JP2011201961A - 樹脂着色剤および樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、耐候性に優れ、連続ショット時の金型の汚染を抑制し、かつ、高い漆黒性を提供できる樹脂着色剤およびそれを用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブを主成分として含有する樹脂着色剤であり、カーボンナノチューブ0.5重量部に対し0.1〜1重量部のカーボンブラックを含有する樹脂着色剤。また、樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する漆黒性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】カーボンナノチューブを主成分として含有する樹脂着色剤であり、カーボンナノチューブ0.5重量部に対し0.1〜1重量部のカーボンブラックを含有する樹脂着色剤。また、樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する漆黒性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、樹脂着色剤および樹脂組成物に関し、より詳細には、優れた漆黒性を提供し得る樹脂着色剤および該着色剤で着色された漆黒性樹脂組成物に関する。
近年、携帯電話、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の電子機器の普及に伴って、これらの機器を構成するハウジング部分の樹脂成形品に対して一層向上した質感を提供する動きが広がっている。具体的には、単なる色彩に留まらず、例えば、艶、深み、手触り等の多岐に亘っている。特に、樹脂成形品を黒色、特に漆黒に着色する技術は、製品の高級感を求めるデザイナーや需要者のニーズに応えるために重要である。
従来、樹脂成形品を漆黒に着色するためには、油溶性染料などの染料が使用されてきた。こうした染料は、例えば、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル樹脂;ポリスチレン、ABS、AS樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート;ポリアミドなどの樹脂成分に対し、一般に分散性、透明性、鮮明性および耐熱性のいずれにおいても良好である。
ただ、通常、黒色を呈する油溶性染料単独の物質は存在しないため、グリーン、レッド、バイオレットあるいはブルー及びエローのうちの3色から4色を適宜混合し混合物の形態で使用するしかなかった。また、当該混合物は、構成する油溶性染料それぞれの特性・性質によってその性能が容易に変動する。例えば、当該混合物を構成する油溶性染料のうち、1色または2色の染料の耐熱性、耐候性が不充分であると、全体として色の変化が起こりやすくなることが指摘されている。さらに、これらの油溶性染料を着色成形時に高温(例えば、230℃以上)に曝すと昇華するという性質がある。これにより、昇華物が成形金型内表面を汚染して金型表面に曇りを発生させ、樹脂成形品の表面における艶をも低下させる。よって、当該油溶性染料を樹脂着色剤として使用する場合は、着色成形時の温度に充分留意する必要があり、かつ当該金型の曇りを取除くために、度々溶剤等で成形金型内の表面に残存する昇華物を拭き取らなければならず、生産性において充分とはいえない。またさらに、当該油溶性染料は、軟質ポリ塩化ビニル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂に対しては、ブリードおよびマイグレーションが大きくなり、使用が困難であると指摘されていた。こうした特定の樹脂成分に対する適合性が不充分であることも懸念の1つである。
他方、こうした油溶性染料に代わって、近年ではカーボンブラックを樹脂着色剤として使用することが一般的に報告されている(例えば、特許文献1および2参照)。
しかし、カーボンブラックは、樹脂成形品に所望の漆黒性を提供するには多量の添加が必要となり、その一方で、油溶性染料に比較して不透明なため、透明性のある樹脂では漆黒性が充分なものとはいえない。
本発明の目的は、耐熱性、耐候性に優れ、連続ショット時の金型の汚染を抑制でき、さらに、高い漆黒性を提供できる樹脂着色剤およびそれを用いた樹脂組成物を提供することにある。
本発明に係る樹脂着色剤は、カーボンナノチューブを主成分として含有する。
1つの実施態様においては、本発明の漆黒性樹脂着色剤は、さらに、上記カーボンナノチューブ0.5重量部に対し0.1〜1重量部のカーボンブラックを含有する。
本発明に係る漆黒性樹脂組成物は、樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する。
本発明の漆黒性樹脂組成物は、上記カーボンナノチューブを全体重量に対して0.05〜2重量%の割合で含有することが好ましい。
1つの実施態様においては、本発明の漆黒性樹脂組成物は、さらにカーボンブラックを全体重量に対して0.01〜2重量%の割合で含有する。
1つの実施態様においては、上記樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリプタジエン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−ポリテトラフルオロエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリロニリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン樹脂、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、変性メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロイド、セロファン、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、エボナイト、およびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である。
本発明によれば、樹脂成形品に高級感ある漆黒性を提供することができる。本発明の樹脂着色剤は成形時における昇華が起こらないため、金型汚染、すなわち、金型表面の曇りの発生を回避することができる。これにより、樹脂成形品の生産性を向上することができる。また、本発明の樹脂着色剤は、安定性の高いカーボンナノチューブを主成分とするため、優れた耐熱性および耐候性を有し、樹脂成形品の経時的な品質劣化を防止することができ、所望の漆黒性を長期にわたって持続することができる。
以下、本発明について詳述する。
<樹脂着色剤>
本発明の樹脂着色剤は、カーボンナノチューブを主成分として含有する。
<樹脂着色剤>
本発明の樹脂着色剤は、カーボンナノチューブを主成分として含有する。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、規則的に配列された炭素原子の本質的に連続的な多数層から成る外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とがフィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。本発明に用いられるカーボンナノチューブは、外側領域の規則的に配列された炭素原子が黒鉛状であり、中空領域の直径が例えば、2nm〜20nmである。このようなカーボンナノチューブは、特表昭62−500943号公報および米国特許第4,663,230号明細書に記載されているものである。本発明に用いられるカーボンナノチューブは、導電材料として市販されているものを使用することができる。このようなカーボンナノチューブは、特に限定されるものではないが、例えば、昭和電工(株)よりVGCF−Xという商品名で市販されている。カーボンナノチューブは、安定な材料であり、染料に比べて、耐熱性、対候性に優れる。
本発明の樹脂着色剤は、上記カーボンナノチューブを粉体または顆粒状の状態でそのまま含有しているのみの構成であってもよく、あるいは以下のような混合物の形態を有していてもよい。
本発明の樹脂着色剤が混合物の形態を有する場合について説明する。
本発明の樹脂着色剤はまた、上記カーボンナノチューブの含有で呈する漆黒性の色調に多少の変化をつける目的で、必要に応じカーボンブラックを含有していてもよい。
このようなカーボンブラックの例としては、市販のファーネス法カーボンブラックまたはチャンネル法カーボンブラックいずれを使用してもよい。漆黒性が向上するという理由から、好ましくは粒径が小さく(例えば、13μm〜25μm)、それ自体が黒色度(漆黒性)を有するカーボンブラックであることが好ましい。
本発明の樹脂着色剤中におけるカーボンブラックの含有量は、上記カーボンナノチューブ0.5重量部に対し、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。本発明の樹脂着色剤中におけるカーボンブラックの含有量が、0.01重量部を下回ると、カーボンブラックを加えても、ほとんど元の場合(カーボンナノチューブ単独を添加した場合)との色調の差異が表れない場合がある。他方、本発明の樹脂着色剤中におけるカーボンブラックの含有量が、2重量部を上回ると、着色剤としてカーボンブラック単独使用による問題点と同様の問題が生じ、漆黒性がさほど向上せず、しかも着色代のコストアップとなる恐れがある。
さらに本発明の樹脂着色剤は、漆黒性の色調を変える目的で、必要に応じ油溶性染料を適量であれば含有していてもよい。油溶性染料は、樹脂成形加工一般において付与される成形加工温度(例えば、230℃以上300℃以下に耐え、かつ耐候性が比較的良好で昇華性の少ない染料であり、例えば、アンスラキノン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、アゾ系染料、メチン系染料、キノリン系染料などのグリーン、レッド、バイオレットあるいはブルーおよびイエロー、および/またはブラックを呈する各種染料が挙げられ、これらのうちの例えば、3色から4色を当業者に周知の方法および手段で適宜を黒色に混合することにより使用することができる。
アンスラキノン系染料の例としては、ソルベントレッド52、ソルベントレッド111、ソルベントレッド149、ソルベントレッド150、ソルベントレッド151、ソルベントレッド168、ソルベントレッド191、ソルベントレッド207、ディスパースレッド22、ディスパースレッド60、ソルベントブルー35、ソルベントブルー36、ソルベントブルー63、ソルベントブルー78、ソルベントブルー83、ソルベントブルー87、ソルベントブルー94、ソルベントブルー97、ソルベントグリーン3、ソルベントグリーン20、ソルベントグリーン28、ディスパースバイオレット28、ソルベントバイオレット13、ソルベントバイオレット14、ディスパースバイオレット31、ソルベントバイオレット36、ソルベントブラック5、ソルベントブラック7、などのカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリノン系染料の例としては、ソルベントオレンジ60、ソルベントオレンジ78、ソルベントオレンジ90、ソルベントバイオレット29、ソルベントレッド135、ソルベントレッド162、ソルベントレッド17などのカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリレン系染料の例としては、ソルベントグリーン5、ソルベントオレンジ55、Vatレッド15、VAtオレンジ7、Fオレンジ240、Fレッド305、Fレッド339、Fイエロー8などカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
アゾ系染料の例としては、ソルベントイエロー14、ソルベントイエロー16、ソルベントイエロー21、ソルベントイエロー61、ソルベントイエロー81、ソルベントレッド8、ソルベントレッド23、ソルベントレッド24、ソルベントレッド27、ソルベントレッド83、ソルベントレッド84、ソルベントレッド121、ソルベントレッド132、ソルベントバイオレット21、ソルベントブラック21、ソルベントブラック23、ソルベントブラック27、ソルベントブラック28、ソルベントブラック31、ソルベントオレンジ37、ソルベントオレンジ40、ソルベントオレンジ45などのカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
メチン系染料の例としては、ソルベントオレンジ80、ソルベントイエロー93など等のカラーインデックスで市販されている染料を挙げることができる。
キノリン系染料の例としては、ソルベントイエロー33、ソルベントイエロー98、ソルベントイエロー157、ディスパースイエロー54、ディスパースイエロー160などのカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
本発明の樹脂着色剤中における油溶性染料の含有量(グリーン、レッド、バイオレットあるいはブルーおよびイエロー、および/またはブラックを適宜混合したものの合計の含有量)は、上記カーボンナノチューブ0.5重量部に対し、好ましくは0.01重量部から0.5重量部、より好ましくは0.1重量部から0.3重量部である。本発明の樹脂着色剤中における油溶性染料の含有量が、0.01重量部を下回ると、添加量が少ないため、本来の色調を変えるという目的が達成しない恐れがある。他方、本発明の樹脂着色剤中における油溶性染料の含有量が、0.5重量部を上回ると、樹脂成形時に当該染料が昇華して、金型を汚染し、かつ当該汚染によって成形品が呈する漆黒性をも損なう恐れがある。
なお、本発明の樹脂着色剤では、上記カーボンナノチューブとともに、上記カーボンブラックおよび油溶性染料を、樹脂成形品が呈する漆黒性を保持し得る範囲において適宜組み合わせて含有していてもよい。
本発明の樹脂着色剤が混合物の形態を有する場合、本発明の着色剤は、上記カーボンナノチューブを、後述するような樹脂成分と同様の樹脂に練り込んだ、マスターバッチまたはコンパウンドの形態を有していてもよい。当該マスターバッチまたはコンパウンドにおける樹脂成分の含有量は、上記カーボンナノチューブが着色剤として奏すべき漆黒性を損なわない範囲で当業者に任意に設定され得る。
さらに、本発明の樹脂着色剤が混合物の形態を有する場合、他の成分、例えば、後述するような樹脂成分、添加剤、充填剤・強化剤などが含まれていてもよい。
本発明の樹脂着色剤における上記他の成分の含有量もまた特に限定されない。このような含有量もまた、上記カーボンナノチューブが着色剤として奏すべき漆黒性を損なわない範囲で当業者に任意に設定され得る。
本発明の樹脂着色剤がマスターバッチまたはコンパウンド等の混合物の形態を有する場合、その製造方法は特に限定されず、カーボンナノチューブを含む上記成分を当該分野に周知の方法によって練り込み、かつ必要に応じて所定形状に成形することにより、製造することができる。
本発明の樹脂着色剤は、後述するような樹脂成分と同様の樹脂に練り込まれ、当業者に周知の方法および手段を用いて任意の形状を有する樹脂成形品に金型汚染を引き起こすことなく加工される。このようにして製造された樹脂加工品は、所望の漆黒性を有する。また、この樹脂加工品は、優れた耐熱性および耐候性を有することができる。
<樹脂組成物>
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する。
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する。
本発明に用いられる樹脂成分は、特に限定されず、例えば、漆黒性の外観を要求される後述のハウジング用の部材に使用され得る公知の樹脂を使用することができる。本発明に用いられ得る樹脂成分のより具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリプタジエン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレートのようなアクリル樹脂;ポリ塩化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;エチレン−ポリテトラフルオロエチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル樹脂;アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂;アクリロニトリル−アクリレート−スチレン(AAS)樹脂;アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン(ACS)樹脂;アイオノマー、線状構造糸(エンジニアリング・プラスチック)のポリアセタール;ポリアミド(ナイロン);ポリカーボネート;ポリフェニレンオキサイド;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;不飽和ポリエステル;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;変性メラミン樹脂;フッ素樹脂;シリコーン樹脂;セルロイド、セロファン、酢酸セルロース、酢酪酸セルロースなどのセルロース系樹脂;エボナイトのような天然ゴム由来の樹脂;ゼラチンのようなタンパク質由来の樹脂;などが挙げられる。本発明においては、各種ハウジング用部材としての汎用性が高いという点から、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンおよびポリメチルメタアクリレート(PMMA)を用いることが好ましい。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは上記本発明の樹脂着色剤に含まれるものと同様である。本発明の樹脂組成物において、カーボンナノチューブは、上記樹脂着色剤としてカーボンナノチューブ単独、または上記マスターバッチやコンパウンドのような混合物の形態のいずれで用いられてもよい。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、樹脂組成物の全体重量に対し、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の割合で含有する。当該含有量が0.05重量%未満では、当該樹脂組成物を用いて得られた樹脂成形品に、所望の漆黒性(黒色度)を発現することが困難になる場合がある。他方、当該含有量が2重量%を上回っても、得られる樹脂成形品への漆黒性に変化が見られず、むしろ生産コストを増加させる恐れがある。
本発明の樹脂組成物はまた、上記カーボンナノチューブの含有で呈する漆黒性の色調に多少の変化をつける目的で、必要に応じカーボンブラックを含有していてもよい。
カーボンブラックは、上記本発明の樹脂着色剤に使用され得るものと同様の種類、粒径または黒色度を有するカーボンブラックである。
本発明の樹脂組成物中におけるカーボンブラックの含有量は、樹脂組成物の全体重量に対し、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。本発明の樹脂組成物中におけるカーボンブラックの含有量が、0.01重量%を下回ると、カーボンブラックを加えても、ほとんど元の場合(カーボンナノチューブ単独を添加した場合)との色調の差異が表れない恐れがある。他方、本発明の樹脂組成物中におけるカーボンブラックの含有量が、2重量%を上回ると、着色剤としてカーボンブラック単独使用による問題点と同様の問題が生じ、漆黒性がさほど向上せず、しかも着色代のコストアップとなる恐れがある。
さらに本発明の樹脂組成物は、漆黒性の色調を変更する目的で、必要に応じ油溶性染料を適量であれば含有していてもよい。油溶性染料は、上記本発明の樹脂着色剤に使用され得るものと同様の、グリーン、レッド、バイオレットあるいはブルーおよびイエローを呈する染料である。本発明においては、これらのうちの3色から4色の油溶性染料と当業者に周知の方法および手段で適宜を黒色に混合することにより使用することができる。
本発明の樹脂組成物中における油溶性染料の含有量(グリーン、レッド、バイオレットあるいはブルーおよびイエローを適宜混合したものの合計の含有量)は、樹脂組成物の全体重量に対し、好ましくは0.05〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.3重量%である。本発明の樹脂組成物中における油溶性染料の含有量が、0.05重量%を下回ると、添加量が低すぎて色調を変えられない恐れがある。他方、本発明の樹脂組成物中における油溶性染料の含有量が、0.8重量%を上回ると、樹脂成形時に当該染料が昇華して、金型を汚染し、かつ当該汚染によって成形品が呈する漆黒性をも損なう恐れがある。
なお、本発明の樹脂組成物においては、上記カーボンブラックおよび油溶性染料を、樹脂成形品が呈する漆黒性を保持し得る範囲において適宜組み合わせて含有していてもよい。
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、添加剤、充填剤・強化剤などの第三成分を含有していてもよい。
まず、添加剤としては、例えば、可塑剤;安定剤;酸化防止剤:紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイドなどの有機ニッケル化合物、ヒンダードアミン系化合物などの紫外線安定剤;帯電防止剤;難燃剤;バイナジン、プリベントール、チアベンダゾールなどの防かび剤;流動パラフィン、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイドなどの滑剤;ADCA等の有機発泡剤;透明核剤;有機顔料、無機顔料、有機染料といった各種の着色剤;架橋剤;アクリルグラフトポリマー、MBSなどの耐衝撃強化剤が挙げられる。
このうち、安定剤のより具体的な例としては、ジ−n−オクチルスズ化合物、ジ−n−ブチルスズ化合物、ジメチルスズ化合物などの有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛化合物系安定剤;カドミウム金属石鹸、鉛金属石鹸、亜鉛金属石鹸などのステアリン酸金属石鹸系安定剤;リン酸トリスノニル;リン酸トリスノニルフェニルなどが挙げられる。
また、酸化防止剤のより具体的な例としては、ジブチルクレゾール、ブチルヒドロキシアニソールなどのフェノール系酸化防止剤;メチレンビス(メチルブチルフェノール)、チオビス(メチルブチルフェノール)などのビスフェノール系酸化防止剤;トリス(メチルヒドロキシブチルフェニル)ブタン、トコフェノールなどのポリフェノール系酸化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネートなどの有機イオウ化合物;トリス(モノ/ジノニルフェニル)ホスファイトなどの有機リン化合物が挙げられる。
さらに、紫外線吸収剤のより具体的な例としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;(ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;アクリル酸エチルヘキシルシアノジフェノニルなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
またさらに、帯電防止剤のより具体的な例としては、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテルなどの非イオン界面活性剤系帯電防止剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩などの陰イオン界面活性剤系帯電防止剤;第4級アンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤系帯電防止剤;両性系界面活性剤;電導性樹脂が挙げられる。
またさらに、難燃剤のより具体的な例としては、テトラブロモビスフェノールA、ポリブロモビフェノール、ビス(ヒドロキシジブロモフェニル)プロパン、塩化パラフィンなどのハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、リン酸トリクレジルなどのリン系難燃剤;三酸化アンチモン;赤リン;酸化スズなどが挙げられる。
これに対し、充填剤・強化剤の例としては、無機系材料;ステンレス鋼繊維、高強度アモルファス金属繊維、ステンレス箔、スチール箔、銅箔などの金属系材料;高分子ポリエチレン繊維、高強力ポリアレート繊維、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、PEEK繊維、PEI繊維、PPS繊維、フッ素樹脂繊維、フェノール樹脂繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維などの有機系材料が挙げられる。
このような充填剤・強化剤のより具体的な例としては、ガラス繊維、ガラス長繊維、石英ガラス繊維などのガラス系材料;PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイトウィスカなどの炭素系材料;炭化ケイ素繊維、炭化ケイ素連続繊維、炭化ケイ素ウィスカ、炭化ケイ素ウィスカシートなどの炭化ケイ素系材料;ボロン繊維などのボロン系材料;Si−Ti−C−O繊維などのSi−Ti−C−O系材料;チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ、チタン酸カリウム系導電性ウィスカなどのチタン酸カリウム系材料;窒化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカシートなどの窒化ケイ素系材料;硫酸カルシウムウィスカなどの硫酸カルシウム系材料;その他、マイカフレーク、マイカ粉、シラスバルーン、シリカ微粉、タルク粉、水酸化アルミニウム粉、水酸化マグネシウム粉末、マグネシウムシリケート粉末、硫酸カルシウム微粉、球状中空ガラス粉、金属化粉、高純度合成シリカ微粉、二硫化タングステン粉末、タングステンカーバイト粉、ジルコニア微粉、ジルコニア系微粉末、部分安定化ジルコニア粉末、アルミナ-ジルコニア複合粉末、複合金属粉末、鉄粉、アルミニウム粉、モリブデン金属粉、タングステン粉、窒化アルミニウム粉末、ナイロン微粒子粉、シリコーン樹脂微粉末、スピネル粉末、アモルファス合金粉末、アルミフレーク、ガラスフレークなどの粉体状のものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、上記第三成分の含有量は当業者によって任意に設定され得る。
本発明の樹脂組成物は、上記樹脂成分およびカーボンナノチューブ、ならびに必要に応じて添加され得る油溶性染料、カーボンブラックおよび/または第三成分を当業者に周知の方法および手段を用いて練り込むことによって調製することができる。
その後、所定の金型を用い、当業者に周知の方法および手段にて所定の形状に成形が行われる。これにより成形品の表面に漆黒性を有する所定の樹脂成形品を得ることができ、金型の汚染も少ない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかし、これらによって本発明は限定されるものではない。
<調製例1:カーボンナノチューブ10%マスターバッチの作製>
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)およびカーボンナノチューブ(昭和電工(株)製VGCF−X)を、90:10の重量比で二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS)に仕込み、260℃の押出温度にてマスターバッチを作製した。
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)およびカーボンナノチューブ(昭和電工(株)製VGCF−X)を、90:10の重量比で二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS)に仕込み、260℃の押出温度にてマスターバッチを作製した。
<調製例2:カーボンブラック40%ドライカラーの作製>
カーボンブラック(テグサ社製モナーク#880)およびステアリン酸マグネシウムを、40:60の重量比でハンマー式粉砕機(ホソカワミクロン(株)製アトマイザー)に仕込み、通し回数2回で繰り返しドライカラーを作製した。
カーボンブラック(テグサ社製モナーク#880)およびステアリン酸マグネシウムを、40:60の重量比でハンマー式粉砕機(ホソカワミクロン(株)製アトマイザー)に仕込み、通し回数2回で繰り返しドライカラーを作製した。
<実施例1>
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)96重量部および調製例1で作製したマスターバッチ4重量部を、射出成形機(日本製鋼所(株)製J110AD)を用いて、ノズル先端温度250℃、金型温度60℃の条件にて、直径80mmかつ円形のプレートでなる(厚み3mm)の試験ピースを作製した。
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)96重量部および調製例1で作製したマスターバッチ4重量部を、射出成形機(日本製鋼所(株)製J110AD)を用いて、ノズル先端温度250℃、金型温度60℃の条件にて、直径80mmかつ円形のプレートでなる(厚み3mm)の試験ピースを作製した。
本実施例で得られた試験ピースについて、その表面の黒色度(漆黒性)を、倉敷紡績(株)製AUCOLOR VP−2システムにて測定した。得られた試験ピース表面の黒色度は64.20であり、漆黒性が良好であることを確認した。
次いで、本実施例と同様の方法でそのまま試験ピース成形のショットを500回繰返し、金型内面をトルエンを浸したガーゼで拭き取ってその汚染度を目視て観察した。500回のショットを繰り返した後でも、本実施例で使用した金型内面は汚染がなく清浄のままであることを確認した。以上の結果を表1に示す。
<実施例2>
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)96重量部、調製例1で作製したマスターバッチ4重量部、および油溶性染料(有本化学工業(株)製プラストグリーン5602)0.1重量部を用い、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)96重量部、調製例1で作製したマスターバッチ4重量部、および油溶性染料(有本化学工業(株)製プラストグリーン5602)0.1重量部を用い、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
本実施例で得られた試験ピースについて実施例1と同様にして黒色度を測定したところ、64.50であり、漆黒性が良好であることを確認した。また、実施例1と同様にして500回のショットを繰返し、金型内面の汚染度を目視で観察した。500回のショットを繰り返した後でも、本実施例で使用した金型内面は汚染がなく清浄のままであることを確認した。以上の結果を表1に示す。
<実施例3>
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)97重量部、調製例1で作製したマスターバッチ2.5重量部、および調製例2で作製したドライカラー0.5重量部を用い、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
<実施例3>
透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)97重量部、調製例1で作製したマスターバッチ2.5重量部、および調製例2で作製したドライカラー0.5重量部を用い、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
本実施例で得られた試験ピースについて実施例1と同様にして黒色度を測定したところ、63.50であり、漆黒性が良好であることを確認した。また、その後同様の条件で490回のショットを繰返し、金型内面の汚染度を目視で観察した。490回のショットを繰り返した後で、金型表面にステアリン酸マグネシウムと思われる白い付着物が少量発生が見受けられたが、比較例1よりも金型汚染の発生ショット回数が大幅にのびた。本実施例で使用した金型内面は汚染がなく清浄のままであることを確認した。以上の結果を表1に示す。
<比較例1>
調製例1で作製したマスターバッチの代わりに、油溶性染料の混合物(0.16重量部のプラストグリーン5602,0.24重量部のプラストレッド8370,0.352重量部のプラストバイオレット8850、および0.048重量部のプラストイエロー8040(いずれも有本化学工業(株)製))を用い、これを透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)99.2重量部と一緒に仕込んで、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
調製例1で作製したマスターバッチの代わりに、油溶性染料の混合物(0.16重量部のプラストグリーン5602,0.24重量部のプラストレッド8370,0.352重量部のプラストバイオレット8850、および0.048重量部のプラストイエロー8040(いずれも有本化学工業(株)製))を用い、これを透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)99.2重量部と一緒に仕込んで、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
本比較例で得られた試験ピースについて実施例1と同様にして黒色度を測定したところ、63.35であった。また、その後同様の条件で140回のショットを繰返し、この段階で金型内面の汚染度を目視で観察した。すでに140回のショットを繰り返した段階で、金型内には昇華による汚染が確認できた。以上の結果を表1に示す。
<比較例2>
調製例1で作製したマスターバッチの代わりに、調製例2で作製したドライカラー2.0重量部を用い、これを透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)98重量部と一緒に仕込んで、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
調製例1で作製したマスターバッチの代わりに、調製例2で作製したドライカラー2.0重量部を用い、これを透明ABS樹脂(東レ(株)製トヨラック920−555)98重量部と一緒に仕込んで、実施例1と同様の成形条件にて試験ピースを作製した。
本比較例で得られた試験ピースについて実施例1と同様にして黒色度を測定したところ、58.30であった。また、その後同様の条件で385回のショットを繰返し、この段階で金型内面の汚染度を目視で観察した。すでに385回のショットを繰り返した段階で、金型内には、ステアリン酸マグネシウムの昇華による汚染が確認できた。以上の結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1〜3で作製された試験ピースはいずれも優れた漆黒性を有し、約500回に及ぶショットを繰り返しても金型内の汚染は観察されず、連続ショットによる汚染の影響が生じていないことがわかる。これに対し、比較例1の試験ピースでは実施例1〜3と同等の漆黒性を有する試験ピースが作製できたものの、連続ショットによる金型内の昇華による汚染があるため、継続的な生産を行うにあたって効率性の点で問題があることがわかる。さらに、比較例2の試験ピースでは、実施例1〜3と比較して著しく漆黒性が低下しており、かつ連続ショットによる金型内の汚染も比較的起こりやすいものであることがわかる。
本発明によれば、樹脂成形時における着色成分の昇華性が無く、しかも、漆黒性、耐熱性、耐候性にすぐれ、成形物に良好な外観を提供することができる。本発明の樹脂組成物は、高級感が求められる素材、例えば、自動車内装材、テレビフレームなどの家電製品用ハウジング、プリンター等の事務機ハウジング、ならびにゲーム機等の外装材のような樹脂成形分野において有用である。
Claims (6)
- カーボンナノチューブを主成分として含有する樹脂着色剤。
- さらに、前記カーボンナノチューブ0.5重量部に対し0.1〜1重量部のカーボンブラックを含有する、請求項1に記載の樹脂着色剤。
- 樹脂成分およびカーボンナノチューブを含有する漆黒性樹脂組成物。
- 前記カーボンナノチューブを、全体重量に対して0.05〜2重量%の割合で含有する、請求項3に記載の漆黒性樹脂組成物。
- さらに、カーボンブラックを全体重量に対して0.01〜2重量%の割合で含有する、請求項4に記載の漆黒性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリプタジエン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−ポリテトラフルオロエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリロニリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン樹脂、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、変性メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロイド、セロファン、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、エボナイト、およびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の漆黒性樹脂組成物。
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