン、ホスフィン酸の金属塩、含窒素リン酸系の化合物などが挙げられる。特に、ホスフィン酸金属塩と含窒素リン酸系化合物(例えばメラミンのほか、メラム、メロンのようなメラミンの縮合物とポリリン酸の反応生成物またはそれらの混合物を含む)との組み合わせが好ましい。難燃剤を含有させる場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0〜50質量部とするのが好ましく、より好ましくは0〜40質量部、さらに好ましくは0〜30質量部である。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上のものが好ましく、例えばステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、これらは部分的もしくは全カルボン酸がモノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していてもよい。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。離型剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。離型剤を含有させる場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0〜5質量部とするのが好ましい。
摺動性改良材としては、高分子量ポリエチレン、酸変性高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、シリコン樹脂、シリコンオイル、亜鉛、グラファイト、鉱物油等が挙げられる。摺動性改良材を含有させる場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.05〜3質量部とするのが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応効率を上げ、耐衝撃性を向上させる目的で、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(変性ポリオレフィン)を含有させてもよい。この変性ポリオレフィンは、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有する単量体を共重合やグラフト重合などによって未変性ポリオレフィンの分子鎖中に含ませたα−オレフィン(共)重合体である。
上述したオレフィン系重合体を得る際に用いることのできる未変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテンなどのホモポリマーのほか、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン、1,4−ヘキサジエンジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1’−プロぺニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種を通常の金属触媒あるいはメタロセン系高性能触媒等を用いてラジカル重合して得られるポリオレフィンを挙げられる。具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添ポリブタジエン、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体などが挙げられる。これらのうちジエン系エラストマとしては、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるA−B型またはA−B−A´型のブロック共重合弾性体であり、末端ブロックAおよびA´は同一でも異なってもよく、かつ芳香族部分が単環でも多環でもよいビニル系芳香族炭化水素から誘導された熱可塑性単独重合体または共重合体が挙げられ、かかるビニル系芳香族炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルキシレン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物などが挙げられる。中間重合体ブロックBは共役ジエン系炭化水素からなり、例えば1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンおよびそれらの混合物から誘導された重合体などが挙げられる。また上記ブロック共重合体の中間重合体ブロックBが水添処理を受けたものも用いることができる。
未変性ポリオレフィンにカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を導入する方法としては、特に制限はなく、共重合や未変性ポリオレフィンにラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。これらの官能基含有成分の導入量は、共重合の場合は、変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマー全体に対して0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜12モル%の範囲内がよく、グラフトの場合は、変性ポリオレフィン質量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜6質量%の範囲内がよい。官能基含有成分の導入量が少なすぎると、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応促進効果が充分に得られない場合や耐衝撃性が充分に付与されない場合があり、逆に多すぎると、溶融粘度の安定性が損なわれる虞がある。
カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(変性ポリオレフィン)の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体(ここで「−g−」はグラフトを表わす(以下同じ))、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体などを挙げることができる。これらの中でも、アミンとの反応性が高いカルボン酸無水物基を有する(共)重合体が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。ポリアミド樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。これら他の熱可塑性樹脂とポリアミド樹脂(A)との相溶性が低い場合には、必要に応じて、反応性化合物やブロックポリマー等の相溶化剤を添加したり、他の熱可塑性樹脂を変性(特に酸変性が好ましい)すればよい。他の熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂(A)に対して溶融混練により溶融状態でブレンドしてもよいし、他の熱可塑性樹脂を繊維状や粒子状に成形し、ポリアミド樹脂(A)中に分散してもよい。他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0〜50質量部とするのが好ましく、より好ましくは0〜35質量部、さらに好ましくは0〜20質量部である。
なお、本発明のポリアミド樹脂組成物においては、上述した任意の含有成分のいずれかとして、ポリアミド樹脂(A)のアミノ基あるいはカルボキシル基と反応する置換基を有する化合物や重合体等を用いることにより、かかる反応性の置換基を導入し、架橋度を上げるようにしてもよい。反応性の置換基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基等の官能基や、ラクトン、ラクチド、ラクタム等のポリエステル末端と開環付加しうる官能基等が挙げられ、これらの中でもグリシジル基あるいはカルボジイミド基が反応の速さの観点で好ましい。このような置換基は1種のみであってもよいし2種以上であってもよく、また1分子中に異なった種類の官能基を持つことも差し支えない。なお、反応性の置換基を導入する場合、その導入量は、高度架橋によりゲル等が発生しない範囲とするのがよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応によってゲルには至らない比較的ゆるやかな架橋や分岐構造が生成する。このためポリアミド樹脂組成物の溶融状態において分子の絡み合い効果を増大させうることができる。この反応生成物は溶融粘度を増大させるだけでなく、溶融状態でひずみを与えられた場合、長時間緩和成分として広いせん断速度領域において緩和挙動を遅くする効果を発現すると考えられる。
線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率(単位:Pa)を周波数(x)と貯蔵弾性率(y)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y=axα;ここでaは定数)αと、線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる損失弾性率(単位:Pa)を周波数(x’)と損失弾性率(y’)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y’=bx’β;ここでbは定数)βとについて、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応によって長時間緩和成分が生成した場合、貯蔵弾性率のせん断速度依存性が変化するため、αの値が変わってくる。また、ひずみを与えた後、瞬時に緩和する場合のαの値は理論的にα=2であり、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を含有しない場合のポリアミド樹脂のαの値が一般的にα=1.5〜2.0である。このことから、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応によってα値が1.4未満となる場合は、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)との反応によって長時間緩和成分が生成していることを示す。また、βの値は、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)との反応に大きく依存しないため、α−βの絶対値がより小さくなるような溶融粘弾性傾向は、長時間緩和成分の生成によって特に低せん断における溶融張力がより高くなる傾向を示しており、さらには発泡成形におけるセル成長プロセスでセルの破泡によるセル粗大化を抑制しうる改質であることを示す。このように本発明では発泡プロセスにおいてセルが破泡して粗大化しない溶融状態となるため、発泡成形の成形性と生産性に優れており、微細で均一な発泡成形体を得ることができると推測している。逆に、α値が1.4以上となる場合は、ポリアミド樹脂において長時間緩和成分がないので発泡成形には適さない。さらにα−βの絶対値が0.5を超えるということは、βの分子量や構造に対する依存性が少ないことを考えると、発泡セルの成長する低せん断領域ではより粘性体に近い溶融状態であることを示し、発泡における溶融状態は発泡セル間壁が破れやすいことを示すため好ましくない。
なお上記α値が1.4未満であり、α値−β値の絶対値が0.5以下であるという条件を満足させるには、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の反応を適切な条件で実施すればよい。具体的には、ポリアミド樹脂(A)やグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)、さらには無機強化材(C)の種類および量にもよるが、好ましくは本発明で示される(A)〜(C)の各成分(ポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)および必要に応じて無機強化材(C))の含有量の範囲とし、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)との反応に必要な時間、マトリクス組成物に充分に高いせん断応力をかけうるような押出機スクリュー構成、温度設定、スクリュー回転数、時間当たり押し出し量などのコンパウンド条件を選定すればよい。
一般に発泡成形における発泡は、樹脂の冷却プロセスでコントロールされるのが最も効率的である。発泡セルの成長は比較的低い剪断速度下での溶融樹脂の変形を伴うため、溶融状態における緩和挙動が早すぎると、発泡セル間壁が伸張に耐えられず隣同士のセルが同一化して微細発泡セルを形成できないが、上述したような挙動(すなわち上述した範囲のα値およびβ値を有すること)をとるマトリクス組成物は、特にα値の範囲から分かるように、溶融時の変形において緩和挙動が遅くなるように改質されており、発泡プロセスにおける溶融挙動がより発泡しやすい状態になる。そのため、発泡成形の成形性と生産性に優れ、かつエンジニアリングプラスチックと呼ばれる耐熱レベルの高い樹脂においても微細で均一な発泡成形体を得ることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物を調製するにあたり、ポリアミド樹脂(A)とグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)やその他の任意成分とを混合する方法は特に制限されない。例えば、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)やその他の任意成分(無機強化材(C)や添加剤等)は、重合終了後のポリアミド樹脂(A)に対して添加することができる。具体的には、1)重合終了後の重合機内に添加するか、2)重合機を出た直後の溶融状態のポリアミド樹脂に直接添加して混練するか、あるいは3)固体化(たとえば粉末、ペレット状など)したポリアミド樹脂(A)に添加した後、溶融混練するなどの方法が適用できる。上記1)または2)の方法においては、ポリアミド樹脂が溶融状態にあるので、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)等の添加によりそのまま高溶融粘度化されるが、上記3)の方法においては、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)等を均一に分散混合させたポリアミド樹脂(A)は高溶融粘度化のために加熱再溶融することが望ましい。
加熱再溶融方法には特に制限はなく、当業者に周知のいずれの方法を採用してもよく、例えば、単軸押出機、2軸押出機、加圧ニーダ、バンバリーミキサ等を使用できる。これらの中でも特に2軸押出機は好ましく用いられる。2軸押出機の運転条件等は、ポリアミド樹脂(A)の種類、各含有成分の種類や量など種々の要因により異なり一義的に決められないが、例えば、運転温度は、ポリアミド樹脂の融点(一般に170〜320℃程度)+25℃前後で設定すればよい。運転時間は10分間以内、例えば1分から数分間で充分目的とする溶融粘度に到達すると考えてよい。押出機のスクリュー構成は、練りの優れるニーディングディスクを数箇所組み込むことが好ましい。
かくして得られた本発明のポリアミド樹脂組成物は、溶融状態における粘度安定性が高く、特に発泡成形に適した溶融レオロジー特性を有している。
(ポリアミド樹脂発泡成形体)
本発明のポリアミド樹脂発泡成形体は、上述した本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたものである。かかる本発明のポリアミド樹脂発泡成形体は、表層に存在する非発泡スキン層と内層に存在する発泡層とを備えており、これら非発泡スキン層及び発泡層は上述した本発明のポリアミド樹脂組成物で形成されているので、均一なセル状態の発泡構造を有し、優れた軽量性と耐荷重性を発現できる。
発泡層は、樹脂連続相と平均セル径10〜300μmの独立した発泡セルとから構成される。ここで、樹脂連続相とは、硬化したポリアミド樹脂組成物で形成される空洞を持たない部分を意味する。発泡セルの径(セル径)は、均一でばらつきがない限り小さい場合であっても大きい場合であっても夫々異なる特性を発現するので、いずれの場合も有用である。例えば、平均セル径が小さい場合には同重量でより高い剛性を発現することができ、平均セル径が大きい場合はクッション性や破壊における適当なエネルギー吸収特性を得ることができる。しかし、非発泡スキン層の厚み以上の平均セル径を持つ発泡構造体は、耐荷重面で不利となるので、発泡セルの平均セル径は、非発泡スキン層の厚み未満であるのがよい。具体的には、平均セル径は上記のように10〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。平均セル径が10μm未満である場合、成形体の内圧が低く非発泡スキン層形成時の圧力が不足し、ヒケ等の外観が悪くなる虞がある。逆に、外圧によってセルが成長できなかった結果である場合も考えられるが、この場合はセル成長が抑えられすぎて目的の低比重構造体が得られない可能性があるため好ましくない。一方、平均セル径が300μmを超える場合、耐荷重性が低く、数μm〜数100μmスケールの無機強化材(C)の補強効果もほぼ期待できないため、好ましくない。平均セル径が前記範囲であると、非発泡スキン層に成形体内部より適当な圧力を与えることができ、かつセルの成長を阻害しない外圧で成形できる。
非発泡スキン層は、発泡層に積層されており、厚みが100〜800μmであることが好ましい。非発泡スキン層の厚みが100μm未満である場合、良好な外観が得られない傾向があり、一方、800μmを超えると、発泡層の比重が低くなりすぎるため、発泡成形体全体として後述する比重0.2〜1.0である発泡構造体を均一なセル状態で得られない虞がある。より好ましくは非発泡スキン層の厚みは120〜700μm、さらに好ましくは150〜500μmである。
本発明の発泡成形体は、通常、発泡層の両面に非発泡スキン層が設けられたサンドイッチ構造(換言すれば、発泡層が両面から非発泡スキン層に挟まれた構造)を有するものとなる。
本発明の発泡成形体の比重は、0.2〜1.0であることが好ましい。一般的な非強化ポリアミド、無機強化ポリアミドの比重は凡そ1.0〜1.8前後であるから、本発明の発泡成形体は充分に軽量化されていると言える。より好ましくは0.3〜0.9である。比重が0.2未満では、耐荷重構造体としての機械特性が低くなりすぎる傾向があり、1.0を超えると、充分な軽量化が達成されたとは言えない。
本発明の発泡成形体を得る際の発泡成形法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、以下、図面を用いて説明する金型を拡張する発泡法(金型拡張法)が好ましく採用される。勿論、本発明の発泡成形体は、当該方法により得られたものに限定されるものではない。
金型を拡張する発泡法とは、図3に示すように、型締めされた複数の金型1,2で形成されるキャビティ3内に、溶融状態のポリアミド樹脂組成物Mを化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガス(以下、纏めて「発泡剤」と称することもある)とともに射出、充填し、表層に厚み100〜800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型(以下「稼動用金型」と称することもある)2を型開き方向へ移動して(コアバックさせて)キャビティ3の容積を拡大させることにより、発泡成形体を得る方法である。詳しくは、ポリアミド樹脂組成物Mと発泡剤とをキャビティ3内に充填後、キャビティ3内に充填されたポリアミド樹脂組成物Mの表層に非発泡スキン層が形成される。この非発泡スキン層が所定の厚み(100〜800μm)になった段階で、稼動用金型2を型開き方向へ移動してキャビティ3の容積を拡大させるのである。非発泡スキン層が所定の厚み(100〜800μm)になった段階で稼動用金型2を移動させるには、例えば、ポリアミド樹脂組成物M等の充填後、最適な遅延時間内で、稼動用金型2の移動(コアバック)を行えばよい。これにより、より均一なセル状態の発泡構造を形成できる。
稼動用金型2の移動速度(コアバック速度)は、コアバックの距離が0mmから0.5mmまでの間は2〜10mm/秒の範囲であることが好ましく、コアバック量が0.5mmから所定のコアバックの距離までの間は0.5〜5mm/秒の範囲であることが好ましい。コアバック速度が前記範囲であれば、より均一なセル状態の発泡構造を形成できる。なお、コアバック速度は、前記範囲内でありさえすれば、必ずしも一定である必要はなく、適宜変化してもよい。
本発明の発泡成形体を得る際に用いることのできる発泡剤は、発泡核となるガス成分もしくはその発生源として成形機の樹脂溶融ゾーンで溶融している樹脂に添加するものである。
具体的には、化学発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム及び重炭酸ソーダ等の無機化合物、並びにアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機化合物等が使用できる。アゾ化合物としては、ジアゾカルボンアミド(ADCA)、2,2−アゾイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられ、これらの中でも、ADCAが好まれて活用されている。スルホヒドラジド化合物としては、ベンゼンスルホヒドラジド、ベンゼン1,3−ジスルホヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホンヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4−ジスルホンヒドラジド等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、N,N−ジニトロソペンタエチレンテトラミン(DNPT)、N,N-ジメチルテレフタレート等が挙げられる。アジド化合物としては、テレフタルアジド、P−第三ブチルベンズアジド等が挙げられる。
発泡剤として化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤は、ポリアミド樹脂(A)に均一に分散させるために、当該化学発泡剤の分解温度よりも融点が低い熱可塑性樹脂をベース材とした発泡剤マスターバッチとして使用することもできる。ベース材となる熱可塑性樹脂は、化学発泡剤の分解温度より低い融点であれば特に制限なく、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。この場合、化学発泡剤と熱可塑性樹脂との配合比率は、熱可塑性樹脂100質量部に対して化学発泡剤が10〜100質量部であるのが好ましい。化学発泡剤が10質量部未満の場合はポリアミド樹脂(A)に混合するマスターバッチの量が多くなりすぎて物性低下を招く虞があり、100質量部を超えると化学発泡剤の分散性の問題よりマスターバッチ化が困難になる。
発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合、それらの量は、ポリアミド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して0.05〜30質量部、さらに好ましくは0.1〜20質量部であることが好ましい。超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素が、0.05質量部未満であると均一かつ微細な発泡セルが得られにくくなり、30質量部を超えると成形体表面の外観が損なわれる傾向がある。
なお、発泡剤として用いられる超臨界状態の二酸化炭素または窒素は単独で使用できるが、二酸化炭素と窒素を混合して使用してもよい。ポリアミドに対して窒素はより微細なセルを形成するのに適している傾向があり、二酸化炭素はよりガスの注入量を比較的多くできるためより高い発泡倍率を得るのに適している。したがって、超臨界状態の二酸化炭素または窒素は発泡構造体の状態に応じて任意で混合してもよい。二酸化炭素と窒素とを混合する場合の混合比率は、モル比で1:9〜9:1の範囲であることが好ましい。
溶融状態のポリアミド樹脂組成物Mを発泡剤とともにキャビティ3内に射出するには、射出成形機4内で溶融状態のポリアミド樹脂組成物Mと発泡剤とを混合すればよい。特に、発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合には、例えば図3に示すようにガスボンベ5から気体状態の二酸化炭素および/または窒素を直接あるいは昇圧ポンプ6で加圧して射出成形機4内に注入する方法、液体状態の二酸化炭素および/または窒素をプランジャーポンプで射出成形機4内に注入する方法等が採用できる。これらの二酸化炭素および/または窒素は、溶融状態のポリアミド樹脂組成物中への溶解性、浸透性、拡散性の観点から、成形機内部で超臨界状態となっている必要がある。
ここで、超臨界状態とは、気相と液相とを生じている物質の温度および圧力を上昇させていくに際し、ある温度域および圧力域で前記気相と液相との区別をなくし得る状態のことをいい、この時の温度、圧力を臨界温度、臨界圧力という。すなわち超臨界状態において物質は気体と液体の両方の特性を併せ持つので、この状態で生じる流体を臨界流体という。このような臨界流体は気体に比べて密度が大きく、液体に比べて粘性が小さいため、物質中を極めて拡散し易いという特性を有する。ちなみに、二酸化炭素は、臨界温度が31.2℃、臨界圧力が7.38MPaであり、窒素は、臨界温度が52.2℃、臨界圧力が3.4MPaであり、この臨界温度以上、臨界圧力以上で超臨界状態となって臨界流体としての挙動を取るようになる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
<数平均分子量>
各試料を2mg秤量し、4mLのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/トリフルオロ酢酸ナトリウム10mM溶液に溶解させた後、0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、得られた試料溶液について下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析を行い、数平均分子量を求めた。なお、分子量換算は標準ポリメチルメタクリレート換算とし、分子量1000以下のものはオリゴマーとして除いて算出した。
装置:TOSOH製「HLC−8220GPC」
カラム:TOSOH製「TSKgel SuperHM−H×2」、「TSKgel SuperH2000」
流速:0.25mL/分
濃度:0.05質量%
温度:40℃
検出器:RI
<エポキシ価>
100mLのエレンマイヤーフラスコにサンプルを秤量し、10〜15mLのメチレンクロライドを加えて、マグネチックスターラーにて攪拌溶解した。10mLのテトラエチルアンモニウムブロマイド試薬を加え、さらに6〜8滴のクリスタルバイオレット指示薬を加え、0.1規定パークロリック酸で滴定した。終点は青から緑に変色して2分間安定な点とした。滴定に要したパークロリック酸の量(mL)をA、サンプル質量をW(g)、パークロリック酸試薬の規定度をNとして、下記式に基づきエポキシ価を算出した。
エポキシ価(当量/1×10g)=(N×A×1000)/W
<融点(Tm)>
105℃で15時間減圧乾燥した試料(ポリアミド樹脂)をアルミニウム製パン(TA Instruments社製「品番900793.901」)に10mg量り取り、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製「品番900794.901」)で密封状態にした後、示差走査熱量計(TA Instruments製「DSCQ100」)を用いて室温から20℃/分で昇温し、350℃で3分間保持した後に上記パンを取出し、液体窒素に漬け込み、急冷させた。その後、液体窒素から上記パンを取出し、室温で30分間放置した後、再び、上記示差走査熱量計を用いて室温から20℃/分で350℃まで昇温し、その際の融解による吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。なお、本発明においては、この融点測定において明確な吸熱ピーク温度を示さなかったものを非結晶性ポリアミド(b)とした。
<比重>
発泡成形体から四辺に切り出し面を有する25mm×25mm×厚みの試験片を切り出し、JIS−Z8807に記載の固体比重測定方法に準じて比重を測定した。なお、例えばスキン層/発泡層/スキン層のサンドイッチ構造において発泡層が充分に形成されておらず上下のスキン層が分離した場合など、試験片が複数に分かれてしまった場合には、複数に分かれた切り出し試験片を用いて同時に比重測定を行った。
<平均セル径、セルの均一性>
まず、可視光硬化型樹脂に包埋後に研磨して発泡断面を露出させるか、あるいは、予めノッチをつけて破壊によって発泡断面が露出するように調製した成形体を液体窒素に10分間浸漬した後に衝撃破壊して発泡断面を露出させることにより、断面観察用サンプルを得た。
平均セル径は、走査型電子顕微鏡により撮影した上記断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、少なくとも100個の隣接するセルの円相当径をセル径とし、それらの100個の平均値を求め、これを任意の三箇所において行い、三箇所で得られた3つの平均値を平均した値を平均セル径とした。
セルの均一性は、走査型電子顕微鏡により撮影した上記断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、少なくとも20個の隣接するセルを含む500μm〜2000μm四方の任意の箇所三点において、平均セル径が300μm以下であり、かつ800μm以上の長さ連続性を持つ空洞がない場合は「○」、それ以外を「×」とした。
なお、セルの均一性が「×」で、かつ800μm以上の長さ連続性を持つ空洞がある場合は平均セル径を測定不可とした。
<スキン層厚み>
可視光硬化型樹脂に包埋後に研磨して発泡断面を露出させるか、あるいは、予めノッチをつけて破壊によって発泡断面が露出するように調製した成形体を液体窒素に10分間浸漬した後に衝撃破壊して発泡断面を露出させることにより、断面観察用サンプルを得た。そして、走査型電子顕微鏡により撮影した上記断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、表層部分に観られる一体化した非発泡層の厚みをスキン層厚みとして測定した。
<生産性>
ポリアミド樹脂組成物を得るにあたり、ストランドをストランドカッターでペレット化した際に、問題なくペレットが得られた場合は「○」とし、ストランド性が安定せずペレット化できなかった場合は「×」と評価した。
<耐荷重性向上率>
まず、発泡剤(窒素または二酸化炭素)を使用しないこと、および金型を型開き方向へ移動させずに(金型を拡張させずに)成形したこと以外は、測定対象とするポリアミド発泡成型体の製造条件と同条件にて、幅100mm×長さ250mm×厚み2mmの平板金型で比較対象とするポリアミド樹脂非発泡成形体を作製した。
得られたポリアミド発泡成形体と上記で得たポリアミド樹脂非発泡成形体(比較対象)とを温度80℃、湿度95%の環境下に24時間放置した後、それぞれから幅10mm×長さ100mmの試験片を切り出した。この切り出し試験片についてスパン長50mm、荷重速度2mm/分で三点曲げ試験を実施したときの非発泡成形体の最大荷重をX(N)とし、発泡成形体の最大荷重をY(N)とし、Y/Xの値が1.5以上であるものを「○」、1以上、1.5未満であるものを「△」、1未満であるか、または上部の発泡層が空洞化しているために下部非発泡スキン層と発泡層が同時に破壊されず上部非発泡スキン層のみが破壊したものを「×」と評価した。
<溶融粘弾性測定>
ポリアミド樹脂(A)およびグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)からなるマトリックス組成物の溶融粘弾性測定における上述したα値およびβ値を求めるため、線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定を行い、周波数依存データとして、周波数(x)と貯蔵弾性率(y)の両対数グラフ、および周波数(x’)と損失弾性率(y’)の両対数グラフを取得した。なお、測定に供するマトリクス組成物は、無機強化材(C)と添加剤(安定剤、離型剤、黒顔料)とを使用しないこと以外は各実施例、比較例と同様にして調製した。
溶融粘弾性測定(動的粘弾性測定)は、TA Instruments社製「ARES」と測定治具として25mmのパラレルプレートを用いて、以下の条件で行い、周波数ω(x)−貯蔵弾性率G’(y)の両対数プロットと、周波数ω(x’)および損失弾性率G’ ’(y’)の両対数プロットを得た。実施例4の結果を示すグラフを図4に、比較例1の結果を示すグラフを図5に、それぞれ示す。プロットより貯蔵弾性率の傾き(α値)、損失弾性率の傾き(β値)を求める場合は、得られたデータ点の累乗近似式で同プロット上に直線を得、その直線の傾きを求めた。なお、測定は、ポリアミド樹脂(A)として「ポリアミド11」を用いた例では230℃、「ポリアミド6−1または6−2」を用いた例では240℃、「ポリアミド66」を用いた例では280℃で実施した。
Strain=10%
Temperature=DSCの融点の少なくとも10℃以上
Initial Frequency=100rad/s
Final Frequency=10rad/s
Gap=0.7〜1.5mm
Geometry Type=Parallel Plate(Diameter=25mm)
各実施例および比較例においては、以下の原料を用いた。
<ポリアミド樹脂(A)>
a1:ポリアミド6−1;東洋紡績製「ナイロンT−820」、相対粘度RV=3.1の6ナイロン、数平均分子量25400、融点225℃
a2:ポリアミド6−2;東洋紡績製「ナイロンT−840」、相対粘度RV=2.4の6ナイロン、数平均分子量17700、融点225℃
a3:ポリアミド66−1;東レ製「アミラン(登録商標)CM3001N」、相対粘度RV=2.8の66ナイロン、数平均分子量17900、融点265℃
a4:ポリアミド11;アルケマ製「リルサン(登録商標)B BMNO」、相対粘度RV=2.1の11ナイロン、融点187℃
b1:ポリアミド6T6I;EMS社製「グリボリーG21」、6T/6I=33/67(モル%)、Tg125℃、数平均分子量15100、非結晶性
b2:ポリアミドPACM14;アルケマ製「G350」、Tg146℃、数平均分子量14200、非結晶性
b3:ポリアミドMACM12・I;EMS社製「TR−55」、Tg162℃、数平均分子量18600、非結晶性
<グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)>
B1:スチレン系重合体1;以下のようにして製造した。
すなわち、オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。一方、スチレン(St)89質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)11質量部、キシレン(Xy)15質量部、及び重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド(DTBP)0.5質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。これを一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。このとき反応器内温は約210℃に保った。反応器内部の温度が安定してから36分経過後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機に導き、連続的に揮発成分を除去して、スチレン系重合体(B1)を得た。このスチレン系共重合体(B1)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると重量平均分子量8500、数平均分子量3300であった。また、そのエポキシ価は670当量/1×10g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は2.2であり、グリシジル基を1分子中に2個以上有するものである。
B2:スチレン系重合体2;以下のようにして製造した。
すなわち、St77質量部、GMA23質量部、Xy15質量部、DTBP0.3質量部からなる単量体混合液を用いた以外は、上記スチレン系重合体(B1)の製造と同じ方法にてスチレン系重合体(B2)を得た。このスチレン系重合体(B2)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると重量平均分子量9700、数平均分子量3300であった。また、そのエポキシ価は1400当量/1×10g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は4.6であり、グリシジル基を1分子中に2個以上有するものである。
<無機強化材(C)>
C1:ガラス繊維1;日東紡績(株)製「CS3PE453」
C2:ガラス繊維2;日東紡績(株)製「CSG3PA810S」
C3:層状ケイ酸塩;サザンクレイプロダクツ社製「Cloisite30B」、有機処理モンモリロナイト
C4:ガラスビーズ;ポッターズバロティーニ社製「GB731A−PN」
<その他の添加剤>
安定剤:チバ・ジャパン社製「イルガノックスB1171」
離型剤:クラリアントジャパン社製「モンタン酸エステルワックスWE40」
黒顔料:住化カラー社製「EPC8E313」
(実施例1〜39、比較例1〜16)
上述した各原料(A)〜(C)の使用量(質量部)は表1〜6に示す通りとし、その他の添加剤の使用量については各実施例・比較例とも、安定剤が0.3質量部、離型剤が0.3質量部、黒顔料が1.0質量部とし、これらを35φ二軸押出機(東芝機械社製)にて混合した。詳しくは、まずポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)およびその他の添加剤をスクリュー回転数100rpmにてホッパーより同時に投入して溶融混練した後、無機強化材(C)をサイドフィードで投入した。このとき、シリンダ温度は、ポリアミド樹脂(A)としてポリアミド66−1(a3)を用いる場合には280℃とし、ポリアミド6−1(a1)、ポリアミド6−2(a2)またはポリアミド11(a4)を用いる場合には250℃に設定した。なお、無機強化材(C)として層状ケイ酸塩(C3)を用いる場合のみ、予め層間剥離させて、ポリアミド樹脂(A)にナノオーダーで分散させておいた。そして、押出機から吐出されたストランドを水槽で冷却した後、ストランドカッターでペレット化し、125℃で5時間乾燥することにより、ポリアミド樹脂組成物をペレットとして得た。
次に、上記で得られたポリアミド樹脂組成物を用いて上述した金型拡張法にて発泡成形体を作製した。金型としては、型締めすると幅100mm、長さ250mm、厚み2mmtのキャビティを形成することのできる固定用金型と稼動用金型からなる平板作成用の金型を用いた。具体的には、金型の型締め力が1800kN、口径42mm、L/D=30のスクリューを持つ電動射出成形機の可塑化領域で、窒素または二酸化炭素を超臨界状態で各表に示す量(質量部:対ポリアミド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部)注入し、表面温度40〜60℃(この間で最適条件を選定した)に温調された金型に射出充填後、稼動用金型を型開き方向へ、各表にコアバック量(mm)として示す長さだけ移動させることにより、キャビティの容積を拡大させて、発泡成形体を得た。このとき、射出完了からコアバック開始までの遅延時間は0秒〜0.5秒とし(この間で最適条件を選定した)、稼動用金型の移動速度(コアバック速度)は、コアバックの距離が0mmから0.5mmまでの間は2〜10mm/秒の範囲の任意速度(この間で最適条件を選定した)とし、コアバックの距離が0.5mmから各表に示すコアバック量(mm)までの間は0.5〜5mm/秒の範囲の任意速度(この間で最適条件を選定した)とした。
実施例1〜39、比較例1〜16で得られたポリアミド樹脂発泡成形体の評価結果を表1〜6に示す。
表1〜6から明らかなように、実施例1〜39のポリアミド樹脂発泡成形体は、均一で微細な発泡セル構造を有し、しかも軽量で耐荷重性に優れた発泡成形体であることが分かる。それに対して、比較例1〜16の発泡成形体は、比重は低いものの、発泡セルは不均一かつ粗大な傾向にあり、安定した耐荷重性を発現できず、実施例1〜39と比べると、どれも何れかの評価項目で劣るものであった。
また、実施例27および比較例9で得られた発泡成形体を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡にて観察した。実施例27の発泡成形体の断面写真を図1に示し((A)は倍率25倍、(B)は倍率120倍)、比較例9の発泡成形体の断面写真(倍率25倍)を図2に示す。図1および図2から、本発明のポリアミド樹脂発泡成形体は、均一で微細な発泡セル構造を有しているのに対して、比較例9の発泡成形体は、セルサイズが不均一であり、しかも本発明のポリアミド樹脂発泡成形体に比べ格段に大きいことが分かる。
1 金型(固定用)
2 金型(稼動用)
3 キャビティ
4 射出成形機
5 ガスボンベ
6 昇圧ポンプ
7 圧力制御バルブ

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂(A)と、
    グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し、重量平均分子量4000〜25000であり、かつエポキシ価が400〜2500当量/1×106gであるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)と、
    無機強化材(C)とを、
    前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、前記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が0.2〜25質量部、前記無機強化材(C)が0〜350質量部となる割合で含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. ポリアミド樹脂(A)が、結晶性ポリアミド樹脂(a)と非結晶性ポリアミド樹脂(b)とからなり、その比率が(a):(b)=0〜100:100〜0(質量比)である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、(X)20〜99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1〜80質量%のグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、および(Z)0〜79質量%のエポキシ基を含有していない前記(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体である請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率(単位:Pa)を、周波数(x)と貯蔵弾性率(y)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y=axα;ここでaは定数)をαとし、線形領域における周波数10〜100rad/sの範囲での溶融粘弾性測定で得られる損失弾性率(単位:Pa)を、周波数(x’)と損失弾性率(y’)の両対数グラフにプロットしたときの乗数(y’=bx’β;ここでbは定数)をβとしたとき、ポリアミド樹脂(A)およびグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)からなるマトリクス組成物のαが1.4未満であり、かつα−βの絶対値が0.5以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とするポリアミド樹脂発泡成形体。
  6. 樹脂連続相と平均セル径10〜300μmの独立した発泡セルから構成される発泡層と、該発泡層に積層された厚み100〜800μmの非発泡スキン層とが前記ポリアミド樹脂組成物により形成されており、比重が0.2〜1.0である請求項5記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
  7. 前記発泡層の両面に前記非発泡スキン層が設けられたサンドイッチ構造を有する請求項6記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
  8. 型締めされた複数の金型で形成されるキャビティ内に溶融状態の前記ポリアミド樹脂組成物を化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガスとともに射出、充填し、表層に厚み100〜800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型を型開き方向へ移動してキャビティの容積を拡大させることにより得られた請求項5〜7のいずれかに記載のポリアミド樹脂発泡成形体。
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