JP2008260883A - 水性被覆材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性を兼ね備えた塗膜を形成できる水性被覆材及び該水性被覆材の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオルガノシロキサン重合体(A)及びエチレン性不飽和単量体(b)の重合体(B)を含有する層の外側に、エチレン性不飽和単量体(c)の重合体(C)を備えた、多層構造のエマルション粒子を含有する水性被覆材であって、エチレン性不飽和単量体(b)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(d)を75〜100質量%含んでおり、該エチレン性不飽和単量体(d)としてエチレン性不飽和単量体(b)に含まれているメチルメタクリレートの、エチレン性不飽和単量体(b)とエチレン性不飽和単量体(c)との合計質量に対する質量割合が、30質量%以上であることを特徴とする水性被覆材。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材、及び該水性被覆材の製造方法に関する。
従来、建築物、土木構造物に使用する塗料分野では、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)を溶媒とする溶剤系塗料が用いられていた。しかし、塗装作業者や周辺住民の健康及び環境保護が考慮され、VOCを溶媒とする溶剤系塗料から、水を分散媒とする水性塗料(水性被覆材)への変換が図られている。
しかし、代表的な水性塗料である水性エマルション塗料に用いられるエマルション樹脂は、固有の最低造膜温度(以下、MFTとする。)を持っており、塗膜を形成するためにMFT以下の温度で造膜を行う場合には、造膜助剤としてVOCの添加が必要であった。
また、塗板を積み重ねた際に発生しやすいブロッキングを防止するためには、バインダーとして高硬度の樹脂を使用する必要がある。しかし、高硬度の樹脂を使用した被覆材の塗膜は耐凍害性が低く、またMFTも高いことから、造膜助剤を多量に配合する必要がある。従って、水性エマルション塗料であっても相当量のVOCが含まれており、塗装後の乾燥が不十分な場合には、残存するVOCにより塗膜の耐ブロッキング性や耐水性が悪くなる。そこで、耐ブロッキング性及び耐凍害性を有し、且つ、耐水性及び耐候性の良好な塗膜を形成する水性被覆材について検討がなされている。
例えば、耐ブロッキング性、低温安定性及び低温造膜性に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、コア/シェル構造を有し、ポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖を含むエチレン性不飽和単量体の共重合体をシェル層とした樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。しかし、樹脂中へのポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖の導入は、特に外装用途に用いる場合に、塗膜の耐水性及び耐候性が低下するという問題がある。
また、耐ブロッキング性、耐水性、平滑性及び耐候性に優れた塗膜を形成する樹脂として、コア/シェル構造を有し、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体の共重合体をシェル層とし、且つ、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物を含有させたものを使用した樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。しかし、塗膜の親水性が高いため、外装用途に用いた場合に、塗膜の耐水性及び耐候性が低下するという問題がある。
また、耐水性、耐ブロッキング性及び耐凍害性に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、コア/シェル構造を有し、Si含有モノマーの共重合体を使用した樹脂複合体が開示されている(特許文献3)。しかし、ガラス転移温度(以下、Tgという。)の高いコア層の含有率が10〜35質量%と少なく、また低MFT化のためにシェル層のTgを0℃以下にしているため、塗膜の耐ブロッキング性が充分でない。
また、特許文献4には、成膜性、耐ブロッキング性、塗膜硬度及び塗膜強度に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、コア/シェル構造を有する樹脂組成物が開示されている。しかし、特許文献3の技術と同様、Tgの高いコア層の含有率が10〜30質量%と少ないため、塗膜の耐ブロッキング性が充分でない。
特許文献5には、耐候性、耐水性、柔軟性に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、コア/シェル構造を有するアクリルグラフトシリコーン樹脂複合体が開示されている。しかし、コア層のTgが−60〜20℃と低いため、塗膜の耐ブロッキング性が低い。
以上のように、従来の水性塗料は塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性及び耐候性を十分に満足するものではない。また、塗料には塗膜の平滑性も非常に重要である。そのため、これら特性を同時に満足する塗膜が形成できる水性被覆材の開発が強く求められている。
特開2001−164178号公報 特開2002−3778号公報 特開2003−226793号公報 特開2006−143763号公報 特開2004−137374号公報
本発明では、耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材を提供する。
本発明では、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体(b)を1段以上で乳化重合して重合体(B)を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(c)を加え、乳化重合して重合体(C)を形成し、これにより得られるエマルション粒子を含有する水性被覆材であって、エチレン性不飽和単量体(b)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(d)を75〜100質量%含んでおり、該エチレン性不飽和単量体(d)としてエチレン性不飽和単量体(b)に含まれているメチルメタクリレートは、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体(b)とエチレン性不飽和単量体(c)との合計質量を基準として、30質量%以上であることを特徴とする水性被覆材を提供する。
また、本発明では、ポリオルガノシロキサン重合体(A)及びエチレン性不飽和単量体(b)の重合体(B)を含有する層の外側に、エチレン性不飽和単量体(c)の重合体(C)を備えた、多層構造のエマルション粒子を含有する水性被覆材であって、重合体(B)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(d)の重合単位を75〜100質量%含んでおり、該エチレン性不飽和単量体(d)として重合体(B)に含まれるメチルメタクリレートの重合単位は、重合体(B)及び重合体(C)の重合単位である、エチレン性不飽和単量体(b)とエチレン性不飽和単量体(c)との合計質量に対して、30質量%以上であることを特徴とする水性被覆材を提供する。
本発明によれば、耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材が提供できる。
以下、本発明の水性被覆材について詳細に説明する。
本発明の水性被覆材は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体(b)を1段以上で乳化重合して重合体(B)を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(c)を加え、乳化重合しての重合体(C)を形成し、それにより得られる多層構造のエマルション粒子を含有する。
[ポリオルガノシロキサン重合体(A)]
ポリオルガノシロキサン重合体(A)の原料としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシラン類や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(3〜7量体のジメチルシロキサン環状オリゴマーの混合物)等のジメチルシロキサン環状オリゴマー類や、ジメチルジクロロシラン等が挙げられる。得られる重合体(A)の熱安定性等の性能やコストを考慮すると、ジメチルシロキサン環状オリゴマー類を用いるのが好ましい。
また、塗膜の高度な透明性、耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性が発現できるため、グラフト交叉点を有するポリオルガノシロキサン重合体(A)であるのが好ましい。
この場合に重合反応に用いるケイ素含有グラフト交叉剤としては、例えば、分子中に1個以上の加水分解性シリル基、及び1個以上のビニル重合性官能基またはメルカプト基を含有する化合物が挙げられる。加水分解性シリル基としては、重合反応性、取り扱いの容易さ、コスト等の観点から、アルコキシシリル基であるのが好ましい。
ケイ素含有グラフト交叉剤の具体例としては、例えば、ビニルシラン類、アクリロイルオキシアルキルシラン類、メタクリロイルオキシアルキルシラン類、メルカプトアルキルシラン類等が挙げられる。
ビニルシラン類としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等が挙げられる。
アクリロイルオキシアルキルシラン類としては、例えば、γ−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
メタクリロイルオキシアルキルシラン類としては、例えば、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
メルカプトアルキルシラン類としては、例えば、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
なかでも、ビニル重合反応性、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性の観点から、アクリロイルオキシアルキルシラン類、メタクリロイルオキシアルキルシラン類、メルカプトアルキルシラン類がより好ましい。これらは必要に応じて1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
加えるケイ素含有グラフト交叉剤の量は、グラフト交叉点を有するポリオルガノシロキサン重合体(A)中のケイ素原子量を基準として、ケイ素含有グラフト交叉剤のケイ素原子量が0.2〜50モル%の範囲とするのが好ましい。0.2モル%以上であれば、塗膜の透明性が向上し、50モル%以下であれば、塗膜性能が向上する。また、0.5〜15モル%とするのがより好ましい。0.5モル%以上であれば、得られる塗膜の透明性がさらに良好となり、15モル%以下で乳化重合の際のラテックス安定性が良好になる。
ポリオルガノシロキサン重合体(A)の重量平均分子量は10000以上であるのが好ましい。重量平均分子量が10000以上であれば、得られる塗膜の耐久性が高くなる。重量平均分子量が50000以上であるのがより好ましい。
得られるエマルション粒子中のポリオルガノシロキサン重合体(A)の含有量は、重合体(B)及び重合体(C)を合わせた総質量を100質量部としたとき、0.2〜150質量部の範囲内であるのが好ましい。また、含有量が0.5〜100質量部であるのがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体(A)の含有量が0.2質量部以上であれば、塗膜の耐候性、耐水性、耐凍害性、平滑性が高くなる。また、150質量部以下であれば、塗膜の硬度、強度、耐ブロッキング性、耐汚染性の低下を抑制できる。
[重合体(B)]
重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水分散体の存在下でエチレン性不飽和単量体(b)(以下、単量体(b)とする。)を1段以上で乳化重合することにより得られる。また、本発明の単量体(b)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(単量体(b)中に含まれるものを特にエチレン性不飽和単量体(d)とし、以下、単量体(d)とする。)を75〜100質量%含有することを特徴とする。
ここで、SP値とは、[数1]で表されるFedorsの式(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,(2),1974)により求めた値をいう。
Figure 2008260883
[数1]において、δ(J/cm1/2は単量体(j)のSP値、△E(J/mol)は単量体(j)の凝集エネルギー密度、V(cm/mol)は単量体(j)のモル体積、△e(J/mol)は原子又は原子団(i)の蒸発エネルギー、△v(cm/mol)は原子又は原子団(i)のモル体積を示す。
重合体(B)は、SP値が20〜30(J/cm1/2の単量体(d)を75〜100質量%含む単量体(b)を1段以上で乳化重合することにより得られ、単量体(b)中の単量体(d)の割合が80〜100質量%であるのが好ましい。単量体(d)が75質量%以上であれば、ポリオルガノシロキサン重合体(A)に対する単量体(b)の含浸性が向上し、ポリオルガノシロキサン重合体(A)と重合体(B)との相溶性が高くなる。したがって、疎水性の高いポリオルガノシロキサンにより重合体(B)を疎水化でき、高いSP値に起因する耐水性、耐候性の低下を抑制できる。
また、単量体(d)が75質量%以上であれば、重合体(B)と重合体(C)との相溶化が抑制でき、エマルション粒子のそれぞれの重合体の層における機能分化が可能となる。また、重合体(B)を高いTgにする場合に、塗膜の耐凍害性を低下させることなく耐ブロッキンッグ性を向上させられる。
単量体(d)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、スチレン等のSP値が20〜25のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル等のSP値が25を超えるエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
塗膜の耐水性、耐候性の点からは、SP値が20〜25のエチレン性不飽和単量体を使用することが好ましい。
また、塗膜の耐ブロッキング性の面から、本発明の単量体(b)中に含有させる単量体(d)は、単量体(b)と単量体(c)とを合わせた、単量体の合計質量(以下、単に合計単量体量とする。)を基準として、30質量%以上をメチルメタクリレートとすることを特徴とする。また、33質量%以上をメチルメタクリレートとするのが好ましい。また、塗膜の耐凍害性の面から、65質量%以下でメチルメタクリレートを用いるのが好ましい。
重合体(B)のTgは、50〜150℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。Tgが50℃以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性が向上し、150℃以下であれば、塗膜の耐凍害性が向上する。
重合体(B)のTgを50〜150℃とするために、単量体(b)には、メチルメタクリレート以外に、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和単量体が使用できる。しかし、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のSP値が20(J/cm1/2以下のエチレン性不飽和単量体を使用する場合には、重合体(B)と重合体(C)の相溶化の抑制効果が小さくなることや、塗膜の耐凍害性の観点から、使用量を抑えることが好ましい。また、エチレン性不飽和単量体(d)の中でも、(メタ)アクリル酸等の親水性の高いエチレン性不飽和単量体を使用する場合には、重合工程での安定性や、塗膜の耐水性、耐候性の面から使用量を制限することが好ましい。
Tgとは、式(1)に示したFoxの式により求められる値である。
1/(273+Tg)=Σ(W/(273+Tg))・・・(1)
ここで、Wは単量体iの質量分率、Tgは単量体iの単独重合体のTg(℃)を示す。
Tgが50〜150℃である重合体(B)の、エマルション粒子中の含有量は、合計単量体量に対して30〜70質量%であるのが好ましく、35〜65質量%であるのがより好ましい。含有量が30質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性が高くなる。また、含有率が70質量%以下であれば、塗膜の耐凍害性が高くなる。
また、本発明の水性被覆材においては、以下に示すように、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体を単量体(b)中に含有させることで、より高度な塗料物性、塗膜物性を発現することができる。これらの単量体は必要に応じて2種以上を使用することができる。
単量体(b)中にヒドロキシル(メタ)アクリレートを含有させることにより、水性被覆材を製造する際の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性を向上させられる。単量体(b)中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの質量割合は、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。単量体(b)中の質量割合が0.1質量%以上であれば効果が得られ、15質量%以下であれば塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
単量体(b)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含有させることにより、塗膜の耐ブロッキング性、耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性を向上させられる。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、単量体(b)中に0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば効果が得られ、15質量%以下であれば、塗膜の耐水性及び耐候性の低下を抑制できる。
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体とは、得られたエマルション粒子中に残存する自己架橋性官能基が、エマルション粒子が室温で分散液として保管されている間は化学的に安定であり、塗装時の乾燥、加熱又はその他の外的要因によって側鎖の官能基同士で反応して側鎖間に化学結合が形成する単量体をいう。
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有エチレン性不飽和単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
また、単量体(b)中に分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体を含有させることで、塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性を向上させられる。前記エチレン性不飽和単量体の含有量は、単量体(b)中に0.05〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性が向上し、10質量%以下であれば、塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
重合体(B)は1段以上の乳化重合を行うことによって製造でき、2段以上の場合には、多段重合法によって製造できる。多段重合の場合は、所定の単量体(b)の組成及び量であれば、必要に応じて各段の重合に使用する単量体組成が異なっていてもよい。
乳化重合は、例えば、界面活性剤の存在下、単量体(b)を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合する公知の方法が使用できる。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合に使用される公知のものが使用可能であり、例えば、過硫酸塩類、油溶性アゾ化合物類、水溶性アゾ化合物類、有機過酸化物類が挙げられる。
過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
油溶性アゾ化合物類としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
水溶性アゾ化合物類としては、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等が挙げられる。
有機過酸化物類としては、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。
これらは単独で、又は2種類以上の混合物として使用できる。また、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いるのがよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、単量体(b)中に0.01〜10質量%であるが、重合の進行や反応の制御の観点から、0.05〜5質量%とするのが好ましい。
重合体(B)の分子量を調整する場合には、重合する際に、分子量調整剤として、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類や、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。耐候性の低下を抑えるため、連鎖移動剤の使用量は単量体(b)に対して1質量%以下であることが好ましい。
また、単量体(b)には、単量体(b)100質量部に対して、界面活性剤が0.1〜10質量部含まれるのが好ましく、0.5〜8質量部含まれるのがより好ましい。単量体(b)に界面活性剤を0.1質量部以上含有させることによって、得られるエマルション粒子の重合安定性及び貯蔵安定性が向上する。また、含有させる界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗料化時の安定性、塗料の経時的安定性等を維持できる。
界面活性剤としては、各種のアニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ、反応性界面活性剤も使用できる。なかでも、塗膜の耐候性及び耐水性の観点から反応性界面活性剤を使用することが好ましい。このとき、塗膜の耐候性及び耐水性を向上させるためには、界面活性剤成分のうち50質量%以上が反応性界面活性剤であるのが好ましい。
また、塗装後の乾燥の際に塗膜の「より」や「マッドクラック」が発生せず、平滑性の高い塗膜を得るという観点、及び得られるエマルション粒子の分散液での起泡性を低くするという観点から、リン酸エステル型反応性界面活性剤を併用して使用するのが好ましい。このとき、リン酸エステル型反応性界面活性剤の含有量は、合計単量体量を100質量部として、0.05〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。含有量が0.05質量部以上で効果が得られ、5質量部以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
リン酸エステル型反応性界面活性剤は市販のものを使用でき、例えば、東邦化学工業(株)製のサーフマーシリーズである、FP−80、FP−100、FP−120、FP−160、FP−200、FP−125、旭電化工業(株)製のアデカリアソープシリーズであるPP−70、PPE−710等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
[重合体(C)]
重合体(C)は、単量体(b)を乳化重合して重合体(B)を形成した後に、エチレン性不飽和単量体(c)(以下、単量体(c)とする。)を加え、乳化重合することにより得られる。
単量体(c)は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、SP値が20(J/cm1/2未満のエチレン性不飽和単量体を含有するのが好ましい(SP値が20(J/cm1/2未満のもので、単量体(c)中に含まれるものを特にエチレン性不飽和単量体(e)とし、以下、単量体(e)とする。)。単量体(c)中に含有される単量体(e)の質量割合は、65〜100質量%であるのが好ましく、70〜100質量%であるのがより好ましい。単量体(e)の割合が65質量%以上であれば、耐吸水性が向上するため、塗膜の耐水性、耐候性及び耐凍害性が向上し、平滑性も高くなる。また、塗膜の平滑性を高くするためには、SP値が19.5以下の単量体(e)を使用するのがより好ましい。
単量体(e)としては、例えば、エチルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、n−プロポキシエチルアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のSP値が19.5〜20のエチレン性不飽和単量体、n−プロピルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2−エトキシエチルメタクリレート、i−プロポキシエチルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のSP値が19.0〜19.5のエチレン性不飽和単量体、i−プロピルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブトキシエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のSP値が19.0以下のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
重合体(C)のTgは、−50〜50℃であるのが好ましく、−30〜30℃であるのがより好ましい。重合体(C)のTgが−50℃以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性及び耐汚染性が得られる。また、重合体(C)のTgが50℃以下であれば、成膜性が高く、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐凍害性への悪影響が少なくなる。
また、得られるエマルション粒子中の、Tgが−50〜50℃である重合体(C)の含有量は、合計単量体量を基準として30〜70質量%であるのが好ましく、35〜65質量%であるのがより好ましい。重合体(C)の含有量が30質量%以上であれば、塗膜の耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性が高くなる。また、重合体(C)の含有量が70質量%以下であれば、塗膜の耐ブロッキング性が向上する。
また、以下に説明するような、高度な塗料物性及び塗膜物性を発現させるために、単量体(c)には、t−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレート、加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、耐紫外線エチレン性不飽和単量体、金属含有エチレン性不飽和単量体、カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体を含有させることができる。これらは必要に応じて2種以上を併用してもよい。
単量体(c)にt−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートを含有させれば、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。単量体(c)中のt−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートの含有量は、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。含有量が5質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、70質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
単量体(c)に加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。単量体(c)中の加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.05質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、15質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類や、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類が挙げられる。
なかでも、ビニル重合の反応性並びに塗膜の耐汚染性、耐候性及び耐水性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類であるのが好ましく、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシランであればさらに好ましい。また、これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
単量体(c)にエチレン性不飽和カルボン酸を含有させれば、エマルション粒子の分散液の貯蔵安定性、及びエマルション粒子の分散液に顔料や添加物を入れて塗料化する際の配合安定性が向上する。単量体(c)中のエチレン性十飽和カルボン酸の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であればエチレン性不飽和カルボン酸を加えたことによる効果が得られ、10質量%以下とすることで塗膜の耐候性及び耐水性の低下が抑制できる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
単量体(c)にはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有させれば、エマルション粒子の分散液の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。単量体(c)中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%であるが好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量を0.1質量%以上とすれば効果が充分に得られ、15質量%以下とすることで塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
単量体(c)中にポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートを含有させれば、エマルション粒子の分散液の配合安定性や塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。単量体(C)中のポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下であれば塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(プロピレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体や、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端封止型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
単量体(c)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。単量体(c)中の自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜15質量%が好ましいく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、単量体(b)の場合に挙げたものが使用でき、必要に応じてそれらの2種以上を選択して使用してもよい。
単量体(c)中に耐紫外線エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐候性が向上する。単量体(c)中の耐紫外線エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%であるのがより好ましい。こ含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、20質量%以下であれば重合安定性の低下が抑制できる。
耐紫外線エチレン性不飽和単量体としては、例えば、光安定化作用を有する(メタ)アクリレート及び紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これら耐紫外線エチレン性不飽和単量体は必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
塗膜の高い耐汚染性が要求される場合や、可塑剤のブリードアウトにより塗膜の耐汚染性が低下する場合には、単量体(c)中に金属含有エチレン性不飽和単量体や、特定の架橋システムを含有させれば、塗膜の耐汚染性が向上する。金属含有エチレン性不飽和単量体としては、下記式で表される単量体が挙げられる。
Figure 2008260883
式中の、Rは水素原子又はメチル基、MはMg、Ca、Fe、Cu、Zn、Zr等の2価の金属イオン、Rは有機酸残基を示す。
有機酸残基が(メタ)アクリル酸残基であるときは、2個の不飽和基を有する金属含有エチレン性不飽和単量体であり、例えば、ジ(メタ)アクリル酸マグネシウム、アクリル酸メタクリル酸マグネシウム、ジ(メタ)アクリル酸カルシウム、アクリル酸メタクリル酸カルシウム、ジ(メタ)アクリル酸鉄、アクリル酸メタクリル酸鉄、ジ(メタ)アクリル酸銅、アクリル酸メタクリル酸銅、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛、アクリル酸メタクリル酸亜鉛、ジ(メタ)アクリル酸ジルコニウム、アクリル酸メタクリル酸ジルコニウムが挙げられる。
金属含有エチレン性不飽和単量体のRが(メタ)アクリル酸残基以外の有機酸残基であるとき、好ましい有機酸残基として、例えば、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸等の一価の有機酸から誘導されるものが挙げられる。
上記金属含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸鉄(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸鉄(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸鉄(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、オクチル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸カルシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸鉄(メタ)アクリレート、オクチル酸銅(メタ)アクリレート、オクチル酸亜鉛(メタ)アクリレート、オクチル酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸カルシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸鉄(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸カルシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸鉄(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸鉄(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸鉄(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸鉄(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸鉄(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、安息香酸鉄(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸鉄(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸鉄(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸鉄(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸鉄(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸鉄(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、プルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸鉄(メタ)アクリレートプルビン酸銅(メタ)アクリレート、プルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プルビン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできるが、なかでも、亜鉛含有エチレン性不飽和単量体を用いるのが好ましい。
単量体(c)中の金属含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で塗膜の耐汚染性が向上し、10質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
単量体(c)中にカルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体を含有させ、水性被覆材を調製する際、エマルション粒子の分散液中に、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する有機ヒドラジン化合物(以下、ヒドラジン化合物とする。)を配合すれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。この効果は、塗装後の乾燥の際に、エマルション粒子中のカルボニル基と、配合されたヒドラジン化合物のヒドラジノ基との間で架橋反応が進行することに起因する。
カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜7個のビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナールの他、(メタ)アクリルアミド、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトンがより好ましい。これらは、必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
単量体(c)中のカルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.2〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.2質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び各種下地に対する密着性が向上し、10質量%以下であれば重合安定性や塗膜の耐水性の低下が抑制できる。
ヒドラジン化合物としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素数が2〜15のジカルボン酸のジヒドラジドや、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
塗膜の耐汚染性を向上させる上では、ヒダントイン骨格を有するヒドラジン化合物が好ましく、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインがより好ましい。
また、カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体とヒドラジン化合物の比率は、エマルション粒子中のカルボニル基及び/又はアルデヒド基のモル数を(P)、エマルション粒子の分散液に配合されるヒドラジン化合物のヒドラジノ基のモル数を(Q)としたとき、比率(P)/(Q)を0.1〜10とすることが好ましく、0.8〜2とするのがより好ましい。(P)/(Q)が0.1以上であれば、未反応のヒドラジン化合物による塗膜の耐水性の低下が抑制でき、(P)/(Q)が10以下であれば、エマルション粒子の架橋度が高くなり、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。
重合体(C)の製造は、重合体(B)の製造の場合と同様に、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤が使用できる。界面活性剤の使用量は、重合体(B)を形成する重合反応での使用量との合計量が、エマルション粒子の原料となる単量体の全ての質量を100質量部としたとき、0.1〜10質量部となるようにするのが好ましい。
本発明の水性被覆材は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体(b)を1段以上で乳化重合して重合体(B)を形成する段階と、その後に、エチレン性不飽和単量体(c)を加え、乳化重合して重合体(C)を形成する段階とを含む。ここで、エチレン性不飽和単量体の多段乳化重合は、水媒体中で、公知の乳化重合法にて2段階以上の重合が繰り返し行われるが、通常、2〜5段重合であるのが一般的である。
乳化重合の後、得られたエマルション粒子の分散液は、塩基性化合物の添加により、pHを6.5〜10.0の範囲とすれば、安定性を高められる。なかでも、pHを7.0〜10.0とすれば、より優れた凍結−融解安定性を付与できる。
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
これらの中で、VOCを含まないことが望まれる内装用途等の場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。更に、僅かな臭気が問題となる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の非揮発性塩基化合物を用いることが好ましい。
[エマルション粒子]
エマルション粒子の粒子径としては、粒子の安定性及び塗膜性能のバランスから、50〜300nmであるのが好ましい。50nm以上の粒子径のエマルション粒子を形成する重合条件であれば、重合中に凝集物が生じにくく、界面活性化剤の使用量が少なくてよいため、塗膜の耐水性を維持できる。また、300nm以下のエマルション粒子であれば、造膜欠陥が生じにくい。
エマルション粒子のMFTは、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。MFTが60℃以下であれば、多量のVOC(成膜助剤)を配合する必要がなく、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性、耐水性の低下がなく、塗膜の耐凍害性も維持できる。
また、乳化重合体(C)のTgとエマルション粒子のMFTの関係は、(エマルション粒子のMFT)≦(乳化重合体(C)のTg+30℃)であることが好ましく、(エマルション粒子のMFT)≦(乳化重合体(C)のTg+20℃)であることがより好ましい。上記の条件を満足すれば、多量の成膜助剤を配合する必要がなく、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性や耐水性の低下がないため、塗膜の耐凍害性も維持できる。
また、エマルション粒子100質量部に対して、造膜助剤、可塑剤等の有機揮発化合物を0〜20質量部添加することでMFTが10℃以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは0〜10質量部である。造膜助剤及び可塑剤等のVOCの添加量を20質量部以下とすることで塗装後の乾燥が不十分な場合でも残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性や耐水性への悪影響もなく、塗膜の耐凍害性も維持できる。
[水性被覆材]
本発明の水性被覆材は、主成分であるエマルション粒子及び前記界面活性剤、添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
水性被覆材は、必要に応じて各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤等を含有してもよい。また、他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。
本発明の水性被覆材を各種基材の表面に塗装する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法、フローコート法等の各種の塗装法が選択できる。また、本発明の水性被覆材は、室温乾燥又は50〜180℃の加熱乾燥で十分に造膜した塗膜が得られる。
以上説明した、本発明の水性被覆材では、ポリオルガノシロキサン重合体(A)により、耐候性、耐水性、耐凍害性、平滑性に優れた塗膜となる。また、重合体(B)は高い硬度であるため、良好な耐ブロッキング性を有する塗膜となる。また、重合体(C)により、塗膜の耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性が高くなる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
以下の記載において、「部」及び「%」は全て質量基準である。
[製造例1]
以下に示す方法により、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の水分散液を調製した。
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物95部と、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5部、脱イオン水250部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4部からなる組成物を、ホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、水55部及びドデシルベンゼンスルホン酸5部を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、上記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を行い、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサン重合体(A)の水分散液(SiEm)を調製した。固形分は22.7%であった。
以下、実施例1〜7及び比較例1〜3のエマルション粒子の分散液を得るための、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の水分散液、乳化物B、乳化物C、ヒドラジン化合物の量を表1、表2に示す。ここで、表1中の乳化物Bとは、重合体(B)を形成するための、単量体(b)と脱イオン水と界面活性剤との混合物である。また、乳化物Cとは、重合体(C)を形成するための、単量体(c)と脱イオン水と界面活性剤との混合物である。また、表1、表2中において、単量体(e’)は乳化物Bに含まれるSP値が20未満のエチレン性不飽和単量体であり、単量体(d’)は乳化物Cに含まれるSP値が20以上のエチレン性不飽和単量体である。
尚、表中の略号は以下の通りである。また、単量体の単独重合体のTgをカッコ内に示した。
MMA:メチルメタクリレート[105℃]
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート[55℃]
GMA:グリシジルメタクリレート[46℃]
MAA:メタクリル酸[185℃]
AA:アクリル酸[106℃]
t−BMA:t−ブチルメタクリレート[108℃]
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート[83℃]
n−BMA:n−ブチルメタクリレート[20℃]
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート[−55℃]
n−BA:n−ブチルアクリレート[−45℃]
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート[不明]
DAAm:ジアセトンアクリルアミド[65℃]
SZ−6030:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)[不明]
KBM−502:γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)[不明]
アデカリアソープ SR−1025:反応性アニオン性界面活性剤(商品名、旭電化(株)製))
サーフマーFP−120:リン酸エステル型反応性界面活性剤(商品名、東邦化学工業(株)製)
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
Figure 2008260883
Figure 2008260883
単量体(c)を乳化重合してエマルション粒子を得た後は、以下のようにして水性被覆材を得た。
[水性被覆材(クリヤー塗料)の作製]
エマルション粒子のMFTが10℃を超えるものは、造膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「BDG」という)を添加しMFTを10℃以下にした。次いで、エマルション粒子の分散液100gに対し、RHEOLATE350(RHEOX(株)製、増粘剤)を0.5g、サーフィノールDF−58(エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)0.5gを加え、十分に攪拌し、フォードカップ#4で30秒程度になるように脱イオン水を加えて調整した。その後、100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、評価用の水性被覆材を得た。
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水57部、SiEm44部及び表1に記載の乳化物B(重合体(B)用原料)の5%分を仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した。この後、過硫酸アンモニウム0.1部を脱イオン水1部に溶解した重合開始剤溶液を加えて重合を行い、シード粒子を形成した。発熱ピークを確認した後、フラスコの内温が80℃になったところで、その温度を保った状態で乳化物Bの残りを1.25時間かけて滴下し、フラスコの内温80℃で1時間重合を行い、エマルション粒子の重合体(B)を形成した。次に、エマルション粒子の重合体(C)を形成するため、フラスコの内温が80℃の状態で、過硫酸アンモニウム0.1部を脱イオン水3部に溶解した重合開始剤溶液及び表1に記載の乳化物C(重合体(C)用原料)を1.25時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間重合を行った。その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水溶液にてpHを8に調整して、エマルション粒子の分散液を得た。
このエマルション粒子の分散液を用い、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを8部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例2]
表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用し、乳化物Bの残り分の滴下時間を1時間及び乳化物Cの滴下時間を1.5時間とした。それ以外の条件は実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。また、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを6部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例3]
表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。このエマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを7部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例4]
表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用し、重合終了後28%アンモニア水溶液にてpHを8に調整した後に、脱イオン水3部にアジピン酸ジヒドラジド1.4部を分散したものを添加する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。このエマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを2.5部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例5]
最初にフラスコに仕込む脱イオン水を85部、SiEmを4.4部とし、表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。また、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを5.5部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例6]
表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用し、重合終了後28%アンモニア水溶液にてpHを8に調整した後に、脱イオン水3部にアジピン酸ジヒドラジド1.4部を分散したものを添加する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。このエマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを5部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[実施例7]
最初にフラスコに仕込むSiEmを22部とし、表1に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用し、重合終了後に28%アンモニア水溶液によりpHを8に調整した後に、脱イオン水1.5部にアジピン酸ジヒドラジド0.7部を分散したものを添加する以外は実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。また、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを4部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[比較例1]
最初にフラスコに仕込む脱イオン水を85部、SiEmを0部とし、表2に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。また、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを5.5部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[比較例2]
表2に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用する以外は、実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。このエマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを9部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
[比較例3]
表2に記載の組成の乳化物B及び乳化物Cを使用し、乳化物Bの残り分の滴下時間を0.75時間、乳化物Cの滴下時間を1.75時間とした。それ以外の条件は実施例1と同様にしてエマルション粒子の分散液を得た。また、エマルション粒子100部に対し造膜助剤BDGを5部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
水性被覆材の評価は下記の方法に従って実施した。
[耐ブロッキング性(高温乾燥)の評価]
評価用水性被覆材をガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80mm)し、130℃で5分間強制乾燥させた。次いで、50℃まで冷却した後、50℃雰囲気下で塗膜表面にガーゼを載せ、更にその上に事前に50℃まで加温した分銅を置き、30分間1.4kg/cmの荷重をかけた。次いで、常温まで冷却した後、ゆっくりガーゼを剥がし、その際の剥がし難さ及びガーゼの痕跡を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:ガラス板を傾けるとガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡がほとんど残っていない。
○:ガラス板を傾けてもガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡はほとんど残っていない。
△:ガラス板を傾けてもガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離する時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がはっきりと残っている。
[耐ブロッキング性(低温乾燥)の評価]
評価用水性被覆材をガラス板に塗装した後、5分間強制乾燥する温度を50℃とする以外は、前記の耐ブロッキング性(高温乾燥)の評価と同様の方法及び評価基準で評価を実施した。
[耐凍害性の評価]
石膏スラグパーライト板(厚12mm×縦150mm×横70mm)にシーラーとしてダイヤナールLX−1010(三菱レイヨン(株)製)を使用した白エナメル塗料(顔料重量濃度40%)を、塗着量が90〜100g/m(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、シーラーの上に中塗り層としてダイヤナールLX−2011(三菱レイヨン(株)製)を使用した白エナメル塗料(顔料重量濃度40%)を、塗着量が90〜100g/m(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、中塗り層の上に上塗り層として評価用水性被覆材を、塗着量が50〜60g/m(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥させ、試験板を作製した。この試験板を1日室温で放置した後、溶剤系の2液硬化型アクリル樹脂を用いて、試験板の側面及び背面をシールし、防水機能を付与した。1日経過後に、凍結融解試験機にて耐凍害性試験を行った。凍結融解条件は、−20℃/2時間(空気中)及び20℃/2時間(水中)のサイクル試験とした。
30倍ルーペを用いて試験板にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:300サイクルでもクラックが入らない。
○:200サイクル〜300サイクルでクラックが入る。
△:100サイクル〜199サイクルでクラックが入る。
×:99サイクルまでにクラックが入る。
[平滑性の評価]
評価用水性被覆材をガラス板に8ミルアプリケーターにて塗装(縦100mm×横15mm)し、130℃で2分間強制乾燥させた後、塗膜の「より」や「マッドクラック」の有無を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:「より」や「マッドクラック」が殆ど見られず、連続した塗膜ができている。
○:塗装面の塗膜の端部に「マッドクラック」が多少見られる。
△:「マッドクラック」が見られるが、塗装面の縦方向に対して50%未満である。
×:塗装面の縦方向に対して50%以上の「マッドクラック」が見られる。
[耐水性の評価]
評価用水性被覆材をガラス板に4ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80 mm)し、130℃で5分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷した。その後、50℃の温水にガラス板ごと100時間浸漬し、引き上げ直後及び乾燥後の塗膜外観を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:塗装面の白化は少なく、乾燥後は完全にクリヤー塗膜となった。
○:多少塗装面の白化は認められるが、乾燥後は2〜3時間程度でほぼクリヤー塗膜となった。
△:多少塗装面の白化が認められ、乾燥24時間後でも少し濁っており、48時間後にクリヤー塗膜となった。
×:かなり塗装面が白化しており、乾燥後も白化したままで、最後までクリヤー塗膜にならなかった。
[耐候性の評価]
耐凍害性の評価に使用したものと同様に、側面及び背面をシールした試験板を用い、シール1日経過後に、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて耐候性試験を行った。試験サイクルは、照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RHの条件で、840時間経過した後、測定角60°における光沢度の保持率を耐候性の指標とし、下記の基準に従って評価した。
◎:90%以上。
○:80%以上、90%未満。
△:60%以上、80%未満。
×:60%未満、又は塗膜の剥離・クラックが生じたもの。
以上、説明したような評価を行った結果を表3に示す。
Figure 2008260883
実施例1の水性被覆材は、単量体(b)中の単量体(d)の割合が75質量%であり、単量体(b)中のメチルメタクリレートの、単量体(b)と単量体(c)の合計質量に対する割合が30.5質量%であり、その他の条件が最適である。実施例1の水性被覆材では、塗膜は良好な耐ブロッキング性と、高い耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性を備えていた。同様の結果は、実施例2及び実施例3でも得られた。
また、単量体(c)中の単量体(e)の割合が47質量%であり、それ以外の条件が最適である実施例4の水性被覆材では、塗膜は高い耐ブロッキング性と、良好な耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性を備えていた。
また、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の、重合体(B)と重合体(C)との合計質量に対する質量割合が1質量%であり、それ以外の条件が最適である実施例5の水性被覆材では、塗膜は高い耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性と、良好な耐候性を備えていた。
また、全ての条件が最適である実施例6及び実施例7の水性被覆材では、塗膜は高い耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性を備えていた。
以上のように、本発明の水性被覆材による塗膜は、耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性について、全てに優れた性能を兼ね備えていた。
一方、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を用いない比較例1の水性被覆材では、塗膜は耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性が非常に低くなる。また、単量体(b)中の単量体(d)の割合が70質量%である比較例2の水性被覆材では、塗膜は耐ブロッキング性が非常に低くなる。また、単量体(b)中の単量体(d)の割合は100質量%であるものの、単量体(b)中のメチルメタクリレートが、単量体(b)と単量体(c)の合計質量に対して28質量%である比較例3の水性被覆材でも、塗膜は耐ブロッキング性が非常に低くなる。
以上のように、比較例1〜3の水性被覆材では、塗膜は耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性、耐候性を同時に満足していなかった。
本発明の水性被覆材は、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材等の各種素材の表面仕上げ被覆材として有用であり、特に建築物、土木構造物等の躯体保護用水性被覆材として有用である。

Claims (2)

  1. ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体(b)を1段以上で乳化重合して重合体(B)を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(c)を加え、乳化重合して重合体(C)を形成し、これにより得られるエマルション粒子を含有する水性被覆材であって、
    エチレン性不飽和単量体(b)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(d)を75〜100質量%含んでおり、
    該エチレン性不飽和単量体(d)としてエチレン性不飽和単量体(b)に含まれているメチルメタクリレートは、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体(b)とエチレン性不飽和単量体(c)との合計質量を基準として、30質量%以上であることを特徴とする水性被覆材。
  2. ポリオルガノシロキサン重合体(A)及びエチレン性不飽和単量体(b)の重合体(B)を含有する層の外側に、エチレン性不飽和単量体(c)の重合体(C)を備えた、多層構造のエマルション粒子を含有する水性被覆材であって、
    重合体(B)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(d)の重合単位を75〜100質量%含んでおり、
    該エチレン性不飽和単量体(d)として重合体(B)に含まれるメチルメタクリレートの重合単位は、重合体(B)及び重合体(C)の重合単位である、エチレン性不飽和単量体(b)とエチレン性不飽和単量体(c)との合計質量に対して、30質量%以上であることを特徴とする水性被覆材。
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