JP2011251605A - タイヤ設計方法、タイヤ設計装置およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水跳ね防止のためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を定める。次に、サイド部に凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下で作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、を作成する。タイヤモデルを水膜モデルが設けられた路面モデル上を転動させることにより微小モデルを飛散させるシミュレーションを行う。この後、微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、この目的関数の値が所定の範囲に入るとき、前記タイヤモデルのプロファイル形状に基づいて、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定める。
【選択図】 図3
Description
タイヤのウェット性能とは、例えば、ハイドロプレーニング現象に代表されるように、タイヤと路面間に水が介在することによってタイヤ特性が低下することをいう。従って、タイヤのウェット性能が良好であるとは、タイヤと路面間に水が介在することなく、たとえ水が介在しても、その介在を可能な限り抑えられ、また、この水の介在による影響が小さいことをいう。
当該文献1では、特性物理量として、路面状態再現モデルがタイヤモデルに作用する揚力、路面モデルがタイヤモデルに作用する路面反力、および路面状態再現モデルにおける粒子モデルの移動位置や流速を算出できるが、タイヤの水跳ね特性に優れたタイヤプロファイル形状を見出すことはできない。
水跳ね抑制のためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を定めるステップAと、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下で作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、を作成するステップBと、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを飛散させるシミュレーションを行うステップCと、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるために、前記目的関数の値が所定の範囲に入る前記設計変数の値を決定するステップDと、を有する。
水跳ねを抑制するためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を定める設定部と、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下で作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、を作成するモデル作成部と、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを飛散させるシミュレーションを行うシミュレーション演算部と、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるために、前記目的関数の値が所定の範囲に入る前記設計変数の値を決定する設計変数決定部と、を有する。
タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状の設定を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
水跳ねを抑制するためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を、コンピュータが定める手順と、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下でコンピュータが作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、をコンピュータが作成する手順と、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを、コンピュータが飛散させる手順と、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状をコンピュータが定めるために、前記目的関数が所定の範囲に入るような前記設計変数の値をコンピュータが決定する手順と、を有する。
図1は、本実施形態のタイヤ設計装置(以降、設計装置という)10の概略の構成を示す図である。設計装置10は、タイヤの水跳ね特性に優れたタイヤプロファアイル形状を有するタイヤを設計する。水跳ね特性とは、タイヤが路面上の水膜を通過するとき、タイヤ周囲に水が跳ね上がるときの特性である。この特性は、例えば到達距離および到達高さ、あるいは水跳ねする水の密度等を含む。
設計装置10は、水跳ね特性に優れたタイヤプロファイル形状を定めるために、タイヤの水跳ね特性を、タイヤモデルを用いた転動シミュレーションを用いて評価する。具体的には、設計装置10は、作成されたタイヤモデルを、別途作成された複数の粒子モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルが設けられた路面モデル上に転動させる転動シミュレーションを行う。このとき、水膜モデル中の粒子モデルがお互いに分離して飛散するので、設計装置10は、この粒子モデルの飛散状態を、1つの平面に投影して、粒子モデルの投影像を用いて、タイヤの水跳ね特性を評価する。設計装置10は、粒子モデルの飛散を抑制するタイヤモデルのタイヤプロファイル形状に基づいてタイヤプロファイル形状を決定する。
設計装置10が設計するタイヤは、例えば乗用車用タイヤあるいは重荷重用(バス、トラック用)タイヤ等が含まれ、タイヤサイズに限定されない。
条件設定部20における各種条件等の設定は、オペレータがディスプレイ等に表示された入力画面を見ながら、マウスやキーボード等の入力操作系40を用いて入力された内容に応じて、あるいは、予めメモリ16に記憶されているデータを呼び出して、行われる。
さらに、システム統合部22は、繰り返し定められるタイヤプロファイル形状に対する評価部30の評価結果に基づいて、最適な水跳ね特性を有するタイヤモデルの位置および形状の少なくとも1つを定める設計変数の値を決定し、最適な水跳ね特性を有するタイヤプロファイル形状を定める。
図2(a),(b)には、点P,Q,Rで定まる凸部52の他に、位置および形状が異なる凸部54,56の例が重ね書きされている。凸部54,56は、条件設定部20で定められた点P,Q,Rの位置を表す数値の制約条件を満たすように、システム統合部22で定められる。
図3は、モデル作成部24で作成されるタイヤのプロファイル形状を再現した2次元のタイヤモデルTMの要部を一例として示している。モデル作成部24は、このタイヤモデルTMを、タイヤ周方向に1周させて、3次元のタイヤモデルTMを作成する。
作成されるタイヤモデルTMは、図4(a)に示すような3次元形状をなした有限要素法に基づいたタイヤモデルである。なお、図4(a)に示すタイヤモデルTMでは要素分割するメッシュは表示されていない。
路面モデルRMは、図4(a)に示すような剛体の路面モデルRMあるいは、複数の要素で構成された有限要素モデルである。
水膜モデルSMは、図4(a)に示すように、路面モデルRMのタイヤモデルTMの走行部分の一部に形成されている。
路面モデルRM上の一部分に設けられる水膜モデルSMは、複数の粒子モデルPMを一定の間隔で配したモデルである。モデル作成部24は、水膜モデルSMの作成時、具体的には、水膜を再現した流体モデルとして、図4(b)に示すように、複数の粒子モデルPMをX方向、Y方向、Z方向に一定の間隔で等方状に配列する。モデル作成部24は、例えば、粒子モデルPMの間隔を2.5mm、粒子モデルの総数Nを数万個として、各粒子モデルPMの質量が同じになる様に、等方状に規則的に配置して、例えば、横幅400mm、厚さ10mm、長さ120mmとする水膜モデルSMを作成する。
水膜モデルSMの粒子モデルPMに適用される粒子法については、後述する。
具体的には、シミュレーション結果処理部28は、タイヤモデルTMが、水膜モデルSM上の通過開始から通過終了までの所定の時間範囲を一定の時間間隔毎に、飛散する粒子モデルPMの像を上記平面に投影する。投影に用いる上記平面は、タイヤモデルTMの中心を通る路面モデルRMの面に垂直方向に立設した面である。転動タイヤモデルTMは、路面モデルRMに対して移動するため、設定された時間毎に上記平面が設けられて、飛散する粒子モデルPMが上記平面に投影される。上記平面は、この平面の法線方向がタイヤモデルTMの移動方向となるように設けられる。この他に、図5に示されるように、上記平面は、路面モデルRMの面に垂直方向に立設した平面であれば、タイヤモデルTMの移動方向に対してどのような方向に傾斜角θをもって傾斜して設けられてもよい。図5は、タイヤモデルTMを路面モデルRMの上方から見た図である。
シミュレーション結果処理部28は、飛散する粒子モデルルPMを平面に投影する処理を、設定された時間間隔毎に行い、粒子モデルルPMの投影画像を時系列に取得する。
図6(a)〜(c)は、粒子モデルPMの投影像を用いた水跳ねの評価を行う流れを示す図である。図中、Y方向は、図4(a)に示すように、タイヤモデルTMの移動方向と直交するタイヤ幅方向に該当し、タイヤモデルTMの回転軸に平行な方向である。Z方向は、路面モデルRMの面に垂直な方向である。
まず、図6(a)に示されるように、評価部30は、設定された時間における粒子モデルルPMの投影像毎に、Y方向の予め定められた各位置における粒子モデルルPMのZ方向の最高位置をプロットする。
次に、評価部30は、図6(b)に示されるように、プロットされた点を用いて曲線によるカーブフィットを行う。すなわち、評価部30は、粒子モデルPMの投影像の包絡線の形状を作成する。包絡線は、例えば、多項式によって表される曲線であることが好ましく、多項式は、a・(x−x0) b+c(a,b,c,x0は定数であり、bは自然数)であることが好ましい。多項式a・(x−x0) b+cは、粒子モデルPMの投影像のプロットされた各点を精度良くカーブフィットすることができる。
次に、評価部30は、図6(c)に示されるように、作成された包絡線において、路面モデルRMの面からの最高高さH、包絡線の路面モデルRMの面への交差位置L、および、包絡線のタイヤモデルTMからの出射角度Φを算出する。算出された最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φは、メモリ16に記憶される。
評価部30は、最も大きな包絡線の最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φを用いて、他のタイヤにおける対応する最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φと比較することにより、水跳ね特性に関するタイヤの順位付けの評価を行う。また、評価部30は、カーブフィットにより得られた包絡線の形状を描画するために、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置22に出力する。
なお、評価部30は最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φの3つを算出して評価に用いるが、最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φの少なくとも1つを算出して評価に用いることもできる。
評価部30は、複数の粒子モデルPMが路面モデルRMの面へ落下する位置における粒子モデルPMの密度分布を用いて評価を行ってもよい。例えば、Y方向の各位置において路面モデルRM上に落下する粒子モデルPMの密度分布を求め、この密度分布により水跳ね特性を評価することもできる。例えば、密度が所定値を超えるY方向位置を目的関数として、Y方向位置を目的関数の値として、Y方向位置が目標数値範囲に含まれるか否かを判定すると共に、この判定結果とY方向位置の情報がシステム統合部22に送られてもよい。
すなわち、メモリ16には、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状の設定を、コンピュータに実行させるプログラムが記憶される。
このプログラムは。
水跳ね防止のためにタイヤのサイド部に別途設けられる凸部52の位置および凸部52の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を、コンピュータが定める手順と、
サイド部に凸部52が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルTMを制約条件の下でコンピュータが作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルRMと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の粒子モデルPMがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルSMと、をコンピュータが作成する手順と、
作成されたタイヤモデルTMを水膜モデルSMが設けられた路面モデルRM上を転動させることにより粒子モデルPMを、コンピュータが飛散させる手順と、
粒子モデルPMの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるために、目的関数が所定の範囲に入るような設計変数の値をコンピュータが決定する手順と、を有する。
図8は、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるタイヤ設計方法のフローの一例を示すフローチャートである。
まず、条件設定部20は、オペレータからの入力操作系20を通して入力を受け、この入力に基づいて、各モデルの作成条件が設定される。
次に、モデル作成部24は、メモリ16から呼び出されたモデルの作成条件に応じて、凸部52が設けられていないタイヤモデルTM、路面モデルRM、および、粒子モデルPMが一定間隔で配列された水膜モデルSMを作成する(ステップS10)。
タイヤモデルTMは、例えば2次元モデルである。
路面モデルRMは、剛体モデル、あるいは有限要素により作られた有限要素モデルである。この有限要素モデルには材料定数が付与されている。
水膜モデルSMは粒子モデルPMが図4(b)に示すように層状に形成される。水膜モデルSMは、少なくとも2層以上の粒子モデルPMを有するのが、精度の良い水跳ね特性の評価を得る点で好ましい。なお、粒子モデルPMの挙動を支配する後述する定式化された式中のパラメータの値を変更することにより、水の代わりに、雪、砂、泥、および砂利のいずれか1つを含む介在物を再現することができる。
さらに、条件設定部20は、図6(c)に示す最高高さH、交差位置Lおよび出射角度Φの少なくともいずれか1つを目的関数として設定する(ステップS40)。
上述のように本実施形態では、ステップS10と、ステップS20およびS30と、ステップS40とは、順番が定められて行われるが、いずれのステップを先に行ってもよい。
この後、モデル作成部24は、2次元のタイヤモデルがタイヤ回転軸を中心に1回転した外形形状に、タイヤ周方向に所定の間隔でメッシュ分割した3次元のタイヤモデルTMを作成する。これにより、モデル作成部24は、2次元のプロファイル形状を有するタイヤモデルを、3次元のタイヤモデルTMに変換する(ステップS50)。このとき、3次元モデルのタイヤモデルTMには、タイヤの構成部材の材料定数、質量およびポアソン比が付与される。
走行条件は、空気圧、負荷荷重、転動速度、横力、キャンバ角、制駆動力を含む。これらの条件は、予めメモリ16に記憶されており、シミュレーション演算部26から呼び出されて設定される。
タイヤモデルTMの転動シミュレーションでは、タイヤモデルTMに対して空気圧充填処理、接地処理、および転動処理が実行される。
空気圧充填処理では、タイヤモデルTMのタイヤ空洞領域に面する内周面の各節点に、設定された圧力に相当する力が与えられる。
なお、タイヤモデルTMが水膜モデルSM上を通過するときの、粒子モデルPMとタイヤモデルTMとの相互作用については、後述する。粒子モデルPMは、粒子モデルPMとタイヤモデルTMとの相互作用により、飛散する。
シミュレーション結果処理部28は、飛散した粒子モデルPMを、設定された時間間隔毎に、路面モデルRMの面に対して垂直方向に立設した平面上に投影する(ステップS62)。上記平面は、タイヤモデルTMの中心を通り、タイヤ幅方向に平行な面であることが、水跳ね特性を精度良く評価する点で好ましい。
評価部30は、抽出された値が目的関数の目標数値範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS70)。評価部30は、判定の結果および目的関数の値をシステム統合部22に送る。
システム統合部22は、判定の結果に応じて、設計変数の値を制約条件の下、変更する(ステップS80)。変更された設計変数の値は、モデル作成部24に送られて、凸部52の位置、形状を設定する(ステップS30)。このように、評価部30において、抽出された値が目的関数の目標数値範囲に含まれまで、ステップS30〜ステップS80が繰り返される。設計変数の値の変更は、モンテカルロ法あるいはラテンハイパーキューブ法を用いて行われる。
さらに、システム統合部22は、タイヤモデルTMのサイド部と位置および形状が決定された凸部52とを滑らかな曲線により接続する(ステップS100)。例えば、図2(b)に示すような三角形形状の凸部52から図2(a)に示すような滑らかな曲線で外観形状が形成された凸部52に修正される。
こうして、システム統合部22は、目的関数が目標数値範囲に入るような設計変数の値を決定し、水跳ねを抑制する最適な凸部52を備えたタイヤのプロファイル形状を作成することができる。
また、本実施形態では、タイヤモデルTMに形成される凸部のモデルが、タイヤにおけるトレッド部を基準とした凸部の立ち上がり位置と、凸部の先端の位置とを用いて作成されるので、最適な水跳ね特性を有する設計変数の値を効率よく求めることができる。
また、本実施形態では、タイヤセンターラインから凸部の先端位置にいたるタイヤ幅方向に沿った離間距離と、トレッド部の最大外径位置から凸部の立ち上がり位置にいたるタイヤ径方向に沿った離間距離と、が制限されるので、タイヤプロファイル形状を定めるタイヤ設計に有効に用いることができる。
また、タイヤモデルTMに形成される凸部のモデルが、凸部の立ち上がり位置と、前記凸部の先端の位置とを直線で結んで形成されるので、簡略化したタイヤモデルTMを用いた粒子モデルPMの飛散の計算を効率よく行うことができる。さらに、凸部の立ち上がり位置と、凸部の先端の位置とを曲線を用いて接続することにより、タイヤプロファイル形状を定めるので、現実的なタイヤプロファイル形状を効率よく定めることができる。
粒子モデルPMの飛散状態を表すパラメータとして、飛散した粒子モデルPMを路面モデルRMの面に垂直方向に立設した平面に投影した投影像から得られる投影像の包絡線を規定するパラメータを用いるので、水跳ね特性を定量的かつ精度良く評価することができる。
このような粒子モデルを用いて、水跳ねを再現するために、以下のような粒子モデルPMを用いることが好ましい。
以下、粒子モデルPM、および粒子モデルPMとタイヤモデルTMの相互作用について説明する。
一般に、有限要素法によって作成されるモデルは、図10(a)に示すように、有限要素の応力や歪み等の物理量の分布を、有限要素を構成する節点の物理量を用いて表現する。一方、図10(b)に示されるように、空間に固定された空間格子内で流体要素(図10(b)中の斜線部分)を移動させ、空間格子で仕切られた領域における物理量を用いて水膜モデルを表現する方法もある。しかし、本実施形態の水膜モデルSMは、図10(c)に示すように、複数の粒子モデルPMで構成し、この粒子モデルPMを一定の間隔で等方状に配列した状態から、後述する移動規定条件の下に粒子モデルPMを移動させて、粒子モデルPMの持つ速度や密度や全エネルギー量を用いて表現する。そのため、従来の方法のように、空間格子や有限要素が設けられない。しかも、粒子モデルPMは、粒子モデル移動規定条件の下に自由に移動するので、大きな移動や飛散を伴う挙動を流体に固定した座標系で記述するLagrangianに基づいて表現しても、数値計算上の適切な解を得ることができる。
ここで、ρは流体の密度、Uは流体の速度、σは流体の応力テンソルであり、流体の圧力pとσ=−pI(Iは単位テンソル)の関係にある量、eは単位体積当たりの全エネルギー量である。
ここで、▽Wijは、下記式(10)を表す。
なお、▽は空間微分を表す。また、πijは人工粘性を表し、後述する変形計算において数値上の振動解の発生を抑制し、また異なる粒子モデルPMが衝突する際に互いに相手をすり抜けないように、運動量や全エネルギー量を交換するもので、予め設定されるものである。
次に、タイヤモデルTMと複数の粒子モデルPMとの相互作用の演算を説明する。
具体的には、タイヤモデルTMの変形計算と複数の粒子モデルPMの移動の計算が、互いのモデルが及ぼす相互作用を考慮して行われる。これらの計算、すなわち、タイヤモデルTMの変形計算、粒子モデルPMの変形計算、およびタイヤモデルTMと複数の粒子モデルPとの相互作用の演算は、所定の時間間隔毎の時間ステップ毎に逐次行われる。具体的には、タイヤモデルTMが水膜モデルSM上の通過を開始する直前のタイヤモデルTMの各要素の応力や速度や加速度等の物理量が取り出され、この物理量を初期条件として、粒子モデルPMに速度が与えられる。
まず、それぞれの粒子モデルPMの位置が既知の状態にある、時刻T(n) の時間ステップにおいて、粒子モデルPM各々のスムージングレングスの設定、すなわち、上記半径2hの球の範囲(近傍領域Ri ) を粒子モデルPi のそれぞれについて設定し(ステップS200)、近傍領域Ri に含まれる近接する粒子モデルPj を探索し求める(ステップS202)。この後、近接する粒子モデルPj の数に基づいて粒子モデルPi における密度ρi を算出するとともに、近傍領域Ri における歪みや歪み速度を粒子モデルPj の位置および速度を用いて算出する(ステップS204)。この後、粒子モデルPi における密度ρi から水を支配する状態方程式と等温変化の条件とを用いて粒子モデルPi にかかる圧力を求める。具体的には、密度に比例する形で粒子モデルPi にかかる圧力を算出する。さらに、粒子モデルPi のそれぞれの有する運動エネルギーおよび歪みエネルギーを算出する(ステップS206)。算出される粒子モデルPi における圧力をpとすると式(8)中のσi とσi =−pI(Iは単位テンソル)の関係があり、この関係を用いて、後述する粒子モデルPMの移動の計算において用いられる。さらに、粒子モデルPMの移動の計算において粘性を考慮する場合、近傍領域Ri における歪み速度から粒子モデルPi における粘性応力が求められ、式(8)中のσi に加えられる。これにより、雪、砂、泥、および砂利の介在物の挙動を再現することができる。なお、近傍領域Ri が粒子モデルPj を全く含まない場合、式(8)中のmjは0となり右辺は0となる。
なお、本実施形態では、粒子モデルPMの飛散の挙動を計算するので、相互作用の計算が終了した後も、粒子モデルPMの移動の計算は続行される。
あるいは、粒子法による粒子モデルを用いる代わりに、粒状体や水等の流体を複数の粒子モデルPMでモデル化し、複数の粒子モデルPM間を単純なばねやダッシュポット等で結合しあるいは粒子モデルPM間同士の接触を摩擦力を用いて表す方法(DEM:Discrete Element Method )を粒子モデルPMに適用することもできる。
12 CPU
14 バス
16 メモリ
18 入出力インターフェース部
20 条件設定部
22 システム統合部
24 モデル作成部
26 シミュレーション演算部
28 シミュレーション結果処理部
30 評価部
36 処理モジュール群
40 入力操作系
42 出力装置
Claims (9)
- タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるタイヤ設計方法であって、
水跳ね抑制のためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を定めるステップAと、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下で作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、を作成するステップBと、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを飛散させるシミュレーションを行うステップCと、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるために、前記目的関数の値が所定の範囲に入る前記設計変数の値を決定するステップDと、を有することを特徴とするタイヤ設計方法。 - 前記ステップBでは、前記タイヤモデルに形成される前記凸部のモデルが、前記タイヤにおける前記トレッド部を基準とした前記凸部の立ち上がり位置と、前記凸部の先端の位置とを用いて作成される、請求項1に記載のタイヤ設計方法。
- 前記制約条件として、タイヤセンターラインから前記凸部の先端位置にいたるタイヤ幅方向に沿った離間距離と、前記トレッド部の最大外径位置から前記凸部の立ち上がり位置にいたるタイヤ径方向に沿った離間距離と、が制限される、請求項1または2に記載のタイヤ設計方法。
- 前記ステップBでは、前記タイヤモデルに形成される前記凸部のモデルが、前記凸部の立ち上がり位置と、前記凸部の先端の位置とを直線で結んで形成され、
前記ステップDでは、前記凸部の立ち上がり位置と、前記凸部の先端の位置とを曲線を用いて接続することにより、タイヤプロファイル形状を定める、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ設計方法。 - 前記ステップCにおける前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータは、前記飛散した前記微小モデルを前記路面モデルの面に垂直方向に立設した平面に投影した投影像から得られる前記投影像の包絡線を規定するパラメータである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ設計方法。
- 前記ステップDにおいて前記目的関数の値が所定の範囲に入らないとき、前記タイヤモデルの前記設計変数を前記制約条件の下で変更することにより、新たなタイヤモデルが作成されて前記ステップCおよび前記ステップDが再度行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ設計方法。
- 前記ステップBでは、前記制約条件の下、異なる複数のタイヤモデルを定める設計変数の組みが予め作成され、
前記ステップCでは、前記複数のタイヤモデルのそれぞれについて前記シミュレーションが行われ、
前記ステップDでは、前記目的関数が所定の範囲に入る適正タイヤモデルを前記複数のタイヤモデルの前記目的関数の値を用いて抽出することにより、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状が定められる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ設計方法。 - タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるタイヤ設計装置であって、
水跳ねを抑制するためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を定める設定部と、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下で作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、を作成するモデル作成部と、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを飛散させるシミュレーションを行うシミュレーション演算部と、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状を定めるために、前記目的関数の値が所定の範囲に入る前記設計変数の値を決定する設計変数決定部と、を有することを特徴とするタイヤ設計装置。 - タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状の設定を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
水跳ねを抑制するためにタイヤのサイド部に設けられる凸部の位置および前記凸部の形状の少なくとも1つの設計変数を、定められた範囲に制限する制約条件を、コンピュータが定める手順と、
サイド部に前記凸部が設けられたタイヤを再現したタイヤモデルを前記制約条件の下でコンピュータが作成し、さらに、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルと、この路面上に設けられる水膜を再現した、複数の微小モデルがお互いに分離可能に含まれる水膜モデルと、をコンピュータが作成する手順と、
作成された前記タイヤモデルを前記水膜モデルが設けられた前記路面モデル上を転動させることにより前記微小モデルを、コンピュータが飛散させる手順と、
前記微小モデルの飛散状態を表すパラメータを目的関数とし、タイヤの水跳ねを抑制するタイヤプロファイル形状をコンピュータが定めるために、前記目的関数が所定の範囲に入るような前記設計変数の値をコンピュータが決定する手順と、を有することを特徴とするプログラム。
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