JP2011212673A - チタノシリケートの調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】チタノシリケートはプロピレンと過酸化水素とからプロピレンオキサイドを合成する反応等の触媒として使用できることが知られている。かかるチタノシリケートを当該反応の触媒としての使用を継続すると、触媒としての活性、すなわち、触媒能が低下することが一般的である。触媒能が低下したチタノシリケートから、さらに優れた触媒能まで再生されたチタノシリケートを調製する方法が求められている。
【解決手段】触媒能が低下したチタノシリケートと、環状2級アミンと、を混合する工程を含むことを特徴とするチタノシリケートの調製方法、並びに、
前記記載の調製方法で得られたチタノシリケートの存在下、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、チタノシリケートの調製方法等に関する。
チタノシリケートは、従来からプロピレンなどの炭素・炭素二重結合を有する化合物と過酸化水素とからプロピレンオキサイドなどのオレフィン等を合成する反応等の触媒として使用できることが知られている。かかるチタノシリケートを当該反応の触媒としての使用を継続すると、触媒としての活性、すなわち、触媒能が低下することが一般的である。
触媒能が低下したチタノシリケートから、触媒能が再生されたチタノシリケートを調製する方法は、例えば特許文献1に記載されている。具体的には、触媒能が低下する前のチタノシリケートを用いて過酸化水素からプロピレンオキサイドを製造すると、プロピレンオキサイドの生成活性は20.2mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hであるが、触媒能が低下すると該生成活性が11.1mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hに低下する。かかる触媒能が低下したチタノシリケートと、水と、アセトニトリルとを混合して77℃で24時間保温することにより、触媒能を再生したチタノシリケートが調製可能であり、この調製されたチタノシリケートの該生成活性は17.4mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hに達する。
このように、特許文献1には、触媒能が低下する前のチタノシリケートの触媒能(プロピレンオキサイドの生成活性)を100%とした場合、86%まで触媒能を再生したチタノシリケートを調製する方法が記載されていることになる。
特開2009−233656号公報([0054]〜[0059])
このような状況下、触媒能が低下したチタノシリケートから、さらに優れた触媒能まで再生されたチタノシリケートを調製する方法が求められている。
かかる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
<1> 触媒能が低下したチタノシリケートと、環状2級アミンと、を混合する工程を含むことを特徴とするチタノシリケートの調製方法。
<2> 触媒能が低下したチタノシリケートが、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物の酸化生成物と、触媒能が低下する前のチタノシリケートとを混合して得られたものであることを特徴とする<1>記載の調製方法。
<3> 触媒能が低下する前のチタノシリケートが、酸素12員環以上の細孔を有するチタノシリケートであることを特徴とする<2>記載の調製方法。
<4> 触媒能が低下する前のチタノシリケートがTi−MWW前駆体であることを特徴とする<2>又は<3>記載の調製方法。
<5> 触媒能が低下する前のチタノシリケートが、ケイ素化合物、ホウ素化合物、チタン化合物、水、及び、MWW構造を有するゼオライトを形成し得る構造規定剤を混合し、熱処理し得られた層状化合物から、該構造規定剤を除いて得られたチタノシリケートであることを特徴とする<2>〜<4>のいずれか記載の調製方法。
<6> MWW構造を有するゼオライトを形成し得る構造規定剤が、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩、及びオクチルトリメチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造規定剤であることを特徴とする<5>記載の調製方法。
<7> 環状2級アミンが、式(I)
Figure 2011212673
(式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選ばれる2つの基からなる組み合わせであって、前記の2つの基は互いに隣接する2つの炭素原子に結合している組み合わせは、互いに結合して前記2つの炭素原子とともに炭化水素環を形成していてもよい。nは0〜9の整数を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか記載の調製方法。
<8> 環状2級アミンが、ピペリジン又はヘキサメチレンイミンであることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか記載の調製方法。
<9> 環状2級アミンの混合量が、触媒能が低下したチタノシリケート1重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか記載の調製方法。
<10> 前記工程が、25〜250℃の温度範囲で行われることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか記載の調製方法。
<11> 前記工程が、過酸化水素の非存在下で混合することを特徴とする<1>〜<10>のいずれか記載の調製方法。
<12> <1>〜<11>のいずれか記載の調製方法で得られたチタノシリケートの存在下、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
<13> 炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物がプロピレンであり、オキシラン化合物がプロピレンオキサイドであることを特徴とする<12>記載のオキシラン化合物の製造方法。
本発明の調製方法によれば、触媒能が低下したチタノシリケートから、さらに優れた触媒能まで再生されたチタノシリケートが提供可能である。
まず、触媒能が低下する前のチタノシリケートの1種として、チタン化合物及びシリケート化合物等から新たに製造されるチタノシリケート(以下、新チタノシリケートと記すことがある)について説明する。新チタノシリケートは、実質的に4配位Ti(チタン原子)を持つシリケートであり、多孔構造を有する。また、新チタノシリケートは、200nm〜400nmの波長領域における紫外可視吸収スペクトルが、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れるものを表す(例えば、Chemical Communications 1026−1027,(2002) 図2(d)、(e)参照)。上記紫外可視吸収スペクトルは、拡散反射装置を付属した紫外可視分光光度計を用いて、拡散反射法にて測定することができる。
本発明における新チタノシリケートは、酸素10員環以上の細孔を有すると反応原料と細孔内の活性点との接触阻害が抑制される傾向や、細孔内における物質の移動の制限が低減される傾向があることから好ましい。
本明細書において、細孔とは、Si−O結合あるいはTi−O結合から構成される細孔を意味する。上記細孔は、サイドポケットと呼ばれるハーフカップ状の細孔であってもよい。即ち、該細孔は、チタノシリケートの一次粒子を貫通している必要はない。
上記「酸素10員環以上」とは、(a)細孔において最も細い場所の断面または(b)細孔入口における環構造について酸素原子数が10以上であることを意味する。
チタノシリケートが酸素10員環以上の細孔を有することは、一般にX線回折パターンの解析により確認されるが、既知の構造であれば、そのX線回折パターンと対比させることで簡便に確認できる。
新チタノシリケートは、下記に示す値のX線回折パターンを有する。
X線回折パターン
(格子面間隔d/Å)
12.4±0.8
10.8±0.5
9.0±0.3
6.0±0.3
3.9±0.1
3.4±0.1
これらのX線回折パターンは、銅K−アルファ放射線を使用した一般的なX線回折装置を用いて測定することができる。
前記に示すX線回折パターンを有するチタノシリケートとしては、例えば、公開特許公報2005−262164号に記載されたTi−MWW前駆体、Ti−YNU−1(例えば、アンゲバンテケミー・インターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition) 43,236−240,(2004))に記載されたもの、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードで、MWW構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MWW(例えば、公開特許公報2003−327425号に記載されたもの)、同じくIZAの構造コードでMSE構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MCM−68(例えば、公開特許公報2008−50186号に記載されたもの)等を挙げることができる。
新チタノシリケートにおけるチタン原子の含有量は、ケイ素原子の含有量1モルに対して、例えば、0.001〜0.1モルの範囲内を挙げることができ。好ましくは、0.005〜0.05モルの範囲内が挙げられる。
本発明の新チタノシリケートとしては、例えば、下記1〜7に記載のチタノシリケート等が挙げられる。
1. 酸素10員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードでMFI構造を有するTS−1(例えば、米国特許第4410501号)、MEL構造を有するTS−2(例えば、Journal of Catalysis 130, 440−446, (1991))、MRE構造を有するTi−ZSM−48(例えば、Zeolites 15, 164−170, (1995))、FER構造を有するTi−FER(例えば、Journal of Materials Chemistry 8, 1685−1686 (1998))等。
2. 酸素12員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
BEA構造を有するTi−Beta(例えば、Journal of Catalysis 199,41−47,(2001))、MTW構造を有するTi−ZSM−12(例えば、Zeolites 15, 236−242, (1995))、MOR構造を有するTi−MOR(例えば、The Journal of Physical Chemistry B 102, 9297−9303, (1998))、ISV構造を有するTi−ITQ−7(例えば、Chemical Communications 761−762,(2000))、MSE構造を有するTi−MCM−68(例えば、Chemical Communications 6224−6226, (2008))、MWW構造を有するTi−MWW(例えば、Chemistry Letters 774−775, (2000))等。
3. 酸素14員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
DON構造を有するTi−UTD−1(例えば、Studies in Surface Science and Catalysis 15, 519−525, (1995))等。
4. 酸素10員環の細孔を有する層状チタノシリケート:
Ti−ITQ−6(例えば、Angewandte Chemie International Edition 39, 1499−1501, (2000))等。
5. 酸素12員環の細孔を有する層状チタノシリケート:
Ti−MWW前駆体(例えば、ヨーロッパ公開特許1731515A1、公開特許公報2005−262164号等)、Ti−YNU−1(例えば、Angewandte Chemie International Edition 43, 236−240, (2004))、Ti−MCM−36(例えば、Catalysis Letters 113, 160−164, (2007))、Ti−MCM−56(例えば、Microporous and Mesoporous Materials 113, 435−444,(2008))等
6. メソポーラスチタノシリケート:
Ti−MCM−41(例えば、Microporous Materials 10, 259−271, (1997))、Ti−MCM−48(例えば、Chemical Communications 145−146, (1996))、Ti−SBA−15(例えば、Chemistry of Materials 14, 1657−1664, (2002))等
7. シリル化チタノシリケート:
上記1〜6記載のチタノシリケートをシリル化した化合物
5の酸素12員環の細孔を有する層状チタノシリケートとは、例えば、結晶性チタノシリケートの層状前駆体、結晶性チタノシリケートの層間を拡張したチタノシリケート等、層状構造を有するチタノシリケートの総称である。層状構造であることは、電子顕微鏡あるいはX線回折パターンの測定により確認することができる。
上記層状前駆体とは、脱水縮合等の処理を行うことにより結晶性チタノシリケートを形成するチタノシリケートを意味する。層状チタノシリケートが酸素12員環以上の細孔を有することは、対応する結晶性チタノシリケートの構造から容易に判断できる。
6のメソポーラスチタノシリケートは、規則性メソ細孔を有するチタノシリケートの総称である。規則性メソ孔とは、メソ孔が規則的に繰り返し配列された構造を意味する。
メソ細孔とは、細孔径2nm〜10nmの細孔を意味する。
7のシリル化チタノシリケートは、シリル化剤で上記1〜4記載のチタノシリケートをシリル化することにより得られる。上記シリル化剤として、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる(例えば、ヨーロッパ公開特許EP1488853A1)。
好ましい新チタノシリケートとしては、例えば、上記2の酸素12員環以上の細孔を有する結晶性チタノシリケートあるいは上記5の酸素12員環の細孔を有する層状チタノシリケート等を挙げることができ、好ましくは、例えば、MWW構造を有する結晶性チタノシリケート(以下、Ti−MWWと記すことがある)、Ti−MWW前駆体等が挙げられ、より好ましくは、Ti−MWW前駆体である。
Ti−MWW前駆体は、層状構造を有するチタノシリケート(以下、層状化合物と記すことがある)であり、該Ti−MWW前駆体を脱水縮合することによりTi−MWWを形成する物質を意味する。上記脱水縮合は、通常、上記Ti−MWW前駆体を、200℃を超え、1000℃以下、好ましくは、約300℃〜650℃の温度で加熱することにより行われる。
以下、好ましい新チタノシリケートであるTi−MWW前駆体の製造方法について説明する。
Ti−MWW前駆体の製造方法として、例えば、以下の第一の方法、第二の方法及び第三の方法などが挙げられる。
第一の方法は、工程(1−1)及び工程(1−2)を含む方法である。
工程(1−1);構造規定剤、元素周期表の13族元素を含有する化合物(以下、この化合物を「13族元素含有化合物」ということがある。)、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程。
工程(1−2);工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する工程。
第二の方法は、工程(2−1)及び工程(2−2)を含む方法である。
工程(2−1);構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程。
工程(2−2);工程(2−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程。
第三の方法は、工程(3−1)及び工程(3−2)を含む方法である。
工程(3−1);構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程。
工程(3−2);工程(3−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程。
まず、第一の方法について、工程(1−1)及び工程(1−2)を順次、説明する。
〔工程(1−1)〕
工程(1−1)は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程である。
本発明で用いられる構造規定剤としては、MWW構造を有するゼオライトを形成させることができる窒素含有化合物が挙げられ、具体的には、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等の有機アミン;N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩(N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムイオダイド等)やChemistry Letters 916−917 (2007)記載のオクチルトリメチルアンモニウム塩(オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド等)等の4級アンモニウム塩が挙げられる。中でも、ピペリジン及びヘキサメチレンイミンが好ましく、ピペリジンがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
構造規定剤の使用量は、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1〜5モルの範囲を挙げることができ、好ましくは、0.5〜3モルの範囲が挙げられる。
本発明で用いられる13族元素含有化合物としては、例えば、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びガリウム含有化合物等が挙げられ、好ましくはホウ素含有化合物である。
ホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸;ホウ酸塩;酸化ホウ素;ハロゲン化ホウ素;及び炭素数1〜4のアルキル基を有するトリアルキルホウ素化合物等が挙げられる。アルミニウム含有化合物としては、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。ガリウム含有化合物としては、酸化ガリウム等が挙げられる。中でも、ホウ酸が好ましい。
13族元素含有化合物の使用量は、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、0.01〜10モルの範囲を挙げることができ、好ましくは、0.1〜5モルの範囲が挙げられる。
上記ケイ素含有化合物としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、テトラアルキルオルトケイ酸エステル及びコロイダルシリカ等が挙げられる。
上記ケイ酸としては、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸等が挙げられる。
上記ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸や、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属ケイ酸塩等が挙げられる。
上記酸化ケイ素としては、石英のような結晶性シリカ、ヒュームドシリカのような非晶質シリカ等が挙げられる。
上記ハロゲン化ケイ素としては四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素等が挙げられる。
上記テトラアルキルオルトケイ酸エステルとしては、テトラメチルオルソシリケート、
テトラエチルオルソシリケート等が挙げられる。
中でも、ヒュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカとしては、一般に市販されているBET比表面積50m/g〜380m/gのものを使用してもよい。中でも、50m/g〜200m/gのものは取扱い容易であることから好ましく、100m/g〜380m/gのものは水溶液への溶解が容易であることから好ましい。
上記チタン含有化合物としては、例えば、チタンアルコキシド、チタン酸塩、酸化チタン、ハロゲン化チタン、チタンの無機酸塩、及びチタンの有機酸塩等が挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、例えば炭素数1〜4のアルコキシ基を有するチタンアルコキシド、例えばテトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトライソプロピルオルソチタネート、テトラ−n−ブチルオルソチタネート等が挙げられる。
チタンの有機酸塩としては、例えば酢酸チタン等が挙げられる。
チタンの無機酸塩としては、例えば硝酸チタン、硫酸チタン、リン酸チタン、及び過塩素酸チタン等が挙げられる。
ハロゲン化チタンとしては、例えば四塩化チタン等が挙げられる。
酸化チタンとしては、例えば二酸化チタン等が挙げられる。
中でも、チタンアルコキシドが好ましく、テトラ−n−ブチルオルソチタネートがより好ましい。
チタン含有化合物としてチタンアルコキシドを用いる場合、過酸化水素を、チタンアルコキシドの加水分解助剤として用いることができる。過酸化水素の使用量モル比は、チタンアルコキシドに対して、例えば、0.1〜20モルの範囲を挙げることができる。
チタン含有化合物の使用量は、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、0.005〜0.1モルの範囲が好ましい。
水としては、蒸留水、イオン交換水等の精製水が挙げられる。また、チタノシリケートの調製に用いた水を再利用することもできる。
水の使用量は、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、5〜200モルの範囲を挙げることができ、好ましくは10〜50モルの範囲が挙げられる。
工程(1−1)をさらに詳しく説明すると、例えば、水と構造規定剤とを混合した後、この溶液を略2分割して、一方にチタン含有化合物を、もう一方に13族元素含有化合物を混合した後、ケイ素含有化合物を略等分してそれぞれに混合し、得られた混合物をオートクレーブ等の密閉容器に入れ、絶対圧で例えば、0.01MPa〜1.1MPaの範囲などで加圧しながら加熱する方法(以下、「混合物を密閉容器にて加熱」することを「水熱合成」することと記すことがある)、例えば、水と構造規定剤とを混合した後、該混合物に13族元素含有化合物、チタン含有化合物及びケイ素含有化合物を、この順番で添加して混合し、得られた混合物を水熱合成する方法、例えば、水と構造規定剤とを混合した後、該混合物にチタン含有化合物、13族元素含有化合物及びケイ素含有化合物を、この順番で添加して混合し、得られた混合物を水熱合成する方法、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物、強塩基(例えば、水酸化ナトリウム等)および水を混合し、得られた混合物を乾燥させて得られたドライゲルを密閉容器に入れ、別の容器で加熱された水および構造規定剤の混合蒸気を該密閉容器に加えながら加熱する方法(いわゆるドライゲルコンバージョン法)等が挙げられる。
工程(1−1)における混合温度としては、例えば、0℃〜100℃の範囲を挙げることができ、好ましくは10℃〜60℃の範囲が挙げられる。また、混合時に発熱する場合もあるため、例えば、外気温が0〜40℃程度の場合、外気温と同程度の温度のまま原料を溶解させ、溶解熱を利用して上記の温度に調整することもできる。
また、溶解熱が過剰の場合は、冷却することにより温度を調整することもできる。
工程(1−1)は、撹拌しながら混合することが好ましい。
工程(1−1)で得られる混合物は、固体成分がコロイド状に分散されたゾルであってもよいし、固体成分が溶解した均一溶液であってもよいし、懸濁溶液であってもよい。
上記のようにして得られた混合物は、層状化合物への変換が起こらない温度及び時間、具体的には、20℃〜130℃の温度範囲内で1〜48時間、さらに保持してもよい。好ましくは、上記温度範囲及び時間で上記混合物を撹拌する。
上記混合物は、ジオール化合物、アンモニウム塩、アンモニア、過酸化水素、フッ素化合物等の添加剤を含んでいてもよい。
ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ベンゼン−1,2−ジオール、ベンゼン−1,3−ジオール、ベンゼン−1,4−ジオール等が挙げられる。中でも、ベンゼン−1,2−ジオールは、得られる新チタノシリケートの粒径を大きくする傾向があることから好ましい。ジオール化合物の使用量としては、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.001〜2モルの範囲内を挙げることができる。
アンモニウム塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等及びこれらの混合物が挙げられる。アンモニウム塩は、予め水等に溶解させてもよいし、固体で添加してもよい。
アンモニアは、アンモニア水として用いてもガスのまま用いてもよい。
アンモニア及びアンモニウム塩を添加することにより、工程(1−1)で得られるものの粒径が増大する傾向があることから好ましい。
アンモニア及びアンモニウム塩の使用量としては、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1〜10モルの範囲内を挙げることができる。
フッ素化合物としては、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のフッ化水素酸塩、フッ化水素酸等が挙げられる。フッ素化合物の使用量としては、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、フッ化物イオンの量が、例えば、0.1〜10モルとなる範囲を挙げることができる。
工程(1−1)で得られる混合物には、本発明に係る効果を損ねない範囲で、原料由来の不純物や容器からの溶出成分のような不純物が含まれていてもよい。
特に水には鉄、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、塩素等、様々な不純物が含まれている場合がある。混合物中の具体的な不純物としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、亜鉛、銅、鉛、錫、マンガン、タングステン、バナジウム等の遷移金属又はそれらの化合物、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属又はそれらの塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属又はそれらの塩、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン又はそれらの塩、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸等の酸素を含む酸又はそれらの塩、ピリジン、ピペラジン等の含窒素有機化合物、アルコール類、炭化水素化合物等があげられる。これらの不純物の量は、上記混合物中に対する濃度で0.01質量%以下であることが好ましい。
工程(1−1)における加熱温度としては、例えば、110〜200℃の範囲を挙げることができ、好ましくは140〜180℃の範囲が挙げられる。上記温度範囲内で所定時間保持することにより層状化合物が生成する。層状化合物が生成するために必要な時間は、温度が高いほど短く、温度が低いほど長い。加熱温度が、例えば、110〜140℃の場合、加熱時間は60〜360時間の範囲を挙げることができ、加熱温度が、例えば、140℃〜200℃の場合、30〜240時間の範囲を挙げることができる。混合物を加熱する際の昇温速度は、0.1℃/分〜2℃/分の範囲が好ましい。昇温速度は一定である必要はなく、目的温度が近づいたら徐々に昇温速度を遅くする温度制御方法で行ってもよいし、一定温度で加熱する段階を経て昇温してもよい。
混合物の加熱方法は、オートクレーブのジャケットを加熱する方法のように熱伝導による加熱する方法、マイクロ波照射により加熱する方法等が挙げられる。
加熱する際に、撹拌翼などにより撹拌すると、新チタノシリケートの一次粒子の粒径が小さくなる傾向があることから好ましい。
撹拌翼の形状は、例えば、アンカー翼、パドル翼、平板翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、中空翼、ファウドラー翼、ダブルヘリカル翼等が挙げられる。これらの撹拌翼は、1種類の撹拌翼を複数組み合せて用いてもよいし、水平方向に対流させる撹拌翼と垂直方向に対流させる撹拌翼との組み合せのように2種類の撹拌翼を組み合せて用いてもよい。具体的には、パドル翼の横長さに対する縦の長さの比が1/2以上である幅広型のパドル翼とアンカー翼とを上下にクロスに配置する組み合わせ、パドル翼とプロペラ翼との組み合わせ、アンカー翼と傾斜パドル翼との組み合わせ等を挙げることができる。
撹拌速度を撹拌翼の先端速度で表すと、0.1km/h〜40km/hの範囲を例示することができる。撹拌速度が0.1km/h以上であると、昇温時は容器内の温度分布が低減され、結晶性が向上する傾向があることから好ましい。撹拌が40km/h以下であると、攪拌に必要な動力が低減される傾向があることから好ましい。
撹拌速度は、一定である必要はなく、例えば、昇温完了後に撹拌速度を下げるなどの一定時間経過後に撹拌速度を下げてもよい。例えば、昇温完了後に撹拌速度を1/2〜1/100程度に下げることにより、微粒子の形成を抑制される傾向があることから好ましい。
工程(1−1)により得られる層状化合物を含む反応生成物は、必要に応じて冷却した後、例えば、減圧ろ過、加圧濾過、遠心分離により固体成分と液体成分とに固液分離することが好ましい。未反応の原料は、ろ過により液体成分に含まれ、該層状化合物は固体成分に含まれる。固液分離時に供される反応生成物の温度の下限は、例えば、0℃が挙げられ、好ましくは、50℃以上である。固液分離時に供される反応生成物の温度の上限は、例えば、工程(1−1)における加熱温度を挙げることができる。固液分離時供される反応生成物の温度が0℃以上であると、固液分離が濾過の場合ろ過速度に優れる傾向があることから好ましい。反応生成物の温度が、大気圧の沸点以上の温度である場合は、加圧ろ過すればよい。
固液分離により得られた固体成分は、必要に応じて、通風乾燥、スプレードライ、減圧乾燥、加熱乾燥等により乾燥してもよい。上記乾燥は、0〜200℃程度の温度で、得られた固体の質量減少が無くなるまで行うことが好ましい。十分に乾燥することにより、工程(1−2)で用いる酸の量と層状化合物との重量比の制御が容易になる傾向がある。
固液分離により得られた固体成分は、乾燥する前に洗浄液により洗浄してもよい。
洗浄液としては、水、塩基性水溶液及び酸性水溶液が挙げられる。好ましい塩基性水溶液としては、例えば、ピペリジン又はヘキサメチレンイミン等のアミン化合物、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキルアンモニウム水酸化物等を含む水溶液が挙げられ、ピペリジン又はヘキサメチレンイミンを含む水溶液がより好ましい。塩基濃度としては、例えば、0.00001〜1mol/lの範囲を挙げることができる。
酸性水溶液としては、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸等を含む水溶液が挙げられる。酸濃度は、例えば、0.00001〜1mol/lの範囲を挙げることができる。
洗浄は、洗浄液のpHが7〜11となるまで固体成分を洗浄することが好ましい。洗浄液の温度は、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。洗浄液の好ましい上限温度は大気圧での洗浄液の沸点である。
上記液体成分あるいは洗浄後の洗浄液中に残存する未反応の原料は、液体成分(または洗浄液)のまま工程(1−1)に用いてもよいし、未反応の原料を回収して、工程(1−1)に用いてもよい。液体成分に含まれる構造規定剤は、イオン交換樹脂等を用いて構造規定剤を回収して用いてもよい。
上記固体成分は、さらに、構造規定剤を加えて、再処理を行ってもよい。再処理する方法として好ましいものは、例えば加圧又は減圧ろ過により固体を得た後、加圧又は減圧を解除し、得られた固体と構造規定剤又は構造規定剤を含む溶液とを接触させた後、再びろ過する方法、特開2010−95423号公報に記載される方法等が挙げられる。また、ろ過又はろ過及び洗浄により得た固体を乾燥したものと、ガス状又は液状の構造規定剤と接触させる方法も好ましい方法として挙げられる。再処理に用いられる好ましい構造規定剤としては、ピペリジンが挙げられる。
ろ過又はろ過及び洗浄により得た固体と構造規定剤との接触温度は、0℃〜250℃が好ましい。接触温度は50℃以上がより好ましく、さらに好ましくは110℃〜工程(1−1)における加熱温度である。温度が低すぎると、構造規定剤による再処理の効果を十分に得るために必要な時間が長くなる恐れがある。
〔工程(1−2)〕
工程(1−2)は、工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する工程である。この工程を行うことにより、Ti−MWW前駆体が生成する。
混合方法としては、例えば、層状化合物に酸又は酸を含む溶液を噴霧する方法、層状化合物に酸又は酸を含む溶液を塗布する方法、加熱したベッセルあるいはチューブ内に酸又は酸を含む溶液と層状化合物とを流通させる方法、酸又は酸を含む溶液に層状化合物を浸漬する方法、酸又は酸を含む溶液と層状化合物とを攪拌する方法等を挙げることができる。
浸漬する方法において、加熱による対流、攪拌等により、酸又は酸を含む溶液を流動させることが好ましい。対流させる場合は、還流によるガスの発生や加熱による液の温度差を利用して行う方法が例示される。
攪拌する方法については、工程(1−1)と同様に攪拌すればよい。
好ましい混合方法としては、酸又は酸を含む溶液と層状化合物とを攪拌する方法、酸又は酸を含む溶液に層状化合物を浸漬する方法が好ましい。
酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよい。無機酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、ホウ酸及びフルオロスルホン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、及び酒石酸等が挙げられる。ホウ酸は、工程(1−1)で使用されたホウ酸を回収したものであってもよい。酸は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
好ましい酸としては、4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸を少なくとも一種以上含む酸が好ましい。4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸としては、硝酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、硝酸と硫酸との組み合わせ、硝酸とホウ酸との組み合わせ、等が挙げられる。
酸を含む溶液は、例えば、酸を溶媒に溶解させることにより調製することができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒もしくはそれらの混合物が挙げられ、特に水が好ましい。
酸を含む溶液の酸の濃度としては、例えば、0.01〜20mol/lの範囲を挙げることができる。酸として無機酸を用いる場合には、無機酸の濃度は1〜5mol/lが好ましい。無機酸とホウ酸とを組み合わせる場合、好ましいホウ酸の使用量は、0.0001〜1mol/lである。
また、酸を含む溶液には有機酸塩又は無機酸塩を含有していてもよい。上記塩を構成するカチオンとしては、例えば、ピペリジンやヘキサメチレンイミン等の有機アミン化合物に水素原子が結合したカチオン;およびステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム;ナトリウム、カリウム、カルシウム、やマグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオン;及びアンモニウムのカチオン等が挙げられる。好ましいカチオンとしては、ピペリジンやヘキサメチレンイミン等の有機アミン化合物に水素原子が結合したカチオンおよびステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムのカチオンがあげられる。特に好ましいカチオンとしては、ピペリジンやヘキサメチレンイミンに水素原子が結合したカチオンが挙げられる。
酸を含む溶液における塩の濃度としては、0.0001〜1mol/lの範囲が好ましい。
層状化合物と酸又は酸を含む溶液との混合温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲が挙げられ、50℃〜150℃の範囲が好ましく、60℃〜120℃の範囲がより好ましい。
層状化合物を流動させながら酸と混合する場合、好ましい混合時間は、0.1〜240時間の範囲であり、より好ましい混合時間は、2〜48時間の範囲である。
好ましくは、酸又は酸を含む溶液が還流する程度の温度で混合することが好ましい。工程(1−2)について酸又は酸を含む溶液を還流させる場合、酸又は酸を含む溶液と、ジャケットなどの加熱媒体との温度差は、例えば、1〜50℃の範囲を挙げることができる。
工程(1−2)における圧力としては、絶対圧で例えば、0.01MPa〜1.1MPaの範囲を挙げることができ、好ましくは大気圧である。
工程(1−2)は、バッチ式で行うこともできるし、連続式で行うこともできる。何れの方式においても撹拌翼等により撹拌しながら行うこともできるし、撹拌翼等により撹拌を行わずに行うこともできる。バッチ式で撹拌翼等により撹拌を行わない場合は、工程(1−2)は還流させながら行う方法が好ましい。
工程(1−2)によって得られた反応生成物から、固体として、Ti−MWW前駆体を取り出すことができる。該反応生成物からのTi−MWW前駆体の取り出しは、固液分離に供される該反応生成物の温度が0℃以上、好ましくは20℃〜100℃の範囲である以外は、工程(1−1)によって得られた反応生成物から層状化合物を含む固体成分を固液分離する方法と同様に行えばよい。
固液分離を複数回に分けて行う場合、沈殿物の固着防止のため、該反応生成物を適宜撹拌しながら必要に応じて1〜30日程度保管することができる。
取り出されたTi−MWW前駆体は、必要に応じて洗浄液で洗浄してもよい。洗浄方法は、固液分離により得られた固体成分を乾燥する前に行う洗浄方法と同様に行えばよい。
上記洗浄方法における洗浄液としては、水、又は、ピペリジン等の構造規定剤及び/若しくはホウ酸を含有する水溶液が好ましい。
上記洗浄方法における洗浄液の温度としては0℃〜110℃が好ましい。洗浄回数が複数の場合、洗浄液の温度は毎回異なっていてもよい。
また、比較的ろ過性の良い1回目は30℃以下の洗浄液を使用し、2回目以降、ろ過性が悪化した後、30℃以上の温度の洗浄液を使用する方法を例示することができる。
洗浄方法は、洗浄された液のpHが4〜8程度になるまで行うことが好ましい。
必要に応じて0.01〜10質量%過酸化水素水溶液で洗浄してもよい。

ろ液や洗浄に用いた液を、ろ過等により有効成分を回収し再利用することが好ましい。具体的には、ピペリジンあるいはヘキサメチレンイミンのような構造規定剤を含む溶液を、イオン交換樹脂を用いて回収する方法が挙げられる。また、洗浄工程で用いた液をイオン交換処理等で再生した後、再利用することもできる。
取り出されたTi−MWW前駆体は、さらに必要に応じて、通風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等により乾燥してもよい。上記乾燥は、50〜200℃程度の温度、好ましくは100℃〜200℃程度、より好ましくは、150℃〜200℃で程度、得られたTi−MWW前駆体の質量減少が無くなるまで行うことが好ましい。乾燥後に得られたTi−MWW前駆体は、密閉容器に入れ、保管することもできる。密閉容器は光を遮断するものであってもよい。保管期間に特に制限はないが、通常1日〜1年程度である。
次に、第二の方法について、工程(2−1)及び工程(2−2)を順次、説明する。
〔工程(2−1)〕
工程(2−1)は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程である。
工程(1−1)におけるチタン化合物を用いないこと以外は、第一の方法の工程(1−1)と同様に行えばよい。
工程(2−1)により、層状ボロシリケートを得ることができる。
〔工程(2−2)〕
工程(2−2)は、工程(2−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程である。この工程を行うことにより、Ti−MWW前駆体が生成する。
工程(2−2)で使用されるチタン含有化合物としては、工程(1−1)に記載されたものと同様のチタン含有化合物である。
チタン含有化合物の使用量は、工程(2−1)で得られた層状化合物1重量部に対して、チタン含有化合物中のチタン原子の重量として、例えば、0.001重量部〜1重量部の範囲を挙げることができ、好ましくは、0.01重量部〜0.5重量部の範囲が挙げられる。
酸としては、工程(1−1)に記載されたものと同様の酸である。
〔工程(2−2)〕
工程(2−2)の具体的な混合方法としては、工程(1−2)における工程(1−1)で得られた層状化合物に代えて、工程(2−1)で得られた層状化合物及びチタン含有化合物を用いる以外は、工程(1−2)と同様に行えばよい。
続いて、第三の方法について、工程(3−1)及び工程(3−2)を順次、説明する。
〔工程(3−1)〕
工程(3−1)は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程である。
具体的には、工程(1−1)と同様に行えばよい。
〔工程(3−2)〕
工程(3−2)は、工程(3−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程である。
具体的には、工程(2−2)における工程(2−1)で得られた層状化合物の代わりに、工程(3−1)で得られた層状化合物を用いる場合と同様に行えばよい。
また、前記第一〜第三の方法とは異なるTi−MWW前駆体の製造方法としては、例えば、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物および水を含有する混合物を加熱して得られる層状ボロシリケートを、好ましくは酸等と接触させ構造規定剤を除いた後、焼成してB−MWWを得て、得られたB−MWWを酸等によりホウ素を除去した後、構造規定剤、チタン含有化合物及び水を加え、得られた混合物を加熱して層状化合物を得て、これを約6M硝酸と接触させる方法を挙げることもできる(例えば、Chemical Communication 1026−1027,(2002))。
尚、前記のように種々の方法で得られたTi−MWW前駆体は530℃の温度で焼成することにより、紫外可視吸収スペクトルで210nm〜230nmにピークをもつTi−MWWへと変化する。
新チタノシリケートとしては、Ti−MWW前駆体が好ましく、前記に例示された方法によって得られたTi−MWW前駆体がより好ましく、第三の方法によって得られたTi−MWW前駆体が、とりわけより好ましい。
Ti−MWW前駆体は、前述したように、200℃を超え、1000℃以下の温度で加熱することによりTi−MWWとなる。本発明では、Ti−MWW前駆体からTi−MWWに加熱する操作を焼成と記すことがある。焼成して得られたTi−MWWは、紫外可視吸収スペクトルで210nm〜230nmにピークを有する。
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は窒素などの不活性ガス雰囲気下で、200℃を超え、1000℃以下の所定の温度まで昇温した後、酸化性ガスを導入する方法を挙げることができる。酸化性ガスとしては、空気あるいは空気と窒素の混合ガスが挙げられる。空気は、メンブレンドライヤー等の乾燥装置で乾燥させた空気であっても、水を含んだ空気であってもよい。また、圧縮空気であってもよい。
焼成方式としては、例えば、流通管に充填したTi−MWW前駆体に上記ガスを流通させながら加熱する流通方式、ロータリーキルン等を用いてTi−MWW前駆体を流動させながら加熱する流動方式、マッフル炉等を用いて、Ti−MWW前駆体を静置し、ガスを対流させて加熱する対流方式等が挙げられる。
当該焼成における焼成温度は、200℃を超え、1000℃以下の範囲であり、好ましくは300〜650℃の範囲である。200℃以上であると焼成時間が短縮される傾向があり、1000℃以下であると層状構造及びTi−MWW構造が維持される傾向があることから好ましい。
所定の温度までの昇温速度としては、例えば、30℃/時間〜600℃/時間の範囲を挙げることができる。
以下に好ましい焼成方法の具体例を示す。例えば、流通管にTi−MWW前駆体を充填し、空気等の酸化性ガスを流通させながら120℃/時間程度の昇温速度で500〜550℃程度まで加熱し、該温度を1〜10時間程度保持する。このような酸化性ガス雰囲気下で焼成を行うことにより、Ti−MWW前駆体に付着する構造規定剤等を燃焼させて除去することができる。
また、窒素のような不活性ガス雰囲気あるいは、酸素濃度10%未満程度の窒素と空気の混合ガスのような酸化力の低いガス雰囲気中で加熱することにより、焼成時における上記残渣の燃焼による発熱を低減することができる。続いて、加熱したまま必要に応じて空気等の酸素濃度10%以上の酸化性ガス雰囲気に切替えることにより、上記残渣を十分に除去することができる。
具体的には、窒素で3倍以上に希釈した空気あるいは窒素等のガスを流通させながら120℃/時間〜600℃/時間程度の昇温速度で500〜550℃程度まで加熱し、該温度を1〜5時間程度保持した後、温度を保持したまま空気に切替え、1〜5時間程度保持することにより、有機窒素化合物等の残渣を燃焼させて除去することができる。
また、焼成後の上記残渣がある程度許容できる場合には、窒素のような不活性ガス雰囲気あるいは、酸素濃度10%未満程度の窒素と空気の混合ガスのような酸化力の低いガス雰囲気中で加熱による上記残渣の除去を行えばよい。具体的には、窒素で3倍以上に希釈した空気あるいは窒素等のガスを流通させながら120℃/時間〜600℃/時間程度の昇温速度で500〜550℃程度まで加熱し、該温度を1〜10時間程度保持することで上記残渣の低減することができる。
好ましくは、窒素のような不活性ガス雰囲気あるいは、酸素濃度10%未満程度の窒素と空気の混合ガスのような酸化力の低いガス雰囲気中で加熱した後、空気等の酸素濃度10%以上の酸化力の高いガス雰囲気に切替えて、構造規定剤等の残渣を十分に除去する方法が好ましい。
本発明の好適な新チタノシリケートとして、前記のTi−MWW前駆体に加え、Ti−MWW前駆体を焼成して得られたTi−MWW(以下、Ti−MWW(I)と記すことがある)を、再び、構造規定剤と混合(以下、「構造規定剤処理」ということがある)して得られたものも挙げることができる。
構造規定剤処理して得られた新チタノシリケートは、通常、Ti−MWW前駆体である。
構造規定剤処理における構造規定剤の使用量は、チタノシリケート(I)の使用量1質量部に対し、例えば、0.001重量部以上が挙げられ、好ましくは、0.1重量部以上である。特に、チタノシリケート(I)と構造規定剤との混合を撹拌しながら溶媒の存在下で行う場合、構造規定剤の使用量は上記の基準で、1重量部以上がさらに好ましく、2重量部以上がとりわけ好ましい。また、構造規定剤の使用量は、チタノシリケート(I)の使用量1重量部に対し、100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましく、15重量部以下がとりわけ好ましく、10重量部以下が特に好ましい。構造規定剤の量が上記範囲内にあると、構造規定剤処理により得られるチタノシリケートの触媒能が向上する傾向があることから好ましい。
構造規定剤処理は、溶媒存在下で行うこともできる。溶媒は水が好ましい。溶媒の使用量は、構造規定剤1重量部に対し、撹拌を行いながら混合する場合には例えば1重量部〜100重量部の範囲を挙げることができ、撹拌を行わないで混合する場合には0.01〜10質量部の範囲が挙げられる。
構造規定剤処理としては、例えば、チタノシリケート(I)と構造規定剤とをオートクレーブ等の密閉容器に入れ、加熱しつつ加圧する方法、例えば、大気下、ガラス製フラスコ等の容器中でチタノシリケート(I)と構造規定剤とを撹拌しながら、あるいは撹拌せずに混合する方法等を挙げることができる。
構造規定剤処理の混合温度の下限としては、例えば、0℃以上を挙げることができ、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上が挙げられる。また、構造規定剤処理の混合温度の上限としては、例えば、250℃以下が挙げられ、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下が挙げられる。
昇温速度は、例えば、6℃/時間〜120℃/時間の範囲が挙げられ、好ましくは12℃/時間〜60℃/時間の範囲が挙げられる。
構造規定剤処理の際の混合時間としては、4時間〜120時間の範囲が挙げられる。
構造規定剤処理の際の混合温度を100℃以上で行う場合、その混合時間は1時間〜100時間の範囲が好ましい。
構造規定剤処理の際の圧力は、例えば、ゲージ圧力で0〜10MPa程度を挙げることができる。構造規定剤処理して得られたものは、例えば、ろ過等の固液分離により新チタノシリケートを取得することができる。固液分離は、工程(1−1)の項に記載に準じて行えばよい。
尚、構造規定剤処理して得られたものの固液分離を行う場合、固液分離に供される構造規定剤処理して得られたものの下限は、0℃以上を挙げることができ、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。下限は、180℃以下が挙げられ、好ましくは100℃以下である。
構造規定剤処理は、さらに必要に応じて、洗浄、乾燥等の後処理を行ってもよい。洗浄及び乾燥は、工程(1−1)の項に記載に準じて行えばよい。
構造規定剤処理して得られたものの洗浄を行う場合、洗浄液は水が好ましい。洗浄温度の下限は0℃以上が挙げられ、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上である。洗浄温度の上限は100℃以下が好ましい。
構造規定剤処理して得られたものの乾燥を行う場合、乾燥温度は、250℃以下が挙げられる。また、棚段式の送風乾燥器を用いて通風乾燥する方法も、効率的に乾燥できるため好ましい。
構造規定剤処理して得られたものをスプレードライで乾燥する場合、固液分離あるいは洗浄を行わずに乾燥することもできる。この場合の乾燥温度は0℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。
また、長期間保管する場合は、100℃〜200℃で十分に乾燥させた後、密閉性があり遮光性を持つ容器内で保存することが好ましい。
かくして製造される新チタノシリケートは、例えば、オレフィンを過酸化水素によって酸化する反応などの酸化反応等において触媒として使用することができる。新チタノシリケートのSi/N比は5〜20の範囲であることが好ましく、5〜12の範囲であることがより好ましい。新チタノシリケートとしては、Ti−MWW前駆体のほか、Ti−MWW前駆体に、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤を用いてシリル化したものも好適に用いられる。
本発明のチタノシリケートの調製方法は、触媒能が低下したチタノシリケートと、環状2級アミンと、を混合する工程(以下、本工程と記すことがある)を含む。
本工程を施して得られたチタノシリケートを、再生チタノシリケートとも記すことがある。
触媒能が低下したチタノシリケート(以下、劣化チタノシリケートと記すことがある)とは、反応に供せられるチタノシリケートが有する触媒能力よりも低い当該反応における触媒能力を有するチタノシリケートを意味する。
当該反応としては、プロピレンなどの炭素・炭素二重結合を有する化合物(詳細は後述する。)と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る反応(以下、オキシラン化反応と記すことがある。詳細は後述する。)等を挙げることができる。
反応に供せられるチタノシリケートとしては、触媒能が低下する前のチタノシリケートであり、例えば、前記の新チタノシリケート及び本発明の調製方法によって得られるチタノシリケート(以下、再生チタノシリケートと記すことがある)等を挙げることができる。
劣化チタノシリケートの調製方法としては、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物の酸化生成物(例えば、プロピレンの酸化生成物であるプロピレンオキサイド、プロピレングリコール等)と、触媒能が低下する前のチタノシリケートとを混合する方法等を挙げることができる。
炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物の酸化生成物は、これら酸化生成物をそのまま用いてもよいし、オキシラン化反応を行うことによって生じる酸化生成物を用いてもよい。
具体的な劣化チタノシリケートとしては、例えば、(i)新チタノシリケートの存在下、オキシラン化反応を行った後に回収されるチタノシリケート、例えば、(ii)再生チタノシリケートの存在下、オキシラン化反応を行った後に回収されるチタノシリケート、例えば、(iii)別途、調製された酸化生成物と、新チタノシリケート及び/又は再生チタノシリケートと、を混合した後に回収されるチタノシリケート等を挙げることができる。
(ii)のオキシラン化反応については後述する酸化工程で詳しく説明し、(i)のオキシラン化反応については後述する酸化工程における再生チタノシリケートを新チタノシリケートに置き換えて行えばよい。
本工程に供せられる劣化チタノシリケートのSi/N比は、通常、新チタノシリケートのSi/N比よりも高く、例えば、10〜30であり、好ましくは、15〜20等である。
劣化チタノシリケートのX線回折パターンは上記に示す値にピークを有するX線回折パターンであること好ましく、劣化チタノシリケートの紫外可視吸収スペクトルは、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れることが好ましい。すなわち、劣化チタノシリケートは、新チタノシリケートと同様のTi−MWW前駆体構造を有することが好ましい。
本工程に供せられる劣化チタノシリケートは酸化反応等の反応に使用されていた形状のままで、本工程を施してもよいし、反応に使用されていた劣化チタノシリケートを破砕してから本工程を施してもよい。また、劣化チタノシリケートは反応に使用した劣化チタノシリケート以外の触媒や、アルミナ等の反応充填物と混合された状態で、本工程を施してもよい。
本工程は、例えば、25〜250℃の温度範囲等、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜200℃の温度範囲等で混合する。
本工程の圧力としては、例えば、ゲージ圧力で0〜10MPa程度の常圧から加圧下が好ましい。再生チタノシリケートは、例えば、ろ過により環状2級アミンと分離される。必要により、分離した再生チタノシリケートを、水によって洗浄した後、乾燥等の後処理を行ってもよい。
本工程の具体例としては、例えば、劣化チタノシリケートと、環状2級アミンとをオートクレーブ等の密閉容器で混合し、上記温度範囲に保温及び加圧する方法、例えば、常圧下、ガラス製焼成管等の容器内で劣化チタノシリケートと環状2級アミンとを混合し上記温度範囲で保温する方法等が挙げられる。
本工程の好ましい混合時間の下限は10分間であり、好ましくは2時間であり、より好ましくは10時間であり、さらにより好ましくは12時間である。上限は120時間であり、好ましくは72時間であり、より好ましくは30時間であり、さらにより好ましくは24時間である。
本工程で用いられる環状2級アミンとは、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素であって該環を形成する炭素原子の少なくとも1つがイミノ基に置き換わった化合物であり、言い換えれば、環構造にイミノ基を有する環式化合物であって、該環構造は非芳香族性である化合物を意味する。
環状2級アミンとしては、例えば、式(I)
Figure 2011212673
(式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選ばれる2つの基からなる組み合わせであって、前記の2つの基は互いに隣接する2つの炭素原子に結合している組み合わせは、互いに結合して前記2つの炭素原子とともに炭化水素環を形成していてもよい。nは0〜9の整数を表す。)
で表される化合物などが挙げられる。
ここで、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル基等の炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル基等の炭素数2〜12のアルキニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3〜12のシクロアルキル基が例示される。
アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、下記A群から選ばれる少なくともひとつの置換基を有していてもよい。
前記シクロアルキル基は、下記B群から選ばれる少なくともひとつの置換基を有していてもよい。
前記アリール基は、下記C群から選ばれる少なくともひとつの置換基を有していてもよい。
A群:シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲンおよびアミノ基からなる群。
B群:アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲンおよびアミノ基からなる群。
C群:アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲンおよびアミノ基からなる群。
A群、B群およびC群におけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基に関しては、前記と同じ意味を表す。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどの炭素数1〜12のアルコキシ基である。
アルコキシカルボニル基としては、前記例示のアルコキシ基とカルボニル基とからなる基が例示される。
具体的な式(I)で表される化合物としては、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、アゾカン等の炭素数3〜12の脂環式炭化水素の1つのメチレン基がイミノ基(−NH−)に置き換わった化合物(式(I)におけるnが0〜9で、X1、X2、X3、X4、X5及びX6がいずれも水素原子である化合物);例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン等の式(I)におけるX1、X2、X3、X4、X5及びX6から選ばれる2つの基からなる組み合わせであって、前記の2つの基は互いに隣接する2つの炭素原子に結合している組み合わせは、互いに結合して前記2つの炭素原子とともに炭化水素環を形成している化合物;例えば、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2-エチルピペリジン、4-エチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタエチルピペリジン、3,5-ジエチルピペリジン、2,6-ジエチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の式(I)におけるX1、X2、X3、X4、X5又はX6が、アルキル基である化合物等が挙げられる。
好ましい環状2級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。
環状2級アミンは、酸とともに塩となっていてもよい。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜12のスルホン酸が挙げられる。好ましい酸としては硝酸が挙げられる。
好ましい環状第2アミンの塩としては、例えばピペリジンあるいはヘキサメチレンイミンの酸塩(たとえば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸塩、スルホン酸塩)が挙げられる。
環状2級アミンの混合量の下限としては、触媒能が低下したチタノシリケート1重量部に対し、例えば、0.01重量部、好ましくは、0.1重量部、より好ましくは、1重量部であり、さらにより好ましくは2重量部である。環状2級アミンの混合量の上限としては、触媒能が低下したチタノシリケート1重量部に対し、100重量部であり、好ましくは10重量部、より好ましくは5重量部である。
本工程は、さらに、水及び/又は有機溶媒の存在下に混合してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜6のアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの炭素数3〜6のケトン溶媒、例えば、アセトニトルなどのニトリル溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ポリプロピレングリコールジアセテートなどのエステル溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。
本工程は水又は水と炭素数1〜6のアルコールの混合溶媒の存在下で行うことが好ましく、水の存在下で混合することが好ましい。
環状2級アミン又はその塩は標準状態で液状であることが好ましい。標準状態で液状であることによって工業的に容易に取り扱うことが可能である。本発明においては標準状態とは20℃、1気圧を意味する。
本工程は、過酸化水素の非存在下で行うことが好ましく、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物の酸化生成物及び過酸化水素の非存在下で行うことが好ましい。
本工程によって得られる再生チタノシリケートのSi/N比は、劣化チタノシリケートのSi/N比よりも低くてもよく、新チタノシリケートのSi/N比に達する必要はない。具体的には、5〜20の範囲が例示され、例えば、10〜15の範囲であっても優れた触媒能を示す。
再生チタノシリケートのX線回折パターンは上記に示す値にピークを有するX線回折パターンであること好ましく、再生チタノシリケートの紫外可視吸収スペクトルは、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れることが好ましい。すなわち、劣化チタノシリケートは、新チタノシリケート及び劣化チタノシリケートと同様のTi−MWW前駆体構造を有することが好ましい。
本工程によって得られた再生チタノシリケートは、例えば、炭素・炭素二重結合を有する化合物と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る反応(オキシラン化反応)の触媒等に用いることができる。
以下、再生チタノシリケートの存在下、炭素・炭素二重結合を有する化合物と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る反応(以下、酸化工程と記すことがある)について説明する。
炭素・炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物を挙げることができ、好ましくは、炭素数2〜12のアルケン又は炭素数4〜12のシクロアルケンであり、該アルケン及び該シクロアルケンは置換基を有していてもよい化合物等を挙げることができる。炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物を総称して「オレフィン」と記すことがある。
オレフィンに含まれる置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
炭素数2〜10のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、2−ブテン、イソブテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、2−オクテン、3−オクテン、2−ノネン、3−ノネン、2−デセン及び3−デセン等が例示される。
炭素数4〜10のシクロアルケンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン等が例示される。
より好ましいオレフィンは、プロピレンである。
酸化工程に供する再生チタノシリケートは、再生チタノシリケート及び過酸化水素が予め接触させる工程(以下、接触工程と記すことがある)を行った後にオレフィンと反応させてもよい。
接触工程に用いられる過酸化水素は、過酸化水素溶液であることが好ましい。該過酸化水素溶液における過酸化水素濃度は、例えば、0.0001重量%〜50重量%の範囲等を挙げることができる。過酸化水素溶液としては、例えば、水単独の溶液、前記有機溶媒の溶液、または水と有機溶媒との混合溶液である。
接触工程における温度としては、例えば、0〜100℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、0〜60℃の範囲等が挙げられる。
過酸化水素は、例えば、0.0001重量%〜100重量%の濃度範囲でオレフィンを酸化する反応に用いられる。オレフィンに対する過酸化水素の量は、オレフィン:過酸化水素のモル比として、例えば、1000:1〜1:1000の範囲等を挙げることができる。
過酸化水素としては、公知の方法で製造されたものを用いてもよいし、酸化工程の行われる反応器内で酸素と水素から製造される過酸化水素を使用することもできる。
過酸化水素は、例えば、貴金属触媒の存在下、酸素と水素とから製造することによって得ることができる。かかる貴金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、金等の貴金属、またはそれらの合金もしくは混合物があげられる。好ましい貴金属としては、パラジウム、白金、金が挙げられる。さらにより好ましい貴金属はパラジウムである。パラジウムとしては、例えば、パラジウムコロイドを用いてもよい(例えば、特開2002-294301号公報、実施例1等参照)。上記貴金属触媒として、酸化工程内で還元することにより貴金属に変換される貴金属化合物を用いてもよく、好ましい貴金属化合物はパラジウム化合物である。なお、該貴金属触媒として、パラジウムを用いる場合、更に白金、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム等のパラジウム以外の金属も添加混合して用いることができる。好ましいパラジウム以外の金属としては、金、白金が挙げられる。
該パラジウム化合物として、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジブロモテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類が例示される。
貴金属は、担体に担持して使用されることが好ましい。貴金属は、チタノシリケートに担持して使用することもできるし、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア等の酸化物;ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸等の水化物;炭素;あるいはそれらの混合物に担持して使用することもできる。チタノシリケート以外に貴金属を担持させた場合、貴金属を担持した担体をチタノシリケートと混合し、当該混合物を触媒として使用することができる。チタノシリケート以外の担体の中では、炭素が好ましい担体として挙げられる。炭素担体としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等が知られている。ここで、貴金属を担持し得るチタノシリケートとしては新チタノシリケートであっても再生チタノシリケートであってもよい。
貴金属触媒の調製方法としては、例えば、貴金属化合物を担体上に担持した後、還元する方法が知られている。貴金属化合物の担持は、含浸法等の従来公知の方法を用いることができる。
還元方法として、還元ガスを用いる場合には、適当な充填管に固体状の貴金属化合物の担持物を充填し、該充填管に還元性ガスを注入するといった簡便な操作で還元処理を行うことができる。還元性ガスは、水素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等、あるいはこれらから選ばれる2種以上の混合ガスが例示される。中でも、水素が好ましい。また、還元性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン又は水蒸気(スチーム)等、あるいはこれらから選ばれる2種以上を混合した希釈ガスで希釈してもよい。
上記貴金属触媒は、貴金属を、例えば、0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含む。貴金属の使用量(下限)は、チタノシリケート触媒1重量部に対し、例えば、0.00001重量部以上を挙げることができ、好ましくは0.0001重量部以上、より好ましくは0.001重量部以上を挙げることができる。貴金属の使用量(上限)は、チタノシリケート1重量部に対し、例えば、100重量部以下等が挙げられ、好ましくは20重量部以下、より好ましくは5重量部以下が挙げられる。
酸化工程は、例えば、再生チタノシリケートの存在下、過酸化水素を含む溶液とオレフィンとを混合する方法、例えば、酸素、水素及びオレフィンの混合物に、再生チタノシリケート及び貴金属触媒の存在下に過酸化水素を発生させながらオレフィンを酸化する方法等を挙げることができる。
酸化工程は、溶媒を含む液相中で行われることが好ましい。該溶媒としては、水、有機溶媒あるいはその両者の混合物等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびt−ブタノール等の炭素数1〜8の脂肪族アルコール;例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数2〜8のグリコール等が挙げられる。好ましいアルコール溶媒としては、例えば、炭素数1〜4の1価アルコール等を挙げることができ、より好ましくはt−ブタノール等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5〜10の脂肪族炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素が挙げられる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ブチロニトリル等の炭素数2〜4のアルキルニトリルおよびベンゾニトリル等を挙げることができ、好ましくはアセトニトリル等が挙げられる。
酸化工程に用いられる溶媒としては、触媒活性、選択性の観点から、炭素数1〜4の1価アルコール、アセトニトリル等が好ましい。
酸化工程における反応温度の下限としては、例えば、0℃を挙げることができ、好ましくは40℃が挙げられる。酸化工程における反応温度の上限としては、例えば、200℃を挙げることができ、好ましくは150℃が挙げられる。
酸化工程における反応圧力(ゲージ圧)の下限としては、例えば、0.1MPaの加圧下を挙げることができ、好ましくは1MPaの加圧下を挙げることができ、より好ましくは20MPaの加圧下を挙げることができ、さらにより好ましくは10MPaを挙げることができる。
酸化工程の生成物から蒸留分離等の公知の方法によりオキシラン化合物を得ることができる。
酸化工程に用いられるオレフィンの量は、その種類や反応条件等によって異なるが、液相の溶媒の合計量100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。上記有機化合物の量は、液相の溶媒の合計量100重量部に対して、好ましい上限が1000重量部、より好ましい上限が100重量部である。
酸化工程において、再生チタノシリケートの量は、反応の種類に応じて適宜選択することができ、酸化工程に用いられる溶媒の合計量100重量部に対して、下限が、例えば、0.01重量部、好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.5重量部を挙げることができ、上限としては、例えば、20重量部、好ましくは10重量部、より好ましくは8重量部が挙げられる。
酸化工程においては、緩衝剤を存在させた場合、触媒活性の減少を防止したり、触媒活性をさらに増大させたり、貴金属触媒の存在下に酸素及び水素から過酸化水素を調製しながら酸化工程を行う場合、酸素及び水素の利用効率を向上させる傾向があることから好ましい。
上記緩衝剤は、溶液中に溶解させることにより酸化工程中に存在させることが好ましいが、同一工程内で製造した過酸化水素を酸化剤として用いる場合、過酸化水素製造用の貴金属触媒の一部に含ませておいてよい。例えば、Pdテトラアンミンクロリド等のアンミン錯体等を担体上に含浸法等によって担持した後、還元し、アンモニウムイオンを残存させ、酸化反応中に緩衝剤を発生させる方法等を挙げることができる。緩衝剤の添加量は、溶媒1kgあたり、例えば、0.001mmol〜100mmolの範囲を挙げることができる。
上記緩衝剤としては、1)硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸2水素イオン、ピロリン酸水素イオン、ピロリン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、水酸化物イオンおよびC−C10カルボン酸イオンからなる群より選ばれるアニオンと、2)アンモニウム、C−C20アルキルアンモニウム、C−C20アルキルアリールアンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれるカチオンとからなる緩衝剤が例示される。
炭素数1〜10のカルボン酸イオンとしては、例えば、酢酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、カプリル酸イオン、カプリン酸イオン、安息香酸イオン等が挙げられる。
アルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等が挙げられる。
好ましい緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、ピロリン酸水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩および酢酸アンモニウム等の炭素数1〜10のカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、好ましいアンモニウム塩としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム等が挙げられる。
酸化工程は、アンモニウム、アルキルアンモニウムまたはアルキルアリールアンモニウムからなる塩の存在下に行うことも可能である。
酸化工程において、酸化工程内で貴金属触媒の存在下に酸素と水素とから過酸化水素を調製する場合は、キノイド化合物を酸化工程中に存在させることにより、オキシラン化合物への選択性をさらに増大させる傾向があることから好ましい。
キノイド化合物としては、例えば、式(1)
Figure 2011212673
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子を表すか、又は、RとRと、若しくは、RとRとが、互いに結合して、R、R、RおよびRのそれぞれが結合している炭素原子とともに、置換基を有していてもよいベンゼン環若しくは置換基を有していてもよいナフタレン環を形成していてもよい。XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子もしくはNH基を表す。)
で表される化合物が挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、例えば
1)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、XおよびYが共に酸素原子であるキノン化合物(1A)、
2)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、Xが酸素原子であり、YがNH基であるキノンイミン化合物(1B)、
3)式(1)において、R、R、RおよびRが、水素原子であり、XおよびYがNH基であるキノンジイミン化合物(1C)が例示される。
式(1)で表される化合物の他の例示として、式(2)
Figure 2011212673
(式中、XおよびYは前記と同じ意味を表し、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基もしくはアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等の炭素数1〜5のアルキル基)で表されるアントラキノン化合物等を挙げることができる。
式(1)で表される化合物におけるXおよびYは、酸素原子が好ましい。
上記キノイド化合物としては、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン等のキノン化合物、アントラキノン、例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−ブチルアントラキノン、2−t−アミルアントラキノン、2−イソプロピルアントラキノン、2−s−ブチルアントラキノンまたは2−s−アミルアントラキノン等の2−アルキルアントラキノン化合物、例えば、1,3−ジエチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,7−ジメチルアントラキノン等のポリアルキルアントラキノン化合物、例えば、2,6−ジヒドロキシアントラキノン等のポリヒドロキシアントラキノン化合物等があげられる。
好ましい式(1)で表される化合物としては、例えば、アントラキノン、2−アルキルアントラキノン化合物(式(2)において、XおよびYが酸素原子を表し、Rがアルキル基を表し、Rが水素を表し、RおよびRが水素原子を表す。)等があげられる。
酸化工程におけるキノイド化合物の使用量としては、液相の溶媒1kgあたり、例えば、0.001mmol〜500mmolの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0.01mmol〜50mmolの範囲等が挙げられる。
キノイド化合物は、キノイド化合物のジヒドロ体を酸化工程内で酸素等を用いて酸化させることにより調製することもできる。例えばヒドロキノンや、9,10−アントラセンジオール等のキノイド化合物が水素化された化合物を液相中に添加し、反応器内で酸素により酸化してキノイド化合物を発生させて使用してもよい。
キノイド化合物のジヒドロ体としては、例えば、式(1)で表される化合物のジヒドロ体である式(3)
Figure 2011212673
(式中、R、R、R、R、XおよびYは、前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物、
例えば、式(2)で表される化合物のジヒドロ体である式(4)
Figure 2011212673
(式中、X、Y、R、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物等を挙げることができる。
式(3)および式(4)における好ましいXおよびYとしては、酸素原子である。
好ましいキノイド化合物のジヒドロ体としては、上述の好ましいキノイド化合物に対応するジヒドロ体が挙げられる。
予め調製した過酸化水素を用いる酸化工程の場合、反応装置に特に制限はないが、貴金属触媒存在下に酸素と水素とから過酸化水素を調製しながら行う酸化工程においては、例えば、流通式固定床反応装置、流通式スラリー完全混合装置等を用いることが好ましい。
貴金属触媒存在下に酸素と水素とから過酸化水素を調製しながら行う酸化工程の場合、反応器に供給する酸素と水素のモル比は、例えば、酸素:水素=1:50〜50:1の範囲等を挙げることができ、好ましくは、酸素:水素=1:2〜10:1の範囲等が挙げられる。酸素:水素=1:50よりも酸素の比率が高いとオレフィンの炭素・炭素二重結合が水素原子で還元された副生物の生成が低減され、オキシラン化合物への選択性が向上する傾向があることから好ましく、酸素:水素=50:1よりも酸素の比率が低いとオキシラン化合物の生成速度が向上する傾向があることから好ましい。
貴金属触媒存在下に酸素と水素とから過酸化水素を調製しながら行う酸化工程において、酸素および水素ガスは希釈されていてもよい。希釈に用いるガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン等を挙げることができる。
酸素原料としては、例えば、酸素ガスおよび空気等があげられる。酸素ガスは安価な圧力スウィング法で製造した酸素ガスも使用できるし、必要に応じて深冷分離等で製造した高純度酸素ガスを用いることもできる。
上記の酸化工程に用いられた再生チタノシリケートが再び、触媒能が低下し、劣化チタノシリケートとして回収されたとしても、本工程を施すことにより触媒能が再生されたチタノシリケートが提供可能である。
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例に用いた分析装置)
[元素分析方法]
Ti(チタン)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)の含有量は、アルカリ融解−硝酸溶解−ICP発光分析法により、測定した。N(窒素)含量は、スミグラフ(住友化学分析センター製)を用い、酸素循環燃焼・TCD検出方法にて測定した。
[粉末X線回折法(XRD)]
サンプルを以下の装置、条件で粉末X線回折パターンを測定した。
装置:理学電機社製RINT2500V
線源:Cu Kα線
出力 40kV−300mA
走査範囲:2θ=0.75〜30°
走査速度: 1°/分
[紫外可視吸収スペクトル(UV−Vis)]
サンプルをメノウ製の乳鉢でよく粉砕し、更にペレット化(7mmφ)することにより測定用サンプルを調製し、該測定用サンプルについて以下の装置、条件で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
装置:拡散反射装置(HARRICK製 Praying Mantis)
付属品:紫外可視分光光度計(日本分光製 V−7100)
圧力:大気圧
測定値:反射率
データ取込時間:0.1秒
バンド幅:2nm
測定波長:200〜900nm
スリット高さ:半開
データ取込間隔:1nm
ベースライン補正(リファレンス):BaSOペレット(7mmφ)
(参考例1)
[新チタノシリケートの調製]
後述する参考例2および参考例3で使用した新チタノシリケートは、以下の方法により調製した。すなわち、25℃、空気雰囲気下、オートクレーブにピペリジン(和光純薬社製)899g、イオン交換水2402g、テトラ−n−ブチルオルソチタネート[TBOT](和光純薬社製)46g、ホウ酸(和光純薬社製)565g、ヒュームドシリカ(製品名cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gを溶解させた後、1.5時間熟成させた。さらに、オートクレーブを密閉し、得られたゲルを撹拌しながら8時間かけて、150℃まで昇温した後、同温度で120時間保持することで、水熱合成を行い、懸濁溶液を得た。
この懸濁溶液をろ過した後、得られた固形物を、洗浄液がpH10付近になるまで水洗した。次に、洗浄後の固形物を50℃で重量減少がほぼ見られなくなるまで乾燥することで、層状化合物1を得た。
層状化合物1 75gに2M硝酸3750mL、TBOT 9.5gを加え、溶媒還流温度で、20時間保温した。反応混合物をろ過し、得られた固形物を、洗浄液が中性付近になるまで水洗した後、重量減少がほぼ見られなくなるまで、150℃真空乾燥して61gの白色粉末(固体生成物1)を得た。固体生成物1は、X線回折パターンを測定した結果、MWW前駆体構造を有することが確認された。同様の操作を2回繰り返すことにより、Ti−MWW前駆体1を計122g得た。
Ti−MWW前駆体1 61gを530℃で6時間焼成し、55gの固体生成物2を得た。同様の操作を2回繰り返すことにより、計110gの固体生成物2を得た。固体生成物2は、X線回折パターンとして格子面間隔d=12.1、10.8、8.9、6.1、3.9、3.4Åにピークを有しており、紫外可視吸収スペクトル測定により210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークを持つことから、Ti−MWWであると判定した。
25℃、空気雰囲気下、オートクレーブにピペリジン300g、イオン交換水600g、固体生成物2 80gを懸濁させた後、1.5時間熟成させた。さらに、オートクレーブを密閉し、得られた懸濁液を攪拌しながら、4時間かけて170℃まで昇温した後、同温度で24時間保持することにより懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、得られた固形物を、洗浄液がpH9付近になるまで水洗した。次に該固形物を、真空中150℃で重量減少がほぼ見られなくなるまで乾燥し、79gの白色粉末である新チタノシリケート(触媒A)を得た。触媒Aは、X線回折パターン、紫外可視吸収スペクトル測定結果から、Ti−MWW前駆体であることが判明し、チタン含量は2.08重量%であり、Si/N比が9.2であった。
(参考例2)
[劣化チタノシリケートの調製]
劣化チタノシリケートは、以下の方法にて調製した。25℃、空気雰囲気下、ガラス製ナスフラスコに前記の方法で調製した触媒A 10g、プロピレンオキサイド(和光純薬社製)75g、プロピレングリコール(和光純薬社製)150g、イオン交換水 525gを懸濁させた。得られた懸濁液を攪拌しながら90℃に昇温し、同温度で24時間保持することにより懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、得られた固形物を、20℃のイオン交換水6Lを用いて洗浄した。次に該固形物を、真空中150℃で重量減少がほぼ見られなくなるまで乾燥し、9gの白色粉末の劣化チタノシリケート(触媒B)を得た。触媒Bは、X線回折パターン、紫外可視吸収スペクトル測定結果から、Ti−MWW前駆体であることが判明し、チタン含量は2.12重量%であり、Si/N比が15.6であった。
(実施例1)
[再生チタノシリケートの調製方法]
(参考例2)で調製された劣化チタノシリケートを以下の方法にて再生した。25℃、空気雰囲気下、ガラス製ナスフラスコに、前記の触媒B 1g、ピペリジン(和光純薬社製)3g、イオン交換水 45gを懸濁させ、得られた懸濁液を攪拌しながら170℃に昇温し、同温度で24時間保持することにより懸濁溶液を得た。得られた懸濁溶液をろ過した後、得られた固形物を、洗浄液がpH9付近になるまで水洗した。次に該固形物を、真空中150℃で重量減少がほぼ見られなくなるまで乾燥し、0.6gの白色粉末の再生チタノシリケート(触媒C)を得た。触媒Cは、X線回折パターン、紫外可視吸収スペクトル測定結果から、Ti−MWW前駆体であることが判明し、チタン含量は2.13重量%であり、Si/N比が13.3であった。
(実施例2)
[再生チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
30重量%過酸化水素水溶液(和光純薬社製)と、アセトニトリル(ナカライテスク社製)と、イオン交換水を用い、0.5重量%の過酸化水素を含むアセトニトリル/水混合溶媒(重量比4/1)溶液を調製した。調製した溶液60gと触媒C 10mgを100mLステンレスオートクレーブに充填した。次に、オートクレーブを氷浴に移し、プロピレン1.2gを充填した。さらにアルゴンで2MPa(ゲージ圧)まで反応系内を昇圧した。オートクレーブを攪拌しながら、15分かけて60℃まで昇温し、同温度にて1時間保温することにより反応を行った。反応後、攪拌を止めオートクレーブを氷冷した。氷冷後、液相をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、初期過酸化水素量あたりの(過酸化水素基準の)プロピレンオキサイド収率は86%であった。また、プロピレンオキサイドの生成活性は738.6mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hであった。
(参考例3)
[新チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
触媒Cの代わりに触媒Aを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、初期過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は85%であった。また、プロピレンオキサイドの生成活性は730.0mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hであった。
(参考例4)
[劣化チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
触媒Cの代わりに触媒Bを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行った。その結果、初期過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率は36%であった。また、プロピレンオキサイドの生成活性は305.7mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/hであった。
結果を表1にまとめた。表1からも明らかなように、本発明によれば、再生チタノシリケートは、触媒調製直後(新チタノシリケート)と同等程度の触媒能を有することがわかる。
Figure 2011212673
*1:初期過酸化水素量あたりのプロピレンオキサイド収率
*2:[mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/h]
*3:参考例3(新チタノシリケート)を100とする生成活性の相対比
[mmol(プロピレンオキサイド)/g(チタノシリケート)/h]
(参考例5)
[新チタノシリケートDの調製]
室温、空気雰囲気下で、オートクレーブ中に、ピペリジン899g、イオン交換水2402g、TBOT46g、ホウ酸565g、ヒュームドシリカ(キャボット製cab-o-sil M7D)410gを仕込み、同温度・同雰囲気下で、これらを撹拌しながら溶解させてゲルを調製した。得られたゲルを、1.5時間熟成させた後、オートクレーブを密閉した。さらに撹拌しながら8時間かけて150℃まで昇温した後、同温度で120時間保持することで、水熱合成を行った後、冷却した。水熱合成後の反応生成物は懸濁溶液であった。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10.3になるまでイオン交換水で水洗した。次に、ろ塊を、質量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:50℃)し、524gの層状化合物を得た。得られた層状化合物75gに2M硝酸水溶液3750mLと9.6gのTBOTとを加えた後、加熱し、還流を維持しながら20時間加熱した。冷却後、ろ過し、ろ液が中性付近になるまでイオン交換水で水洗し、質量減少が見られなくなるまで、150℃で真空乾燥した。得られた生成物は、白色粉末であった。上記の操作を数回行い、合計120gの白色粉末(以下「白色粉末(D1)」という。)を得た。この白色粉末(D1)を530℃で6時間焼成し、白色粉末を得た。上記の操作を数回行い、合計108gの白色粉末(以下「白色粉末(D2)」という。)を得た。
室温、空気雰囲気下で、オートクレーブ中に、ピペリジン300g、イオン交換水600g、上記で得られた白色粉末(D2)80gを仕込み、同温度・同雰囲気下で撹拌しながら溶解させてゲルを調製した。得られたゲルを1.5時間熟成させた後、オートクレーブを密閉した。さらに撹拌しながら4時間かけて160℃まで昇温した後、同温度で24時間保持した。得られた反応物は懸濁溶液であった。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが9.6になるまでイオン交換水で水洗した。次に、濾上物を質量減少が見られなくなるまで、150℃で真空乾燥し、白色粉末(以下「白色粉末(D3)」という。)を得た。
室温、空気雰囲気下で、ガラス製3つ口フラスコに、トルエン175mL、上記の通り得られた白色粉末(D3)4.0gを仕込み、還流下で2時間加熱した。冷却後、ろ過し、アセトニトリル/イオン交換水=4/1(質量比)500mLでさらに洗浄した。さらに、質量減少が見られなくなるまで150℃で真空乾燥し、3.6gの白色粉末を得た。この白色粉末のX線回折パターン及び紫外可視吸収スペクトルを測定した結果、この白色粉末はTi−MWW前駆体(以下「新チタノシリケートD」という。)であった。元素分析の結果、新チタノシリケートDは、2.08質量%のTiと36.4質量%のSiを含有していた。この値から計算されたTi/Siのモル比は、0.034であった。
(参考例6)
[新チタノシリケートEの調製]
室温、空気雰囲気下で、オートクレーブ中に、ピペリジン898g、イオン交換水2403g、TBOT(テトラ−n−ブチルオルソチタネート)112g、ホウ酸565g、ヒュームドシリカ(キャボット製cab-o-sil M7D)409gを仕込み、同温度・同雰囲気下で、これらを撹拌しながら溶解させてゲルを調製した。得られたゲルを、1.5時間熟成させた後、オートクレーブを密閉した。さらに撹拌しながら8時間かけて150℃まで昇温した後、同温度で120時間保持することで、水熱合成を行った後、冷却した。水熱合成後の反応物は懸濁溶液であった。得られた懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが10付近になるまで濾上物をイオン交換水で水洗した。次に、濾上物を、重量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:50℃)し、517gの層状化合物を得た。得られた層状化合物75gに2M硝酸水溶液3750mLを加えた後、還流するまで加熱し、還流を維持しながら20時間加熱した。得られた反応生成物を冷却後、ろ過し、ろ液が中性付近になるまで濾上物をイオン交換水で水洗し、さらに、重量減少が見られなくなるまで、150℃で真空乾燥した。得られた生成物は、白色粉末であった(以下、「白色粉末(E1)」という。)。この白色粉末(E1)を530℃で6時間焼成した。上記の操作を数回行い、白色粉末(以下、「白色粉末(E2)」という。)を得た。
室温、空気雰囲気下で、オートクレーブ中に、ピペリジン300g、イオン交換水600g、上記で得られた白色粉末(E2)100gを仕込み、同温度・同雰囲気下で撹拌しながら溶解させてゲルを調製した。得られたゲルを1.5時間熟成させた後、オートクレーブを密閉した。さらに撹拌しながら4時間かけて160℃まで昇温した後、同温度にてさらに1日間、攪拌した。得られた反応物は懸濁溶液であった。該懸濁溶液をろ過した後、ろ液のpHが9付近になるまで濾上物をイオン交換水で水洗した。次に、濾上物の重量減少が見られなくなるまで、濾上物を150℃で真空乾燥し、白色粉末を得た。元素分析の結果、得られた白色粉末は1.74質量%のTiおよび36.6質量%のSiを含有していた。この値から計算されたTi/Siのモル比は、0.028であった。この白色粉末の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果、この白色粉末はTi−MWW前駆体であった(以下「新チタノシリケートE」という。)。
(参考例7)
〔新チタノシリケートF〕
室温、空気雰囲気下、40Lオートクレーブにピペリジン9.1kg、純水25.6kgを混合し撹拌した。次に、得られた混合物にホウ酸6.2kgを加えて撹拌し溶解させた。溶解液の液温は40℃付近まで昇温した。次にTBOT 0.54kgを加えて撹拌し溶解させた。続いてBET比表面積が200m/gのヒュームドシリカ4.5kgを徐々に加え、完全に混合させ、更に1.5時間撹拌を続けた。オートクレーブ径0.4mφに対して0.3mφの撹拌翼を具備するオートクレーブに、攪拌して得られたものに入れて該オートクレーブを密閉した。続いて、該撹拌翼の先端速度が6km/時間になるように撹拌しながら、オートクレーブの内容物を10時間かけて約170℃まで昇温した後、同温度にて7日間保持し、層状化合物を含む懸濁溶液を得た。この懸濁溶液の一部を加圧ろ過器でろ過した後、純水で濾上物を洗浄して、洗浄されたろ液のpHが10付近になるまで洗浄した。次に洗浄して得られた濾上物を50℃で乾燥させ、層状化合物の白色固体を得た。得られた白色固体のうち、350gを粉砕し、得られた粉砕物と、13質量%の硝酸を含む水溶液3.5Lとを還流管を具備するガラス製フラスコに加えた。該フラスコを140℃に調整されたオイルバス中に置いて加熱し、該フラスコの内容物を20時間還流させた。還流中の内容物の温度は104℃であった。次いで、内容物をろ過し、ろ過により得られた濾上物を純水で洗浄して、洗浄されたろ液のpHが5以上になるまで水洗し、水洗後の濾上物を50℃で十分乾燥することにより98gの白色粉末を得た。元素分析結果によるこの白色粉末のTi含有量は1.1質量%であった。島津製作所製UV−2450型紫外・可視・近赤外分光光度計を用いた紫外可視吸収スペクトル分析の結果、この白色粉末は、チタノシリケートであった(以下「新チタノシリケートF」という。)。
上記で得られた新チタノシリケートFのうち64gをガラス管に入れ、窒素6L(0℃、1atm換算)/時間で流通させ、室温(約20℃)から530℃まで120℃/時間で昇温し、該温度で1時間保持後、窒素を空気に切替え、6L(0℃、1atm換算)/時間で5時間流通させて焼成を行うことにより、白色粉末を得た。X線回折分析の結果、この白色粉末はMWW構造を持つことが確認された。このことより、新チタノシリケートFはTi−MWW前駆体であった。
(参考例8)
〔新チタノシリケートG〕
室温(22℃)、空気雰囲気下、ピペリジン899g、イオン交換水2402gを混合し撹拌した。次に、得られた混合物にTBOT46g滴下し、撹拌しながら溶解させた。TBOTが溶解した後、ホウ酸565gを加え、撹拌しながら溶解させた。次に、ヒュームドシリカ(キャボット製cab-o-sil M7D)410gを仕込み、空気雰囲気下で、撹拌しながら溶解させ、さらに1.5時間熟成させた。2枚のアンカー型撹拌翼を具備した5Lオートクレーブに熟成させた溶液を移したあと、該オートクレーブを密閉した。アルゴンガスを用いて1.5MPa(ゲージ圧)で気密テストを行った後、脱圧して、再び密閉した。続いて、該撹拌翼を回転させながら該オートクレーブの内容物を8時間かけて150℃まで昇温した後、同温度で120時間保持した後、冷却した。得られた反応物は懸濁溶液であった。得られた懸濁溶液をろ過した後、イオン交換水で濾上物を洗浄して、洗浄されたろ液のpHが10付近になるまで洗浄した。次に、濾上物の質量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:50℃)した。続いて、得られた乾燥物をイオン交換水で洗浄及び乾燥し、約520gの層状化合物を得た。上記操作を6回繰り返し、計3120gの層状化合物を得た。20℃〜30℃の外気温、空気雰囲気下、グラスライニングが施された金属製容器(200L、ジャケット及び還流管を具備)に、得られた層状化合物3kgと2M硝酸水溶液158kgとTBOT0.38kgを仕込んだ。該容器のジャケット温度を115℃まで昇温し、同温度で9時間に保持し、更にジャケット温度124℃に昇温し、同温度で7時間還流させた。続いてジャケットの加熱を止め、室温まで放冷させた。続いて、得られた内容物をろ過した後、イオン交換水で濾上物を洗浄して、洗浄されたろ液のpHが5付近になるまで洗浄した。次に、濾上物の質量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:80℃)し、白色固体を得た。このようにして得た白色固体を粉砕し、白色粉末を得た。この白色粉末の一部をガラス管に充填し、6L(0℃、1atm換算)/時間の窒素気流下、室温から530℃まで2時間で昇温し、同温度で2時間保持した後、窒素気流の代わりに6L(0℃、1atm換算)/時間の空気気流に切替えて、530℃を4時間保持することで、焼成を行った。次に、室温、空気雰囲気下で、1.5Lオートクレーブ中に、ピペリジン300g、イオン交換水600g、および焼成により得た上記粉末を150g仕込み、同温度・同雰囲気下で撹拌しながら溶解させ、さらに1.5時間程度熟成させた。得られた熟成物をオートクレーブに入れ密閉し、4時間かけて約150℃程度まで昇温した。その後、160℃を目安として150〜170℃の範囲の温度を保持するようにして1日間、加熱した。得られた懸濁溶液をろ過した後、100℃近くまで加熱したイオン交換水で濾上物を洗浄して、洗浄されたろ液のpHが9付近になるまで洗浄し、白色固体を得た。この白色固体を、真空乾燥器を用いて150℃で十分乾燥し粉砕することにより白色粉末を得た。元素分析結果によれば、この白色粉末のTi含有量は2.0質量%、Si含有量は36質量%であった。紫外可視吸収スペクトル分析の結果、この白色粉末はチタノシリケート(以下、「新チタノシリケートG」という。)であった。
(参考例9)
〔新チタノシリケートH〕
室温、空気雰囲気下、ピペリジン266g、イオン交換水667gを混合し撹拌した。次に、得られた混合物にTBOT13g滴下し、撹拌しながら溶解させた。TBOTが溶解した後、さらにホウ酸157gを加え、撹拌しながら溶解させた。溶解液の液温は30℃〜40℃程度に上昇していた。続いて、該溶解液を撹拌しながらフッ化アンモニウム147gを添加した。ここで液のpHは10.5〜11程度まで下がっていた。次にBET比表面積が200m/gのヒュームドシリカ117gを仕込み、空気雰囲気下のまま、1.5時間程度撹拌することで熟成させ、混合物を得た。得られた混合物を、2枚のアンカー型撹拌翼を具備した1.5Lオートクレーブ中に入れ、該オートクレーブ内を室温、空気雰囲気下にて密閉した。次に、アルゴンガスを用いて1.5MPa(ゲージ圧)で該オートクレーブの気密テストを行った後、脱圧して、再び密閉した。続いて、該オートクレーブの内容物を撹拌しながら8時間かけて150℃まで昇温した後、150℃〜170℃の温度を5日間保持し、冷却し、懸濁溶液を得た。このようにして得られた懸濁溶液をろ過し、得られた濾上物に1.5Lのイオン交換水を加えてリパルプした後、再びろ過する水洗を行った。該水洗を2回繰り返した後、洗浄に用いるイオン交換水の量を1.5Lから2Lに変更し、同様の水洗を3回繰り返した。最後のろ過におけるろ液のpHは8.3であった。水洗により得られた濾上物を送風乾燥器にて50℃で質量減少が認められなくなるまで乾燥し、135gの層状化合物を得た。得られた層状化合物のうち15gを、1.9gのTBOTと混合した750mlの2M硝酸水溶液と、1Lガラスフラスコ中で混合し、懸濁溶液を得た。続いて、該フラスコを135℃に調整されたオイルバスで加熱し、該フラスコの内容物である懸濁溶液を8時間還流させた。還流終了後、100℃以下まで下がったことを確認し、ろ過を行い、濾上物を得た。続いて得られた濾上物に室温のイオン交換水1.4Lを加え、リパルプした後再びろ過を行うことで水洗を行った。この操作を2回繰り返した。次に、得られた濾上物に100℃付近に加熱したイオン交換水1.4Lを加えリパルプした後、0.7Lろ過したところで残った濾上物とイオン交換水との混合物に100℃付近に加熱したイオン交換水0.7Lを加え、リパルプした後、0.7Lろ過したところで残った濾上物とイオン交換水との混合物に100℃付近に加熱したイオン交換水0.7Lを加えた。加熱したイオン交換水を用いることにより、ろ過速度の改善が確認された。この操作を10回繰り返した後、全量ろ過し、白色固体を得た。最後の濾過により得られたろ液のpHはおよそ5であった。得られた白色固体を、真空乾燥器を用いて150℃で該白色固体の質量減少が認められなくなるまで乾燥することにより98gの白色粉末を得た。元素分析結果によれば、この白色粉末のTi含有量は2.0質量%、Si含有量は38質量%であった。また、酸素燃焼−イオンクロマトグラフ分析法によれば、この白色粉末におけるフッ素原子の含有量(以下、F含有量と記すことがある)は0.05質量%であった。また、紫外可視吸収スペクトル分析の結果、この白色粉末はチタノシリケート(以下、「新チタノシリケートH」という。)であった。
(参考例10)
〔新チタノシリケートI〕
上記で得られた1.33gの新チタノシリケートHを、0.005Mに調整した酢酸カルシウム水溶液700mlに加え、0.5時間撹拌した後、ろ過した。ろ液のpHは6であった。続いて室温のイオン交換水700mlを加えてリパルプし、再びろ過する水洗を行った。該水洗を5回繰り返した後、得られた濾上物を150℃で真空乾燥し、1.1gのチタノシリケート粉末(以下、「新チタノシリケートI」という。)を得た。最後の水洗操作におけるろ液のpHは7であった。元素分析結果によれば、新チタノシリケートIのTi含有量は2.0質量%、Si含有量は38質量%であった。また、酸素燃焼−イオンクロマトグラフ分析法によれば、新チタノシリケートIのF含有量は、検出下限の0.01質量%未満であった。
(参考例11〜16)
[新チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
触媒Cの代わりに上記(参考例5〜10)記載の新チタノシリケートD〜Iを用いる以外は、実施例2と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行う。
(参考例17〜22)
[劣化チタノシリケートの調製]
チタノシリケートAの代わりに上記(参考例5〜10)記載の新チタノシリケートD〜Iを用いる以外は、参考例2と同様の操作を行い、それぞれ対応する劣化チタノシリケートD〜Iを得る。
(参考例23〜28)
[劣化チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
触媒Cの代わりに上記(参考例17〜22)記載の劣化チタノシリケートD〜Iを用いる以外は、実施例2と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行う。
(実施例3〜8)
[再生チタノシリケートの調製]
触媒Bの代わりに上記(参考例17〜22)記載の劣化チタノシリケートD〜I用いる以外は、実施例1と同様の処理を行い、それぞれ対応する再生チタノシリケートD〜Iを得る。
(実施例9〜14)
[再生チタノシリケートを用いるプロピレンの酸化工程]
触媒Cの代わりに上記(実施例3〜8)記載の再生チタノシリケートD〜Iを用いる以外は、実施例2と同様の操作を行い、プロピレンオキサイドの製造を行うことにより、それぞれ対応する新チタノシリケートD〜Iと同等の結果を得ることができる。
本発明の調製方法によれば、触媒能が低下したチタノシリケートから、さらに優れた触媒能まで再生されたチタノシリケートが提供可能である。

Claims (13)

  1. 触媒能が低下したチタノシリケートと、環状2級アミンと、を混合する工程を含むことを特徴とするチタノシリケートの調製方法。
  2. 触媒能が低下したチタノシリケートが、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物の酸化生成物と、触媒能が低下する前のチタノシリケートとを混合して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の調製方法。
  3. 触媒能が低下する前のチタノシリケートが、酸素12員環以上の細孔を有するチタノシリケートであることを特徴とする請求項2記載の調製方法。
  4. 触媒能が低下する前のチタノシリケートがTi−MWW前駆体であることを特徴とする請求項2又は3記載の調製方法。
  5. 触媒能が低下する前のチタノシリケートが、ケイ素化合物、ホウ素化合物、チタン化合物、水、及び、MWW構造を有するゼオライトを形成し得る構造規定剤を混合し、熱処理し得られた層状化合物から、該構造規定剤を除いて得られたチタノシリケートであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか記載の調製方法。
  6. MWW構造を有するゼオライトを形成し得る構造規定剤が、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩、及びオクチルトリメチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造規定剤であることを特徴とする請求項5記載の調製方法。
  7. 環状2級アミンが、式(I)
    Figure 2011212673
    (式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。X1、X2、X3、X4、X5及びX6から選ばれる2つの基からなる組み合わせであって、前記の2つの基は互いに隣接する2つの炭素原子に結合している組み合わせは、互いに結合して前記2つの炭素原子とともに炭化水素環を形成していてもよい。nは0〜9の整数を表す。)
    で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の調製方法。
  8. 環状2級アミンが、ピペリジン又はヘキサメチレンイミンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の調製方法。
  9. 環状2級アミンの混合量が、触媒能が低下したチタノシリケート1重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の調製方法。
  10. 前記工程が、25〜250℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の調製方法。
  11. 前記工程が、過酸化水素の非存在下で混合することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の調製方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか記載の調製方法で得られたチタノシリケートの存在下、炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物と、過酸化水素とを反応させてオキシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
  13. 炭素数2〜12の炭素・炭素二重結合を有する化合物がプロピレンであり、オキシラン化合物がプロピレンオキサイドであることを特徴とする請求項12記載のオキシラン化合物の製造方法。
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