JP2011221152A - 電子写真トナーおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【選択図】 なし
Description
この定着原理に起因して、フラッシュ定着は、(a)トナー量が少ない画像部分(例えばハーフトーン部や文字部など)では光のエネルギー変換で発生する熱量が低いのに加えてトナーが存在しない部分との温度差が大きいために温度が上がりにくくトナーが十分に溶融できずに定着強度が不足する問題、トナー画像を被印刷物に押し付けないため(b)トナーの付着量に応じて被印刷物の表面が盛り上がりやすい問題および(c)定着画像の表面を平滑化しにくく表面のすべり摩擦が大きくなりやすい問題、(d)盛り上がった画像の内部にあるトナーはフラッシュ光が直接当たらないために溶融が不完全となりやすい問題がある。
特に、(e)色調を保持する都合で赤外線吸収剤等の光吸収剤の添加量が限定されるカラートナーにおいては前記フラッシュ定着の諸問題は更に顕在化する。
さらに、トナー画像が定着された印刷物を日常的に取り扱う際に、上記(a)〜(e)に記したように、定着強度が不足していたり、画像表面が盛り上がっていたり、画像表面の平滑性が不足してすべり摩擦が大きくなっていたり、画像内部での溶融が不完全なトナーが存在していたりすると、印刷物がコスレなど擦過性の外力を受けた場合に、トナー画像が崩れやすい上に崩れた部分が印刷物自体やその周辺の物品の任意の部分に再付着して汚す可能性があるという、印刷物の耐久性に関わる問題が発生する。以下、このような擦過性の外力に対する印刷物の総合的な耐久性を、耐スミア性と呼ぶことにする。
特許文献1では、トナーに特定のエステル系ワックスを含有させて溶融温度を下げることにより熱エネルギーが低くても定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献2では、トナーに特定の吸収波長を持つ赤外線吸収剤を1種類以上含有させることによりフラッシュ光の光エネルギーの熱エネルギーへの変換効率を高めて樹脂の溶融を促進することで定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献3では、トナーを構成する結着樹脂のガラス転移温度(Tg)付近に融点を持つワックスを含有させることにより、結着樹脂をシャープメルト化して溶融速度を高めて照射時間が短くても定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献4では、赤外線吸収剤をトナー表面やワックスの界面に存在させることによりフラッシュ光の光エネルギーの熱エネルギーへの変換効率を高めて樹脂やワックスの溶融を促進することで定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献5では、非接触定着後に表面平滑化プロセスを導入することにより画像表面の盛り上がりを減少させるとともに、画像表面を平滑性化してすべり摩擦を小さくして前記耐スミア性を向上させている。
また、表面平滑化プロセスの導入により耐スミア性は向上するが、印刷工程を追加する解決法であるため、現行既存の印刷装置では対応できず、装置の大型化やプロセスの複雑化にもつながり、必ずしも望ましい解決法とはいえない。
(a)ハーフトーン部や文字部などのトナー量が少ない画像部分でも定着強度が不足しないこと、
(b)トナーの付着量が多くてもトナー画像の表面が盛り上がりにくいこと、
(c)定着画像の表面のすべり摩擦を抑制すること、
(d)フラッシュ光が直接当たらないトナー画像の内部のトナーも溶融が不完全とならないこと、
(e)カラートナーにおいても上記(a)〜(d)の課題を解決すること、
を課題とした。
・(1)結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。
・(2)前記疎水性微粒子が1種類以上のフッ素置換された樹脂を含むことを特徴とする前記(1)に記載の電子写真用トナー。
・(3)前記ワックスがトナー中に0.1〜50質量%含有されることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(4)前記疎水性微粒子がトナー中に0.01〜10質量%含有されることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(5)前記疎水性微粒子の直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(6)前記疎水性微粒子がエチレン系完全フッ素化樹脂もしくはエチレン系部分フッ素化樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(7)前記結着樹脂がスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、環状オレフィン構造を含む樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(8)光を吸収して熱エネルギーに変換する成分を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
・(10)溶融混練物の全体に疎水性微粒子を分散させることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真用トナーの製造方法。
(a)ハーフトーン部や文字部などのトナー量が少ない画像部分でも十分な定着強度が得られる、
(b)トナーの付着量が多くてもトナー画像の表面が盛り上がりにくい、
(c)定着画像の表面のすべり摩擦抵抗が抑制される、
(d)フラッシュ光が直接当たらないトナー画像の内部のトナーも溶融が不完全とならない、
(e)カラートナーにおいても(a)〜(d)の効果を得ることができる、
という複数の優れた効果を得ることができ、その結果、非接触定着方式であるフラッシュ定着を採用した電子写真装置により画像が記録された印刷物において、前記耐スミア性の問題を生じないという優れた特性を持つ電子写真用トナーおよびその製造方法を提供することができる。
これに加えて本発明の電子写真用トナーの製造方法によれば、トナーを溶融混練粉砕法で製造する際に溶融混練物の全体に疎水性微粒子が偏りなく分散されていることにより混練装置に溶融混練物が付着しにくいので(f)トナー製造における溶融混練物の成形性が良く、しかも、溶融混練物を粉砕する際には疎水性微粒子の表面が破壊通過点となりやすいので粉砕が容易であることに加えて偏りなく疎水性微粒子が分散されていることにより粉砕物の大きさが整いやすいことから(g)トナー製造における溶融混練物の粉砕性が良い、という効果をも得ることができ、その結果、本発明の電子写真用トナーを効率よく高収率で製造できる製造方法を提供することができる。
本発明のトナーは、結着樹脂、ワックス、疎水性微粒子を必須の構成物質とする以外は、着色剤、帯電制御剤、磁性粉など、一般的な電子写真用トナーに添加している各種物質、赤外線吸収剤などを適宜含有させることができ、さらにトナー粒子の流動性や帯電性を制御するためにシリカ、カーボンブラック、帯電制御剤等の各種物質を適宜外添することができる。
本発明に用いる結着樹脂は、特に限定することはなくトナーとして一般的に使用されている樹脂から選択することができ、例えば、以下に示す単量体の単独重合体及び任意の組み合わせからなる共重合体とすることができる。前記単量体としては、スチレン、クロロスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のモノオレフィン類(α−C2〜10オレフィンが好ましく、特にα−C2〜4オレフィンが好ましい)、イソブテン、イソプレン等の分枝鎖状オレフィンなどの、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、などのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン類、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の環状共役ジエン又はこれらの誘導体、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等の多環の環状オレフィン類、等を例示できる。オレフィン系単量体を含む共重合体はトナーに柔軟性を付与する点から好ましい。
また、本発明に用いる別の結着樹脂として、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などのカルボン酸と、ビスフェノールA(EO/PO付加物を含む)、エチレングリコールなどのアルコールから生成されるポリエステル樹脂を例示することができる。
また、重量平均分子量(Mw)は、5000〜20000が好ましい。より好ましくは5000〜15000である。重量平均分子量が5000未満の場合、トナー耐久性が不足する可能性があり、20000を超えた場合は定着強度が十分でなくなる恐れがある。
また、分子量1000未満の分子が10質量%未満であることが好ましい。より好ましくは9質量%未満である。分子量1000未満の分子が10質量%以上の場合、感光体や現像ローラなど電子写真装置内部でトナーが接触する部材に対するトナーの耐融着性が低下して画像形成を阻害する恐れがある。
また、ポリエステル樹脂のフロー軟化点は、85℃〜145℃が好ましい。更に好ましくは90℃〜120℃である。85℃未満の場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化する場合があり、145℃を超える場合は低温定着性が悪化する場合がある。
本発明の電子写真用トナーに用いるワックスは、トナー粒子の熱溶融をしやすくさせる効果と、トナー中に後述の疎水性微粒子を分散させる媒介の役割とをあわせ持っている。従って、疎水性微粒子が分散でき、結着樹脂中に微分散もしくは相溶できる物質が好適である。結着樹脂の組成や熱特性に応じて適当なワックスを選択するのが良い。
ワックスの熱特性としては、結着樹脂の熱特性に応じて適宜設計すれば良いが、比較的低軟化点もしくは低融点の化合物、具体的には軟化点(融点)が50〜170℃、より好ましくは80〜160℃を有するものが好ましい。軟化点が50℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や貯蔵安定性が不十分であり、170℃を超えると、定着温度が高くなり好ましくない。
また、これらのワックスは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。軟化点(融点)が異なるワックスを混合してもよい。
本発明の電子写真用トナーに分散されている疎水性微粒子は、疎水性物質を微粒子化したものであるが、画像形成前のトナー粒子どうしが固着するブロッキングを防止する効果およびトナー保存環境の湿度の変化によるトナーの帯電性の変動を抑制する効果を奏するのみならず、定着後のトナー画像において、定着画像表面のすべり摩擦抵抗を減じて、定着画像がコスレなど擦過性の外力を受けた場合に破壊されるのを防止する機能を発現するために必要なものである。このため、疎水性微粒子は粒子表面においてすべり摩擦抵抗を増大させてしまう水素結合等の要因を排除できる物質が好ましく、空気中の湿度が高くても水分を吸着しにくい物質が好適である。 該疎水性微粒子は、結着樹脂と接触した状態でトナー中に分散されていても良いし、トナー中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
疎水性微粒子の個別の直径は、顕微鏡を用いて観察される粒子の二次元像(写真など)から粒子ごとにそれぞれの最大幅を定規で目視確認すればよい。
10質量%を超えると微粒子がトナーから離脱して感光体や帯電部材(帯電ローラー、帯電ブラシ等)を汚染(フィルミング)して画像形成を阻害する恐れがあり、0.01質量%未満であると疎水性微粒子の作用が微弱になるために、トナー粒子の流動性が低下してトナーのブロッキングや帯電不良が起こる恐れがあるとともに、トナー定着画像の表面摩擦抵抗が大きくなり耐スミア性が悪くなる恐れが生じる。
なお、後述する溶融混練粉砕法を用い、ワックス中に疎水性微粒子をあらかじめ分散(予備分散)する場合、良好な分散を行うためには、該予備分散時のワックスと疎水性微粒子とを含む仕込み全質量に対する疎水性微粒子の配合は30質量%以下であることが好ましく、0.1〜20質量%の範囲がより好ましく、1〜15質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、予備分散によりワックス中に分散された疎水性微粒子について、溶融混練工程を経た溶融混練物においてはワックス中から分離されて結着樹脂と接触した状態で溶融混練物中に分散されていても良いし、溶融混練物中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
さらに粉砕工程を経たトナー粗粒子(分級工程および外添工程の前段階)においては該疎水性微粒子は、結着樹脂と接触した状態でトナー粗粒子中に分散されていても良いし、トナー粗粒子中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
その他、任意成分として、着色剤、帯電制御剤、磁性粉、添加剤等を添加することができる。以下、各成分について説明する。
本発明のトナーに使用できる着色剤に特に制限はない。イエロー着色剤の顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、73、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、122、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が好適に用いられる。
染料系としては、例えば、C.l.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42.64.201.211が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
また、本発明には必要に応じて帯電制御剤を添加することができ、特に制限はない。
添加する場合、正荷電性帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。
負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、Zn等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物、ホウ素錯体、高分子タイプ帯電制御剤などがある。
添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部程度が好ましい。
赤外線吸収剤は、赤外波長領域を含む光を吸収して熱エネルギーに変換する成分として本発明に使用できる。この赤外線吸収剤を含ませることで、光定着の際、特定の波長領域の照射光を吸収して発熱し、トナーが効率よく溶融される。赤外線吸収剤としては、波長730nm以上1150nm以下(好ましくは820nm以上1080nm以下)の波長領域に最大吸収を示すものが好適に使用される。赤外線吸収剤としては、公知の赤外線吸収剤(赤外線吸収剤)を用いることができ、例えば酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、特定のアミド化合物、ランタノイド系化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等が挙げられる。さらに、カーボンブラック、チタンブラック、フェライト、マグネタイト、炭化ジルコミウム等の黒色顔料等も用いることができる。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。
本発明のトナーは、流動性付与の観点から、外添剤が表面に付着していることが好ましい。
外添剤としては無機または有機の各種外添剤を使用することができるが、特にトナーの流動性向上、凝集性抑制を図る為にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等)等の無機微粉末が好適である。
外添剤の混合量は、使用する外添剤及びトナー粒子の平均粒径、粒度分布などにより異なるが、所望するトナー流動性を得る量を適宜選択できる。一般的にはトナー粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、更には0.1〜8質量部が好適である。
混合量が0.05質量部未満では流動性改善効果が少なく、高温での貯蔵安定性能が悪く、また混合量が10質量部より多いと一部遊離した外添剤により感光体にフィルミングを発生したり、現像槽内部に堆積して現像剤の帯電機能劣化等の障害を引き起こしたりして好ましくない。
また、外添剤は高湿環境下での安定性面より、無機微粉末の場合にはシランカップリングなどの処理剤で疎水化処理されたものがより好ましく、更に、帯電性を考慮する場合には負荷電性を付与する処理剤としてはジメチルジクロルシラン、モノオクチルトリクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなど、正荷電性を付与する処理剤としてはアミノシランなどを使用すればよい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、溶融混練粉砕法によって製造することが好ましい。本発明のトナーを溶融混練粉砕法により製造する場合は、ワックス中に疎水性微粒子を分散させる予備分散工程を行ってから、混練工程、冷却工程、粉砕分級工程を行うことが望ましい。
予備分散は、ワックス中に疎水性微粒子を分散して、疎水性微粒子を分散したワックスを作製する。ワックスと疎水性物質とをドライブレンドした状態で一緒に粉砕することによって疎水性物質の微粒子化および疎水性微粒子とワックスとの混合を同時に行うこともできる。また、いったん疎水性微粒子を分散したワックスを溶融相の状態にした状態で噴霧するか粉砕して小さな相分離物を得る方法で疎水性物質の微粒子化をさらに進めたり該疎水性微粒子をワックス中にさらに微細に分散させることができる場合がある。なお、該予備分散を行う際に、疎水性微粒子の分散を妨げない範囲でトナー構成成分を適宜添加しても良い。
分散装置に投入する原料の形状は適切に分散できる範囲で特に限定するものでなく、任意に設定できる。例えば混練機に投入する際のワックスの形状は粉状、粗粉砕形状、ペレット形状が好ましく、疎水性微粒子を回転式ミキサー等で混合してから投入する方法がある。バッチ式混練機を使用する場合は、先にワックスを投入しておき、ワックスの融点付近で混練機を作動させながら疎水性微粒子を徐々に添加して溶融混練物中の疎水性微粒子濃度を上げていく方法を採用しても良い。
混練工程では、結着樹脂および前記疎水性微粒子を分散したワックスを含む原料を溶融混練して溶融混練物を得る。原料成分として前記その他任意成分を適宜添加しても良い。本発明のトナーを溶融混練粉砕法で作製する場合は、前記予備分散を経て混練工程を行うことで、溶融混練物中において前記疎水性微粒子が凝集せずによく分散された状態とすることができる。
その後、冷却工程により混練物を冷却固化する。
そして、粉砕分級工程では冷却固化した混練物を粉砕分級して分級トナーを得る。
まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕し、ジェットミル、カウンタージェットミル、高速ローター回転式ミル等で微粉砕し、段階的に所定トナー粒度まで粉砕する。
そして、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター、乾式気流分級機等でトナーを分級し、体積平均粒子径3〜18μmの分級トナーを得る。
分級時に得られた粗粉は粉砕分級工程に戻し、微粉は混練工程に戻して再利用してもよい。
分級トナーと各種外添剤を所定量配合して、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機などで攪拌・混合する。
この際、外添機内部で発熱があり、凝集物を生成し易くなるので外添機の容器部周囲を水で冷却するなどの手段で温度調整をする方が好ましく、更には外添機容器内部の材料温度は樹脂のガラス転移温度より約10℃低めの管理温度以下が好適である。
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。
・結着樹脂
環状オレフィン樹脂: 70質量部
(ポリプラスチックス社製 商品名: TOPAS TM)
環状オレフィン樹脂: 30質量部
(ポリプラスチックス社製 商品名: TOPAS TB)
・着色剤(兼赤外線吸収剤)
カーボンブラック: 7質量部
(キャボット社製 商品名: REGAL330R)
・帯電制御剤
鉄化合物: 1.5質量部
(保土谷化学社製 商品名: T−77)
・疎水性微粒子分散ワックス: 3質量部
ポリエチレンワックス(ヘキスト社製 商品名: PE−130)と
ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子社製 商品名: L−170J)とを、
質量比85:15で溶融混合して溶融相の状態にしたのちに粉砕する方法
により予備分散したもの。
次いで混練物を冷却し、ジェットミルにて粉砕、気流式分級機で分級して体積平均粒径9μmのトナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部と疎水性シリカ(キャボット社製 商品名: TS−530)0.6質量とをヘンシェルミキサーにて均一に混合して実施例1のトナーを得た。
・結着樹脂
ポリエステル樹脂: 100質量部
(三菱レイヨン社製 商品名: FC−916)
・着色剤(兼赤外線吸収剤)
カーボンブラック: 7質量部
(キャボット社製 商品名: REGAL330R)
・帯電制御剤
鉄化合物: 1.5質量部
(保土谷化学社製 商品名: T−77)
・疎水性微粒子分散ワックス: 3質量部
カルナウバワックス(加藤洋行社製 商品名:カルナウバワックス2号粉末)と
ポリテトラフルオロエチレン
(旭硝子社製 商品名:L−170J、直径:0.2μm)
とを、質量比85:15で溶融混合して溶融相の状態にしたのちに粉砕する方法
により予備分散したもの。
次いで混練物を冷却し、ジェットミルにて粉砕、気流式分級機で分級して体積平均粒径9μmのトナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部と
疎水性シリカ(キャボット社製 商品名: TS−530)0.6質量部
とをヘンシェルミキサーにて均一に混合して実施例3のトナーを得た。
合成エステルワックス(日油社製 商品名: WEP−9)
とした以外は全て同じとし、実施例4のトナーを得た。
スチレン−アクリル酸エステル系樹脂
(三洋化成社製 商品名:ハイマーST−305)とした以外は全て同じとし、実施例5のトナーを得た。
・着色剤
マゼンタ顔料: 4.5質量部
(大日精化工業社製、商品名:ピグメントレッド122)
・赤外線吸収剤
ナフタロシアニン化合物: 2.0質量部
(山本化成社製、商品名:YKR−5010)
・帯電制御剤
ホウ素錯体粒子: 2.0質量部
(日本カーリット社製、商品名:LR―147)
実施例1において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例1のトナーを得た。
実施例2において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例2のトナーを得た。
実施例1においてポリエチレンワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例3のトナーを得た。
実施例2においてカルナウバワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例4のトナーを得た。
実施例3において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例5のトナーを得た。
実施例4において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例6のトナーを得た。
実施例3においてカルナウバワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例7のトナーを得た。
実施例4において合成エステルワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例8のトナーを得た。
実施例3のカルナウバワックスをポリエチレンワックス(ヘキスト社製 商品名: PE−130))とした以外は全て同じとし、比較例9のトナーを得た。
(ワックス成分の分散)
常温に冷却した溶融混練物を切断した断面を、倍率400倍で光学顕微鏡観察し、視認されたワックスドメイン(結着樹脂の海に分散されているワックス成分の島)の直径から以下のように評価した。
◎ ワックスドメインが確認できない
○ 0.5μm以下
× 0.5μmを超える
なお、溶融混練粉砕法により製造されるトナー粒子中のワックスドメインの直径は、溶融混練物におけるワックスドメインの直径が反映される。
実施例1〜7及び比較例1〜9のトナー5質量部と、平均粒径80μmのシリコーンコートフェライトキャリア95質量部とをそれぞれ混合して2成分現像剤を作成した。これらの2成分現像剤を市販の複写機に装填し、坪量80g/m2の紙を使用して以下の未定着画像を作成した。
・トナー付着量が6g/m2となるように調整したベタ画像
・解像度600dpiにおける2ドットライン画像
引き続き、未定着画像をキセノンランプによるフラッシュ光を使用した定着装置にてエネルギー2.5J/cm2で定着させた。
ベタ画像に3M社製メンディングテープを貼り、テープの上から荷重1kgの重りで5往復した後テープを剥離した。剥離前後の画像濃度をマクベス社反射濃度計RD−914にて測定し、以下のように定着率を算出した。
定着率=(剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度)×100
定着率を以下のように評価した。
○ 定着率85%以上であり問題ない
△ 定着率70%以上であり画像欠陥となるレベルではない
× 定着率70%未満であり画像欠陥となる
ライン画像に未使用の坪量80g/m2の紙片を重ね、紙片の上に置いた荷重1kgの重りを20cmに渡って10往復させた。紙片に移った汚れを以下のように評価した。
○ 汚れがほとんどなく問題ない
△ やや汚れがあるが画像欠陥となるレベルではない
× 汚れが多く画像欠陥となる
これに対し、疎水性微粒子を添加しなかった比較例1、2、5、6や、疎水性微粒子を添加してもワックスとの予備分散を行わなかった比較例3、4、7、8は、その溶融混練物はワックスが良く分散されたにもかかわらず、表2に示されるように、いずれのトナーも耐スミア性に問題があり、「やや汚れがあるが画像欠陥となるレベルではない」(記号△)程度のトナーもなかった。
実施例1〜4のトナーが比較例1〜8のトナーと比較して耐スミア性が良好であったことは、疎水性微粒子がトナーの全体に分散され、トナー定着画像の表面にも十分な疎水性微粒子が存在し、耐スミア性に対して格別の効果を付与したことを意味するものと考えられる。
比較例9は、表1に示されるように、結着樹脂としてポリエステル、ワックスとしてポリエチレンワックス、疎水性微粒子としてテトラフルオロエチレンを選択し、ワックスとの予備分散を行った後に溶融混練を行ったものの、その溶融混練物はワックスが分散されなかった。そして、表2に示されるように、このトナーは定着強度が一定のレベルは保っていたものの、耐スミア性は、全く劣り画像欠陥となるレベルであった。
この比較例9は、溶融混練粉砕法によるトナー製造において、ポリエステルとポリエチレンとの組み合わせのように、結着樹脂との相溶性がほとんどないワックスを選択した場合、たとえ疎水性微粒子をワックスに予備分散したとしても、その後の溶融混練工程においてワックスがトナー中に分散されにくいので、結果として疎水性微粒子の分散もされにくくなり、耐スミア性に対して効果を付与することができなかったのであろうと考えられる。
なお、前記実施例1〜5および比較例1〜9では、カーボンブラックが、着色剤と赤外線吸収剤(光を吸収して熱エネルギーに変換する成分)との成分を兼ね備えている。
Claims (10)
- 結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。
- 前記疎水性微粒子が1種類以上のフッ素置換された樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
- 前記ワックスがトナー中に0.1〜50質量%含有されることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 前記疎水性微粒子がトナー中に0.01〜10質量%含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 前記疎水性微粒子の直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 前記疎水性微粒子がエチレン系完全フッ素化樹脂もしくはエチレン系部分フッ素化樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 前記結着樹脂がスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、環状オレフィン構造を含む樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 光を吸収して熱エネルギーに変換する成分を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- 溶融混練物の全体に疎水性微粒子を分散させることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用トナーの製造方法。
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