JP2012011685A - 成形体とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、優れた撥水性を発現できる成形体とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品の提供。
【解決手段】樹脂組成物からなる、複数の凸部13が形成された微細凹凸構造を表面に有する成形体10であって、前記凸部13の先端13aから10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率が8.0%以下であり、隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であり、かつ前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上であることを特徴とする成形体10とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形体とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品に関する。
近年、微細加工技術の進歩に伴い、成形体の表面に微細な凹凸構造を配することでロータス効果を利用して撥水機能を付与する取り組みに関心が高まっている。また、微細凹凸構造を有する成形体は、反射防止機能や防汚性を発現することも知られている。
微細凹凸構造を形成する技術としては、例えばナノファイバー形成技術、自己組織化利用技術、スタンパによる微細構造の転写、ナノ微粒子の添加を利用した技術など様々な手法が知られている。
これらの中でも特に、スタンパによる微細構造の転写は、簡便かつ少ない工程で微細凹凸構造を成形体の表面に配することが可能である。また、種々の基材に微細凹凸構造を転写できる点から、透明な撥水性物品や他の機能を併せ持つ撥水性物品の開発も可能であり、応用範囲が広く有用な技術といえる。
これまで、スタンパによる転写法を利用して基材表面に微細凹凸構造を形成することで、撥水性あるいは防汚性などを備えた物品とその製造方法が提案されている。
例えば特許文献1には、水接触角が90°以上の材料で表面を構成された錐体状突起が無数配置された撥水性反射防止構造、および該構造を基材の一方の面に備えた構造体とその製造方法が開示されている。この構造体によれば、撥水機能と反射防止機能を両立できるとしている。
また、特許文献2には、支持基板と、該支持基板の表面に形成された、フッ素を含有し、かつ凹凸構造を有する保護層とを有する保護フィルムが開示されている。この保護フィルムによれば、水滴だけでなく油滴も弾く防汚機能と、反射防止機能を両立できるとしている。
特開2009−42714号公報 特開2007−76242号公報
しかしながら、特許文献1では、撥水機能を発現させるために錐体状突起の表面を構成する材料の水接触角を90°以上にする必要があった。そのため、水接触角が90°以上の材料としてフッ素系材料を用いて微細凹凸構造を転写するか、あるいは微細凹凸構造を転写した後に、フルオロアルコキシシラン等の撥水材料を用い、蒸着法等によって微細凹凸構造を被覆処理(撥水処理)する必要があった。前者は高価なフッ素系材料を使用する点で、後者は製造工程が増える点で、製造コストがかかりやすい。
また、特許文献2ではフッ素を含む材料を用いる必要があるため、製造コストがかかりやすい。加えて、材料の使用が限定されているので、樹脂の設計自由度が低く、撥水性能を維持したまま他の性能を付与する際に大きな制約となり実用的ではない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、優れた撥水性を発現できる成形体とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品の提供を課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、微細凹凸構造を構成する凸部が先鋭となるように微細凹凸構造を形成することで、高価なフッ素系材料を用いたり、撥水処理をしたりしなくても、撥水性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の成形体は、樹脂組成物からなる、複数の凸部が形成された微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、前記凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率が8.0%以下であり、隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であり、かつ前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上であることを特徴とする。
さらに、前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が90°未満であることが好ましい。
また、本発明の撥水性物品は、前記成形体を備えたことを特徴とする。
また、本発明の成形体の製造方法は、前記成形体の製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を経て、かつ工程(c)と工程(d)をn回繰り返したとき、n回目の工程(d)により、n回目の工程(c)で形成された細孔の孔径が1.1〜1.9倍となるように製造され、前記微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用い、転写法により微細凹凸構造を形成することを特徴とする。
工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。
また、前記転写法が、前記スタンパと基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、前記スタンパを離型することにより行われることが好ましい。
本発明の成形体は、高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、優れた撥水性を発現できる。
また、本発明の成形体の製造方法によれば、高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、優れた撥水性を発現する成形体を製造できる。
また、本発明の撥水性物品は、優れた撥水性を発現できる。
本発明の成形体の一例を模式的に示す断面図である。 微細凹凸構造を構成する凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの一例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。 本発明に用いるスタンパの製造工程の一例を模式的に説明する説明図である。
以下本発明を詳細に説明する。
[成形体]
本発明の成形体は、樹脂組成物からなる、複数の凸部が形成された微細凹凸構造を表面に有する。
ここで、図1に本発明の成形体の一例を示す。この例の成形体10は、透明基材11と、該透明基材11の表面に形成された、樹脂組成物からなる微細凹凸構造を有する樹脂層12とを有する。
なお、本発明において「透明」とは、少なくとも波長400〜1170nmの光を透過することを意味する。
透明基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
透明基材11は、1種の材料のみからなるものであってもよく、各層の材料が異なる積層体からなるものであってもよい。
樹脂層12は、例えば後述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などの樹脂組成物の硬化物からなる層であり、該樹脂組成物から形成された微細凹凸構造を表面に有する。
微細凹凸構造は、複数の凸部13を有する。該凸部13の形状は、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状、釣鐘型など、凸部13の高さ方向に垂直な面で切断した時の断面積が、凸部13の先端13aから底部に向かって連続的に増大するような形状が好ましい。
微細凹凸構造は、複数の凸部13が400nm以下の間隔で配列している。すなわち、隣接する凸部間の平均間隔(D)が400nm以下であり、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。平均間隔(D)が400nm以下であれば、光の散乱を抑制でき、透明性を維持できる。平均間隔の下限については、製造可能な範囲であれば特に制限されない。
ここで、「凸部間の平均間隔」とは、成形体10の表面を電子顕微鏡で観察し、一直線上に並んだ10個の凸部13のうち、両端に位置する凸部13の中心間距離を測定し、その値に基づいて隣接する凸部13の間隔(任意の凸部13の中心から、隣接する凸部13の中心までの距離d)の平均値を算出したものであり、具体的には、「両端に位置する凸部13の中心間距離/(凸部13の個数−1)」で求めた値である。
また、微細凹凸構造の凸部13の平均高さ(H)(または凹部の平均深さ)は50〜400nmが好ましく、100〜300nmがより好ましく、150〜250nmが特に好ましい。凸部13の平均高さ(H)が50nm以上であれば、撥水性がより向上する。一方、凸部13の平均高さ(H)が400nm以下であれば、例えばスタンパを用いた転写法により微細凹凸構造を形成するときに、平均高さが400nm超の凸部から構成される微細凹凸構造を形成する場合に比べて転写不良が起こりにくく、成形体を量産できる。
ここで、「凸部の平均高さ(または凹部の平均深さ)」とは、成形体10の断面を電子顕微鏡で観察し、10個の凸部13について、凸部13の先端13aから、この凸部13に隣接する凹部14の底部14aまでの垂直距離hを測定し、これらの値を平均したものである。
さらに、成形体10の微細凹凸構造において、「凸部の平均高さ(H)/凸部間の平均間隔(D)」で表されるアスペクト比は4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が特に好ましい。アスペクト比が4.0以下であれば、例えばスタンパを用いた転写法により微細凹凸構造を形成するときに、スタンパからの離型不良が起こりにくく、成形体を量産できる。アスペクト比の下限については、製造可能な範囲であれば特に制限されない。
また、図2(a)に示すように、微細凹凸構造は、凸部13の先端13aから10nmの位置で水平に切断したときの切断面13bの平均占有率が8.0%以下であり、7.5%以下であることが好ましく、7.0以下であることがより好ましい。平均占有率が8.0%以下であることは、すなわち微細凹凸構造の凸部13が先鋭化されたことを意味し、水滴が成形体10の表面に付着しても、水滴の樹脂への接触表面積が大きくなるのを抑制できるので、十分な撥水性を発現できる。通常、撥水性を付与するためには、フッ素系材料のように平滑面における水接触角が90°以上の材料を用いる必要があるが、本発明であれば、平滑面における水接触角が90°未満の材料(樹脂組成物)を用いても微細凹凸構造の先鋭化の効果により十分な撥水性を発現できる。
なお、平均占有率の下限は3.0%以上が好ましい。平均占有率が3.0%以上であれば、先鋭化の効果を維持しつつ、かつ凸部13の先端13a部分の機械的強度も保たれるので、耐擦傷性を保持できる。
ここで、「切断面の平均占有率」とは、微細凹凸構造が形成される面における、凸部13の1つあたりが占有しうる面積の最大値(S)に対する、切断面13bの面積(s)の割合のことであり、下記式(1)より求められる。なお、式(1)中、「P」は切断面の平均占有率である。
P=(s/S)×100 ・・・(1)
以下、凸部13の形状が釣鐘型の場合を例にとり、切断面13bの平均占有率の求め方を説明する。
本発明の成形体の微細凹凸構造において、凸部13は六方最密構造で配列している。従って、図2(b)に示すように、切断面13bを垂直方向から見たときに、微細凹凸構造が形成される面における、凸部13の1つあたりが占有しうる面積の最大値(S)は、凸部13の底面に外接する六角形の面積と等しく、その面積(S’)は下記式(2)より求められる。なお、式(2)中、「D」は隣接する凸部間の平均間隔(D)である。
Figure 2012011685
一方、切断面13bの面積(s)は、切断面13bの径を「r」としたときに下記式(3)より求められる。
s=(r/2)×π ・・・(3)
凸部13の底面に外接する六角形の面積(S’)は、凸部13の1つあたりが占有しうる面積の最大値(S)に等しいことから、上記式(2)、(3)で求められた値を上記式(1)に代入することで、切断面13bの平均占有率(P)を求めることができる。
なお、切断面13bの径rは、成形体の断面を電子顕微鏡で観察し、10個の凸部13について先端から10nmの位置における凸部の太さ(径)を測定し、これらの値を平均したものである。
本発明の成形体の微細凹凸構造は、樹脂組成物から形成される。
樹脂組成物としては、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上、好ましくは65°以上の樹脂組成物を用いる。ここで、「平滑面」とは、微細凹凸構造が形成されていないときの樹脂層の表面のことを指す。
平滑面における水接触角が61°以上であれば、微細凹凸構造の先鋭化による効果が十分に得られるので、優れた撥水性を発現できる。
なお、平滑面における水接触角の上限は90°未満が好ましい。水接触角が90°以上の場合であっても、微細凹凸構造の先鋭化による効果は十分に得られるが、水接触角が90°以上の樹脂組成物としては、フッ素系材料に限られる。フッ素系材料は、上述したように高価であると共に、強度特性の点でも他の樹脂材料に劣る傾向にある。製造コストや強度特性を考慮した場合、水接触角が90°未満の樹脂組成物を用いるのが好ましい。
本発明の成形体であれば、水接触角が90°以上の樹脂組成物、すなわちフッ素系材料などの高価な樹脂材料を用いなくても、微細凹凸構造の先鋭化の効果により十分な撥水性を発現できる。
このような樹脂組成物としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物など、硬化反応により硬化する樹脂組成物が好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。
ここで、「活性エネルギー線」とは、電子線、紫外線、可視光線、プラズマ、赤外線などの熱線等を意味する。
重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」をそれぞれ意味する。
ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
例えば光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における重合開始剤の含有量は、重合反応性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤が10質量部を超えると、樹脂層(微細凹凸構造)が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、用途に応じて、非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよいし、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えばアルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RSi(OR’)で表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどが挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、RO[Si(OR)(OR)O]で表されるものが挙げられる。R〜Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。
具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケートなどが挙げられる。
[成形体の製造方法]
本発明の成形体の製造方法としては、微細凹凸構造の反転構造を有するスタンパを用いて、転写法により微細凹凸構造を形成することが好ましい。スタンパの製造方法については後述するが、スタンパを使用することにより、一工程で簡便に微細凹凸構造を成形体に転写することができる。
スタンパの反転構造を成形体の表面に転写する方法は特に限定されないが、スタンパと透明基材の間に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後に、スタンパを離型する方法が好ましい。この方法により、微細凹凸構造が表面に転写された樹脂層と透明基材とからなる成形体が得られる。
より具体的には、スタンパと透明基材とを対向させ、これらの間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填、配置する。この際、スタンパの反転構造が形成された側の面、すなわちスタンパ表面が、透明基材と対向するようにする。ついで、充填された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、透明基材を介して活性エネルギー線を、例えば高圧水銀ランプやメタルハライドランプにより照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化し、その後、スタンパを剥離する。この際、必要に応じて、剥離後に再度活性エネルギー線を照射してもよい。
活性エネルギー線の照射量は、硬化が進行するエネルギー量であればよいが、通常、100〜10000mJ/cmである。
あるいは、透明基材上に固体状の未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をコーティングしておき、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に対してロール型とされたスタンパを圧接して微細凹凸構造を転写した後、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する方法によっても、同様に成形体が得られる。
このような活性エネルギー線を利用する方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないので短時間で転写することができ、量産に好適である。
なお、転写される微細凹凸構造は、成形体の表面全体に形成されていてもよく、表面の一部に微細凹凸構造が形成されていてもよい。
<スタンパの製造方法>
前述の微細凹凸構造の反転構造を有するスタンパを製造する方法としては、電子ビームリソグラフィー法やレーザー光干渉法などが挙げられるが、スタンパの大面積化やロール形状のスタンパを簡便に作製できるという点から、陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用いるのが好ましい。
陽極酸化ポーラスアルミナの基材としては、アルミニウム基材が使用される。そのアルミニウムの純度は、99.0%超が好ましく、99.5%以上がよりに好ましく、99.9%以上が特に好ましい。アルミニウム純度が99.0%超であれば、陽極酸化により形成される細孔が枝別れすることなく規則正しく形成される。
このようなアルミニウム基材を用いて陽極酸化ポーラスアルミナ製のスタンパを製造する場合には、アルミニウム基材を陽極酸化すればよいが、その際陽極酸化を高電圧で行うほど細孔径は大きくなる。
また、電解液としては、酸性電解液またはアルカリ性電解液が使用できるが、酸性電解液が好ましい。酸性電解液としては硫酸、シュウ酸、リン酸、あるいはこれらの混合物が使用できる。
陽極酸化ポーラスアルミナ製のスタンパは、例えば下記の工程(a)〜(e)を経て製造できる(図3参照)。なお、アルミニウム基材上に微細凹凸構造の反転構造を施す平面または曲面を被加工面と呼称する。
工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。
工程(e):前記工程(c)と工程(d)を繰り返し行う工程。
工程(a):
図3(a)に示すように、工程(a)では、鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面30を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、アルミニウム基材の被加工面30に、細孔31を有する第1の酸化皮膜32を被加工面30に形成する。第1の酸化皮膜32の厚さは10μm以下が好ましい。
反応条件としては、細孔を有し、厚さが10μm以下の酸化皮膜が形成される条件であればよいが、例えばシュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は、6.5質量%以下が好ましい。シュウ酸の濃度が6.5質量%を超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を30〜60Vとすることにより、周期が100nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたスタンパを得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲外にあると規則性が低下する傾向にあり、成形体に転写したときに微細凹凸構造にムラが生じて撥水性が低下することがある。
電解液の温度は、50℃以下が好ましく、35℃以下が更に好ましい。電解液の温度が50℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
工程(b):
工程(a)により形成された第1の酸化皮膜32を除去することにより、図3(b)に示すように、除去された第1の酸化皮膜の底部(バリア層と呼ばれる)に対応する周期的な窪みが形成される。
形成された第1の酸化皮膜32の全部を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点33を形成することで、最終的に形成される細孔の規則性を向上させることができる(例えば、益田、「応用物理」、2000年、第69巻、第5号、p.558参照。)。
第1の酸化皮膜32の全部を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液によって除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
工程(c):
細孔発生点33が形成されたアルミニウム基材の被加工面30を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、図3(c)に示すように、細孔発生点に対応した円柱状の細孔31を有する第2の酸化皮膜34を形成する。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
工程(c)においても、陽極酸化を長時間施すほど、深い細孔を得ることができるが、微細凹凸構造を転写するためのスタンパとして使用する場合には、工程(c)では厚さが0.01〜0.5μm程度の酸化皮膜を形成すればよく、工程(a)で形成するほどの厚さの酸化皮膜を形成する必要はない。
工程(d):
図3(d)に示すように、工程(c)の後、第2の酸化皮膜34の一部を除去し、工程(c)で形成された細孔31の径を拡大させる孔径拡大処理を行って、細孔31の径を工程(c)で形成された細孔の径よりも拡径する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、工程(c)で形成された細孔の径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5.0質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
工程(d)の時間を長くするほど、細孔の径は大きくなる。
工程(e):
再度、工程(c)を行って、図3(e)に示すように、細孔31の形状を径の異なる2段の円柱状とし、その後、再度、工程(d)を行う。
このように、工程(c)と工程(d)を繰り返すことで、図3(f)に示すように、細孔31の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔からなる微細凹凸構造が形成された陽極酸化アルミナが被加工面に形成されたスタンパ20を得ることができる。
工程(c)と工程(d)の繰り返し回数は、回数が多いほど滑らかなテーパー形状にすることができ、少なくとも合計で3回行うことが望ましい。
工程(c)および工程(d)の条件、例えば、孔径拡大処理の時間、孔径拡大処理に利用する溶液の温度や濃度を適宜設定することにより、様々な形状の細孔を形成することができる。スタンパから製造しようとする物品の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。
上述したような凸部が先鋭化された微細凹凸構造を成形体の表面に転写させるスタンパを得るためには、工程(c)と工程(d)をn回繰り返したとき、n回目(最後)の工程(d)により、n回目の工程(c)で形成された細孔の孔径が1.1〜1.9倍となるように拡径する。拡径倍率は1.1〜1.8倍が好ましく、1.1〜1.7倍がより好ましい。
拡径倍率が1.1倍未満であると、転写した成形体の微細凹凸構造がスタンパの細孔の形状を十分に反映されないことがある。一方、拡径倍率が1.9倍を超えると、先鋭化による効果が十分に発揮されないことがある。
n回目の工程(d)の時間を短縮するなど、エッチングの温度・濃度・時間等の条件を変更することによって、深部の拡径率が好適な陽極酸化ポーラスアルミナを形成することができ、これをスタンパとして用いることで、成形体の表面に形成される微細凹凸構造の凸部を先鋭化させることができる。
上述した工程(a)〜(e)を経てスタンパを製造する方法によれば、鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が周期的に形成され、その結果、微細凹凸構造の反転構造を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたスタンパを得ることができる。
なお、工程(a)の前に、アルミニウム基材の被加工面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸/リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
このようにして得られる陽極酸化ポーラスアルミナは、本発明の成形体を製造するために樹脂組成物に微細凹凸構造を転写するスタンパとして好適である。
なお、スタンパの形状に特に制限は無く、平板でもあってもよく、ロール状であってもよい。また、スタンパの微細凹凸構造の反転構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
上述したスタンパを用いて製造される成形体は、その表面にスタンパの微細凹凸構造の反転構造が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
本発明の成形体は、凸部が先鋭化された微細凹凸構造を表面に有するので、フッ素系材料などの高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理をしたりしなくても、優れた撥水性を発現できる。また、本発明の成形体は、反射防止機能をも有する。
[撥水性物品]
本発明の撥水性物品は、本発明の成形体を備える。本発明においては、成形体をそのまま撥水性物品として使用してもよいし、支持体に成形体を貼り付けて使用し、これを撥水性物品としてもよい。
支持体の素材としては特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、あるいはガラスなどの無機物の、単体もしくは複合体が挙げられる。
また、支持体の形状についても特に限定されず、例えば平板、曲板、球状、柱状、錐状、フィルムなどが挙げられる。
本発明の撥水性物品は、1μLの水滴の接触角(水接触角)が141°以上を示すものが好ましく、145°以上を示すものがより好ましく、147°以上を示すものが特に好ましい。水接触角が141°未満であると、撥水性物品の撥水面を地面に対して垂直に立て90°の位置から霧吹きで水を吹きかけた際に、目視で判断する限り、水滴が落下せず撥水面に残りやすくなる。
本発明の撥水性物品は、撥水性に優れると共に、成形体の微細凹凸構造に起因する反射防止機能も発現する。
成形体がフィルム状である場合には、例えば携帯電話などのモバイル機器のディスプレイ、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、ショーウインドウ、看板、メガネのレンズなど、雨や蒸気などの水にさらされる恐れのある表示装置の部材として使用する。具体的には、対象物の表面に成形体を貼り付けて使用する。
成形体が立体形状の場合、予め用途に応じた形状の基材を用いて成形体を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として使用する。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明の成形体から構成することもできる。
また、本発明の撥水性物品は、上述した用途以外にも、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子などの光学用途や、細胞培養シートとしての用途に展開できる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
各種測定および評価方法は以下の通りである。
(1)スタンパの細孔の測定
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたスタンパの縦断面又は表面に白金を1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7400F」)を用い、加速電圧:3.00kVの条件で陽極酸化アルミナを観察した。
表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ10個の細孔の中心間距離を平均してピッチを求めた。また、断面を5万倍で観察し、10個の細孔の深さを平均して孔深さを求めた。
また、断面を10万倍で観察し、スタンパの細孔の深部における細孔径を測定した。さらにこの値を、同様にして測定した孔径拡大前に形成された細孔の細孔径で除して、拡径拡大倍率を求めた。
(2)成形体の凹凸の測定
成形体の縦断面又は表面に白金を10分間蒸着し、上記(1)の場合と同様の装置および条件にて成形体の微細凹凸構造を観察した。
表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ10個の凸部のうち、両端に位置する凸部の中心間距離を測定し、その値を「凸部の個数(10個)−1」で除することで、凸部間の平均間隔を求めた。
また、断面を5万倍で観察し、10個の凸部の高さを平均して凸部の平均高さを求めた。さらに、断面を10万倍で観察し、高さを測定した凸部に関して先端から10nmの位置における凸部の太さ(径)を測定し、平均値を求めた。そして、凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率を上記式(1)〜(3)より算出した。
(3)撥水性の評価(水接触角の測定)
成形体の5箇所に1μLの水滴を滴下し、自動接触角測定器(協和界面科学社製、「DM501」)を用い、θ/2法にて各滴下箇所における水接触角を測定し、その平均値を求めた。
[スタンパの作製]
<製造例1>
純度99.99%、厚さ0.3mmのアルミニウム板を50mm角に切断し、過塩素酸/エタノール混液中(体積比=1/4)中で電解研磨し、これをアルミニウム基材として用いた。
工程(a):
アルミニウム基材を、4.5質量%のシュウ酸水溶液中で、浴温15.6℃、化成電圧40Vの条件下で6時間陽極酸化を行い、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成した。
工程(b):
第1の酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸を混合した水溶液中に6時間浸漬して、第1の酸化皮膜を溶解させて除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成した。
工程(c):
アルミニウム基材を50mm×25mmに二等分した。続いて、2.7質量%のシュウ酸水溶液中で、浴温15.6℃、化成電圧40Vの条件下で30秒間陽極酸化を行い、細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成した。
工程(d):
第2の酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液中に8分間浸漬して、第2の酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。
工程(e):
前記工程(c)と工程(d)をさらに4回繰り返し(すなわち、工程(c)と工程(d)の実施回数はそれぞれ合計で5回)、ピッチ100nm、孔深さ200nmの逆釣鐘状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は2.0倍に拡径された。
得られた陽極酸化ポーラスアルミナを脱イオン水で洗浄した後、表面の水分をエアーブローで除去した。ついで、離型剤(ダイキン工業社製、「オプツールDSX」)を固形分0.1質量%になるように希釈剤(ハーベス社製、「HD−ZV」)で希釈した溶液に10分間ディッピングし、24時間風乾して離型処理を行い、スタンパを得た。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<製造例2>
5回目の工程(d)における浸漬時間を2分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<製造例3>
1〜4回目の工程(d)における浸漬時間を9分30秒に変更し、5回目の工程(d)における浸漬時間を2分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<製造例4>
1〜5回目の工程(c)における陽極酸化時間を15秒に変更し、1〜5回目の工程(d)における浸漬時間を4分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は2.0倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<製造例5>
1〜5回目の工程(c)における陽極酸化時間を15秒に変更し、1〜4回目までの工程(d)における浸漬時間を4分45秒に変更し、5回目の工程(d)における浸漬時間を1分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<製造例6>
4〜5回目の工程(d)における浸漬時間を4分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.7倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
Figure 2012011685
[活性エネルギー線樹脂組成物の調製]
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A>
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、70°であった。
(配合組成)
・新中村化学工業社製の「NKエステルATM−4E」:80質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:15質量部、
・2−ヒドロキシエチルアクリレート:5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物B>
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、66°であった。
(配合組成)
・トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部、
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:10質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物C>
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、60°であった。
(配合組成)
・新中村化学工業社製の「NKエステルATM−4E」:90質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:10質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
[実施例1]
製造例3で作製したスタンパの表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを充填し、さらにその上に透明基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム(東洋紡社製、「A4300」)を積層し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aがスタンパに接触した状態で、PETフィルムを介して2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを硬化させた。ついで、スタンパを離型し、図1に示すような釣鐘状の凸部13を備えた微細凹凸構造を表面に有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aからなる樹脂層12と、透明基材11とからなる成形体10を得た。
得られた成形体10の微細凹凸構造について、隣接する凸部間の平均間隔、凸部の平均高さを測定した。また、凸部の先端から10nmの位置で水平面に切断したときの切断面の平均占有率を求めた。さらに、成形体について撥水性を評価した。これらの結果を表2に示す。
[実施例2]
製造例5で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例3]
製造例6で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例4]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例5]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例5で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例1]
製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例2]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例3]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例4で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例4]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを用い、製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例5]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを用い、製造例2で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2012011685
Figure 2012011685
表2の結果から明らかなように、微細凹凸構造の凸部を先鋭化して製造した実施例1〜5の成形体は、水接触角の値が大きく、優れた撥水性を発現できた。
特に、実施例1〜3を比べると、切断面の占有率が3.6%である実施例1、2の成形体の方が、占有率が5.7%である実施例3の成形体よりも水接触角の値が大きく、より優れた撥水性を発現できることが示された。
なお、先鋭化の影響に比べてアスペクト比の撥水性への影響は小さかった。
また、本実施例では、平滑面での水接触角が90°未満の樹脂組成物を用いても撥水性を発現できることが示された。
中でも、実施例1と実施例4、実施例2と実施例5を比べると、平滑面での水接触角が70°である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを用いた実施例1、2の成形体の方が、平滑面での水接触角が66°である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用いた実施例4、5の成形体よりも水接触角の値が大きく、より優れた撥水性を発現できることが示された。
これに対して比較例1の成形体は、切断面の占有率が8.2%と大きく、各実施例の成形体に比べて凸部の先鋭化が十分ではないため、特に実施例1〜3の成形体に比べて水接触角の値が145°と小さく、十分な撥水性を発現できなかった。
樹脂組成物の種類を代えた比較例2、3の成形体についても同様であり、切断面の占有率が8.2%と大きく、同じ種類の樹脂組成物を用いた実施例4、5の成形体に比べて水接触角の値が小さく、十分な撥水性を発現できなかった。
平滑面での水接触角が60°の樹脂組成物を用いた比較例4、5の成形体は、水接触角の値が小さく、十分な撥水性を発現できなかった。なお、比較例5の成形体は、切断面の占有率が3.6%であったが、凸部の先鋭化による効果は得られなかった。
本発明により得られた物品は、フッ素系材料などの高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、十分な撥水性を発現できる。従って、本発明によれば従来に比べて安価に撥水性物品を提供できる。
また、本発明は、製造に使用する樹脂の設計自由度が従来に比べて高いため、強度特性等を付与した撥水性物品の製造に有用である。
10:成形体、11:透明基材、12:樹脂層、13:凸部、13a:先端、13b:切断面、14:凹部、20:スタンパ、30:被加工面、31:細孔、32:第1の酸化皮膜、33:細孔発生点、34:第2の酸化皮膜。

Claims (5)

  1. 樹脂組成物からなる、複数の凸部が形成された微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、
    前記凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率が8.0%以下であり、
    隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であり、
    かつ前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上であることを特徴とする成形体。
  2. 前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が90°未満であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  3. 請求項1または2に記載の成形体を備えたことを特徴とする撥水性物品。
  4. 請求項1または2に記載の成形体の製造方法であって、
    下記工程(a)〜(d)を経て、かつ工程(c)と工程(d)をn回繰り返したとき、n回目の工程(d)により、n回目の工程(c)で形成された細孔の孔径が1.1〜1.9倍となるように製造され、前記微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用い、転写法により微細凹凸構造を形成することを特徴とする成形体の製造方法。
    工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
    工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
    工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
    工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。
  5. 前記転写法が、前記スタンパと基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、前記スタンパを離型することにより行われることを特徴とする請求項4に記載の成形体の製造方法。
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