JP2011213827A - 高炉用コークスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】目標とするコークス強度を有する高炉用コークスを製造できる高炉用コークスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、石炭試料をX線CT評価方法を用いて評価するとともに、該評価の結果に応じて粒度を調整された石炭をコークス炉に装入することにより高炉用コークスを製造する高炉用コークスの製造方法であって、X線CT評価方法は、X線CTを用いて得られる石炭試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、CT値に対応する密度が下記式で示される閾値以上である石炭試料における領域を、イナート組織として判定し、判定されるイナート組織のうち、絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定し、特定される粗大イナート組織の石炭試料における累積体積比を求めることを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、高炉用コークスの製造方法に関し、特に原料となる石炭の粒度を調整することにより目標とする強度のコークスを製造する、高炉用コークスの製造方法に関する。
一般に、製鉄プロセスにおける還元材、及び、熱源として使用される高炉用コークス(以下、単にコークスともいう)は、複数の銘柄の石炭(原料炭)を、それぞれ粉砕し、所定の割合で配合して配合炭を構成した後、コークス炉に装入して所定時間乾留することにより製造される。
ここで、高炉の安定操業の観点から、コークスには、強度、粒度、気孔率などの品質特性が安定したものが求められている。なかでも目標とするコークス強度(以下、単に強度ともいう)を有するコークスの供給は、特に重要である。コークス強度(DI150 15)は、配合炭の粒度のほか、配合炭を構成する石炭の性状により影響される。なお、ここで、DI150 15は、JIS K 2151で規定されたドラム試験機による150回転後の15mm篩上の割合(−)であり、コークスの強度(ドラム強度ともいう。)を表す指標である。
コークス強度DI150 15に影響する石炭の性状の1つとして、石炭中に存在し、石炭の加熱時に軟化溶融しない不活性成分からなる組織(以下「イナート組織」という。)が知られている。石炭中のイナート組織は、石炭の軟化溶融時に膨張せず、石炭の再固化時に収縮し難い組織であるので、石炭の膨張による石炭粒子間の接着を阻害するとともに、石炭の収縮時に亀裂(クラック)を発生させ、コークス強度を低下させる原因となる。
ところで、本願発明者は、これまでの研究から、全イナート組織の石炭における累積体積比ではなく、絶対最大長さが1.5mm以上である粗大イナート組織(以下、単に粗大イナート組織ともいう)の石炭における累積体積比がコークス強度に大きな影響を与えることを明らかにしており、当該粗大イナート組織に関する知見に基づいて、目標とするコークス強度を有する高炉用コークスの製造方法を提案している(例えば特許文献1)。
特許文献1の高炉用コークスの製造方法にあっては、まず、樹脂が埋め込まれた石炭試料の切断面を顕微鏡で写真撮影し、イナート組織をマーキングする。次に、マーキングされたイナート組織のうち、絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織を特定して、該粗大イナート組織の石炭における累積体積比を算出する。続いて、算出された累積体積比に応じて石炭を粉砕して粒度を調整した後、コークス炉に装入して乾留することによりコークスを得る。当該製造方法によれば、粗大イナート組織の累積体積比を減少させて石炭を乾留しているので、目標とするコークス強度を有する高炉用コークスを得ることができる。
また、このほかに、高強度のコークスを得る方法としては、X線CTを用いて石炭中の微細組織(ビトリニット、イナーチニット、灰分)の含有率を算出する方法も提案されている(例えば特許文献2)。
特開2004−339503号公報 特開2005−338011号公報
高炉操業のさらなる効率化および安定化のために、製造されるコークスの強度が安定していること、すなわち目標の強度を有するコークスを製造できることが求められている。そのため、コークス炉に装入される配合炭から石炭試料をサンプリングし、該試料における粗大イナート組織の累積体積比を測定するとともに、該測定結果に応じて粒度調整を実行することにより粗大イナート組織を低減させることが、コークス強度の安定化を図るとの観点から望ましい。
しかしながら、特許文献1のコークスの製造方法にあっては、石炭試料の樹脂埋め込み、研磨、および顕微鏡を用いた写真撮影に多大な時間を要していた。また、その後に続くイナート組織のマーキングについては、マーキングおよび粗大イナート組織の検出が観測者の判断に委ねられているため、観測者の違いによる誤差が大きく、作業の熟練も必要であることから、さらに多大な時間を要していた。
また、特許文献2に記載された方法は、微細組織成分の比率を測定する方法であり、イナート組織のサイズ分布を測定する方法ではない。
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、目標とする強度のコークスを製造できる高炉用コークスの製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その要旨とするところは
1) 石炭試料をX線CT評価方法を用いて評価するとともに、該評価の結果に応じて粒度を調整された石炭をコークス炉に装入することにより高炉用コークスを製造する高炉用コークスの製造方法であって、
前記X線CT評価方法は、
X線CTを用いて得られる前記石炭試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、
前記CT値に対応する密度が下記式で示される閾値以上である前記石炭試料における領域を、イナート組織として判定し、
判定される前記イナート組織のうち、前記絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定し、
特定される前記粗大イナート組織の前記石炭試料における累積体積比を求めることを特徴とする高炉用コークスの製造方法。

a=0.00875×c−0.00075×TI+0.69011・・・(1)

a:イナート組織判別のための密度の閾値
c:原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(以下、トータルイナートと称す。JIS M 8816に従って測定できる。)(vol.%)

2) 前記X線CT評価方法において、石炭試料のX線CTの撮像領域を500cm以上とすることを特徴とする1)に記載の高炉用コークスの製造方法。
なお、本明細書において、X線CT値評価方法とは、X線CTを用いて、石炭試料における絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比を測定し、石炭試料を評価する方法をいう。また、本明細書において、イナート組織とは、JIS M 8816に規定されている、イナーチニットおよび鉱物質をいい、イナート組織以外の組織は、同じくJIS M 8816に規定されているビトリニットおよびエクジニットをいう。
本発明によれば、X線CT評価方法を用いた石炭試料の評価に基づき、石炭の粉砕粒度を調整した石炭をコークス炉に装入することにより、目標とする強度を有する高炉用コークスの製造法を提供することができる。
顕微鏡により撮像したコークスの切断面の写真である。 X線CTを用いて撮像した石炭試料の断層像である。 密度とCT値との関係を示すグラフである。 石炭試料内部における密度の分布を示すグラフである。 粗大イナート組織を特定した後のX線CTを用いて撮像した石炭試料の断層像である。 原炭中の炭素含有量と、イナート組織と他の組織とを判別するための密度の閾値との関係を示すグラフである。 トータルイナートが30(Vol.%)の石炭における、イナート組織判別のための密度の閾値とX線CT像における密度が前記閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率との関係を示すグラフである。 トータルイナートが40(Vol.%)の石炭における、イナート組織判別のための密度の閾値とX線CT像における密度が前記閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率との関係を示すグラフである。 トータルイナートが20(Vol.%)の石炭における、イナート組織判別のための密度の閾値とX線CT像における密度が前記閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率との関係を示すグラフである。 X線CTを用いたときの石炭試料の撮像領域と、各画像の粗大イナート組織比率の標準偏差との関係を示すグラフである。
まず、本実施形態の高炉用コークスの製造方法について説明する前に、本発明に関する理解をより容易とするために、コークス強度とイナート組織の関係、および本発明者が石炭試料についてのX線CT評価方法を着想するに至った経緯について、詳細に説明する。
一般に、コ−クス強度は、ヤング率等の物性と欠陥によって支配される。しかし、通常の高炉用コークスの製造プロセスで使用する原料炭の炭種や、その配合比率、及び、通常の乾留温度の条件で生成するコークスの基質におけるヤング率等の物性は、大きく変化しないので、コークス強度は、コ−クス中の欠陥により支配されると考えられている。
コークス強度を支配するコークス中の欠陥は、構造上、主として、石炭の軟化膨張時に生じる石炭粒子間の接着不良及び粗大気孔と、その他、主として、再固化後の収縮時に生じるクラックの2種類に大きく分けられる。
石炭の軟化膨張時に生じる石炭粒子間の接着不良は、石炭の軟化および膨張する温度域の400〜500℃において、石炭粒子間の空隙率に対して石炭の膨張率が不足することにより、石炭粒子間の空隙が残存するため生成する。
一方、石炭の再固化した後の収縮時において生成するクラックは、イナート組織とビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織との収縮率の差により、イナート組織の界面に応力が発生するため生成する。
本願発明者のコークス用原料炭を対象とした調査結果によれば、石炭中に存在するビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織の収縮率は12〜16%まで幅があるのに対して、イナート組織の収縮率は、石炭銘柄によらずほぼ10%程度と一定であった。
なお、石炭中のイナート組織の収縮率は、以下の方法で測定することができる。
石炭中のイナート組織は、ビトリニット組織やエグジニット組織など、その他の軟化溶融組織よりも比重が大きいため、重液を用いて比重差により分離することができる。
具体的には、石炭を75μm以下の粒度に微粉砕し、これを、比重:1.5〜1.7g/cm3の塩化亜鉛水溶液の比重液に懸濁させ、その後、遠心沈降分離を行うことでイナートを濃縮する。このイナート濃縮物について、顕微鏡を用いた組織分析により、イナート純度を測定するとともに、例えば、特開2005−232349号公報などに開示される石炭の収縮率の測定方法に従って、イナート濃縮物の収縮率を測定する。
具体的には、イナート濃縮物(試料)を容器内に装入し、電気炉で、石炭を、常温から再固化温度以上の温度T(例えば、T=1000℃)(℃)まで加熱し、再固化温度と温度Tにおける内容物の容積差又は長さ差を再固化温度における容積又は長さで除した値を、イナート濃縮物(試料)の収縮率とする。
再固化温度でのイナート濃縮物(試料)の容積:VR及び長さ:LR、温度Tでのイナート濃縮物(試料)の容積:VT及び長さ:LTとすると、温度Tでのコークス収縮率R(−)は、以下の(a)又は(b)式で定義することができる。
R=(VR−VT)/VR ・・・(a)
R=(LR−LT)/LR ・・・(b)
なお、上記のイナート組織の分離方法で、純度100%のイナート組織が得られない場合は、分離した純度の異なるイナート濃縮物(試料)の収縮率を測定し、これらを基に、外挿法により、純度100%イナート組織の収縮率を求めることができる。
石炭中のビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織の収縮率も、上記の方法で測定される。
次に、コークス中に存在するイナート組織のサイズがコークス強度に及ぼす影響について述べる。
図1に、コークス中に存在するイナート組織と、その周辺の組織の一例(顕微鏡写真)を示す。図1中のイナート組織の絶対最大長さは、2mm程度であるが、イナート組織は、通常、石炭中において、0.1μm〜10mmの幅広い範囲で存在する。
本発明者の検討の結果、コークス強度を大きく低下させる原因となるコークス中のクラックは、絶対最大長さがmmオーダー(1.0mm以上)、特に1.5mm以上の粗大なイナート組織の内部又は周辺に生成する、mmオーダー(1.0mm以上)の大きなクラックであることを確認している(図1、参照。イナート組織の周辺に、クラックが生成している。)。
つまり、グリフィスの破壊条件式(例えば、「J.F.Knott(宮本博訳)、「破壊力学の基礎」、p.107」[培風館(1977)発行]、参照)によれば、大きなクラックは、小さなクラックよりも低い応力で進展・拡大するから、粗大イナート組織の内部又は周辺に生成したmmオーダーの大きなクラックは、コークスが衝撃を受けた時、脆性破壊の起点(欠陥)として作用する。
それ故、mmオーダー(1.0mm以上)、特に1.5mm以上の大きなクラックを多数含むコークスは、著しく強度が低く、容易に粉化してしまう。
本出願人は、以上の知見を踏まえ、石炭試料の評価に基づいて、具体的には石炭試料における絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比と粉砕粒度との関係に基づいて石炭を粉砕することによりコークス強度を高めるコークスの製造方法を、特許文献1で提案した。特許文献1で提案したコークスの製造方法によれば、例えば強度低下の原因となる低品位の非微粘結炭を多量に使用しても、DI150 15で、86〜87程度の強度を有するコークスを安定して製造することができる。
しかしながら、上述のとおり、当該特許文献1の方法では粗大イナート組織の累積体積比を測定できるまでに多大な時間を要する。
ここで、物体の組織分析を行う方法として、X線CT(computerized Tomography)が知られている。X線CTとは、所要の断層を横断する放射線の吸収に関する情報または放射能分布に関する多くの情報を記憶・蓄積し、これらの情報をコンピュータにより再構成して断層像を得る手法である。当該X線CTを用いることができれば、作業者により粗大イナート組織を特定する従来の方法よりも早く組織分析を行うことが可能である。
このため、本発明者は、目的とするコークス強度を有するコークスの製造方法の提供を課題としたとき、該X線CTを用いて石炭試料の評価を行うことを着想した。ここで、イナート組織にあっては、他の組織と比較して密度が高いことが知られている。そのため、本発明者はX線CTにより得られた石炭試料の断層像において該密度の違いに基づきイナート組織と他の組織とを判別することをまず考えた。しかしながらイナート組織や他の組織の密度は石炭化度(原炭の炭素含有量)によっても変化し、その結果イナート組織と他の組織の間の密度の差も石炭化度に応じて変化するため、一義的な閾値を設定することは困難であった。
そこで本発明者は、鋭意研究の結果、原炭中の炭素含有量およびトータルイナートに応じてイナート組織判別のための密度の閾値を設定し、該閾値を基準としてイナート組織と他の組織とを判別可能であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
次に、本実施形態に係る、X線CT評価方法を用いた石炭試料における粗大イナート組織の累積体積比の測定について、説明する。
当該石炭試料の評価にあっては、まず、石炭試料を取得し、X線CTを用いて図2に示すような断層像を撮像し、CT値の空間分布を得る。なお、評価対象とすることができる石炭試料については特に限定されない。例えば、1種類の石炭(単味炭)でもよく、銘柄もしくは性状の異なる複数種の石炭が配合された配合炭も評価対象とすることができる。
また、本発明においては、絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比を求めることを目的としているので、評価の対象となる石炭試料を1mm程度で篩分けし、予め篩上比率を求めた後、その篩上試料のみを用いてX線CT断層像を撮像してもよい。なお、図2に示す石炭粒子は、試料を1mmで篩い分けた篩上試料である。
測定に用いられるX線CT装置については特に限定されず、公知のものを当業者が適宜選択することができ、例えば、R/R方式のX線CTスキャナとすることができる。R/R方式CTスキャナにおいては、X線源とX線源の焦点を指向する円弧状の検出器とが被検体(石炭試料)を挟んで互いに対向する位置に配置されている。X線源からのX線はコリメートされ、扇状のX線ビームを形成し、被検体の撮影断面に照射される。被検体により減弱した透過X線を回転しながら計測することで撮影動作は行われる。回転中の計測動作は0.1〜0.5度程度の角度間隔で行われ、合計1000角度程度投影データを取得する。検出器は多数の検出素子で構成され、それぞれの素子の出力が計測回路によってデジタルデータとして収集され、計測角度毎に素子数分のデータ(ビュー)を構成する。更に、計測データは画像処理装置によって検出素子の特性補正、線質補正やログ変換などの前処理を施された後、フィルタ補正逆投影法などの公知のアルゴリズムによって断層像として再構成される。
ここで、X線CTスキャナを用いた測定において、石炭試料の照射X線の強度I0、透過X線の強度I、および、石炭試料内のX線光路長(試料厚み)Lから、下記(c)式によって求められるX線吸収係数μは、単一波長(単一エネルギー)の場合に、図3に示すように石炭試料の密度(見掛け密度)に比例する。すなわち、X線吸収係数μが高くなるほど、試料の密度も高くなる。なお、図3において、縦軸は、以下に述べる、X線吸収係数μに対応するCT値により表している。

I=I0×exp(−μ・L) ・・・(c)
断層像への再構成においては、一般に、以上に説明したX線吸収係数を、さらに、水(密度=1)のCT値が0、空気(密度≒0)のCT値が−1000となるように、水を基準としたCTの相対値(無次元)とし、コンピュータにより、CT値に応じた256階調(CT=0(空気のCT)〜255)の濃淡(輝度)画像として、石炭試料の断層像を表示する。このとき、石炭試料の断層像は、CT値が高い画素領域で明るく(白)なり、CT値が低い画素領域で暗く(黒)なるように表示される。
ここで、石炭試料のCT値は、以下のようにして、見掛け密度に変換することができる。例えば、図4に示すように、アルミニウム(密度:2.7g/cm3)、アクリル(密度:1.1g/cm3)、水(密度:1g/cm3)などの、密度がわかっているものを校正用試料とし、石炭試料のCT値を測定する前に、予め、校正用試料のCT値CTcと空気のCT値CTairをそれぞれ測定しておくことで、下記(D)式により、石炭試料のCT値を密度に換算することができる。
なお、校正用試料は、特に、特定のものに限られるものではないが、密度のばらつきがなく、取り扱い、および、入手の点から、アルミニウム(密度:2.7g/cm3)が好ましい。

ρz= ρair +(ρc − ρair)/(CTc −CTair)×(CT − CTair)
・・・(D)
ρz:鉱物組織の密度(g/cm3
ρair:空気の密度(=1.3×10-3)(g/cm3
ρc:校正用試料の密度(g/cm3
CT:鉱物組織のCT値
CTair:空気のCT値
CTc:校正用試料のCT値
図4には、CT値の換算により得られる、図2のX線CT像の石炭試料内部における密度の分布を示す。なお、ここではX線CTの撮像において、1画素のサイズは0.03mm、スライス幅は0.09mmとした。
図4中の1.3g/cm付近のピークは、ビトリニットおよびエグジニット組織に相当する。しかしながら、このピークは左右非対称であり、1.4g/cm程度以上の密度の高い領域は、多くがイナート組織に相当する。一般的に、イナート組織は、ビトリニットおよびエグジニット組織に比べて炭素化が進行しているため、高密度である。
また、図4には、絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織とそれ以外の組織に分離した波形を示す。石炭中のイナート組織判別のための密度の閾値は、後述する方法によって1.45g/cmと設定した。なお、図4において、イナート組織の波形に密度1.45g/cm未満の領域が存在するが、この理由は、密度1.45g/cm以上のイナート組織と判別された画素によって周囲を囲まれた密度1.45g/cm以下の領域も、最終的にはイナート組織として扱うためである。
イナート組織判別のための密度の閾値について
図5は、図2に示す石炭試料の断層像について、絶対最大長さが1.5mm以上のイナート組織とそれ以外の組織の部分とに2値化したものである。図5においては、絶対最大長さが1.5mm以上のイナート組織を白色(網掛け)にて表している。ここでは、一例としてイナート組織判別のための密度の閾値を1.45g/cmに設定した。
本実施形態では、X線CTによって得られたCT値の空間分布に基づき、CT値に対応する密度が下記式(1)で示される閾値以上である断層像における領域を、イナート組織として判定する。本実施形態において式(1)は、図6に示すように、原炭中の炭素含有量およびトータルイナートと、イナート組織判別のための密度の閾値との関係を示している。

a=0.00875×c−0.00075×TI+0.69011・・・(1)

a:イナート組織判別のための密度の閾値
c:原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(vol.%)
以下に、式(1)の導出方法について述べる。図7に、トータルイナートが30(Vol.%)の石炭で、かつ石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)、89(wt%−d.a.f.)および92(wt%−d.a.f.)の3種類の石炭について、イナート組織判別のための密度の閾値を1.360(g/cm)、1.420(g/cm)、1.446(g/cm)および1.506(g/cm)と設定し、X線CT像における密度が前記閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率を求めた結果を示す。なお、これら3炭種の石炭について、石炭の樹脂埋め研磨試料の顕微鏡写真のマーキング法によって求めた実際の粗大イナート組織の比率は8.0(Vol.%)であった。
図7より、X線CT法を用いた場合において実際の粗大イナート組織の比率である8.0(vol.%)に対応するイナート組織判別のための閾値の値は、石炭中の炭素含有量が89(wt%−d.a.f.)であれば、1.446(g/cm)であることが理解される。
また、図7に示すように、石炭中の炭素含有量が92(wt%−d.a.f.)であれば、実際の粗大イナート組織の比率である8.0(vol.%)に対応するイナート組織判別のための密度の閾値の値は、1.471(g/cm)となる。同様に、石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)であれば、実際の粗大イナート組織の比率である8.0(vol.%)に対応するイナート組織判別のための密度の閾値の値は1.420(g/cm)となる。
図6中のトータルイナートが30(Vol.%)の場合における原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)とイナート組織判別のための密度の閾値(g/cm)の関係は、各石炭の炭素含有量の値(86、89、92(wt%−d.a.f.))と、実際の粗大イナート組織の比率に対応するイナート組織判別のための密度の閾値(1.420、1.446、1.471(g/cm))をプロットすることによって、得ることができる。
また、図8には、トータルイナートが40(Vol.%)の石炭で、かつ石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)、89(wt%−d.a.f.)および92(wt%−d.a.f.)の3種類の石炭について、イナート組織判別のための密度の閾値とX線CT像における前記密度が閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率との関係を示す。
図8に示すように、トータルイナートが40(Vol.%)の場合、実際の粗大イナート組織の比率である8.0(vol.%)に対応するイナート組織判別のための密度の閾値の値は、石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)であれば1.412(g/cm)、石炭中の炭素含有量が89(wt%−d.a.f.)であれば1.438(g/cm)、石炭中の炭素含有量が92(wt%−d.a.f.)であれば1.464(g/cm)となる。
図6中のトータルイナートが40(Vol.%)の場合における原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)とイナート組織判別のための密度の閾値(g/cm)の関係は、各石炭の炭素含有量の値(86、89、92(wt%−d.a.f.))と、実際の粗大イナート組織の比率に対応するイナート組織判別のための密度の閾値(1.412、1.438、1.464(g/cm))をプロットすることによって、得ることができる。
また、図9には、トータルイナートが20(Vol.%)の石炭で、かつ石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)、89(wt%−d.a.f.)および92(wt%−d.a.f.)の3種類の石炭について、イナート組織判別のための密度の閾値とX線CT像における前記密度が閾値以上でかつ絶対最大長さが1.5mm以上の領域の比率との関係を示す。
図9に示すように、トータルイナートが40(Vol.%)の場合、実際の粗大イナート組織の比率である8.0(Vol.%)に対応する石炭密度の閾値の値は、石炭中の炭素含有量が86(wt%−d.a.f.)であれば1.427(g/cm)、石炭中の炭素含有量が89(wt%−d.a.f.)であれば1.453(g/cm)、石炭中の炭素含有量が92(wt%−d.a.f.)であれば1.479(g/cm)となる。
図6中のトータルイナートが20Vol.%の場合における原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)とイナート組織判別のための密度の閾値(g/cm)の関係は、各石炭の炭素含有量の値(86、89、92(wt%−d.a.f.))と、実際の粗大イナート組織の比率に対応するイナート組織判別のための密度の閾値(1.427、1.453、1.479(g/cm))をプロットすることによって、得ることができる。
すなわち、これら図7〜図9から、本実施形態に係るX線CT評価法においては、石炭中の炭素含有量とトータルイナートとに応じてイナート組織判別のための石炭密度の閾値の値が設定されることにより、粗大イナート組織をより正確に特定できることが理解される。
なお、このように、石炭中の炭素含有量に応じてイナート組織判別のための石炭密度の閾値が変化する理由は、下記の通りである。
石炭のX線CT像においては、イナート組織とそれ以外の組織(例えばビトリニット由来の組織)の境界において、両方の組織が混在する画素が存在する。
石炭中の炭素含有量が上昇するにともない、イナート組織の密度の変化は小さいが、ビトリニット組織の密度は上昇するため、両方の組織が混在する画素では、その画素中の真のイナート組織の割合が同じであっても、画素の密度は上昇する。そのため、仮に、ある炭素含有量の石炭についてのX線CT評価において石炭中の炭素含有量がより低い石炭と同じ閾値を用いたとすると、両方の組織が混在する画素はイナート組織として判別される確率が高くなる。そして、その結果、粗大イナート組織の比率は、実際の値より高めに測定されてしまう。
よって、本実施形態に係るX線CT評価法においては、石炭中の炭素含有量に応じてイナート組織判別のための密度の閾値の設定を変える。例えば、図7〜9に示すように、石炭中の炭素含有量が増加した場合は、当該閾値の設定値を高くする。
また、トータルイナートに応じてイナート組織判別のための密度の閾値の設定を変化させる理由は、下記の通りである。
一般的に、イナート組織は、ビトリニット組織に比べて炭素含有量が高く、密度も高い。そのため、石炭中の炭素含有量が同じ場合は、トータルイナートが低い石炭ほど、イナート組織以外の組織であるビトリニット組織の炭素含有量が高くなり、密度が高くなる。
よって、仮に、トータルイナートが低い石炭において、イナート組織判別のための密度の閾値としてトータルイナートが高い石炭と同じ密度の閾値を用いた場合、両方の組織が混在する画素はイナート組織として判別される確率が高くなる。そして、その結果、粗大イナート組織の比率は、実際の値より高めに測定されてしまう。
よって、本実施形態に係るX線CT評価法においてはトータルイナートに応じてイナート組織判別のための密度の閾値の設定を変化させ、例えば、図7〜9に示すように、トータルイナートの低下に伴い、当該閾値を高く設定する。
本発明における前記(1)式は、図6に示される、炭素含有量およびトータルイナートの異なる複数の石炭のX線CT画像から求められた、各石炭の炭素含有量の値と、実際の粗大イナート組織の比率に対応するイナート組織判別のための密度の閾値の関係グラフから導出される。具体的には、図6に示される、原炭中の炭素含有量(82、86、89、92、94(wt%−d.a.f.))およびトータルイナート(20、30、40(Vol.%))の異なる15点から、石炭の炭素含有量およびトータルイナートとイナート組織判別のための密度の閾値との関係を回帰分析によって求めた。
撮像条件について
なお、本実施形態に係るX線評価法において、X線CT像の1画素のサイズ、スライス幅に関しては特に規定はしないが、いずれも0.01〜0.1mmとすることが好ましい。0.1mm以下とすることで、1画素の中にイナート組織とそれ以外の組織が混在する確率を0.1mm超である場合より小さくすることができ、密度差による判別をより容易に行うことができる。一方、0.01mm以上とすることで、0.01mm未満である場合よりも撮像領域を広くすることができるため、mmオーダーの粗粒子の測定が容易となる。
次に、イナート組織であると判定された領域の絶対最大長さを測定することにより、絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定する。なお、本明細書におけるイナート組織の絶対最大長さとは、1つのイナート組織における境界上の任意の2点間を直線で結んだときの最も長い長さをいう。また、絶対最大長さは、例えば、X線CTを用いて得られる断層像の解析に通常に使用されている画像解析ソフトを、図5にて例示した二値化処理を行った断層像に対して用いることにより測定することができる。
さらに、イナート組織判別の石炭密度の閾値以上の画素によって周囲を囲まれた密度が閾値未満の領域についても、粗大イナート組織として判定する。この操作は、通常に使用されている画像解析ソフトを用いて可能である。
イナート組織判別のための密度の閾値以上の画素によって周囲を囲まれた密度が閾値未満の領域についても、粗大イナート組織として判定する理由は、下記の通りである。
イナート組織周辺に生成するクラックのサイズは、イナート組織の絶対最大長さに比例し、イナート組織によって周囲を囲まれたイナート組織以外の組織(例えば、ビトリニット組織等)には影響されない。このため、イナート組織判別のための密度の閾値以上の粗大イナート組織に囲まれたそれ以外の密度が閾値未満の組織については、イナート組織の一部として判定する。
次いで、粗大イナート組織として特定された組織について、累積体積比を算出する。当該累積体積比は、以下の式(E)で示されるように、石炭粒子間の空隙の体積Vpを除いた断層像全領域の体積における、粗大イナート組織が占める体積Viの割合X(%)を求めることにより算出することができる。なお、以下の式を用いた累積体積比の算出は、上述の絶対最大長さと同様に、X線CTを用いて得られる断層像の解析に通常に使用されている画像解析ソフトにより測定することができる。

X(%)=Vi/(100−Vp)×100 ・・・(E)
撮像領域について
次にX線CTの撮像領域について述べる。図10は、石炭試料の撮像領域と絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の撮像領域における累積体積比の標準偏差との関係を示すグラフである。なお、図9の横軸の石炭試料の撮像領域とは、X線CT像1枚毎に石炭試料の領域の面積を求め、それらを合計した値である。よって、石炭試料の撮像領域は、撮像枚数に比例する。図9の縦軸の標準偏差とは、X線CT像1枚毎に絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織を測定し、画像間で絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の比率の標準偏差を取ったものである。
図10からは、撮像領域を大きくすることにより粗大イナート組織の累積体積比の標準偏差が減少していくが、500cm以上の撮像領域とするときは該標準偏差の減少が小さいことが理解される。よって、石炭試料の撮像領域は、500cm以上であることが好ましい。
続いて、本実施形態の高炉用コークスの製造方法について、説明する。なお、X線CT評価方法については記載が重複するため、説明を省略する。
通常、高炉用コークスを製造する過程においては、銘柄または性状の異なる石炭を個別に粉砕した後、配合する。あるいは、銘柄または性状の異なる石炭を数グループに分け、グループ別に粉砕した後、その後配合する。
前者の場合は、粉砕後の個別の石炭試料を無作為抽出によりサンプリングし、後者の場合は、グループ別に粉砕した後の石炭試料を無作為抽出によりサンプリングする。いずれの場合においても、該石炭試料における粗大イナート組織の累積体積比率を算出する
その後、各石炭試料における粗大イナート組織の累積体積比率を、配合比率で加重平均することにより、配合炭における粗大イナート組織の累積体積比を算出する。
次に、測定された配合炭中の粗大イナート組織の累積体積比に応じて、石炭毎あるいは石炭グループ毎の粒度調整を実施する。例えば、配合炭試料において測定された粗大イナート組織の累積体積値が所定の基準値以上である場合、該粗大イナート組織の累積体積比が基準値以下となるように、石炭の粉砕粒度の調整を実施する。
ここで、粗大イナート組織の累積体積比の基準値は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、例えば、特許文献1である特開2004−339503号公報に基づいて設定される粗大イナート組織の基準値を採用することができる。当該方法においては、粉砕によるDI変化(ΔDI150/15)が急激に大きくなる累積体積比の境界値を予め求めておき、該境界値を基準値として、累積体積比が該基準値以下となるように、石炭を粉砕する。なお、当該方法は公知であり、詳細な説明は省略するが、累積体積比の境界値は、6.7mm以上の粒径を有する石炭の割合が10%のときと6.7mm以上の粒径を有する石炭の割合が3%のときとの各コークスのコークス強度(DI)の差(ΔDI150/15)と、粗大イナート組織の累積体積比との関係から求めることができる。また、特開2004−339503号公報ではmmオーバーのものを粗大イナート組織として定義しているが、絶対最大長さが1.5mm以上のものを粗大イナート組織として定義する本明細書においても、同様にΔDI150/15と粗大イナート組織の累積体積比の関係から境界値を求めることができる。
このように特開2004−339503号公報の方法を適用する場合、本実施形態においては、粉砕される石炭の粗大イナート組織の累積体積比が基準値以下となっていればよく、粉砕の詳細な条件については、当業者が適宜選択することができる。
例えば、粒度調整の際に用いられる粉砕機も特に限定されず、速度可変型のハンマークラッシャーを用いることができ、該ハンマークラッシャーにおける粉砕条件の設定についても、当業者が適宜設定することができる。このとき絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比に応じて粉砕強度を変えることができる。具体的には、粗大イナート組織の累積体積比が基準値よりも比較的大きい場合には粉砕強度を高く設定して石炭を強粉砕し、また、上記累積体積比が基準値に比較的近い値である場合には、粉砕強度を低く設定して石炭を弱粉砕する。
続いて、粉砕した石炭を他の石炭と配合して配合炭を構成し、コークス炉に装入する。コークス炉に装入する配合炭については、乾燥設備によって水分を低下させた後、コークス炉に装入してもよい。また、配合炭を粗粒の石炭と微粒の石炭に分級し、微粒の石炭については混合してより大きな径を有する粒状に成型し、続いて、粒状に成型した石炭と、粗粒の石炭(または粗粒の石炭の残部)とを混合して配合炭を構成してもよい。この成型においては、粗粒の石炭の一部も混合するようにしてもよい。続いて、粒状に成型した石炭と、粗粒の石炭(または粗粒の石炭の残部)とを混合して配合炭を構成する。
そして、該配合炭をコークス炉に装入し、乾留して高炉用コークスを得る。このとき、コークス炉における乾留条件は、通常の乾留条件の範囲内で当業者が適宜調整して採用すればよい。
なお、理解を容易とするために以上の説明においては省略したが、配合炭に含まれる各銘柄の石炭から石炭試料をサンプリングし、該石炭試料における粉砕粒度と粗大イナート組織の累積体積比の関係を予め求めておくとともに、目標とする該粗大イナート組織の累積体積比に応じて各石炭の粒度を調整してから配合炭を構成することが好ましい。これにより、目標のコークス強度を有する高炉用コークスをより容易に製造することができる。なお、各石炭について粉砕するか否かの判定は、例えば上述した特開2004−339503号公報に記載の粗大イナート組織の累積体積比の境界値を基に行うことができる。また、各銘柄の石炭について粗大イナート組織の累積体積比をデータベース化し、該データベースに基づき石炭の粒度調整を行うことも、もちろん可能である。
以上、本実施形態の高炉用コークスの製造方法によれば、石炭試料の粗大イナート組織の累積体積比をX線CTを用いて測定するX線CT評価方法を用いることにより、粗大イナート組織の累積体積比の測定に要する時間を大幅に短縮することができる。したがって、目的の強度を有するコークスを容易に製造することができる。
(実施例1−1)
表1に示すような粉砕後の石炭試料について、X線CTを用いたイナート組織の累積体積比の算出を行った。なお、コークス強度は、実機コークス炉をシミュレートすることができる試験用コークス炉を用いて石炭試料を乾留することによりコークスを得て、JIS K 2151に従い測定した。また、原炭中の炭素含有量はJIS M 8813に従い測定した。また、トータルイナートは、JIS M 8816に従って測定した。
このとき、X線CTスキャナは東芝製TOSCANER−32250μhdを用い、また、断層像の解析ソフトは三谷商事製Win Roofを用いた。石炭試料は、内径20mmの大きさのプラスチック容器にいれて撮像に供した。また、X線CTスキャナは管電圧180kV、管電流70mA、解像度(1画素のサイズ)0.03mm、スライス幅0.09mm、および撮像領域を500cmと設定して250枚(1画像当たり2cm)の断層像を撮影し、石炭試料におけるCT値の空間分布を得た。
表2に、各炭種のイナート組織判別のための密度の閾値、閾値に対応するCT値、炭種毎の粗大イナート組織の累積体積比率、および配合炭の粗大イナート組織の累積体積比率を示す。
まず、イナート組織とその他の組織とを区別するための石炭密度の閾値は、上記のようにして測定した石炭試料の炭素含有量、および原炭中におけるイナート組織の割合から、式(1)により算出し、さらにこの閾値に対応するCT値を算出した。
次に、各炭種のCT像から得られたCT値の空間分布と閾値に対応するCT値を基準にイナート組織と他の組織部分とを判別した。
続いて、イナート組織と判別された組織について絶対最大長さの測定を行い、絶対最大長さが1.5mm以上である粗大イナート組織を特定し、さらにイナート組織として判別された画素によって周囲を囲まれた密度が閾値未満の領域を塗りつぶして、粗大イナート組織として判定し、該粗大イナート組織の石炭試料における累積体積比を式(E)に基づき算出した。なお、絶対最大長さは、1つのイナート組織における境界上の任意の2点間を直線で結んだときの最も長い長さをいう
最後に、炭種毎に求めた粗大イナート組織の累積体積比を配合比率で加重平均し、配合炭の粗大イナート組織の累積体積比率を算出した。表2にその結果を示す。
(実施例1−2)
実施例1−1とは銘柄が異なる石炭を試料とし、実施例1−1と同様の方法で粗大イナート組織の石炭試料における累積体積比を算出した。
(比較例1−1)
実施例1−1で用いた石炭試料について、特許文献1に記載された顕微鏡写真の画像解析法を用い、粗大イナート組織の累積体積比を算出した。
具体的にはまず、石炭を樹脂を埋め込み、その切断面を、顕微鏡で写真撮影した。このとき、撮影領域を500cmとし、1画像当たり2.5cmの画像を200枚撮影した。次に、切断面写真におけるイナート組織をマーキングすることにより、イナート組織と他の組織と区別した。
続いて、画像解析ソフトを用い、絶対最大長さが1.5mm以上のマーキング領域(累積面積)が切断面写真の全領域(面積)に占める割合Si(%)を計測し、該Siが粒子間空隙の部分の領域Sp(累積面積)を除いた切断写真の全領域における割合を算出して(下記式(f))、累積体積比を求めた。なお、粒子間空隙の部分の領域Spは、切断面写真において、コンピュータ画像処理にて石炭粒子を白、粒子間空隙を黒に処理して(石炭粒子と気孔を二値化)、該二値化画像を解析することにより求めている。また、通常、2次元断面における面積比は、3次元空間における体積比と扱うことができるため、粗大イナート組織の2次元断面における面積比を、粗大イナート組織の累積体積比として扱うことができる。

X(面積比)=Si/(100−Sp)×100 ・・・(f)
(比較例1−2)
比較例1−1と同様の方法で、実施例1−2の石炭試料における粗大イナート組織の累積体積比を算出した。
表3に実施例および比較例の粗大イナート組織の累積体積比の算出に要した時間を示す。
表1および表2に示すように、実施例1−1および1−2は、従来の方法と同等、またはそれ以上の精度でイナート組織の累積体積を測定することができ、また、表3に示すように測定に要する時間を大幅に短縮することができた。
このように粗大イナート組織の累積体積比の測定時間が短縮されたため、粗大イナート組織の累積体積比の測定結果に基づき、目標とする粗大イナート組織の累積体積比率となるように、石炭の粒度調整を実施した。
実施例1−1では、目標とするDI強度向上幅を0.3ポイントと設定し、特許文献1の図2に基づき、粗大イナート組織の累積体積比の基準値を2.2%と設定した(粗大イナート組織の累積体積比の低下代は2.0%)。そして、粗大イナート組織の累積体積比を基準値に到達させるため、粉砕後の石炭の+6.7mmの粒子割合を低減し、粉砕後の石炭をコークス炉に装入した。
また、実施例1−2では、目標とするDI強度向上幅を0.4ポイントと設定し、特許文献1の図2に基づき粗大イナート組織の累積体積比の基準値を3.4%と設定した(粗大イナート組織の累積体積比の低下代は2.7%)。実施例1−1と同様に、粗大イナート組織の累積体積比を基準値に到達させるため、粉砕後の石炭の+6.7mmの粒子割合を調整し、その後、粉砕後の石炭をコークス炉に装入した。
その結果、コークス炉にて乾留して得られたコークスの強度DI150 15は、実施例1−1では86.5、実施例1−2では85.8であった。一方、粗大イナート組織の累積体積比の測定結果をフィードバックする前のDI150 15は、表2より、それぞれ86.2、85.4であるので、実施例により、コークス強度を高めることができた。

Claims (2)

  1. 石炭試料をX線CT評価方法を用いて評価するとともに、該評価の結果に応じて粒度を調整された石炭をコークス炉に装入することにより高炉用コークスを製造する高炉用コークスの製造方法であって、
    前記X線CT評価方法は、
    X線CTを用いて得られる前記石炭試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、
    前記CT値に対応する見掛け密度が下記式で示される閾値以上である前記石炭試料における領域を、イナート組織として判定し、
    判定される前記イナート組織のうち、前記絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定し、
    特定される前記粗大イナート組織の前記石炭試料における累積体積比を求めることを特徴とする高炉用コークスの製造方法。

    a=0.00875×c−0.00075×TI+0.69011・・・(1)

    a:イナート組織判別のための密度の閾値
    c:原炭中の炭素含有量(wt%−d.a.f.)
    TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(vol.%)
  2. 前記X線CT評価方法において、石炭試料のX線CTの撮像領域を500cm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の高炉用コークスの製造方法。
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