JP2004117649A - 赤色トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた着色力及び色相を有し、色再現性に優れた高品質の印刷画像が得られ、長時間の連続印刷の際にも安定した帯電特性を示し、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において使用可能な赤色トナーを提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤がC.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188,269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有することを特徴とする赤色トナーを用いる。
【選択図】
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤がC.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188,269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有することを特徴とする赤色トナーを用いる。
【選択図】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電の立ち上がりが早く帯電安定性に優れるため、低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において、高品位な画像を提供できる、優れた帯電特性を有する静電荷像現像用の赤色トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法により可視画像を得るためのトナー組成物として、多くはカーボンブラックの如き黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散させたものが使用されている。しかしながら、最近では、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、又はその他の有彩色の顔料をバインダー樹脂中に分散させたカラートナーも使用されており、これらのカラートナーを用いたフルカラーあるいはモノカラーの複写機、プリンターが開発されている。
【0003】
カラートナーに要求される特性としては、印刷後の画像が鮮やかな発色性を有すること、多色印刷を行った際の色重ねにおいて優れた透明性を発揮して色濁りの生じない鮮明な色再現性を有すること、あるいは、オーバーヘッドプロジェクター(以下、OHPという)シート上に定着したカラー画像がスクリーン上に鮮明な色の投影像を写し出すこと、等がある。
【0004】
ところで、最近においてはマシンの高速化が進み、カラートナーの分野においてもA4紙換算で毎分10枚程度の現像速度から、毎分50枚乃至は毎分100枚といった高速現像に適した、優れた帯電性能を有するトナーの開発が望まれている。そのようなトナーに求められる特性としては、前記の透明性や色再現性の他に、低速から高速に至る種々の現像条件に適した帯電特性が必要である。特に、高速の現像装置に用いられるトナーにおいては、トナーが現像装置内で瞬時に所期の帯電量に達する特性、いわゆる帯電の立ち上がり特性が優れていること、また、高い帯電量を有し、現像装置内で長時間撹拌された際にも、帯電の変動を生じないこと、等が重要である。
【0005】
ところで、カラートナーの用途としては、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナー、ブラックトナーの4色を組み合わせて用い、写真や絵画等を再現するフルカラー印刷あるいはプロセスカラー印刷の用途と、主に単色のカラートナー、例えば、青トナー、緑トナー、赤トナーを用いて、マーク、イラスト、色文字やベタ部を印刷するモノカラー印刷とがある。中でも、印鑑、朱色のスタンプ、文字等の訂正記号、アンダーライン、重要文字の表示等に使用される赤トナーの使用頻度は高い。従来より、静電荷像現像装置に用いられるカラートナーに関しては多くの技術が開示されているが、赤色のトナーに関しても種々の技術が提案されている。例えば、特開昭63−173066号公報においては、C.I.Pigment Red 48:1を単独で使用した例、及びC.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 57:1あるいはC.I.Pigment Red 122を組合せて用いる例が、特開昭59−219756号公報においては、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 177あるいは222を組合せて用いる例が、更に、特開昭62−49359号公報においては、C.I.Pigment Red 48とC.I.Pigment Red 81あるいはC.I.Pigment Red 239を組合せて用いる例が開示されている。しかしながら、当該公報等に記載されている各種赤色顔料を使用してトナーを製造した場合、低速から高速に至る種々の現像速度のプリンターで使用されるトナーに要求される前記の特性、つまり、高い帯電量を有し、帯電の立ち上がり特性が優れ、また、安定した帯電特性を示すことを実現することが困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−173066号公報(第3−5頁;実施例1、3、5)
【特許文献2】特開昭59−219756号公報(第1頁;特許請求の範囲、第4頁;実施例2(第3表、試料No.XV)
【特許文献3】特開昭62−49359号公報(第1頁;特許請求の範囲、第2−3頁;実施例1−3、比較例2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた着色力及び色相を有し、色再現性に優れた高品質の印刷画像が得られる赤色トナーを提供することにある。また、本発明の他の目的は、長時間の連続印刷の際にも安定した帯電特性を示す赤色トナーを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において上記課題を解決する赤色トナーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、バインダー樹脂と着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤がC.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188及び269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有することを特徴とする赤色トナーを提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の静電荷像現像剤に用いるトナーのバインダー樹脂としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、またはスチレンブタジエン樹脂のようなビニル系の共重合体樹脂、さらに、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等を挙げることができるが、これらの中でもビニル系の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、定着性、耐オフセット性、透明性等のバランスが良いことから、ポリエステル樹脂が特に好適に使用することができる。
【0010】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と多価アルコールとを脱水縮合することによって製造する。多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が、また、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の三官能以上の多価カルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が挙げられる。
【0011】
また、多価アルコールとしては、以下の脂肪族多価アルコールがある。例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロラクトンジオール等のジオールが、また、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン、等の三官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0012】
また、1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物も上記のカルボン酸化合物と反応する2価以上の脂肪族アルコールとして用いることもできる。具体的には、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、等がある。
【0013】
また、芳香族多価アルコールとしては、例えばカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、等が挙げられる。更に、下記式4で表されるビスフェノール骨格を有する化合物等がある。
【0014】
【化4】
(式4)
(式中、R1及びR2は、同一又は異なってエチレン基又はプロピレン基を示し、m、nは、同一又は異なって0〜7の整数を示し、かつm+nは0〜7の整数を示す。)
【0015】
式4で表される化合物の具体的な例としては、ビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
本発明においてポリエステル樹脂を用いる場合には、多価アルコールとして2価以上の脂肪族アルコールを主成分として用いることが好ましい。その場合、芳香族多価アルコールとして式4の化合物も使用することができるが、式4の化合物を使用する場合は、式4の化合物が全アルコール成分中で占める比率は40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。特に、好ましくは0モル%(使用しない)である。そうすることにより、ポリエステル樹脂の分子鎖がフレキシブルとなり、そのようなポリエステル樹脂を用いたトナーをキャリアと混合して二成分現像剤として用いた場合、現像装置内でキャリアが受けるストレスを緩和する効果があり、キャリア表面の樹脂被覆相が剥離するのを防ぎ、結果として現像剤の寿命が延びるという効果が得られる。また、非磁性一成分現像用トナーとして用いた場合においても現像スリーブと帯電部材との間をトナーが通過する際に受けるシェアを緩和し、高耐久性の現像剤とすることができる。
【0017】
更に、脂肪族多価アルコールを主成分として用いることによりポリエステル主鎖が軟質化し、低温での定着性が改善される。さらに、定着・オフセット性能を改善する目的で、トナー中にワックスを添加することは一般的に用いられる手段であるが、脂肪族多価アルコールを用いたポリエステル樹脂では特にワックス類との相溶性が良好であり、低温での定着性能及び耐オフセット性がさらに改良される。
【0018】
また、脂肪族多価アルコールを主成分として用いた場合には、多塩基酸として、ナフタレンジカルボン酸、及び/またはジメチルナフタレート、ジエチルナフタレート、ジブチルナフタレート等を用いることが好ましい。これらの化合物は全酸成分の1モル%以上を用いることが好ましく、より好ましくは5モル%以上である。
【0019】
ナフタレン環構造を含むモノマーは樹脂のTgを上げるのに効果があり、樹脂の耐熱凝集性が向上する。特にアルコール成分として軟質の脂肪族アルコールを主体に用いた系においては、樹脂のTgの低下を抑えることができ、脂肪族アルコールを用いることによる低温定着性とナフタレンジカルボン酸による耐熱凝集性の両方を併せ持つ樹脂を得ることができる。
【0020】
ポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下で上記の原料成分を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
【0021】
このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩、あるいは、酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物、又は、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1質量%の範囲とするのが好ましい。
【0022】
また、本発明で用いられるビニル系共重合体としてはスチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体樹脂が好ましい。スチレンモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−スルホンスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等がある。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートの如き脂環族(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートの如き芳香族(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの如き水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロキシエチルホスフェートの如きリン酸基含有(メタ)アクリレート;2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートの如きハロゲン原子含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートの如きエーテル基含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0024】
また、これらと共に共重合可能な不飽和化合物も必要に応じ用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸の如きカルボキシル基含有ビニルモノマー;スルホエチルアクリルアミドの如きスルホ基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリルの如きニトリル基含有ビニルモノマー;ビニルメチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンの如きケトン基含有ビニルモノマー;N−ビニルイミダゾール、1−ビニルピロール、2−ビニルキノリン、4−ビニルピリジン、N−ビニル2−ピロリドン、N−ビニルピペリドンの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有ビニルモノマー等を使用することができる。
【0025】
また、架橋剤を上記ビニルモノマーに対して0.1〜2質量%の範囲で使用してもよい。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の製造方法としては通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。
【0027】
重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0028】
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、従来公知の構造のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂等がある。中でも、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロン2055」(軟化点80〜90℃)、「エピクロン3050」(軟化点94〜102℃)、「エピクロン4050」(軟化点96〜104℃)、「エピクロン7050」(軟化点122〜131℃)、油化シェルエポキシ(株)製の「エピコート1002」(軟化点83℃)、「エピコート1003」(軟化点89℃)、「エピコート1004」(軟化点98℃)、「エピコート1007」(軟化点128℃)、「エピコート1009」(軟化点148℃)等が挙げられる。また、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロンN−690」(軟化点85〜95℃)、「エピクロンN−695」(軟化点90〜100℃)等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂をバインダー樹脂としたトナーは、ヒートロール定着方式のみではなく、フラッシュ定着方式にも用いることができる。エポキシ樹脂はフラッシュ定着方式における定着性に優れ、また、耐ボイド性にも優れ、画像欠損のない優れた画像品質の印刷物を得ることができる。
【0030】
本発明に用いられるバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0031】
また、本発明に使用されるバインダー樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0032】
さらに、トナーとして、特に、色再現性やOHPシート上に定着させた際の透明性を要求される場合には、樹脂の軟化点としては、90℃〜140℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜130℃の範囲である。
【0033】
本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0034】
また、酸価については20以下が望ましく、10以下であることが特に望ましい。酸価が高すぎると帯電量の低下を招き所期の帯電量が得られない。
【0035】
本発明で使用する着色剤は、C.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188及び269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有する。C.I.Pigment Red 48:1で表される顔料と前記顔料の1種以上を組み合わせて用いると、赤系色の再現が良好となるばかりでなく、長時間の連続印刷の際にも安定した帯電特性を示し、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において良好な帯電特性を示す赤色トナーとなる。
【0036】
本発明における赤色トナーとしては、白色紙上に定着した際の印刷画像の色相及び彩度が、マンセル表色系で、明度5の時、色相が2.5RP〜5YRであり、彩度が12〜16であることが好ましい。中でも、色相が10RP〜2.5YRであることがより好ましく、2.5R〜10Rであることが特に好ましい。赤系色としては、青味がかかった赤色もあれば、黄味がかかった赤色もあるが、本発明のトナーを青味がかった赤色トナーとするには、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 31,146,147,150,170,175,176,185,187,269から選択される1種以上の顔料を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、C.I.Pigment Red 146,150,269を使用するのが特に好ましい。また、黄味がかった赤色トナーとするには、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 53:1,53:3,188から選択される1種以上の顔料を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、C.I.Pigment Red 188を使用するのが特に好ましい。
【0037】
本発明の赤色トナーの帯電特性を良好にし、更に、低着後の画像を上記のマンセル表色系で示される範囲にするためには、C.I.Pigment Red 48:1と前記顔料の質量比率が、95:5〜5:95であることが好ましく、90:10〜10:90であることがより好ましい。中でも、80:20〜20:80であることが特に好ましい。
【0038】
本発明における着色剤の使用量は、バインダー樹脂100質量部当たり1〜50質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましく、1〜20質量部の範囲が特に好ましい。
【0039】
本発明では前記の有機顔料に加えて、本発明の効果を失わない範囲において、他の着色剤を添加して用いることができる。そのような着色剤としては、周知のものがあげられるが、例えば青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等が、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red31、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.Pigment Red 57:1等が、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180、等がある。
【0040】
また、本発明のトナ−にはこれまで公知の種々のワックス、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等を離型剤として適宜用いることができるが、中でも高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスを離型剤として用いることが好ましい。
【0041】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、モンタン系エステルワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス等の天然ワックス、及び/または合成エステル系ワックスが特に好ましい。合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステルが特に好ましい。
【0042】
これらのワックスは特にポリエステル樹脂に良好な分散性を示し、定着性、耐オフセット性の改善が顕著である。また、更に、これらのワックスは多数枚、長時間の印刷においても、例えば非磁性一成分現像用トナーとして用いた場合、現像スリーブに押しつけられた帯電部材に付着することなく、トナーに安定した帯電を与え、画像欠陥や地汚れ等が無く、高品位かつ高精細な画像の印刷が可能となる。さらに、本発明で使用する着色剤と共に用いてトナーとした場合、ポリプロピレンワックスのような炭化水素系のワックスと比較して透明性に優れたトナーが得られる。このような特性を有するトナーは、透明性があり、鮮やかな投影画像が求められるOHPシートへの印刷、および2色以上を重ねて印刷して良好な色再現性の中間色を印刷する用途に適している。
【0043】
カルナウバワックスとしては精製により遊離脂肪酸を除去した脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスを用いることが好ましい。脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスの酸価としては3以下が好ましく、より好ましくは酸価2以下である。脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスは従来のカルナウバワックスより微結晶となりポリエステル樹脂中での分散性が向上する。モンタン系エステルワックスは鉱物より精製されたものであり、精製によりカルナウバワックスと同様に微結晶となりポリエステル樹脂中での分散性が向上する。モンタン系エステルワックスでは酸価として特に30以下であることが好ましい。また、ライスワックスは米ぬかロウを精製したものであり、酸価は13以下であることが好ましい。カイガラムシワックスはカイガラムシ(別名イボタロウムシ)の幼虫が分泌する蝋状成分を、例えば、熱湯に溶かし、上層を分離後冷却固化して、あるいはそれを繰り返すことにより得ることができる。このような手段により精製されたカイガラムシワックスは固体状態において白色であり、極めてシャープな融点を示し本発明におけるトナー用ワックスとして適している。精製により酸価は10以下となり、トナー用として好ましいのは5以下である。
【0044】
上記ワックスは単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.3〜40質量部、好ましくは1〜30質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。より好ましくは1〜20質量部である。0.3質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ、40質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり、また、二成分現像方式においてはキャリア表面に付着することによりスペントキャリアが発生し、トナーの帯電特性に悪影響を与えたり、非磁性一成分現像方式においては現像ロールに圧接された層厚規制部材に付着したりすることになる。
【0045】
本発明では必要に応じ帯電制御剤を用いることができる。例えば正帯電制御剤としてニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤としてトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等がある。
【0046】
特に、本発明においては、無色の帯電制御剤を使用するのが望ましく、負の帯電制御剤としてはサリチル酸の金属錯化合物としてオリエント化学社製「ボントロンE−84」、保土ヶ谷化学社製「TN105」、クラリアント社製「N4PVP−2481」、日本カーリット製「LR−147」等が、また、無色の正帯電制御剤としては4級アンモニウム塩構造のTP−302、TP−415、TP−610;(保土谷化学製)、ボントロンP−51;(オリエント化学製)、コピーチャージPSY(クラリアントジャパン)等が好適に用いられる。また、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する正帯電性の樹脂型帯電制御剤としては、「FCA−201−PS」(藤倉化成(株))等が挙げられる。
【0047】
中でも、本発明において特に好適に用いることができる帯電制御剤としては、下記の化合物がある。
【0048】
本発明で好適に使用できる無色の正帯電制御剤としては、下記式1〜式3で表される化合物がある。
【化5】
(式1)
[式中、R1〜R3はCnH2n+1基を表す。但し、nは1〜10の整数を示す。また、R1〜R3は同じであっても異なっていてもよい。]
【0049】
【化6】
(式2)
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22個のアルキル基あるいはアルケニル基、炭素数1〜20個の未置換あるいは置換芳香族基、炭素数7〜20個のアラルキル基を表し、A−はモリブデン酸アニオンあるいはタングステン酸アニオン、モリブデンあるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸アニオンを表す。]
【0050】
【化7】
(式3)
[式中、mは1、2または3を示し、そしてnは0、1または2を示し、Mは水素原子、または1価の金属イオンである。X及びZは1または2を示し、Yは0または1を示す。さらに、X=1の時、Y=1、Z=1となりX=2の時、Y=0、Z=2となる。R5〜R12は水素、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシレン基、一般式(−C2〜5のアルキレン−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるポリアルキルオキシレン基を表し、R1、R2、R3、R4は水素、または、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、または一般式(−CH2−CH2−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるオキシエチル基、更に炭素数5〜12の単核−または多核脂環式残基、単核−または多核芳香族残基または芳香脂肪族残基を表す。]
【0051】
より具体的には以下の各化合物がある。
【0052】
【化8】
化合物(1−1)
【0053】
【化9】
化合物(2−1)
【0054】
【化10】
化合物(2−2)
【0055】
【化11】
化合物(2−3)
【0056】
【化12】
化合物(2−4)
【0057】
【化13】
化合物(2−5)
【0058】
【化14】
化合物(2−6)
【0059】
【化15】
化合物(2−7)
【0060】
【化16】
化合物(2−8)
【0061】
【化17】
化合物(2−9)
【0062】
【化18】
化合物(2−10)
【0063】
【化19】
化合物(2−11)
【0064】
【化20】
化合物(3−1)
【0065】
【化21】
化合物(3−2)
【0066】
上記の帯電制御剤は単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー100質量部中、0.3〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部含有させることにより良好な帯電性能が得られる。
【0067】
本発明のトナーを得るための製造方法は、公知慣用の任意の手段に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と必要に応じてワックス、各種添加剤を樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。本発明の効果をより一層発現させるためには、着色剤を使用するバインダー樹脂の一部に高濃度で分散させて、その後、この分散物を使用するバインダー樹脂に希釈分散させると良い。
【0068】
このように、着色剤を高濃度で予めバインダー樹脂に分散させる工程としては、従来公知の方法、即ち、マスターバッチ法やフラッシング法等を用いることができる。マスターバッチ法は、ニーダーやロールミルを用いて、着色剤を高濃度で樹脂とともに高シェアをかけて混練することにより良好な分散物を得る方法である。フラッシング法は、顔料の含水ペーストとバインダー樹脂とを、加圧ニーダーで加熱混練し、水とバインダー樹脂を置換し、水分を除去しながら高顔料濃度の分散物を得る方法である。
【0069】
この高顔料濃度の分散物におけるバインダー樹脂、及び着色剤の割合は、バインダー樹脂100質量部に対して着色材量が10質量部〜100質量部であるのが好ましい。
【0070】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤とを必須成分として、2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に着色剤が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180℃で10分〜2時間である。
【0071】
また、必要に応じて、微粉砕工程における負荷の軽減及び粉砕効率の向上を目的とした粗粉砕を行う。粗粉砕に使用する装置、条件は特に限定されるものではないが、ロートプレックス、パルペライザー等により3mmメッシュパス以下の粒径に粗粉砕するのが一般的である。
【0072】
次いで、ターボミル、クリプトロン等の機械式粉砕機、渦巻き式ジェットミルカウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル等のエアー式粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。微粉砕、及び分級の装置、条件は所望の粒径、粒径分布、粒子形状になるように選択、設定すれば良い。
【0073】
本発明の赤色トナーを製造する他の方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、あるいは特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0074】
本発明では、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコーン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0075】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0076】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H2000、H1018、H2050EP、HDKH3050EP、HVK2150〔ワッカーケミカルズイーストアジア(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
【0077】
外添剤の粒子径は、トナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0078】
特に非磁性一成分現像用トナーにおいては、粒子径大のものと粒子径小のものとを併用することにより、トナー流動性及び現像耐久性を向上させ、現像機のブレードへの固着及びカブリの防止、ランニング時における帯電の長期安定性等が得られ、好ましい。
【0079】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0080】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0081】
本発明の赤色トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアが用いられる。
【0082】
キャリアのコア剤は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライト等が使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜120μmが好ましい。
【0083】
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリルポリオール樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0084】
本発明の赤色トナーを非磁性一成分現像用トナーとして用いる場合、接触型の非磁性一成分現像用トナーとして用いるのが好ましい。接触型の非磁性一成分現像方法とは、トナーが現像スリーブとそれに圧接された層厚規制部材との間を通過することにより摩擦帯電し、次いで感光体の表面に形成された静電潜像を現像する方法である。
【0085】
この場合、通常の使用条件であれば特に現像装置の帯電付与部材の材質等を限定するものではない。例えばアルミニウム、ステンレス、ウレタンゴム、シリコーンゴム製の現像スリーブ、アルミニウム、ステンレス、ジュラルミン、銅、あるいはそれらにウレタンゴム、シリコーンゴムを貼り合わせた層厚規制部材等が好適に使用できる。
【0086】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例中、「部」は特に明記しない限り「質量部」を表す。
【0087】
<樹脂合成例>
(樹脂R1の合成例)
イソフタル酸 116部
テレフタル酸 166部
無水トリメリット酸 38部
ジエチレングリコール 26部
ネオペンチルグリコール 104部
エチレングリコール 50部
テトラブチルチタネート 2.5部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が148℃に達した時反応を終了した。得られた重合体は、無色の固体であり、酸価4、DSC測定法によるガラス転移温度72℃、軟化点は151℃であった。
【0088】
樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0089】
(樹脂R2の合成例)
テレフタル酸 332部
イソフタル酸 ……332部
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン ……700部
トリメチロールプロパン ……80部
エチレングリコール ……75部
テトラブチルチタネート ……3部
上記配合物を攪拌器、コンデンサー、温度計をセットした四つ口フラスコに入れ、窒素ガス気流下、脱水縮合により生成した水を除去しながら、240℃にて10時間常圧で反応させた。その後順次減圧し10mmHgで反応を続行した。反応は軟化点により追跡し、軟化点が151℃に達した時反応を終了した。得られた重合体の軟化点は153℃、酸価は4、DSC測定法によるTgは65℃であった。
【0090】
(樹脂R3の合成例)
スチレン 380部
ブチルメタアクリレート 120部
ジビニルベンゼン 5部
過酸化ベンゾイル 5部
温度計、ガラス製気流導入管、耐真空シール装置付撹拌棒及び水冷ジムロート型コンデンサーを付属した2容量の4つ口丸底フラスコに、キシレン500部と上記モノマー及び開始剤の全量を投入した。ガラス製気流導入管から窒素ガスを導入して反応器内を不活性雰囲気に置換した後、内容物をスライダツク付マントルヒーターにより徐々に加熱して75℃迄上昇せしめた。反応は75℃〜80℃に保ちつつ行なわれ、10〜12時間後に反応を終了せしめるべく温度を130℃迄上昇せしめて重合を完結した。次に水冷コンデンサー及びガラス製気流導入管をフラスコから取除き、かわりに減圧蒸留用のキヤピラリーとクライゼン分溜管を装着した。クライゼン分溜管には温度計と水冷リービツヒコンデンサーを連結し、コンデンサーの排出口は吸引アダプターを経てナス型フラスコへと連結せしめた。吸引アダプターと真空ポンプをマノメーター及びトラップを介して減圧用ゴム管で結び減圧蒸溜の準備を終了した。マントルヒーターを加熱し、内容物を充分に撹拌しつつ真空ポンプを作動させ20mmHg迄減圧すると液温75℃、溜出温度38℃でキシレン或は場合により未反応のモノマーが溜出を始めた。最後は液温180℃に於て0.5mmHg迄減圧して溶剤を完全に除去した。得られた重合体は高温溶融状態のうちにステンレスパンにあけ、室温迄冷却後破砕した。得られた重合体は軟化点143℃、Tg55℃であつた。
【0091】
(実施例1)
<トナーの製造>
・R1の樹脂 95部
・C.I.Pigment Red 48:1 1.9部
・C.I.Pigment Red 269 0.1部
・帯電制御剤3−1 1部
・ワックス カルナウバワックス 2部
(精製カルナバワックスNo.1、酸価5、セラリカNODA(株)製)
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練する。このようにして得た混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.8ミクロンの「外添前トナーA」を得た。
【0092】
・上記「外添前トナーA」 100部
・シリカ 0.5部
(TG820F;キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク製)
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、「トナーA」を得た。
【0093】
<現像剤の調整>
・上記「トナーA」 3部
・キャリア 97部
(シリコーン樹脂を被覆したフェライトキャリア)
を混合攪拌して現像剤Aを調整した。
【0094】
以下同様に表1の配合にてトナーを製造し現像剤A(実施例1)〜現像剤J(実施例10)、及び現像剤K(比較例1)〜現像剤Q(比較例7)を製造した。
【0095】
【表1】
【0096】
エポキシ樹脂 ;エピクロン3050/エピクロン7050=1/9
混合樹脂の軟化点127℃(大日本インキ化学工業(株)製)
PETB ;ペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル
PPWAX;ビスコール550P(三洋化成(製)ポリプロピレンワックス)
P.R.48:1;C.I.PIGMENT RED 48:1
P.R.269;C.I.PIGMENT RED 269
P.R.146;C.I.PIGMENT RED 146
P.R.150;C.I.PIGMENT RED 150
P.R.188;C.I.PIGMENT RED 188
P.B.15:3;C.I.PIGMENT BLUE 15:3
P.Y.180;C.I.PIGMENT YELLOW 180
【0097】
上記実施例及び比較例で得られた現像剤について、定着開始温度、ホットオフセット開始温度、印刷テストを以下の通り行った。
【0098】
(ヒートロール定着・オフセット性能評価)
市販複写機改造機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作成し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、定着開始温度、およびオフセット現象の有無を確認した。
【0099】
上記定着条件にて温度を種々変えて未定着画像の定着実験を行った。定着開始温度は得られた定着後の画像サンプルの擦り定着強度を測定することで求めた。擦り定着強度は次式で計算される擦り定着強度試験残存比率で判定した。画像濃度はマクベス画像濃度計RD−918にて測定した。
擦り定着強度試験残存比率=擦り試験後画像濃度/擦り試験前画像濃度
擦り定着強度としては、残存比率80%以上で実用上問題のないレベルとし、その最低温度を擦り定着開始温度とした。ここで、擦り試験後画像濃度とは、学振型摩擦堅牢度試験機(摩擦子:ワットマン濾紙No.42、荷重:500g、擦り操作:20ストローク)を用いて定着画像に摩擦を加えた後の画像濃度をマクベス画像濃度計で測定したものである。オフセット開始温度は定着画像サンプルを観察し、目視にてオフセット現象が認められる温度とした。結果を表2に示す。
【0100】
(色相及び彩度の測定)
各実施例、比較例のトナーにつき、市販の複写機により、画像の濃度が連続的に変化するグレースケールを原稿として用いることにより、階調性を有する印刷画像を作製した。その印刷画像中で、明度が5になる箇所の色相及び彩度を日本電色製SE−2000で測定した。結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
(印刷テスト1)
市販のレーザービームプリンター(セレン感光体搭載:50m/分の現像速度、A4紙180枚/分の印刷速度に相当)を用いて連続プリントによる印字品質を評価すると共に、現像剤の帯電量を測定した。連続プリント時のトナーの補給はシリカ添加後のトナーをマシンの補給トナー用ホッパーに充填することにより、連続プリント時に自動で行われるようにした。なお、帯電量はブローオフ帯電量測定機で測定した。画像濃度はマクベス濃度計RD−918で測定、地汚れは白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。
【0103】
(トナー飛散量)
50KP(5万枚)印刷後のマシン内部を観察し感光体、現像装置周辺部等に飛散トナーによる汚れがほとんどない場合を○、やや汚れが発生した場合を△、激しい汚れが発生した場合を×とした。
【0104】
以上の評価結果を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表中の表示は次の通り。
【0107】
*「帯電量」; μC/g
*「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
*「トナー飛散」;50KP(5万枚)印刷後の目視観察
○:飛散ほとんどなし
△:やや飛散による汚れが発生
×:激しい飛散が発生
【0108】
(印刷テスト2)
市販のレーザービームプリンター(A4紙10枚/分の印刷速度)を用いて印刷テスト1と同様に1万枚の印字テストを行った。結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
表中の表示は次の通り。
【0111】
*「帯電量」; μC/g
*「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
*「トナー飛散」;50KP(5万枚)印刷後の目視観察
○:飛散ほとんどなし
△:やや飛散による汚れが発生
×:激しい飛散が発生
【0112】
(帯電量の立ち上がりの測定)
前記現像剤A〜Qを直径5cm高さ6cmの円柱型ポリエチレン容器中に入れ、そのポリエチレン容器を115rpmで3分間攪拌した後、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル製)で帯電量を測定した。さらに7分攪拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。結果を表5にまとめる。
【0113】
【表5】
【0114】
【発明の効果】
本発明の赤色トナーによれば、現像装置内でのトナーの飛散が無く、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した帯電特性を示し、地汚れの無い高品質の印刷画像を得ることができる。また、本発明の赤色トナーは、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において上記の優れた現像特性を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電の立ち上がりが早く帯電安定性に優れるため、低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において、高品位な画像を提供できる、優れた帯電特性を有する静電荷像現像用の赤色トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法により可視画像を得るためのトナー組成物として、多くはカーボンブラックの如き黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散させたものが使用されている。しかしながら、最近では、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、又はその他の有彩色の顔料をバインダー樹脂中に分散させたカラートナーも使用されており、これらのカラートナーを用いたフルカラーあるいはモノカラーの複写機、プリンターが開発されている。
【0003】
カラートナーに要求される特性としては、印刷後の画像が鮮やかな発色性を有すること、多色印刷を行った際の色重ねにおいて優れた透明性を発揮して色濁りの生じない鮮明な色再現性を有すること、あるいは、オーバーヘッドプロジェクター(以下、OHPという)シート上に定着したカラー画像がスクリーン上に鮮明な色の投影像を写し出すこと、等がある。
【0004】
ところで、最近においてはマシンの高速化が進み、カラートナーの分野においてもA4紙換算で毎分10枚程度の現像速度から、毎分50枚乃至は毎分100枚といった高速現像に適した、優れた帯電性能を有するトナーの開発が望まれている。そのようなトナーに求められる特性としては、前記の透明性や色再現性の他に、低速から高速に至る種々の現像条件に適した帯電特性が必要である。特に、高速の現像装置に用いられるトナーにおいては、トナーが現像装置内で瞬時に所期の帯電量に達する特性、いわゆる帯電の立ち上がり特性が優れていること、また、高い帯電量を有し、現像装置内で長時間撹拌された際にも、帯電の変動を生じないこと、等が重要である。
【0005】
ところで、カラートナーの用途としては、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナー、ブラックトナーの4色を組み合わせて用い、写真や絵画等を再現するフルカラー印刷あるいはプロセスカラー印刷の用途と、主に単色のカラートナー、例えば、青トナー、緑トナー、赤トナーを用いて、マーク、イラスト、色文字やベタ部を印刷するモノカラー印刷とがある。中でも、印鑑、朱色のスタンプ、文字等の訂正記号、アンダーライン、重要文字の表示等に使用される赤トナーの使用頻度は高い。従来より、静電荷像現像装置に用いられるカラートナーに関しては多くの技術が開示されているが、赤色のトナーに関しても種々の技術が提案されている。例えば、特開昭63−173066号公報においては、C.I.Pigment Red 48:1を単独で使用した例、及びC.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 57:1あるいはC.I.Pigment Red 122を組合せて用いる例が、特開昭59−219756号公報においては、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 177あるいは222を組合せて用いる例が、更に、特開昭62−49359号公報においては、C.I.Pigment Red 48とC.I.Pigment Red 81あるいはC.I.Pigment Red 239を組合せて用いる例が開示されている。しかしながら、当該公報等に記載されている各種赤色顔料を使用してトナーを製造した場合、低速から高速に至る種々の現像速度のプリンターで使用されるトナーに要求される前記の特性、つまり、高い帯電量を有し、帯電の立ち上がり特性が優れ、また、安定した帯電特性を示すことを実現することが困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−173066号公報(第3−5頁;実施例1、3、5)
【特許文献2】特開昭59−219756号公報(第1頁;特許請求の範囲、第4頁;実施例2(第3表、試料No.XV)
【特許文献3】特開昭62−49359号公報(第1頁;特許請求の範囲、第2−3頁;実施例1−3、比較例2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた着色力及び色相を有し、色再現性に優れた高品質の印刷画像が得られる赤色トナーを提供することにある。また、本発明の他の目的は、長時間の連続印刷の際にも安定した帯電特性を示す赤色トナーを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において上記課題を解決する赤色トナーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、バインダー樹脂と着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤がC.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188及び269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有することを特徴とする赤色トナーを提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の静電荷像現像剤に用いるトナーのバインダー樹脂としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、またはスチレンブタジエン樹脂のようなビニル系の共重合体樹脂、さらに、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等を挙げることができるが、これらの中でもビニル系の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、定着性、耐オフセット性、透明性等のバランスが良いことから、ポリエステル樹脂が特に好適に使用することができる。
【0010】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と多価アルコールとを脱水縮合することによって製造する。多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が、また、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の三官能以上の多価カルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が挙げられる。
【0011】
また、多価アルコールとしては、以下の脂肪族多価アルコールがある。例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロラクトンジオール等のジオールが、また、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン、等の三官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0012】
また、1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物も上記のカルボン酸化合物と反応する2価以上の脂肪族アルコールとして用いることもできる。具体的には、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、等がある。
【0013】
また、芳香族多価アルコールとしては、例えばカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、等が挙げられる。更に、下記式4で表されるビスフェノール骨格を有する化合物等がある。
【0014】
【化4】
(式4)
(式中、R1及びR2は、同一又は異なってエチレン基又はプロピレン基を示し、m、nは、同一又は異なって0〜7の整数を示し、かつm+nは0〜7の整数を示す。)
【0015】
式4で表される化合物の具体的な例としては、ビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
本発明においてポリエステル樹脂を用いる場合には、多価アルコールとして2価以上の脂肪族アルコールを主成分として用いることが好ましい。その場合、芳香族多価アルコールとして式4の化合物も使用することができるが、式4の化合物を使用する場合は、式4の化合物が全アルコール成分中で占める比率は40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。特に、好ましくは0モル%(使用しない)である。そうすることにより、ポリエステル樹脂の分子鎖がフレキシブルとなり、そのようなポリエステル樹脂を用いたトナーをキャリアと混合して二成分現像剤として用いた場合、現像装置内でキャリアが受けるストレスを緩和する効果があり、キャリア表面の樹脂被覆相が剥離するのを防ぎ、結果として現像剤の寿命が延びるという効果が得られる。また、非磁性一成分現像用トナーとして用いた場合においても現像スリーブと帯電部材との間をトナーが通過する際に受けるシェアを緩和し、高耐久性の現像剤とすることができる。
【0017】
更に、脂肪族多価アルコールを主成分として用いることによりポリエステル主鎖が軟質化し、低温での定着性が改善される。さらに、定着・オフセット性能を改善する目的で、トナー中にワックスを添加することは一般的に用いられる手段であるが、脂肪族多価アルコールを用いたポリエステル樹脂では特にワックス類との相溶性が良好であり、低温での定着性能及び耐オフセット性がさらに改良される。
【0018】
また、脂肪族多価アルコールを主成分として用いた場合には、多塩基酸として、ナフタレンジカルボン酸、及び/またはジメチルナフタレート、ジエチルナフタレート、ジブチルナフタレート等を用いることが好ましい。これらの化合物は全酸成分の1モル%以上を用いることが好ましく、より好ましくは5モル%以上である。
【0019】
ナフタレン環構造を含むモノマーは樹脂のTgを上げるのに効果があり、樹脂の耐熱凝集性が向上する。特にアルコール成分として軟質の脂肪族アルコールを主体に用いた系においては、樹脂のTgの低下を抑えることができ、脂肪族アルコールを用いることによる低温定着性とナフタレンジカルボン酸による耐熱凝集性の両方を併せ持つ樹脂を得ることができる。
【0020】
ポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下で上記の原料成分を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
【0021】
このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩、あるいは、酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物、又は、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1質量%の範囲とするのが好ましい。
【0022】
また、本発明で用いられるビニル系共重合体としてはスチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体樹脂が好ましい。スチレンモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−スルホンスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等がある。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートの如き脂環族(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートの如き芳香族(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの如き水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロキシエチルホスフェートの如きリン酸基含有(メタ)アクリレート;2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートの如きハロゲン原子含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートの如きエーテル基含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0024】
また、これらと共に共重合可能な不飽和化合物も必要に応じ用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸の如きカルボキシル基含有ビニルモノマー;スルホエチルアクリルアミドの如きスルホ基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリルの如きニトリル基含有ビニルモノマー;ビニルメチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンの如きケトン基含有ビニルモノマー;N−ビニルイミダゾール、1−ビニルピロール、2−ビニルキノリン、4−ビニルピリジン、N−ビニル2−ピロリドン、N−ビニルピペリドンの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有ビニルモノマー等を使用することができる。
【0025】
また、架橋剤を上記ビニルモノマーに対して0.1〜2質量%の範囲で使用してもよい。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の製造方法としては通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。
【0027】
重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0028】
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、従来公知の構造のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂等がある。中でも、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロン2055」(軟化点80〜90℃)、「エピクロン3050」(軟化点94〜102℃)、「エピクロン4050」(軟化点96〜104℃)、「エピクロン7050」(軟化点122〜131℃)、油化シェルエポキシ(株)製の「エピコート1002」(軟化点83℃)、「エピコート1003」(軟化点89℃)、「エピコート1004」(軟化点98℃)、「エピコート1007」(軟化点128℃)、「エピコート1009」(軟化点148℃)等が挙げられる。また、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロンN−690」(軟化点85〜95℃)、「エピクロンN−695」(軟化点90〜100℃)等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂をバインダー樹脂としたトナーは、ヒートロール定着方式のみではなく、フラッシュ定着方式にも用いることができる。エポキシ樹脂はフラッシュ定着方式における定着性に優れ、また、耐ボイド性にも優れ、画像欠損のない優れた画像品質の印刷物を得ることができる。
【0030】
本発明に用いられるバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0031】
また、本発明に使用されるバインダー樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0032】
さらに、トナーとして、特に、色再現性やOHPシート上に定着させた際の透明性を要求される場合には、樹脂の軟化点としては、90℃〜140℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜130℃の範囲である。
【0033】
本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0034】
また、酸価については20以下が望ましく、10以下であることが特に望ましい。酸価が高すぎると帯電量の低下を招き所期の帯電量が得られない。
【0035】
本発明で使用する着色剤は、C.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188及び269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有する。C.I.Pigment Red 48:1で表される顔料と前記顔料の1種以上を組み合わせて用いると、赤系色の再現が良好となるばかりでなく、長時間の連続印刷の際にも安定した帯電特性を示し、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において良好な帯電特性を示す赤色トナーとなる。
【0036】
本発明における赤色トナーとしては、白色紙上に定着した際の印刷画像の色相及び彩度が、マンセル表色系で、明度5の時、色相が2.5RP〜5YRであり、彩度が12〜16であることが好ましい。中でも、色相が10RP〜2.5YRであることがより好ましく、2.5R〜10Rであることが特に好ましい。赤系色としては、青味がかかった赤色もあれば、黄味がかかった赤色もあるが、本発明のトナーを青味がかった赤色トナーとするには、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 31,146,147,150,170,175,176,185,187,269から選択される1種以上の顔料を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、C.I.Pigment Red 146,150,269を使用するのが特に好ましい。また、黄味がかった赤色トナーとするには、C.I.Pigment Red 48:1とC.I.Pigment Red 53:1,53:3,188から選択される1種以上の顔料を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、C.I.Pigment Red 188を使用するのが特に好ましい。
【0037】
本発明の赤色トナーの帯電特性を良好にし、更に、低着後の画像を上記のマンセル表色系で示される範囲にするためには、C.I.Pigment Red 48:1と前記顔料の質量比率が、95:5〜5:95であることが好ましく、90:10〜10:90であることがより好ましい。中でも、80:20〜20:80であることが特に好ましい。
【0038】
本発明における着色剤の使用量は、バインダー樹脂100質量部当たり1〜50質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましく、1〜20質量部の範囲が特に好ましい。
【0039】
本発明では前記の有機顔料に加えて、本発明の効果を失わない範囲において、他の着色剤を添加して用いることができる。そのような着色剤としては、周知のものがあげられるが、例えば青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等が、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red31、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.Pigment Red 57:1等が、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180、等がある。
【0040】
また、本発明のトナ−にはこれまで公知の種々のワックス、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等を離型剤として適宜用いることができるが、中でも高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスを離型剤として用いることが好ましい。
【0041】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、モンタン系エステルワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス等の天然ワックス、及び/または合成エステル系ワックスが特に好ましい。合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステルが特に好ましい。
【0042】
これらのワックスは特にポリエステル樹脂に良好な分散性を示し、定着性、耐オフセット性の改善が顕著である。また、更に、これらのワックスは多数枚、長時間の印刷においても、例えば非磁性一成分現像用トナーとして用いた場合、現像スリーブに押しつけられた帯電部材に付着することなく、トナーに安定した帯電を与え、画像欠陥や地汚れ等が無く、高品位かつ高精細な画像の印刷が可能となる。さらに、本発明で使用する着色剤と共に用いてトナーとした場合、ポリプロピレンワックスのような炭化水素系のワックスと比較して透明性に優れたトナーが得られる。このような特性を有するトナーは、透明性があり、鮮やかな投影画像が求められるOHPシートへの印刷、および2色以上を重ねて印刷して良好な色再現性の中間色を印刷する用途に適している。
【0043】
カルナウバワックスとしては精製により遊離脂肪酸を除去した脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスを用いることが好ましい。脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスの酸価としては3以下が好ましく、より好ましくは酸価2以下である。脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスは従来のカルナウバワックスより微結晶となりポリエステル樹脂中での分散性が向上する。モンタン系エステルワックスは鉱物より精製されたものであり、精製によりカルナウバワックスと同様に微結晶となりポリエステル樹脂中での分散性が向上する。モンタン系エステルワックスでは酸価として特に30以下であることが好ましい。また、ライスワックスは米ぬかロウを精製したものであり、酸価は13以下であることが好ましい。カイガラムシワックスはカイガラムシ(別名イボタロウムシ)の幼虫が分泌する蝋状成分を、例えば、熱湯に溶かし、上層を分離後冷却固化して、あるいはそれを繰り返すことにより得ることができる。このような手段により精製されたカイガラムシワックスは固体状態において白色であり、極めてシャープな融点を示し本発明におけるトナー用ワックスとして適している。精製により酸価は10以下となり、トナー用として好ましいのは5以下である。
【0044】
上記ワックスは単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.3〜40質量部、好ましくは1〜30質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。より好ましくは1〜20質量部である。0.3質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ、40質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり、また、二成分現像方式においてはキャリア表面に付着することによりスペントキャリアが発生し、トナーの帯電特性に悪影響を与えたり、非磁性一成分現像方式においては現像ロールに圧接された層厚規制部材に付着したりすることになる。
【0045】
本発明では必要に応じ帯電制御剤を用いることができる。例えば正帯電制御剤としてニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤としてトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等がある。
【0046】
特に、本発明においては、無色の帯電制御剤を使用するのが望ましく、負の帯電制御剤としてはサリチル酸の金属錯化合物としてオリエント化学社製「ボントロンE−84」、保土ヶ谷化学社製「TN105」、クラリアント社製「N4PVP−2481」、日本カーリット製「LR−147」等が、また、無色の正帯電制御剤としては4級アンモニウム塩構造のTP−302、TP−415、TP−610;(保土谷化学製)、ボントロンP−51;(オリエント化学製)、コピーチャージPSY(クラリアントジャパン)等が好適に用いられる。また、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する正帯電性の樹脂型帯電制御剤としては、「FCA−201−PS」(藤倉化成(株))等が挙げられる。
【0047】
中でも、本発明において特に好適に用いることができる帯電制御剤としては、下記の化合物がある。
【0048】
本発明で好適に使用できる無色の正帯電制御剤としては、下記式1〜式3で表される化合物がある。
【化5】
(式1)
[式中、R1〜R3はCnH2n+1基を表す。但し、nは1〜10の整数を示す。また、R1〜R3は同じであっても異なっていてもよい。]
【0049】
【化6】
(式2)
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22個のアルキル基あるいはアルケニル基、炭素数1〜20個の未置換あるいは置換芳香族基、炭素数7〜20個のアラルキル基を表し、A−はモリブデン酸アニオンあるいはタングステン酸アニオン、モリブデンあるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸アニオンを表す。]
【0050】
【化7】
(式3)
[式中、mは1、2または3を示し、そしてnは0、1または2を示し、Mは水素原子、または1価の金属イオンである。X及びZは1または2を示し、Yは0または1を示す。さらに、X=1の時、Y=1、Z=1となりX=2の時、Y=0、Z=2となる。R5〜R12は水素、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシレン基、一般式(−C2〜5のアルキレン−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるポリアルキルオキシレン基を表し、R1、R2、R3、R4は水素、または、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、または一般式(−CH2−CH2−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるオキシエチル基、更に炭素数5〜12の単核−または多核脂環式残基、単核−または多核芳香族残基または芳香脂肪族残基を表す。]
【0051】
より具体的には以下の各化合物がある。
【0052】
【化8】
化合物(1−1)
【0053】
【化9】
化合物(2−1)
【0054】
【化10】
化合物(2−2)
【0055】
【化11】
化合物(2−3)
【0056】
【化12】
化合物(2−4)
【0057】
【化13】
化合物(2−5)
【0058】
【化14】
化合物(2−6)
【0059】
【化15】
化合物(2−7)
【0060】
【化16】
化合物(2−8)
【0061】
【化17】
化合物(2−9)
【0062】
【化18】
化合物(2−10)
【0063】
【化19】
化合物(2−11)
【0064】
【化20】
化合物(3−1)
【0065】
【化21】
化合物(3−2)
【0066】
上記の帯電制御剤は単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー100質量部中、0.3〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部含有させることにより良好な帯電性能が得られる。
【0067】
本発明のトナーを得るための製造方法は、公知慣用の任意の手段に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と必要に応じてワックス、各種添加剤を樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。本発明の効果をより一層発現させるためには、着色剤を使用するバインダー樹脂の一部に高濃度で分散させて、その後、この分散物を使用するバインダー樹脂に希釈分散させると良い。
【0068】
このように、着色剤を高濃度で予めバインダー樹脂に分散させる工程としては、従来公知の方法、即ち、マスターバッチ法やフラッシング法等を用いることができる。マスターバッチ法は、ニーダーやロールミルを用いて、着色剤を高濃度で樹脂とともに高シェアをかけて混練することにより良好な分散物を得る方法である。フラッシング法は、顔料の含水ペーストとバインダー樹脂とを、加圧ニーダーで加熱混練し、水とバインダー樹脂を置換し、水分を除去しながら高顔料濃度の分散物を得る方法である。
【0069】
この高顔料濃度の分散物におけるバインダー樹脂、及び着色剤の割合は、バインダー樹脂100質量部に対して着色材量が10質量部〜100質量部であるのが好ましい。
【0070】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤とを必須成分として、2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に着色剤が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180℃で10分〜2時間である。
【0071】
また、必要に応じて、微粉砕工程における負荷の軽減及び粉砕効率の向上を目的とした粗粉砕を行う。粗粉砕に使用する装置、条件は特に限定されるものではないが、ロートプレックス、パルペライザー等により3mmメッシュパス以下の粒径に粗粉砕するのが一般的である。
【0072】
次いで、ターボミル、クリプトロン等の機械式粉砕機、渦巻き式ジェットミルカウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル等のエアー式粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。微粉砕、及び分級の装置、条件は所望の粒径、粒径分布、粒子形状になるように選択、設定すれば良い。
【0073】
本発明の赤色トナーを製造する他の方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、あるいは特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0074】
本発明では、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコーン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0075】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0076】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H2000、H1018、H2050EP、HDKH3050EP、HVK2150〔ワッカーケミカルズイーストアジア(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
【0077】
外添剤の粒子径は、トナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0078】
特に非磁性一成分現像用トナーにおいては、粒子径大のものと粒子径小のものとを併用することにより、トナー流動性及び現像耐久性を向上させ、現像機のブレードへの固着及びカブリの防止、ランニング時における帯電の長期安定性等が得られ、好ましい。
【0079】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0080】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0081】
本発明の赤色トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアが用いられる。
【0082】
キャリアのコア剤は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライト等が使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜120μmが好ましい。
【0083】
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリルポリオール樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0084】
本発明の赤色トナーを非磁性一成分現像用トナーとして用いる場合、接触型の非磁性一成分現像用トナーとして用いるのが好ましい。接触型の非磁性一成分現像方法とは、トナーが現像スリーブとそれに圧接された層厚規制部材との間を通過することにより摩擦帯電し、次いで感光体の表面に形成された静電潜像を現像する方法である。
【0085】
この場合、通常の使用条件であれば特に現像装置の帯電付与部材の材質等を限定するものではない。例えばアルミニウム、ステンレス、ウレタンゴム、シリコーンゴム製の現像スリーブ、アルミニウム、ステンレス、ジュラルミン、銅、あるいはそれらにウレタンゴム、シリコーンゴムを貼り合わせた層厚規制部材等が好適に使用できる。
【0086】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例中、「部」は特に明記しない限り「質量部」を表す。
【0087】
<樹脂合成例>
(樹脂R1の合成例)
イソフタル酸 116部
テレフタル酸 166部
無水トリメリット酸 38部
ジエチレングリコール 26部
ネオペンチルグリコール 104部
エチレングリコール 50部
テトラブチルチタネート 2.5部
以上の原料をガラス製2Lの四ツ口フラスコに入れ温度計、攪拌棒及び窒素導入管を取り付け、電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて240℃で10時間反応後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が148℃に達した時反応を終了した。得られた重合体は、無色の固体であり、酸価4、DSC測定法によるガラス転移温度72℃、軟化点は151℃であった。
【0088】
樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0089】
(樹脂R2の合成例)
テレフタル酸 332部
イソフタル酸 ……332部
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン ……700部
トリメチロールプロパン ……80部
エチレングリコール ……75部
テトラブチルチタネート ……3部
上記配合物を攪拌器、コンデンサー、温度計をセットした四つ口フラスコに入れ、窒素ガス気流下、脱水縮合により生成した水を除去しながら、240℃にて10時間常圧で反応させた。その後順次減圧し10mmHgで反応を続行した。反応は軟化点により追跡し、軟化点が151℃に達した時反応を終了した。得られた重合体の軟化点は153℃、酸価は4、DSC測定法によるTgは65℃であった。
【0090】
(樹脂R3の合成例)
スチレン 380部
ブチルメタアクリレート 120部
ジビニルベンゼン 5部
過酸化ベンゾイル 5部
温度計、ガラス製気流導入管、耐真空シール装置付撹拌棒及び水冷ジムロート型コンデンサーを付属した2容量の4つ口丸底フラスコに、キシレン500部と上記モノマー及び開始剤の全量を投入した。ガラス製気流導入管から窒素ガスを導入して反応器内を不活性雰囲気に置換した後、内容物をスライダツク付マントルヒーターにより徐々に加熱して75℃迄上昇せしめた。反応は75℃〜80℃に保ちつつ行なわれ、10〜12時間後に反応を終了せしめるべく温度を130℃迄上昇せしめて重合を完結した。次に水冷コンデンサー及びガラス製気流導入管をフラスコから取除き、かわりに減圧蒸留用のキヤピラリーとクライゼン分溜管を装着した。クライゼン分溜管には温度計と水冷リービツヒコンデンサーを連結し、コンデンサーの排出口は吸引アダプターを経てナス型フラスコへと連結せしめた。吸引アダプターと真空ポンプをマノメーター及びトラップを介して減圧用ゴム管で結び減圧蒸溜の準備を終了した。マントルヒーターを加熱し、内容物を充分に撹拌しつつ真空ポンプを作動させ20mmHg迄減圧すると液温75℃、溜出温度38℃でキシレン或は場合により未反応のモノマーが溜出を始めた。最後は液温180℃に於て0.5mmHg迄減圧して溶剤を完全に除去した。得られた重合体は高温溶融状態のうちにステンレスパンにあけ、室温迄冷却後破砕した。得られた重合体は軟化点143℃、Tg55℃であつた。
【0091】
(実施例1)
<トナーの製造>
・R1の樹脂 95部
・C.I.Pigment Red 48:1 1.9部
・C.I.Pigment Red 269 0.1部
・帯電制御剤3−1 1部
・ワックス カルナウバワックス 2部
(精製カルナバワックスNo.1、酸価5、セラリカNODA(株)製)
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練する。このようにして得た混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.8ミクロンの「外添前トナーA」を得た。
【0092】
・上記「外添前トナーA」 100部
・シリカ 0.5部
(TG820F;キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク製)
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、「トナーA」を得た。
【0093】
<現像剤の調整>
・上記「トナーA」 3部
・キャリア 97部
(シリコーン樹脂を被覆したフェライトキャリア)
を混合攪拌して現像剤Aを調整した。
【0094】
以下同様に表1の配合にてトナーを製造し現像剤A(実施例1)〜現像剤J(実施例10)、及び現像剤K(比較例1)〜現像剤Q(比較例7)を製造した。
【0095】
【表1】
【0096】
エポキシ樹脂 ;エピクロン3050/エピクロン7050=1/9
混合樹脂の軟化点127℃(大日本インキ化学工業(株)製)
PETB ;ペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル
PPWAX;ビスコール550P(三洋化成(製)ポリプロピレンワックス)
P.R.48:1;C.I.PIGMENT RED 48:1
P.R.269;C.I.PIGMENT RED 269
P.R.146;C.I.PIGMENT RED 146
P.R.150;C.I.PIGMENT RED 150
P.R.188;C.I.PIGMENT RED 188
P.B.15:3;C.I.PIGMENT BLUE 15:3
P.Y.180;C.I.PIGMENT YELLOW 180
【0097】
上記実施例及び比較例で得られた現像剤について、定着開始温度、ホットオフセット開始温度、印刷テストを以下の通り行った。
【0098】
(ヒートロール定着・オフセット性能評価)
市販複写機改造機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作成し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、定着開始温度、およびオフセット現象の有無を確認した。
【0099】
上記定着条件にて温度を種々変えて未定着画像の定着実験を行った。定着開始温度は得られた定着後の画像サンプルの擦り定着強度を測定することで求めた。擦り定着強度は次式で計算される擦り定着強度試験残存比率で判定した。画像濃度はマクベス画像濃度計RD−918にて測定した。
擦り定着強度試験残存比率=擦り試験後画像濃度/擦り試験前画像濃度
擦り定着強度としては、残存比率80%以上で実用上問題のないレベルとし、その最低温度を擦り定着開始温度とした。ここで、擦り試験後画像濃度とは、学振型摩擦堅牢度試験機(摩擦子:ワットマン濾紙No.42、荷重:500g、擦り操作:20ストローク)を用いて定着画像に摩擦を加えた後の画像濃度をマクベス画像濃度計で測定したものである。オフセット開始温度は定着画像サンプルを観察し、目視にてオフセット現象が認められる温度とした。結果を表2に示す。
【0100】
(色相及び彩度の測定)
各実施例、比較例のトナーにつき、市販の複写機により、画像の濃度が連続的に変化するグレースケールを原稿として用いることにより、階調性を有する印刷画像を作製した。その印刷画像中で、明度が5になる箇所の色相及び彩度を日本電色製SE−2000で測定した。結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
(印刷テスト1)
市販のレーザービームプリンター(セレン感光体搭載:50m/分の現像速度、A4紙180枚/分の印刷速度に相当)を用いて連続プリントによる印字品質を評価すると共に、現像剤の帯電量を測定した。連続プリント時のトナーの補給はシリカ添加後のトナーをマシンの補給トナー用ホッパーに充填することにより、連続プリント時に自動で行われるようにした。なお、帯電量はブローオフ帯電量測定機で測定した。画像濃度はマクベス濃度計RD−918で測定、地汚れは白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。
【0103】
(トナー飛散量)
50KP(5万枚)印刷後のマシン内部を観察し感光体、現像装置周辺部等に飛散トナーによる汚れがほとんどない場合を○、やや汚れが発生した場合を△、激しい汚れが発生した場合を×とした。
【0104】
以上の評価結果を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表中の表示は次の通り。
【0107】
*「帯電量」; μC/g
*「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
*「トナー飛散」;50KP(5万枚)印刷後の目視観察
○:飛散ほとんどなし
△:やや飛散による汚れが発生
×:激しい飛散が発生
【0108】
(印刷テスト2)
市販のレーザービームプリンター(A4紙10枚/分の印刷速度)を用いて印刷テスト1と同様に1万枚の印字テストを行った。結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
表中の表示は次の通り。
【0111】
*「帯電量」; μC/g
*「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
*「トナー飛散」;50KP(5万枚)印刷後の目視観察
○:飛散ほとんどなし
△:やや飛散による汚れが発生
×:激しい飛散が発生
【0112】
(帯電量の立ち上がりの測定)
前記現像剤A〜Qを直径5cm高さ6cmの円柱型ポリエチレン容器中に入れ、そのポリエチレン容器を115rpmで3分間攪拌した後、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル製)で帯電量を測定した。さらに7分攪拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。結果を表5にまとめる。
【0113】
【表5】
【0114】
【発明の効果】
本発明の赤色トナーによれば、現像装置内でのトナーの飛散が無く、現像剤の使用初期から終了時に至るまで安定した帯電特性を示し、地汚れの無い高品質の印刷画像を得ることができる。また、本発明の赤色トナーは、低速から高速に至る広範囲な速度の静電荷像現像装置において上記の優れた現像特性を示す。
Claims (5)
- バインダー樹脂と着色剤を含有するトナーであって、前記着色剤がC.I.Pigment Red 53:1,53:3,31,146,147,150,170,175,176,185,187,188及び269から選択される1種以上の顔料とC.I.Pigment Red 48:1を含有することを特徴とする赤色トナー。
- 更に帯電制御剤を含有する請求項1記載の赤色トナー。
- 前記帯電制御剤が式1、
[式中、R1〜R3はCnH2n+1基を表す。但し、nは1〜10の整数を示す。また、R1〜R3は同じであっても異なっていてもよい。]
式2、
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22個のアルキル基あるいはアルケニル基、炭素数1〜20個の未置換あるいは置換芳香族基、炭素数7〜20個のアラルキル基を表し、A−はモリブデン酸アニオンあるいはタングステン酸アニオン、モリブデンあるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸アニオンを表す。]
及び式3、
{式中、mは1、2または3を示し、そしてnは0、1または2を示し、Mは水素原子、または1価の金属イオンである。X及びZは1または2を示し、Yは0または1を示す。さらに、X=1の時、Y=1、Z=1となりX=2の時、Y=0、Z=2となる。R1、R2、R3、R4は水素、または、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、または一般式[(−CH2CH2O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)]で表されるオキシエチル基、更に炭素数5〜12の単核または多核脂環式残基、単核または多核芳香族残基あるいは芳香脂肪族残基を表す。R5〜R12は水素、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシレン基、一般式[(−C2〜5のアルキレン−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)]で表されるポリアルキルオキシレン基を表す。}
から選択される1種以上の化合物を含有する請求項2記載の赤色トナー。 - 更に離型剤を含有する請求項1記載の赤色トナー。
- 前記離型剤が高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスである請求項4記載の赤色トナー。
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