JP6310413B2 - リチウム空気二次電池、その空気極用触媒の製造方法、並びにリチウム空気二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウム空気二次電池、その空気極用触媒の製造方法、並びにリチウム空気二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はリチウム空気二次電池に関する。特に本発明は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型軽量で、かつ遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気二次電池に関する。本発明は更に、本発明のリチウム空気二次電池に使用する触媒の製造方法に関する。また、本発明は、上記リチウム空気二次電池の製造方法に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができる。このため、電池の単位体積当たりの放電容量の値を非常に大きくできることが報告されている。
これまでに非特許文献1や非特許文献2に報告されているように、正極であるガス拡散型空気極に種々の触媒を添加することにより、放電容量、サイクル特性などの電池性能を改善する試みらがなされている。
ガス拡散型空気極の電極触媒として遷移金属酸化物が検討されている。例えば、上記文献では、非特許文献1においてλ−MnO2などの遷移金属酸化物が、非特許文献2では主に酸化鉄(Fe23)、コバルト酸化物(Co34)などの遷移金属酸化物が検討されている。これらの文献には、以下のようなリチウム空気二次電池の電池特性の試験の結果が示されている。
非特許文献1に開示されている二次電池では、充放電サイクルは可能であったが、4サイクル後に放電容量は約1/4に低下し、二次電池としての性能は低いものであった。また、非特許文献1に開示されている二次電池では、充電電圧が、約4.0Vであり、平均放電電圧の2.7Vと比較して非常に大きく、エネルギー効率が低いという課題がある。
一方、非特許文献2では、9種類の触媒を検討し、空気極に含まれるカーボンの重量当たりで1000〜3000mAh/gの非常に大きな放電容量が得られている。しかしながら、充放電を繰り返すと、放電容量の低下が著しく、例えば、Co34の場合、10サイクルで容量維持率が約65%となる。このように、非特許文献2のリチウム空気二次電池でも著しい容量の減少が見られ、二次電池としての十分な特性は得られていない。また、ほとんどの場合で平均放電電圧は2.5V程度であり、一方、充電電圧は4.0〜4.5Vを示し、最も低いものでも3.9V程度である。このため、非特許文献2のリチウム空気二次電池は充放電のエネルギー効率は低い。
J. Read, Journal of The Electrochemical Society, Vol.149, pp.A1190-A1195 (2002). Aurelie Debart et al., Journal of Power Sources, Vol.174, pp.1177 (2007).
本発明は、リチウム空気二次電池を、高容量の二次電池として作動させ、充放電の電圧差が小さく、充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下が小さいリチウム空気二次電池を提供することを目的とする。
本発明の第一は、リチウム空気二次電池に関する。本発明のリチウム空気二次電池は、導電性材料及び触媒を含む空気極、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極及び前記空気極と前記負極に接する電解質を含むリチウム空気二次電池であり、前記空気極は、触媒として籠状結晶構造を有する酸化物を含み、前記籠状結晶構造を有する酸化物は、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)を含有する酸化物であり、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)(以下本明細書で、籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を籠状結晶構造酸化物とも称する)であることを特徴とする。
本発明の第二は、上記リチウム空気二次電池の空気極の触媒である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)の製造方法である。本発明の触媒の製造方法の一実施形態は、籠状結晶構造酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、前記籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)を酸素雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶酸化物に包摂される酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高める工程を含む。
本発明の触媒の製造方法の別の実施形態は、酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を、上記実施形態に従って準備する工程と、得られた籠状結晶構造を有する酸化物(12CaO・7Al23)をアルカリ金属またはアルカリ土類金属蒸気雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶構造を有する酸化物の電気伝導率を増加させる工程を含む。
本発明の触媒の製造方法の別の実施形態は、酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を、上記実施形態に従って準備する工程と、得られた籠状結晶構造を有する酸化物(12CaO・7Al23)を導電性材料と混合し、この混合物を熱処理する工程を含む。この実施形態により製造された触媒は、電気伝導率が増加すると共に、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)及び導電性材料の比表面積を増加させることができる。
本発明の第三は、リチウム空気二次電池の製造方法である。本発明のリチウム空気二次電池の製造方法は、導電性材料及び触媒を含む空気極と、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極に接するように電解質を配置することを含み、前記空気極の触媒が、上記の触媒の製造方法により製造されることを特徴とする。
上述した本発明のリチウム空気二次電池によって、電池性能の改善を達成することができる。
本発明のリチウム空気二次電池は、空気極の触媒として、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を添加したことにより、従来よりも優れたサイクル特性を実現でき、更にエネルギー効率などを改善することができる。具体的には、充放電の電圧差が小さく、かつ充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下を抑えることができるリチウム空気二次電池を提供できる。
本発明によるリチウム空気二次電池の基本的な概略図である。 実施例において測定に用いたリチウム空気二次電池の構造を示すための概略断面図である。 実施例1のリチウム空気二次電池の初回の充放電曲線を示すグラフである。 実施例1〜4、及び比較例1のリチウム空気二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。
以下に、図面を参照しつつ、本願に係るリチウム空気二次電池の一実施形態について詳細に説明する。
[リチウム空気二次電池の構成]
本発明に係るリチウム空気二次電池100は、図1に示されるように、空気極101、負極102及び電解質(例えば有機電解液)103を少なくとも含み、前記空気極101が正極として機能する。また、これらの空気極と負極との間に電解質が配置されうる。
前記空気極101は、触媒及び導電性材料を構成要素に含むことができる。また、空気極には、前記材料を一体化するための結着剤を含むことが好ましい。負極102は、金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質を構成要素とすることができる。
以下に上記の各構成要素について説明する。なお、本明細書において、電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。
(I)空気極(正極)
本発明では、空気極は、触媒及び導電性材料を少なくとも含み、必要に応じて結着剤等の添加剤を含むことができる。
(I−1)触媒
本発明のリチウム空気二次電池では、空気極の触媒として籠状結晶構造を有する酸化物を含む。特に、前記空気極は、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を電極触媒として含むことが好ましい。このような十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を含むことで、本発明のリチウム空気二次電池は、二次電池としての性能を高めることができる。本発明では、前記十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、活性酸素種である酸素イオンラジカルを1018cm-3以上包接していることが好ましく、5×1018cm-3の酸素イオンラジカルを包摂していることがより好ましく、5×1018〜1×1022cm-3の酸素イオンラジカルを包摂していることが特に好ましい。本発明では、触媒は、前記の酸素イオンラジカルを包摂し、且つ、3S/cm以上の電気伝導率を有していることが更に好ましく、3〜1000S/cmの電気伝導率を有していることが特に好ましい。
本発明のリチウム二次電池の空気極では、電解質/電極触媒/空気(酸素)の三相界面サイトにおいて、電極反応が進行する。即ち、空気極101中に有機電解液などの電解質103が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解質−電極触媒−空気(酸素)が共存する三相界面サイトが形成される。前記電極触媒が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
空気極での反応は次のように表すことができる。
2Li++(1/2)O2+2e- → Li2O (1)
2Li++O2+2e- → Li22 (2)
上式中のリチウムイオン(Li+)は、負極から電気化学的酸化により有機電解液などの電解質中に溶解し、この電解質中を空気極表面まで移動してきたものである。また、酸素(O2)は、大気(空気)中から空気極内部に取り込まれたものである。なお、負極から溶解する材料(Li+)、空気極で析出する材料(Li22)、及び空気(O2)を図1の構成要素と共に示した。
空気極(正極)の電極触媒として好ましい十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)などの籠状結晶構造を有する酸化物は、酸素との相互作用が強く、多くの酸素種を十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)の表面に吸着することができる。このように、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)表面上に吸着された酸素種は、上記式(1)及び式(2)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)及び式(2)の逆反応である充電反応に対しても、上記の十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は活性を有している。従って、電池の充電、つまり、空気極上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、リチウム空気二次電池の空気極の電極触媒として有効に機能する。
本発明のリチウム空気二次電池では、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解質/電極触媒/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本発明では、上述の三相部位が電極触媒表面に多量に存在することが重要であり、使用する触媒は比表面積が高いことが望ましい。本発明では、例えば十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、比表面積が5m2/g以上、好ましくは10m2/g以上であることが好適である。
本発明で好ましく使用される十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、各種方法で入手することができる。例えば、固相法、液相法、気相法などの公知のプロセスを用いる、各種合成法で得ることができる。
例えば、合成法の一実施形態として、炭酸カルシウム(CaCO3)と、ガンマ酸化アルミニウム(Γ−Al23)を混合し、500〜1000℃、好ましくは500〜800℃で焼成する固相法が挙げられる。本発明では、この固相法を含む方法で十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を調製することが望ましい。
(I−2)導電性材料
本発明では、空気極に導電性材料を含むことができる。導電性材料には、例えばカーボンを例示することができる。具体的には、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボン繊維類などを挙げることができる。空気極中で反応部位を十分に確保するために、カーボンは比表面積が大きなものが適している。具体的には、BET比表面積で300m2/g以上の値を有しているものが望ましい。これらのカーボンは、例えば市販品として、又は公知の合成により入手することが可能である。
本発明のリチウム空気二次電池では、上述のように、空気極に使用する触媒及びカーボンの比表面積は、所定の値を有することが望ましい。本発明では、比表面積の測定は、市販の装置を用いて行うことができる。例えば、比表面積は、市販の測定装置を用いて、液体窒素を冷却媒として使用するような手順で測定することができる。
(I−3)結着剤(バインダー)
空気極は結着剤(バインダー)を含むことができる。この結着剤は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴムなどを例として挙げることができる。これらの結着剤は、粉末として又は分散液として用いることができる。
本発明の空気極における上記触媒、導電性材料及び結着剤の含有量は、空気極の全材料の重量を基準として、触媒が0重量%を越え90重量%以下、好ましくは20〜80重量%であり、導電性材料が10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%であり、結着剤が0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
(I−4)空気極の調製
空気極は以下のように調製することができる。触媒である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末、カーボン粉末、及び必要に応じてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなバインダー粉末を混合し、この混合物をチタンメッシュ等の支持体上に圧着することにより、空気極を成形することができる。また、前述の混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にして、金属メッシュ又はカーボンクロスやカーボンシート上に塗布し乾燥することによって、空気極を形成することができる。
また、電極の強度を高め、電解液の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなく、ホットプレスを適用することによっても、より安定性に優れた空気極を作製することができる。
空気極は、これを構成する電極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解質と接する。以上のように、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を添加した空気極を作製することで、充電及び放電反応に対して高活性な空気極用電極を得ることができる。更に、上記のような構成のリチウム空気二次電池の空気極を作製することにより、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)からなる触媒の効果も高めることができる。
(II)負極
本発明のリチウム空気二次電池は、負極に負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極として用いる場合、負極を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いることもできる。しかし、この場合には、空気二次電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。
本発明のリチウム空気二次電池の負極は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極を作製すればよい。
ここで、放電時の負極(金属リチウム)の反応は以下のように表すことができる。
(放電反応)
Li→Li++e- (3)
なお、充電時の負極においては、式(3)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
(III)電解質
本発明のリチウム空気二次電池は、電解質を含む。この電解質は、空気極(正極)及び負極間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒を使用できる。具体的には、リチウムイオンを含む金属塩として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウムイオンを含む金属塩を挙げることができる。また、非水溶媒としては、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、又は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、並びに、これらの中からの二種類以上を混合した溶媒[例えば炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)の混合溶媒、EC及び炭酸ジエチル(DEC)などのような混合溶媒]を挙げることができる。
本発明のリチウム空気二次電池の他の電解質として、リチウムイオンを通す固体電解質(例えば、Li2SやP25を含む硫化物系固体電解質など)、リチウムイオンを通すポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド系、具体的には、例えば、上記有機電解液とポリエチレンオキシドをコンポジット化した物質など)等を挙げることができる。但し、本発明は、これらに限定されず、リチウム空気二次電池で使用される公知のリチウムイオンを通す固体電解質又はリチウムイオンを通すポリマー電解質であれば好適に使用することができる。
(IV)他の要素
本発明のリチウム空気二次電池は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
(V)リチウム空気二次電池の空気極用触媒の製造方法
本発明は、リチウム空気二次電池の空気極用触媒の製造方法を包含する。本発明の触媒の第一の製造方法は、包摂される酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を製造するための方法である。
本発明の第一の製造方法は、
(a)籠状結晶構造酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
(b)前記籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)を酸素雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶酸化物の酸素イオンラジカルの濃度を高める工程を含む。
工程(a)は、(I−1)の触媒の欄で先に説明した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程である。この触媒は、上記触媒の欄で説明した合成手法に従って、調製すればよい。
工程(b)は、工程(a)で調製した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)に包摂される酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高める工程である。
工程(b)の具体的手順には、工程(a)により得られた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を乾燥空気雰囲気下、より好ましくは酸素雰囲気下において、200℃〜800℃、好ましくは400〜600℃の温度で熱処理することが含まれる。このような手順で十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)に包摂される酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高めることができる。本発明では、酸素イオン絡カルの濃度は、1018cm-3以上が好ましく、5×1018cm-3以上がより好ましく、5×1018〜1×1022cm-3であることが特に好ましい。本発明では、酸素イオンラジカル(活性酸素)の量を増加させた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)も電極触媒として好適に使用できる。
本発明は、触媒の上記第一の製造方法により得られた、酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)について、当該触媒の電気伝導率を増加させた触媒の製造方法を包含する。
この触媒の製造方法(触媒の第二の製造方法)は、
(i)酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
(ii)得られた酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)をアルカリ金属またはアルカリ土類金属蒸気雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶構造酸化物の電気伝導率を増加させる工程を含む。
工程(i)は、酸素イオンラジカルの濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(籠状結晶構造酸化物)(12CaO・7Al23)を準備する工程であり、この工程は、上述した触媒の第一の製造方法と同じである。本工程では、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)は、1018cm-3以上,好ましくは5×1018cm-3以上、より好ましくは、5×1018〜1×1022cm-3の酸素イオンラジカルを包摂していることが望ましい。
工程(ii)は、上記籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)の電気伝導率を増加させる工程である。
本工程の具体的手順は、前記の酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を増加させた籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を密封下において、500℃〜800℃、好ましくは、600℃〜700℃の温度で加熱することを含む。このような手順で、前記籠状結晶酸化物をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の蒸気雰囲気下で熱処理し、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)中の酸素イオンラジカルを電子で置換する。この工程により、触媒の電気伝導率を増加することができる。本発明の触媒の製造方法により、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)に3S/cm以上の電気伝導率を与えることができる。
本工程で使用できるアルカリ金属又はアルカリ土類金属は特に限定されないが、リチウムが好ましく、ナトリウムがより好ましく、カルシウムが特に好ましい。
本工程における籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の割合は、電気伝導率を3S/cm以上に増加させることができる限り、特に限定されないが、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23):アルカリ金属又はアルカリ土類金属=1:10〜10:1(g/g)であることが好ましい。
本発明の製造方法で得られた電気伝導率が増加した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は空気極の電極触媒として、より好適に使用できる。
本発明は、触媒の上記第一の製造方法により得られた、酸素イオンラジカル(活性酸素)の濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)について、当該触媒の電気伝導率を増加させた触媒の製造方法(触媒の第三の製造方法)を包含する。
この触媒の第三の製造方法は、
(ア)酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
(イ)得られた酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)を導電性材料と混合し、この混合物を熱処理する工程を含む。
工程(ア)は、酸素イオンラジカルの濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(籠状結晶構造酸化物)(12CaO・7Al23)を準備する工程であり、この工程は、上述した触媒の第一の製造方法と同じである。本工程では、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)は、1018cm-3以上,好ましくは5×1018cm-3以上、より好ましくは、5×1018〜1×1022cm-3の酸素イオンラジカルを包摂していることが望ましい。
工程(イ)は、上記の酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)と導電性材料を混合し、次いで加熱処理することを含む。
本工程の具体的手順は、工程(ア)で得られた酸素イオンラジカルの濃度を高めた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)と導電性材料を混合し、成形した後、1500℃〜1700℃、好ましくは、1550℃〜1650℃の温度で、例えば蓋付きのカーボン坩堝中で熱処理することが含まれる。
本発明の導電性材料は特に限定されないが、上記の(I−2)導電性材料の欄で説明したカーボン材料を挙げることができる。
本発明の触媒の第三の製造方法によっても、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)に3S/cm以上の電気伝導率を与えることができる。
本発明の触媒の第三の製造方法により、危険なアルカリ金属蒸気を使用する必要がなくなり、安全性を飛躍的に向上することができる。
さらに、本発明の合成法により、カーボン粉末のような前記導電性材料は十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)が有する酸素イオンラジカルにより賦活化され、比表面積が増加する。
本工程における籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)と、導電性材料の割合は、電気伝導率を3S/cm以上に増加させ、触媒の比表面積を増加させることができる限り、特に限定されないが、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23):導電性材料=1:10〜10:1(g/g)であることが好ましい。
以上の通り、触媒の第三の製造方法は、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)の電気伝導性を高めることができる。また、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)の比表面積も増加させることができる。さらに、触媒の第三の製造方法は、籠状結晶構造酸化物(12CaO・7Al23)に対する上記効果だけでなく、導電性材料の比表面積も増加することができる。これにより、本発明の触媒の第三の製造方法により製造された触媒を用いた空気極は、その中で反応部位を十分に確保することが可能となり、充放電容量が向上する。本発明で製造した、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)及びカーボン粉末を含む触媒は、リチウム空気二次電池の空気極材料として、さらに好適に使用できる。
(VI)リチウム空気二次電池の製造方法
本発明のリチウム空気二次電池は、上述した通り、少なくとも空気極(正極)、負極及び電解質を含み、例えば図1に示されるように、空気極と負極の間に電解質を狭持するように構成される。このような構成のリチウム空気二次電池は、従来型の二次電池と同様に調製することができる。
例えば、リチウム空気二次電池は、上述したような導電性材料、触媒及び結着剤を含む空気極と、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極に接するように電解質を配置し、従来技術に従って各要素を組み立てればよい。本発明のリチウム空気二次電池の製造方法では、触媒は、上記触媒の第一の製造方法から第三の製造方法に従って製造したものであることが特に好ましい。
リチウム空気二次電池の製造方法の一実施形態では、例えば図2のような円柱形のリチウム空気二次電池を製造することができる。具体的には、まず、空気極を、絶縁被覆された空気極支持体に配置して固定する。負極は、負極支持体に固定する。空気二次電池の内部(空気極と負極の間となる部分)に、電解質を充填し、負極が空気極の大気と接する面と逆の面に配置されるように負極支持体を被せて空気二次電池全体を固定する。
上記構成要素に加え、空気極と負極の間となる部分にはセパレータ等の部材を配置することができ、その他絶縁部材、Oリング、固定具などを適宜配置することができる。
(実施例)
以下に添付図面を参照して、本発明に係るリチウム空気二次電池の実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
前述した空気極1の電極触媒として用いる籠状結晶構造を有する酸化物の一つである十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を以下の手順で合成した。
市販の炭酸カルシウム(CaCO3)(関東化学社製)及び、市販のガンマ酸化アルミニウム(Γ−Al23)(関東化学社製)をアルコール中で湿式混合し、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)が原子当量比で12:14になるように調整した。得られた原料を、大気中で、800℃、2時間焼成することで固相反応させた。その後、乳鉢及び乳棒を用いて粗粉砕した後、ボールミルを用いて微粉砕した。
この粉末について、X線回折(XRD)測定、電子スピン共鳴(ESR)測定、BET比表面積測定、電気伝導率測定を行い、評価した。
得られた粉末は、XRD測定により十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)に不純物が含まれていないことを確認した。また、ESR測定により、前記十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、1×1017/cm3の酸素イオンラジカルが含まれていることが分かった。また、BET法により粉末の比表面積を測定したところ、10m2/gであった。電気伝導率は、粉体抵抗測定装置(三菱化学アナリテック社製)を用いて4MPaの圧力を印加しながら測定したところ、0.1S/cm以下であることが分かった。
(空気極の調製)
次に、このような十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を用いて空気極1及びこの空気極1を用いたリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を50:30:20の重量比でらいかい機を用いて十分に粉砕混合し、ロール成形して、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極を得た。
(リチウム二次電池セルの調製)
図2に示す断面構造を有する円柱形のリチウム空気二次電池セルを作製した。図2は、リチウム空気二次電池セルの断面図である。リチウム空気二次電池セルは、露点が−60℃以下の乾燥空気中で、以下の手順で作製した。
上記の方法で調製した空気極(正極)1を、PTFE被覆された空気極支持体10の凹部に配置し、空気極固定用PTFEリング8で固定した。なお、空気極1と空気極支持体10が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さないものとした。また、空気極1と空気との接触する電極の有効面積は2cm2とした。
次に、空気極1と大気が接触する面とは逆の面に、リチウム二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。続いて、図2に示すような負極固定用座金7に負極2である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(有効面積:2cm2)を同心円上に重ねて圧着した。次いで、負極固定用PTFEリング6を、空気極1を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7を更に配置した。続いて、Oリング9を、図2に示すように空気極支持体10の底部に配置した。
次に、セルの内部(空気極(正極)1と負極2との間)に、有機電解液3を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。有機電解液3は、1mol/lの六フッ化リン酸リチウム/炭酸プロピレン(LiPF6/PC)溶液を用いた。
続いて、空気極(正極)端子4を空気極支持体10に設置し、負極端子13を負極支持体11に設置した。
(電池性能)
以上の手順で調製したリチウム空気二次電池セルの電池性能を測定した。なお、図2に示す空気極(正極)端子4及び負極端子13を、電池性能の測定試験に用いた。
電池のサイクル試験は、充放電測定システム(Bio Logic社製)を用いて、空気極の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cm2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。また、電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が4.4Vに増加するまで行った。電池の放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極(カーボン+十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)+PTFE)1重量当たりの値(mAh/g)で表した。
初回の放電及び充電曲線を図3に示す。
図3より、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を空気極触媒に用いたときの平均放電電圧は2.7V、放電容量は410mAh/g(カーボン重量当たりでは、1367mAh/g)であることが分かる。ここで、平均充放電電圧は、図中の全放電容量の中間値時の放電電圧及び充電電圧と定義する。
また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の420mAh/gであり、可逆性に優れていることが分かる。
放電容量のサイクル依存性を図4に示す。本実施例(実施例1)では充放電サイクルを100回繰り返しても、放電容量(mAh/g)の減少はほとんど見られなかった。
また、この充電時の電圧は、図3より、およそ3.9Vに平坦部分が見られ、従来の報告より低い値を示すことが分かった。
充放電電圧の推移を以下の表1に示す。本実施例(実施例1)では、充放電において若干の過電圧の増加が見られるが、ほぼ安定した電圧を示すことが分かった。このように、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)はリチウム空気二次電池の空気極用の触媒として非常に優れた活性を有していることが分かった。
Figure 0006310413
(実施例2)
十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を酸素雰囲気下で、熱処理することで、1018cm-3以上の酸素イオンラジカルを包接させた十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を以下の手順で合成した。
十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末の合成は実施例1と同様に作製した。作製した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を酸素雰囲気中で、550℃、12時間熱処理を行い、再度、乳鉢及び乳棒を用いて粗粉砕した後、ボールミルを用いて微粉砕した。
粉末の評価法、空気極の作製、電池の作製及び評価法は、実施例1と同様にして行った。
熱処理後の粉末は、XRD測定により実施例1と同様の結晶構造を有していることを確認した。また、ESR測定により、前記十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、5×1018/cm3の酸素イオンラジカルが含まれていることが分かった。また、BET法により粉末の比表面積を測定したところ、12m2/gであった。電気伝導率は0.1S/cm以下であることが分かった。
(電池性能)
本実施例の1018cm-3以上の酸素イオンラジカルを含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を空気極の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
図4に示すように本実施例(実施例2)の放電容量は、初回で657mAh/gを示し、実施例1の1018cm-3以下の酸素イオンラジカル(活性酸素)を含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
また、表1に示すように充放電電圧についても、実施例1よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善を達成することができた。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。これらの特性の向上は、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)に含まれる酸素イオンラジカルが電池反応における活性中心として働いたため、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応がスムーズに行われたことによると考えられる。
(実施例3)
十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)をアルカリ土類金属蒸気雰囲気下で、熱処理することで、3S/cm以上の電気伝導率を有する十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を以下の手順で合成した。
まず、1018cm-3以上の酸素イオンラジカルを含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末の合成は実施例2と同様に作製した。作製した1018cm-3以上の酸素イオンラジカル(活性酸素)を含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末及びカルシウム金属片(12CaO・7Al23)粉末:カルシウム金属片=1:10(g/g))を石英管中に入れ、真空封入した後、700℃で48時間熱処理した。熱処理した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は再度、乳鉢及び乳棒を用いて粗粉砕した後、ボールミルを用いて微粉砕した。
粉末の評価法、空気極の作製、電池の作製及び評価法は、実施例1と同様にして行った。
熱処理後の粉末は、XRD測定により実施例1と同様の結晶構造を有していることを確認した。また、BET法により粉末の比表面積を測定したところ、13m2/gであった。電気伝導率は3.9S/cmであることが分かった。
(電池性能)
本実施例の3S/cm以上の電気伝導率を有する十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を空気極の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
図4に示すように本実施例(実施例3)の放電容量は、初回で1000mAh/gを示し、実施例1〜2の0.1S/cm以下の十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
また、表1に示すように充放電電圧についても、実施例1〜2よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善を達成することができた。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。これらの特性の向上は、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)の電気伝導率の向上に伴う、触媒活性の向上及び過電圧の低下によるものと考えられる。
(実施例4)
3S/cm以上の電気伝導率を有する十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末を、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)及びカーボン粉末を同時に熱処理する工程を含む以下の手順で合成した。
まず、1018cm-3以上の酸素イオンラジカルを含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末の合成は実施例2と同様に作製した。作製した1018cm-3以上の酸素イオンラジカルを含む十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末及びカーボン粉末を熱処理後に重量比で50:30になるようアルコール中で湿式混合し、1MPaで一軸プレスを行うことでペレット化した後、20MPaの静水圧プレスで追加成形を行った。得られた成形体を、蓋付きカーボン坩堝に入れ、1600℃、1時間熱処理した。熱処理した十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)及びカーボン粉末は再度、乳鉢及び乳棒を用いて粗粉砕した後、ボールミルを用いて微粉砕した。
粉末の評価法、空気極の作製、電池の作製及び評価法は、実施例1と同様にして行った。また、粉末の評価を行う際は、酸素雰囲気下、650℃、6時間熱処理することで、カーボン粉末を燃焼させ、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)のみを取り出した。
カーボン粉末を燃焼させた後の粉末は、XRD測定により実施例1〜3と同様の結晶構造を有していることを確認した。また、BET法により粉末の比表面積を測定したところ、16m2/gであった。電気伝導率は5.1S/cmであることが分かった。また、カーボン粉末燃焼前後の粉末の重量・比表面積から計算したところ、本実施例で合成後したカーボン粉末の比表面積は、600m2/gであることが分かった。これは実施例1〜3で使用したケッチェンブラックの比表面積、305m2/gと比べ大きな値となっている。また、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)のみの比表面積は、16m2/gであり、実施例2よりも増加しているが、これは、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)をカーボンのような導電性材料と混合し加熱することで、当該酸化物の粒成長が穏やかになるため、その比表面積が増加したものと考えられる。
(電池性能)
本実施例で得られた3S/cm以上の電気伝導率を有する十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)粉末及びカーボン粉末を空気極の電極触媒及び導電性材料として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4及び表1に示す。
図4に示すように本実施例(実施例4)の放電容量は、初回で1607mAh/gを示し、実施例1〜3の十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
また、表1に示すように充放電電圧についても、実施例1〜2よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善を達成することができた。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。これらの特性の向上は、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)のさらなる電気伝導率の向上に伴う、触媒活性の向上及び過電圧の低下によるものと考えられる。さらに、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)及びカーボン粉末を同時に熱処理することで、カーボン粉末が十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)の有する酸素イオンラジカルにより、賦活処理され、比表面積が増加したため、空気極中で反応部位を十分に確保することが可能となり、充放電容量が向上したと考えられる。
(比較例1)
空気極用の電極触媒として公知であるコバルト酸化物(Co34)を用いて、リチウム空気二次電池セルを実施例1と同様にして作製した。また、コバルト酸化物(Co34)は市販試薬(和光純薬工業社製)を用いた。電池のサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
本比較例に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1〜4の結果とともに図4に示す。
図に示されるように本比較例1では、初回放電容量は約800mAh/gであり、例えば実施例1よりも大きな値を示した。しかしながら、充放電サイクルを繰り返すと、実施例1とは異なり放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は初期の約13%であった。
また、充放電電圧のサイクル依存性を実施例1〜4の結果とともに、表1に示した。
表1からも分かるように本比較例1による充放電電圧は、実施例1〜4よりも明らかに充電電圧が高く、放電電圧が低い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧が増加し、20回目でサイクルは困難となった。
以上の結果より、本発明のように十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を電極触媒として含む電極を空気極として含むリチウム空気二次電池は、公知の材料を用いた場合よりも、容量及び電圧に関してサイクル特性に優れており、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)は、リチウム空気二次電池用の空気極の触媒として有効であることが確認された。
リチウム空気二次電池の空気極用の電極触媒として十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を用いることにより、充放電サイクル性能に優れたリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として有効利用することができる。
1 空気極(正極)
2 負極
3 有機電解液
4 空気極(正極)端子
5 セパレータ
6 負極固定用PTFEリング
7 負極固定用座金
8 空気極(正極)固定用PTFEリング
9 Oリング
10 空気極(正極)支持体(PTFE被覆)
11 負極支持体
12 セル固定用ねじ(PTFE被覆)
13 負極端子
100 リチウム空気二次電池
200 リチウム空気二次電池セル

Claims (5)

  1. 導電性材料、触媒及び結着剤を含む空気極、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極及び前記空気極と前記負極に接する電解質を含むリチウム空気二次電池であって、
    前記空気極は、触媒として籠状結晶構造を有する酸化物を含み、前記籠状結晶構造を有する酸化物は、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)を含有する酸化物であり、十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)であることを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
    前記籠状結晶構造を有する酸化物(12CaO・7Al23)を酸素雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶構造を有する酸化物に包摂される酸素イオンラジカルの濃度を高める工程と
    を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池用触媒の製造方法。
  3. 請求項2の製造方法に従って、酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
    前記酸素イオンラジカルの濃度が高められた籠状結晶構造を有する酸化物(12CaO・7Al23)をアルカリ金属またはアルカリ土類金属蒸気雰囲気下で熱処理し、前記籠状結晶構造を有する酸化物の電気伝導率を増加させる工程と
    を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池用触媒の製造方法。
  4. 請求項2の製造方法に従って、酸素イオンラジカルの濃度を高めた籠状結晶構造を有する酸化物である十二酸化カルシウム七酸化アルミニウム(12CaO・7Al23)を準備する工程と、
    前記酸素イオンラジカルの濃度が高められた籠状結晶構造を有する酸化物(12CaO・7Al23)を導電性材料と混合し、この混合物を熱処理する工程と
    を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池用触媒の製造方法。
  5. 導電性材料、触媒及び結着剤を含む空気極と、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極に接するように電解質を配置する、リチウム空気二次電池の製造方法であって、前記空気極の触媒が、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法により製造されたものであることを特徴とするリチウム空気二次電池の製造方法。
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