JP2011175929A - リチウム空気二次電池及びその空気極作製方法 - Google Patents

リチウム空気二次電池及びその空気極作製方法 Download PDF

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Abstract


【課題】従来よりも優れたサイクル特性やエネルギー効率などを発揮できる新規なリチウム空気二次電池及びその空気極作製方法の提供。
【解決手段】カーボンを主体とする空気極1と、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極2と、前記空気極1と前記負極2に接する有機電解液3とを有し、前記空気極1にルテニウム(Ru)酸化物を添加する。これによって、充放電の電圧差が小さく、かつ充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下を抑えることができるため、従来よりも優れたサイクル特性やエネルギー効率などを発揮できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型・軽量でかつ遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気二次電池及びその空気極作製方法に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができるため、電池の単位体積当たり非常に大きな放電容量を示すことが報告されている。
これまでに非特許文献1や非特許文献2に報告されているように、正極であるガス拡散型空気極に種々の触媒を添加することにより、放電容量やサイクル特性についての電池性能の改善が試みられている。
電極触媒については、非特許文献1ではλ−MnO、非特許文献2では主に酸化鉄(Fe)やコバルト酸化物(Co)などの遷移金属酸化物が検討されている。その結果、非特許文献1では、充放電サイクルは可能であったが、4サイクル後に放電容量は約1/4に低下し、二次電池としての性能は低い。また、充電電圧は約4.0Vと、平均放電電圧の2.7Vと比較して非常に大きく、エネルギー効率が低いという課題がある。
一方、非特許文献2では、9種類の触媒を検討し、空気極に含まれるカーボンの重量当たりで1000〜3000mAh/gの非常に大きな放電容量が得られている。しかしながら、充放電を繰り返すと、放電容量の低下が著しく、例えば、Coの場合、10サイクルで容量維持率が約65%と、著しい容量の減少が見られ、二次電池としては不十分な特性しか得られていない。また、ほとんどの場合で平均放電電圧は2.5V程度であり、また、充電電圧は4.0〜4.5Vを示し、最も低いものでも3.9V程度であるため、充放電に関するエネルギー効率は低い。
J.Read,Journal of The Electrochemical Society,Vol.149,pp.A1190−A1195(2002). Aurelie Debart,et al.,Journal of Power Sources,Vol.174,pp.1177(2007).
本発明は、リチウム空気二次電池を、高容量二次電池として作動させ、かつ充電・放電反応に高活性な空気極用電極触媒を用いることによって、充放電の電圧差が小さく、充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下が小さいリチウム空気二次電池及びその空気極作製方法を供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明では、カーボンを主体とする空気極、例えばカーボン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのバインダー及び電極触媒からなるガス拡散型の空気極を正極として用い、負極として金属リチウムまたはリチウム含有物質を使用し、前記空気極と前記負極との間に有機電解液が配置されるリチウム空気二次電池において、前記空気極に、電極触媒として酸化ルテニウム(RuO)などのルテニウム(Ru)酸化物を用いる。これにより、容量や作動電圧などの電池特性を大幅に改善することができる。
また、このルテニウム酸化物として、酸化ルテニウム(RuO)中に結晶水を含有しているRuO・nHO(nは1molのRuOに対する結晶中に含まれるHOのモル数)を用いれば、さらに優れた電池性能を得ることができる。また、このルテニウム(Ru)酸化物は、ルテニウムが4価数のイオンで存在するものと3価数のイオンで存在するものがあるが、このうち前者のもの(4価数)を用いれば、より確実に電池特性を改善することができる。
また、空気極中の触媒の分散性を向上させるために、カーボン粒子を分散させた状態で、ルテニウムを含む金属塩を溶解した水溶液中に、アルカリ水溶液を滴下し、そのカーボン粒子上にルテニウムを含む沈殿物を担持し、さらに乾燥を行うことによりRuO・nHO/カーボン複合体を空気極材料として合成し、前記複合体にバインダーを添加することによって作製した空気極を作製し、このようにして作製した空気極を用いてリチウム空気二次電池を作製する。
このようにして作製したリチウム空気二次電池は、従来より電池性能が改善されるだけでなく、触媒の分散度が高まるので触媒添加量を削減することができる。
本発明のリチウム空気二次電池は、カーボンを主体とする空気極に、ルテニウム酸化物からなる電極触媒を添加したため、従来よりも優れたサイクル特性やエネルギー効率などを発揮することができる。具体的には、充放電の電圧差が小さく、かつ充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下を抑えることができる。
また、本発明のリチウム空気二次電池の空気極作製方法によれば、前記のような高性能なリチウム空気二次電池用を構成するための空気極を容易かつ確実に得られると共に、ルテニウム酸化物からなる触媒の分散度が高まるので高性能を維持しつつ、高価な触媒の添加量を大幅に削減することができる。
本発明に係るリチウム空気二次電池100の基本的な構成を示す図である。 本実施例で使用したリチウム空気二次電池セルの構造を示す断面図である。 実施例1に係るリチウム空気二次電池セル200の充放電曲線を示す図である。 実施例1、2、比較例1に係るリチウム空気二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るリチウム空気二次電池100の基本的な構成を示したものである。
図示するように本発明に係るリチウム空気二次電池100は、カーボン、電極触媒及びバインダーを構成要素とする空気極(正極)1と、金属リチウムまたはリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質を構成要素とする負極2との間に有機電解液3が配置された構成となっている。
このような構成をした本発明に係るリチウム空気二次電池100にあっては、二次電池としての高性能化を達成するために、前記空気極1に、酸素還元(放電)・酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な電極触媒である酸化ルテニウム(RuO)などのルテニウム酸化物を添加する。
このようなルテニウム酸化物を電極触媒として添加することによって、空気極1中に有機電解液3が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給されるので、電極触媒−電解液−ガス(酸素)が共存する三相界面サイトが形成される。前記電極触媒が高活性であれば、酸素還元(放電)・酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上する。
空気極1上での反応は次のように表すことができる。
2Li+(1/2)O+2e→LiO…(1)
2Li+O+2e→Li…(2)
上式中のリチウムイオン(Li)は、負極2から電気化学的酸化により有機電解液3中に溶解し、この有機電解液3中を空気極1表面まで移動してきたものである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極1内部に取り込まれたものである。
空気極(正極)1の電極触媒となる酸化ルテニウム(RuO)中のルテニウムは、+4、+3などの価数のイオンで存在し、合成条件によっては、酸素空孔も存在する。
このようなルテニウム酸化物は、正極活物質である酸素との相互作用が強いため、多くの酸素種を酸化物表面上に吸着もしくは酸素空孔内に吸蔵することができる。
このような状態が式(1)及び(2)の中間反応体となり、酸素還元反応は容易に進むようになる。また、式(1)及び(2)の逆反応である充電反応についても、前記酸化物は活性を有しており、電池の充電、つまり、空気極上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、ルテニウム酸化物は電極触媒として機能する。
ルテニウム酸化物の1つである酸化ルテニウム(RuO)の合成手法としては、固相法や液相法などの公知のプロセスを用いることができるが、三相界面サイトを多量に電極触媒表面に生成することが重要であり、使用する触媒は高表面積であることが望ましく、焼成後の比表面積が30m/g以上であることが好適である。
そのため、金属塩化物や金属硝酸塩の水溶液の蒸発乾固、前記水溶液にアルカリ水溶液を滴下する沈殿法や金属アルコキシドの加水分解などに代表される液相法を用いることが望ましい。
液相法で得られた酸化ルテニウム前駆体は、多くの場合、結晶化が進んでいないためアモルファス状態である。このアモルファス状態の前駆体を、500℃程度の高温で熱処理を行うことにより結晶性の酸化ルテニウムが得られ、本発明のリチウム空気二次電池100の空気極1の電極触媒として用いた場合においても高い性能を示す。
しかしながら、このような熱処理によりルテニウム酸化物の表面積は著しく低下し、10m/g程度しか得られない。上記のアモルファス前駆体を100−200℃程度の比較的低温で乾燥を行った場合においては、前記前駆体粉末は、アモルファス状態を維持しつつ、粒子中には完全に脱水していない結晶水が存在し、形式的にRuO・nHO(nは1molのRuOに対する結晶中に含まれるHOのモル数)と表される。
このアモルファス粉末の表面積は、焼結がほとんど進んでいないため、100m/g程度の非常に大きな値を示し、触媒として好適であり、本発明の電極触媒として用いた場合にも、優れた電池性能を得ることができる。
上記の、特に高温で熱処理を行ったルテニウム酸化物触媒は、粒子の凝集のため、熱処理後にカーボンと混合しても、ルテニウム酸化物触媒をカーボン中に高分散担持させることは非常に困難である。そのため、十分な触媒効果を得るためには、空気極1中に酸化物を大量に添加する必要があった。しかしながら、このような手法は、コスト的な観点からは好ましくなく、解決すべき課題であった。
そこで、本発明では、以下の手法で酸化物の高分散担持を行った。
先ず、カーボン粒子を水溶液中に分散させ、さらにルテニウム金属塩を溶解することによって、ルテニウムイオン含有水溶液がカーボン細孔内にも含浸された懸濁水溶液を調製する。
次に、この懸濁水溶液に、アンモニア水などのアルカリ水溶液を徐々に滴下し、カーボン上にルテニウムを含む沈殿物(水酸化ルテニウム)を担持し、ろ過等により粉末を回収し、得られた粉末の乾燥を行うことによって、RuO/カーボン複合体、RuO・nHO/カーボン複合体を調製できる。
本発明によれば、RuO・nHOがカーボン上にナノサイズの微粒子の状態で高分散担持されており、空気極材料として用いた場合に、優れた電池性能を示すことが可能となる。
空気極1を形成するには、RuO系酸化物粉末、カーボン粉末(またはRuO・nHO/カーボン複合体)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなバインダー粉末との混合物をチタンメッシュ等の支持体上に圧着成形する、あるいは、前述の混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にして金属メッシュまたはカーボンクロス上に塗布し乾燥する、等の手段によって形成され、空気極1を構成する電極の片面は大気に曝され、またもう一方の面は電解液3と接する。
また、電極の強度を高め電解液3の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなくホットプレスを行うことによっても、より安定性に優れた空気極1を作製可能である。
また、ルテニウム酸化物として上述した酸化ルテニウム(RuO)以外に、他のルテニウム酸化物、例えば、四酸化ルテニウム(RuO)、Ru、SrRuO、SrRuOなどを用いることもできる。また、ルテニウムは、その同位体を用いることもできる。
空気極1の材料であるカーボンは、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボン繊維類などを用いることができるが、空気極1中の反応サイトを十分に確保するために表面積が大きなものが適しており、具体的にはBET比表面積で300m/g以上の値を有しているものが望ましい。
なお、バインダーとしては、上記のPTFEだけでなく、ポリフッ化ビニリデン、ポリブタジエンゴムなどの粉末もしくは分散液も用いることができる。
負極2の活物質としては、金属リチウム、もしくは、リチウムイオンを放出することができる物質である、リチウムを含むシリコンやスズとの合金やLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物も使用することができ、リチウム空気二次電池用負極材料として用いることができる材料であれば特に限定されない。
しかしながら、合成時にリチウムを含まないシリコンやスズなどを用いる場合には、前もって化学的処理または電気化学的処理によって、それらの材料がリチウムを含む状態にあるようにしておく必要がある。
放電時の負極(金属リチウム)2の反応は以下のように表すことができる。
Li→Li+e…(3)
電解液3としては、正・負極間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよく、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒を使用でき、溶質として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)やリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド[(CFSO)2NLi]などを用いることができ、溶媒としては、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系や1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系やγ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系や、これらの中から二種類以上を混合した溶媒についても使用することができる。
また、前記非水電解液だけでなく、リチウムイオン導電性を有する固体電解質や高分子電解質や、リチウム金属塩を溶解させたイオン液体も使用可能である。
セパレータ、電池ケース等の構造材料等他の要素についても、従来公知の各種材料が使用でき、特に制限はない。
以下に添付図面を参照して、本発明に係るリチウム空気二次電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
先ず、前述した空気極1の電極触媒として用いる酸化ルテニウム(RuO)粉末を以下のようにして合成した。
市販の塩化ルテニウム(RuCl)を蒸留水に溶解し、攪拌しながら、徐々にアンモニア水(28%)をpH7.0になるまで徐々に滴下することによって、水酸化ルテニウムの沈殿を得た。沈殿は、吸引ろ過により回収し、塩素が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。得られた粉末は、150℃で一晩乾燥後、電気炉を用いて600℃で5時間の熱処理を行った。焼成後の粉末は、X線回折(XRD)測定、TG−DTA分析、BET比表面積測定を行い、評価した。
熱処理後の粉末は、XRD測定より酸化ルテニウム(RuO,PDFファイルNo.40−1290)単相であることを確認した。また、TG−DTA測定により、粉末中には結晶水が含まれていないことを確認した。また、BET法により粉末の比表面積を測定したところ、15m/gであった。
次に、このような酸化ルテニウム(RuO)粉末を用いて空気極1及びこの空気極1を用いたリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
酸化ルテニウム(RuO)粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、ロール成形し、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極1を得た。
図2に、本実施例で用いた円柱形のリチウム空気二次電池セル200の断面図を示す。
空気極1は、PTFE被覆された空気極支持体10の凹部に配置し、空気極固定用PTFEリング8で固定した。なお、空気極1と空気極支持体10が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFE被覆されていない。また、空気極1と空気との接触する電極の有効面積は2cmである。
次に、空気極1の大気が接触する面とは逆面にリチウム二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。負極固定用座金7に負極2である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(有効面積:2cm)に同心円上に重ねて圧着した。負極固定用PTFEリング6を、空気極1を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7をさらに配置した。Oリング9は、図に示すようにセットした。セルの内部に、有機電解液3である1mol/lの六フッ化リン酸リチウム/炭酸プロピレン(LiPF/PC)溶液を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。
そして、このような構成をしたリチウム空気二次電池セル200の電池性能を測定した。なお、電池性能の測定試験には、正・負極端子4,13を用いた。
電池のサイクル試験は、充放電測定システムを用いて、空気極1の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで測定を行った。また、充電は、同電流密度で、電池電圧が4.5Vに増加するまで行った。電池の作製は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で行い、電池の放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極(カーボン+酸化物+PTFE)1重量当たりの値(mAh/g)で表した。
初回の放電・充電曲線を図3に示す。
図より、酸化ルテニウム(RuO)を空気極触媒に用いたときの平均放電電圧は2.75V、放電容量は400mAh/g(カーボン重量当たりでは、700mAh/g)であることが分かる。
また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の393mAh/gであり、可逆性に優れていることが分かる。
放電容量のサイクル依存性を図4に示すが、本実施例(実施例1)では充放電サイクルを100回繰り返しても、放電容量(mAh/g)の減少はほとんど見られなかった。
また、この充電時の電圧については、図3より、およそ3.7Vに平坦部分が見られ、従来の報告より低い値を示すことが分かった。
充放電電圧の推移を以下の表1に示すが、本実施例(実施例1)では、充放電において若干の過電圧の増加が見られるが、ほぼ安定した電圧を示すことが分かった。このように、酸化ルテニウム(RuO)は空気極1用の触媒として非常に優れた活性を有していることが分かった。
Figure 2011175929

(実施例2)
ガス拡散型の空気極1の電極触媒として、結晶水を含有した酸化ルテニウム(RuO・nHO)を用いた。
この結晶水を含有した酸化ルテニウム(RuO・nHO)は、実施例1に示したプロセスで、最後の600℃で5時間の熱処理を行わないことで合成した。粉末の評価法や電極や電池の作製法及び評価法は、実施例1と同様にして行った。XRD測定より、得られた粉末はアモルファスであることを確認した。粉末に含まれる結晶水は、TG−DTA測定よりn=0.8であることが分かった。また、BET比表面積は130m/gであった。
この結晶水を含有した酸化ルテニウム(RuO・0.8HO)を空気極1の電極触媒として用いたリチウム空気電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
図4に示すように本実施例(実施例2)の放電容量は、初回で610mAh/gを示し、実施例1のような結晶水を含有しない酸化ルテニウム(RuO)よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
また、表1に示すように充放電電圧についても、実施例1よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善を達成することができた。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。
上記のような特性向上は、電極触媒である結晶水を含有した酸化ルテニウム(RuO・0.8HO)が非常に大きな表面積を有しているため、放電時の酸化リチウムの析出サイトが増加したことや、酸素の吸着能が向上し、効率的に触媒として機能したためであると考えられる。
(実施例3)
本実施例では、実施例1による手法を基にして、結晶水を含有した酸化ルテニウム(RuO・nHO)/カーボン複合体を合成した。
先ず、カーボン分散剤であるブタノールを少量含んだ水溶液中に、ケッチェンブラック粉末を超音波処理により分散させた。
次に、塩化ルテニウムを溶解し、激しく攪拌しながら、アンモニア水溶液をゆっくりとpH7.0になるまで滴下し、ケッチェンブラック上に水酸化ルテニウムを担持した。塩素の残留を防ぐために、蒸留水で5回の洗浄を行った。その後、吸引ろ過により、溶液中から粉末を回収した。さらに150℃で一晩の乾燥を行うことにより、RuO・nHO/カーボン複合体の粉末を得た。得られた粉末は、XRD測定よりアモルファスであることを確認した。
なお、担持量は、生成物が結晶水を含まない酸化ルテニウム(RuO)で、100%の効率で沈殿が生成するとの仮定の基で酸化物析出量を計算し、溶液中に分散させるカーボン量により調節した。
得られた粉末は、実施例1と同様の手法でPTFEを混合し、空気極1を作製した。なお、粉末の評価法や電極や電池の作製法及び評価法は、実施例1と同様にして行った。
本手法により、二種類の担持量のRuO・nHO/カーボン複合体[酸化物(RuO換算):カーボン:PTFE=50:30:20、10:54:36(重量比)]を合成した。
この二種類の複合体1を空気極に用いたリチウム空気二次電池の放電容量と平均放電電圧のサイクル依存性を、比較のために実施例2(担持量50wt%)の結果とともに以下の表2に示す。
Figure 2011175929

表2からも分かるようにいずれの場合においても、安定したサイクル特性を示したが、合成法や担持量が異なると、放電電圧や放電容量に関して差異が見られた。
例えば、表2において、担持量50wt%のときで、本実施例と実施例2を比較すると、本実施例の方が放電容量が小さく放電電圧も低い。
しかしながら、本実施例の担持量10wt%の場合は、放電容量及び放電電圧について、触媒担持量が少ないにも係らず、本実施例の50wt%の場合よりも明らかに特性は改善されている。また、担持量50wt%の実施例2とほぼ同等の電池性能を示している。
これは、担持量50wt%の本実施例の場合、10wt%の場合よりも粒子の凝集が進んだため触媒の分散度が低く、触媒の利用効率が低かったものと考えられる。
また、担持量50wt%の実施例2の場合については、RuO・nHOを合成した後にカーボンを混合したため、担持量10wt%の本実施例よりも分散度が低く、触媒が有効に利用されていないと考えられる。
以上の結果を基にすると、担持量10wt%という少量の触媒添加ながら、良好な電池性能を示す本実施例の手法は、コストの面からも非常に優れた空気極材料合成法であると言える。
(比較例1)
空気極1用の電極触媒として公知であるコバルト酸化物(Co)を用いて、リチウム空気二次電池セルを実施例1と同様にして作製した。また、コバルト酸化物(Co)は市販試薬を用いた。電池のサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
本比較例に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1,2の結果とともに図4に示す。
図示するように本比較例1では初回放電容量は約500mAh/gと、実施例1よりも大きな値を示した。しかしながら、充放電サイクルを繰り返すと、実施例1とは異なり放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は初期の約20%であった。
また、充放電電圧のサイクル依存性を実施例1,2の結果とともに、表1に示した。
表1からも分かるように本比較例1による充放電電圧は、実施例1,2よりも明らかに低い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧は増加し、20回目でサイクルは困難となった。
以上の結果より、本発明のようにテニウム酸化物からなる電極触媒は、公知の材料よりも、容量及び電圧に関してサイクル特性に優れており、リチウム空気二次電池用空気極触媒として有効であることが確認された。
カーボンを主体とする空気極用の電極触媒としてルテニウム酸化物を用いることにより、充放電サイクル性能に優れたリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として有効利用することができる。
1:空気極(正極)、2:負極、3:有機電解液、4:空気極端子、5:セパレータ、6:負極固定用PTFEリング、7:負極固定用座金、8:空気極固定用PTFEリング、9:Oリング、10:空気極支持体(PTFE被覆)、11:負極支持体、12:セル固定用ねじ(PTFE被覆)、13:負極端子、100:リチウム空気二次電池、200:リチウム空気二次電池セル。

Claims (4)

  1. カーボンを主体とする空気極と、
    金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、
    前記空気極と前記負極に接する有機電解液とを有し、
    前記空気極にルテニウム(Ru)酸化物を添加することを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 前記ルテニウム(Ru)酸化物に結晶水を含有していることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  3. 前記ルテニウム(Ru)酸化物は、ルテニウムが4価数のイオンで存在するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム空気二次電池。
  4. カーボン粒子を分散させ、かつルテニウムを含む金属塩を溶解した水溶液中に、アルカリ水溶液を加える工程と、
    前記カーボン粒子上にルテニウムを含む沈殿物を担持させる工程と、
    前記沈殿物を乾燥させて、結晶水を含有するルテニウム酸化物と前記カーボン粒子との複合体を生成する工程と、を有するリチウム空気二次電池の空気極作製方法。
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