JP2011231186A - プラスチック基材用水性被覆組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合体(W)を含むエマルション(X)および塩素化ポリオレフィン樹脂(Y)を含むプラスチック基材用水性被覆組成物であって、重合体(W)が、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、特定の単量体を特定量含むビニル系単量体または混合物(I)を乳化重合した後、特定の単量体を特定量含むビニル系単量体または混合物(II)を乳化重合して得られた、プラスチック基材用水性被覆組成物であり、該組成物を塗装することによる。
【選択図】なし
Description
たとえば、特許文献1には、特定のポリオルガノシロキサン重合体を使用し、ガラス転移温度を規定したエチレン性不飽和単量体を重合して得られた水性被覆組成物が記載されている。
また、特許文献2には、アクリル酸エステルをゴム成分層とした重合体を形成した後、メタクリル酸エステルを重合させて得られた多層構造重合体微粒子が記載されている。
特許文献2記載の重合体から得られる水性コーティング剤を用いた場合は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含まないため、軟質素材への密着性が十分でなかった。
そこで本発明の目的は、プラスチック基材に対して、特にポリプロピレン基材に対して密着性、耐水性、および耐油脂性に優れた塗膜を得るための水性被覆組成物を提供することにある。
重合体(W)を含むエマルション(X)および塩素化ポリオレフィン樹脂(Y)を含むプラスチック基材用水性被覆組成物であって、
重合体(W)が、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、アルキル基の炭素数が4以上のアルキル(メタ)アクリレートを80質量%以上含むビニル系単量体または混合物(I)を乳化重合した後、アルキル基の炭素数が2以下のアルキル(メタ)アクリレートを60質量%以上含むビニル系単量体または混合物(II)を乳化重合して得られたプラスチック基材用水性被覆組成物にある。
重合体(W)は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、アルキル基の炭素数が4以上のアルキル(メタ)アクリレートを80質量%以上含むビニル系単量体または混合物(I)を乳化重合した後、アルキル基の炭素数が2以下のアルキル(メタ)アクリレートを60質量%以上含むビニル系単量体または混合物(II)を乳化重合して得られたものである
本発明で使用されるポリオルガノシロキサン重合体(A)は、オルガノシロキサン(a)とグラフト交叉剤(b)を共縮合して得られたものである。オルガノシロキサン(a)は、例えば、一般式R1 mSiO(4−m)/2(式中、R1は置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を表す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有するものである。このオルガノシロキサン(a)が有するR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基およびそれらの水素原子をハロゲン原子又はシアノ基で置換した置換炭化水素基等を挙げることができる。
この酸触媒の使用量は、特に規定されるものではなく、目的とするポリオルガノシロキサン重合体(A)の分子量、固形分量および重合温度等の重合条件により任意に設定できるものであるが、オルガノシロキサン(a)成分とグラフト交叉剤(b)成分の合計100質量部に対して2〜12質量部の範囲とするのが好ましい。これは、酸触媒の使用量を2質量部以上とすることによって、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の分散安定性が良好となり、12質量部以下とすることによって、形成される塗膜の耐水性が良好となる傾向にあるためである。
重合体Bは上記のようにして得られるポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、ビニル系単量体または混合物(I)を乳化重合して得る。
本発明において、ビニル系単量体または混合物(I)は、アルキル基の炭素数が4以上のアルキル(メタ)アクリレートを80質量%以上含むことが必要である。アルキル基の炭素数が4以上のアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは単独にてもしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。特に、密着性や耐水性の観点から、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
マレイミド誘導体としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等が挙げられる。
アミド基含有ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オレフィン系単量体としては、例えば、ブタジエンが挙げられる。
これらのビニル系単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明における共重合体のガラス転移温度(Tg)は、Foxの式から求められる計算値である。
ここで、Foxの式とは、下記の関係式である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの質量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
本発明の水性被覆材の主成分である重合体(C)は、上記記載の方法によって得られた重合体(B)にビニル系単量体または混合物(II)を加え、乳化重合して得る。
本発明において、ビニル系単量体または混合物(II)は、耐油脂性の点からアルキル基の炭素数が2以下のアルキル(メタ)アクリレートを60質量%以上含むことが必要である。このましくは65質量%以上である。
アルキル基の炭素数が2以下のアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記記載のビニル系単量体の具体例としては、ビニル系単量体または混合物(I)で記載した単量体と同様のものを用いることができる。
本発明のエマルション(X)の製造方法は、ラジカル重合開始剤による乳化重合など、公知の方法が使用できる。
ラジカル開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリルに代表される油溶性アゾ化合物類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合速度の促進および70℃以下での低温の重合が望まれる場合には、例えば、重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
分子量調整剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤が挙げられる。耐水性の観点から、連鎖移動剤の使用量は、全単量体の質量に対して1質量%以下とするのが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、各種のアニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、さらには高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ、反応性乳化剤も使用できる。なかでも塗膜の耐水性、耐水性の観点から、反応性乳化剤を使用することが好ましい。
得られた重合体(C)が分散したエマルション(X)は、乳化重合の後、塩基性化合物の添加によりpH6.5〜10.0の範囲に調製することでエマルションの安定性を高めることができる。なかでも、優れた凍結−融解安定性が向上することからpH8.5〜10.0に調製するのが好ましい。
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
本発明のプラスチック基材用水性被覆組成物は、エマルション(X)と、塩素化ポリオレフィン樹脂(Y)を混合して得られる。
塩素化ポリオレフィン樹脂(Y)としては特に限定されるものではないが、具体的には例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、天然ゴム、オレフィン系ゴム等のポリオレフィン類にカルボキシル基、水酸基、酸無水物基等を導入した変性ポリオレフィン類を公知の方法で塩素化させた塩素化ポリオレフィン樹脂が挙げられる。上記塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法としては特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリオレフィン類を適当な媒体に溶解又は分散させた後、塩素ガスと反応させることによって、容易に所望する塩素化ポリオレフィン樹脂を得ることができる。上記の媒体としては、環境への配慮から水を用いることが好ましい。これら塩素化ポリオレフィンの中でも、ポリプロピレンおよび/又はポリエチレンを塩素化することによって得られる塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましい。さらに塩素化ポリオレフィン樹脂の好ましい例として上述した塩素化ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸で等で変性した酸無水物変性塩素化ポリオレフィンも挙げられる。塩素化ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、スーパークロン(商品名;日本製紙ケミカル(株)製)、ハードレン(商品名;東洋化成(株)製)等が挙げられる。
また、本発明の塗料用樹脂組成物は、公知の種々の塗装方法によって基材に塗布できる。さらに基材への塗布後、例えば、50〜90℃で、5〜30分間加熱することによって、密着性、耐水性、耐油脂性、貯蔵安定性に優れた塗膜が得られる。
表1に記載の組成に従って重合して得られたエマルション(X)(固形分約40%)と塩素化ポリオレフィン(Y)としてスーパークロンS−4161(日本製紙(株)製、有効成分30%、塩素含有量20%)を表1記載の比率によって配合した。エマルション(X)と塩素化ポリオレフィン(Y)の混合物39.4g(固形分量)に2−ジメチルアミノエタノールを添加して、そのpHを8.0に調整した。さらに、造膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル9.9gを添加した後、ディスパーで攪拌し、水性被覆組成物を調整した。
得られた水性被覆組成物を日本ポリケム(株)製ポリプロピレン樹脂「TX−1810A」から成形した厚さ3mmの板に、乾燥膜厚20μとなるようにスプレー塗布し、80℃の雰囲気中で30分間乾燥させて塗膜を形成させ、試験片を得た。
次いで、試験片の塗膜面に、基材に達するように縦横1mm間隔で各11本の切り込みを入れ100個の碁盤目を作り、この上にセロハン粘着テープを貼りつけた後、該粘着テープを急激に剥がした後の塗膜の状態を観察し、基材密着性を下記の評価基準で評価した。
○:碁盤目の剥がれがない
△:碁盤目の剥がれが極わずかにある
×:碁盤目の一部が剥がれている
上記の基材密着性試験(1)で作製した試験片を40℃の温水に1日間浸漬した後、塗膜の外観状態を観察し、下記の評価基準で評価した。
○:異常なし
×:一部ふくれ、白化等がある
上記の基材密着性試験(1)で作製した試験片の塗膜上に、牛脂(和光純薬工業社製)1gを量り取り、塗板上にのせ、続いてガーゼを牛脂部にかぶせた後ガラスシャーレに入れ蓋をし、80℃の雰囲気温度にて7日間放置後、台所用洗剤にて洗浄、乾燥後の表面状態を目視により、下記の評価基準で評価した。
○:異常なし
△:極わずかにふくれがある
×:一部ふくれが認められる
上記の塗膜性能評価で使用した配合物を100g量り取り、ガラス瓶に入れ40℃の恒温水槽に浸漬させた。7日後に配合物の状態を目視により、下記の評価基準で評価した。
◎:異常なし
◎〜○:極わずかに増粘している
○:わずかに増粘している
○△:増粘している
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物(95部)と、γ−メタクリロ
イルオキシプロピルトリメトキシシラン(5部)、脱イオン水(250部)、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム(0.4部)およびドデシルベンゼンスルホン酸(0.4部)からなる組成物を、ホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
ついで、水(55部)およびドデシルベンゼンスルホン酸(5部)を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、上記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサン共重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は20.0%であった。
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水を40部、SiEmを50部(固形分10部)と、ビニル系単量体または混合物(I)としてノルマルブチルアクリレート(26.5部)、メチルメタクリレート(3.3部)、アリルメタクリレート(0.2部)の混合物、およびパーブチルH69(日本油脂(株)製)(0.09部)を仕込んだ。フラスコの内温を48℃に昇温した後、硫酸第一鉄(0.0001部)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(0.00025部)、アスコルビン酸ナトリウム(0.02部)、および脱イオン水(2部)からなる還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。
ついで、上記還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、ビニル系単量体または混合物(II)としてメチルメタクリレート(40部)、i−ブチルメタクリレート(17部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2部)、メタクリル酸(1部)の混合物、脱イオン水(27部)、アデカリアソープSR−10(1.5部)予め乳化分散させたプレエマルション液と過硫酸アンモニウム(0.1部)および脱イオン水(2部)からなる開始剤とを15分かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持した。プレエマルション液滴下終了後、プレエマルション液滴下槽を脱イオン水(2部)で洗浄し、フラスコに添加した。この添加が終了してから80℃で1時間保持した。
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.85部)を添加してエマルション(X)を得た。
得られたエマルション(X)と塩素化ポリオレフィン(Y)としてスーパークロンS−4161(日本製紙(株)製、有効成分30%、塩素含有量20%)を前記記載の方法に従って水性被覆組成物調整し、各種試験を実施し、その結果を表1に示した。
ビニル系単量体または混合物(I)、ビニル系単量体または混合物(II)を表1に従って変更した以外は、実施例1と同様にしてエマルション(X)を得た。得られたエマルション(X)と塩素化ポリオレフィン(Y)を前記記載の方法に従って水性被覆組成物調整し、各種試験を実施し、その結果を表1に示した。
n−BA:ノルマルブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
2−EHA:2―エチルヘキシルアクリレート
i−BMA:イソブチルメタクリレート
t−BMA:ターシャリーブチルメタクリレート
AMA:アリルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
Claims (2)
- 重合体(W)を含むエマルション(X)および塩素化ポリオレフィン樹脂(Y)を含むプラスチック基材用水性被覆組成物であって、
重合体(W)が、
ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、アルキル基の炭素数が4以上のアルキル(メタ)アクリレートを80質量%以上含むビニル系単量体または混合物(I)を乳化重合した後、アルキル基の炭素数が2以下のアルキル(メタ)アクリレートを60質量%以上含むビニル系単量体または混合物(II)を乳化重合して得られた、
プラスチック基材用水性被覆組成物。 - 請求項1記載のプラスチック基材用水性被覆組成物が塗装された、プラスチック成型物。
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