JP2011221152A - 電子写真トナーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非接触定着方式であるフラッシュ定着を採用した電子写真装置により画像が記録された印刷物が、コスレなど擦過性の外力を受けた場合に、トナー画像が崩れやすい上に崩れた部分が印刷物自体やその周辺の物品の任意の部分に再付着して汚す可能性があるという、印刷物の耐久性に関わる問題(耐スミア性)を防止するトナーを提供する。
【解決手段】 結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【選択図】 なし

Description

この発明は、電子写真法において、非接触定着方式であるフラッシュ定着で好適に使用できる電子写真用トナーおよびその製造方法に関する。
電子写真法は複写機、プリンタ、ファクシミリ等における画像形成方法の一手段として広く使用されている。電子写真法による一般的な画像形成は、コロナ放電、帯電ローラーや帯電ブラシ等を用いて一様に帯電させた光導電性絶縁体(感光体)上にレーザー光やLED光などを照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に電子写真用トナー(以下、単にトナーと記す場合も同じ意味である。)を静電的に付着させてトナー画像を形成する現像工程と、トナー画像を被印刷物に転写する転写工程と、転写されたトナー画像を被印刷物上で溶融、放熱させて固定する定着工程とを有する。
前記定着工程の手段としては、定着用部材をトナー画像に接触させる接触定着方式と、定着用部材をトナー画像に接触させない非接触定着方式とに大別される。
前記接触定着方式としては、加熱ローラでトナーに圧力を加えながら溶融圧着させるヒートロール定着が、被印刷物が紙などシート状である場合に一般的に用いられている。
前記ヒートロール定着の機構は、シート送り機構の一部に温度制御された発熱体を有するヒートロールを組み合わせる単純な構成のため、装置が安価で小型化しやすい。また、トナー定着面が平滑になり、印刷濃度を高くできるという利点を有している。その反面、ヒートロール定着は、トナー画像をヒートロールに接触させて押しつぶすため解像度が低下する問題、シート送り速度やヒートロール温度がトナーの許容範囲からはずれると定着不良トナーが発生してヒートロールへ付着した後に被印刷物に付着してオフセット等の定着画像の乱れや汚れを発生する問題、連続印刷時にヒートロールの熱が順次送られてくるシートに奪われるためヒートロールを一定温度に加熱保持する時間が高速化の阻害要因となる問題、定着後の記録用紙が高温によりカールしやすい問題、用紙の定着表面に糊剤がついているシール葉書などの定着が困難である問題を有している。また、前記ヒートロール定着の場合、前記オフセットの問題を回避するために、一定の定着温度域において樹脂の粘度が変動しにくいようにする工夫が必要であった。
一方、前記非接触定着方式としては、フラッシュ光などの光照射によりトナーを溶融定着させるフラッシュ定着があり、定着工程において前記接触定着方式の問題点を回避することができること等により、高解像度の高速印刷装置に適しており、すでに印刷装置が市販されている。また、フラッシュ定着は被印刷物が立体形状などシート状でない場合にも定着できる利点がある。また、前記ヒートロール定着に伴うオフセットの問題がないので広範囲の樹脂を使用することができる利点がある。
前記フラッシュ定着は、トナー表面において照射した光のエネルギーが熱エネルギーに変換され、該熱エネルギーによりトナーが溶融するという原理を利用している。
この定着原理に起因して、フラッシュ定着は、(a)トナー量が少ない画像部分(例えばハーフトーン部や文字部など)では光のエネルギー変換で発生する熱量が低いのに加えてトナーが存在しない部分との温度差が大きいために温度が上がりにくくトナーが十分に溶融できずに定着強度が不足する問題、トナー画像を被印刷物に押し付けないため(b)トナーの付着量に応じて被印刷物の表面が盛り上がりやすい問題および(c)定着画像の表面を平滑化しにくく表面のすべり摩擦が大きくなりやすい問題、(d)盛り上がった画像の内部にあるトナーはフラッシュ光が直接当たらないために溶融が不完全となりやすい問題がある。
特に、(e)色調を保持する都合で赤外線吸収剤等の光吸収剤の添加量が限定されるカラートナーにおいては前記フラッシュ定着の諸問題は更に顕在化する。
さらに、トナー画像が定着された印刷物を日常的に取り扱う際に、上記(a)〜(e)に記したように、定着強度が不足していたり、画像表面が盛り上がっていたり、画像表面の平滑性が不足してすべり摩擦が大きくなっていたり、画像内部での溶融が不完全なトナーが存在していたりすると、印刷物がコスレなど擦過性の外力を受けた場合に、トナー画像が崩れやすい上に崩れた部分が印刷物自体やその周辺の物品の任意の部分に再付着して汚す可能性があるという、印刷物の耐久性に関わる問題が発生する。以下、このような擦過性の外力に対する印刷物の総合的な耐久性を、耐スミア性と呼ぶことにする。
前記フラッシュ定着の諸問題を解決する従来技術として、例えば
特許文献1では、トナーに特定のエステル系ワックスを含有させて溶融温度を下げることにより熱エネルギーが低くても定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献2では、トナーに特定の吸収波長を持つ赤外線吸収剤を1種類以上含有させることによりフラッシュ光の光エネルギーの熱エネルギーへの変換効率を高めて樹脂の溶融を促進することで定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献3では、トナーを構成する結着樹脂のガラス転移温度(Tg)付近に融点を持つワックスを含有させることにより、結着樹脂をシャープメルト化して溶融速度を高めて照射時間が短くても定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献4では、赤外線吸収剤をトナー表面やワックスの界面に存在させることによりフラッシュ光の光エネルギーの熱エネルギーへの変換効率を高めて樹脂やワックスの溶融を促進することで定着強度を得られる効果を得ている。
特許文献5では、非接触定着後に表面平滑化プロセスを導入することにより画像表面の盛り上がりを減少させるとともに、画像表面を平滑性化してすべり摩擦を小さくして前記耐スミア性を向上させている。
従来提案されているエステル系ワックスの添加、赤外線吸収剤の追加、添加ワックス温度特性の調整、赤外線吸収剤の表面偏在化の場合、いずれの手法もフラッシュ定着における定着強度不足の問題に対しては一定の効果があるが、非接触定着方式の別の弱点である耐スミア性の解決には不十分である。特にトナー付着量の少ないハーフトーン領域やエッジ効果の出やすい文字部等では耐スミア性の不足が顕著である。
また、表面平滑化プロセスの導入により耐スミア性は向上するが、印刷工程を追加する解決法であるため、現行既存の印刷装置では対応できず、装置の大型化やプロセスの複雑化にもつながり、必ずしも望ましい解決法とはいえない。
特開2001−22127公報 特開2002−99111公報 特開2004−170957公報 特開2009−151201公報 特開2009−175319公報
この発明は、非接触定着方式であるフラッシュ定着を採用した電子写真装置により画像が記録された印刷物において、前記耐スミア性において問題のない画像を得ることができる電子写真用トナーを提供することを最終的な目的としている。そこで、従来のトナーにおいて耐スミア性の問題を引き起こす原因を個別に改善すること、すなわち、
(a)ハーフトーン部や文字部などのトナー量が少ない画像部分でも定着強度が不足しないこと、
(b)トナーの付着量が多くてもトナー画像の表面が盛り上がりにくいこと、
(c)定着画像の表面のすべり摩擦を抑制すること、
(d)フラッシュ光が直接当たらないトナー画像の内部のトナーも溶融が不完全とならないこと、
(e)カラートナーにおいても上記(a)〜(d)の課題を解決すること、
を課題とした。
本発明は、以下(1)〜(10)に記している技術的特徴の構成により、前記課題を解決できたものである。
・(1)結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。
・(2)前記疎水性微粒子が1種類以上のフッ素置換された樹脂を含むことを特徴とする前記(1)に記載の電子写真用トナー。
・(3)前記ワックスがトナー中に0.1〜50質量%含有されることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(4)前記疎水性微粒子がトナー中に0.01〜10質量%含有されることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(5)前記疎水性微粒子の直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(6)前記疎水性微粒子がエチレン系完全フッ素化樹脂もしくはエチレン系部分フッ素化樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(7)前記結着樹脂がスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、環状オレフィン構造を含む樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(8)光を吸収して熱エネルギーに変換する成分を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
・(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
・(10)溶融混練物の全体に疎水性微粒子を分散させることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真用トナーの製造方法。
本発明の電子写真用トナーによれば、非接触定着方式であるフラッシュ定着を採用した電子写真装置において、
(a)ハーフトーン部や文字部などのトナー量が少ない画像部分でも十分な定着強度が得られる、
(b)トナーの付着量が多くてもトナー画像の表面が盛り上がりにくい、
(c)定着画像の表面のすべり摩擦抵抗が抑制される、
(d)フラッシュ光が直接当たらないトナー画像の内部のトナーも溶融が不完全とならない、
(e)カラートナーにおいても(a)〜(d)の効果を得ることができる、
という複数の優れた効果を得ることができ、その結果、非接触定着方式であるフラッシュ定着を採用した電子写真装置により画像が記録された印刷物において、前記耐スミア性の問題を生じないという優れた特性を持つ電子写真用トナーおよびその製造方法を提供することができる。
これに加えて本発明の電子写真用トナーの製造方法によれば、トナーを溶融混練粉砕法で製造する際に溶融混練物の全体に疎水性微粒子が偏りなく分散されていることにより混練装置に溶融混練物が付着しにくいので(f)トナー製造における溶融混練物の成形性が良く、しかも、溶融混練物を粉砕する際には疎水性微粒子の表面が破壊通過点となりやすいので粉砕が容易であることに加えて偏りなく疎水性微粒子が分散されていることにより粉砕物の大きさが整いやすいことから(g)トナー製造における溶融混練物の粉砕性が良い、という効果をも得ることができ、その結果、本発明の電子写真用トナーを効率よく高収率で製造できる製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂、ワックス、疎水性微粒子を必須の構成物質とする以外は、着色剤、帯電制御剤、磁性粉など、一般的な電子写真用トナーに添加している各種物質、赤外線吸収剤などを適宜含有させることができ、さらにトナー粒子の流動性や帯電性を制御するためにシリカ、カーボンブラック、帯電制御剤等の各種物質を適宜外添することができる。
(結着樹脂)
本発明に用いる結着樹脂は、特に限定することはなくトナーとして一般的に使用されている樹脂から選択することができ、例えば、以下に示す単量体の単独重合体及び任意の組み合わせからなる共重合体とすることができる。前記単量体としては、スチレン、クロロスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のモノオレフィン類(α−C2〜10オレフィンが好ましく、特にα−C2〜4オレフィンが好ましい)、イソブテン、イソプレン等の分枝鎖状オレフィンなどの、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、などのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン類、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の環状共役ジエン又はこれらの誘導体、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等の多環の環状オレフィン類、等を例示できる。オレフィン系単量体を含む共重合体はトナーに柔軟性を付与する点から好ましい。
また、本発明に用いる別の結着樹脂として、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などのカルボン酸と、ビスフェノールA(EO/PO付加物を含む)、エチレングリコールなどのアルコールから生成されるポリエステル樹脂を例示することができる。
上記例示した樹脂の中でも、本発明に用いる結着樹脂としてはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、環状オレフィン構造を含む樹脂、ポリエステル樹脂が電子写真装置の連続使用に伴う現像機中での長時間の攪拌を経てもトナー耐久性が優れている点で好ましく用いられる。中でもα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、特にエチレン−ノルボルネンなどのα−オレフィンと多環環状オレフィンとの共重合樹脂、ポリエステル樹脂が前記トナー耐久性においてより好ましく用いられる。
脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、環状オレフィンと非環式不飽和単量体との組成比で決まり、通常、50〜200℃程度であり、用途や成形温度に応じて適宜選択できる。トナー用としては、50〜80℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは50℃〜65℃程度である。脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度が80℃を超えて高いと、剛性や耐衝撃性が高くなるためトナーの成形性が十分でなく、50℃未満の場合は、感光体や現像ローラなど電子写真装置内部のトナーが接触する部材にトナーが融着する恐れがあり画像形成を阻害する恐れがある。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定される分子量分布で、1000〜14000が好ましい。より好ましくは1000〜7000である。数平均分子量が1000未満の場合、トナー耐久性が不足する可能性があり、14000を超えた場合は定着強度が十分でなくなる恐れがある。
また、重量平均分子量(Mw)は、5000〜20000が好ましい。より好ましくは5000〜15000である。重量平均分子量が5000未満の場合、トナー耐久性が不足する可能性があり、20000を超えた場合は定着強度が十分でなくなる恐れがある。
また、分子量1000未満の分子が10質量%未満であることが好ましい。より好ましくは9質量%未満である。分子量1000未満の分子が10質量%以上の場合、感光体や現像ローラなど電子写真装置内部でトナーが接触する部材に対するトナーの耐融着性が低下して画像形成を阻害する恐れがある。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30℃〜80℃が好ましい。更に好ましくは40℃〜70℃である。30℃未満の場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化する場合があり、80℃を超える場合は低温定着性が悪化する場合がある。
また、ポリエステル樹脂のフロー軟化点は、85℃〜145℃が好ましい。更に好ましくは90℃〜120℃である。85℃未満の場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化する場合があり、145℃を超える場合は低温定着性が悪化する場合がある。
(ワックス)
本発明の電子写真用トナーに用いるワックスは、トナー粒子の熱溶融をしやすくさせる効果と、トナー中に後述の疎水性微粒子を分散させる媒介の役割とをあわせ持っている。従って、疎水性微粒子が分散でき、結着樹脂中に微分散もしくは相溶できる物質が好適である。結着樹脂の組成や熱特性に応じて適当なワックスを選択するのが良い。
ワックスの熱特性としては、結着樹脂の熱特性に応じて適宜設計すれば良いが、比較的低軟化点もしくは低融点の化合物、具体的には軟化点(融点)が50〜170℃、より好ましくは80〜160℃を有するものが好ましい。軟化点が50℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や貯蔵安定性が不十分であり、170℃を超えると、定着温度が高くなり好ましくない。
本発明に用いることができるワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、変性ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン等のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、硬化ひまし油、酸性オレフィンワックス、マレイン酸エチルエステル、マレイン酸ブチルエステル、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、パルミチン酸セチルエステル、モンタン酸エチレングリコールエステル等の脂肪酸エステル又はその部分ケン化物よりなるエステルワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリル酸アミド、ベヘニン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等のアミド系ワックス等が挙げられる。
また、これらのワックスは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。軟化点(融点)が異なるワックスを混合してもよい。
本発明のトナーにおいて、ワックスはトナー粒子中で結着樹脂と相溶している状態もしくは結着樹脂中に微分散されている状態で存在している。本発明でいう相溶とは、明確な界面がない状態で混合できる化学的性質を指し、具体的には溶融混練物の断面を顕微鏡を用いて倍率400倍で観察した場合に、分散されているワックスドメイン(結着樹脂の海に分散されているワックス成分の島)直径が0.5μm以下に視認できれば微分散していると判断し、ワックスドメインが視認できなければ相溶していると判断する。
本発明のトナー中のワックスの含有量は、結着樹脂の熱特性およびワックスとの相溶性に応じて適宜設計すれば良いが、全トナー質量を基準として、0.1〜50質量%の範囲が好適であり、好ましくは1〜20質量%が好適であり、さらに好ましくは2〜15質量%である。ワックスの含有量が0.1質量%未満であると、樹脂が溶融しにくくなることにより画像定着強度が弱くなる恐れがある。一方、50質量%を超えると、高温度環境で使用した場合にトナーの流動性が悪くなり帯電しにくくなる恐れやワックスがトナー粒子から離脱する恐れがあり感光体や現像ローラなど電子写真装置内部の部材に融着して画像形成を阻害する可能性がある。
(疎水性微粒子)
本発明の電子写真用トナーに分散されている疎水性微粒子は、疎水性物質を微粒子化したものであるが、画像形成前のトナー粒子どうしが固着するブロッキングを防止する効果およびトナー保存環境の湿度の変化によるトナーの帯電性の変動を抑制する効果を奏するのみならず、定着後のトナー画像において、定着画像表面のすべり摩擦抵抗を減じて、定着画像がコスレなど擦過性の外力を受けた場合に破壊されるのを防止する機能を発現するために必要なものである。このため、疎水性微粒子は粒子表面においてすべり摩擦抵抗を増大させてしまう水素結合等の要因を排除できる物質が好ましく、空気中の湿度が高くても水分を吸着しにくい物質が好適である。 該疎水性微粒子は、結着樹脂と接触した状態でトナー中に分散されていても良いし、トナー中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
本発明に用いる疎水性微粒子の構成成分である疎水性物質としては、例えば、フッ素置換された樹脂等の表面が疎水性である微粒子が好ましく使用できる。
前記フッ素置換された樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のエチレン系完全フッ素化樹脂;ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のエチレン系部分フッ素化樹脂;ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素化樹脂共重合体、などが例示でき、中でもエチレン系完全フッ素化樹脂もしくはエチレン系部分フッ素化樹脂が好適であり、特にPTFEが好ましい。
本発明に用いる疎水性微粒子は、1個のトナー粒子の全体すなわち内部および表面に均一に分散され、かつ複数のトナー粒子においてばらつきなく同等に疎水性微粒子を分散していることが良好な状態といえる。本発明のトナーにおいて、疎水性微粒子は、結着樹脂と接触した状態でトナー中に分散されていても良いし、トナー粒子中の前記ワックスドメイン以下の大きさで該ワックスドメインの中に疎水性微粒子が含まれるようにトナー粒子中に存在していても良い。
従って、本発明の疎水性微粒子の大きさとしては、一般的なトナー粒子径が体積平均粒径で3〜15μm程度であることから、良好な状態に分散させるためには疎水性微粒子の直径がトナー粒子径よりも小さく、好ましくは1μm以下の粒子を含んでいることが必要である。前記ワックスドメインの好適な直径0.5μm以下よりもさらに小さければ該ワックスドメインの中に疎水性微粒子が含まれるようにトナー粒子中に存在できるので好ましい。
疎水性微粒子の個別の直径は、顕微鏡を用いて観察される粒子の二次元像(写真など)から粒子ごとにそれぞれの最大幅を定規で目視確認すればよい。
疎水性微粒子の構成成分を微粒子化する方法は、構成成分を単独で冷却粉砕する方法、構成成分を溶融した状態で噴霧する方法、ワックスと疎水性物質とをドライブレンドした状態で一緒に粉砕することによって疎水性物質の微粒子化および疎水性微粒子とワックスとの混合を同時に行う方法、ワックス成分と溶融混合して溶融相の状態にした状態で噴霧するか粉砕して小さな相分離物を得る方法、乳化重合法により粒子を成長させる方法等がある。
本発明のトナーにおいて、疎水性微粒子の含有量は、トナー中に0.01〜10質量%含有されることが望ましい。
10質量%を超えると微粒子がトナーから離脱して感光体や帯電部材(帯電ローラー、帯電ブラシ等)を汚染(フィルミング)して画像形成を阻害する恐れがあり、0.01質量%未満であると疎水性微粒子の作用が微弱になるために、トナー粒子の流動性が低下してトナーのブロッキングや帯電不良が起こる恐れがあるとともに、トナー定着画像の表面摩擦抵抗が大きくなり耐スミア性が悪くなる恐れが生じる。
なお、後述する溶融混練粉砕法を用い、ワックス中に疎水性微粒子をあらかじめ分散(予備分散)する場合、良好な分散を行うためには、該予備分散時のワックスと疎水性微粒子とを含む仕込み全質量に対する疎水性微粒子の配合は30質量%以下であることが好ましく、0.1〜20質量%の範囲がより好ましく、1〜15質量%の範囲であることが特に好ましい。
本発明の電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する場合、結着樹脂を溶融混練する工程より以前の工程でワックス中に前記疎水性微粒子をあらかじめ分散(予備分散)しておくと、溶融混練物の全体に疎水性微粒子を容易に分散でき、トナー粒子全体に疎水性微粒子を分散させやすくなるので好ましい。本発明によるトナーを溶融混練粉砕法で製造する際に、ワックス中に前記疎水性微粒子を予備分散しておくと、溶融混練物の全体に疎水性微粒子が偏りなく分散されるので、トナー製造工程における成形性(溶融混練物が良く分散され、溶融混練機から収率高く回収できること)が良くしかも粉砕性も良いという効果をも得ることができる。
なお、予備分散によりワックス中に分散された疎水性微粒子について、溶融混練工程を経た溶融混練物においてはワックス中から分離されて結着樹脂と接触した状態で溶融混練物中に分散されていても良いし、溶融混練物中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
さらに粉砕工程を経たトナー粗粒子(分級工程および外添工程の前段階)においては該疎水性微粒子は、結着樹脂と接触した状態でトナー粗粒子中に分散されていても良いし、トナー粗粒子中に分散されたワックスドメイン中に分散されていても良い。
[その他任意成分]
その他、任意成分として、着色剤、帯電制御剤、磁性粉、添加剤等を添加することができる。以下、各成分について説明する。
(着色剤)
本発明のトナーに使用できる着色剤に特に制限はない。イエロー着色剤の顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、73、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、122、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が好適に用いられる。
染料系としては、例えば、C.l.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42.64.201.211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
黒色着色剤としては、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、ニグロシン、鉄黒、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子等が利用できるほか、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
着色剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して2〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらにはトナー像の好適なOHPフィルムの透過性を考慮すると12質量部未満の範囲で使用されるのが好ましく、通常3〜9質量部であるのが最も好適である。
(帯電制御剤)
また、本発明には必要に応じて帯電制御剤を添加することができ、特に制限はない。
添加する場合、正荷電性帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。
負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、Zn等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物、ホウ素錯体、高分子タイプ帯電制御剤などがある。
添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部程度が好ましい。
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、赤外波長領域を含む光を吸収して熱エネルギーに変換する成分として本発明に使用できる。この赤外線吸収剤を含ませることで、光定着の際、特定の波長領域の照射光を吸収して発熱し、トナーが効率よく溶融される。赤外線吸収剤としては、波長730nm以上1150nm以下(好ましくは820nm以上1080nm以下)の波長領域に最大吸収を示すものが好適に使用される。赤外線吸収剤としては、公知の赤外線吸収剤(赤外線吸収剤)を用いることができ、例えば酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、特定のアミド化合物、ランタノイド系化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等が挙げられる。さらに、カーボンブラック、チタンブラック、フェライト、マグネタイト、炭化ジルコミウム等の黒色顔料等も用いることができる。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。
具体的な赤外線吸収剤としては、ニッケル金属錯体系赤外線吸収剤(三井化学社製:SIR−130、SIR−132)、ビス(ジチオベンジル)ニッケル(みどり化学社製:MIR−101)、ビス[1,2−ビス(p−メトキシフェニル)−1,2−エチレンジチオレート]ニッケル(みどり化学社製:MIR−102)、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(シス−1,2−ジフェニル−1,2−エチレンジチオレート)ニッケル(みどり化学社製:MIR−1011)、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス[1,2−ビス(p−メトキシフェニル)−1,2−エチレンジチオレート]ニッケル(みどり化学社製:MIR−1021)、ビス(4−tert−1,2−ブチル−1,2−ジチオフェノレート)ニッケル−テトラ−n−ブチルアンモニウム(住友精化社製:BBDT−NI)、シアニン系赤外線吸収剤(富士フィルム社製:IRF−106、IRF−107)、シアニン系赤外線吸収剤(山本化成社製、YKR2900)、アミニウム、ジイモニウム系赤外線吸収剤(長瀬ケムテック社製:NIR−AM1、IM1)、イモニウム化合物(日本カーリット社製:CIR−1080、CIR−1081)、アミニウム化合物(日本カーリット社製:CIR−960、CIR−961)、アントラキノン系化合物(日本化薬社製:IR−750)、アミニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−002、IRG−003、IRG−003K)、ポリメチン系化合物(日本化薬社製:IR−820B)、ジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022、IRG−023)、ジアニン化合物(日本化薬社製:CY−2、CY−4、CY−9)、可溶性フタロシアニン(日本触媒社製:TX−305A)、ナフタロシアニン(山本化成社製:YKR5010、山陽色素社製:サンプル1)、無機材料系(信越化学社製:イッテルビウムUU−HP、住友金属社製:インジュームチンオキサイド)等が挙げられる。これらの中でも、光定着(フラッシュ定着)を行う場合には、ジイモニウム、アミニウム、ナフタロシアニン、シアニンが良好である。
赤外線吸収剤のトナーへの添加量は、トナー100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
(外添剤)
本発明のトナーは、流動性付与の観点から、外添剤が表面に付着していることが好ましい。
外添剤としては無機または有機の各種外添剤を使用することができるが、特にトナーの流動性向上、凝集性抑制を図る為にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等)等の無機微粉末が好適である。
外添剤の混合量は、使用する外添剤及びトナー粒子の平均粒径、粒度分布などにより異なるが、所望するトナー流動性を得る量を適宜選択できる。一般的にはトナー粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、更には0.1〜8質量部が好適である。
混合量が0.05質量部未満では流動性改善効果が少なく、高温での貯蔵安定性能が悪く、また混合量が10質量部より多いと一部遊離した外添剤により感光体にフィルミングを発生したり、現像槽内部に堆積して現像剤の帯電機能劣化等の障害を引き起こしたりして好ましくない。
また、外添剤は高湿環境下での安定性面より、無機微粉末の場合にはシランカップリングなどの処理剤で疎水化処理されたものがより好ましく、更に、帯電性を考慮する場合には負荷電性を付与する処理剤としてはジメチルジクロルシラン、モノオクチルトリクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなど、正荷電性を付与する処理剤としてはアミノシランなどを使用すればよい。
この他、外添剤としてトナーの電気抵抗調整、研磨剤などの目的で、流動性改善用以外のマグネタイト、フェライト、導電性チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化セリウム、ハイドロタルサイト類化合物、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、ポリエチレンビーズなどの微粉末を適量混合してもよく、その混合量はトナー100質量部に対して0.005〜10質量部が好ましい。
さらに、外添剤としてポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末などの樹脂微粉末を付着してもよい。トナーに対してこれらの樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100質量部対して、0.01〜8質量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜4質量部である。
トナー粒子への前記外添剤の付着はドライブレンドによる混合を行うことが好ましく、混合装置の一例としては、ダブルコーン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を挙げることができる。
次に本発明の静電荷像現像用トナーを製造する好適な方法について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、溶融混練粉砕法によって製造することが好ましい。本発明のトナーを溶融混練粉砕法により製造する場合は、ワックス中に疎水性微粒子を分散させる予備分散工程を行ってから、混練工程、冷却工程、粉砕分級工程を行うことが望ましい。
(予備分散)
予備分散は、ワックス中に疎水性微粒子を分散して、疎水性微粒子を分散したワックスを作製する。ワックスと疎水性物質とをドライブレンドした状態で一緒に粉砕することによって疎水性物質の微粒子化および疎水性微粒子とワックスとの混合を同時に行うこともできる。また、いったん疎水性微粒子を分散したワックスを溶融相の状態にした状態で噴霧するか粉砕して小さな相分離物を得る方法で疎水性物質の微粒子化をさらに進めたり該疎水性微粒子をワックス中にさらに微細に分散させることができる場合がある。なお、該予備分散を行う際に、疎水性微粒子の分散を妨げない範囲でトナー構成成分を適宜添加しても良い。
予備分散工程に使用する分散装置は特に限定するものではないが、例えば、バッチ式の熱溶融混練機(例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等)、1軸または2軸の連続式押出機(例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、栗山製作所社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー)、オープンロール型連続混練機等が使用できる。
分散装置に投入する原料の形状は適切に分散できる範囲で特に限定するものでなく、任意に設定できる。例えば混練機に投入する際のワックスの形状は粉状、粗粉砕形状、ペレット形状が好ましく、疎水性微粒子を回転式ミキサー等で混合してから投入する方法がある。バッチ式混練機を使用する場合は、先にワックスを投入しておき、ワックスの融点付近で混練機を作動させながら疎水性微粒子を徐々に添加して溶融混練物中の疎水性微粒子濃度を上げていく方法を採用しても良い。
(混練工程)
混練工程では、結着樹脂および前記疎水性微粒子を分散したワックスを含む原料を溶融混練して溶融混練物を得る。原料成分として前記その他任意成分を適宜添加しても良い。本発明のトナーを溶融混練粉砕法で作製する場合は、前記予備分散を経て混練工程を行うことで、溶融混練物中において前記疎水性微粒子が凝集せずによく分散された状態とすることができる。
混練工程にはバッチ式(例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等)または連続式の熱溶融混練機を用いるが、連続生産できる等の優位性から1軸または2軸の連続式押出機が好ましい。例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、栗山製作所社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が好ましい。なお、オープンロール型連続混練機も使用可能である。
(冷却工程)
その後、冷却工程により混練物を冷却固化する。
(粉砕分級工程)
そして、粉砕分級工程では冷却固化した混練物を粉砕分級して分級トナーを得る。
まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕し、ジェットミル、カウンタージェットミル、高速ローター回転式ミル等で微粉砕し、段階的に所定トナー粒度まで粉砕する。
そして、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター、乾式気流分級機等でトナーを分級し、体積平均粒子径3〜18μmの分級トナーを得る。
分級時に得られた粗粉は粉砕分級工程に戻し、微粉は混練工程に戻して再利用してもよい。
次に、必要に応じて分級トナーに外添剤を付着させる外添工程を行う。
分級トナーと各種外添剤を所定量配合して、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機などで攪拌・混合する。
この際、外添機内部で発熱があり、凝集物を生成し易くなるので外添機の容器部周囲を水で冷却するなどの手段で温度調整をする方が好ましく、更には外添機容器内部の材料温度は樹脂のガラス転移温度より約10℃低めの管理温度以下が好適である。
本発明のトナーは、上述の方法により得られ、体積平均粒径は3μm〜15μmが好ましく、さらに好ましくは5μm〜10μmである。体積平均粒径が3μm未満では、2μm未満の超微粉が多くなるので、カブリ、画像濃度低下、感光体での黒点やフィルミングの発生、現像スリーブや層厚規制ブレードでの融着の発生、等を引き起こす。一方15μmを超えると解像度が低下し、高画質画像が得られない。
なお、本発明において、体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで体積分布を測定することにより求めた。
得られたトナーは、一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。二成分現像方式にはキャリアと混合して使用する。
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。
本発明のトナーは、モノクロ用トナーであってもカラー用トナーであってもよく、画像の光沢性改善が顕著に現れるカラー用トナー、特にフルカラー用トナーとして用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
次の原材料をヘンシェルミキサーにて均一に混合した後、二軸混練押出機で溶融混練した。
・結着樹脂
環状オレフィン樹脂: 70質量部
(ポリプラスチックス社製 商品名: TOPAS TM)
環状オレフィン樹脂: 30質量部
(ポリプラスチックス社製 商品名: TOPAS TB)
・着色剤(兼赤外線吸収剤)
カーボンブラック: 7質量部
(キャボット社製 商品名: REGAL330R)
・帯電制御剤
鉄化合物: 1.5質量部
(保土谷化学社製 商品名: T−77)
・疎水性微粒子分散ワックス: 3質量部
ポリエチレンワックス(ヘキスト社製 商品名: PE−130)と
ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子社製 商品名: L−170J)とを、
質量比85:15で溶融混合して溶融相の状態にしたのちに粉砕する方法
により予備分散したもの。
次いで混練物を冷却し、ジェットミルにて粉砕、気流式分級機で分級して体積平均粒径9μmのトナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部と疎水性シリカ(キャボット社製 商品名: TS−530)0.6質量とをヘンシェルミキサーにて均一に混合して実施例1のトナーを得た。
実施例1のポリエチレンワックスをカルナウバワックス(加藤洋行社製 商品名: カルナウバワックス2号粉末)とした以外は全て同じとし、実施例2のトナーを得た。
次の原材料をヘンシェルミキサーにて均一に混合した後、二軸混練押出機で溶融混練した。
・結着樹脂
ポリエステル樹脂: 100質量部
(三菱レイヨン社製 商品名: FC−916)
・着色剤(兼赤外線吸収剤)
カーボンブラック: 7質量部
(キャボット社製 商品名: REGAL330R)
・帯電制御剤
鉄化合物: 1.5質量部
(保土谷化学社製 商品名: T−77)
・疎水性微粒子分散ワックス: 3質量部
カルナウバワックス(加藤洋行社製 商品名:カルナウバワックス2号粉末)と
ポリテトラフルオロエチレン
(旭硝子社製 商品名:L−170J、直径:0.2μm)
とを、質量比85:15で溶融混合して溶融相の状態にしたのちに粉砕する方法
により予備分散したもの。
次いで混練物を冷却し、ジェットミルにて粉砕、気流式分級機で分級して体積平均粒径9μmのトナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部と
疎水性シリカ(キャボット社製 商品名: TS−530)0.6質量部
とをヘンシェルミキサーにて均一に混合して実施例3のトナーを得た。
実施例3のカルナウバワックスを
合成エステルワックス(日油社製 商品名: WEP−9)
とした以外は全て同じとし、実施例4のトナーを得た。
実施例3の結着樹脂を
スチレン−アクリル酸エステル系樹脂
(三洋化成社製 商品名:ハイマーST−305)とした以外は全て同じとし、実施例5のトナーを得た。
実施例1の着色剤(兼赤外線吸収剤)および帯電制御剤を以下の着色剤、赤外線吸収剤および帯電制御剤とした以外は全て同じとし、実施例6のトナーを得た。
・着色剤
マゼンタ顔料: 4.5質量部
(大日精化工業社製、商品名:ピグメントレッド122)
・赤外線吸収剤
ナフタロシアニン化合物: 2.0質量部
(山本化成社製、商品名:YKR−5010)
・帯電制御剤
ホウ素錯体粒子: 2.0質量部
(日本カーリット社製、商品名:LR―147)
[比較例1]
実施例1において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例1のトナーを得た。
[比較例2]
実施例2において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例2のトナーを得た。
[比較例3]
実施例1においてポリエチレンワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例3のトナーを得た。
[比較例4]
実施例2においてカルナウバワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例4のトナーを得た。
[比較例5]
実施例3において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例5のトナーを得た。
[比較例6]
実施例4において疎水性微粒子分散ワックスを含有させず、そのかわりに疎水性微粒子分散ワックス中のポリテトラフルオロエチレンの質量分を差し引いた質量部のワックスを添加してトナーを作製し、比較例6のトナーを得た。
[比較例7]
実施例3においてカルナウバワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例7のトナーを得た。
[比較例8]
実施例4において合成エステルワックスとポリテトラフルオロエチレンを予備分散せずにトナーを作製し、比較例8のトナーを得た。
[比較例9]
実施例3のカルナウバワックスをポリエチレンワックス(ヘキスト社製 商品名: PE−130))とした以外は全て同じとし、比較例9のトナーを得た。
[溶融混練物の評価]
(ワックス成分の分散)
常温に冷却した溶融混練物を切断した断面を、倍率400倍で光学顕微鏡観察し、視認されたワックスドメイン(結着樹脂の海に分散されているワックス成分の島)の直径から以下のように評価した。
◎ ワックスドメインが確認できない
○ 0.5μm以下
× 0.5μmを超える
なお、溶融混練粉砕法により製造されるトナー粒子中のワックスドメインの直径は、溶融混練物におけるワックスドメインの直径が反映される。
表1および表2に、実施例および比較例のトナーを製造する際のそれぞれの溶融混練物における帯電制御剤以外の異なる成分の比較を示す。共通する成分は省略している。
Figure 2011221152
Figure 2011221152
[トナー画像の評価]
実施例1〜7及び比較例1〜9のトナー5質量部と、平均粒径80μmのシリコーンコートフェライトキャリア95質量部とをそれぞれ混合して2成分現像剤を作成した。これらの2成分現像剤を市販の複写機に装填し、坪量80g/mの紙を使用して以下の未定着画像を作成した。
・トナー付着量が6g/mとなるように調整したベタ画像
・解像度600dpiにおける2ドットライン画像
引き続き、未定着画像をキセノンランプによるフラッシュ光を使用した定着装置にてエネルギー2.5J/cmで定着させた。
(定着強度)
ベタ画像に3M社製メンディングテープを貼り、テープの上から荷重1kgの重りで5往復した後テープを剥離した。剥離前後の画像濃度をマクベス社反射濃度計RD−914にて測定し、以下のように定着率を算出した。
定着率=(剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度)×100
定着率を以下のように評価した。
○ 定着率85%以上であり問題ない
△ 定着率70%以上であり画像欠陥となるレベルではない
× 定着率70%未満であり画像欠陥となる
(耐スミア性)
ライン画像に未使用の坪量80g/mの紙片を重ね、紙片の上に置いた荷重1kgの重りを20cmに渡って10往復させた。紙片に移った汚れを以下のように評価した。
○ 汚れがほとんどなく問題ない
△ やや汚れがあるが画像欠陥となるレベルではない
× 汚れが多く画像欠陥となる
表3に、実施例1〜6および比較例1〜9の各トナーをのトナー画像評価結果を示す。
Figure 2011221152
実施例1〜5(黒トナー)および実施例6(カラートナー)は、表1に示されるように疎水性微粒子としてテトラフルオロエチレンを選択し、ワックスとの予備分散を行った後に溶融混練を行って製造したものであり、その溶融混練物はワックスが良く分散された。このことは、結着樹脂とワックスとの相溶性が良かったことを示すものと考えられる。そして、表2に示されるように、カラートナーを含むいずれのトナーも定着強度が高く、耐スミア性が良好であった。
これに対し、疎水性微粒子を添加しなかった比較例1、2、5、6や、疎水性微粒子を添加してもワックスとの予備分散を行わなかった比較例3、4、7、8は、その溶融混練物はワックスが良く分散されたにもかかわらず、表2に示されるように、いずれのトナーも耐スミア性に問題があり、「やや汚れがあるが画像欠陥となるレベルではない」(記号△)程度のトナーもなかった。
実施例1〜4のトナーが比較例1〜8のトナーと比較して耐スミア性が良好であったことは、疎水性微粒子がトナーの全体に分散され、トナー定着画像の表面にも十分な疎水性微粒子が存在し、耐スミア性に対して格別の効果を付与したことを意味するものと考えられる。
比較例9は、表1に示されるように、結着樹脂としてポリエステル、ワックスとしてポリエチレンワックス、疎水性微粒子としてテトラフルオロエチレンを選択し、ワックスとの予備分散を行った後に溶融混練を行ったものの、その溶融混練物はワックスが分散されなかった。そして、表2に示されるように、このトナーは定着強度が一定のレベルは保っていたものの、耐スミア性は、全く劣り画像欠陥となるレベルであった。
この比較例9は、溶融混練粉砕法によるトナー製造において、ポリエステルとポリエチレンとの組み合わせのように、結着樹脂との相溶性がほとんどないワックスを選択した場合、たとえ疎水性微粒子をワックスに予備分散したとしても、その後の溶融混練工程においてワックスがトナー中に分散されにくいので、結果として疎水性微粒子の分散もされにくくなり、耐スミア性に対して効果を付与することができなかったのであろうと考えられる。
なお、前記実施例1〜5および比較例1〜9では、カーボンブラックが、着色剤と赤外線吸収剤(光を吸収して熱エネルギーに変換する成分)との成分を兼ね備えている。

Claims (10)

  1. 結着樹脂、ワックスおよび直径1μm以下の疎水性微粒子を少なくとも含むトナーであって、トナー中のワックスドメインが0.5μm以下で分散されているかもしくは結着樹脂とワックスとが相溶しており、疎水性微粒子がトナー粒子に分散されていることを特徴とする電子写真用トナー。
  2. 前記疎水性微粒子が1種類以上のフッ素置換された樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
  3. 前記ワックスがトナー中に0.1〜50質量%含有されることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  4. 前記疎水性微粒子がトナー中に0.01〜10質量%含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  5. 前記疎水性微粒子の直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  6. 前記疎水性微粒子がエチレン系完全フッ素化樹脂もしくはエチレン系部分フッ素化樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  7. 前記結着樹脂がスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、環状オレフィン構造を含む樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  8. 光を吸収して熱エネルギーに変換する成分を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用トナーを溶融混練粉砕法により製造する電子写真用トナーの製造方法であって、あらかじめ疎水性微粒子を分散させたワックスと結着樹脂とを溶融混練することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
  10. 溶融混練物の全体に疎水性微粒子を分散させることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用トナーの製造方法。
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