JP2012011685A - 成形体とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂組成物からなる、複数の凸部13が形成された微細凹凸構造を表面に有する成形体10であって、前記凸部13の先端13aから10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率が8.0%以下であり、隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であり、かつ前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上であることを特徴とする成形体10とその製造方法、および成形体を備えた撥水性物品。
【選択図】図1
Description
これらの中でも特に、スタンパによる微細構造の転写は、簡便かつ少ない工程で微細凹凸構造を成形体の表面に配することが可能である。また、種々の基材に微細凹凸構造を転写できる点から、透明な撥水性物品や他の機能を併せ持つ撥水性物品の開発も可能であり、応用範囲が広く有用な技術といえる。
例えば特許文献1には、水接触角が90°以上の材料で表面を構成された錐体状突起が無数配置された撥水性反射防止構造、および該構造を基材の一方の面に備えた構造体とその製造方法が開示されている。この構造体によれば、撥水機能と反射防止機能を両立できるとしている。
また、特許文献2には、支持基板と、該支持基板の表面に形成された、フッ素を含有し、かつ凹凸構造を有する保護層とを有する保護フィルムが開示されている。この保護フィルムによれば、水滴だけでなく油滴も弾く防汚機能と、反射防止機能を両立できるとしている。
また、特許文献2ではフッ素を含む材料を用いる必要があるため、製造コストがかかりやすい。加えて、材料の使用が限定されているので、樹脂の設計自由度が低く、撥水性能を維持したまま他の性能を付与する際に大きな制約となり実用的ではない。
さらに、前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が90°未満であることが好ましい。
また、本発明の成形体の製造方法は、前記成形体の製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を経て、かつ工程(c)と工程(d)をn回繰り返したとき、n回目の工程(d)により、n回目の工程(c)で形成された細孔の孔径が1.1〜1.9倍となるように製造され、前記微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用い、転写法により微細凹凸構造を形成することを特徴とする。
工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。
また、本発明の成形体の製造方法によれば、高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理したりしなくても、優れた撥水性を発現する成形体を製造できる。
また、本発明の撥水性物品は、優れた撥水性を発現できる。
[成形体]
本発明の成形体は、樹脂組成物からなる、複数の凸部が形成された微細凹凸構造を表面に有する。
ここで、図1に本発明の成形体の一例を示す。この例の成形体10は、透明基材11と、該透明基材11の表面に形成された、樹脂組成物からなる微細凹凸構造を有する樹脂層12とを有する。
なお、本発明において「透明」とは、少なくとも波長400〜1170nmの光を透過することを意味する。
透明基材11は、1種の材料のみからなるものであってもよく、各層の材料が異なる積層体からなるものであってもよい。
微細凹凸構造は、複数の凸部13を有する。該凸部13の形状は、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状、釣鐘型など、凸部13の高さ方向に垂直な面で切断した時の断面積が、凸部13の先端13aから底部に向かって連続的に増大するような形状が好ましい。
ここで、「凸部間の平均間隔」とは、成形体10の表面を電子顕微鏡で観察し、一直線上に並んだ10個の凸部13のうち、両端に位置する凸部13の中心間距離を測定し、その値に基づいて隣接する凸部13の間隔(任意の凸部13の中心から、隣接する凸部13の中心までの距離d)の平均値を算出したものであり、具体的には、「両端に位置する凸部13の中心間距離/(凸部13の個数−1)」で求めた値である。
ここで、「凸部の平均高さ(または凹部の平均深さ)」とは、成形体10の断面を電子顕微鏡で観察し、10個の凸部13について、凸部13の先端13aから、この凸部13に隣接する凹部14の底部14aまでの垂直距離hを測定し、これらの値を平均したものである。
P=(s/S)×100 ・・・(1)
本発明の成形体の微細凹凸構造において、凸部13は六方最密構造で配列している。従って、図2(b)に示すように、切断面13bを垂直方向から見たときに、微細凹凸構造が形成される面における、凸部13の1つあたりが占有しうる面積の最大値(S)は、凸部13の底面に外接する六角形の面積と等しく、その面積(S’)は下記式(2)より求められる。なお、式(2)中、「D」は隣接する凸部間の平均間隔(D)である。
s=(r/2)2×π ・・・(3)
樹脂組成物としては、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上、好ましくは65°以上の樹脂組成物を用いる。ここで、「平滑面」とは、微細凹凸構造が形成されていないときの樹脂層の表面のことを指す。
平滑面における水接触角が61°以上であれば、微細凹凸構造の先鋭化による効果が十分に得られるので、優れた撥水性を発現できる。
本発明の成形体であれば、水接触角が90°以上の樹脂組成物、すなわちフッ素系材料などの高価な樹脂材料を用いなくても、微細凹凸構造の先鋭化の効果により十分な撥水性を発現できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。
ここで、「活性エネルギー線」とは、電子線、紫外線、可視光線、プラズマ、赤外線などの熱線等を意味する。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」をそれぞれ意味する。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えばアルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどが挙げられる。
具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケートなどが挙げられる。
本発明の成形体の製造方法としては、微細凹凸構造の反転構造を有するスタンパを用いて、転写法により微細凹凸構造を形成することが好ましい。スタンパの製造方法については後述するが、スタンパを使用することにより、一工程で簡便に微細凹凸構造を成形体に転写することができる。
活性エネルギー線の照射量は、硬化が進行するエネルギー量であればよいが、通常、100〜10000mJ/cm2である。
なお、転写される微細凹凸構造は、成形体の表面全体に形成されていてもよく、表面の一部に微細凹凸構造が形成されていてもよい。
前述の微細凹凸構造の反転構造を有するスタンパを製造する方法としては、電子ビームリソグラフィー法やレーザー光干渉法などが挙げられるが、スタンパの大面積化やロール形状のスタンパを簡便に作製できるという点から、陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用いるのが好ましい。
また、電解液としては、酸性電解液またはアルカリ性電解液が使用できるが、酸性電解液が好ましい。酸性電解液としては硫酸、シュウ酸、リン酸、あるいはこれらの混合物が使用できる。
工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。
工程(e):前記工程(c)と工程(d)を繰り返し行う工程。
図3(a)に示すように、工程(a)では、鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面30を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、アルミニウム基材の被加工面30に、細孔31を有する第1の酸化皮膜32を被加工面30に形成する。第1の酸化皮膜32の厚さは10μm以下が好ましい。
また、陽極酸化時の電圧を30〜60Vとすることにより、周期が100nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたスタンパを得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲外にあると規則性が低下する傾向にあり、成形体に転写したときに微細凹凸構造にムラが生じて撥水性が低下することがある。
電解液の温度は、50℃以下が好ましく、35℃以下が更に好ましい。電解液の温度が50℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
工程(a)により形成された第1の酸化皮膜32を除去することにより、図3(b)に示すように、除去された第1の酸化皮膜の底部(バリア層と呼ばれる)に対応する周期的な窪みが形成される。
形成された第1の酸化皮膜32の全部を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点33を形成することで、最終的に形成される細孔の規則性を向上させることができる(例えば、益田、「応用物理」、2000年、第69巻、第5号、p.558参照。)。
細孔発生点33が形成されたアルミニウム基材の被加工面30を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、図3(c)に示すように、細孔発生点に対応した円柱状の細孔31を有する第2の酸化皮膜34を形成する。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
図3(d)に示すように、工程(c)の後、第2の酸化皮膜34の一部を除去し、工程(c)で形成された細孔31の径を拡大させる孔径拡大処理を行って、細孔31の径を工程(c)で形成された細孔の径よりも拡径する。
工程(d)の時間を長くするほど、細孔の径は大きくなる。
再度、工程(c)を行って、図3(e)に示すように、細孔31の形状を径の異なる2段の円柱状とし、その後、再度、工程(d)を行う。
このように、工程(c)と工程(d)を繰り返すことで、図3(f)に示すように、細孔31の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔からなる微細凹凸構造が形成された陽極酸化アルミナが被加工面に形成されたスタンパ20を得ることができる。
工程(c)および工程(d)の条件、例えば、孔径拡大処理の時間、孔径拡大処理に利用する溶液の温度や濃度を適宜設定することにより、様々な形状の細孔を形成することができる。スタンパから製造しようとする物品の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。
拡径倍率が1.1倍未満であると、転写した成形体の微細凹凸構造がスタンパの細孔の形状を十分に反映されないことがある。一方、拡径倍率が1.9倍を超えると、先鋭化による効果が十分に発揮されないことがある。
なお、工程(a)の前に、アルミニウム基材の被加工面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸/リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
なお、スタンパの形状に特に制限は無く、平板でもあってもよく、ロール状であってもよい。また、スタンパの微細凹凸構造の反転構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
本発明の成形体は、凸部が先鋭化された微細凹凸構造を表面に有するので、フッ素系材料などの高価な樹脂材料を用いたり、撥水処理をしたりしなくても、優れた撥水性を発現できる。また、本発明の成形体は、反射防止機能をも有する。
本発明の撥水性物品は、本発明の成形体を備える。本発明においては、成形体をそのまま撥水性物品として使用してもよいし、支持体に成形体を貼り付けて使用し、これを撥水性物品としてもよい。
支持体の素材としては特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、あるいはガラスなどの無機物の、単体もしくは複合体が挙げられる。
また、支持体の形状についても特に限定されず、例えば平板、曲板、球状、柱状、錐状、フィルムなどが挙げられる。
成形体がフィルム状である場合には、例えば携帯電話などのモバイル機器のディスプレイ、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、ショーウインドウ、看板、メガネのレンズなど、雨や蒸気などの水にさらされる恐れのある表示装置の部材として使用する。具体的には、対象物の表面に成形体を貼り付けて使用する。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明の成形体から構成することもできる。
各種測定および評価方法は以下の通りである。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたスタンパの縦断面又は表面に白金を1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7400F」)を用い、加速電圧:3.00kVの条件で陽極酸化アルミナを観察した。
表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ10個の細孔の中心間距離を平均してピッチを求めた。また、断面を5万倍で観察し、10個の細孔の深さを平均して孔深さを求めた。
また、断面を10万倍で観察し、スタンパの細孔の深部における細孔径を測定した。さらにこの値を、同様にして測定した孔径拡大前に形成された細孔の細孔径で除して、拡径拡大倍率を求めた。
成形体の縦断面又は表面に白金を10分間蒸着し、上記(1)の場合と同様の装置および条件にて成形体の微細凹凸構造を観察した。
表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ10個の凸部のうち、両端に位置する凸部の中心間距離を測定し、その値を「凸部の個数(10個)−1」で除することで、凸部間の平均間隔を求めた。
また、断面を5万倍で観察し、10個の凸部の高さを平均して凸部の平均高さを求めた。さらに、断面を10万倍で観察し、高さを測定した凸部に関して先端から10nmの位置における凸部の太さ(径)を測定し、平均値を求めた。そして、凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率を上記式(1)〜(3)より算出した。
成形体の5箇所に1μLの水滴を滴下し、自動接触角測定器(協和界面科学社製、「DM501」)を用い、θ/2法にて各滴下箇所における水接触角を測定し、その平均値を求めた。
<製造例1>
純度99.99%、厚さ0.3mmのアルミニウム板を50mm角に切断し、過塩素酸/エタノール混液中(体積比=1/4)中で電解研磨し、これをアルミニウム基材として用いた。
工程(a):
アルミニウム基材を、4.5質量%のシュウ酸水溶液中で、浴温15.6℃、化成電圧40Vの条件下で6時間陽極酸化を行い、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成した。
工程(b):
第1の酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸を混合した水溶液中に6時間浸漬して、第1の酸化皮膜を溶解させて除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成した。
工程(c):
アルミニウム基材を50mm×25mmに二等分した。続いて、2.7質量%のシュウ酸水溶液中で、浴温15.6℃、化成電圧40Vの条件下で30秒間陽極酸化を行い、細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成した。
工程(d):
第2の酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液中に8分間浸漬して、第2の酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。
工程(e):
前記工程(c)と工程(d)をさらに4回繰り返し(すなわち、工程(c)と工程(d)の実施回数はそれぞれ合計で5回)、ピッチ100nm、孔深さ200nmの逆釣鐘状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は2.0倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
5回目の工程(d)における浸漬時間を2分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
1〜4回目の工程(d)における浸漬時間を9分30秒に変更し、5回目の工程(d)における浸漬時間を2分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
1〜5回目の工程(c)における陽極酸化時間を15秒に変更し、1〜5回目の工程(d)における浸漬時間を4分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は2.0倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
1〜5回目の工程(c)における陽極酸化時間を15秒に変更し、1〜4回目までの工程(d)における浸漬時間を4分45秒に変更し、5回目の工程(d)における浸漬時間を1分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.3倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
4〜5回目の工程(d)における浸漬時間を4分に変更した以外は、製造例1と同様の方法でスタンパを製造した。なお、5回目の工程(d)により、5回目の工程(c)で形成された細孔の細孔径は1.7倍に拡径された。
工程(c)および工程(d)における条件および拡径倍率を表1に示す。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A>
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、70°であった。
(配合組成)
・新中村化学工業社製の「NKエステルATM−4E」:80質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:15質量部、
・2−ヒドロキシエチルアクリレート:5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、66°であった。
(配合組成)
・トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部、
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:10質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
下記に示す配合組成に従って各材料を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを得た。得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを厚さ50μmの平板状になるように硬化させた。得られた硬化物の平滑面における水接触角を、上記(3)の撥水性の評価と同様にして測定したところ、60°であった。
(配合組成)
・新中村化学工業社製の「NKエステルATM−4E」:90質量部、
・信越化学工業社製の「x−22−1602」:10質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE1173」:0.5質量部、
・日本チバガイギー社製の「DAROCURE TPO」:0.5質量部。
製造例3で作製したスタンパの表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを充填し、さらにその上に透明基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム(東洋紡社製、「A4300」)を積層し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aがスタンパに接触した状態で、PETフィルムを介して2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを硬化させた。ついで、スタンパを離型し、図1に示すような釣鐘状の凸部13を備えた微細凹凸構造を表面に有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aからなる樹脂層12と、透明基材11とからなる成形体10を得た。
得られた成形体10の微細凹凸構造について、隣接する凸部間の平均間隔、凸部の平均高さを測定した。また、凸部の先端から10nmの位置で水平面に切断したときの切断面の平均占有率を求めた。さらに、成形体について撥水性を評価した。これらの結果を表2に示す。
製造例5で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
製造例6で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例5で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用い、製造例4で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを用い、製造例1で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの代わりに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cを用い、製造例2で作製したスタンパを用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造し、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
特に、実施例1〜3を比べると、切断面の占有率が3.6%である実施例1、2の成形体の方が、占有率が5.7%である実施例3の成形体よりも水接触角の値が大きく、より優れた撥水性を発現できることが示された。
なお、先鋭化の影響に比べてアスペクト比の撥水性への影響は小さかった。
中でも、実施例1と実施例4、実施例2と実施例5を比べると、平滑面での水接触角が70°である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを用いた実施例1、2の成形体の方が、平滑面での水接触角が66°である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを用いた実施例4、5の成形体よりも水接触角の値が大きく、より優れた撥水性を発現できることが示された。
樹脂組成物の種類を代えた比較例2、3の成形体についても同様であり、切断面の占有率が8.2%と大きく、同じ種類の樹脂組成物を用いた実施例4、5の成形体に比べて水接触角の値が小さく、十分な撥水性を発現できなかった。
平滑面での水接触角が60°の樹脂組成物を用いた比較例4、5の成形体は、水接触角の値が小さく、十分な撥水性を発現できなかった。なお、比較例5の成形体は、切断面の占有率が3.6%であったが、凸部の先鋭化による効果は得られなかった。
また、本発明は、製造に使用する樹脂の設計自由度が従来に比べて高いため、強度特性等を付与した撥水性物品の製造に有用である。
Claims (5)
- 樹脂組成物からなる、複数の凸部が形成された微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、
前記凸部の先端から10nmの位置で水平に切断したときの切断面の平均占有率が8.0%以下であり、
隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であり、
かつ前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が61°以上であることを特徴とする成形体。 - 前記樹脂組成物は、硬化物とした際の平滑面における水接触角が90°未満であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 請求項1または2に記載の成形体を備えたことを特徴とする撥水性物品。
- 請求項1または2に記載の成形体の製造方法であって、
下記工程(a)〜(d)を経て、かつ工程(c)と工程(d)をn回繰り返したとき、n回目の工程(d)により、n回目の工程(c)で形成された細孔の孔径が1.1〜1.9倍となるように製造され、前記微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして用い、転写法により微細凹凸構造を形成することを特徴とする成形体の製造方法。
工程(a):アルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、細孔を有する第1の酸化皮膜を被加工面に形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(b):形成された第1の酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する酸化皮膜除去工程。
工程(c):細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、前記細孔発生点に対応した細孔を有する第2の酸化皮膜を被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(d):第2の酸化皮膜の一部を除去して、形成された細孔の孔径を拡大させる孔径拡大処理工程。 - 前記転写法が、前記スタンパと基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、前記スタンパを離型することにより行われることを特徴とする請求項4に記載の成形体の製造方法。
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