JP5560757B2 - 高炉用コークスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、高炉用コークスの製造方法に関し、特に原料となる石炭の粒度を調整することにより目標とする強度のコークスを製造する、高炉用コークスの製造方法に関する。
一般に、製鉄プロセスにおける還元材、及び、熱源として使用される高炉用コークス(以下、単にコークスともいう)は、複数の銘柄の石炭(原料炭)を、それぞれ粉砕し、所定の割合で配合して配合炭を構成した後、コークス炉に装入して所定時間乾留することにより製造される。
ここで、高炉の安定操業の観点から、コークスには、強度、粒度、気孔率などの品質特性が安定したものが求められている。なかでも目標とする強度を有するコークスの供給は、特に重要である。コークス強度(DI150 15)は、配合炭の粒度のほか、配合炭を構成する石炭の性状により影響される。なお、ここで、DI150 15は、JIS K 2151で規定されたドラム試験機による150回転後の15mm篩上の割合(−)であり、コークスの強度(ドラム強度ともいう。)を表す指標である。
コークス強度DI150 15に影響する石炭の性状の1つとして、石炭中に存在し、石炭の加熱時に軟化溶融しない不活性成分からなる組織(以下「イナート組織」という。)が知られている。石炭中のイナート組織は、石炭の軟化溶融時に膨張せず、石炭の再固化時に収縮し難い組織であるので、石炭の膨張による石炭粒子間の接着を阻害するとともに、石炭の収縮時に亀裂(クラック)を発生させ、コークス強度を低下させる原因となる。
ところで、本願発明者は、これまでの研究から、全イナート組織の石炭における累積体積比ではなく、絶対最大長さが1.5mm以上である粗大イナート組織(以下、単に粗大イナート組織ともいう)の石炭における累積体積比がコークス強度に大きな影響を与えることを明らかにしており、当該粗大イナート組織に関する知見に基づいて、目標とするコークス強度を有する高炉用コークスの製造方法を提案している(例えば特許文献1)。
特許文献1の高炉用コークスの製造方法にあっては、まず、乾留して得たコークス試料の樹脂が埋め込まれた切断面を顕微鏡で写真撮影し、イナート組織をマーキングする。次に、マーキングされたイナート組織のうち、絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織を特定して、該粗大イナート組織の石炭における累積体積比を算出する。続いて、算出された累積体積比に応じて石炭を粉砕して粒度を調整した後、コークス炉に装入して乾留することによりコークスを得る。当該製造方法によれば、粗大イナート組織の累積体積比を減少させて石炭を乾留しているので、目標とするコークス強度を有する高炉用コークスを得ることができる。
また、このほかに、高強度のコークスを得る方法としては、X線CTを用いて石炭中の微細組織(ビトリニット、イナーチニット、灰分)の含有率を算出する方法も提案されている(例えば特許文献2)。
特開2004−339503号公報 特開2005−338011号公報
高炉操業のさらなる効率化および安定化のために、製造されるコークスの強度が安定していること、すなわち目標の強度を有するコークスを製造できることが求められている。ここで、コークスの製造過程においては、通常、石炭をコークス炉に装入してから、乾留後のコークスを押出し、その直後に再度石炭を装入するまでの間に、20時間程度のインターバルが存在する(以下、単にインターバルとも称す)。そのため、当該インターバルを利用して製造したコークスの粗大イナート組織の累積体積比を算出し、該累積体積比に応じて粒度調整を実施することにより配合炭の粗大イナート組織を低減させることが(いわゆる、測定結果のフィードバック)、目標の強度を有するコークスを製造する観点から、望ましい。
しかしながら、特許文献1のコークスの製造方法にあっては、コークス試料の切断、樹脂埋め込み、および顕微鏡を用いた写真撮影に多大な時間を要していた。また、その後に続くイナート組織のマーキングについては、マーキングおよび粗大イナート組織の検出が観測者の判断に委ねられているため、観測者の違いによる誤差が大きく、作業の熟練も必要であることから、さらに多大な時間を要していた。
よって、特許文献1の方法を適用した場合には、上記インターバル以内に測定結果をフィードバックすることが、現実には困難であり、目標の強度に調整するためには、多大な時間を要していた。
また、特許文献2に記載された方法は、微細組織成分の比率を測定する方法であり、イナート組織のサイズ分布を測定する方法ではない。
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、目標とする強度のコークスを製造できる高炉用コークスの製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その要旨とするところは
1)コークス試料をX線CT評価方法を用いて評価するとともに、該評価の結果に応じて粒度を調整された石炭をコークス炉に装入することにより高炉用コークスを製造する高炉用コークスの製造方法であって、
X線CT評価方法は、
X線CTを用いて得られる前記コークス試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、
CT値に対応する見掛け密度が下記式で示される閾値以上であるコークス試料における領域を、イナート組織として判定し、
判定されるイナート組織のうち、絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定し、
特定される粗大イナート組織のコークス試料における累積体積比を求めるものであり、
求められた累積体積比が基準値以下となるように、石炭を粉砕して前記コークス炉に装入する石炭の粒度を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。

a=0.8140×b+0.4789・・・(1)

a: ナート組織判別のための見掛け密度の閾値
b: コークス試料の全体の見掛け密度

2)X線CT評価方法において、X線CT像の1画素のサイズを0.3〜1.0mmに設定して前記X線CTを用いることを特徴とする1)に記載の高炉用コークスの製造方法。
3)X線CT評価方法において、コークス試料のX線CTの撮像領域を500cm以上とすることを特徴とする1)または2)に記載の高炉用コークスの製造方法。
なお、本明細書において、X線CT値評価方法とは、X線CTを用いてコークス試料の評価を行うことをいい、具体的にはX線CTを用いてコークス試料における絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比を算出することにより、コークス試料を評価することをいう。また、本明細書において、コークス中のイナート組織とは、JIS M 8816に規定されている、石炭中のイナーチニットおよび灰分由来の組織をいい、コークス中のイナート組織以外の組織は、同じくJIS M 8816に規定されている石炭中のビトリニットおよびエクジニット由来の組織をいう。
本発明によれば、X線CT評価方法を用いたコークス試料の評価に基づき、石炭の粒度を調整した石炭をコークス炉に装入することにより、目標とする強度のコークスを有する高炉用コークスの製造法を提供することができる。
顕微鏡により撮像したコークス試料の切断面の写真である。 X線CTを用いて撮像したコークス試料の断層像である。 密度とCT値との関係を示すグラフである。 コークス試料内部における見掛け密度の分布を示すグラフである。 コークス試料の断層像について、ナート組織とナート組織以外の組織の部分とに二値化処理したものである。 コークス試料全体の平均見掛け密度と、ナート組織と他の組織とを判別するための閾値との関係を示すグラフである。 イナート組織を判別するための見掛け密度の閾値と粗大イナート組織として判別された領域の比率との関係を示したグラフである。 X線CT像の1画素のサイズと粗大イナート組織として判別された領域の比率との関係を示したグラフである。 X線CTを用いたときのコークス試料の撮像領域と、粗大イナート組織の断層像における比率の標準偏差との関係を示すグラフである。
まず、本実施形態の高炉用コークスの製造方法について説明する前に、本発明に関する理解をより容易とするために、イナート組織とコークス強度との関係、および本願発明者がコークス試料についてのX線CT評価方法を着想するに至った経緯について、詳細に説明する。
一般に、コ−クス強度は、ヤング率等の物性と欠陥によって支配される。しかし、通常の高炉用コークスの製造プロセスで使用する原料炭の炭種や、その配合比率、及び、通常の乾留温度の条件で生成するコークスの基質におけるヤング率等の物性は、大きく変化しないので、コークス強度は、コ−クス中の欠陥により支配されると考えられている。
コークス強度を支配するコークス中の欠陥は、構造上、主として、石炭の軟化膨張時に生じる石炭粒子間の接着不良と、その他、主として、再固化後の収縮時に生じるクラックの2種類に大きく分けられる。
石炭の軟化膨張時に生じる石炭粒子間の接着不良は、石炭の軟化および膨張する温度域の400〜500℃において、石炭粒子間の空隙率に対して石炭の膨張性が不足することにより、石炭粒子間の空隙が残存するため生成する。
一方、石炭の再固化した後の収縮時において生成するクラックは、イナート組織とビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織との収縮率の差により、イナート組織の界面に応力が発生するため生成する。
本願発明者のコークス用原料炭を対象とした調査結果によれば、石炭中に存在するビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織の収縮率は12〜16%まで幅があるのに対して、イナート組織の収縮率は、石炭銘柄によらずほぼ10%程度と一定であった。
なお、石炭中のイナート組織の収縮率は、以下の方法で測定することができる。
石炭中のイナート組織は、ビトリニット組織やエグジニット組織など、その他の軟化溶融組織よりも比重が大きいため、重液を用いて比重差により分離することができる。
具体的には、石炭を75μm以下の粒度に微粉砕し、これを、比重:1.5〜1.7g/cmの塩化亜鉛水溶液の比重液に懸濁させ、その後、遠心沈降分離を行うことでイナートを濃縮する。このイナート濃縮物について、顕微鏡を用いた組織分析により、イナート純度を測定するとともに、例えば、特開2005−232349号公報などに開示される石炭の収縮率の測定方法に従って、イナート濃縮物の収縮率を測定する。
具体的には、イナート濃縮物(試料)を容器内に装入し、電気炉で、石炭を、常温から再固化温度以上の温度T(例えば、T=1000℃)(℃)まで加熱し、再固化温度と温度Tにおける内容物の容積差又は長さ差を再固化温度における容積又は長さで除した値を、イナート濃縮物(試料)の収縮率とする。
再固化温度でのイナート濃縮物(試料)の容積:VR及び長さ:LR、温度Tでのイナート濃縮物(試料)の容積:VT及び長さ:LTとすると、温度Tでのコークス収縮率R(−)は、以下の(a)又は(b)式で定義することができる。
R=(VR−VT)/VR ・・・(a)
R=(LR−LT)/LR ・・・(b)
なお、上記のイナート組織の分離方法で、純度100%のイナート組織が得られない場合は、分離した純度の異なるイナート濃縮物(試料)の収縮率を測定し、これらを基に、外挿法により、純度100%イナート組織の収縮率を求めることができる。
石炭中のビトリニット組織やエグジニット組織などの軟化溶融組織の収縮率も、上記の方法で測定される。
次に、コークス中に存在するイナート組織のサイズがコークス強度に及ぼす影響について述べる。
図1に、コークス中に存在するイナート組織と、その周辺の組織の一例(顕微鏡写真)を示す。図1中のイナート組織の絶対最大長さは2mm程度であるが、イナート組織は、通常、粉砕後の石炭中において、0.1μm〜10mmの幅広い範囲で存在する。
本願発明者の検討の結果、コークス強度を大きく低下させる原因となるコークス中のクラックは、絶対最大長さがmmオーダー(1.0mm以上)、特に1.5mm以上の粗大なイナート組織の内部又は周辺に生成する、mmオーダー(1.0mm以上)の大きなクラックであることを確認している(図1、参照。イナート組織の周辺に、クラックが生成している。)。
つまり、グリフィスの破壊条件式(例えば、「J.F.Knott(宮本博訳)、「破壊力学の基礎」、p.107」[培風館(1977)発行]、参照)によれば、大きなクラックは、小さなクラックよりも低い応力で進展・拡大するから、粗大イナート組織の内部又は周辺に生成したmmオーダーの大きなクラックは、コークスが衝撃を受けた時、脆性破壊の起点(欠陥)として作用する。
それ故、mmオーダー(1.0mm以上)、特に1.5mm以上の大きなクラックを多数含むコークスは、著しく強度が低く、容易に粉化してしまう。
本出願人は、以上の知見を踏まえ、コークス試料の評価に基づいて、具体的にはコークス試料における絶対最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織の累積体積比と粉砕粒度との関係に基づいて石炭を粉砕することによりコークス強度を高めるコークスの製造方法を、特許文献1で提案した。特許文献1で提案したコークスの製造方法によれば、例えば強度低下の原因となる低品位の非微粘結炭を多量に使用しても、DI150 15で、86〜87程度の強度を有するコークスを製造することができる。
しかしながら、上述のとおり、当該特許文献1の方法では粗大イナート組織の累積体積比を得ることができるまでに多大な時間を必要としており、コークス製造のインターバルの間に当該方法を適用するのは、現実には困難であった。
ここで、物体の組織分析を行う方法として、X線CT(computerized Tomography)が知られている。X線CTとは、所要の断層を横断する放射線の吸収に関する情報または放射能分布に関する多くの情報を記憶・蓄積し、これらの情報をコンピュータにより再構成して断層像を得る手法である。当該X線CTを用いることができれば、作業者により粗大イナート組織を特定する従来の方法よりも早く組織分析を行うことが可能である。
このため、本願発明者は目標とする強度を有するコークスの製造方法の提供を課題としたとき、該X線CTを用いてコークス試料の評価を行うことを着想した。そして、鋭意研究の結果、コークス試料においてイナート組織と他の組織との間の見掛け密度の差が乾留前に比して大きいこと、および見掛け密度を基準としてイナート組織とその他の組織を判別可能であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
次に、本実施形態に係る、X線CT評価方法を用いたコークス試料における粗大イナート組織の累積体積比の算出について、説明する。
当該コークス試料の評価にあっては、まず、コークス試料を取得し、X線CTを用いて図2に示すような断層像を撮像し、CT値の空間分布を得る。なお、コークス試料の原料炭については特に限定されない。例えば、1種の石炭(単味炭)から製造されたコークスをコークス試料としてもよく、また、銘柄若しくは性状の異なる複数種の石炭が配合された配合炭から製造されたコークスをコークス試料とすることもできる。
測定に用いられるX線CT装置については特に限定されず、公知のものを当業者が適宜選択することができ、例えば、R/R方式のX線CTスキャナとすることができる。R/R方式CTスキャナにおいては、X線源とX線源の焦点を指向する円弧状の検出器とが被検体(コークス試料)を挟んで互いに対向する位置に配置されている。X線源からのX線はコリメートされ、扇状のX線ビームを形成し、被検体の撮影断面に照射される。被検体により減弱した透過X線を回転しながら計測することで撮影動作は行われる。回転中の計測動作は0.1〜0.5度程度の角度間隔で行われ、合計1000角度程度投影データを取得する。検出器は多数の検出素子で構成され、それぞれの素子の出力が計測回路によってデジタルデータとして収集され、計測角度毎に素子数分のデータ(ビュー)を構成する。更に、計測データは画像処理装置によって検出素子の特性補正、線質補正やログ変換などの前処理を施された後、フィルタ補正逆投影法などの公知のアルゴリズムによって断層像として再構成される。
ここで、X線CTスキャナを用いた測定において、コークス試料の照射X線の強度I、透過X線の強度I、および、コークス試料内のX線光路長(試料厚み)Lから、下記(c)式によって求められるX線吸収係数μは、単一波長(単一エネルギー)の場合に、図3に示すようにコークス試料の密度(見掛け密度)に比例する。すなわち、X線吸収係数μが高くなるほど、試料の密度も高くなる。なお、図3において、縦軸は、以下に述べる、X線吸収係数μに対応するCT値により表している。

I=I×exp(−μ・L) ・・・(c)
断層像への再構成においては、一般に、以上に説明したX線吸収係数を、さらに、水(密度=1)のCT値が0、空気(密度≒0)のCT値が−1000となるように、水を基準としたCTの相対値(無次元)とし、コンピュータにより、CT値に応じた256階調(CT=0(空気のCT)〜255)の濃淡(輝度)画像として、コークス試料の断層像を表示する。このとき、コークス試料の断層像は、CT値が高い画素領域で明るく(白)なり、CT値が低い画素領域で暗く(黒)なるように表示される。
ここで、コークス試料のCT値は、以下のようにして、見掛け密度に変換することができる。例えば、図3に示すように、アルミニウム(密度:2.7g/cm)、アクリル(密度:1.1g/cm)、水(密度:1g/cm)などの、密度がわかっているものを校正用試料とし、コークス試料のCT値を測定する前に、予め、校正用試料のCT値CTcと空気のCT値CTairを、それぞれ測定しておくことで、下記(D)式により、コークス試料のCT値を密度に換算することができる。
なお、校正用試料は、特に、特定のものに限られるものではないが、密度のばらつきがなく、取り扱い、および、入手の点から、アルミニウム(密度:2.7g/cm)が好ましい。
ρz= ρair +(ρc − ρair)/(CTc −CTair)×(CT − CTair)
・・・(D)
ρz:鉱物組織の密度(g/cm
ρair:空気の密度(=1.3×10−3)(g/cm
ρc:校正用試料の密度(g/cm
CT:鉱物組織のCT値
CTair:空気のCT値
CTc:校正用試料のCT値
図4は、CT値を換算することにより得られる、図2のX線CT像のコークス試料内部における密度の分布を示す。なお、ここではX線CTの撮像において、1画素のサイズは0.5mm、スライス幅は0.5mmとした。
図4中の1.0g/cm付近のピークは、ビトリニットおよびエグジニット由来の組織である。石炭中のビトリニットおよびエグジニットは、400〜500℃の軟化膨張過程において気泡が生成するため、コークス中のビトリニットおよびエグジニット由来の組織は、気孔と気孔壁とからなる。通常、ビトリニットおよびエグジニット由来の組織の気孔率は50%程度であり、気孔壁の密度は、通常2.0g/cm程度であるため、1画素の領域における気孔率が50%であれば、見掛け密度は1.0g/cm程度となる。
一方、図4に示すように、1.3g/cm程度の密度の高い領域にもピークが存在する。この領域はコークス中のナート組織に相当する。
石炭中のイナート組織は、ビトリニット等の軟化溶融組織とは異なり、コークス化過程において軟化、膨張せず、ほとんど形態を変えずにコークス中に残存する。そのため、コークス中のイナート組織内部の気孔率が低くなり、コークス中のナート組織は、X線CT像において密度の高い領域として存在する。
以上より、コークス中におけるビトリニットおよびエグジニット由来の組織とイナート組織は、その生成過程の違いにより、組織内部の見掛け密度が異なるため、見掛け密度の差により、両者を判別することが可能である。
ナート組織判別のための閾値の設定
図5は、図2に示すコークス試料の断層像についてナート組織とナート組織以外の組織の部分とに二値化処理したものである。一例である図5においては、ナート組織判別のための見掛け密度の閾値を下記式(1)により算出される1.25g/cmとして、ナート組織とナート組織以外の組織とを区別しており、図5においては、イナート組織を白色で、それ以外の部分を黒色で表している。また、理解を容易とするために、コークス試料と背景との境界を白色の破線にて表している。
本発明では、X線CTによって得られたCT値の空間分布に基づき、CT値に対応する見掛け密度が下記式(1)で示される閾値以上である断層像における領域を、イナート組織として判定する。本実施形態において式(1)は、図6から理解されるように、コークス試料の全体における平均の見掛け密度と、イナート組織判別のための見掛け密度の閾値との関係を示している。

a=0.8140×b+0.4789・・・(1)

a: ナート組織判別のための見掛け密度の閾値
b: コークス試料の全体における平均の見掛け密度
以下に、式(1)の導出方法について述べる。
まず、平均見掛け密度が異なる3種類のコークス試料1〜3を製造し、これらの試料について、特許文献1記載のコークス顕微鏡写真を用いたマーキング法により試料中の粗大イナート組織の累積体積比を測定し、これらの測定値を粗大イナート組織の累積体積比の真値とする。
なお、コークス試料1〜3の平均見掛け密度は、X線CTを用いて試料の断層像(X線CT像)を撮像し、X線CT像における気孔を含む試料全体のCT値の平均値を上記(D)式に基づいて平均密度に換算することで求められる。
表1にコークス試料1〜3中の粗大イナート組織の累積体積比(真値)、および、平均見掛け密度を示す。




次に、上記コークス試料1〜3のX線CT像を撮像し、各X線CT像について見掛け密度の閾値の設定を変えてイナート組織を判定し、判定したイナート組織から1.5mm以上のイナート組織として特定される領域の比率を測定し、これらを粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)とする。
図7に、異なる平均見掛け密度の各コークス試料1〜3における、ナート組織を判別するための見掛け密度の閾値と、粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)の関係を示す。
図7に示されるように、ナート組織を判別するための見掛け密度の閾値の設定値によって、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比は異なるものとなる。
つまり、上記見掛け密度の閾値の設定値が高い場合は、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)は真値より小さくなり、上記見掛け密度の閾値の設定値が低い場合は、粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)は逆に大きくなることがある。
したがって、平均見掛け密度が異なるコークス試料のX線CT像から粗大イナート組織の累積体積比を求める際には、予め各試料断面の顕微鏡写真を用いたマーキング法により粗大イナート組織の累積体積比を求めてこれを真値とし、この値と、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)が一致するような上記見掛け密度の閾値の設定が必要である
例えば、図7の(a)において、表1に示されるように平均見掛け密度が0.942g/cmのコークス試料1の粗大イナート組織の累積体積比の真値が7.1vol%であから、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)が7.1vol%となるナート組織判別のための見掛け密度の閾値である1.246g/cmに設定する。
同様に図7の(b)においては、表1に示されるように平均見掛け密度が0.979g/cmのコークス試料2の粗大イナート組織の累積体積比の真値が7.5vol%であから、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)が7.5vol%となるナート組織判別のための見掛け密度の閾値である1.276g/cmに設定する。
同様に図7の(c)においては、表1に示されるように平均見掛け密度が1.016g/cmのコークス試料3の粗大イナート組織の累積体積比の真値が7.3vol%であから、X線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)が7.3vol%となるナート組織判別のための見掛け密度の閾値である1.306g/cmに設定する。
以上の結果より、例えば、図6に示されるように、コークス試料1〜3の平均見掛け密度と、粗大イナート組織の累積体積比の真値がX線CT像から求められる粗大イナート組織の累積体積比(見掛けの値)と一致するナート組織判別のための見掛け密度の閾値との関係が求められる。
上記(1)式は、図6に示されるような、コークス試料の平均の見掛け密度と、イナート組織判別のための見掛け密度の閾値との関係から一次近似式を導出して得られた。
このように、本発明においては、コークス試料全体の平均見掛け密度の変化に応じて、イナート組織判別のための見掛け密度の閾値を変化させており、該密度の閾値は(1)式により算出される。ここで、コークス試料において、試料全体の平均見掛け密度に応じて、イナート組織判別のための見掛け密度のしきい値も異なる理由は、下記の通りである。
X線CT像では、イナート組織とそれ以外の組織(例えばビトリニット由来の組織)の境界において、両方の組織が混在する画素が存在する。このような画素において、例えばビトリニット由来の組織の見掛け密度が上昇すると、その画素の密度は高くなる。そのため、1画素中のイナート組織の割合が同じであっても、イナート組織として判別される確率が高くなり、ビトリニット由来の組織の見掛け密度が上昇した場合、実際のナート組織の比率よりも多めに測定されてしまう。
そこで、本発明においては、試料全体の平均見掛け密度に応じて対応する見掛け密度の閾値を(1)式に基づき推測することにより、粗大イナート組織のより正確な判別を可能としている。
画素の設定
次に、X線CTの撮像条件について述べる。X線CTの撮像条件については当業者が適宜設定できるが、X線CT像の1画素のサイズは、0.3〜1.0mmとすることが好ましい。1画素のサイズが0.3〜1.0mmの範囲内にある場合、範囲外である場合と比較して、より正確にナート組織とそれ以外の組織とを区別することができる。
この点について、詳しく説明する。図8にX線CT像の1画素のサイズと1.5mm以上の粗大イナート組織として判別された領域の比率との関係を示す。なお、このコークスは、1.0mm未満に粉砕した石炭に1.5mm以上のイナート組織を8.0vol.%添加した配合炭をコークス化したものである。
図8に示すように、1画素のサイズが0.3mm未満であると、粗大イナート組織の比率は、実際に添加した値である8.0%よりも大きく計測され、範囲内にある場合よりも式(1)によって算出される閾値に基づき得られるイナート組織から特定した粗大イナート組織の比率と、実際の粗大イナート組織の比率との間の誤差が大きくなる。この理由について、以下に記載する。
コークス中のビトリニットおよびエグジニット由来の組織は、既に述べたように気孔と気孔壁とからなり、その気孔率は50%程度である。気孔壁の密度は、通常2.0g/cm程度であるため、気孔率50%であれば、見掛け密度は1.0g/cm程度である。
通常のコークスの気孔壁厚みは、最大で0.3mm程度であるため、1画素のサイズが0.3mm未満であると、高密度の気孔壁のみの画素が存在することになる。すると、気孔壁(約2.0g/cm)の部分もナート組織(約1.25g/cm以上)として判別してしまうため、実際よりも粗大イナート組織を多めに計測してしまう。その結果、1画素のサイズが0.3mm未満とする場合には、0.3〜1.0mmとする場合と比較して誤差が大きくなってしまう。
一方、図8に示すように、1画素のサイズが1.0mmよりも大きいと、粗大イナート組織の比率は、実際に添加した値である8.0%よりも小さく計測され、この場合も範囲内にある場合よりも式(1)によって算出される閾値に基づき得られるイナート組織から特定した粗大イナート組織の比率と、実際の粗大イナート組織の比率との間の誤差が大きくなる。この理由は、1画素のサイズが大きすぎると、1画素の中にイナート以外の組織(例えば、気孔を含んでいる低見掛け密度のビトリニット由来組織)を含む確率が高くなるため、その画素の密度が低下し、イナート組織として判別され難くなるためである。
以上より、X線CT像の1画素のサイズを0.3〜1.0mmとすることで、コークス中のイナート組織とそれ以外の組織を、見掛け密度の差によってより正確に判別することが可能となる。
なお、本発明において、X線CT像のスライス幅に関しては特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、1画素のサイズと同様の理由に基づき、ナート組織とそれ以外の組織とをより正確に区別できるようにするために、1画素のサイズと同程度の値、具体的には0.3〜1.0mmに設定されることが好ましい。
次に、イナート組織であると判定された領域の絶対最大長さを測定することにより、絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定する。なお、本明細書におけるイナート組織の絶対最大長さとは、1つのイナート組織における境界上の任意の2点間を直線で結んだときの最も長い長さをいう。また、絶対最大長さは、例えば、X線CTを用いて得られる断層像の解析に通常に使用されている画像解析ソフトを、図5にて例示した二値化処理を行った断層像に対して用いることにより測定することができる。
次いで、粗大イナート組織として特定された組織について、累積体積比を算出する。当該累積体積比は、以下の式(E)で示されるように、気孔部分の体積Vpを除いた断層像全領域の体積における、粗大イナート組織が占める体積Viの割合X(%)を求めることにより算出することができる。なお、以下の式を用いた累積体積比の算出は、上述の絶対最大長さと同様に、X線CTを用いて得られる断層像の解析に通常に使用されている画像解析ソフトにより測定することができる。

X(%)=Vi/(100−Vp)×100 ・・・(E)
撮像領域について
次にX線CTの撮像領域について述べる。図9は、粗大イナート組織の累積体積比が7.0%のコークス試料において、コークス試料の撮像領域と粗大イナート組織の撮像領域における累積体積比の標準偏差との関係を示すグラフである。なお、図9横軸のコークス試料の撮像領域とは、X線CT像1枚毎に石炭試料の領域の面積を求め、それらを合計した値である。よって、コークス試料の撮像領域は、X線CT像中のコークス試料の断面積および撮影した像の枚数に比例する。一方、図9縦軸の粗大イナート組織比率の標準偏差とは、X線CT像1枚毎に粗大イナート組織の比率を測定し、画像間で粗大イナート組織の比率の標準偏差を取ったものである。
図9からは、撮像領域を大きくすることにより粗大イナート組織の累積体積比の標準偏差が減少していくが、500cm以上の撮像領域とするときは該標準偏差の減少が小さいことが理解される。よって、コークス試料の撮像領域は、500cm以上であることが好ましい。
続いて、本実施形態の高炉用コークスの製造方法について、説明する。なお、X線CT評価方法については記載が重複するため、説明を省略する。
まず、複数銘柄の石炭を配合し、高炉用コークスの原料となる配合炭を調整する。
次に、配合炭をコークス炉に装入する。このとき、コークス炉における乾留条件は、通常の乾留条件の範囲内で当業者が適宜調整して採用すればよい。
次いで、コークス炉から窯出された高炉用コークスから、無作為抽出によりコークス試料をサンプリングし、石炭再装入までの間のインターバルにおいて、該コークス試料のコークス強度およびコークス試料における粗大イナート組織の累積体積比を算出する。なお、粗大イナート組織の累積体積比の結果をフィードバックする時間をさらに短縮するには、上述の配合炭をコークス炉に装入する前にサンプリングし、オフラインの乾留炉にて短時間でコークス化し、その試料の粗大イナート組織の累積体積比を求めてもよい。
次に、得られたコークス強度および粗大イナート組織の累積体積比に応じて、コークス炉に装入される配合炭を構成する石炭の粒度調整を実施する。例えば、コークス試料のコークス強度が目標値以上ではあるが該目標値に近い値を示しており、その結果よりコークス強度を高めることが好ましい場合、測定された粗大イナート組織の累積体積比が基準値以下となるように、石炭を粉砕して粒度調整を実施する。
ここで、粒度調整に係る、粗大イナート組織の累積体積比に基づく基準値は特に限定されず、当業者が適宜設定することができ、例えば、特許文献1である特開2004−339503号公報の記載に基づいて設定することができる。当該方法においては、粉砕によるDI変化(ΔDI150/15)が急激に大きくなる累積体積比の境界値を予め求めておき、該境界値を基準値として、累積体積比が該基準値以下となるように、石炭を粉砕する。なお、当該方法は公知であり、詳細な説明は省略するが、累積体積比の境界値は、6.7mm以上の粒径を有する石炭の割合が10%のときと6.7mm以上の粒径を有する石炭の割合が3%のときとの各コークスのコークス強度(DI)の差(ΔDI150/15)と、粗大イナート組織の累積体積比との関係から求めることができる。また、特開2004−339503号公報ではmmオーバーのものを粗大イナート組織として定義しているが、絶対最大長さが1.5mm以上のものを粗大イナート組織として定義する本明細書においても、同様にΔDI150/15と粗大イナート組織の累積体積比の関係から境界値を求めることができる。
このように特開2004−339503号公報の方法を適用する場合、本実施形態においては、配合炭から得られるコークスにおける粗大イナート組織の累積体積比が基準値以下となっていればよく、粉砕の詳細な条件については、当業者が適宜選択することができる。
また、粒度調整の際に用いられる粉砕機も特に限定されず、例えば、速度可変型のハンマークラッシャーを用いることができ、該ハンマークラッシャーにおける粉砕の設定についても、当業者が適宜設定することができる。例えば、絶対最大長さが+1.5mmである粗大イナート組織の累積体積比に応じて粉砕強度を変えることができる。具体的には、粗大イナート組織の累積体積比が基準値よりも比較的大きい場合には粉砕強度を高く設定して石炭を強粉砕し、また、上記累積体積比が基準値に比較的近い値である場合には、粉砕強度を低く設定して石炭を弱粉砕する。
続いて、粉砕した石炭を他の石炭と配合して配合炭を得て、コークス炉に装入する。このときのコークス炉における乾留条件もまた、通常の乾留条件の範囲内で当業者が適宜調整して採用すればよい。
なお、理解を容易とするために以上の説明においては省略したが、コークス試料をサンプリングするよりも前段階である配合炭を構成する段階において、配合炭に含まれる各銘柄の石炭についてコークス試料を調整し、該コークス試料について粗大イナート組織の累積体積比を測定しておくとともに、該粗大イナート組織の累積体積比に応じて各石炭の粒度を調整してから配合炭を構成することが好ましい。これにより、目標のコークス強度を有する高炉用コークスをより容易に製造することができる。なお、各石炭について粉砕するか否かの判定は、例えば上述した特開2004−339503号公報に記載の粗大イナート組織の累積体積比の境界値を基に行うことができる。また、当該各銘柄の石炭におけるそれぞれの粗大イナートの累積体積比をデータベース化することで、配合炭構成前の各石炭の粒度調整、およびコークス製造過程における上記インターバルでの粒度調整において、より容易に粒度調整を実行することができる。
さらにまた、本実施形態においては、コークス試料の累積体積比とコークス強度の測定結果に応じて石炭の粒度調整を行っているが、コークス試料における粗大イナート組織の累積体積比のみに応じて石炭の粒度調整を行うようにしてもよい。
以上、本実施形態の高炉用コークスの製造方法によれば、コークス試料の粗大イナート組織の累積体積比をX線CTを用いて測定するX線CT評価方法を用いることにより、粗大イナート組織の累積体積比の測定に要する時間を大幅に短縮することができる。したがって、従来と変らない長さのコークス製造のインターバルの間に、コークス炉に装入する石炭の粒度を調整できる。
(実施例1−1)
実機のコークス炉から窯出されたコークス試料について、X線CTを用いた粗大イナート組織の累積体積比算出した。なお、得られたコークス試料の性質を表2に示す。コークス試料のコークス強度は、JIS K 2151に従い測定した。

このとき、X線CTスキャナは島津製作所製Subrina(SCT-7800TX)を用い、また、断層像の解析ソフトは三谷商事製Win Roofを用いた。
コークス試料は、200mm×200mm×200mmの大きさの段ボールの容器に入れて撮像に供した。また、X線CTスキャナは管電圧100kV、管電流100mA、スライス幅0.5mm、解像度(1画素のサイズ)0.5mmとし、1画像当たりのコークス試料の断面積が約50cmの断層像を10枚撮影し、コークス試料におけるCT値の空間分布を得た。なお、コークス試料の全撮像領域は510cmであった。
まず、CT値の空間分布からコークス試料におけるCT値の平均値(-21)を求めた。次いで、該CT値の平均値に基づき、式(D)を用いてコークス試料の見掛け密度(0.983g/m)を算出した。次に、式(1)により、イナート組織とその他の組織とを区別するための見掛け密度(1.279g/m閾値)を算出し、算出された見掛け密度に対応するCT値(279)を基準にイナート組織と他の組織部分とを区別した。
続いて、イナート組織と判別された組織について絶対最大長さの測定を行い、絶対最大長さが1.5mm以上である粗大イナート組織を特定し、該粗大イナート組織のコークス試料における累積体積比を式(E)に基づき算出した。
(実施例1−2)
原料となる配合炭の配合が異なるコークス試料(試料全体の見掛け密度0.948g/m)について、実施例1−1と同様の方法で粗大イナート組織のコークス試料における累積体積比を算出した。
(比較例1−1)
実施例1−1で用いたコークス試料について、特許文献1に記載された顕微鏡写真の画像解析法を用い、粗大イナート組織の累積体積比を算出した。
具体的にはまず、コークスの切断面に樹脂を埋め込み、その切断面を、顕微鏡で写真撮影した。このとき、撮影領域を500cmと設定し、1画像当たり1.5cm×2cmの画像を166枚撮影した。次に、切断面写真におけるイナート組織をマーキングすることにより、イナート組織と他の組織と区別した。
続いて、画像解析ソフトを用い、絶対最大長さが1.5mm以上のマーキング領域(累積面積)が切断面写真の全領域(面積)に占める割合Si(%)を計測し、該Siが気孔部分の領域Sp(累積面積)を除いた切断写真の全領域における割合を算出して(下記式(f))、累積体積比を求めた。なお、気孔部分の領域Spは、切断面写真において、コンピュータ画像処理にてコークス壁を白、気孔を黒に処理して(コークス壁と気孔を二値化)、該二値化画像を解析することにより求めている。また、通常、2次元断面における面積比は、3次元空間における体積比と扱うことができるため、粗大イナート組織の2次元断面における面積比を、粗大イナート組織の累積体積比として扱うことができる。

X(面積比)=Si/(100−Sp)×100 ・・・(f)
(比較例1−2)
比較例1−1と同様の方法で、実施例1−2のコークス試料における粗大イナート組織の累積体積比を算出した。
実施例および比較例の累積体積比の算出結果、および算出に要した時間を表3および表4に示す。




表3および表4に示すように、実施例1−1および1−2は、従来の方法と同等の精度で粗大イナート組織の累積体積を測定することができ、また、測定に要する時間を大幅に短縮することができた。
次いで、コークス製造工程のインターバル以内に粗大イナート組織の累積体積比の測定結果をフィードバックすることを実施した。
実施例1−1では、目標とするDI向上幅を0.3ポイントと設定し、特許文献1の図2に基づき、粗大イナート組織の累積体積比の基準値を2.2%と設定した(粗大イナート組織の累積体積比の低下代は2.0%)。そして、粗大イナート組織の累積体積比を基準値に到達させるため、粉砕後の石炭の+6.7mmの粒子割合を調整し、粉砕後の石炭をコークス炉に装入した。
また、実施例1−2では、目標とするDI向上幅を0.4ポイントと設定し、特許文献1の図2に基づき粗大イナート組織の累積体積比の基準値を3.4%と設定した(粗大イナート組織の累積体積比の低下代は2.7%)。実施例1−1と同様に、粗大イナート組織の累積体積比を基準値に到達させるため、粉砕後の石炭の+6.7mmの粒子割合を調整し、その後、粉砕後の石炭をコークス炉に装入した。
その結果、コークス炉にて乾留して得られたコークスの強度DI150 15は、実施例1−1では86.5、実施例1−2では86.2であった。一方、粗大イナート組織の累積体積比の測定結果をフィードバックする前のDI150 15は、表2より、それぞれ86.2、85.8であるので、実施例により、コークス強度を高めることができた。

Claims (3)

  1. コークス試料をX線CT評価方法を用いて評価するとともに、該評価の結果に応じて粒度を調整された石炭をコークス炉に装入することにより高炉用コークスを製造する高炉用コークスの製造方法であって、
    前記X線CT評価方法は、
    X線CTを用いて得られる前記コークス試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、
    前記CT値に対応する見掛け密度が下記式で示される閾値以上である前記コークス試料における領域を、イナート組織として判定し、
    判定される前記イナート組織のうち、絶対最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定し、
    特定される前記粗大イナート組織の前記コークス試料における累積体積比を求めるものであり、
    求められた累積体積比が基準値以下となるように、石炭を粉砕して前記コークス炉に装入する石炭の粒度を調整することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。

    a=0.8140×b+0.4789・・・(1)

    a: ナート組織判別のための見掛け密度の閾値
    b: コークス試料の全体の見掛け密度
  2. 前記X線CT評価方法において、X線CT像の1画素のサイズを0.3〜1.0mmに設定して前記X線CTを用いることを特徴とする請求項1に記載の高炉用コークスの製造方法。
  3. 前記X線CT評価方法において、コークス試料のX線CTの撮像領域を500cm以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高炉用コークスの製造方法。
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