JP2011192910A - 希土類焼結磁石、回転機及び往復動モータ - Google Patents

希土類焼結磁石、回転機及び往復動モータ Download PDF

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Abstract

【課題】優れた磁気特性を維持しつつ耐食性に優れた希土類焼結磁石を提供する。
【解決手段】R−T−B系合金と、遷移元素の窒化物42とを含有し、遷移元素の窒化物42が表面部である第2の領域40に偏在している希土類焼結磁石100。(但し、Rは希土類元素を示し、Tは鉄及びコバルトの少なくとも一方からなる元素を示し、Bはホウ素を示す。)
【選択図】図3

Description

本発明は、希土類焼結磁石、並びにそれを備える回転機及び往復動モータに関する。
構成元素として希土類元素を有するR−Fe−B系合金を主成分とする希土類焼結磁石は、良好な磁気特性を有することから、永久磁石として様々な分野で活用されている。このような希土類焼結磁石は、希土類元素を含有するために、腐食され易い性質を有する。
そこで、腐食による磁気特性の低下を抑制するために、例えば、表面に窒素の拡散層や炭素の拡散層を設けた希土類合金粉末を用いて希土類焼結磁石を形成したり、希土類焼結磁石の表面にめっき層などの保護膜を形成したりして耐食性を改善することが試みられている。例えば、下記特許文献1では、希土類焼結磁石に窒素や炭素を含有させることによって、耐食性を向上させることが提案されている。
特開平4−242902号公報
しかしながら、上述の特許文献1のように、希土類焼結磁石の内部に窒素原子や炭素原子を含有させると、窒素や炭素が希土類焼結磁石の成分と反応して、希土類元素の濃度が高い非磁性相や不純物が形成されやすくなる可能性がある。このように、非磁性相などの異相や不純物が形成されると、これらが磁化反転の核となり、その結果、磁気特性が低下してしまうことが懸念される。
また、原料として、窒素や炭素を有する希土類合金粉末を焼結させて希土類焼結磁石を形成しても、焼結時に窒素や炭素が飛散してしまうため、希土類焼結磁石内に殆ど窒素成分や炭素成分を残存させることができず、耐食性を向上する効果が殆ど得られない。また、希土類焼結磁石の表面にめっき膜を形成する技術では、めっき液によって不安定な化合物が希土類焼結磁石内に精製してしまうことが懸念される。このため、希土類焼結磁石が本来有する優れた磁気特性を、腐食性環境下でも十分に発揮することを可能にする技術が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた磁気特性を有するとともに耐食性に優れた希土類焼結磁石を提供することを目的とする。また、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機及び往復動モータを提供することを目的とする。
本発明者らは、希土類焼結磁石の組成や構造を種々検討したところ、特定の窒化物を希土類焼結磁石の表面部に偏在させることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、R−T−B系合金と遷移元素の窒化物とを含有し、窒化物が表面部に偏在している希土類焼結磁石を提供する。このような希土類焼結磁石は、遷移元素の窒化物が表面部に偏在している。この窒化物は耐食性に優れるため、腐食性環境下で使用しても、希土類焼結磁石の腐食を十分に抑制することができる。また、表面部よりも内部の方が窒化物の含有率が小さいため、磁化反転の核になりうる不純物の量を十分に低減することが可能となり、優れた磁気特性を有するものとなる。これらの要因によって、優れた磁気特性を有するとともに耐食性に優れた希土類焼結磁石を提供することができる。ただし、本発明の効果が得られる理由は、上述の要因に限定されるものではない。なお、本明細書中、Rは希土類元素を示し、Tは鉄(Fe)及びコバルト(Co)の少なくとも一方からなる元素を示し、Bはホウ素を示す。
本発明の希土類焼結磁石における窒化物はTを含むことが好ましい。これによって、一層優れた耐食性を有する希土類焼結磁石とすることができる。但し、x及びyはそれぞれ0を超える数値であり、x/y=2〜4を満たす。
本発明の希土類焼結磁石は、窒化物を実質的に含有しない第1の領域と、当該第1の領域を覆う、上記窒化物を含有する第2の領域とを有することが好ましい。このような希土類焼結磁石は、腐食の進行を一層抑制することができるため、磁気特性を一層向上することができる。
本発明の希土類焼結磁石は、表面から深さ2μmまでの部分を表面部としたときに、表面部における窒化物の含有率が、窒素換算で1〜11質量%であることが好ましい。これによって、一層優れた耐食性を有する希土類焼結磁石とすることができる。
また、本発明では、上述の希土類焼結磁石を備える回転機及び往復動モータを提供する。このような回転機及び往復動モータは上記特徴を有する希土類焼結磁石を備えるため、苛酷な環境下で使用しても、長期間に亘って優れた性能を維持することができる。
本発明によれば、優れた磁気特性を有するとともに耐食性に優れた希土類焼結磁石を提供することができる。また、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機及び往復動モータを提供することができる。
本発明の希土類焼結磁石の好適な実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1に示す希土類焼結磁石のII−II線断面図である。 本発明の希土類焼結磁石の断面構造を拡大して示す模式断面図である。 本発明の回転機の好適な実施形態を模式的に示す斜視図である。 実施例1と比較例1の希土類焼結磁石のX線回折チャートを示す図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の希土類焼結磁石を模式的に示す斜視図である。
希土類焼結磁石100は、主成分としてR−T−B系合金を含有する。ここで、Rは希土類元素を示し、Tは鉄(Fe)及びコバルト(Co)の少なくとも一方からなる元素を示し、Bはホウ素を示す。R−T−B系合金は、希土類元素として、長周期型周期表の3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む。ここで、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む。
R−T−B系合金は、希土類元素として、上述したもののうち、Nd、Pr、Ho及びTbから選ばれる少なくとも1種の元素、又は、La、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。また、R−T−B系合金は、TとしてFeを含むことが好ましい。これによって、比較的低コストで磁気特性に優れる希土類焼結磁石とすることができる。
好適なR−T−B系合金としては、NdFe14Bで表されるNd−Fe−B系の合金が挙げられる。なお、希土類焼結磁石100は、NdFe14B以外の非磁性であるNdリッチ相やBリッチ相、或いは希土類元素を含まない化合物又は希土類元素を含まない合金を含有していてもよい。Ndリッチ相とは、相を構成する元素の中で最も濃度が高い元素がNdである相であり、Bリッチ相とは、Bの元素濃度がNdFe14B相よりも高い相である。
希土類焼結磁石100における希土類元素の含有割合は、好ましくは8〜40質量%であり、より好ましくは15〜35質量%である。希土類元素の含有割合が8質量%未満であると、高い保磁力を有する希土類焼結磁石100が得られ難くなる傾向にある。一方、希土類元素の含有割合が40質量%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、希土類焼結磁石100の残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。Rリッチ相とは、相を構成する元素の中で最も濃度が高い元素がRである相である。
希土類焼結磁石100中のTの含有割合は、好ましくは42〜90質量%であり、より好ましくは60〜80質量%である。Tの含有割合が42質量%未満であると希土類焼結磁石100の残留磁束密度が低下する傾向にあり、90質量%を超えると希土類焼結磁石100の保磁力が低下する傾向にある。
希土類焼結磁石100に含まれるTのうち、Feの割合は、好ましくは80原子%以上であり、より好ましくは90原子%以上であり、さらに好ましくは100原子%である。これによって、製造コストが低く且つ磁気特性に優れる希土類焼結磁石100とすることができる。
希土類焼結磁石100中のBの含有割合は、好ましくは0.5〜5質量%である。Bの含有割合が0.5質量%未満であると、希土類焼結磁石100の保磁力が低下する傾向にある。一方、Bの含有割合が5質量%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、希土類焼結磁石100のBrが低下する傾向にある。なお、Bの一部を炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)及び銅(Cu)からなる群より選ばれる1種以上の元素で置換してもよい。これによって、希土類焼結磁石100の生産性が向上し、その生産コストを低減することができる。
希土類焼結磁石100の保磁力の向上、生産性の向上及び低コスト化の観点から、希土類焼結磁石100は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)及びハフニウム(Hf)等から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
希土類焼結磁石100は、不可避的不純物として、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及びカルシウム(Ca)等から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
図2は、図1に示す希土類焼結磁石100をII−II線に沿って切断した場合の模式断面図である。希土類焼結磁石100は、希土類焼結磁石100の内部にある第1の領域20と、第1の領域20を取り囲むように設けられる第2の領域40とを有する。
図3は、希土類焼結磁石100の微細構造を模式的に示す一部拡大図である。第1の領域20は、例えば希土類焼結磁石100の表面から深さ20μmを超える部分からなる領域である。第1の領域20は、R−T−B系合金の磁性粒子からなる結晶相22と、結晶相22に含まれる合金とは異なる組成を有する化合物(合金)からなる粒界相24と、を有する。粒界相24は、例えば非磁性のRリッチな化合物や、Bリッチな化合物を含んでいてもよい。ただし、第1の領域20は、遷移元素の窒化物を実質的に含有しないことが好ましい。これによって、第1の領域20では、磁化反転の核の発生が抑制されるとともに、磁気特性に優れるR−T−B系合金の含有率を高くすることが可能となり、希土類焼結磁石100の磁気特性を十分に高くすることができる。なお、遷移元素の窒化物を実質的に含有しない第1の領域20は、例えば、後述する窒化処理によって生成する窒化物を含有しないものの、原料の不純物等に由来する、不可避的に含まれる不純物としての窒化物は含んでいてもよい。
第2の領域40は、遷移元素の窒化物42を含有する領域であり、第1の領域20を覆うように形成される。窒化物42は希土類焼結磁石100の表面部に粒状に分散して含まれていてもよく、層状に含まれていてもよい。第2の領域40は、R−T−B系合金の磁性粒子からなる結晶相22や、結晶相22に含まれる合金とは異なる組成を有する化合物からなる粒界相24を含んでいてもよい。すなわち、第2の領域40は、遷移元素の窒化物42が偏在していない第1の領域20の周囲に設けられる、遷移元素の窒化物42を含む一帯の領域であるともいえる。
希土類焼結磁石100の表面から深さ2μmまでの部分を表面部(第2の領域40)としたとき、耐食性を一層向上させる観点から、表面部(第2の領域40)における遷移元素の窒化物42の含有率は、窒素換算で1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。なお、希土類焼結磁石100の表面部(第2の領域40)における遷移元素の窒化物42の含有率の上限は、化学量論としての上限が窒素換算で11.1質量%程度であることから、11質量%であることが好ましい。
希土類焼結磁石100表面から深さ2μmの位置よりも深い部分を内部(第1の領域20)としたとき、磁気特性を一層向上させる観点から、内部(第1の領域20)における遷移元素の窒化物42の含有率は、窒素換算で0.1質量%未満であることが好ましく、0.05質量%未満であることがより好ましく、0.03質量%未満であることがより好ましい。なお、希土類焼結磁石100の内部(第1の領域20)における遷移元素の窒化物42の含有率に特に下限はないが、通常の工程においては不純物等の都合上、窒素換算で0.01質量%程度が下限になり得る。
本明細書において、窒化物42を構成する遷移元素は、長周期型周期表第3族から第11族に属するもののうち、第一遷移元素[スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)]及び第二遷移元素[イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)]から選ばれる元素である。本実施形態における窒化物42は、化学的安定性の観点から、第一遷移元素の窒化物を含むことが好ましい。
希土類焼結磁石100の表面において、窒化物が占める面積割合は、好ましくは50面積%以上であり、より好ましくは70面積%以上であり、さらに好ましくは90面積%以上である。この面積割合は、希土類焼結磁石100の表面のX線回折分析を行い、検出されたピーク強度から、検量線に基づいて求めることができる。
窒化物42は、耐食性を一層向上する観点から、遷移元素として、結晶相22に含まれるR−T−B合金の構成元素であるT、すなわちFe及びCoの少なくとも一方の元素を有する窒化物を含有することが好ましく、Fe元素を有する窒化物を含有することがより好ましい。具体的には、窒化物42は、Tで表わされる窒化物を含有することが好ましい。ここで、x、yはそれぞれ0を超える数値であり、x/y=2〜4を満足する。例えば、xは2〜4であり、yは1であってもよい。
で表わされる窒化物42としては、α−Fe16,γ−FeN,ε−Fe2−3Nなどの鉄窒化物、CoNなどのコバルト窒化物、及び構成元素としてFeとCoの両方を有する(Fe,Co)16などの鉄−コバルト窒化物等が挙げられる。窒化物42は、耐食性をより一層向上する観点から、γ−FeN及びε−Fe2−3Nの少なくとも一方を含有することが好ましく、ε−Fe2−3Nを含有することがより好ましい。
第1の領域20に対する第2の領域40の窒化物42の含有比率は、好ましくは10倍以上であり、より好ましくは20倍以上である。このように希土類焼結磁石100の表面近傍に窒化物42を偏在させればさせるほど、高い磁気特性と優れた耐食性をより高水準で両立させることができる。また、第1の領域20は、窒化物42を全く含まなくてもよい。
第2の領域40の厚みは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは1〜10μmであり、さらに好ましくは2〜8μmである。第2の領域40の厚みが小さくなり過ぎると、十分に優れた耐食性が損なわれる傾向にある。一方、第2の領域40の厚みが大きくなり過ぎると、十分に優れた磁気特性が損なわれる傾向にある。なお、窒化物42が粒状である場合、第2の領域40の厚みは、希土類焼結磁石100の表面部に偏在した窒化物42の大部分(例えば、窒化物42全体の95質量%以上)を含む、層状の領域の最小厚さ(図3中の希土類焼結磁石100の表面から点線までの距離)として求めることができる。
希土類焼結磁石100の表面部(第2の領域40)に窒化物42が偏在していることは、希土類焼結磁石100の表面のX線回折分析と、希土類焼結磁石100を厚み方向に削りながら組成分析をすることが可能なグロー放電発光分光分析と、によって確認することができる。すなわち、(i)X線回折によって、表面部に遷移元素の窒化物が生成していること、及び(ii)グロー放電発光分光分析によって、希土類焼結磁石100の深さ方向に沿って、構成元素の含有率を測定し、内部(第1の領域20)よりも表面部(第2の領域40)の方が窒化物42の含有率が高くなっていること、が確認できる場合、窒化物42が希土類焼結磁石100の表面部に偏在しているといえる。
次に、本実施形態の希土類焼結磁石100の製造方法の一例を説明する。ここで説明する希土類焼結磁石100の製造方法は、磁石素体を製造する第1工程と、磁石素体に前処理を施す第2工程と、磁石素体の表面処理を行って磁石素体の表面部に窒化物を形成する第3工程と、希土類焼結磁石に時効処理を施す第4工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
第1工程では、以下に説明する焼結法によって磁石素体を製造する。まず、希土類元素、Fe及びCoの少なくとも一方、並びにBを所定の比率で含む組成物を鋳造し、インゴットを得る。得られたインゴットを、スタンプミル等を用いて粒径10〜100μm程度に粗粉砕し、続いて、ボールミル等を用いて粒径0.5〜5μm程度に微粉砕して磁性粉末を得る。
次に、得られた磁性粉末を、好ましくは磁場中にて成形して成形体を調製する。この場合、印加する磁場強度は800kA/m以上であると好ましく、成形圧力は100〜500MPa程度であると好ましい。次に、調製した成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間程度焼結し、急冷する。このようにして、焼結体(磁石素体)を得ることができる。なお、焼結雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であると好ましい。
必要に応じて、得られた焼結体を所定の形状に加工してもよい。加工方法は、たとえば切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。なお、このような加工は必ずしも行う必要はない。
第2工程では、磁石素体の表面に以下の前処理を施す。まず、前処理としては、例えばアルカリ脱脂処理、酸洗浄処理、超音波洗浄等が挙げられる。このような前処理を行うことによって、磁石素体の表面の付着物を除去することができる。したがって、後述する第3工程において、磁石素体の表面部に、窒化物をより緻密に形成することができる。なお、この第2工程は必ずしも行う必要はない。
第3工程では、窒化処理によって磁石素体の表面部に窒化物を形成する。窒化処理の方法に特に制限はなく、例えば、i)塩浴熱処理する方法、ii)プラズマ窒化する方法が挙げられる。一方、単に窒素ガスと接触させて加熱する方法では、磁石素体の表面部に窒化物を形成することができない。
塩浴熱処理によって窒化物を生成する方法は、通常、塩浴窒化又は塩浴軟窒化と言われる方法である。この塩浴熱処理によって窒化物を生成する方法の場合、まず、窒化物を形成するための塩浴熱処理剤を調製する。ここで塩浴熱処理剤は、公知の塩成分を含有するものを用いることができる。
塩浴熱処理剤(塩浴処理ソルト)の塩成分としては、例えば、シアン化合物、炭酸塩、及び塩化物等が挙げられる。窒素源としては、シアン化ナトリウム(NaCN)、シアン化カリウム(KCN)、シアン酸ナトリウム(NaCNO)、シアン酸カリウム(KCNO)等、アニオンとしてCN又はCNOを有する塩を用いることが好ましい。
上述の塩成分を含有する塩浴熱処理剤を500〜600℃に加熱して溶融塩とし、当該溶融塩の中に磁石素体を1〜120分間浸漬する。これによって、磁石素体の表面部に窒化物が形成される。溶融塩は、窒化物を効率よく形成する観点から、シアン(CN)とシアン酸(CNO)を合計で10〜50質量%含有し、炭酸(CO 2−)を1〜10質量%含有するのが好ましい。また、ナトリウム及びカリウムを合計で35〜60質量%含有することが好ましい。
磁石素体の表面部における窒化物の生成量は、磁石素体を溶融塩に浸漬する時間、又は溶融塩の組成を変えることによって調整することができる。この塩浴熱処理によって窒化物を生成する方法は、磁石素体の表面部に窒化物を緻密に形成できる点で、後述のプラズマ窒化する方法よりも優れている。
プラズマ窒化によって窒化物を生成する方法の場合、市販のプラズマ窒化装置を用いて、プラズマ状態の窒素を用いて、磁石素体の表面を窒化させる。これによって、比較的短時間で磁石素体の表面部に窒化物を生成することができる。磁石素体の表面部における窒化物の生成量は、プラズマ処理の時間やプラズマ処理の条件を変えることによって調整することができる。このプラズマ窒化によって窒化物を生成する方法は、安全性の点で、上述の塩浴熱処理による方法よりも優れている。
磁石素体が、主成分として例えばNdFe14Bを含有する場合、窒化処理によって、窒化物としてFeNが(zは2〜4の数値を表す。)生成する。窒化処理によって、窒素の含有率が4質量%以上になったとすると、表面部におけるNdFe14Bの大部分、例えば80質量%以上が反応したことになる。また、遷移元素の窒化物の生成に伴い、量論比上、余ったNdやBによって他の反応物が生成して、粒界相の組成が変化する場合もある。窒化物の生成に加えて、このような粒界相の組成の変化が、耐食性の向上に寄与することも考えられる。第3工程によって、希土類焼結磁石100を得ることができる。なお、磁気特性を向上させるために、次の第4工程を行ってもよい。
第4工程では、表面部に窒化物が形成された希土類焼結磁石に時効処理を施す。時効処理は、好ましくは不活性ガス雰囲気中で、400〜900℃、好ましくは450〜700℃で1〜5時間加熱する処理である。このような熱処理(時効処理)を行うことによって、一層優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石100を得ることができる。
上述の製造方法によって、表面部に遷移元素の窒化物が偏在した希土類焼結磁石100を得ることができる。このような希土類焼結磁石100は、窒化処理によって窒化物が表面部のみに形成されているため、窒化物を有しない希土類焼結磁石とほぼ同等の磁気特性を維持することができる。その一方で、耐食性に優れる遷移元素の窒化物が表面部に偏在した構造を有することから、窒化物を有しない希土類焼結磁石に比べて耐食性に十分に優れる。このような希土類焼結磁石100は、十分に優れた磁気特性を長期間に亘って維持することができる。このような特性を有する本実施形態の希土類焼結磁石100は、例えば、優れた耐食性を有することが求められる回転機及び往復動モータ用の永久磁石として好適に用いられる。
図4は、本実施形態の回転機(永久磁石回転機)の内部構造を示す説明図である。本実施形態の回転機200は、永久磁石同期回転機(SPM回転機)であり、円筒状のロータ50と該ロータ50の内側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ50は、円筒状のコア52と円筒状のコア52の内周面に沿ってN極とS極が交互になるように複数の希土類焼結磁石100が設けられている。ステータ30は、内周面に沿って設けられた複数のコイル32を有している。このコイル32と希土類焼結磁石100とは互いに対向するように配置されている。
回転機200は、ロータ50に、上記実施形態に係る希土類焼結磁石100を備える。希土類焼結磁石100は耐食性に優れるため、経時的な磁気特性の低下を十分に抑制することができる。したがって、回転機200は優れた性能を長時間にわたって維持することができる。回転機200は、希土類焼結磁石100以外の部分について、通常の回転機部品を用いて通常の方法によって製造することができる。
回転機200は、コイル32に通電することによって生成する電磁石による界磁と永久磁石100による界磁との相互作用により、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する電動機(モータ)であってもよい。また、回転機200は、永久磁石100による界磁とコイル32との電磁誘導相互作用により、機械的エネルギーから電気的エネルギーに変換する発電機(ジェネレータ)であってもよい。
電動機(モータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石直流モータ、リニア同期モータ、永久磁石同期モータ(SPMモータ)、永久磁石同期モータ(IPMモータ)などが挙げられる。発電機(ジェネレータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石同期発電機、永久磁石整流子発電機、永久磁石交流発電機などが挙げられる。
往復動モータとして機能するモータとしては、例えば、ボイスコイルモータ、振動モータなどが挙げられる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の希土類焼結磁石100は、その表面全体に遷移元素の窒化物が偏在した構造を有しているが、本発明の希土類焼結磁石は、表面部の一部に窒化物を有していなくてもよい。すなわち、希土類焼結磁石の表面部の一部のみに、遷移元素の窒化物が偏在した構造であってもよい。このように、耐食性が必要な部分のみに窒化物が偏在した第2の領域40を設けることによって、磁気特性を一層高くしつつ、高い磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類焼結磁石とすることができる。
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[希土類焼結磁石の作製と組成分析]
(実施例1)
<磁石素体の作製>
粉末冶金法によって、Nd−Dy−Fe−B系合金からなるインゴットを得た。このインゴットの組成は、Nd含有率:27.4質量%、Dy含有率:3質量%、Fe含有率:68.6質量%、B含有率:1質量%、であった。このインゴットを、スタンプミル及びボールミルにより粉砕して、上記組成の合金微粉末を得た。
得られた合金微粉末を、磁場中でプレス成形して成形体を調製した。この成形体を、保持温度1100℃、保持時間1時間の条件下で焼結して焼結体を得た。その後、常温のアルゴンガスを導入して、焼結体を常温まで急冷した。冷却後、焼結体を、20×20×12(mm)のサイズの直方体形状に加工して、磁石素体を得た。
<前処理>
磁石素体に、アルカリ脱脂処理、水洗、硝酸溶液による酸洗浄処理、水洗、超音波洗浄によるスマット除去処理、水洗及び乾燥を順次行う前処理を施した。
<塩浴処理>
以下の組成を有する塩浴熱処理剤(塩浴処理ソルト)を調製した。
シアン化ナトリウム(NaCN):60質量%
塩化ナトリウム(NaCl):35質量%
炭酸ナトリウム(NaCO):5質量%
上記組成を有する溶融塩(温度:570℃)の中に、上述の通り作製した磁石素体を30分間浸漬して窒化処理を行い、希土類焼結磁石を得た。その後、溶融塩から希土類焼結磁石を取り出して大気中で常温まで冷却した。そして、4ホウ酸ナトリウム・10水和物(Na・10HO)を1質量%含有する水溶液に希土類焼結磁石を浸漬して、表面に付着していた塩成分を除去した。その後、希土類焼結磁石の水洗及び乾燥を行った。
<時効処理>
希土類焼結磁石をアルゴンガス雰囲気下、600℃で1時間保持して、磁石素体に時効処理を施した。以上の工程によって、実施例1の希土類焼結磁石を得た。
<組成分析>
得られた希土類焼結磁石の表面のX線回折分析を行った。図5(a)のチャートAは、実施例1の希土類焼結磁石のX線回折チャート(CuKα)である。X線回折分析の結果、希土類焼結磁石の表面部の主成分は、鉄の窒化物[ε−Fe2−3N]であった。
グロー放電発光分光分析(JOBIN YVON社製、装置名:GD−PROFILER2)によって、希土類焼結磁石の表面部及び内部の組成分析を行った。その結果、希土類焼結磁石の表面から深さ5μmまでの領域における窒素の含有率は5質量%以上であった。一方、表面からの深さが5μmを超えると、表面から遠ざかるにつれて窒素の含有率が大きく低下した。表面からの深さが5μmを超える領域では、窒素含有率が0.05質量%以下であり、当該領域に窒化処理によって生成した窒化物は含まれていなかった。
(実施例2)
塩浴処理用の塩浴熱処理剤として、以下の組成を有するものを用いたこと、及び溶融塩の温度を580℃としたこと以外は、実施例1と同様にして希土類焼結磁石を作製した。これを、実施例2の希土類焼結磁石とした。
シアン化ナトリウム(NaCN):35質量%
シアン酸カリウム(KCNO):55質量%
炭酸カリウム(KCO):10質量%
実施例1と同様にして、得られた希土類焼結磁石の分析を行った。X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面部の主成分は、鉄の窒化物[ε−Fe2−3N、γ−FeN]であった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ3μmまでの領域における窒素の含有率は3質量%以上であった。一方、表面からの深さが3μmを超えると、表面から遠ざかるにつれて窒素の含有率が大きく低下した。表面からの深さが3μmを超える領域では、窒素含有率が0.05質量%以下であり、当該領域に窒化処理によって生成した窒化物は含まれていなかった。
(実施例3)
粉末冶金法によって、Nd−Dy−Fe−Co−B系合金からなるインゴットを得た。このインゴットの組成は、Nd含有率:27.4質量%、Dy含有率:3質量%、Fe含有率:61.4質量%、Co含有率:7.2質量%、B含有率:1質量%であった。このインゴットを、スタンプミル及びボールミルにより粉砕して、上記組成の合金微粉末を得た。この合金微粉末を、実施例1の合金微粉末に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして希土類焼結磁石を作製した。これを、実施例3の希土類焼結磁石とした。
実施例1と同様にして、得られた希土類焼結磁石の分析を行った。X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面部の主成分は、鉄の窒化物[ε−Fe2−3N]とコバルトの窒化物(CoN)であった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ5μmまでの領域における窒素の含有率は5質量%以上であった。一方、表面からの深さが5μmを超えると、表面から遠ざかるにつれて窒素の含有率が大きく低下した。表面からの深さが5μmを超える領域では、窒素含有率が0.05質量%以下であり、当該領域に窒化処理によって生成した窒化物は含まれていなかった。
(実施例4)
実施例1と同様にして磁石素体を作製し、前処理を行った。前処理した磁石素体を真空製膜チャンバー内に配置した後、真空排気を行って、真空製膜チャンバー内を1×10−3Pa以下にまで減圧した。そして、以下の条件で磁石素体にプラズマ窒化処理を施して、希土類焼結磁石を得た。
導入ガス:窒素
ガス流量:600ml/分(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:800Pa
磁石素体の表面温度:550℃
高周波電力:300W
処理時間:3時間
上述のプラズマ窒化処理後、希土類焼結磁石をアルゴンガス雰囲気下、600℃で1時間保持して、時効処理を行った。以上の工程によって、実施例4の希土類焼結磁石を得た。
実施例1と同様にして、得られた希土類焼結磁石の分析を行った。X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面部の主成分は、鉄の窒化物[γ−FeN]であった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ2μmまでの領域における窒素の含有率は1質量%以上であった。一方、表面からの深さが2μmを超えると、表面から遠ざかるにつれて窒素の含有率が大きく低下した。表面からの深さが2μmを超える領域では、窒素含有率が0.05質量%以下であり、当該領域に窒化処理によって生成した窒化物は含まれていなかった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、磁石素体を作製した。その後、前処理及び塩浴処理を行わずに、実施例1と同様の時効処理を施し、実施例1と同様にして希土類焼結磁石を作製した。これを比較例1の希土類焼結磁石とした。実施例1と同様にして、この希土類焼結磁石の分析を行った。
図5(b)のチャートBは、比較例1の希土類焼結磁石のX線回折チャート(CuKα)である。X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面の主成分はNdFe14Bであり、鉄の窒化物は検出されなかった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ方向に沿って、窒素の含有率は全く変化しておらず、希土類焼結磁石の表面部とその内部における窒素の含有率に差異はなかった。希土類焼結磁石の表面部及び内部における窒素の含有率は、どちらも0.05質量%以下であった。
(比較例2)
実施例1と同様にして、合金微粉末を調製した。この合金微粉末をアンモニアガス雰囲気下、温度400℃で10分間保持して、合金微粉末の窒素拡散処理を行った。窒素拡散処理を施した合金微粉末を用いたこと以外は、比較例1と同様にして希土類焼結磁石を作製した。これを比較例2の希土類焼結磁石とした。実施例1と同様にして、この希土類焼結磁石の分析を行った。
X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面の主成分はNdFe14Bであり、鉄の窒化物は検出されなかった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ方向に沿って、窒素の含有率は全く変化しておらず、希土類焼結磁石の表面部とその内部における窒素の含有率に差異はなかった。希土類焼結磁石の表面部及び内部における窒素の含有率は、どちらも0.05質量%以下であった。
合金微粉末に窒素拡散処理を施したにもかかわらず、希土類焼結磁石の表面部及び内部における窒素含有率は比較例1と同等であった。この原因は、成形体の焼結時に窒素原子が合金粒子から離脱したためと考えられる。
(比較例3)
焼結体を作製した後、焼結体の冷却をアルゴンガスの代わりに窒素ガスを導入して行ったこと以外は、比較例1と同様にして希土類焼結磁石を作製した。これを比較例3の希土類焼結磁石とした。実施例1と同様にして、この希土類焼結磁石の分析を行った。
X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面の主成分はNdFe14Bであり、鉄の窒化物は検出されなかった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ方向に沿って、窒素の含有率は全く変化しておらず、希土類焼結磁石の表面近傍とその内部における窒素の含有率に差異はなかった。希土類焼結磁石の表面部及び内部における窒素の含有率は、どちらも0.08質量%以下であった。
(比較例4)
実施例1と同様にして磁石素体を作製し、前処理を行った。前処理した磁石素体を大気中、温度400℃で10分間保持して、磁石素体に酸化処理を施し、希土類焼結磁石を得た。その後、常温の大気中に放置して希土類焼結磁石を冷却した。この希土類焼結磁石に、実施例1と同様の時効処理を施した。これを比較例4の希土類焼結磁石とした。そして、実施例1と同様にして、得られた希土類焼結磁石の分析を行った。
X線回折分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面の主成分はNdFe14B及びFeであり、鉄の窒化物は検出されなかった。また、グロー放電発光分光分析の結果によれば、希土類焼結磁石の表面から深さ方向に沿って、窒素の含有率は全く変化しておらず、希土類焼結磁石の表面近傍とその内部における窒素の含有率に差異はなかった。希土類焼結磁石の表面部及び内部における窒素の含有率は、どちらも0.05質量%以下であった。
[希土類焼結磁石の特性評価]
各実施例及び各比較例で得られた希土類焼結磁石を試料として、耐食性及び磁気特性を以下の手順で評価した。
<耐食性評価>
飽和水蒸気が存在する雰囲気下、試料温度:121℃の条件下で、プレッシャークッカー試験(PCT)を行った。この条件下で試料を100時間保持し、保持後の試料の表面状態を目視で観察する目視試験を行った。目視試験は以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
「A」・・・PCT前とPCT後において、試料の外観に変化がなかった。
「B」・・・PCT後は、試料の表面が黒色に変化しており、粉落ちがあった。
また、PCTによる質量減少量を算出した。具体的には、PCT前及びPCT後における試料の質量をそれぞれ測定し、質量の差を試料の表面積で除して、単位面積当たりの質量減少量を算出した。結果を表1に示す。
<磁気特性評価>
BHトレーサを用いて、以下の手順で試料の最大BH積を測定した。東英工業(株)製のMODEL TRF−5BH(商品名)を用いて、磁場を0[kA/m]→2000[kA/m]→0[kA/m]→−2000[kA/m]の順に印加し、スイープ速度:80[kA/m・s]でスイープさせた際の磁束密度[kg/s・A]を計測した。このようにして減磁曲線を得た後、最大BH積を求めた。評価結果を表1に示す。
Figure 2011192910
実施例1〜4の希土類焼結磁石は、耐食性に優れており、また、表面に窒化物を有しない比較例1の希土類焼結磁石と同等の磁気特性を有していた。一方、比較例1〜4の希土類焼結磁石は、耐食性が十分ではなかった。また、比較例3は、質量減少量が小さかったものの、磁気特性が低かった。窒素含有率が高いことが磁気特性の劣化の原因になっていると考えられる。比較例4では、希土類焼結磁石の表面部に酸化物が生成していたと考えられるが、耐食性が十分ではなかった。
[時効処理条件の検証]
なお、時効処理条件の最適化を図るため、各実施例及び各比較例の希土類焼結磁石の時効処理時における保持温度を変えて、最適な時効処理温度を調査した。保持温度:480℃、520℃、560℃、600℃、640℃、680℃で、それぞれ時効処理を行って、上記同様の耐食性評価及び磁気特性評価を行った。その結果、いずれの実施例及び比較例においても、保持温度を600℃にした時に、最も優れた耐食性及び磁気特性を有する希土類焼結磁石を得ることができた。
本発明によれば、優れた磁気特性を維持しつつ耐食性に優れた希土類焼結磁石を提供することができる。また、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機及び往復動モータを提供することができる。
20…第1の領域、22…結晶相、24…粒界相、30…ステータ、32…コイル、40…第2の領域、42…窒化物、50…ロータ、52…コア、軸…54、100…希土類焼結磁石、200…回転機。

Claims (6)

  1. R−T−B系合金と遷移元素の窒化物とを含有し、
    前記窒化物が表面部に偏在する希土類焼結磁石。
    (但し、Rは希土類元素を示し、Tは鉄及びコバルトの少なくとも一方からなる元素を示し、Bはホウ素を示す。)
  2. 前記窒化物はTを含む、請求項1に記載の希土類焼結磁石。
    (但し、Nは窒素を示し、x及びyはそれぞれ0を超える数値を示し、x/y=2〜4を満たす。)
  3. 前記窒化物を実質的に含有しない第1の領域と、前記第1の領域を覆う、前記窒化物を含有する第2の領域とを有する、請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石。
  4. 表面から深さ2μmまでの部分を前記表面部としたときに、
    前記表面部における前記窒化物の含有率が、窒素換算で1〜11質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石を備える回転機。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石を備える往復動モータ。
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